JP5929452B2 - 遷移金属含有ゼオライト - Google Patents
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Description
特許文献4にも、遷移金属原料をゼオライト合成工程のゲルに導入することで遷移金属を含むアルミノホスフェートゼオライトを合成しているが、合成されたゼオライトは熱安定性が低い。
また、これら方法で合成された遷移金属を含むアルミノホスフェートゼオライトは、遷移金属の導入量は高いが、ゼオライトの結晶性や安定性が低い欠点がある。
[7] 遷移金属Mの強度の変動係数が29%以下であることを特徴とする[6]に記載の遷移金属含有ゼオライト。
[8] ケイ素原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比が0.93以上であることを特徴とする[1]ないし[7]のいずれかに記載の遷移金属含有ゼオライト。
[9] [1]ないし[8]のいずれかに記載のゼオライトを含む自動車排ガス処理触媒。
従って、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法については後述するが、後述の製造方法は、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法の代表例であって、本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法は後述の製造方法によって何ら制限されるものではない。
<ゼオライトの骨格構造>
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、ゼオライトの骨格構造に、少なくともリン原子及びアルミニウム原子を含むアルミノホスフェートゼオライトに遷移金属を含有させたものであり、好ましくはゼオライトの骨格構造に更にケイ素原子をも含むものである。特に、本発明の遷移金属含有ゼオライトは、ゼオライト骨格構造のアルミニウム原子、リン原子、及びケイ素原子のモル比が下記の存在割合のゼオライトに、以下の割合で遷移金属Mを含む遷移金属含有シリコンアルミノホスフェートゼオライトであることが好ましい。
0.001≦x≦0.3 ・・・(I)
(式中、xは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するケイ素原子のモル比を示す)
0.3≦y≦0.6 ・・・(II)
(式中、yは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比を示す)
0.3≦z≦0.6 ・・・(III)
(式中、zは骨格構造中のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対するリン原子のモル比を示す)
0.9≦y/(x+z)≦1.5 ・・・(IV)
(式中、y/(x+z)は骨格構造中のケイ素原子とリン原子の合計に対するとアルミニウム原子のモル比を示す)
さらに、yは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下である。yの値が上記下限値より小さい又は上記上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
さらに、zは通常0.3以上、好ましくは0.35以上、より好ましくは0.4以上であり、通常0.6以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下である。zの値が上記下限値より小さいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向があり、zの値が上記上限値より大きいと、ゼオライト結晶化しにくい場合がある。
遷移金属Mとしては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等の周期表第3−12族の遷移金属が挙げられ、好ましくは鉄、コバルト、銅などの周期表第8、9、11族、より好ましくは8、11族の遷移金属である。ゼオライトに含有させる遷移金属は、これらの1種であってもよく、2種以上の遷移金属を組み合わせてゼオライトに含有させてもよい。これらの遷移金属のうち、特に好ましくは、鉄及び/又は銅であり、とりわけ好ましくは銅である。
W=W1/(1−WH2O) ・・・(V)
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で遷移金属Mの元素マッピングを行ったとき、金属元素Mの強度の変動係数が通常33%以下であることを特徴とし、この変動係数は、好ましくは31%以下であり、さらに好ましくは29%以下である。
本発明の遷移金属含有ゼオライトにおける遷移金属Mの強度の変動係数の下限は特に制限はない。遷移金属Mの強度の変動係数が小さいほど、ゼオライト中の遷移金属Mがより均一にSiに由来する交換サイトに分散していることを表す。遷移金属Mの強度の変動係数が上記上限値を超過すると、ゼオライト中の遷移金属Mの分散性が悪くなり、遷移金属含有ゼオライトの触媒活性が不十分である、或はゼオライトの安定性が低い、という問題を生じる。
本発明の遷移金属含有ゼオライトのBET比表面積の上限は特に制限はないが、下限については500m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは550m2/g以上、特に好ましくは600m2/g以上である。BET比表面積が上記下限値未満ではゼオライトの結晶性が低く、触媒活性などの性能が不十分となる傾向がある。
本発明の遷移金属含有ゼオライトを自動車排気浄化触媒や水蒸気吸着材として用いる場合には、本発明の遷移金属含有ゼオライトは、以下の構造及びフレームワーク密度を有することが好ましい。
