≪セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体≫
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構造単位(I)と、一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)と、不飽和カルボン酸エステル系単量体(c)由来の構造単位(III)とを含む。
(一般式(1)中、Yは炭素数2〜10のアルケニル基を表し、R
1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表し、R
2は水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表し、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であって1〜500である。)
(一般式(2)中、R
3、R
4、R
5は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH
2)
nCOOM
2基を表し、nは0〜2であり、M
1とM
2は、同一または異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基を表し、R
4とR
5は同時に−(CH
2)
nCOOM
2基とはならず、R
5が−(CH
2)
nCOOM
2基である場合には、R
3とR
4は、同一または異なって、水素原子またはメチル基である。)
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中には、上記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構造単位(I)が1種のみ含まれていても良いし、2種以上含まれていても良い。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の、上記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構造単位(I)とは、具体的には、上記一般式(1)中のアルケニル基Yが有する重合性不飽和二重結合が重合によって開裂して単結合となった構造単位である。例えば、アルケニル基Yを、P=Q−で表した場合、上記一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)由来の構造単位(I)は一般式(I)で表される。
上記一般式(1)中、Yは炭素数2〜10のアルケニル基を表す。Yは、本発明の効果をより発現できる点で、好ましくは、炭素数2〜5のアルケニル基であり、より好ましくは、炭素数4〜5のアルケニル基である。Yとしては、例えば、ビニル基、アリル基、メタリル基、3−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基などが挙げられる。これらの中でも、本発明の効果をより一層発現できる点で、特に好ましくは、アリル基、メタリル基、3−メチル−3−ブテニル基である。
上記一般式(1)中、R1Oは炭素数2〜18のオキシアルキレン基の1種または2種以上を表す。R1Oは、好ましくは、炭素数2〜8のオキシアルキレン基の1種または2種以上であり、より好ましくは、炭素数2〜4のオキシアルキレン基の1種または2種以上である。R1Oとしては、例えば、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基、オキシスチレン基などが挙げられる。R1Oの付加形式としては、例えば、ランダム付加、ブロック付加、交互付加が挙げられる。なお、親水性と疎水性とのバランス確保のため、オキシアルキレン基中にオキシエチレン基を必須成分として含むことが好ましい。より具体的には、全オキシアルキレン基100モル%に対し、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、70モル%以上がオキシエチレン基であることがさらに好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが特に好ましい。
上記一般式(1)中、mはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、mは1〜500である。mは、好ましくは2〜300であり、より好ましくは5〜300であり、さらに好ましくは10〜300であり、特に好ましくは15〜300であり、最も好ましくは20〜300である。mが小さいほど、得られる重合体の親水性が低下して分散性能が低下するおそれがある。mが500を超えると、共重合反応性が低下するおそれがある。
上記一般式(1)中、R2は水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を表す。炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ラウリル基、ステアリル基などが挙げられる。
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)としては、例えば、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−2−プロペン−1−オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物が挙げられる。
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)としては、具体的には、例えば、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(3−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−3−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−ブテニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(1,1−ジメチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル3−ブテニル)エーテル、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(3−メチル−3−ブテニル)エーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、エトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、1−プロポキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、シクロヘキシルオキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、1−オクチルオキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ノニルアルコキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ラウリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ステアリルアルコキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、フェノキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテル、ナフトキシポリエチレングリコールモノ(2−メチル−2−プロペニル)エーテルなどが挙げられる。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中には、上記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)が1種のみ含まれていても良いし、2種以上含まれていても良い。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の、上記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とは、具体的には、一般式(II)で表される。
