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JP5927944B2 - 圧電発音体装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば携帯電話機などに用いられる圧電発音体装置に関し、より詳細には、屈曲振動する複数の屈曲振動素子を積層してなり、該複数の屈曲振動素子積層体の屈曲振動を利用した圧電発音体装置に関する。
従来、小型化を図り得るために、圧電スピーカーが電子機器内蔵用スピーカーとして広く用いられている。
下記の特許文献1には、金属板からなる振動板の両面に、拡がり振動モードを利用した圧電素子が貼り付けられたバイモルフ構造の圧電スピーカーが開示されている。
また、下記の特許文献2には、金属板からなる振動板の片面に、拡がり振動モードを利用した圧電素子が貼り付けられているユニモルフ構造の圧電スピーカーが開示されている。特許文献2では、圧電素子の一方面に複数の分割電極が形成されており、他方面の全面に該複数の分割電極と対向する共通電極が形成されている。
特開2000−269656号公報 特開平2−141096号公報
携帯電話機などの小型の電子機器では、圧電スピーカーを内蔵させるスペースは非常に狭い。そのため、圧電スピーカーに用いられる圧電素子の寸法も小さくなる。小さな圧電素子を用いた圧電スピーカーでは、基本振動の共振周波数が高くなる。さらに、圧電スピーカーでは、圧電素子の前面と後面とに逆位相の音波が放射される。従って、圧電素子の後面側の音波を前面側に回り込ませないことが必要である。そのために、圧電素子の後面の空間を密閉し、後気室を形成するのが通常である。この後気室は閉じられた空間であるため、後気室内の空気のバネ作用の影響を受け、上記共振周波数がさらに高くなりがちであった。そのため、このような狭いスペースで圧電スピーカーを使用した場合、低周波数域の音を効率よく発生させることが困難であった。
なお、上記後気室の空気のバネ作用の影響を低めるには、圧電素子や金属板などの振動板の厚みを厚くすればよい。しかしながら、圧電素子や金属板の厚みを厚くした場合、それによっても基本振動の共振周波数が高くなる。
他方、特許文献2では、圧電素子の一方面に複数の分割電極を形成しており、それによって、デジタル入力信号の各ビット信号毎に駆動される複数の圧電振動部が構成されている。このような構造においても、狭いスペースに該圧電スピーカーを構成した場合、低域の音を効率よく発生させることは困難であった。
本発明の目的は、狭いスペースへの設置を可能とするために小型化を図った場合であっても、低周波数域の音を効率よく発生させ得る圧電発音体装置を提供することにある。
本発明に係る圧電発音体装置は、圧電体を有し、屈曲振動する板状の第1の屈曲振動素子と、前記第1の屈曲振動素子の片面に積層された樹脂層と、圧電体を有し、前記樹脂層の前記第1の屈曲振動素子が積層されている側とは反対側の面に積層されており、かつ第1の屈曲振動素子と同相で屈曲振動する第2の屈曲振動素子と、前記第1の屈曲振動素子、前記樹脂層及び前記第2の屈曲振動素子を有し、屈曲モードで振動する第1の屈曲振動部を支持するために、弾性材料からなり、該第1の屈曲振動部に固定されており、かつ該第1の屈曲振動部の外周縁よりも外側に延ばされているシートと、前記シートの前記第1の屈曲振動部の外周縁よりも外側に延ばされている部分において前記シートを支持するように該シートに固定されている支持部材とを備える。
本発明に係る圧電発音体装置のある特定の局面では、前記樹脂層が前記シートの一部であり、前記樹脂層及び前記シートが一つの部材からなるバイモルフ構造の圧電発音体装置が構成されている。この場合には、樹脂層とシートが共通化されているため、部品点数の低減を図ることができる。
さらに、バイモルフ構造の場合、上記シートの中心が振動の中心に近づくことになるため、シートを挟んだ振動部分の振動の対称性を高めることができる。それによって、音の歪みを小さくすることができる。