ゼオライトのフレームワーク密度が上記下限値未満では、構造が不安定となる場合があったり、耐久性が低下する傾向があり、一方、上記上限値を超過すると吸着量、触媒活性が小さくなる場合があったり、触媒としての使用に適さない場合がある。
本発明の遷移金属含有ゼオライトの粒子径について特に限定はないが、通常0.1μm以上であり、さらに好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、通常30μm以下であり、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。
なお、本発明における遷移金属含有ゼオライトの粒子径とは、電子顕微鏡で遷移金属含有ゼオライトを観察した際の、任意の10〜30点のゼオライト粒子の一次粒子径の平均値をいう。
本発明の遷移金属含有ゼオライトの製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法で製造することができる。
即ち、まず、ケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原子原料及びポリアミンを含む水性ゲルを調製する。ここで、ポリアミンは所望の骨格構造(例えば8員環構造)を有するゼオライトを得るためのテンプレートとしても働くため、水性ゲルの調製にはテンプレート(SDA(Structure−directing agent);構造規定剤)は使用しなくても良いが、所望の骨格構造を有するゼオライトを得るために、ポリアミンとは別に公知のテンプレートを用いてもよい。次いで、この水性ゲルを用いて水熱合成を行った後、ポリアミンや他のテンプレートを除去して本発明の遷移金属含有ゼオライトを得る。
例えば、ゼオライトを合成する際に、遷移金属がポリアミンと強く相互作用するので、遷移金属がゼオライト骨格元素と反応しにくくなる。すわなち、遷移金属がゼオライトの骨格に入りにくく、ゼオライトの細孔だけに存在することができる。このため、従来法で合成された遷移金属含有アルミノホスフェートゼオライトとは異なり、遷移金属によりゼオライト骨格元素が置き換えられにくく、遷移金属をゼオライト細孔に均一に分散させることができると考えられる。
まず、本発明に係る水性ゲルの調製に用いられる各原料について説明する。
アルミニウム原子原料は特に限定されず、通常、擬ベーマイト、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等のアルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、アルミナゾル、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。取り扱いが容易な点及び反応性が高い点で、アルミニウム原子原料としては擬ベーマイトが好ましい。
ケイ素原子原料は特に限定されず、通常、fumed(ヒュームド)シリカ、シリカゾル、コロイダルシリカ、水ガラス、ケイ酸エチル、ケイ酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。高純度で、反応性が高い点で、ケイ素原子原料としてはfumedシリカが好ましい。
リン原子原料は、通常、リン酸であるが、リン酸アルミニウムを用いてもよい。リン原子原料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
遷移金属原子原料は特に限定されず、通常、前述の遷移金属Mの硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩、ペンタカルボニル、フェロセン等の有機金属化合物などが使用される。これらのうち、水に対する溶解性の観点からは無機酸塩、有機酸塩が好ましい。場合によってはコロイド状の酸化物、あるいは微粉末状の酸化物を用いても良い。
本発明で用いるポリアミンは、1分子中に2つ以上のアミノ基を有するポリアミン(環状、鎖状(直鎖状、分岐鎖状を含む)であり、中でも、一般式H2N−(CnH2nNH)x−H(式中、nは2〜6の整数、xは1〜10の整数)で表される、2以上のNH基を含む鎖が延長されたポリアミン化合物が好ましい。
本発明に係る水性ゲルには、ゼオライト製造の際のテンプレートとして一般に使用される、アミン、イミン、四級アンモニウム塩等を更に含んでいてもよい。
(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2)アルキル基を有するアミン(アルキルアミン)
(3)シクロアルキル基を有するアミン(シクロアルキルアミン)
及び
(4)テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド
からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。これらは入手しやすく安価であり、さらに、製造されたシリコンアルミノホスフェートゼオライトの取り扱いが容易で構造破壊も起きにくいという点において好適である。中でも(1)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、(2)アルキルアミン、及び(3)シクロアルキルアミンが好ましく、これら3つの群のうち、2つ以上の群から各群につき1種以上の化合物を選択して用いることがより好ましい。
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が相互に隣り合わないものが好ましい。
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基であって、アルキルアミンの1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。