一般式(2)中、R3、R4、R5は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH2)nCOOM2基を表す。nは0〜2である。R4とR5は同時に−(CH2)nCOOM2基とはならない。R5が−(CH2)nCOOM2基である場合には、R3とR4は、同一または異なって、水素原子またはメチル基である。
本発明の効果をより発現できる点で、一般式(2)中、R3とR4は、いずれも水素原子であることが好ましく、R5が水素原子またはメチル基であることが好ましい。
一般式(2)中、M1とM2は、同一または異なって、水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アミン基を表す。
上記金属原子としては、任意の適切な金属原子を採用し得る。このような金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの一価金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の二価の金属原子;などが挙げられる。
有機アミン基としては、プロトン化された有機アミンであれば任意の適切な有機アミン基を採用し得る。有機アミン基としては、例えば、エタノールアミン基、ジエタノールアミン基、トリエタノールアミン基等のアルカノールアミン基や、トリエチルアミン基などが挙げられる。
不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)、不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)が挙げられる。不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果をより発現できる点で、好ましくは、不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)である。
不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)としては、任意の適切な不飽和モノカルボン酸系単量体を採用し得る。不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)としては、好ましくは、(メタ)アクリル酸系単量体が挙げられる。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などを挙げることができる。共重合性の点から、不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)としては、より好ましくは、(メタ)アクリル酸および/またはこれらの塩(一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)が挙げられ、さらに好ましくは、アクリル酸および/またはこれらの塩(一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)としては、任意の適切な不飽和ジカルボン酸系単量体を採用し得る。不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)としては、具体的には、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびこれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩などを挙げることができる。不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)としては、好ましくは、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびこれらの塩(一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)が挙げられ、より好ましくは、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、およびこれらの塩(一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩など)等の、α,β−不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中には、上記不飽和カルボン酸エステル系単量体(c)由来の構造単位(III)が1種のみ含まれていても良いし、2種以上含まれていても良い。
上記不飽和カルボン酸エステル系単量体(c)としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な不飽和カルボン酸エステル系単量体を採用し得る。このような不飽和カルボン酸エステル系単量体(c)としては、好ましくは、一般式(3)で表される不飽和カルボン酸エステル系単量体である。
(一般式(3)中、R
6、R
7、R
8は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R
9は炭素数1〜18の炭化水素基を表す。)
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の、上記一般式(3)で表される不飽和カルボン酸系単量体(c)由来の構造単位(III)とは、具体的には、一般式(III)で表される。
一般式(3)中、R6、R7、R8は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表し、R9は炭素数1〜18の炭化水素基を表す。炭素数1〜18の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ラウリル基、ステアリル基などが挙げられる。
本発明の効果をより発現できる点で、一般式(3)中、R9は炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましい。具体的には、R9としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、イソオクチル基が好ましい。また、本発明の効果をより発現できる点で、一般式(3)中、R6とR7は、いずれも水素原子であることが好ましい。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の、上記構造単位(I)と上記構造単位(II)と上記構造単位(III)との合計の含有割合は、好ましくは46重量%〜100重量%であり、より好ましくは50重量%〜100重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜100重量%であり、特に好ましくは90重量%〜100重量%であり、最も好ましくは95重量%〜100重量%である。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(I)と上記構造単位(II)と上記構造単位(III)との合計の含有割合が上記範囲内にあれば、高い経時流動保持性を有する高性能のセメント混和剤を提供しうるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を提供し得る。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の、上記構造単位(I)と上記構造単位(II)と上記構造単位(III)との合計の含有割合は、例えば、該セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる各種単量体の使用量に基づいて算出される該各種単量体由来の構造単位の含有割合をもって、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の、上記構造単位(I)と上記構造単位(II)と上記構造単位(III)との合計の含有割合としても良い。