本発明に係る圧電発音体装置の他の特定の局面では、前記シートが、前記第2の屈曲振動素子の前記樹脂層が積層されている側とは反対側の面に積層されているユニモルフ構造の圧電発音体装置が構成されている。この場合には、シートの振動部が構成されている側とは反対側の面に屈曲振動素子が存在しないので、狭いスペースにおいても、後気室または前気室を無理なく形成することができる。また、シートと樹脂層とが別部材からなるため、樹脂層として、共振周波数を低め得るのに適した樹脂材料を用いることができる。また、シートは、振動部を保持するのに適した樹脂材料により構成することができる。
本発明に係る圧電発音体装置のさらに他の特定の局面では、前記第1及び第2の屈曲振動素子が複数の圧電体層を積層してなる積層型圧電体を有する。この場合には、屈曲振動素子の変位量を大きくすることができ、それによって低周波数域の音圧をより一層高めることができる。
本発明に係る圧電発音体装置のさらに別の特定の局面では、前記シートが、前記第2の屈曲振動素子の前記樹脂層が積層されている側とは反対側の面に積層されており、前記第1の屈曲振動部が積層されている側とは反対側の面に、前記第1の屈曲振動部と同一の構造を有する第2の屈曲振動部が積層されている。そのため、バイモルフ構造の圧電発音体装置が構成され、音圧を効果的に高めることができる。
本発明に係る圧電発音体装置のさらに他の特定の局面では、前記第1及び第2の屈曲振動素子が、前記圧電体に積層された金属板を有する。このように、第1,第2の屈曲振動素子は、圧電体の一方面に金属板が積層された構造であってもよい。
本発明に係る圧電発音体装置のさらに他の特定の局面では、前記支持部材が、前記第1の屈曲振動部を囲む枠状部材からなる。この場合には、携帯電話機の狭いスペースにおいて、該枠状部材を配置し、該枠状の支持部材の内部に前記振動部を構成することができる。従って、圧電発音体装置構成部分の小型化を図ることができる。また、枠状部材により、枠状部材に囲まれた振動部を保護することができる。
本発明に係る圧電発音体装置では、第1の屈曲振動部において第1の屈曲振動素子と第2の屈曲振動素子とが樹脂層を介して積層されているため、従来の圧電スピーカーに比べ、後気室が狭い場合であっても、基本振動の共振周波数を低めることができる。そのため、低周波数域における音圧を高めることができ、音質の良好なスピーカーを実現することができる。
また、一枚の屈曲振動素子を用いた場合に比べ、振動の歪みを小さくすることができ、それによって音の歪みも小さくすることが可能となる。
(a)は、本発明の第1の実施形態にかかる圧電発音体装置の略図的斜視図であり、(b)は該圧電発音体装置の枠状の支持部材を示す斜視図であり、(c)は(a)中のC−C線に沿う部分の断面図である。 本発明の第1の実施形態にかかる屈曲振動部の正面断面図である。 第1の実施形態にかかる圧電発音体装置の第1,第2の屈曲振動素子が積層型圧電体からなる場合の変位状態を示す模式的正面図である。 第1の実施形態にかかる圧電発音体装置の第1,第2の屈曲振動素子が積層型圧電体からなる場合の図3に示した変位状態と逆の変位状態を示す模式的正面図である。 本発明の第1の実施形態に係る圧電発電体装置の変形例を説明するための部分切欠き断面図である。 本発明の第1の実施形態に係る圧電発電体装置の他の変形例を説明するための部分切欠き断面図である。 本発明の第1の実施形態の圧電発音体装置及び第1の比較例の圧電発音体装置の周波数特性を示す図である。 第1の比較例、第2の比較例及び第1の実施形態の圧電発音体装置における後気室の容積と、共振周波数との関係を示す図である。 本発明の第1の実施形態の圧電発音体装置に用いられる振動部のさらに他の変形例の正面断面図である。 本発明の第1の実施形態にかかる圧電発音体装置の振動部の他の変形例を示す正面断面図である。 本発明の第2の実施形態にかかる圧電発音体装置の要部を示す部分切欠き正面断面図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