また、アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。
アルキルアミンのアルキル基の炭素数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素数の合計は5以上30以下がより好ましい。
また、アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
シクロアルキルアミンとしては、アルキル基の炭素数が4以上10以下であるものが好ましく、中でもシクロヘキシルアミンが好ましい。シクロアルキルアミンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドとしては、4個のアルキル基が炭素数4以下のアルキル基であるテトラアルキルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水性ゲルは、上述のケイ素原子原料、アルミニウム原子原料、リン原子原料、遷移金属原子原料、及びポリアミン、必要に応じて用いられるその他のテンプレートを水と混合して調製される。
なお、遷移金属原子原料とポリアミンを予め混合すると、ポリアミンによる遷移金属原子原料の錯体化による安定化の効果が有効に発揮される。
また、P2O5/Al2O3の値は、通常0.6以上、好ましくは0.7以上、さらに好ましくは0.8以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、さらに好ましくは1.1以下である。
MaOb/Al2O3(ただし、a及びbはそれぞれ遷移金属MとOの原子比を表す)の値は、通常0.01以上、好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、通常0.8以下、好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
P2O5/Al2O3が上記下限よりも小さいと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりし、上記上限よりも大きいと同様に結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりする。
水熱合成によって得られるゼオライトの組成は、水性ゲルの組成と相関があり、従って、所望の組成のゼオライトを得るためには、水性ゲルの組成を上記の範囲において適宜設定すればよい。
テンプレートを使用する場合は、水性ゲル中のポリアミンとテンプレートの総量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl2O3に対するポリアミン及びテンプレートの合計のモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上であって、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下である。
ポリアミンとテンプレートの総量が上記下限より少ないと結晶化しにくかったり、水熱耐久性が不十分であったりし、上記上限より多いとゼオライトの収率が不十分である。
また、ポリアミンは、遷移金属原子原料の酸化物換算のMaObに対するポリアミンのモル比で、通常0.1以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは0.8以上であって、通常10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下となる量で用いることが好ましい。
水性ゲル中のポリアミンの量が上記下限よりも少ないとポリアミンを用いることによる本発明の効果を十分に得ることができず、上記上限よりも多いとゼオライトの収率が不十分である。
テンプレートを使用しない場合は、上記と同様の理由から、水性ゲル中のポリアミンの量は、水性ゲル中のアルミニウム原子原料の酸化物換算のAl2O3に対するポリアミンのモル比で、通常0.2以上、好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1以上、通常4以下、好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下であって、遷移金属原子原料の酸化物換算のMaObに対するポリアミンのモル比で、通常1以上、好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上で、通常50以下、好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下となる量で用いることが好ましい。
前記2つ以上の群から各群につき1種以上選択されたテンプレートを混合する順番は特に限定されず、テンプレート同士を混合した後その他の物質と混合してもよいし、各テンプレートをそれぞれ他の物質と混合してもよい。
水熱合成は、上記のようにして調製された水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、攪拌又は静置状態で所定温度を保持する事により行われる。
なお、遷移金属Mが銅であって、銅原子原料として酢酸銅を使用した場合、合成時間を長くする(30時間以上)と、得られる遷移金属含有ゼオライトの性能が良くなる傾向にあるので好ましい。
水熱合成後、生成物であるポリアミン及び必要に応じて用いられたテンプレート(以下、ポリアミン又はポリアミンとテンプレートとを「テンプレート等」と称す。)を含有したゼオライトを水熱合成反応液より分離する。水熱合成反応液からのテンプレート等を含有したゼオライトの分離方法は特に限定されない。通常、濾過又はデカンテーション等により分離し、水洗後、室温から150℃以下の温度で乾燥して生成物であるテンプレート等を含有したゼオライトを得ることができる。
