しかしながら、上述した発電素子901では、振動が比較的低周波数である振動源(例えば、約3Hz〜20Hzで振動する橋や歩道橋、道路など)に対しては、発電を効率的に行うことが困難であるという問題点があった。
即ち、可動マスの質量を増加させるべく、第2ヨーク922を大きくすると、発電と無関係な部位の体積が増加するため、電力密度(単位体積あたりから取り出せる電力)が低くなる。ばね定数を小さくするべく、磁歪棒911,912の軸方向長さを長くすると、発電素子901全体の大型化を招き、磁歪棒911,912の厚みを薄くすると、磁束が漏れやすくなるため発電量が低下し、磁歪棒911,912の対向間隔を狭くすると、コイルの配設スペースが減少して巻き数が確保できなくなるため、発電量が低下する。そもそも、発電素子901は、その発電圧が周波数に比例することから、振動源の振動が低周波数であるほど、発電効率が低下する。
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、振動が比較的低周波数である振動源において、発電を効率的に行うことができる発電ユニットを提供することを目的としている。
課題を解決するための手段および発明の効果
請求項1記載の発電ユニットによれば、振動源側に固定された固定部材に対してマス部材が弾性支持部材によって自由振動可能に弾性支持される加振装置を備え、加振装置の共振周波数である第1周波数が、発電素子の共振周波数である第2周波数よりも低くされるので、加振装置の共振周波数(第1周波数)を振動源の振動に合わせることで、加振装置を共振させ、マス部材を発電素子の磁歪棒の他端側に周期的に衝突させることができる。これにより、磁歪棒の他端側に自由振動を発生させ、発電素子に発電を効率的に行わせることができる。
即ち、発電素子の共振周波数(第2周波数)を、振動源の振動に合わせる必要がなく、高周波数に設定できるので、その分、発電素子の発電圧を確保した状態で、発電を行うことができる。その結果、振動が比較的低周波数の振動源において、発電を効率的に行うことができる。
また、発電素子の共振周波数(第2周波数)を、高周波数に設定できれば、例えば、可動マスとなる部分の体積を小さくすることや磁歪棒の長さを短くすることができるので、その分、発電ユニット全体としての小型化を図ることができる。
請求項2記載の発電ユニットによれば、請求項1記載の発電ユニットの奏する効果に加え、第1棒および第2棒の対向間に一対の永久磁石が磁極を違えて挟装されるので、第1棒および第2棒と一対の永久磁石とにより磁気ループが形成されると共に、永久磁石の起磁力によるバイアス磁界が第1棒および第2棒に付与される。よって、軸方向他端側の自由振動により、第1棒および第2棒が伸張または収縮されることで、その軸方向と平行な方向に磁束密度が変化される。その結果、第1棒または第2棒の内の少なくとも一方に巻回されたコイルに電流が発生し、発電が行われる。
この場合、請求項2によれば、上述したように、加振装置を備えることで、発電素子の共振周波数(第2周波数)を、高周波数に設定できるので、可動マスとなる軸方向他端側の保持部材の質量を小さくできる。これにより、発電と無関係な部位の体積を抑制できるので、その分、電力密度(単位体積あたりから取り出せる電力)を大きくできる。また、発電素子のばね定数を大きくできる。これにより、第1棒および第2棒の軸方向長さを短くできるので、その分、発電ユニットの小型化を図ることができる。同様に、第1棒および第2棒の厚みや径を大きくできるので、磁束を漏れ難くできると共に、第1棒および第2棒の対向間隔を広くできるので、コイルの配設スペースを確保して、その巻き数を多くでき、その分、発電効率の向上を図ることができる。
ここで、請求項2によれば、永久磁石は、第1棒および第2棒の対向間に挟装され、これら第1棒および第2棒の対向間に永久磁石が挟装された状態が保持部材により保持される(即ち、永久磁石が挟装された第1棒および第2棒の軸方向一端側および他端側が保持部材によりそれぞれ保持される)ので、発電中に第1棒および第2棒と永久磁石との間に滑りが発生することを抑制でき、摩擦抵抗によるエネルギーの損失を低減できる。さらに、第1棒および第2棒と永久磁石とにより磁気ループを形成でき、従来技術のように、バックヨークを取り付ける必要がないので、その分、部品点数の削減と小型化とを図ることができる。よって、請求項2によれば、部品点数の削減と小型化とを図りつつ、発電効率の向上を図ることができる。