図1(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る圧電発音体装置の略図的斜視図、該圧電発音体装置の枠状支持部材を示す斜視図及び図1(a)のC−C線に沿う部分の略図的断面図である。
圧電発音体装置1は、矩形板状の支持部材2を有する。図1(b)に示すように、支持部材2は、矩形の開口部2aを有する。また、図1(c)に示すように、支持部材2は、矩形枠状の第1の枠体2bと、矩形枠状の第2の枠体2cとを積層した構造を有する。
第1及び第2の枠体2b,2cによりシート3が挟持されている。
上記第1及び第2の枠体2b,2cは、金属または合成樹脂などの適宜の材料からなる。もっとも、枠体2b,2c間にシート3を挟持し、シート3及びシート3に積層される後述する第1の屈曲振動部4を支持する。従って、第1及び第2の枠体2b,2cは、耐久性に優れた金属や、硬質の合成樹脂からなることが望ましい。
上記シート3は、図1(b)に示した開口部2aを閉成するように設けられている。すなわち、シート3は、開口部2aよりも大きな面積を有し、シート3の外周縁部が、第1及び第2の枠体2b,2cに挟持されている。それによって、シート3は、その全外周縁において支持部材2により支持されている。
シート3は弾性材料からなり、好ましくは、1GPa以下の低い弾性率を有する。それによって共振周波数を低めることができる。上記シート3としては、ポリプロピレン、エチレン−ポリプロピレン共重合体、EPDM(エチレンプロピレンゴム)などの合成樹脂からなる樹脂シートを好適に用いることができる。もっとも、シート3としては、薄い金属板からなるものを用いてもよい。
本実施形態では、シート3はEPDM(エチレンプロピレンゴム)からなり、弾性率は15MPaである。
上記シート3上に、第1の屈曲振動部4が貼り合わされて、支持されている。従って、シート3の表面の第1の屈曲振動部4が貼り合わされる部分は、粘着性表面であることが好ましい。このような粘着性表面は、粘着剤層の形成により達成することができる。
第1の屈曲振動部4は、矩形板状の第1の屈曲振動素子5と、矩形板状の第2の屈曲振動素子7とを、樹脂層6を介して貼り合わせた構造を有する。第1の屈曲振動素子5と第2の屈曲振動素子7は、屈曲振動する振動素子であり、かつ同相で駆動される。
上記樹脂層6は、第1,第2の屈曲振動素子5,7の変位を妨げ難いような低弾性率の樹脂からなることが好ましい。この場合の低弾性率とは10MPa以下であることが望ましい。本実施形態では、樹脂層6は粘着性樹脂からなり、弾性率は1MPaである。
矩形板状の積層型の第1の屈曲振動素子5と、第2の屈曲振動素子7とが同相で駆動されるため、第1の屈曲振動部4全体が屈曲モードで変位する。
このような第1及び第2の屈曲振動素子5,7の具体的な構造については後ほど詳述する。
本実施形態の圧電発音体装置1の特徴は、第1の屈曲振動素子5と第2の屈曲振動素子7とが、低弾性率の樹脂層6を介して積層されていること、並びに低弾性率のシート3により第1の屈曲振動部4が支持されていることにある。それによって、第1及び第2の屈曲振動素子5,7の変位が妨げられ難い。よって、比較的低周波数域の音を大きな音圧で発生させることができる。
図2は、上記の第1の屈曲振動部4を示す拡大正面断面図である。第1の屈曲振動部4は、上記のように、第1の屈曲振動素子5と、第2の屈曲振動素子7とが、樹脂層6を介して積層されている構造を有する。ここでは、第1の屈曲振動素子5は、複数の圧電体層8a〜8fを積層してなる積層型圧電体を有する。圧電体層8a〜8fを介して対向するように、第1の電極9a,9c,9e,9gと、第2の電極9b,9d,9fとが設けられている。上記第1の電極9a,9gは、積層型圧電体の上面及び下面にそれぞれ形成されている。第1の電極9c,9e及び第2の電極9b,9d,9fは内部電極の形態で配置されている。
