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JP5925783B2 - アスペルギルスフミガーツス感染症の検査、予防及び治療のための方法並びに組成物 - Google Patents

アスペルギルスフミガーツス感染症の検査、予防及び治療のための方法並びに組成物 Download PDF

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Description

本発明は、アスペルギルス フミガーツスのYMAF1(YPD medium associated major antigen of Aspergillus fumigatus1)蛋白質を標的とした、アスペルギルス フミガーツス感染症の検査、予防及び治療のための方法及び当該方法に用いられる分子に関する。また、本発明は、YMAF1蛋白質を標的とした、前記感染症の検査、予防及び治療のための化合物のスクリーニング方法に関する。
アスペルギルス フミガーツス(Aspergillus fumigatus)は慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA)などの深在性真菌症の主要な原因真菌であり、医療の現場において、臓器移植や抗がん剤投与、HIV感染のような免疫不全状態にある患者に対して日和見的に感染し、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等において、ときに致死的となるほど重篤な症状を引き起こす。
深在性真菌症の原因菌としては、アスペルギルス フミガーツスが一番多く、このほかにアスペルギルス フラーブス(A.flavus)、アスペルギルス ニガー(A.niger)、アスペルギルス ニデュランス(A.nidulans)、アスペルギルス テレウス(A.terreus)、別種の菌としてカンジダ アルビカンス(Candida albicans)、クリプトコッカス ネオファルマンス(Cryptococcus neoformans)、接合菌などがあるが。しかしながら、これらの感染機構や病原因子についてはほとんど解明されていない。
また現在、慢性壊死性肺アスペルギルス症や侵襲性アスペルギルス症(IA)といったアスペルギルス感染症の早期診断を目的として使用されているガラクトマンナン抗原検出系は、血液悪性疾患の患者では約80%の感度を有しているが、他の基礎疾患では感度、特異度が共に低いという問題点がある。さらに、表面糖鎖抗原では、他の菌との区別がつけられない場合もあるなど、検出特異性や検出感度は必ずしも満足できるものとはいえなかった。また確定診断については組織生検や培養検査などの手段があるが、これら手段においても、患者の状態などにより実施に困難を伴うケースが生じることや、培養に数週間程度の期間を要し検査結果を得るまでに多くの時間を費やさざるを得ないこと、さらには、臨床検体からの培養検査陽性率が低いことなどの問題があった。このような状況から、例えば手術現場などで深在性真菌症と思われる症状が見られても、菌の同定を迅速に行うことができず、経験の蓄積などがないと適切な治療法の判断を下すのに困難を伴うという問題があった。
また現在真菌症の治療においては、主にアムホテリシンBやミカファンギンなどの低分子医薬が菌種や症状などに応じて用いられている。しかしながら深在性真菌症患者の場合、免疫不全状態になっているがゆえにこれらの治療薬が大量に投与されていて効きにくくなっており、期待通りの治療効果が得られないなどの問題が生じることもあった。
以上のようなことから、より感染の実態を反映し、治療に対して効果を発揮できるアスペルギルス感染症の早期診断及び治療の方法の確立が求められている。
このような問題に対しては、真菌類に対する抗体などを用いた新たな分子標的治療法や診断方法などが解決手段の一つとして考えられる。これまでアスペルギルス属における各種の細胞外抗原分子が同定され(特許文献1)、また、抗真菌抗体を利用した、あるいはそれと低分子薬とを併用した治療方法(特許文献2)が開発されてきたものの、現在まで真菌類、特に深在性真菌症に対して特異的な治療効果を有する抗体は上梓されていない。
また、真菌類の菌体や表面部分などを抗原としてモノクローナル抗体開発を試みると、その菌体表面の糖鎖抗原に対する抗体が多くつくられる傾向にある。しかしながら、これまでの抗体医薬品開発などにおける状況から判断しても、糖鎖抗原に対する抗体は生体内での治療効果作用をもつことがあまり期待できない。 さらに、アスペルギルス フミガーツスについてはゲノム解析が既に実施されているものの、未だ多くの遺伝子が、保存された推定タンパク質(conserved hypothetical protein)をコードする遺伝子と定義されている。このため、機能未知の標的分子の存在も期待されているが、タンパク質レベルでの解析はほとんど進んでおらず、真菌症、特にアスペルギルス フミガーツス感染症の早期診断及び治療の方法の確立に寄与する標的分子の開発には至っていないのが現状である(非特許文献1)。
特表2007−535897号公報 特表2007−533716号公報
William C.ら、「Genomic sequence of the pathogenic and allergenic filamentous fungus Aspergillus fumigatus(病原性、アレルゲン性を持つ糸状菌Aspergillus fumigatusのゲノム塩基配列)」、Nature、2005年、438巻、7071号、1151〜1156ページ
本発明は、前記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アスペルギルス フミガーツス感染症の早期診断及び治療の標的となる分子を同定し、当該分子を標的とした前記感染症の検査方法ならびに検査のための組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、当該分子を標的とした前記感染症の予防・治療の方法ならびに予防・治療のための組成物を提供することにもある。さらなる本発明の目的は、前記感染症の検査、予防及び治療に有用な化合物のスクリーニング方法を提供することにある。
本発明者らは、アスペルギルス フミガーツスの細胞外蛋白質の中に、その病原性に関与し、診断・治療薬の優れた標的になるものが存在すると考え、まず、細胞外蛋白質を網羅的に同定できるシグナルシークエンストラップ(SST−REX)法を利用して、アスペルギルス フミガーツスの膜蛋白質、細胞壁蛋白質、分泌蛋白質などの細胞外蛋白質を網羅的に同定した。そして、同定した細胞外蛋白質の中でも発現量が比較的高いと考えられたYMAF1(YPD medium associated major antigen of Aspergillus fumigatus1)蛋白質に着目してさらなる解析を行った。
その結果、YMAF1蛋白質がアスペルギルス フミガーツスの細胞壁、細胞膜またはペリプラズムに局在している蛋白質であること、YMAF1遺伝子を欠損させたアスペルギルス フミガーツス株においては、特定の温度条件下にて胞子形成能が低下していること、さらには、当該株において病原性も低下していることを見出した。
このようなYMAF1蛋白質の特性から、当該蛋白質に対する抗体がアスペルギルス感染症の検査、予防および治療のための有用な分子となることが期待された。そこで、本発明者らは、次に、YMAF1蛋白質に対する抗体を作製し、その検証を行った。その結果、当該抗体を利用したELISAによりアスペルギルス フミガーツスを感度よく検出できること、および、当該抗体を投与することによって、実験的マウスアスペルギルス症(侵襲性アスペルギルスモデルマウス)の生存率が向上することが明らかとなった。
以上の結果より、本発明者らは、YMAF1蛋白質がアスペルギルス感染症の検査、予防および治療の優れた標的分子となることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、アスペルギルス フミガーツス感染症の検査、予防及び治療のための方法および当該方法に用いられる分子、並びに前記感染症の検査、予防および治療のための化合物のスクリーニング方法に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1) 被検体から分離された生体試料における、YMAF1蛋白質の存在を検出する工程を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を検査するための方法。
(2) 前記YMAF1蛋白質の存在をYMAF1蛋白質に対する抗体を用いて検出する、(1)に記載の方法。
(3) YMAF1蛋白質に対する抗体を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を検査するための組成物。
(4) YMAF1蛋白質に対する抗体を投与する工程を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防又は治療するための方法。
(5) YMAF1蛋白質に対する抗体を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防又は治療するための組成物。
(6) 被験化合物をYMAF1蛋白質又はその一部に接触させ、YMAF1蛋白質又はその一部に結合する化合物を選択する工程を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症の検査、予防又は治療をするための化合物のスクリーニング方法。
(7) YMAF1蛋白質中の配列番号:33に記載のアミノ酸配列からなる領域を認識する抗体。
(8) 下記(a)〜(c)のうちのいずれかに記載の抗体
(a)配列番号:1〜3に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:4〜6に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
(b)配列番号:7〜9に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:10〜12に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
(c)配列番号:13〜15に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:16〜18に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体。
(9) 下記(a)〜(c)のうちのいずれかに記載の抗体
(a)配列番号:20に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:22に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
(b)配列番号:24に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:26に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
(c)配列番号:28に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:30に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体。
なお、本発明にかかるYMAF1遺伝子に関しては、米国特許第7504490号明細書において、アスペルギルス フミガーツスにおける発現遺伝子を網羅的に解析した結果として、その配列自体は開示されている。しかしながら、YMAF1遺伝子がコードする蛋白質の存在及び機能は明らかではない。
本発明によれば、アスペルギルス フミガーツスを高い特異性および感度にて検出することができる、アスペルギルス フミガーツス感染症の検査方法ならびに検査用組成物を提供することが可能となる。また、アスペルギルス フミガーツス感染症の予防・治療方法ならびに予防・治療用組成物を提供することが可能となる。さらに、これらの方法に有用な化合物のスクリーニング方法、並びにこれらの方法に有用な抗体を提供することが可能となる。