請求項3記載の発電素子によれば、請求項2記載の発電素子の奏する効果に加え、部品点数の削減を図りつつ、発電効率の向上を図ることができるという効果を奏する。即ち、第1棒のみにコイルが巻回され、第2棒にコイルを巻回する必要がないので、その分、部品点数の削減を図ることができる。また、第2棒にコイルを巻回する必要がなければ、第2棒にコイルを巻回するためのスペースを利用して、第1棒に巻回されるコイルの巻き数を増加させることができ、その分、発電効率の向上を図ることができる。更に、上述したように、加振装置を備えることで、発電素子の共振周波数(第2周波数)を、高周波数に設定でき、発電素子のばね定数を高くできるので、第1棒および第2棒の間隔を広くすることができる。この点からも、コイルの巻き数を増加させ、発電効率の向上を図ることができる。
ここで、第1棒と第2棒との対向間に一対の永久磁石が磁極を違えて挟装され、第1棒および第2棒と一対の永久磁石とにより磁気ループが形成される構造では、第1棒にその軸方向に沿って形成される磁界の方向と第2棒にその軸方向に沿って形成される磁界の方向とが逆方向となる。よって、発電中、第1棒および第2棒が伸張または収縮される際に、軸方向と平行な方向の磁束密度の変化が逆方向となり互いに打ち消し合う。そのため、磁束密度の変化が低減され、発電効率の低下を招く。
これに対し、請求項3によれば、第2棒(即ち、コイルが巻回されないもの)が第1棒よりも磁歪効果の低い磁歪材料から構成されるので、発電中、第1棒および第2棒が伸張または収縮される際には、第2棒における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化を少なくできる。よって、第2棒における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化によって、第1棒における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化が打ち消されることを抑制できるので、その分、発電に必要な第1棒における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化を確保して、発電効率の向上を図ることができる。
また、第2棒を、磁歪効果の高い磁歪材料から構成する必要がなく、一般的な磁性材料から構成することができるので、その分、第2棒の材料コストを削減して、発電素子全体としての製品コストを削減することができる。
請求項4記載の発電素子によれば、請求項2又は3に記載の発電素子の奏する効果に加え、加振装置の固定部材が発電素子の保持部材と一体に形成されるので、これら両部材を別体とする場合と比較して、部品点数を削減できると共に組み立て工程を簡素化して、その分、発電ユニット全体としての製品コストの削減を図ることができる。
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の第1実施形態における発電ユニット1の部分断面正面図である。図2(a)は、加振装置70の上面図であり、図2(b)は、発電素子10の上面図である。なお、図1では、永久磁石31,32の磁極の向きの理解を助けるために、その磁性を「N」「S」の表記を用いて便宜的に図中に図示する。
図1及び図2に示すように、発電ユニット1は、一対の保持部材60の内の一方の保持部材60(図1右側)が振動源SVに固定された状態で設置され、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側(図1右側)が固定端とされると共に第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側(図1左側)が自由振動可能な自由端とされる。振動源SVが振動されると、その振動により、他方の保持部材60(図1左側)が振り子運動(自由振動)されることで、発電が行われる。即ち、振り子運動に伴う曲げ変形により第1棒11には軸方向の伸張および収縮が発生し、第1棒11の軸方向と平行な方向に磁束密度が変化することで、コイル20に電流が発生し、発電が行われる。
なお、発電ユニット1の装着対象は、振動が比較的低周波数(例えば、約3Hz〜20Hz程度)となる振動源SVとされ、このような振動源SVとしては、例えば、橋や横断歩道、道路などが一例として例示される。本実施形態では、振動源SVの振動が10Hzであるとして、説明する。
