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JP5924320B2 - 熱間仕上圧延における熱延鋼板の先端上反り低減方法 - Google Patents

熱間仕上圧延における熱延鋼板の先端上反り低減方法 Download PDF

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本発明は、熱間仕上圧延において発生する熱延鋼板先端部の上反りの高さを仕上圧延機内で低減させる熱延鋼板の先端上反り低減方法に関する。
一般的に、熱延鋼板(熱延鋼帯とも言う)は、加熱炉においてスラブを所定の温度に加熱し、この加熱されたスラブを粗圧延機において所定の厚さに圧延してシートバーとした後、複数の圧延スタンド(水平圧延機)からなる仕上圧延機において仕上圧延して所定の厚さの熱延鋼帯とし、この熱延鋼帯をホットランテーブル上で冷却装置により冷却した後、コイラーで巻き取ることにより製造される。
熱間圧延工程の仕上圧延機出側では、通常、熱間圧延により発生した上反りが熱延鋼板先端部に存在する場合が多くみられる。熱延鋼板先端部の上反りは、コイラーの巻き取り不具合を発生させる要因である。また、仕上圧延後に行われる水冷装置での冷却で、上反りした熱延鋼板先端部が熱延鋼板定常部よりも冷却装置の噴射部分に近接しているために、熱延鋼板長手方向に冷却速度のバラツキが発生する。コイラーの巻き取り不具合の防止、および鋼板内における冷却速度のバラツキを抑制するために仕上圧延後の熱延鋼板先端部の上反りを小さく抑えることが望ましい。
仕上圧延機出側の熱延鋼板先端部の上反りには様々な発生要因がある。
要因の一つは、仕上圧延機入側における熱延シートバーの板厚方向に発生する温度差であり、この温度差によりシートバーの上面側と下面側の変形抵抗が異なってくるため圧延によって熱延鋼板の先端に反りが発生する。例えば、上面温度が低く、下面温度が高い場合は、シートバー上面側の変形抵抗が大きく、シートバー下面側の変形抵抗が小さくなっている。被圧延材であるシートバーの板厚方向にこのような変形抵抗の差が存在すると、水平圧延によって上面側より下面側が鋼板長手方向に大きく引き伸ばされるため上反りとなる。
その他の反りの要因に、圧延機入側の噛込角度がある。ロールバイトに対して下側から被圧延材である鋼板が噛込む場合は、図4に示すように、前記鋼板がロールバイト入側近傍で下方に折れ曲がる。鋼板が下方に折れるので、鋼板上面側に長手方向の引張応力が作用し、鋼板下面側に長手方向の圧縮応力が作用する。ロールバイト入側近傍の鋼板内の板厚方向の応力分布により、引張応力が作用する前記鋼板上面側は、圧延の際の先進率が低下して先進速度が低減する。反対に圧縮応力が作用する前記鋼板下面側は、圧延の際の先進率が増加して先進速度が増大する。鋼板上面側の先進速度が遅く鋼板下面側の先進速度が速くなるために圧延後の鋼板に上反りが発生する。一方、図5に示すように、ロールバイトに対して上側から被圧延材である鋼板が噛込む場合は、鋼板上面側の先進速度が速く、鋼板下面側の先進速度が遅くなるような板厚方向の速度差が生じ、圧延後の鋼板に下反りが発生する。
さらに、仕上圧延機内で発生する熱延鋼板先端部の反りは、ロールの摩擦係数、圧下率、圧延速度、潤滑剤などにも依存する。
一つの水平圧延機で生成した熱延鋼板先端部の反り形状は、その後に続く水平圧延機の入側噛込角度に影響を与えるため、水平圧延機の入側の前記反り形状は該水平圧延機の出側の反り形状に影響を与える。このように仕上圧延機内には多くの反り発生要因があり、仕上圧延機の出側でどのような反り形状になるかを予測することは困難である。反り形状の中には、上反りとなるものもあり、前述したように、コイラーの巻き取り不具合、鋼板内における冷却速度のバラツキ等の原因となる。