アスペルギルス フミガーツスのYMAF1(YPD medium associated major antigen of Aspergillus fumigatus1)遺伝子の塩基配列(遺伝子配列)および当該遺伝子がコードする蛋白質のアミノ酸配列を示す図である。なお図中、下線が付してある塩基およびアミノ酸は、前記塩基配列および前記アミノ酸配列と、GenBankアクセッション番号:XM_726394.1で特定される塩基配列およびGenBankアクセッション番号:XP_731487.1で特定されるアミノ酸配列との相違点であることを示す。 HAタグを付加したYMAF1蛋白質を酵母にて発現させ、その酵母の培養上清を抗HA抗体を用いた免疫沈降により精製したものを、抗HA抗体を用いたウェスタンブロットにて分析した結果を示す写真である。なお図中、(A)はHAタグのみをコードするベクター(pADH−HA発現ベクター)を酵母にて発現させた結果(陰性対照)を示し、(B)はHAタグを付加したYMAF1蛋白質をコードするベクターを酵母にて発現させた結果を示す。 GSTとYMAF1との融合蛋白質を大腸菌に発現させ、その大腸菌の可溶性画分をSDS−PAGEおよびCBB染色にて分析した結果を示す写真である。なお図中、矢印で示したバンドはGSTとYMAF1との融合蛋白質に由来する。 GSTとYMAF1との融合蛋白質を大腸菌に発現させ、その大腸菌の可溶性画分および不溶性画分をSDS−PAGEおよびCBB染色にて分析した結果を示す写真である。なお図中、(A)は前記大腸菌の可溶性画分を分析した結果を示し、(B)はマーカーを泳動した結果を示し、(C)は前記大腸菌の不溶性画分をさらに8M ウレアにて処理して得られた可溶性画分を分析した結果を示す。また、矢印で示したバンドはGSTとYMAF1との融合蛋白質に由来する。 1B4C抗体と、YMAF1遺伝子を発現するBa/F3細胞との反応性を示す図である。免疫原細胞であるYMAF1全長遺伝子を発現するトランスフェクタントBa/F3細胞(YMAF1 SST−クローン)とYMAF1遺伝子を発現していない対照Ba/F3細胞(ネガティブコントロールSST−clone)に対する1B4C抗体の反応をフローサイトメーターで解析した。フローサイトメーターデータの塗りつぶしヒストグラム部分は、サンプル抗体(1B4C抗体)との反応を、白のヒストグラム部分は、陰性対照としたIgM/kappa(アイソタイプ対照IgG)との反応を示す。 2G11GB5抗体と、YMAF1遺伝子を発現するBa/F3細胞との反応性を示す図である。免疫原細胞であるYMAF1全長遺伝子を発現するトランスフェクタントBa/F3細胞(YMAF1 SST−クローン)とYMAF1遺伝子を発現していない対照Ba/F3細胞(ネガティブコントロールSST−clone)に対する2G11GB5抗体の反応をフローサイトメーターで解析した。フローサイトメーターデータの塗りつぶしヒストグラム部分は、サンプル抗体(2G11GB5抗体)との反応を、白のヒストグラム部分は、陰性対照としたIgG3/kappa(アイソタイプ対照IgG)との反応を示す。 3G4FB7抗体と、YMAF1遺伝子を発現するBa/F3細胞との反応性を示す図である。免疫原細胞であるYMAF1全長遺伝子を発現するトランスフェクタントBa/F3細胞(YMAF1 SST−クローン)とYMAF1遺伝子を発現していない対照Ba/F3細胞(ネガティブコントロールSST−clone)に対する3G4FB7抗体の反応をフローサイトメーターで解析した。フローサイトメーターデータの塗りつぶしヒストグラム部分は、サンプル抗体(3G4FB7抗体)との反応を、白のヒストグラム部分は、陰性対照としたIgG3/kappa(アイソタイプ対照IgG)との反応を示す。 4B6M2GK抗体と、YMAF1遺伝子を発現するBa/F3細胞との反応性を示す図である。免疫原細胞であるYMAF1全長遺伝子を発現するトランスフェクタントBa/F3細胞(YMAF1 SST−クローン)とYMAF1遺伝子を発現していない対照Ba/F3細胞(ネガティブコントロールSST−clone)に対する4B6M2GK抗体の反応をフローサイトメーターで解析した。フローサイトメーターデータの塗りつぶしヒストグラム部分は、サンプル抗体(4B6M2GK抗体)との反応を、白のヒストグラム部分は、陰性対照としたIgG1/kappa(アイソタイプ対照IgG)との反応を示す。 大腸菌にて産生したGSTとYMAF1との融合蛋白質に対する、1B4C抗体、2G11GB5抗体、3G4FB7抗体または4B6M2GK抗体を用いたウェスタンブロットの結果を示す写真である。なお図中「M」はマーカーをSDS−PAGEにて展開してCBB染色により分析した結果を示し、「GST−fusion protein」はGSTとYMAF1との融合蛋白質をSDS−PAGEにて展開してCBB染色により分析した結果を示す。また、「1B4C」、「2G11」、「3G4」および「4B6」は、各々1B4C抗体、2G11GB5抗体、3G4FB7抗体および4B6M2GK抗体を用いたウェスタンブロット(WB)の結果を示す。また、矢印で示したバンドはGSTとYMAF1との融合蛋白質に由来する。 YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1)およびYMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp)のY1遺伝子近傍のゲノムの構造を示す概略図である。なお図中、「Y1」はYMAF1遺伝子を示し、「probeA」はYMAF1遺伝子の上流域(配列番号:53に記載の塩基配列(YMAF1蛋白質をコードするゲノム配列)の136〜600位の領域)に対する特異的なプローブであることを示し、「HphTK」はハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ(配列番号:56に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質)とヒトヘルペスチミジンキナーゼとの融合蛋白質をコードする遺伝子を示し、「probe Hph」はハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子に対する特異的なプローブであることを示す。なお、ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼをコードするDNAの配列を配列番号:55に示す。また、「probe Hph」がハイブリダイズする領域は、配列番号:55に記載の塩基配列の218〜755位の領域である。さらに、「ptrA」はピリチアミン耐性遺伝子であることを示し、「Bm」は制限酵素BamH1の認識部位であることを示す。また、「Afs35」はYMAF1遺伝子破壊株およびYMAF1遺伝子相補株の基となった親株のゲノムの構造を示す。 YMAF1遺伝子破壊株およびYMAF1遺伝子相補株のゲノムをサザンハイブリダイゼーションにより分析した結果を示す写真である。なお図中、「probeA」はYMAF1遺伝子の上流域に対する特異的なプローブを用いたサザンハイブリダイゼーションにより分析した結果を示し、「probeHph」はハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子に対する特異的なプローブを用いたサザンハイブリダイゼーションにより分析した結果を示す。また、「A」および「F」は親株(Afs35)のゲノムを分析した結果を示し、「B」および「G」はYMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1−5)のゲノムを分析した結果を示し、「C」および「H」はYMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1−7)のゲノムを分析した結果を示し、「D」および「I」はYMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp−3)のゲノムを分析した結果を示し、「C」および「H」はYMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp−4)のゲノムを分析した結果を示す。 YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1)、YMAF1遺伝子相補株(YMAF1 comp−4)、およびそれらの親株(Afs35)におけるYMAF1 mRNAの発現をPCRにより分析した結果を示す写真である。 YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1(d−YMAF1−7))、YMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp4)、およびそれらの親株(Afs35)の胞子溶液(1x10コニディア/2μl)を各種培地に添加し、30℃にて3日間培養した結果を示す写真である。なお図中において、「PDA」のプレート上に示した各株に由来するコロニーの位置は他の培地のプレートにおけるそれらの位置に各々対応している。 YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1(d−YMAF1−7))、およびその親株(Afs35)の胞子溶液(1x10コニディア/2μl)を各種培地に添加し、30℃にて3日間培養した結果を示す写真である。なお図中において、「PDA」のプレート上に示した各株に由来するコロニーの位置は他の培地のプレートにおけるそれらの位置に各々対応している。また、上段(−Serum)はウシ新生仔血清を添加していない各種培地における結果を示し、下段(+Serum)はウシ新生仔血清を添加している各種培地における結果を示す。 10%ウシ血清含有Spider培地にて培養した、YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1−7)、YMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp−4)、およびそれらの親株(Afs35)のコロニーの状態を観察した結果を示す写真である。 10%ウシ血清含有Spider培地にて培養した、YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1−7)およびその親株(Afs35)の分生子頭の形態を観察した結果を示す写真である。 10%ウシ血清含有PDA培地にて25℃で生育させた、YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1−7)、YMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp−4)、およびそれらの親株(Afs35)の胞子形成の状態を観察した結果を示す写真である。 25℃、30℃または37℃にて最少培地AMMで培養した、YMAF1遺伝子破壊株(d:d−YMAF1−7)、YMAF1遺伝子相補株(C:YMAF1−comp−4)、およびそれらの親株(A:Afs35)の胞子数(縦軸:X10コニディア)を示すグラフである。 YMAF1遺伝子破壊株、YMAF1遺伝子相補株、およびそれらの親株の細胞粗抽出液と細胞壁画分とを抗YMAF1ウサギポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロット法により分析した結果を示す写真である。なお図中、「A」および「D」は親株(Afs35)由来の蛋白質を分析した結果を示し、「B」および「E」はYMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1−7)由来の蛋白質を分析した結果を示し、「C」および「F」はYMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp−4)の蛋白質を分析した結果を示す。 Afs35株を抗YMAF1抗体を用いた免疫染色により分析した結果を示す顕微鏡写真である。なお図中、左側は明視野観察の結果を示し、右側は蛍光観察の結果を示す。 Afs35株を用い、各種濃度の抗YMAF1ポリクローナル抗体を添加した培地にて、30℃で14時間培養したアスペルギルス フミガーツスの観察結果を示す顕微鏡写真である。 Afs35、YMAF1遺伝子欠損株(d−YMAF1)またはYMAF1遺伝子相補株(YMAF1COMP−4)の胞子を投与した実験的マウスアスペルギルス症(侵襲性アスペルギルスモデルマウス)の生存率を示すグラフである。 抗YMAF1蛋白質モノクローナル抗体(4B6:4B6M2GK抗体)を投与した実験的マウスアスペルギルス症(侵襲性アスペルギルスモデルマウス)の生存率を示すグラフである。 捕獲用抗体として抗YMAF1モノクローナル抗体(1B4C:1B4Cモノクローナル抗体)を用い、検出用抗体としてビオチン化した抗YMAF1ポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA系を評価した結果を示すグラフである。 捕獲用抗体として抗YMAF1モノクローナル抗体(3G4:3G4FB7モノクローナル抗体)を用い、検出用抗体としてビオチン化した抗YMAF1ポリクローナル抗体を用いたサンドイッチELISA系を評価した結果を示すグラフである。 アスペルギルス フミガーツスを様々な種類の培地にて30℃で培養し、これらの培養液中のYMAF1蛋白質の量をYMAF1サンドイッチELISA系(1B4Cモノクローナル抗体(1B4C)を捕獲用抗体として用いた系)を用いて分析した結果を示すグラフである。なお図中、1はYG培地での培養の結果を示し、2はYPDpH5.6培地での培養の結果を示し、3はYPDpH7.2培地での培養の結果を示し、4はSpider培地での培養の結果を示し、5はAMM培地での培養の結果を示し、6はLB培地での培養の結果を示し、7はサブロー培地での培養の結果を示し、8はSD−a.a.培地での培養の結果を示す。また、「培地」は各培地のみを分析した結果(陰性対照)を示す(図27においても同様)。 アスペルギルス フミガーツスを様々な種類の培地にて30℃で培養し、これらの培養液中のYMAF1蛋白質の量をYMAF1サンドイッチELISA系(3G4FB7モノクローナル抗体(3G4)を捕獲用抗体として用いた系)を用いて分析した結果を示すグラフである。 抗YMAF1モノクローナル抗体(1B4Cモノクローナル抗体)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の塩基配列を示す図である。 抗YMAF1モノクローナル抗体(1B4Cモノクローナル抗体)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。なお下線を付したアミノ酸配列はN末側から、シグナル配列、CDR1,CDR2、CDR3を各々示す。 抗YMAF1モノクローナル抗体(3G4FB7モノクローナル抗体)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の塩基配列を示す図である。 抗YMAF1モノクローナル抗体(3G4FB7モノクローナル抗体)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。なお下線を付したアミノ酸配列はN末側から、シグナル配列、CDR1,CDR2、CDR3を各々示す。 抗YMAF1モノクローナル抗体(4B6M2GKモノクローナル抗体)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域の塩基配列を示す図である。 抗YMAF1モノクローナル抗体(4B6M2GKモノクローナル抗体)の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のアミノ酸配列を示す図である。なお下線を付したアミノ酸配列はN末側から、シグナル配列、CDR1,CDR2、CDR3を各々示す。 各抗YMAF1モノクローナル抗体(1B4C、2G11GB5、3G4FB7または4B6M2GK)と、様々な長さのYMAF1蛋白質を発現するトランスフェクタントBa/F3細胞(SSTクローン:ACT251−1〜6)との反応性を示す概略図である。なお図中、「TM」はMPLのトランスメンブランドメインを示す。 各抗YMAF1モノクローナル抗体(2G11GB5、3G4FB7、4B6M2GKまたは1B4C)と、様々な長さのYMAF1蛋白質を発現するトランスフェクタントBa/F3細胞(SSTクローン:ACT251−1〜4)との反応性をフローサイトメーターにて解析した結果を示す図である。 各抗YMAF1モノクローナル抗体(2G11GB5、3G4FB7、4B6M2GKまたは1B4C)と、様々な長さのYMAF1蛋白質を発現するトランスフェクタントBa/F3細胞(SSTクローン:ACT251−5〜6)又はACT073−502細胞との反応性をフローサイトメーターにて解析した結果を示す図である。