発電ユニット1は、発電素子10と、その発電素子10に連結される加振装置70とを備えて構成される。発電素子10は、磁歪材料から構成される第1棒11及び第2棒12と、第1棒11に巻回されるコイル20と、第1棒11及び第2棒12の軸方向他端側(図1左側)及び軸方向一端側(図1右側)においてこれら第1棒11及び第2棒12の対向間に挟装される一対の永久磁石31,32と、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着され第1棒11及び第2棒12の対向間に永久磁石31,32が挟装された状態を保持する一対の保持部材60とを備える。
第1棒11及び第2棒12は、厚み寸法(図1上下方向寸法)に対して幅寸法(図2(b)上下方向寸法)が大きな断面長方形(即ち、断面が長辺(幅方向に沿う辺)及び短辺(厚み方向に沿う辺)を有する長方形)の長尺板状に形成される。
これら第1棒11及び第2棒12は、互いに同一形状(寸法)に形成されると共に、面積が大きな側面(即ち、断面において長辺を含む側面)同士を対向させて平行に配置される。なお、第2棒12は、第1棒11よりも磁歪効果の低い磁歪材料から構成される。本実施形態では、第1棒11が鉄ガリウム合金から、第2棒12が鉄鋼材料から、それぞれ構成される。
コイル20は、銅線から構成される線材を第1棒11に巻回したコイルである。コイル20と第1棒11との間には隙間が設けられる。永久磁石31,32は、第1棒11にバイアス磁界を付与するための部材(永久磁石)であり、それぞれ断面矩形の板状に形成される。
永久磁石31,32は、互いに磁極を違えて配設される。即ち、永久磁石31は、第1棒11に接続される面側(図1上側)にN極、第2棒12に接続される面側(図1下側)にS極が配置される一方、これとは反対に、永久磁石32は、第1棒11に接続される面側にS極、第2棒12に接続される面側にN極が配置される。
これにより、第1棒11と、第2棒12と、永久磁石31,32とにより磁気ループが形成され、永久磁石31,32の起磁力によるバイアス磁界が第1棒11に付与される。その結果、第1棒11の磁化容易方向(磁化の方向または磁化が生じ易い方向)が、第1棒11の軸方向(長手方向、図1左右方向)に設定される。
永久磁石31,32は、固定部材40に形成(凹設)された収容空間に配設される。この収容空間の内面および第1棒11及び第2棒12の側面と、永久磁石31,32の側面との対向間には隙間が形成され、この隙間に充填した接着剤により、永久磁石31,32が固定部材40に固着される。
保持部材60は、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側および他端側にそれぞれ取着される一対の固定部材40と、それら一対の固定部材40がそれぞれ圧入されるホルダ部材50とを備える。固定部材40及びホルダ部材50は、非磁性材料(本実施形態では、アルミニウム合金)から構成される。
固定部材40は、ブロック状に形成され、その一側の側面(図1紙面手前側、図2(b)下側)には、第1棒11、第2棒12及び永久磁石31,32を収容するための凹部空間が凹設される。即ち、永久磁石31,32を収容する凹部空間が、固定部材40の略中央部に正面視矩形状に凹設され、その永久磁石31,32を収容する凹部空間を上下方向(図1上下方向)から挟んで、第1棒11及び第2棒12を収容する溝状の凹部空間が左右方向(図1左右方向)に延設される。
第1棒11及び第2棒12を収容する凹部空間の対向間には、永久磁石31,32を収容する凹部空間に隣接する位置に、正面視矩形状の規制部41が突設される。規制部41の厚み寸法(図1上下方向寸法)は、永久磁石31,32の厚み寸法(図1上下方向寸法)よりも大きくされる。
固定部材40の上下(図1上側および下側)の側面は、固定部材40をホルダ部材50へ圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成される。これら上下の傾斜面の傾斜(勾配)によって、固定部材40は、図1に示す正面視において、第1棒11及び第2棒12の軸方向中央から離間するに従って先細りとなる形状に形成される。