上記積層型圧電体の第1の端面には、上記第1の電極9a,9c,9e,9gが引き出されている。第2の端面には、第2の電極9b,9d,9fが引き出されている。
他方、積層型圧電体の第1の端面には、第1の外部電極10a,10bが形成されている。第1の外部電極10aは、樹脂層6の上方に位置しており、第1の外部電極10bは樹脂層6の下方に位置している。第1の電極9a,9c,9e,9gは、上記第1の外部電極10aに電気的に接続されている。
第2の端面においては、第2の電極9b,9d,9fが、上方に設けられている第2の外部電極11aに電気的に接続されている。
ある瞬間において、圧電体層8a〜8cでは分極と同じ方向に電圧が印加され、8d〜8fでは逆方向に印加されている。別の瞬間には圧電体層8a〜8cに逆方向、8d〜8fに順方向の電圧が印加されるように、各層が分極されている。
上記積層型圧電体を構成する圧電材料は特に限定されず、例えばPZT系セラミックスなどの圧電セラミックスなどを用いることができる。また、第1の電極9a,9c,9e,9g及び第2の電極9b,9d,9fは、Ag、Cu、Ptなどの適宜の金属もしくは合金により形成することができる。
他方、第2の屈曲振動素子7も、第1の屈曲振動素子5と同様に構成されている。すなわち、複数の圧電体層13a〜13fを有する積層型圧電体13と、第1の電極14a,14c,14e,14gと、第2の電極14b,14d,14fとを有する。そして13a〜13cと13d〜13fでは分極に対する電圧印加方向が逆とされている。
上記第1の屈曲振動素子5と第2の屈曲振動素子7とが、樹脂層6を介して貼り合わされている。
第1の電極14a,14c,14e,14gは、第1の端面において、第1の外部電極10bに電気的に接続されている。また、第2の電極14b,14d,14fは、第2の端面において第2の外部電極11bに電気的に接続されている。
なお、本実施形態では、樹脂層6の端面を覆わないように、第1の外部電極10として第1の外部電極10a,10bが設けられていた。もっとも、第1の外部電極10a,10bは駆動に際し同電位に接続される。従って、第1の外部電極10aと第1の外部電極10bとを連ね、すなわち樹脂層6の端面を覆うように形成してもよい。しかしながら、樹脂層6は柔らかいため、駆動時に大きく変形する。よって、樹脂層6の端面を覆うように第1の外部電極を形成した場合、樹脂層6を覆っている部分で断線が生じるおそれがある。従って、本実施形態のように、第1の外部電極10aと第1の外部電極10bとに分割することが望ましい。
第2の外部電極11についても、同じ理由により第2の外部電極11aと第2の外部電極11bとに分割されている。駆動に際しては、第2の外部電極11aと第2の外部電極11bも同電位に接続されることになる。
ところで、圧電体層8a〜8fの分極方向は、圧電体層13a〜13fとそれぞれ同一方向である。また、第1の電極9a,9c,9e,9g及び第2の電極9b,9d,9fと、上記第1の電極14a,14c,14e,14g及び第2の電極14b,14e,14fが同様に形成されており、それぞれ、上記のように電気的に接続されている。従って、第1の外部電極10と第2の外部電極11から電界を印加すると、第1の屈曲振動素子5と第2の屈曲振動素子7とは、同相で駆動される。これを、図2を参照してより詳しく説明する。
図2において、略図的に示すように電源16から電界を印加した場合、第1の屈曲振動素子5では、圧電体層8a〜8cが矢印E1で示すように拡がりモードで変位する。他方、圧電体層8d〜8fは矢印E2で示すように、拡がりモードで矢印E1と反対方向に変位する。すなわち、圧電体層8a〜8cと圧電体層8d〜8fとが拡がりモードで逆方向に変位するため、第1の屈曲振動素子5全体が屈曲モードで振動することとなる。