<アスペルギルス フミガーツス感染症の検査方法>
後述の実施例において示す通り、YMAF1蛋白質はアスペルギルス フミガーツスの病原性ならびに胞子形成能に関与していることが本発明者らによって明らかになった。そのため、YMAF1蛋白質の存在を指標として、単にアスペルギルス フミガーツスの存在を検出することのみならず、アスペルギルス フミガーツスの病原性に起因するアスペルギルス フミガーツス感染症を検査することができる。さらに当該蛋白質はアスペルギルス フミガーツスの細胞壁に局在する蛋白質であることも明らかになり、細胞壁から解離したこの蛋白質はアスペルギルス フミガーツス感染症の患者の血清等に放出されている蓋然性が極めて高いため、YMAF1蛋白質の存在を指標として、前記検査を高い特異性および感度をもって、簡便かつ効率的に行うことができる。
したがって、本発明は、被検体から分離された生体試料における、YMAF1蛋白質の存在を検出する工程を含むアスペルギルス フミガーツス感染症の検査方法を提供する。
本発明において「アスペルギルス フミガーツス感染症」とは、アスペルギルス フミガーツス(Aspergillus fumigatus)の感染を起因とする疾患のことであり、例えば、慢性肺アスペルギルス症(CPA)、侵襲性アスペルギルス症(IA)、侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)が挙げられる。
本発明において「生体試料」とは、本発明の検査方法において、YMAF1蛋白質の存在を検出する対象となる細胞、組織、臓器、体液(例えば、血清、尿)、これらの洗浄液(例えば、気管支肺胞洗浄液)等の試料を意味する。これらの中では、通常の検査(ルチン検査)の残りをYMAF1蛋白質の存在を検出する対象とすることができるという観点から、本発明にかかる「生体試料」は血清であることが好ましい。
「被検体から分離された」とは、生体から細胞等を採取・摘出することによって、当該細胞等が、その由来の生体と完全に隔離されている状態を意味する。生体試料の採取等の方法は特に限定されることなく、公知の方法を用いることができる。
前記細胞等を採取・摘出する「被検体」は、ヒトを含む動物であるが、ヒト以外の動物としては特に制限はなく、種々の家畜、家禽、ペット、実験用動物などを対象とすることができる。具体的には、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、カモ、ダチョウ、アヒル、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、マウス、ラット、サルなどが挙げられる。また、アスペルギルス フミガーツス感染個体に限らず、健常個体(アスペルギルス フミガーツスに感染しているおそれがある個体を含む)や、臓器移植や抗がん剤投与、HIV感染のような免疫不全状態にあり、アスペルギルス フミガーツスが日和見的に感染するおそれのある、非健常個体を対象とすることもできる。
本発明において、「YMAF1蛋白質」は、典型的には、配列番号:32に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質である。しかしながら、蛋白質のアミノ酸配列は、そのコードする遺伝子の変異などにより、自然界において(すなわち、非人工的に)変異しうる。したがって、本発明の検出の対象となる「YMAF1蛋白質」には、このような天然の変異体が含まれる。天然の変異体は、通常、前記典型的なアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入もしくは付加されたアミノ酸配列からなる。アミノ酸配列の置換、欠失、挿入もしくは付加は、一般的には、10アミノ酸以内(例えば、5アミノ酸以内、3アミノ酸以内、1アミノ酸)であり、例えば、GenBankアクセッション番号:XP_731487.1で特定されるアミノ酸配列からなる蛋白質(配列番号:54に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質)が挙げられる。なお、配列番号:32に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列の典型例を配列番号:31に示す。また、配列番号:54に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列(ゲノムの配列)の典型例を配列番号:53に示す。
本発明において「YMAF1蛋白質の存在を検出する」とは、YMAF1蛋白質の存在の有無の検出、およびYMAF1蛋白質の存在の程度の検出の双方を含む意である。YMAF1蛋白質の存在量は、絶対量としてまたは相対量として把握することができる。存在量を把握する場合には、例えば、用意した標準試料のYMAF1蛋白質の存在量と比較して判断することができる。「標準試料」は、YMAF1蛋白質を発現しているか否かが事前に特定されている試料である。例えば、アスペルギルス フミガーツスに感染している個体由来の血清を、本発明にかかる標準試料とすることができる。また、アスペルギルス フミガーツスに感染していない健常個体由来の血清も、本発明にかかる標準試料とすることができる。
また、かかる「YMAF1蛋白質の存在の検出」においては、前記生体試料に含有されているアスペルギルス フミガーツスを培養し、その培養物を検出の対象としてもよい。かかる培養物の調製方法としては、例えば、後述の実施例において示すような、アスペルギルス最少培地(AMM)、SD培地、PDA培地、YPD培地、Spider培地、PDA培地もしくはYG培地、またはそれらにウシ血清を添加した培地等にて、25〜37℃で前記生体試料に付着や含有しているアスペルギルス フミガーツスを培養する方法が挙げられる。
本発明におけるYMAF1蛋白質の存在の検出は、YMAF1蛋白質に対する抗体やYMAF1蛋白質に対する核酸アプタマー等のYMAF1蛋白質を特異的に認識して結合できる物質を利用して行うことができる。これらの中では、迅速で感度のよい検出が可能となり、操作も簡便であるため、YMAF1蛋白質に対する抗体を用いた検出方法(免疫学的手法)によることが好ましい。
免疫学的手法では、YMAF1蛋白質に対する抗体(抗YMAF1蛋白質抗体)が使用され、当該抗体をYMAF1蛋白質に接触させ、当該抗体のYMAF1蛋白質への結合性(結合量)を指標として、YMAF1蛋白質が検出される。ここで「接触」とは、抗YMAF1蛋白質抗体がYMAF1蛋白質を認識しうる生理条件下に、当該抗体とYMAF1蛋白質とをおくことを意味する。
免疫学的手法に用いる「抗体」は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよく、また、抗体の機能的断片であってもよい。また、「抗体」には、免疫グロブリンのすべてのクラスおよびサブクラスが含まれる。本発明の抗体は、自然環境の成分から分離され、および/または回収された(即ち、単離された)抗体である。本発明において抗体の「機能的断片」とは、抗体の一部分(部分断片)であって、標的蛋白質を特異的に認識するものを意味する。具体的には、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、およびこれらの重合体などが挙げられる。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であれば、抗原(標的蛋白質、その部分ペプチド、またはこれらを発現する細胞など)で免疫動物を免疫し、その抗血清から、従来の手段(例えば、塩析、遠心分離、透析、カラムクロマトグラフィーなど)によって、精製して取得することができる。また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法や組換えDNA法によって作製することができる。
本発明に用いられる免疫学的手法としては、例えば、ELISA法、免疫組織化学的染色法、フローサイトメトリー法、ラジオイムノアッセイ、免疫沈降法、ウェスタンブロッティング、抗体アレイ、イムノクロマト法等が挙げられる。
前記免疫学的手法の中では、特異性、感度が高いという観点から、ELISA法が好ましい。
本発明にかかるELISA法は、当業者であれば、YMAF1蛋白質に対する抗体を利用し、適宜公知の手法を採用して実施することができる。例えば、サンドイッチELISA法においては、まず、基板に固定した抗YMAF1蛋白質抗体(捕獲用抗体)に、前記生体試料中のYMAF1蛋白質、YMAF1蛋白質を含むアスペルギルス フミガーツスの菌体の断片またはアスペルギルス フミガーツスの菌体そのものを捕獲する。次いで、捕捉したYMAF1蛋白質等に対して、後述の酵素標識がなされた抗YMAF1蛋白質抗体(検出用抗体)を作用させ、YMAF1蛋白質を化学的にまたは光学的に検出する。
本発明にかかるELISA法において、捕獲用抗体と検出用抗体とは、YMAF1蛋白質を認識する限り、同一の抗体であってもよく、異なる抗体であってもよいが、YMAF1蛋白質を非競合的に捕獲、検出することができるという観点から、異なる抗体であることが好ましい。異なる抗体としては、例えば、捕獲用抗体が抗YMAF1蛋白質ポリクローナル抗体であり、検出用抗体が抗YMAF1蛋白質モノクローナル抗体であるという組み合わせ、捕獲用抗体が抗YMAF1蛋白質モノクローナル抗体であり、検出用抗体が抗YMAF1蛋白質ポリクローナル抗体であるという組み合わせ、または捕獲用抗体が抗YMAF1蛋白質モノクローナル抗体であり、検出用抗体が当該捕獲用抗体の認識する部位(エピトープ)とは異なる部位を認識する抗YMAF1蛋白質モノクローナル抗体であるという組み合わせである。
本発明の抗体は、好ましくは、YMAF1蛋白質の細胞外領域である1〜33位のアミノ酸配列からなる領域(配列番号:33に記載のアミノ酸配列からなる領域)を認識する抗体である。
本発明の抗体は、より好ましくは、本実施例に記載の、4B6M2K抗体、1B4C抗体または3G4FB7抗体の軽鎖CDR1〜CDR3を含む軽鎖可変領域と、重鎖CDR1〜CDR3を含む重鎖可変領域とを保持する抗体あるいはそれらのアミノ酸配列変異体である。具体的には、以下の抗体である。
「4B6M2K抗体のCDRを含む可変領域を保持する抗体」
(a)配列番号:1〜3に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:4〜6に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
「1B4C抗体のCDRを含む可変領域を保持する抗体」
(b)配列番号:7〜9に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:10〜12に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
「3G4FB7抗体のCDRを含む可変領域を保持する抗体」
(c)配列番号:13〜15に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:16〜18に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体。
本発明の抗体は、特に好ましくは、本実施例に記載の抗体の軽鎖可変領域と、重鎖可変領域を保持する抗体あるいはそのアミノ酸配列変異体である。具体的には、以下の抗体である。
「4B6M2K抗体の可変領域を保持する抗体」
(a)配列番号:20に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:22に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
「1B4C抗体の可変領域を保持する抗体」
(b)配列番号:24に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:26に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
「3G4FB7抗体の可変領域を保持する抗体」
(c)配列番号:28に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:30に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体。