ホルダ部材50は、略直方体形状のベース部51と、そのベース部51から突設されると共に所定間隔を隔てて互いに対向する被圧入対向部52,53とを備え、被圧入対向部52,53の対向間に固定部材40を保持する。
被圧入対向部52,53の互いに対向する面は、固定部材40をホルダ部材50へ圧入する際の圧入方向に沿って傾斜する傾斜面として形成される。これら対向する面の傾斜(勾配)によって、その対向間隔は、ベース部51へ向かうに従って狭くなる。なお、一対のホルダ部材50の一方(図1右側)のホルダ部材50には、被圧入対向部52の上側の側面に、締結孔52aが凹設される。
ここで、発電素子10は、その振り子運動(自由振動)の共振周波数(第2周波数)が、加振装置70における振り子運動(自由振動)の共振周波数(第1周波数)よりも高い値(高周波数)に設定され、本実施形態では、第2周波数が150Hzに設定される。なお、発電素子10における自由振動の共振周波数(第2周波数)は、約100Hz〜200Hzに設定されることが好ましい。
加振装置70は、質量体(可動マス)として構成されるマス部材71と、振動源SV側に固定される固定部材72と、それらマス部材71及び固定部材72の間に介設され、固定部材72に対してマス部材71を自由振動可能に弾性支持する弾性支持部材73とを備え、これら各部材71〜73が鉄鋼材料から一体に形成される。
マス部材71は、直方体形状に形成され、発電素子10の他方の保持部材60(図1左側であって、自由振動可能な自由端側)に対して所定間隔を隔てつつ対向配置される。即ち、マス部材71は、その下面(図1下側面)を他方の保持部材60の上面(図1上側面)に衝突可能な位置に配置される。
なお、マス部材71は、保持部材60(ホルダ部材50のベース部51)の端面よりも外方(弾性支持部材73と反対側、図1左側)に突出する位置に配置される。これにより、保持部材60の最端部(図1左端)にマス部材71を衝突させることができるので、発電素子10に自由振動を効率的に発生させることができる。
固定部材72は、直方体形状に形成され、発電素子10の一方の保持部材60(図1右側、即ち、振動源SVに固定される固定端側)に締結ボルトbtにより締結固定される。即ち、固定部材72には、挿通孔72aが貫通形成されており、締結ボルトbtは、固定部材72の挿通孔72aに挿通され、一方の保持部材60の締結孔52aに締結される。
弾性支持部材73は、第1棒11及び第2棒12と同様に、厚み寸法に対して幅寸法が大きな断面長方形の長尺板状に形成され、面積が大きな側面(即ち、断面において長辺を含む側面)を対向させて第1棒11及び第2棒12に平行に配置される。弾性支持部材73が撓み変形されることで、マス部材71が固定部材72に対して振り子運動(自由振動)される。即ち、振動源SVからの振動の入力により加振装置70が共振されると、マス部材71が発電素子10の他方の保持部材60に周期的に衝突される。
ここで、加振装置70は、その振り子運動(自由振動)の共振周波数(第1周波数)が、発電素子10における振り子運動(自由振動)の共振周波数(第2周波数)よりも低い値(低周波数)に設定され、本実施形態では、第1周波数が10Hzに設定される。即ち、加振装置70における自由振動の共振周波数(第1周波数)は、振動源SVの振動の周波数に一致される。
以上のように構成された発電ユニット1によれば、第1棒11及び第2棒12の対向間に一対の永久磁石31,32が磁極を違えて挟装されるので、第1棒11及び第2棒12と一対の永久磁石31,32とにより磁気ループが形成されると共に、永久磁石31,32の起磁力によるバイアス磁界が第1棒11及び第2棒12に付与される。よって、振り子運動(自由振動)により、第1棒11及び第2棒12が伸張または収縮されることで、その軸方向(図1左右方向)と平行な方向に磁束密度が変化される。その結果、第1棒11に巻回されたコイル20に電流が発生し、発電が行われる。
この場合、発電素子10における振り子運動(自由振動)の共振周波数である第2周波数を、振動源SVの振動の周波数に一致させ(例えば、一方の保持部材60の質量、第1棒11及び第2棒12の軸方向長さや厚み寸法を調整する)、振動源SVの振動により発電素子10を共振させることで、発電を行っても良い。