好ましくは製造性の面で焼成によるテンプレート等の除去が好ましい。この場合、焼成温度については、好ましくは、400℃から900℃、より好ましくは450℃から850℃、さらに好ましくは500℃から800℃である。
本発明の遷移金属含有ゼオライトの用途としては特に制限はないが、本発明の遷移金属含有ゼオライトは、耐水性、高温水熱耐久性、及び水蒸気繰り返し吸脱着耐久性が高く、触媒活性にも優れることから、自動車排気浄化触媒及び水蒸気吸着材として特に好適に用いられる。
本発明の遷移金属含有ゼオライトを自動車排気浄化触媒として用いる場合、本発明の遷移金属含有ゼオライトはそのまま粉末状で用いてもよく、また、シリカ、アルミナ、粘土鉱物等のバインダーと混合し、造粒や成形を行って使用することもできる。また、自動車排気浄化触媒として用いる場合、塗布法や、成形法を用いて所定の形状に成形して用いることもでき、好ましくはハニカム状に成形して用いることができる。
本発明の遷移金属含有ゼオライトは、優れた水蒸気の吸・脱着特性を示す。
その吸・脱着特性の程度は、条件により異なるが、一般的に、低温から、通常水蒸気の吸着が困難な高温領域まで吸着可能であり、また高湿度状態から、通常水蒸気の吸着が困難な低湿度領域まで吸着可能であり、かつ比較的低温の100℃以下で脱着が可能である。
以下の方法で調製した試料を用いて、以下の条件で測定した。
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
<測定条件>
X線源:Cu−Kα線
出力設定:40kV・30mA
測定時光学条件:
発散スリット=1°
散乱スリット=1°
受光スリット=0.2mm
回折ピークの位置:2θ(回折角)
測定範囲:2θ=3〜50度
スキャン速度:3.0°(2θ/sec)、連続スキャン
ゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子と遷移金属銅原子における元素分析は、試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析によりゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子とCuの含有量W1(重量%)を求める。或は、試料を打錠成形した後蛍光X線分析法(XRF)により、ゼオライト骨格構造のケイ素、アルミニウム、リン原子とCuの含有量W1(重量%)を求める。
一方、熱重量分析(TG)により試料中の水分WH2O(重量%)を求め、下記式(V)で、無水状態下での遷移金属含有ゼオライト中の骨格構造の各原子とCuの含有量W(重量%)を算出した。
W=W1/(1−WH2O) ・・・(V)
大倉理研社製、全自動粉体比表面積測定装置(AMS1000)を用いて、流通式一点法により測定を行った。
調製したゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。整粒したゼオライト試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。ゼオライト層に下記表1の組成のガスを空間速度SV=100000/hで流通させながら、ゼオライト層を加熱した。150℃、175℃、200℃、300℃、400℃、500℃の各温度において、出口NO濃度が一定となったとき、
NO浄化率(%)
={(入口NO濃度)―(出口NO濃度)}/(入口NO濃度) ×100
の値によって、ゼオライト試料の窒素酸化物除去活性を評価した。
調製したゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した後、以下の水蒸気処理による水熱耐久試験を行った。水熱耐久試験を行ったゼオライト試料について、上記と同様に触媒活性(水熱耐久後)の評価を行った。
<水熱耐久試験>
整粒したゼオライト試料を800℃、10体積%の水蒸気に、空間速度SV=3000/hの雰囲気下、5時間通じた。
調製したゼオライト試料を以下の水蒸気繰り返し吸脱着耐久性試験を行った。水蒸気繰り返し吸脱着耐久性試験を行ったゼオライト試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した後、上記と同様に触媒活性(90-60-5耐久後)の評価を行った。
実装条件に近い繰り返し吸脱着試験条件として、図1に示す試験装置を用いて、触媒の「90℃-60℃-5℃の水蒸気繰り返し吸脱着試験」を実施した。
図1において、1は60℃に保持された恒温室、2は90℃に保持された恒温室、3は5℃に保持された恒温室である。恒温室1内には飽和水蒸気の容器4が設けられ、恒温室2内には試料を保持した真空容器5が設けられ、恒温室3内には水だめとなる容器6が設けられている。容器4と真空容器5とはバルブaを有する配管を介して連結されており、容器6と真空容器5はバルブbを有する配管を介して連結されている。
試料を90℃に保たれた真空容器5内に保持し、5℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度1%)と60℃の飽和水蒸気雰囲気(90℃の相対湿度28%)にそれぞれ90秒曝す操作を繰返す。すなわち、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝す操作は、図1中、バルブaを開く(バルブbは閉じたまま)。この状態で90秒保持した後、バルブaを閉じると同時にバルブbを開ける。このとき、60℃の飽和水蒸気雰囲気に曝されたときに試料に吸着した水は、5℃の飽和水蒸気雰囲気で一部が脱着し、5℃に保った水だめの容器6に移動する。この状態で90秒保持する。