以上のことから、仕上圧延機出側における熱延鋼板先端部の上反りを仕上圧延機で制御することは困難とされ、仕上圧延機以外で熱延鋼板先端部の上反りを低減することを目的として様々な技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、粗圧延によってシートバーの先端部に生じた反りを粗圧延機と仕上圧延機の間に並べられた2つの反り矯正装置により矯正して、仕上圧延機へ送る方法が開示されている。
また、特許文献2には、粗圧延後の冷却工程で鋼板の上下面に温度差を与えるような冷却をすることで反りを低減する方法が開示されている。
特開2004−351484号公報 特開平6−71326号公報
しかしながら、前記した従来技術は、各々に次のような問題を有している。
特許文献1に開示されている技術では、仕上圧延前にシートバーの反り矯正をしている。仕上圧延前においてシートバー先端部の反りが皆無だとしても、仕上圧延機内で水平圧延を行う際に、偏熱により圧延後の鋼板に反りが発生し、さらにその後の水平圧延においても前記反りが助長される場合がある。
特許文献2に開示されている技術では、被圧延材である鋼板の上下面に温度差を与えるような冷却を行うことで反りの発生を抑制しているが、仕上圧延機内では偏熱以外の要因により反りが発生する場合が少なからず出現する。このため仕上圧延機出側における熱延鋼板先端部の上反りを完全に防止することは不可能である。
本発明の目的は、熱間仕上圧延において仕上圧延機内で熱延鋼板の先端上反りを矯正し、仕上圧延機出側における熱延鋼板先端部の上反りを低減することである。
本発明者らは、前記課題を解決するために、多段ホットストリップミルの仕上圧延機において水平圧延に使用されない水平圧延機に着目し、該水平圧延機を用いて仕上圧延機出側における熱延鋼板先端部の上反り量を低減する方法を見出した。
多段ホットストリップミルの仕上圧延機では、製品板厚と各水平圧延機の設備仕様を考慮して圧延に使用する水平圧延機数を決定している。例えば、製品板厚が12mm以上の場合、最前段側から順に前段側の水平圧延機を優先的に使用して水平圧延を行い製品板厚まで熱延シートバーを圧下する。残りの後段側の水平圧延機は、水平圧延に使用されないパススルースタンドとして、ロールギャップが製品板厚より大きく設定され、鋼板を圧延しないように制御されている。さらに、前記パススルースタンドのロール周速度を製品板厚まで水平圧延を行った前段側の水平圧延機のうち最後段の水平圧延機のロール周速度より速くして通板する。この際、前記パススルースタンドのロールギャップを製品板厚よりも1〜10mm大きく設定し、さらに前記パススルースタンドのロール周速度を、製品板厚まで水平圧延を行った前段側の水平圧延機のうち最後段の水平圧延機のロール周速度より速く設定して仕上圧延を行うことにより、前記パススルースタンドの上ロールと前記パススルースタンド入側のガイドテーブルによって熱延鋼板先端部の上反りを曲げ矯正し、仕上圧延機出側における熱延鋼板先端部の上反り量を低減できることが明らかになった。
本発明は、以上のような知見に基づいてなされたものであり以下の要旨からなる。
(1)被圧延材である鋼板の先端部がロールバイトに進入することを補助し、前記鋼板が通板するガイドテーブルを入側に具備した複数の水平圧延機からなる仕上圧延機を用いて、前記鋼板の熱間仕上圧延を行う際、少なくとも一機以上の水平圧延機を、前段側から優先的に用いて製品板厚まで水平圧延を行い、残りの後段側の水平圧延機は、水平圧延を行わないパススルースタンドとし、少なくとも一機以上のパススルースタンドのロールギャップを製品板厚より1〜10mm大きく設定するとともに、該パススルースタンドのロール周速度を、前記製品板厚まで水平圧延を行った前段側の水平圧延機のうち最後段にある水平圧延機のロール周速より速く設定して熱間仕上圧延を行うことを特徴とする熱延鋼板の先端上反り低減方法。
(2)前記パススルースタンドのロールギャップを製品板厚より1〜4mm大きく設定することを特徴とする(1)に記載の熱延鋼板の先端上反り低減方法。