しかしながら、この方法では、効率的に発電を行うことができない。つまり、発電圧Vは、V=2π・f・B・N・Sにより決定され(f:周波数、B:磁束密度の変化量、N:コイルの巻き数、S:磁歪棒の断面積)、極力、周波数fを大きな値(高周波数)として、発電圧を高くすることが、効率的な発電を行うために必要となるところ、振動源SVは、その振動が例えば約3Hz〜20Hzと低周波数であるため、その低周波数の振動に発電素子10を共振させても、発電圧が低く、効率的な発電を行うことができない。
これに対し、発電ユニット1によれば、加振装置70における振り子運動(自由振動)の共振周波数である第1周波数(本実施形態では10Hz)が、振動源SVの振動の周波数に一致されるので、加振装置70を共振させ、マス部材71を発電素子10の他方(自由端側)の保持部材60に周期的に衝突させることができ、これにより、発電素子10に自由振動を発生させ、発電素子10による発電を効率的に行わせることができる。
即ち、発電素子10における振り子運動(自由振動)の共振周波数(第2周波数)を、振動源SVの振動(即ち、低周波数の振動)に合わせる必要がなく、高周波数(本実施形態では150Hz)に設定できるので、その分、発電素子10の発電圧を確保した状態で、発電を行うことができる。その結果、振動が比較的低周波数の振動源SVにおいて、発電を効率的に行うことができる。
また、発電素子10の共振周波数(第2周波数)を高周波数に設定できれば、質量体(可動マス)として機能する他方(自由端側、図1左側)の保持部材60の質量を小さくできる。これにより、発電と無関係な部位の体積を小さくできるので、その分、電力密度(単位体積あたりから取り出せる電力)を大きくできる。
同様に、発電素子10の共振周波数(第2周波数)を高周波数に設定できれば、発電素子10のばね定数を大きくできる。これにより、第1棒11及び第2棒12の軸方向長さを短くできるので、その分、発電ユニット1の小型化を図ることができる。また、第1棒11及び第2棒12の厚み寸法や幅寸法を大きくできるので、磁束を漏れ難くできる。さらに、第1棒11及び第2棒12の対向間隔を広くできるので、コイル20の配設スペースを確保して、その巻き数を多くすることができる。その結果、発電効率の向上を図ることができる。
なお、発電ユニット1の発電素子10によれば、第1棒11のみにコイル20が巻回され、第2棒12にコイル20を巻回する必要がないので、その分、部品点数の削減を図ることができる。また、第2棒12にコイル20を巻回する必要がなければ、本来、第2棒12にコイル20を巻回するためのスペースを利用して、第1棒11に巻回されるコイル20の巻き数を増加させることができる。即ち、この構成も、発電効率の向上に寄与する。
ここで、発電ユニット1の構造では、第1棒11にその軸方向(図1左右方向)に沿って形成される磁界の方向と第2棒12にその軸方向(図1左右方向)に沿って形成される磁界の方向とが逆方向となる。よって、発電中、第1棒11及び第2棒12が伸張または収縮される際に、軸方向と平行な方向の磁束密度の変化が逆方向となり互いに打ち消し合う。そのため、磁束密度の変化が低減され、発電効率の低下を招く。
この場合、発電ユニット1によれば、第2棒12(即ち、コイルが巻回されない磁歪棒)が第1棒11よりも磁歪効果の低い磁歪材料から構成されるので、発電中、第1棒11及び第2棒12が伸張または収縮される際には、第2棒12における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化を少なくできる。よって、第2棒12における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化によって、第1棒11における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化が打ち消されることを抑制できるので、その分、発電に必要な第1棒11における軸方向と平行な方向の磁束密度の変化を確保して、発電効率の向上を図ることができる。
また、第2棒12を、磁歪効果の高い磁歪材料から構成する必要がなく、一般的な磁性材料(本実施形態では鉄鋼材料)から構成することができるので、第1棒11と比較して、第2棒12の材料コストを削減でき、その分、発電ユニット1全体としての製品コストを削減できる。