本発明の抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、またはペプチド合成によって作製することができる。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖または軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレームワーク領域およびCDR)であってもよい。CDR以外のアミノ酸の改変は、抗原との結合親和性への影響が相対的に少ないと考えられるが、現在では、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法が公知である(PNAS,102:8466−8471(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:485−493(2008)、国際公開第2002/051870号、J.Biol.Chem.,280:24880−24887(2005)、Protein Engineering,Design&Selection,21:345−351(2008))。
改変されるアミノ酸数は、好ましくは、10アミノ酸以内、より好ましくは5アミノ酸以内、最も好ましくは3アミノ酸以内(例えば、2アミノ酸以内、1アミノ酸)である。アミノ酸の改変は、好ましくは、保存的な置換である。本発明において「保存的な置換」とは、化学的に同様な側鎖を有する他のアミノ酸残基で置換することを意味する。化学的に同様なアミノ酸側鎖を有するアミノ酸残基のグループは、本発明の属する技術分野でよく知られている。例えば、酸性アミノ酸(アスパラギン酸およびグルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リシン・アルギニン・ヒスチジン)、中性アミノ酸においては、炭化水素鎖を持つアミノ酸(グリシン・アラニン・バリン・ロイシン・イソロイシン・プロリン)、ヒドロキシ基を持つアミノ酸(セリン・トレオニン)、硫黄を含むアミノ酸(システイン・メチオニン)、アミド基を持つアミノ酸(アスパラギン・グルタミン)、イミノ基を持つアミノ酸(プロリン)、芳香族基を持つアミノ酸(フェニルアラニン・チロシン・トリプトファン)で分類することができる。アミノ酸配列変異体は、抗原への結合活性が対象抗体(代表的には、本実施例に記載の抗体)と同等であることが好ましい。抗原への結合活性は、例えば、抗原を発現するBa/F3細胞を作製し、抗体サンプルとの反応性をフローサイトメーターで解析することにより評価することができる(後述の実施例3参照)。また、抗原への結合活性は、上記した通り、例えば、後述の実施例3に記載のウェスタンブロットにより評価することができる。
一旦、本実施例に記載の抗体が得られた場合、当業者であれば、その抗体が認識する蛋白質上のペプチド領域(エピトープ)を特定して、その領域に結合する種々の抗体を作製することができる。抗体のエピトープは、標的となる蛋白質のアミノ酸配列から得られたオーバーラップする合成オリゴペプチドへの結合を調べるなどの周知の方法によって決定することができる(例えば、Ed Harlow and D.Lane,Using Antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press、米国特許4708871号)。ファージディスプレイによるペプチドライブラリーをエピトープマッピングに用いることもできる。二つの抗体が同一または立体的に重なり合ったエピトープと結合するかどうかは、競合アッセイ法により決定することができる。
上記の抗体は、本発明の検査方法のみならず、後述する、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防又は治療する方法においても有用である。
上記の抗体を本発明の検査方法に用いる場合には、標識物質を結合させた抗体を使用することができる。当該標識を検出することにより、標的蛋白質に結合した抗体量を直接測定することが可能である。標識物質としては、抗体に結合することができ、化学的又は光学的方法に検出できるものであれば特に制限されることはなく、例えば、ペルオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)、アルカリホスファターゼ、ビオチンおよび放射性物質などが挙げられる。
さらに、標識物質を結合させた抗体を用いて標的蛋白質に結合した抗体量を直接測定する方法以外に、標識物質を結合させた二次抗体を利用する方法や二次抗体と標識物質を結合させたポリマーを利用する方法などの間接的検出方法を利用することもできる。ここで「二次抗体」とは、上記本発明の抗体に特異的な結合性を示す抗体である。例えば、上記本発明の抗体をウサギ抗体として調製した場合には、二次抗体として抗ウサギIgG抗体を使用することができる。ウサギ、ヤギ、マウスなどの様々な生物種に由来する抗体に対して、使用可能な標識二次抗体が市販されており、本発明の抗体の由来する生物種に応じて、適切な二次抗体を選択し、本発明において使用することができる。二次抗体に代えて、標識物質を結合させたプロテインGやプロテインAなどを用いることも可能である。
アスペルギルス フミガーツス感染症の患者以外の者、すなわち、アスペルギルス フミガーツス感染症が認定されていない者を対象として、上記方法を実施して得られた情報は、アスペルギルス フミガーツス感染症の罹患の有無の判定評価等に利用できる。一方、アスペルギルス フミガーツス感染症の患者を対象として、上記方法を実施して得られた情報は、当該患者の病態の評価ないし把握、治療効果の評価などに利用できる。例えば、アスペルギルス フミガーツス感染症の治療と並行して本発明の方法を実施すれば、結果として得られる情報を基に治療効果を評価することができる。具体的には、薬剤投与後に本発明の方法を実施することで患者から分離された生体試料におけるYMAF1蛋白質の存在の有無、存在量の変化を調べ、当該存在量の増減の推移から治療効果を判定することができる。このように本発明の方法を治療効果のモニターに利用してもよい。
被検体におけるアスペルギルス フミガーツス感染症の検査は、通常、医師(医師の指示を受けた者も含む。以下同じ。)によって行われるが、本発明の方法によって得られる、生体試料におけるYMAF1蛋白質の存在に関するデータは、医師による診断に役立つものである。よって、本発明の方法は、医師による診断に役立つデータを収集し、提示する方法とも表現しうる。
<アスペルギルス フミガーツス感染症の検査用組成物>
また、本発明は、前記YMAF1蛋白質に対する抗体を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を検査するための組成物を提供する。本発明の検査用組成物に用いる抗体は、上記した通り、標識したものであってもよい。本発明の検査用組成物は、抗体成分の他、組成物として許容される他の成分を含むことができる。このような他の成分としては、例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩、標識化合物、二次抗体などが挙げられる。賦形剤としては乳糖、デンプン、ソルビトール、D−マンニトール、白糖等を用いることができる。崩壊剤としてはデンプン、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等を用いることができる。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩等を用いることができる。乳化剤としてはアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。懸濁剤としてはモノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。安定剤としてはプロピレングリコール、ジエチリン亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いることができる。保存剤としてはフェノール、塩化ベンザルコニウム、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチルパラベン等を用いることができる。防腐剤としてはアジ化ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。
また、上記本発明の検査用組成物の他、標識の検出に必要な基質、陽性対照や陰性対照、あるいは試料の希釈や洗浄に用いる緩衝液等を組み合わせることができ、アスペルギルス フミガーツス感染症の検査用キットとすることもできる。また、標識されていない抗体を抗体標品とした場合には、当該抗体に結合する物質(例えば、二次抗体、プロテインG、プロテインAなど)を標識化したものを組み合わせることができる。さらに、かかるアスペルギルス フミガーツス感染症の検査用キットには、当該キットの使用説明書を含めることができる。
<アスペルギルス フミガーツス感染症の予防・治療用組成物並びに予防・治療方法>
後述の実施例において示す通り、本発明者らは、YMAF1蛋白質がアスペルギルス フミガーツスの病原性に関与し、当該蛋白質に対する抗体を投与することによって、アスペルギルス フミガーツス感染症に罹患したマウスの生存率が向上することを明らかにした。
したがって、本発明は、前記YMAF1蛋白質に対する抗体を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防又は治療するための組成物を提供する。
本発明の、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防又は治療するための組成物に含有される抗体には、前述の他、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および、これら抗体の機能的断片が含まれ、これらの中では、副作用低減の観点から、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体が望ましい。
本発明において「キメラ抗体」とは、ある種の抗体の可変領域とそれとは異種の抗体の定常領域とを連結した抗体である。キメラ抗体は、例えば、抗原をマウスに免疫し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(可変領域)を切り出して、ヒト骨髄由来の抗体定常部(定常領域)遺伝子と結合し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入して産生させることにより取得することができる(例えば、特開平8−280387号公報、米国特許第4816397号公報、米国特許第4816567号公報、米国特許第5807715号公報)。また、本発明において「ヒト化抗体」とは、非ヒト由来の抗体の抗原結合部位(CDR)の遺伝子配列をヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)した抗体であり、その作製方法は、公知である(例えば、EP239400、EP125023、WO90/07861、WO96/02576参照)。本発明において、「ヒト抗体」とは、すべての領域がヒト由来の抗体である。ヒト抗体の作製においては、免疫することで、ヒト抗体のレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を利用することが可能である。ヒト抗体の作製手法は、公知である(例えば、Nature,1993,362,255−258、Intern.Rev.Immunol,1995,13,65−93、J.Mol.Biol,1991,222,581−597、Nature Genetics,1997,15,146−156、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2000,97:722−727、特開平10−146194号公報、特開平10−155492号公報、特許2938569号公報、特開平11−206387号公報、特表平8−509612号公報、特表平11−505107号公報)。
本発明の予防・治療用組成物は、公知の製剤学的方法により製剤化することができる。例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤、注射剤、坐剤などとして、経口的または非経口的に使用することができる。
これら製剤化においては、薬理学上もしくは飲食品として許容される担体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせることができる。
本発明の予防・治療用組成物は、アスペルギルス フミガーツス感染症の予防または治療に用いられる公知の組成物と併用してもよい。かかる公知の組成物としては、例えば、アゾール系抗真菌薬、エキノキャンディン系抗真菌薬が挙げられる。また、アスペルギルス フミガーツスが日和見的に感染するおそれのある患者に対する薬剤(例えば、臓器移植の際およびその後等に用いられる免疫抑制剤、抗がん剤、HIV治療薬)と併用してもよい。
本発明の予防・治療用組成物を投与する場合、その投与量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態、組成物の種類などに応じて、適宜選択される。例えば、1回当たりの本発明の予防・治療用組成物の投与量は、一般に、0.01mg/kg体重〜100mg/kg体重である。
本発明は、このように、本発明の組成物をアスペルギルス フミガーツス感染症の患者やアスペルギルス フミガーツスに感染するおそれのある患者に投与することにより、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防または治療することができる。したがって、本発明は、前記YMAF1蛋白質に対する抗体を投与する工程を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防又は治療するための方法も提供することができる。