第2の屈曲振動素子7においても同様である。すなわち、圧電体層13a〜13cが矢印E1で示すように拡がりモードで変位する。他方、圧電体層13d〜13fが矢印E2で示すように拡がりモードで逆方向に変位する。よって、屈曲振動素子7もまた、全体が屈曲振動する。
第1の屈曲振動素子5を例にとると、図3に略図的に示すように屈曲モードで変位する。そして、加わる電位が逆転すると、図4に示すように逆方向に変位する。第2の屈曲振動7も同様に変位する。そのため、第1,第2の屈曲振動素子5,7を有する第1の屈曲振動部4が屈曲モードで振動を繰り返すことになる。よって、第1の屈曲振動部4により音を発生させることができる。
本実施形態の圧電発音体装置1では、第1,第2の屈曲振動素子5,7が、前述した低弾性率の樹脂層6により積層されており、かつ第1の屈曲振動部4が低弾性率のシート3により支持されている。そのため、従来の圧電スピーカーに比べて、低い周波数域における音圧を高めることができる。
上記実施形態では、第1の屈曲振動素子5と第2の屈曲振動素子7とが樹脂層6を介して積層され、第2の屈曲振動素子7の下面に支持のためのシート3が貼り合わされていた。しかしながら、図5に略図的に示す変形例のように、シート3の下面に第2の屈曲振動部4Aを設けてもよい。第2の屈曲振動部4Aは、第1の屈曲振動部4と同様に構成されている。すなわち、シート3の両面に屈曲振動部を構成し、それによってバイモルフ型の圧電発音体装置としてもよい。この場合には、より大きな音圧を取り出すことができる。
また、図6に示す他の変形例のように、第1の実施形態の圧電発電体装置における第1の屈曲振動部4の上面に、樹脂層6を介してさらに1以上の屈曲振動素子4Bを積層してもよい。この屈曲振動素子4Bは、第1の屈曲振動素子と同様に構成されている。
次に、具体的な実験例を説明する。
図1に示した上記実施形態の圧電発音体装置1を以下の仕様で作成した。
第1,第2の屈曲振動素子:13×9.5mm×厚み0.09mm、PZT系セラミックスからなる。第1,第2の屈曲振動素子5,7のそれぞれにおける圧電体層の積層数は6とした。
第1,第2の電極間に挟まれている圧電体層の厚みは15μm。
樹脂層6:アクリル系粘着剤からなり、厚み0.03mm。弾性率は1MPa。
シート3:EPDM(エチレンプロピレンゴム)からなり、厚み0.06mm。弾性率は15MPa。
枠体2b,2c:ステンレスからなり、それぞれ厚みは0.2mm。開口部2aの寸法は14.2×12.3mm。
上記圧電発音体装置1において、上記支持部材2の第1の屈曲振動部4が設けられている側の空間を閉成し、0.3ccの容積の後気室を設けた。このようにして形成した圧電発音体装置の周波数特性を図7に実線で示す。
比較のために、上記第1の屈曲振動部4を第1の屈曲振動素子5により構成してなることを除いては同様である圧電発音体装置を比較例1として用意した。
上記比較例1の圧電発音体装置の周波数特性を図7に破線で示す。
図7から明らかなように、後気室の容積が0.3ccである場合、比較例に比べ、本実施形態によれば、より低い周波数域における音圧を効果的に高めることができる。従って、低音の再生能力に優れた高音質のスピーカーを提供し得ることがわかる。これは、0.3ccと狭い後気室を用いた場合において、本実施形態では、基本振動の共振周波数が比較例の場合に比べて低くなることによると考えられる。
また、上記実施形態の圧電発音体装置に対し、後気室の容積を種々変化させ、基本モードの共振周波数を測定した。結果を図8に実線で示す。比較のために上記比較例1の圧電発音体装置においても、同様に後気室の大きさを変化させ、基本モードの共振周波数を求めた。図8に比較例1の結果を破線で示す。さらに、比較例1の圧電発音体装置において、振動部の面積を1.5倍と大型化した構造を比較例2として用意し、同様にして後気室の容積と基本モードの共振周波数との関係を求めた。結果を図8に一点鎖線で示す。