次いで、図3を参照して、第2実施形態における発電ユニット201について説明する。第1実施形態では、弾性支持部材73が板ばねとして形成される場合を説明したが、第2実施形態における弾性支持部材273は、コイルスプリングとして形成される。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図3は、第2実施形態における発電ユニット201の正面図である。なお、第2実施形態における発電素子210は、一方の保持部材260(ホルダ部材250)の構成が、第1実施形態における保持部材60(ホルダ部材50)と異なる点を除き、他の構成は第1実施形態における発電素子10と同一であるので、その説明は省略する。
図3に示すように、第2実施形態における発電ユニット201は、発電素子210と、加振装置270とを備える。発電素子210の一方の保持部材260は、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側に取着される固定部材40と、その固定部材40が圧入されるホルダ部材250とを備える。なお、ホルダ部材250は、非磁性材料(本実施形態では、アルミニウム合金)から構成される。
ホルダ部材250は、ベース部251及び被圧入対向部252が上方(図3上側)へ向けて延設されることで、第1実施形態におけるホルダ部材50のベース部51及び被圧入対向部52よりも高さ寸法が大きくされ、被圧入対向部252の側面からは、張出部254が張り出し形成される。
加振装置270は、質量体(可動マス)として構成されるマス部材271と、そのマス部材271とホルダ部材250の張出部254との間に介設され、張出部254に対してマス部材271を自由振動可能に弾性支持する弾性支持部材273とを備える。
マス部材271は、直方体形状に形成され、発電素子210の他方の保持部材60(図3左側であって自由振動可能な自由端側)に対して所定間隔を隔てつつ対向配置される。即ち、マス部材271は、その下面(図3下側面)を他方の保持部材60の上面(図3上側面)に衝突可能な位置に配置される。
弾性支持部材273は、鉄鋼材料からなるコイルスプリングとして形成され、マス部材271をホルダ部材250の張出部254の下面側に吊持する。弾性支持部材273が伸縮変形されることで、マス部材271がホルダ部材250の張出部254に対して上下方向(図3上下方向)に自由振動される。即ち、振動源SVからの振動の入力により加振装置270が共振されると、マス部材271が発電素子210の他方の保持部材60に周期的に衝突される。
このように、弾性支持部材273がコイルスプリングとして形成されることで、発電ユニット201の設置環境(振動源SVの振動の周波数)に応じて、コイルスプリングを交換して、弾性支持部材273のばね定数(即ち、加振装置270の共振周波数(第1周波数))を変更できるので、設置環境に応じた調整を容易に行うことができると共に、より効率的な発電が可能となる。
なお、加振装置270及び発電素子210の共振周波数(第1周波数および第2周波数)は、第1実施形態の場合と同様に設定されるので、その説明は省略する。
第2実施形態における発電ユニット201によれば、第1実施形態における発電ユニット1と同様に、発電素子210の共振周波数(第2周波数)を高い周波数に設定しておきつつ、振動源SVの振動により加振装置270を共振させ、マス部材271を発電素子210の他方(自由端側)の保持部材60に周期的に衝突させることで、発電素子210に自由振動を発生させ、発電素子210による発電を効率的に行わせることができる。
ここで、第1実施形態における発電ユニット1では、加振装置70がマス部材71、固定部材72及び弾性支持部材73を備えて構成されたが、第2実施形態における発電ユニット201の加振装置270は、マス部材271及び弾性支持部材273のみを備えて構成され、固定部材が省略される。
言い換えると、加振装置270の「固定部材」に相当する張出部254が、発電素子210の保持部材260(具体的には、ホルダ部材250)と一体に形成される。これにより、これら加振装置270の固定部材と発電素子210の保持部材260とを別体とする場合と比較して、部品点数を削減できると共に組み立て工程を簡素化でき、その分、発電ユニット201全体としての製品コストの削減を図ることができる。