本発明の予防・治療用組成物の製品(医薬品)またはその説明書は、アスペルギルス フミガーツス感染症を予防または治療するために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品または説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器、包装などに表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書、宣伝物、その他の印刷物などに表示を付したことを意味する。
<アスペルギルス フミガーツス感染症の予防・治療・検査用化合物のスクリーニング方法>
さらに、本発明は、被験化合物をYMAF1蛋白質又はその一部に接触させ、YMAF1蛋白質又はその一部に結合する化合物を選択する工程を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症の検査、予防又は治療をするための化合物のスクリーニング方法をも提供するものである。
本発明のスクリーニング方法において使用する「被験化合物」としては特に制限はなく、例えば、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成低分子化合物ライブラリー、ペプチドライブラリー、抗体、細菌放出物質、細胞(微生物、植物細胞、動物細胞)の抽出液及び培養上清、精製または部分精製ポリペプチド、海洋生物、植物または動物由来の抽出物、土壌、ランダムファージペプチドディスプレイライブラリーが挙げられる。
また、ここで用いる「YMAF1蛋白質」は、例えば、配列番号:32に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、配列番号:54に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、GenBankアクセッション番号:XP_731487.1で特定されるアミノ酸配列からなる蛋白質が挙げられる。さらに、YMAF1蛋白質の一部としては特に制限はないが、細胞外領域であるYMAF1蛋白質の1〜33位のアミノ酸配列からなるポリペプチド(例えば、配列番号:33に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド)であることが好ましい。
YMAF1蛋白質又はその一部は、必要に応じて、検出を容易にするための他の蛋白質(例えば、アルカリフォスファターゼ(SEAP)、β−ガラクトシダーゼ等の酵素、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、緑色蛍光蛋白質(GFP)等の蛍光蛋白質)との融合蛋白質として用いることもできる。
YMAF1蛋白質又はその一部は、精製された蛋白質として用いることもでき、また、細胞などに発現させた蛋白質として用いることもできる。
被験化合物のYMAF1蛋白質又はその一部への接触は、精製蛋白質を含む系への添加や当該蛋白質を発現させた細胞を培養する培養液への添加などにより行うことができる。また、被験化合物とYMAF1蛋白質又はその一部との結合は、公知の手法、例えば、免疫共沈降法、酵母ツーハイブリッドシステム、ELISA法、表面プラズモン共鳴現象を利用した検出装置(例えば、BIAcore(GEヘルスケア社製))を用いた方法、FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)を利用した方法により検出することができる。
アスペルギルス フミガーツス感染症の予防又は治療をするための化合物のスクリーニングにおいては、前記(a)および(b)の工程に加えて、さらに、前記(b)の工程において選択されたYMAF1蛋白質又はその一部に結合する化合物がアスペルギルス フミガーツスの病原性を抑制する活性を有するかどうかを解析する工程を実施してもよい。アスペルギルス フミガーツスの病原性を抑制する活性を有するかどうかを解析する方法としては、後述の実施例において示すような、前記化合物を添加した培地においてアスペルギルス フミガーツスを培養した際に、前記化合物を添加していない培地における培養と比較して、当該アスペルギルス フミガーツスのアグリゲーションや胞子形成能が低下しているかどうかを解析する方法が挙げられる(実施例4 参照)。また、実験的マウスアスペルギルス症(侵襲性アスペルギルスモデルマウス)に前記化合物を投与し、前記化合物の非投与例と比較して、生存率が向上するかどうかを解析する方法が挙げられる(実施例6 参照)。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1) SST−REXの実施
アスペルギルス フミガーツスの細胞表面に発現している膜蛋白質又は分泌蛋白質をコードする遺伝子の情報を網羅的に得るためにSST−REXを実施した。
(1)cDNAの作製
アスペルギルス フミガーツス臨床分離株MF−13の分生子をYPD培地37℃で3日間培養した。培養により分生子から菌糸体が形成され、さらに当該菌糸体を直径約5〜10mmの糸状に増殖させた。そして、アスペルギルス フミガーツスを集菌した後に、当該菌からトータル(total) RNAを調製した。そして、このトータルRNAを材料にファストトラック2.0 mRNA mRNA分離キット(FastTrack2.0 mRNA Isolation kit、invitrogen社製、#K1593−02)を用いて、mRNA 12μgを得た。次いで、スーパースクリプト(TM)チョイスシステム(SuperScript(TM) Choice System、invitorgen社製、#18090−019)を用いて、得られたmRNA3μgから2本鎖cDNAの作製を行った。
(2)pMX−SSTベクターへのcDNA配列の組み込み(キメラ化)
レトロウイルスベクターpMX−SSTに得られたcDNAを組み込むためにpMX−SSTベクター(Kojima T.およびKitamura T.、Nature Biotechnology、1999年、17巻、487〜490ページ 参照)5μgを制限酵素BstXIを用いて、100μlの反応系で45℃で4時間切断処理した。反応液すべてを1%アガロースゲルにて電気泳動し、ベクター部位に相当する約5000塩基の長さのDNA断片を切り出した。さらにウィザード(登録商標)SVゲル及びPCRクリーンアップシステム(Wizard(R) SV Gel and PCR Clean−Up System、promega社製、#A9282)を用いて、約5000塩基の長さのDNA断片を精製した。このようにして得られたDNA断片をpMX−SSTベクターをBstXIで制限酵素処理したものとし、これを1μl当たり50ng含む水溶液となるよう調製した。
先に調製した2本鎖cDNAは、平滑末端であり、BstXIで制限酵素処理したpMX−SSTと直接結合させることはできない。そこで、2本鎖cDNAの両端にBstXIの制限酵素切断後のDNA配列を持たせるための作業を行った。BstXIアダプター(BstXI Adapter、invitorgen社製、#N408−18)9μgを10μlの水に溶かし、さらに当該BstXI Adapter水溶液に2本鎖cDNAを溶かした。これにライゲ―ションハイ(LigationHigh、TOYOBO社製、#LGK−201)を5μl添加し、懸濁して、16℃で16時間反応させて、BstXI Adapterと2本鎖cDNAとを結合させた。そして、このように調製して得られたDNAを1.5%のアガロースゲルにて電気泳動した。その後、約500塩基〜約4000塩基の長さを持った2本鎖cDNA断片とBstXI Adapterとの結合体を含んだゲルを切り出し、Wizard(R) SV Gel and PCR Clean−Up Systemを用いて、2本鎖cDNAとBstXI Adapterとの結合体を精製した。
次いで、BstXIで制限酵素処理したpMX−SSTベクター50ng、前記にて精製して得られた2本鎖cDNAとBstXI Adapterとの結合体の全量およびT4 DNAライゲース(ligase)を、20μlの反応系にて室温で3時間処理し、pMX−SSTベクターをBstXIで制限酵素処理したものと前記結合体とを結合させた。なお、反応液の組成は能書にしたがって調整した。
(3)cDNAライブラリの増幅
pMX−SSTベクターを用いて構築したcDNAライブラリを大腸菌に導入して増幅を行った。cDNAライブラリに、5μgのtRNA、12.5μlの7.5M酢酸ナトリウムおよび70μlのエタノールを加え、転倒混和した後、20,400×gで30分遠心し、上清を捨て沈殿を得た。得られた沈殿に500μlの70%エタノールを加え、20,400×gで5分遠心し、上清を捨て得られた沈殿を6μlの水に溶かした。cDNAを大腸菌内で増幅させるために、そのうちの2μlを、コンピテントセル(invitrogen社製、#18920−015)23μlと混ぜ、1.8kVの条件でエレクトロポレーションを行い、1mlのSOC培地に全量を懸濁した。この作業を2回行い、大腸菌を懸濁したSOC培地を37℃で90分間、振とう培養した。その後、この培養溶液全量を、培地1ml当たりアンピシリン100μgを含むLB培地300mlに投入し、37℃で16時間、振とう培養した。なお、LB培地の組成は、トリプトン 1%(w/v)、酵母エキス 0.5%(w/v)、塩化ナトリウム 1%(w/v)である。
また、cDNAライブラリの大腸菌への導入数およびpMX−SSTベクターと結合したcDNAの鎖長を確認するために、培養液3μlを取り出し、50μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地にプレーティングした。その結果、3μlをプレーティングしたLB寒天培地に280個のコロニーの生育が見られた。これにより培養液500ml中に2.8×10個の独立したcDNAライブラリがあると考えられた。
また、コロニーのうち任意の16個についてプラスミドを抽出し、制限酵素BstXIで制限酵素処理し、処理物を1%アガロースゲルにて電気泳動を行い、pMX−SSTベクター上のcDNAの長さを計測した。その結果、平均値は約1200塩基であった。
そして、残りの培養液から集菌し、ヌクレオボンド(登録商標)AX500カラム(NucleoBond(R) AX 500 columns、日本ジェネティクス社製、#740574)を用いてプラスミドを精製し、増幅されたcDNAライブラリ系を確立した。
(4)cDNAライブラリのパッケージングおよびSST−REX法の実施
cDNAライブラリ由来遺伝子が組み込まれたpMX−SSTレトロウイルスベクターRNAを含むレトロウイルスを産生させるため、ウイルスパッケイジング細胞Plat−E(Morita S.ら、Gene Ther.、2000年6月、7巻、12号、1063〜1066ページ 参照)2×10個を、4mlのDMEM培地(Wako社製、#044−29765)を含む6cmディッシュに懸濁し、37℃で5%COの条件で24時間培養した。一方、100μlのopti−MEM(GIBCO社製、#31985070)と9μlのヒュージーン(Fugene、Roche社製、#1814443)を混ぜ、5分室温で放置後、3μgのcDNAライブラリを添加し、15分室温で放置した。cDNAライブラリを含む溶液を、培養後のPlat−E細胞に滴下し、24時間後に上清を入れ替えて同一条件で培養を続けた。さらに24時間後の上清を0.45μmのフィルターを通してろ過した。
この取得したろ過上清0.5mlを、4×10個のBa/F3細胞を含むRPMI−1640培地(コージンバイオ株式会社製)9.5mlが入れられた10cmディッシュ中に加えた。
さらに10μlのポリブレン(CHEMICON社製、#TR−1003−G)と10ngのIL−3とを添加し、24時間培養した。その後、細胞を3回RPMI−1640培地で洗浄し、新しいRPMI−1640培地200mlに懸濁して96ウェルプレート20枚に均等分量になるようにまき、Ba/F3細胞の自律増殖能に基づくセレクションおよびクローニングを試みた。10日後〜20日後までに増殖が見られた細胞をSST−REXに基づいて選抜されたものとし、該細胞が各ウェル全体に増殖するまでさらに培養を続けた。
(5)SST−REXで得られた遺伝子産物の解析
各ウェルから得られた細胞の半分量は拡大培養して、細胞ストックとした。さらに、細胞ストックからの細胞を培養して、組み込まれたcDNA由来のペプチド分子を細胞外に発現するトランスフェクタントBa/F3細胞を、抗体作製のための免疫源細胞として、また、スクリーニング対象の細胞として用いた。各ウェルから得られた細胞の残り半分からはゲノムを抽出してシークエンスを行い、導入されたcDNA由来の遺伝子を解析した。シークエンスにおいては、得られたゲノムに対して、プライムスター マックス DNAポリメラ―ゼ(PrimeSTAR MAX DNA polymerase、TaKaRa社製、#R045A)を用いて、PCRを行った。なお、PCRには以下の配列からなるプライマーを用いた。
SST3’側−T7 5’−TAATACGACTCACTATAGGGCGCGCAGCTGTAAACGGTAG−3’(配列番号:34)
SST5’側−T3 5’−ATTAACCCTCACTAAAGGGAGGGGGTGGACCATCCTCTA−3’(配列番号:35)。
そして、得られたPCR産物をWizard(R) SV Gel and PCR Clean−Up Systemなどを用いて精製した。その後、精製したPCR産物について、ビッグダイターミネーターv3.1サイクルシークエンシング(BigDye Terminator v3.1 Cycle sequencing、ABI社製、#4337456)およびDNAシークエンサーABI3100XLを用いて、シークエンスを行った。なお、シークエンスのプライマーには以下のものを用いた。