以上の吸着、脱着を2000回繰り返し行う。
試験後回収した試料について上記触媒活性の評価方法の条件に基づきNO浄化率を評価した。
車などのディーゼルエンジン排ガスは5〜15体積%の水を排ガス中に含む。車では走行中、排ガスが200℃以上の高温となり、相対湿度は5%以下に低下し、触媒は水分を脱着した状態になる。しかし、停止時に90℃近辺で相対湿度が15%以上となり、触媒は水を吸着する。本条件により、90℃の吸着時には相対湿度が28%となる。この実条件に近い状態での繰り返し耐久性が実装時には重要となる。
調製したゼオライト試料を、樹脂に包埋して断面ミクロトーム(ダイヤ刃)にて切削を行った後、Au蒸着を行って作製したサンプルについて、以下の条件で測定を行った。
装置:JEOL shaseiJXA−8100
電子銃:W エミッター,加速電圧15kV,照射電流20nA
元素マッピング:分析面積3000倍か4000倍の視野相当
収集時間:100msec/point
対象元素(分光結晶):Si(PET),Cu(LIFH)
遷移金属Mを3重量%以上含むアルミノホスフェートゼオライトにおいて、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)で任意の3視野で観察したサンプルのSiの強度マップよりゼオライト粒子を抽出する。画像処理には、ImageProPlus(Media Cybernetics社製)を用いた。
この処理ソフトを用いて、EPMA分析で得られたSiマップにメディアンフィルタをかけ、ノイズ処理を行った後、強度の高い部分を試料粒子として抽出した。その後、抽出した試料粒子内部におけるCuKα線強度の平均値と標準偏差を算出し、その変動係数を求めた。この画像処理によりゼオライトに分散されなかった孤立状態である銅を取り除いて、ゼオライトに分散された銅の分布状態を調べることができる。例えば、同一の視野において、Cuの強度マップに存在している粒子が、Siの強度マップに存在していない場合は孤立状態である銅として取り除く。
水20gに85重量%リン酸8.1g及び酸化銅(CuO)0.5gを加え、酸化銅が完全に溶解するまで攪拌した。その後、擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア社製)5.4gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)0.6g及び水13.4gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン3.4g、トリエチルアミン4.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)1.1gを添加した後、1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
SiO2:0.25
Al2O3:1
P2O5:0.875
CuO:0.15
テトラエチレンペンタミン:0.15
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
また、XRF分析によるCuの担持量は4.3重量%であり、ゼオライト骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.097、アルミニウム原子が0.49、リン原子が0.41であった。
ゼオライト1のXRDの測定結果を図2に示す。
また、EPMAの測定結果(SiおよびCuの元素マップ)を図3に示す。ゼオライト1において、視野3のCuの強度マップの中央にあるCu粒子がSiの強度マップに存在していないので、孤立状態である銅として取り除いた。その後、求めたCuの強度の平均変動係数は27.9%であった。
また、このゼオライト1について、触媒活性の評価とBET比表面積の測定を行った。結果を表2に示す。
水217gに75重量%リン酸95g及び酸化銅(CuO)7.2gを加え、酸化銅が完全に溶解するまで攪拌した。その後、擬ベーマイト(25重量%水含有、コンデア製)61.8gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、fumedシリカ(アエロジル200、日本アエロジル社製)16.4g及び水153.2gを加え、1時間攪拌した。その後、モルホリン39.6g、トリエチルアミン46.0gをゆっくりと加え、1時間攪拌した。さらに、テトラエチレンペンタミン(キシダ化学社製)17.2gを添加した後、1時間攪拌し、以下の組成を有する水性ゲルを得た。
SiO2:0.6
Al2O3:1
P2O5:0.8
CuO:0.2
テトラエチレンペンタミン:0.2
モルホリン:1
トリエチルアミン:1
水:50
また、XRF分析によるCuの担持量は5.1重量%であり、ゼオライト骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.16、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.34であった。
このゼオライト2のEPMAの測定結果(Si及びCuの元素マップ)を図4に示す。ゼオライト2において、Cuの強度の平均変動係数は28.4%。
また、このゼオライト2について、触媒活性の評価とBET比表面積の測定を行った。結果を表2に示す。
特開2003−183020号公報の実施例2に開示されている方法により、ゼオライト4を合成した。得られた乾燥ゼオライトをジェットミルで3〜5μmに粉砕し、その後700℃で空気気流下焼成を行い、テンプレートを除去した。得られたゼオライトのXRDを測定したところ、CHA構造(フレームワーク密度=14.6T/1,000Å3)であった。