図8から明らかなように、本実施形態の圧電発音体装置1では、後気室の容積が小さくなっても、基本モードの共振周波数が比較例1及び比較例2に比べて高くならないことがわかる。従って、後気室の小型化を図った場合であっても、低周波数域の音を高い効率で発生させ得ることがわかる。
なお、振動部の面積を大きくした比較例2では、後気室の容積が2cc以上と大きくなった場合には、上記実施形態に比べて基本モードの共振周波数が低くなる。しかしながら、後気室の容積が1.5cc以下では、上記実施形態の圧電発音体装置1の方が比較例2よりも基本モードの共振周波数を低くし得ることがわかる。よって、上記実施形態によれば、小型化と低周波数域の音の再生とを両立し得ることがわかる。
図9は、上記第1の実施形態の圧電発音体装置1のさらに他の変形例の要部を示す正面断面図である。図9に示す変形例の圧電発音体装置21では、図1に示した樹脂層6に代えて、前述したシート3と同様に低弾性率のシート3Aが用いられている。このシート3Aは、図示のように圧電発音体装置21の外側に引き出されており、前述したシート3と同様に支持部材により支持されている。すなわち、本変形例では、上記実施形態の樹脂層6とシート3とがシート3Aにより共通化されている。従って、部品点数を低減でき、かつ組み立て工程の簡略化を図ることができる。加えて、シート3Aの上面に第1の屈曲振動素子5が、下面に第2の屈曲振動素子7が貼り合わされている。そのため、第1の屈曲振動部の中心に対して、変位状態の対称が高められる。従って、発生する音の歪みを小さくすることができる。
なお、第1の屈曲振動素子5と第2の屈曲振動素子7は、シート3Aに対し適宜の接着剤により貼り合わされてもよい。あるいは、シート3Aの両面を粘着性表面として、シート3Aの両面に第1,第2の屈曲振動素子5,7を貼り合わせてもよい。
図10は、本発明の圧電発音体装置における振動部のさらに他の変形例を示す正面断面図である。本変形例の第1の屈曲振動部22では、第1の屈曲振動素子5Bと、第2の屈曲振動素子7Bとが樹脂層6を介して貼り合わされている。第1の屈曲振動素子5Bでは、圧電体層22a〜22hが積層されている。圧電体層22a〜22cは、第1の実施形態の圧電体層8a〜8cに相当し、圧電体層22f〜22hは、第1の実施形態における圧電体層8d〜8fに相当する。本変形例が第1の実施形態と異なるところは、電圧が印加されない圧電体層22d,22eが、圧電体層22a〜22cと、圧電体層22f〜22hとの間に積層されていることにある。このように、第1の屈曲振動素子5Bにおいて、電界が印加されない圧電体層22d,22eが設けられていてもよい。なお、圧電体層22d,22eに電界を印加しないために、圧電体層22d,22eを、同電位に接続される第2の電極23a,23b間に挟まれている。なお、圧電体層22d,22eの分極方向は、矢印P2方向とされている。もっとも、圧電体層22d,22eは、電界が印加されない部分であるため、分極されておらずともよく、また分極方向はP1で示す方向であってもよい。
上記のように、第1の屈曲振動素子5Bでは、圧電体層22a〜22cと、下方の逆相で駆動される圧電体層22f〜22hとが電界が印加されない圧電体層22d,22eを介して積層されている。従って、圧電体層22a〜22cの変位による応力と、圧電体層22f〜22hの変位による応力とを、間の圧電体層22d,22eにより緩和させることができる。
なお、第2の屈曲振動素子7Bは、第1の屈曲振動素子5Bと同様に形成されている。