SST5’側−T3 5’−ATTAACCCTCACTAAAGGGAGGGGGTGGACCATCCTCTA−3’(配列番号:35)。
得られたシークエンスデータは、BLAST検索(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)とSignalP 3.0 Server(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を利用して解析した。
上記の通り、細胞を材料として、SST−REX法を実施した結果、407個のトランスフェクタントBa/F3細胞からのcDNA由来の遺伝子のシークエンスを行い、異なる遺伝子75種類を取得できた。遺伝子解析に供したトランスフェクタントBa/F3細胞系には、cDNA由来の遺伝子1種類のみ含まれていることを確認し、以降の実験に供した。以後このようにして得られたcDNA由来遺伝子を含む細胞を「SSTクローン細胞」と称する。
(実施例2) YMAF1遺伝子のクローニングと発現系の構築
(1)発現遺伝子の同定とクローニング
実施例1のSST−REX法で得られた分泌蛋白質、膜蛋白質をコードすると考えられる遺伝子に対し、アスペルギルス フミガーツスのゲノムデータベースに記載されているアノテーション(annotation)情報などから対応遺伝子を同定した。同定された多くの遺伝子がデータベース上の情報では機能不明であったが、得られた遺伝子を含むSSTクローン数を考慮し、該遺伝子を含むSSTクローン細胞が最多数とれて、発現量が高いと考えられた遺伝子 YMAF1(YPD medium associated major antigen of Aspergillus fumigatus、SSTクローン細胞コード:ACT073−502)をターゲットとした。
YMAF1遺伝子はデータベース上では分子量約23KDaの保存された仮想蛋白質(Conserved hypothetical protein)をコードする遺伝子であり、相同性検索では、A.clavatusにおいて本遺伝子と相同性60%の遺伝子が存在するが、A.flavus、A.nigerおよびA.nidulansでは相同性の高い遺伝子は存在しなかった。
次に、アスペルギルス フミガーツス mRNAよりoligo−dTをテンプレートとして逆転写酵素により1st strand cDNAを合成し、YMAF1遺伝子のコーディング領域をPCR法により増幅し、pBluescript IIへクローニングした。
なお、得られたYMAF1遺伝子及び当該遺伝子がコードする蛋白質は、Aspergillus fumigatus AF293 conserved hypothetical protein(AFUA_6G00690),partial mRNA(GenBankアクセッション番号:XM_726394.1)およびconserved hypothetical protein[Aspergillus fumigatus Af293](GenBankアクセッション番号:XP_731487.1)と、各々塩基配列にて3箇所、アミノ酸配列にて1箇所の違いが見られたが、そのほかの配列は同じであった(図1 参照)。
(2) 出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae、S.cerevisiae)発現系による組換え蛋白質の作製
クローニングしたYMAF1遺伝子をHA tagを蛋白質のC末端に付加するpADH−HA発現ベクターに挿入し、S.cerevisiaeに導入した。このように調製したS.cerevisiaeの培養上清を回収後、抗HA抗体で免疫沈降し、抗HA−抗体で分泌蛋白質を検出するウエンスタンブロットに供した。その結果、約23KDaのバンドが確認された(図2 参照)。
(3) 大腸菌による組換え蛋白質の作製
YMAF1遺伝子をコードする領域をpGEX−6P−1−His6a−Flagベクターにクローニングし、大腸菌で発現させて大量培養を行った。培養して得られた菌を緩衝液(50mM Tris−HCl pH7.5、100mM NaCl、10% グリセロール)に懸濁し、超音波破砕処理を施して、可溶性画分を得た。次いで、このようにして調製した可溶性画分からYMAF1とGSTとの融合蛋白質を、グルタチオン セファロース(Glutathione Sepharose)カラムにより精製した。そして、このように精製した組換え蛋白質を、ウサギによるポリクローナル抗体作製、ウエスタンブロット、サンドイッチELISAのコントロールに使用した。また、前記超音波破砕処理における不溶性画分は8M ウレアにて処理し、その可溶性画分も回収した。なお、この大腸菌の発現系においては、超音波破砕処理における可溶性画分、不溶性画分(前記8M ウレア可溶性画分)のいずれからも分子量約60KDaのYMAF1とGSTとの融合蛋白質の発現が確認された(図3および4 参照)。
(実施例3) YMAF1抗体の作製
(1)ポリクローナル抗体
実施例2(3)に記載のYMAF1遺伝子をクローニングしたベクターを大腸菌BL21に導入し、前記組換え蛋白質を過剰発現させて精製した。すなわち、1Lの三角フラスコにLB培地を100mL入れ、前培養した培養液のうち100分の1量をさらに加えて37℃で振とう培養を行った。次いで、O.D.600=0.7になった時点でIPTGを終濃度1mMになるよう培養液に入れ、37℃でさらに3時間の振とう培養を行った。そして、得られた大腸菌体に2mL程度のTris−HClバッファー(pH7.5)を加え、過熱せぬよう氷上でソニケーションを行った。次いで、先と同じTris−HClバッファーでペレットを洗い、再度ソニケーションを行った。この作業を3回繰り返して前記組換え蛋白質の濃縮を行った。そして、濃縮した蛋白質溶液をSDS−PAGEにて分離し、前記組換え蛋白質の部分をゲルから切り出して破砕した後、PBSバッファーに漬け、100Vで1昼夜通電し、ゲルから溶出させた。次いで、溶出した蛋白質をアミコンウルトラ(AmiconUltra、Millipore社製、カタログ番号:UFC901096)にて濃縮し、1mg/mLになるよう調製し、免疫原蛋白質とした。
免疫動物はSPF日本白色ウサギ(SPF Japanese White Rabbit)を使用した。免疫賦活剤であるタイターマックスゴールド(TiterMax Gold、Alexis Biochemicals社製、ALX−510−002−L010)100μLと等量のYMAF1蛋白質溶液(1mg/mL)100μLとを混和した。このようにして得られた乳化した免疫原を皮下に1羽当たり毎回200μL、隔週で1回、合計6回投与注入し免疫した。免疫後のウサギより採血し、遠心分離機で血清を採取した。
また、活性型CNBr−アガロースカラム3mlに10mgのGST蛋白質を結合させ、血清に含まれる抗GST抗体吸収カラムを作製した。そして、該カラムに採取した血清を添加し、ペリスタポンプで一晩循環させた。翌日、GSTカラムを洗浄し、抗GST抗体を溶出した。さらにカラムスルーの血清に対して同作業を3回繰り返し、抗GST抗体を吸収させた(除去した)血清(抗GST抗体除去血清)を取得した。なお、GSTを固相化したELISAプレートに対し当該血清を反応させ、抗GST抗体活性が消失している事を確認した。
次に、抗GST抗体除去血清をプロテインAセファロース(GEヘルスケア社製、17−1279−03)、MAPS−II結合バッファー(BIO−RAD社製、153−6161)および1M L−Arg溶出バッファーを用いて精製した。そして、溶出されたウサギIgGをPBSにて透析し、精製抗体画分(以後、「抗YMAF1ポリクローナル抗体」とも称する)を得た。また、得られた精製抗体画分について、GST蛋白質を固相化したELISAプレートおよびYMAF1蛋白質を固相化したELISAプレートにて反応性試験を実施し、YMAF1蛋白質固相化ELISAプレートに特異的に反応を示すことを確認した。
なお、YMAF1蛋白質固相化ELISAプレートは、マキシソープ(Maxisorp、NUNC社製、984688)に5μg/mLの濃度になるようPBSにて希釈したYMAF1蛋白質溶液を50mL添加し、4℃で一晩静置し、翌日反応液を捨て4% BSAおよび5%スクロースを含むPBS溶液を添加し、さらに4℃で一晩静置して翌日に反応液を捨てドラフトで乾燥させて作製した。
また、ELISA反応は、各蛋白質を固相化したELISAプレートに対して、一次抗体を10μg/mL、1μg/mL、0.1μg/mLになるようPBSにて希釈して調製し、50μL/ウェルで添加した。次いで、1時間室温で反応させた後、0.05% Tween20を含むPBSにて洗浄し、酵素標識二次抗体(MBL 458)を添加し、さらに室温で1時間反応させた。反応後0.05% Tween20を含むPBSにて洗浄し、TMB酵素基質を添加し、20分後1.5Nリン酸溶液にて反応を停止し、プレートリーダーでA450nm吸光度を測定した。
(2)モノクローナル抗体
免疫動物はマウスBALB/cを使用し、まず、免疫賦活剤として、TiterMax Goldを等量のPBSと混和して乳化したもの50μlをBalb/cマウスに投与した。翌日、抗原遺伝子を有するSSTクローン細胞(ACT073−502)を免疫原細胞として5×10個投与し、さらに免疫原細胞を2日おきに4回注入した。最初の免疫から約2週間後、摘出した二次リンパ組織をすりつぶし、抗体産生細胞を含む細胞集団を得た。それらの細胞と融合パートナー細胞とを混合し、ポリエチレングリコール(MERCK社製、1.09727.0100)を用いた細胞融合によりハイブリドーマを作製した。なお、融合パートナー細胞としては、マウスミエローマ細胞P3U1(P3−X63−Ag8.U1)を用いた。
作製したハイブリドーマは、選択培地HAT(SIGMA社製、H0262)、5% BMコンディムド(BM−condimed、Roche社製、663573)、15%FBS、1%ペニシリン/ストレプトイマイシン溶液(GIBCO社製、15140−122、Penicillin−streptomycin liquid、以降「P/S」と略す)を含むRPMI1640(Wako社製)選択培地で10〜14日間培養した。次に、一次スクリーニングとして、フローサイトメトリーにより免疫原細胞ACT073−502に反応し、抗原遺伝子を含まないSSTクローン細胞を陰性コントロール細胞として用い、これに反応しないハイブリドーマを選択した。このハイブリドーマをHT(SIGMA社製、H0137)、T−24細胞の培養上清30mlを含む15%FBS、終濃度100units/mlのP/S入りD−MEM(invitrogen社製、802931)選択培地で拡大培養した後、二次スクリーニングとして、再度フローサイトメトリーによりACT073−502細胞に反応し、これ以外のBa/F3由来細胞(ネガティブコントロール)に反応しないハイブリドーマを選択した(図5〜8 参照)。
この結果1B4C、2G11GB5、3G4FB7、4B6M2GKの4クローンが得られ、これらを単クローン化した後、抗体のアイソタイプをアイソストリップキット(Roche社製、1493027)を用いて決定した。すなわち、1B4C抗体のアイソタイプはIgMであり、2G11GB5抗体のアイソタイプはIgG3/κであり、3G4FB7抗体のアイソィプはIgG3/κであり、4B6M2GK抗体のアイソタイプはIgG1/κであった。
なお、得られた各抗体の単クローン化したハイブリドーマから精製抗体を得る際は、無血清培地(Hybridoma−SFM:GIBCO社製、12045−076)に馴化して拡大培養した後、一定期間培養して培養上清を得た。この培養上清に含まれるIgG画分をプロテインAセファロース(GEヘルスケア社製、17−1279−03)、MAPS−II結合バッファー(BIO−RAD社製、153−6161)および1M L−Arg溶出バッファーを用いて精製した。溶出されたIgGをPBSにて透析し、精製抗体画分を得た。IgMである1B4CについてはMEPハイパーセル(MEP Hypercell、Biosepra社製)、酢酸、酢酸ナトリウムを用いて精製し、溶出されたIgGをPBSにて透析し、精製抗体画分を得た。
また、各抗体については、実施例2(3)にて調製した組換え蛋白質を用いたウェスタンブロットにより、YMAF1蛋白質に対する特異性・結合性を確認した(図9 参照)。
(実施例4) YMAF1遺伝子の機能解析
YMAF1遺伝子がコードする蛋白質の機能を解析するために、アスペルギルス フミガーツスのYMAF1遺伝子破壊株並びにその相補性株を図10に示すコンストラクトに基づき作製した。なお、これらの株の作製には、ファンガル ジェネティクス ストック センター(Fungal Genetics Stock Center)から臨床分離株D141に由来するAfs35を購入して用いた。この株はakuA遺伝子が欠失されており相同組換えの頻度が高くなっている。
(1)YMAF1遺伝子破壊株の作製
YMAF1遺伝子を破壊するために用いたDNA断片(YMAF1遺伝子破壊用DNA断片)については、先ず、精製したAfs35株のゲノムDNAを鋳型としてYMAF1遺伝子の5’側の非コーディング領域約500bpと3’側の非コーディング領域約500bpをPCRにて増幅し、薬剤耐性遺伝子(ハイグロマイシンチミジンキナーゼ融合蛋白質)の両側に連結してpBluescript IIへクローニングした。そして、得られたプラスミドが期待される組換え体であることをシークエンスにより確認した後、それを鋳型としてPCR法にて増幅することにより、YMAF1遺伝子破壊用DNA断片を調製した。
Afs35株を培養した後、細胞壁を酵素処理により消化し、プロトプラストを調製した。その後、CaClとPEGとを用いてYMAF1遺伝子破壊用DNA断片を該プロトプラストに導入し、寒天培地に播き、ハイグロマイシン200μg/mlで選択した。そして、30℃で培養して出現したコロニーを分離した後、それぞれの胞子を直接PCRにかけて遺伝子破壊株を同定した。