また、ICP分析によるゼオライトの組成分析を行ったところ、骨格構造のケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.09、アルミニウム原子が0.50、リン原子が0.40であった。
また、このゼオライト4について、触媒活性の評価とBET比表面積の測定を行った。結果を表2に示す。
中国公開特許CN102259892明細書の実施例1に開示されている方法により、ゼオライト4を合成した。
XRF分析により元素分析を行ったところ、ケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.17、アルミニウム原子が0.46、リン原子が0.37であった。
また、XRF分析によるCuの担持量は5.8重量%であった。
このゼオライト4のEPMAの測定結果(Si及びCuの元素マップ)を図6に示す。ゼオライト4において、Cuの強度の平均変動係数は28.2%であった。
また、このゼオライト4について、触媒活性の評価とBET比表面積の測定を行った。結果を表2に示す。
米国公開特許US2010/0310440A1明細書の実施例6に開示されている方法により、ゼオライト5を合成した。
XRF分析により元素分析を行ったところ、ケイ素原子とアルミニウム原子とリン原子の合計に対する各原子の構成割合(モル比)は、ケイ素原子が0.12、アルミニウム原子が0.51、リン原子が0.37であった。
また、XRF分析によるCuの担持量は3.4重量%であった。
このゼオライト5のEPMA(Si及びCuの元素マップ)の測定結果を図7に示す。ゼオライト5において、Cuの強度の平均変動係数は43.1%であった。
また、このゼオライト5について、触媒活性の評価とBET比表面積の測定を行った。結果を表2に示す。
WO2010/084930A1明細書の比較例5に開示されている方法により、ゼオライト6を合成した。
このゼオライト6のXRF分析によるCuの担持量は2.8重量%であった。
また、EPMAの測定結果(Si及びCuの元素マップ)を図8に示す。ゼオライト7において、Cuの強度の変動係数は15%であった。
また、このゼオライト6について、触媒活性の評価を行った。結果を表2に示す。
これら比較例1〜4のゼオライトの低い触媒性能に対して、本発明によれば、高い遷移金属含有量、低い変動係数(高い遷移金属分散性)、かつ、ケイ素原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比が0.9以上であることによりゼオライト構造の安定性に優れた遷移金属含有アルミノホスフェートゼオライトを提供することができる。この遷移金属含有ゼオライトは、高い触媒活性及び安定性を有する。
このような本発明の遷移金属含有ゼオライトを用いることにより、ディーゼルエンジン等から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を効率よく浄化することができる。
4,6 容器
5 真空容器
Claims (10)
- 遷移金属Mを3重量%以上含むアルミノホスフェートゼオライトにおいて、該遷移金属Mが銅であり、電子プローブマイクロアナライザーで該ゼオライト中の遷移金属Mの元素マッピングを行ったとき、遷移金属Mの強度の変動係数が33%以下であり、ケイ素原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比が0.9以上であることを特徴とする遷移金属含有ゼオライト。
- 遷移金属Mを3重量%以上含み、骨格構造に8員環構造を有するアルミノホスフェートゼオライトにおいて、該遷移金属Mが銅であり、電子プローブマイクロアナライザーで該ゼオライト中の遷移金属Mの元素マッピングを行ったとき、遷移金属Mの強度の変動係数が33%以下であり、ケイ素原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比が0.9以上であることを特徴とする遷移金属含有ゼオライト。
- BET比表面積が500m2/g以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遷移金属含有ゼオライト。
- ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてフレームワーク密度が10.0T/1000Å3以上16.0T/1000Å3以下である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
- ゼオライトがInternational Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライト構造においてCHAである請求項1ないし4のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
- 遷移金属Mの強度の変動係数が31%以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
- 遷移金属Mの強度の変動係数が29%以下であることを特徴とする請求項6に記載の遷移金属含有ゼオライト。
- ケイ素原子とリン原子の合計に対するアルミニウム原子のモル比が0.93以上であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の遷移金属含有ゼオライト。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゼオライトを含む自動車排ガス処理触媒。
- 請求項1ないし8のいずれか1項に記載のゼオライトを含む水蒸気吸着材。
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