図11は、本発明のさらに他の変形例にかかる圧電発音体装置を示す略図的部分切欠き断面図である。本変形例の圧電発音体装置31では、第1の屈曲振動素子5C及び第2の屈曲振動素子7Cが、それぞれ、金属板32,33を有する。本変形例の圧電発音体装置31が、第1の実施形態の圧電発音体装置1と異なるところは、上記金属板32,33が設けられている点だけである。すなわち、第1の屈曲振動素子5Cは、略図的に示す圧電素子の片面に金属板32を貼り合わせた構造を有する。同様に、第2の屈曲振動素子7Cも、圧電素子の片面に金属板33を貼り合わせた構造を有する。このように、本発明における第1,第2の屈曲振動素子は、ユニモルフ型の構造を有していてもよい。
また、本発明においては、第1,第2の屈曲振動素子は、前述した実施形態及び変形例から明らかなように、ユニモルフ型及びバイモルフ型などの様々な構造を有し得る。
本変形例では、金属板32は圧電素子の下面に貼り合わされていたが、逆に上面に貼り合わされていてもよい。その場合には、第2の屈曲振動素子7Cにおいても、下面ではなく上面に金属板を貼り合わせることが好ましい。
1…圧電発音体装置
2…支持部材
2a…開口部
2b…第1の枠体
2c…第2の枠体
3,3A…シート
4,4A…屈曲振動部
4B…屈曲振動素子
5,5B,5C…第1の屈曲振動素子
6…樹脂層
7,7B,7C…第2の屈曲振動素子
8a〜8f…圧電体層
9a,9c,9e,9g…第1の電極
9b,9d,9f…第2の電極
10,10a,10b…第1の外部電極
11,11a,11b…第2の外部電極
13…積層型圧電体
13a〜13f…圧電体層
14a,14c,14e,14g…第1の電極
14b,14d,14f…第2の電極
16…電源
21…圧電発音体装置
22a〜22h…圧電体層
23a…第1の電極
23b…第2の電極
31…圧電発音体装置
32,33…金属板

Claims (7)

  1. 圧電体を有し、屈曲振動する板状の第1の屈曲振動素子と、
    前記第1の屈曲振動素子の片面に積層された樹脂層と、
    圧電体を有し、前記樹脂層の前記第1の屈曲振動素子が積層されている側とは反対側の面に積層されており、かつ第1の屈曲振動素子と同相で屈曲振動する第2の屈曲振動素子と、
    前記第1の屈曲振動素子、前記樹脂層及び前記第2の屈曲振動素子を有し、屈曲モードで振動する第1の屈曲振動部を支持するために、弾性材料からなり、該第1の屈曲振動部に固定されており、かつ該第1の屈曲振動部の外周縁よりも外側に延ばされているシートと、
    前記シートの前記第1の屈曲振動部の外周縁よりも外側に延ばされている部分において前記シートを支持するように該シートに固定されている支持部材とを備える、圧電発音体装置。
  2. 前記樹脂層が前記シートの一部であり、前記樹脂層及び前記シートが一つの部材からなる、請求項1に記載の圧電発音体装置。
  3. 前記シートが、前記第2の屈曲振動素子の前記樹脂層が積層されている側とは反対側の面に積層されている、請求項1に記載の圧電発音体装置。
  4. 前記第1及び第2の屈曲振動素子が、複数の圧電体層を積層してなる積層型圧電体を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧電発音体装置。
  5. 前記シートが、前記第2の屈曲振動素子の前記樹脂層が積層されている側とは反対側の面に積層されており、前記第1の屈曲振動部が積層されている側とは反対側の面に、前記第1の屈曲振動部と同一の構造を有する第2の屈曲振動部が積層されており、それによってバイモルフ構造の屈曲振動部が構成されている、請求項1に記載の圧電発音体装置。
  6. 前記第1及び第2の屈曲振動素子が、前記圧電体に積層された金属板を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の圧電発音体装置。
  7. 前記支持部材が、前記第1の屈曲振動部を囲む枠状部材からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載の圧電発音体装置。
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