その結果、YMAF1遺伝子破壊株(d−YMAF1株)として、選択培地で分離して解析した9株のうち6株を得ることができた。なお、このように7割弱の株が相同組換え体として得られたのは、親株として用いたAfs35株のakuA遺伝子産物のKu70蛋白質が欠損しているために高頻度で得られたものと考えられる。
(2)YMAF1遺伝子相補株の作製
YMAF1遺伝子破壊株クローンd−YMAF1を用い、YMAF1遺伝子相補株(YMAF1−comp)を作製した。すなわち先ず、YMAF1遺伝子のプロモーターを含む5’領域およびYMAF1遺伝子のC末端に3xHAペプチドタグを付加し、その下流にピリチアミン(pyrithiamine)耐性遺伝子を連結したプラスミドpCR4−YMAF1comp−3HA−ptrAを作製した。そして、このプラスミドを鋳型として遺伝子導入に用いるDNA断片をPCR法によって作製し、このDNA断片をCaClとPEGとを用いてAfs35株に導入し、寒天培地に播き0.2μg/ml pyrithiamineにて選択し遺伝子導入株を得た。また、得られた株からRT−PCRおよびサザンハイブリダイゼーション法により、相補株を同定した。得られた結果を図11および図12に示す。
なお、サザンハイブリダイゼーションは、親株Afs35、遺伝子欠損株、遺伝子相補株からDNeasyプラントミニキット(DNeasy Plant Mini kit、Qiagen社製)を用いてゲノムDNAを調製し,制限酵素BamHIにて消化して1%アガロースゲル電気泳動にて分離した後、サザンブロット法に供した。またプローブ(図10に記載の「probe A」および「probeHph」)は、AlkPhosダイレクトラベリングキットおよびCDP−スター試薬(AlkPhos direct labeling kit and CDP−Star reagent、GE healthcare社製)にて標識したものを用いた。
RT−PCRによるYMAF1 mRNAの検出については、先ず親株Afs35、遺伝子欠損株、遺伝子相補株からRNAeasyミニキット(RNAeasy Mini kit、Qiagen社製)を用いてトータルRNAを調製した。次いで、調製したトータルRNAをリバトラエース(ReverTra Ace、Toyobo社製)にて逆転写し、得られたcDNA断片を鋳型として、TaKaRa Ex Taq(Takara社製)にてPCRを行い、2%アガロースゲル電気泳動にて分離した後、エチジウムブロミドにて増幅したDNAを検出した。
図11に示す通り、サザンハイブリダイゼーション法およびRT−PCRによる解析によって、2株が期待される相補株であることがわかった。
また、図12に示す通り、最少培地(AMM)にて37℃で培養したこれらの菌体からRNAを調製し、RT−PCR法にてYMAF1遺伝子の発現について調べたところ、YMAF1遺伝子破壊株(前記d−YMAF1の6株のうちのひとつ:d−YMAF1−7)では予想通りYMAF1 mRNAは検出できなかったが、親株Afs35およびYMAF1遺伝子相補株(前記YMAF1−compの2株のうちのひとつ:YMAF1−comp−4)では、YMAF1の発現が確認された。
(3)各種培地での生育の比較
先ず、アスペルギルス最少(AMM)培地、SD培地、PDA培地、YPD培地、Spider培地およびYG培地、ならびにそれらにウシ新生仔血清を10%加えた寒天培地を調製した。
なお、AMM培地についてはR.W.Barrattら、Genetics、1965年、52巻、233〜246ページ 参照のこと。また、AMM培地に関しては、炭素源を変更した培地を調製して後述の培養に供した。すなわち図13に示す通り、1%グルコース含有AMM培地(AMM+glucose)、2%スクロース含有AMM培地(AMM+sucurose)、2%ソルビトール含有AMM培地(AMM+sorbitol)、2%グリセロール含有AMM培地(AMM+glycerol)、0.2%BSA含有AMM培地(AMM+BSA)を調製した。SD培地の組成は、酵母窒素ベース培地(アミノ酸を除く)(Yeast Nitrogen base (w/o amino acids)) 0.67%、グルコース 2%、補充アミノ酸およびピリミジン(supplement amino acids and pyrimidines) 20〜50μg/mlである。PDA培地は、ジャガイモの煮汁(200〜400g/L)に、グルコース 20g、寒天 15gを加えて調製した。YPD培地の組成は、酵母エキス(Yeast extract)1%、ペプトン2%、グルコース2%である。Spider培地については、H LiUら、Science、1994年、266巻、5191号、1723〜1726ページ 参照のこと。YG培地については、Edyta Szewczyk1ら、nature Protocols、2007年、1巻、3111〜3120ページ 参照のこと。
そして、それら培地に、前記d−YMAF1およびYMAF1−compの胞子溶液を各々スポットし、25℃、30℃または37℃にて3日培養し、これらの生育を親株Afs35と比較した。得られた結果を図13〜15に示す。また、ウシ血清を10%加えたSpider培地における生育状況ならびに分生子の状態を観察した結果を図16および17に示す。
図13および14に示す通り、各種培地での生育速度には差は見られなかった。なお、図には示していないが、25℃および37℃の場合においても、図13に示した30℃の場合と同様に、アスペルギルスの生育状況に差はなかった。
しかしながら、図15に示す通り、唯一10%ウシ新生仔血清(FBS)入りSpider培地にてコロニーの表面の状態に差が観察された。なお、図16に示す通り、分生子頭の形態には差はなかった。
また、図17に示す通り、10%血清を添加したPDA培地にて25℃で生育させた場合、YMAF1遺伝子欠損(破壊)株の胞子は白っぽく、胞子形成の状態も悪く、YMAF1遺伝子欠損株の胞子形成能が低下していることが示唆された。
次に、YMAF1蛋白質を欠損させたことにより、胞子形成能に差が生じることを確認するために、親株Afs35、YMAF1遺伝子欠損株、YMAF1遺伝子相補株を25℃、30℃または37℃にて、最少培地(AMM)で培養した後、0.05% Tween80 PBSにて胞子を洗い落し、血球計算板で胞子数を数えた。得られた結果を図18に示す。
図18に示した結果から明らかなように、PDA培地にて25℃で生育させた場合に、YMAF1遺伝子欠損株の胞子形成能が低下することが明らかになった。
(4)YMAF1蛋白質の局在についての解析
YMAF1蛋白質の局在についての解析するために、先ずウエスタンブロットを行った。すなわち、最少培地AMMにて37℃で培養した各菌体(Afs35、d−YMAF1、YMAF1−comp)を液体窒素で凍結し破砕後、50mM Tris−HCl(pH7.5)、100mM NaCl、10% グリセロールおよびプロテアーゼ阻害剤(Roche社製)に懸濁した。次いで、この懸濁液を遠心にかけ、得られた上清を細胞粗抽出液とし、得られた沈殿物を細胞壁等(細胞壁、細胞膜およびペリプラズム)の画分として調製した。そして、これらをSDS−PAGEに供し、次いで、抗YMAF1ポリクローナル抗体を用いたウエスタンブロット法により、YMAF1蛋白質を検出した。得られた結果を図19に示す。
図19に示した結果から明らかなように、Afs35およびYMAF1−compの細胞壁等の画分に分子量約60kDaのYMAF1蛋白質が検出された。なお、YMAF1蛋白質自体の分子量は23kDaであるので、糖鎖等の修飾を受けて分子量がシフトしているものと推測される。
YMAF1蛋白質の局在についての解析するために、次に免疫染色を行った。すなわち、Afs35を4%パラフォルムアルデヒドで固定後、ポリ−Lリシンをコートしたガラスプレートに細胞を接着させた。次いで、当該細胞をメタノールにて固定した後、ブロックキングを行い、抗YMAF1ポリクローナル抗体を処理し、アレクサフルオロ488抗ウサギSFXキット(Alexa Fluor 594 GOAT ANti−Rabbit IgG SFX Kit、Invitrogen社製)にてYMAF1蛋白質を検出した。得られた結果を図20に示す。
図20に示した結果から明らかなように、抗YMAF1ポリクローナル抗体を用いた免疫染色により発芽した菌体の細胞壁部分が染まった像が得られた。
また、24穴プレートを用いて、アスペルギルス フミガーツスの分生子を1.5X10コニディア(胞子数)/1mlになるように添加した培地を、各種濃度の抗YMAF1ポリクローナル抗体にて処理し、30℃で14時間培養した後に観察した。得られた結果を図21に示す。
図21に示した結果から明らかなように、抗YMAF1ポリクローナル抗体の濃度依存的に菌体の湿重量は変化しなかった。しかしながら、該抗体にて処理した培養液においては、菌体のアグリゲ−ションが見られなくなっていた。かかる結果から、前記ウェスタンブロットや免疫染色にて確認されたようにYMAF1は主に細胞壁表面に存在しており、さらに菌体どうしのアグリゲ−ションに寄与している蛋白質であることが示唆された。
(実施例5) アスペルギルスマウス感染モデルによるYMAF1蛋白質の病原性への関与
YMAF1蛋白質とアスペルギルスマウス感染症との関連性を調べるために、親株Afs35、YMAF1遺伝子欠損株、YMAF1遺伝子相補株 5x10個の胞子をそれぞれ7個体のICRマウスの気管支に投与し、生存率を調べた。得られた結果を図22に示す。
図22に示した結果から明らかなように、Afs35またはYMAF1遺伝子相補株を投与したマウスは投与後4〜10日以内に死亡したのに対し、YMAF1遺伝子欠損株では、他の検体と異なり4日目以降に死亡する個体が見られなかった。したがって、かかる生存率の差から、YMAF1蛋白質は病原性に関与していることが示唆された。
(実施例6) 抗YMAF1抗体による治療(延命)効果
実験的マウスアスペルギルス症(侵襲性アスペルギルスモデルマウス)を用いて、抗体を用いた治療効果を検証した。すなわち、先ずICRマウス(8週齢、雌)に菌接種の前日、当日、1日後にそれぞれ酢酸コルチゾン200μg/kg 皮下投与し免疫抑制の前処理を行った。そして、このモデルマウスにA.Fummigatus MF13株の胞子サスペンド1X10/ml 50μlを気管内投与した。菌接種の翌日に1個体あたり抗YMAF1モノクローナル抗体(4B6M2GK抗体)150μgをこのモデルマウスに投与し、生存率の推移を検証した。得られた結果を図23に示す。
図23に示した結果から明らかなように、4B6M2GK抗体(4B6)を投与したマウスについて、コントロールに用いたマウスIgG1抗体(ACTGen社作製)よりも延命効果が観察された。
(実施例7) YMAF1サンドイッチELISA系の構築
YMAF1蛋白質を標的としたアスペルギルス感染症の診断に好適に用いることができる、YMAF1サンドイッチELISA系の構築を試みた。
すなわち先ず、実施例3(2)で調製した抗YMAF1モノクローナル抗体精製画分に対し、10倍モル量のNHS−LC−ビオチン(PIEACE社製)を混ぜ、遮光下で4時間反応させてビオチン化し、その後PBSにて透析して、ビオチン化モノクローナル抗体を作製した。また、大腸菌で作製した蛋白質 GST−YMAF1−His6−Flag 5mg/mlを50μl/ウェルにて96穴マイクロプレートに吸着・感作させた。そして、このようにして作製した抗原プレートを用いて、ビオチン化抗YMAF1モノクローナル抗体の力価を確認し、サンドイッチELISA系における2次抗体として用いるのに適切な濃度を検討した。
次に、サンドイッチELISAの条件検討のため、修飾していない各濃度の抗YMAF1モノクローナル抗体を一次抗体(捕獲用抗体)とする抗体感作プレートを作製し、1μg/ml、0.1μg/ml、0.01μg/ml、0μg/mlの各濃度の組換え蛋白質(GST−YMAF1−His6−Flag)を反応させた。次いで、2次反応として、ビオチン化抗YMAF1モノクローナル抗体(二次抗体、検出用抗体)を前記にて決定した適切な濃度にて反応させ、さらに3次反応としてニュートラアビジン−POD(Neutravidin−POD)を反応させた後、酵素発色基質を加え発色させ、吸光度を測定した。
このようにして、実施例3(2)で調製した4種類のモノクローナル抗体を一次抗体または二次抗体として用いた全ての組み合わせにて、サンドイッチELISA系の構築を試みたが、YMAF1組換え蛋白質の濃度に依存性を示す系は得られなかった。
そこで、前述の通り、ウサギにYMAF1組換え蛋白質を免疫することで、ポリクローナル抗体を作製した。
そして、一次抗体として前記4種類の抗YMAF1モノクローナル抗体、二次抗体として、前記同様の手法にてビオチン化した抗YMAF1ポリクローナル抗体を用い、サンドイッチELISA系の構築を試みた。1B4Cモノクローナル抗体(1B4C)および3G4FB7モノクローナル抗体(3G4)を二次抗体として各々用いた系を評価した結果について、図24および図25に示す。
図24および図25に示した結果から明らかなように、また図には示していないが、4種類のうちのどのモノクローナル抗体を用いても同じように、YMAF1組換え蛋白質に対して濃度依存性を示した。また、その感度は0.3ng/ml以上であり、極めて高感度の系を構築することができた。
次に、アスペルギルス フミガーツスを様々な種類の培地を用いて30℃で振盪培養を行い、かかる培養上清中のYMAF1蛋白質の量をYMAF1サンドイッチELISA系(1B4Cモノクローナル抗体(1B4C)および3G4FB7モノクローナル抗体(3G4)を一次抗体として各々用いた系)を用いて測定した。なお、アスペルギルス フミガーツスの培養に用いたサブロー培地の組成は、1Lあたり、カゼインの膵液消化物(Pancreatic Digest of Casein)5.0g、動物組織のペプシン消化物(Peptic Digest of Animal Tissue)5.0g、デキストロース 20.0gである。