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(I)の含有割合は44重量%〜98重量%であり、好ましくは50重量%〜97重量%であり、さらに好ましくは60重量%〜96重量%であり、さらに好ましくは70重量%〜95重量%であり、特に好ましくは80重量%〜94重量%であり、最も好ましくは85重量%〜93重量%である。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(I)の含有割合が上記範囲内にあれば、高い経時流動保持性を有する高性能のセメント混和剤を提供しうるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を提供し得る。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(I)の含有割合は、例えば、該セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a)の使用量に基づいて算出される該単量体(a)由来の構造単位(I)の含有割合をもって、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(I)の含有割合としても良い。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(II)の含有割合は1重量%〜49重量%であり、好ましくは1.5重量%〜40重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜30重量%であり、さらに好ましくは2.5重量%〜20重量%であり、特に好ましくは3重量%〜15重量%であり、最も好ましくは3.5重量%〜10重量%である。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(II)の含有割合が上記範囲内にあれば、高い経時流動保持性を有する高性能のセメント混和剤を提供しうるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を提供し得る。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(II)の含有割合は、例えば、該セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる不飽和カルボン酸系単量体(b)の使用量に基づいて算出される該単量体(b)由来の構造単位(II)の含有割合をもって、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(II)の含有割合としても良い。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(III)の含有割合は1重量%〜7重量%であり、好ましくは1.5重量%〜7重量%であり、より好ましくは2重量%〜7重量%である。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(III)の含有割合が上記範囲内にあれば、高い経時流動保持性を有する高性能のセメント混和剤を提供しうるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を提供し得る。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体においては、特に、上記構造単位(III)の含有割合を上記範囲内に調整することによって、高い経時流動保持性の発現という本発明の効果が顕著に発現され得る。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(III)の含有割合は、例えば、該セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる不飽和カルボン酸エステル系単量体(c)の使用量に基づいて算出される該単量体(c)由来の構造単位(III)の含有割合をもって、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(III)の含有割合としても良い。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中には、上記構造単位(I)と上記構造単位(II)と上記構造単位(III)以外に、任意の適切な、他の単量体(d)由来の構造単位(IV)を含んでいても良い。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(IV)の含有割合は、本発明の効果を損なわない範囲で、目的に応じて適宜設定し得る。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(IV)の含有割合は、例えば、好ましくは0重量%〜54重量%である。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(IV)の含有割合は、例えば、該セメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体の各種構造解析(例えば、NMRなど)によって知ることができる。また、上記のような各種構造解析を行わなくても、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を製造する際に用いる他の単量体(d)の使用量に基づいて算出される該単量体(d)由来の構造単位(IV)の含有割合をもって、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中の上記構造単位(IV)の含有割合としても良い。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体中には、他の単量体(d)由来の構造単位(IV)が1種のみ含まれていても良いし、2種以上含まれていても良い。
他の単量体(d)としては、具体的には、例えば、上記不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)と炭素原子数1〜30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)と炭素原子数1〜30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;アルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)とのハーフエステル、ジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸系単量体(b−2)と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;炭素数1〜30のアルコールに炭素数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルコキシ(ポリ)アルキレングリコールと(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)とのエステル類;(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)ブチレングリコールモノメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)への炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドの1〜500モル付加物類;マレアミド酸と炭素原子数2〜18のグリコールもしくはこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、およびそれらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;メチル(メタ)アクリルアミド等の、不飽和モノカルボン酸系単量体(b−1)と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン等のジエン類;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテル或いはアリルエーテル類;ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン−ビス−(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−(1−プロピル−3−メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−アクリレート)、ポリジメチルシロキサン−ビス−(1−プロピル−3−メタクリレート)等のシロキサン誘導体;などが挙げられる。