(3)前記パススルースタンドのうち2機以上のロールギャップを製品板厚より1〜10mm大きく設定することを特徴とする(1)または(2)に記載の熱延鋼板の先端上反り低減方法。
(4)前記パススルースタンドのうち2機以上のロールギャップを製品板厚より1〜10mm大きく設定し、後段側のパススルースタンドのロールギャップを前段側のパススルースタンドのロールギャップより小さく設定することを特徴とする(3)に記載の熱延鋼板の先端上反り低減方法。
本発明により、仕上圧延機出側での熱延鋼板の上反り量を低減することができ、コイラーの巻き取り不具合の発生や、仕上圧延後に行われる水冷での鋼板内における冷却速度のバラツキの発生を抑制することができる。
パススルースタンドであるF7のロールギャップDと鋼板仕上板厚tとの差(D−t)と仕上圧延機出側の上反り量の関係を示す図である。 パススルースタンドによる鋼板先端部の上反り矯正を模式的に示す図である。 本発明を実施した仕上圧延機の概要を示す模式図である。 噛み込み角度による上反り生成のメカニズムを示す模式図である。 噛み込み角度による下反り生成のメカニズムを示す模式図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図2に示すように、熱延鋼板がパススルースタンドに進入する際、上反りした熱延鋼板先端部の上面が前記パススルースタンドの上ロールの表面に接触し、前記熱延鋼板先端部は前記上ロール表面に沿って下方へ押し込まれる。一方、前記熱延鋼板の下面は前記パススルースタンドの入側のガイドテーブルによって支えられているために、前記熱延鋼板先端部の上反りは、前記上ロールと前記ガイドテーブルによって曲げ矯正される。
前記上ロールと前記ガイドテーブルの距離が近いほど、前記熱延鋼板先端部の上反りを曲げ矯正する時の前記ガイドテーブル上の支点と前記熱延鋼板先端部が前記上ロールから反力を受ける点までの距離を短くすることができる。このため前記熱延鋼板先端部を反り方向と逆方向に大きく曲げることができ、前記熱延鋼板先端部の上反り量の低減効果は大きくなる。
そこで、7スタンドからなる仕上圧延機で、最後段であるF7スタンドをパススルースタンドとして、そのロールギャップDを変化させ製品板厚t:16mmの熱延鋼板を圧延し、仕上圧延機出側での熱延鋼板先端部の上反り量を測定した。その結果を(D−t)を横軸、仕上圧延機出側での熱延鋼板先端部の上反り量を縦軸として図1に示す。図1から、パススルースタンドのロールギャップDと製品板厚tとの差(D−t)が10mm以下になると仕上圧延機出側における熱延鋼板先端部の上反り量は低減し、その低減効果は(D−t)が小さくなるほど顕著になっていることがわかる。したがって、仕上圧延機出側での熱延鋼板先端部の上反り量を低減するために、パススルースタンドのロールギャップを、(製品板厚+10mm)以下とし、好ましくは(製品板厚+4mm)以下とする。
しかしながら、前記パススルースタンドのロールギャップを製品板厚と同じ値にすると、前記熱延鋼板に板幅方向の反りが生じている場合には、前記熱延鋼板先端部が前記パススルースタンドの上ロールにも下ロールにも接触し、変形してしまう。この変形により、新たに前記熱延鋼板先端部に反りが発生する場合がある。例えば、板幅方向に反りがある鋼板をその上面と下面がそれぞれ上ロールと下ロールに接触した状態でパススルースタンドに通した場合、鋼板が軽圧下されているのと類似の状況となり、圧延機入り側の噛み込み角度が安定しないため圧延機出側で鋼板に大きな反りが発生しやすくなる。したがって、前記パススルースタンドのロールギャップは、製品板厚に板幅方向の反り量を加えた値より大きくなければならない。