次いで、図4を参照して、第3実施形態における発電ユニット301について説明する。第1実施形態では、弾性支持部材73が板ばねとして形成される場合を説明したが、第3実施形態における弾性支持部材373は、ゴム状弾性体として形成される。なお、上述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図4は、第3実施形態における発電ユニット301の正面図である。なお、第3実施形態における発電素子310は、一方の保持部材360(ホルダ部材350)の構成が、第1実施形態における保持部材60(ホルダ部材50)と異なる点を除き、他の構成は第1実施形態における発電素子10と同一であるので、その説明は省略する。
図4に示すように、第3実施形態における発電ユニット301は、発電素子310と、加振装置370とを備える。発電素子310の一方の保持部材360は、第1棒11及び第2棒12の軸方向一端側に取着される固定部材40と、その固定部材40が圧入されるホルダ部材350とを備える。なお、ホルダ部材350は、非磁性材料(本実施形態では、アルミニウム合金)から構成される。
ホルダ部材350は、ベース部351及び被圧入対向部352が上方(図4上側)へ向けて延設されることで、第1実施形態におけるホルダ部材50のベース部51及び被圧入対向部52よりも高さ寸法が大きくされ、被圧入対向部352の側面からは、張出部354が張り出し形成される。
加振装置370は、質量体(可動マス)として構成されるマス部材371と、そのマス部材371とホルダ部材350の張出部354との間に介設され、張出部354に対してマス部材371を自由振動可能に弾性支持する弾性支持部材373とを備える。
マス部材371は、立方体形状に形成され、発電素子310の他方の保持部材60(図4左側であって、自由振動可能な自由端側)に対して所定間隔を隔てつつ対向配置される。即ち、マス部材371は、その下面(図4下側面)を他方の保持部材60の上面(図3上側面)に衝突可能な位置に配置される。
弾性支持部材373は、断面円形のゴム状弾性体(加硫成形体)として形成され、マス部材371をホルダ部材250の張出部254の側端面(図4左側面)に支持する。弾性支持部材373が撓み変形されることで、マス部材371がホルダ部材350の張出部354に対して振り子振動(自由振動)される。即ち、振動源SVからの振動の入力により加振装置370が共振されると、マス部材371が発電素子310の他方の保持部材60に周期的に衝突される。
マス部材371は、保持部材60(ホルダ部材50のベース部51)の端面よりも外方(弾性支持部材373と反対側、図4左側)に突出する位置に配置される。これにより、保持部材60の最端部(図4左端)にマス部材371を衝突させることができるので、発電素子310に自由振動を効率的に発生させることができる。
ここで、弾性支持部材373がゴム状弾性体として形成されることで、発電ユニット301の設置環境(振動源SVの振動の周波数)に応じて、ゴム硬度などを調整して、弾性支持部材373のばね定数(即ち、加振装置370の共振周波数(第1周波数))を変更できるので、設置環境に応じた調整を容易に行うことができると共に、より効率的な発電が可能となる。
なお、加振装置370及び発電素子310の共振周波数(第1周波数および第2周波数)は、第1実施形態の場合と同様に設定されるので、その説明は省略する。
第3実施形態における発電ユニット301によれば、第1実施形態における発電ユニット1と同様に、発電素子310の共振周波数(第2周波数)を高い周波数に設定しておきつつ、振動源SVの振動により加振装置370を共振させ、マス部材371を発電素子310の他方(自由端側)の保持部材60に周期的に衝突させることで、発電素子310に自由振動を発生させ、発電素子310による発電を効率的に行わせることができる。
また、発電ユニット301によれば、第2実施形態の場合と同様に、加振装置370の「固定部材」に相当する張出部354が、発電素子310の保持部材360(具体的には、ホルダ部材350)と一体に形成される。これにより、これら加振装置370の固定部材40と発電素子310の保持部材360とを別体とする場合と比較して、部品点数を削減できると共に組み立て工程を簡素化でき、その分、発電ユニット301全体としての製品コストの削減を図ることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記各実施形態では、保持部材60,260,360が固定部材40とホルダ部材50,250,350との2部材から構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、固定部材40とホルダ部材50,250,350とを一体に形成しても良い。なお、この場合には、圧入による第1棒11等の挟圧保持作用を得られないため、第1棒11等の保持部材60,260,360への固着を、接着剤による接着固定で行う。