得られた結果を図26および図27に示す。
図26および図27に示した結果から明らかなように、培養上清中に放出されるYMAF1蛋白質の量は培地の種類により変化することがわかった。
(実施例8) 抗体可変領域決定方法
1B4C、2G11GB5、3G4FB7、4B6M2GKモノクローナル抗体の各可変領域の遺伝子配列を明らかにするため、1B4C、2G11GB5、3G4FB7、4B6M2GK抗体産生細胞ハイブリドーマ細胞2×10をトリゾール(Trizol、invitrogen社製、#15596−026)1mlに懸濁して5分放置し、クロロフォルムを200μl添加して、15秒間懸濁した後、12,000×gで15分間遠心し、上清を得た。この上清と500μlイソプロパノールとを混合した後、12,000×gで10分間遠心した。得られたペレットを80%エタノールで洗浄し、トータルRNAを得た。そして、その全量を20μlの水で溶かし、そのうち、トータルRNA 5μg分の溶液を使用して、SuperScript(TM) Choice Systemを用いて、トータルRNAから2本鎖cDNAを作製した。得られた2本鎖cDNAにエタノール沈殿処理を施した後、LigationHighを用いて2本鎖cDNAの5’末端と3’末端とを結合させ、そのうち1μlを鋳型としてPCRを行った。プライマーとしては、重鎖と軽鎖の定常領域に対して設計したものを使用した。プライマーの配列は、次の通りである。
<1B4C>
重鎖5’側 GATACCCTGGATGACTTCAG(配列番号:36)
重鎖3’側 CTCTCAGCATGGAAGGACAG(配列番号:37)
<2G11GB5および3G4FB7>
重鎖5’側 AGGGTACAGTCACCAAGCTG(配列番号:38)
重鎖3’側 TGCATGAGGCTCTCCATAAC(配列番号:39)
<4B6M2GK>
重鎖5’側 TGGACAGGGATCCAGAGTTC(配列番号:40)
重鎖3’側 CTGCTCTGTGTTACATGAGG(配列番号:41)
<共通>
軽鎖5’側 CACTGCCATCAATCTTCCAC(配列番号:42)
軽鎖3’側 TGTCAAGAGCTTCAACAGGA(配列番号:43)。
PCR産物を1.5%ゲルにて電気泳動を行った後、切り出して精製を行った。そして、精製したDNAを用いてシークエンスを行った。また、軽鎖については、精製したDNAをクローニングした後、シークエンスを行った。結果、2G11GB5および3G4FB7は同一の可変領域を有していることが分かった、また、決定された1B4C抗体の軽鎖の可変領域の塩基配列を配列番号:23に、アミノ酸配列を配列番号:24に、重鎖の可変領域の塩基配列を配列番号:25に、アミノ酸配列を配列番号:26に示す(図28および29 参照)。また、決定された3G4FB7抗体(2G11GB5抗体)の軽鎖の可変領域の塩基配列を配列番号:27に、アミノ酸配列を配列番号:28に、重鎖の可変領域の塩基配列を配列番号:29に、アミノ酸配列を配列番号:30に示す(図30および31 参照)。さらに、決定された4B6M2GK抗体の軽鎖の可変領域の塩基配列を配列番号:19に、アミノ酸配列を配列番号:20に、重鎖の可変領域の塩基配列を配列番号:21に、アミノ酸配列を配列番号:22に示す(図32および33 参照)。
また、これら可変領域のアミノ酸配列について、UCLの「Andrew C.R. Martin’s Bioinformatics Group」のサイトにおける配列分析(http://www.bioinf.org.uk/abysis/tools/analyze.cgi)を利用してナンバリングし、「Table of CDR Definitions」に記載の基準(http://www.bioinf.org.uk/abs/#kabatnum)に従ってCDR領域を同定した。CDR予測の結果と軽鎖および重鎖のシグナル配列とを図29、31および33に示す。また、1B4C抗体の軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:7〜9に、重鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:10〜12に示す。さらに、3G4FB7抗体(2G11GB5抗体)の軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:13〜15に、重鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:16〜18に示す。また、4B6M2GK抗体の軽鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:1〜3に、重鎖のCDR1、CDR2、CDR3のアミノ酸配列を配列番号:4〜6に示す。
(実施例9) モノクローナル抗体のエピトープ解析
1B4C、3G4FB7(2G11GB5)、4B6M2GKモノクローナル抗体のエピトープを特定するために、鎖長の異なる数種のYMAF1ポリペプチドを発現するBa/F3細胞を作製し、抗体との反応性を評価した。
すなわち、YMAF1の33aa(N末端からの鎖長さ。以下、同様)、63aa、93aa、123aa、153aaおよび183aaからなるポリペプチドを各々、解析対象とした。そして、YMAF1全長を含む組換えプラスミドを鋳型として、下記配列のDNAをプライマーとして使用し、プライムスター マックス DNAポリメラ―ゼ(PrimeSTAR MAX DNA polymerase、TaKaRa社製、#R045A)をポリメラーゼとして使用して、前記7種類のポリペプチドをコードする遺伝子の単離を行った。
フォワードプライマー(配列番号:44):GCACTCCGTTCTGGATAATG
リバースプライマー(Rに付加した数字は、増幅産物がコードするポリペプチドの鎖長を意味する)
R33(配列番号:45):TTTTCCTTTTGCGGCCGCCCCGGCGGGCGCTGTTGTCTGCGCAGGAGG
R63(配列番号:46):TTTTCCTTTTGCGGCCGCTGTGGTCGTGGGGCTGGGCTCCTCGTCACG
R93(配列番号:47):TTTTCCTTTTGCGGCCGCGTAGTGACCATAGTCCCCATATTGACCATA
R123(配列番号:48):TTTTCCTTTTGCGGCCGCATATTGACCATAGTTTCCGTAGTTTGCTGG
R153(配列番号:49):TTTTCCTTTTGCGGCCGCGCCGTAGTCGGCGGGAGTGGGAGAGGGAGT
R183(配列番号:50):TTTTCCTTTTGCGGCCGCGGTGGTAGTCGTGCGAGGCTCGTCGTCTCT。
得られた各PCR産物を1%アガロースゲルにて電気泳動を行った後、切り出し精製を行い、EcoRIとNotIとで制限酵素処理を行った。また、pMX−SSTもEcoRIとNotIとで制限酵素処理を行い、切り出して精製した。さらにそれぞれをLigationHighにて処理し、前記PCR産物が各々挿入されたプラスミドを作製した。そして、このプラスミドを導入した大腸菌を50μgアンピシリン含有LBアガロースプレートにプレーティングした。次いで、37℃で1晩培養して得られたコロニーについて、前記プラスミドのインサート(挿入)部分を増幅するようにPCRを行い、当該プラスミドが希望する配列を含んだpMX−SSTベクターであるかをシークエンスにて確認した。シークエンス用PCRプライマーとしては、次のオリゴヌクレオチドを用いた。
SST3’側 5’−GGCGCGCAGCTGTAAACGGTAG−3’(配列番号:51)
SST5’側 5’−CGGGGGTGGACCATCCTCTA−3’(配列番号:52)。
その後、実施例1(4)に記載のウイルスパッケイジング以降についての方法と同様の方法にて、各種鎖長のYMAF1遺伝子のDNA配列を含むBa/F3細胞(SSTクローン:ACT251−1〜ACT251−6)を作製した。そして、実施例3(2)に記載の方法と同様の手法にて、ACT251−1〜ACT251−6と1B4C、3G4FB7(2G11GB5)、4B6M2GK抗体との反応性をフローサイトメーターにて解析した。得られた結果を図34〜36に示す。
図34〜36に示した結果から明らかなように、1B4C、3G4FB7(2G11GB5)、4B6M2GK抗体は、いずれもYMAF1蛋白質のN末端側から1〜33アミノ酸からなるポリペプチドを発現させたクローンに対しては反応性を示した。したがって、YMAF1蛋白質のN末端から1位から33位の間にこれら抗体のエピトープが含まれることが明らかとなった。
以上説明したように、本発明によれば、アスペルギルス フミガーツスを高い感度にて検出することができる、アスペルギルス フミガーツス感染症の検査方法ならびに検査用組成物を提供することが可能となる。また、アスペルギルス フミガーツス感染症の予防・治療方法ならびに予防・治療用組成物を提供することが可能となる。さらに、これらの方法に有用な化合物のスクリーニング方法、並びにこれらの方法に有用な抗体を提供することが可能となる。
したがって、本発明は、慢性壊死性肺アスペルギルス症(CNPA)等の検査、予防、および治療において有用である。
配列番号1
<223> 4B6M2K抗体 軽鎖可変領域 CDR1
配列番号2
<223> 4B6M2K抗体 軽鎖可変領域 CDR2
配列番号3
<223> 4B6M2K抗体 軽鎖可変領域 CDR3
配列番号4
<223> 4B6M2K抗体 重鎖可変領域 CDR1
配列番号5
<223> 4B6M2K抗体 重鎖可変領域 CDR2
配列番号6
<223> 4B6M2K抗体 重鎖可変領域 CDR3
配列番号7
<223> 1B4C抗体 軽鎖可変領域 CDR1
配列番号8
<223> 1B4C抗体 軽鎖可変領域 CDR2
配列番号9
<223> 1B4C抗体 軽鎖可変領域 CDR3
配列番号10
<223> 1B4C抗体 重鎖可変領域 CDR1
配列番号11
<223> 1B4C抗体 重鎖可変領域 CDR2
配列番号12
<223> 1B4C抗体 重鎖可変領域 CDR3
配列番号13
<223> 3G4FB7抗体 軽鎖可変領域 CDR1
配列番号14
<223> 3G4FB7抗体 軽鎖可変領域 CDR2
配列番号15
<223> 3G4FB7抗体 軽鎖可変領域 CDR3
配列番号16
<223> 3G4FB7抗体 重鎖可変領域 CDR1
配列番号17
<223> 3G4FB7抗体 重鎖可変領域 CDR2
配列番号18
<223> 3G4FB7抗体 重鎖可変領域 CDR3
配列番号19
<223> 4B6M2K抗体 軽鎖可変領域 cDNA
配列番号21
<223> 4B6M2K抗体 重鎖可変領域 cDNA
配列番号23
<223> 1B4C抗体 軽鎖可変領域 cDNA
配列番号25
<223> 1B4C抗体 重鎖可変領域 cDNA
配列番号27
<223> 3G4FB7抗体 軽鎖可変領域 cDNA
配列番号29
<223> 3G4FB7抗体 重鎖可変領域 cDNA
配列番号34〜52
<223> 人工的に合成されたプライマーの配列

Claims (4)

  1. YMAF1蛋白質に対する抗体を含む、アスペルギルス フミガーツス感染症を検査するための組成物。
  2. 前記抗体が、YMAF1蛋白質中の配列番号:33に記載のアミノ酸配列からなる領域を認識する抗体である、請求項1に記載の組成物
  3. 前記抗体が、下記(a)〜(c)のうちのいずれかに記載の抗体である、請求項1に記載の組成物
    (a)配列番号:1〜3に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:4〜6に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
    (b)配列番号:7〜9に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:10〜12に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
    (c)配列番号:13〜15に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:16〜18に記載のアミノ酸配列又は該アミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体。
  4. 前記抗体が、下記(a)〜(c)のうちのいずれかに記載の抗体である、請求項1に記載の組成物
    (a)配列番号:20に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:22に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
    (b)配列番号:24に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:26に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体
    (c)配列番号:28に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、配列番号:30に記載のアミノ酸配列若しくは該アミノ酸配列からシグナル配列が除去されたアミノ酸配列、又はこれらのアミノ酸配列の少なくともいずれかにおいて、1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域とを保持し、YMAF1蛋白質に結合する抗体。
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