熱間圧延中の熱延鋼板の板幅方向の反りは、主として前記熱延鋼板の板厚方向の温度バラツキに起因する鋼板上面側と鋼板下面側の熱膨張量の差によって発生する。通常、板厚9〜25mm、板幅1000〜2300mmの熱延鋼板では圧延中の温度領域と熱膨張量から板幅方向の反り量が1mmを超えることはない。したがって、前記パススルースタンドのロールギャップを(製品板厚+1mm)以上に設定すれば上述したような反りを助長するという現象を避けることができる。そこで、前記パススルースタンドのロールギャップの下限値を(製品板厚+1mm)とする。
また、前記パススルースタンドのロール周速度Vpは、熱延鋼板先端部の通過時に通板不良が起こらないように、水平圧延を行った水平圧延機のうち最後段側の水平圧延機のロール周速度Vrよりも速くする必要がある。熱延鋼板の走行速度および仕上圧延機出側の冷却テーブルローラの回転速度を考慮すると、前記パススルースタンドのロール周速度Vpは、1.05×Vr≦Vp≦1.5×Vrを満足することが好ましい。
さらに、仕上圧延機出側での熱延鋼板先端部の上反りを安定して低減するために、パススルースタンドを2機以上とすることが好ましく、この際に、通板安定化のため後段側のパススルースタンドのロールギャップを前段側のパススルースタンドのロールギャップより小さく設定することがより好ましい。また、前記2機以上のパススルースタンドは連続して設けられていることが好ましい。
図3に示した7スタンドの水平圧延機からなる仕上圧延機を用いて製品板厚13mmの鋼板AではF7スタンドをパススルースタンド、製品板厚16mmの鋼板Bおよび製品板厚25mmの鋼板CではF6スタンドとF7スタンドをパススルースタンドとして製造した。
その結果、本発明法によれば仕上圧延機出側での鋼板先端部の上反り量が低減していることが確認され、特に、F6スタンドとF7スタンドを共に本発明法であるロールギャップに設定した場合に上反り量の顕著な低減効果が確認された。これらの効果は、ラインパイプ用鋼板、高張力鋼板等の制御圧延を実施する熱延鋼板の場合に特に有効である。
Figure 0005924320
1 上ロール
2 下ロール
3 入側ガイドテーブル
4 入側ガイドテーブルからの反力
5 上ロールからの反力
6 熱延鋼板上面側に分布する応力
7 熱延鋼板下面側に分布する応力
8 水平圧延を行う水平圧延機
9 パススルースタンド
10 鋼板
θ1 噛込み角度
θ2 噛込み角度

Claims (4)

  1. 被圧延材である鋼板の先端部がロールバイトに進入することを補助し、前記鋼板が通板するガイドテーブルを入側に具備した複数の水平圧延機からなる仕上圧延機を用いて、前記鋼板の熱間仕上圧延を行う際、少なくとも一機以上の水平圧延機を、前段側から優先的に用いて製品板厚まで水平圧延を行い、残りの後段側の水平圧延機は、水平圧延を行わないパススルースタンドとし、少なくとも一機以上のパススルースタンドのロールギャップを製品板厚より1〜10mm大きく設定するとともに、該パススルースタンドのロール周速度を、前記製品板厚まで水平圧延を行った前段側の水平圧延機のうち最後段にある水平圧延機のロール周速より速く設定して熱間仕上圧延を行うことを特徴とする熱延鋼板の先端上反り低減方法。
  2. 前記パススルースタンドのロールギャップを製品板厚より1〜4mm大きく設定することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板の先端上反り低減方法。
  3. 前記パススルースタンドのうち2機以上のロールギャップを製品板厚より1〜10mm大きく設定することを特徴とする請求項1または2に記載の熱延鋼板の先端上反り低減方法。
  4. 前記パススルースタンドのうち2機以上のロールギャップを製品板厚より1〜10mm大きく設定し、後段側のパススルースタンドのロールギャップを前段側のパススルースタンドのロールギャップより小さく設定することを特徴とする請求項3に記載の熱延鋼板の先端上反り低減方法。
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