上記各実施形態では、第1棒11のみにコイル20を巻回する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるのもではなく、第1棒11と第2棒12との両者にそれぞれコイル20を巻回しても良い。なお、この場合には、第1棒11及び第2棒12を同じ磁歪材料から構成する(即ち、第2棒12を第1棒11よりも磁歪効果の低い材料で構成する必要はない)。
上記各実施形態では、発電ユニット1,201,301を構成する発電素子として、発電素子10,210,310を採用する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、「磁歪材料から構成される磁歪棒と、その磁歪棒に巻回されるコイルとを備え、磁歪棒の軸方向一端側が振動源側に固定される固定端とされると共に軸方向他端側が自由振動可能な自由端とされ、磁歪棒が軸方向に伸張または収縮されることで、逆磁歪効果により発電を行うもの」であれば、他の発電素子を採用しても良い。他の発電素子としては、例えば、図5に示す発電素子901が例示される。
上記第1実施形態では、加振装置70のマス部材71、固定部材72及び弾性支持部材73が一体に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるのもではなく、これらマス部材71、固定部材72及び弾性支持部材73を別体に形成しても良い。これにより、発電ユニット1の設置環境(振動源SVの振動の周波数)に応じて、マス部材71及び弾性支持部材73を変更して、加振装置70の共振周波数(第1周波数)を変更できるので、設置環境に応じた調整を容易に行うことができると共に、より効率的な発電が可能となる。
上記各実施形態では、マス部材71,271,371が保持部材60(ホルダ部材50)に直接衝突する場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、これら両者の間にゴムシートなどの緩衝材を介在させても良い。これにより、異音の防止と耐久性の向上とを図ることができる。
上記各実施の形態では、加振装置70,270,370が1のマス部材71,271,371を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、加振装置70,270,370が複数のマス部材71,271,371を備えていても良い。この場合には、各マス部材71,271,371が個別に自由振動可能となるように、複数の弾性支持部材73,273,373により弾性支持すると共に、これら複数の弾性支持部材73,273,373をそれぞれ異なるばね定数に設定する(これに代えて、或いは、これに加えて、各マス部材71,271,371の質量をそれぞれ異ならせる)。これにより、振動源SVの振動の周波数が変化しても、複数のマス部材71,271,371の内のいずれかのマス部材71,271,371を発電素子10,210,310の保持部材60に衝突させて、発電素子10,210,310に自由振動を発生させることができる。よって、加振装置70,270,370の共振を利用して、発電素子10,210,310による発電を行える周波数帯域を拡大できる。
上記第1実施の形態では、発電素子10と加振装置70とが連結(締結固定)されて、発電ユニット1が構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、発電ユニット1は、発電素子10と加振装置70とが非連結であっても良い。即ち、発電素子10の一方の保持部材60と加振装置70の固定部材72とをそれぞれ個別に振動源SVに固定しても良い。
上記各実施形態では、ホルダ部材50,250,350の被圧入対向部53の下面が振動源SVに固定される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、ホルダ部材50,250,350のいずれの部分が振動源SVに固定されても良い。また、固定方法も適宜選択することができる。例えば、接着固定、溶接固定、締結固定などが例示される。