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレングリコール換算による重量平均分子量(Mw)が、好ましくは10000〜300000であり、より好ましくは10000〜100000であり、さらに好ましくは10000〜80000である。重量平均分子量(Mw)が上記範囲内にあることにより、高い経時流動保持性を有する高性能のセメント混和剤を提供しうるセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を提供し得る。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、任意の適切な方法によって製造し得る。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、好ましくは、上記単量体(a)と上記単量体(b)と上記単量体(c)とを含む単量体成分の重合を、重合開始剤の存在下で行うことによって製造し得る。また、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、例えば、上記単量体(a)の代わりに、アルキレンオキシドを付加する前の不飽和アルコールを用い、これと上記単量体(b)および上記単量体(c)(および、必要に応じて、上記他の単量体(d))を重合開始剤の存在下で重合させた後、アルキレンオキシドを付加する方法によっても製造し得る。
上記単量体成分の重合は、任意の適切な方法で行い得る。例えば、溶液重合、塊状重合が挙げられる。溶液重合の方式としては、例えば、回分式、連続式が挙げられる。溶液重合で使用し得る溶媒としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族または脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物;等が挙げられる。
上記単量体成分の重合を行う場合は、重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキサイド;2,2’−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物;2,2’−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物;2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;などを用い得る。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を製造するにあたっては、重合開始剤としては、特に、過酸化物を用いることが好ましい。このような過酸化物としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のパーオキサイド;などが挙げられる。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体を製造するにあたっては、重合開始剤として、上記過酸化物と還元剤を併用することが好ましい。このような還元剤としては、任意の適切な還元剤を採用し得る。例えば、モール塩に代表されるような鉄(II)、スズ(II)、チタン(III)、クロム(II)、V(II)、Cu(II)等の低原子価状態にある金属の塩類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドラジン等のアミン化合物およびその塩;亜二チオン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシレート、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物;−SH基、−SO2H基、−NHNH2基、−COCH(OH)−基を含む有機化合物およびその塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ二亜硫酸塩等のアルカリ金属亜硫酸塩;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、次亜硝酸ナトリウム等の低級酸化物およびその塩;D−フルクトース、D−グルコース等の転化糖;チオウレア、二酸化チオウレア等のチオウレア化合物;L−アスコルビン酸(塩)、L−アスコルビン酸エステル、エリソルビン酸(塩)、エリソルビン酸エステル;などが挙げられる。
上記過酸化物と上記還元剤との組合せとしては、水溶性の過酸化物と還元剤との組合せが好ましく、例えば、過酸化水素とL−アスコルビン酸との組合せ、過酸化水素とエリソルビン酸との組合せ、過酸化水素とモール塩との組合せ、過硫酸ナトリウムと亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過硫酸アンモニウムとL−アスコルビン酸との組合せが挙げられる。本発明の効果を一層効果的に発現させることができる点で、特に好ましい組合せは、過硫酸アンモニウムとL−アスコルビン酸との組合せである。
上記過酸化物の使用量は、単量体成分の合計量に対して、好ましくは0.01モル%〜30モル%であり、より好ましくは0.1モル%〜20モル%であり、さらに好ましくは0.5モル%〜10モル%である。上記過酸化物の使用量が単量体成分の合計量に対して0.01モル%未満であると、未反応の単量体が多くなるおそれがある。上記過酸化物の使用量が単量体成分の合計量に対して30モル%を越えると、オリゴマー部分が多いポリカルボン酸系共重合体が得られるおそれがある。
上記還元剤の使用量は、上記過酸化物に対して、好ましくは0.1モル%〜500モル%であり、より好ましくは1モル%〜200モル%であり、さらに好ましくは10モル%〜100モル%である。上記還元剤の使用量が上記過酸化物に対して0.1モル%未満であると、活性ラジカルが十分に発生せず、未反応単量体が多くなるおそれがある。上記還元剤の使用量が上記過酸化物に対して500モル%を越えると、過酸化水素と反応せずに残存する還元剤が多くなるおそれがある。
上記単量体成分の重合の際には、上記過酸化物と上記還元剤のうちの少なくとも一方が、常に反応系中に存在することが好ましい。具体的には、過酸化物と還元剤を同時に一括投入しないことが好ましい。過酸化物と還元剤を同時に一括投入すると、過酸化物と還元剤が急激に反応するため、投入直後に多量の反応熱が発生して反応制御が困難になり、しかも、その後急激にラジカル濃度が減少するため、未反応の単量体成分が多量に残存するおそれがある。さらに、反応の初期と後半とにおいて、単量体成分に対するラジカル濃度が極端に異なるため、分子量分布が極端に大きくなり、得られる共重合体をセメント混和剤に用いた場合の性能が低下するおそれがある。したがって、例えば、過酸化物と還元剤の両者を滴下等により連続投入する方法や、分割投入する方法など、長時間かけて添加する方法を採用することが好ましい。なお、上記過酸化物と上記還元剤のうちの一方を投入してから、他方の投入を開始するまでの時間は、好ましくは5時間以内、より好ましくは3時間以内である。
上記単量体成分の重合の際の反応温度としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な反応温度を採用し得る。このような反応温度としては、好ましくは30℃〜90℃であり、より好ましくは35℃〜85℃であり、さらに好ましくは40℃〜80℃である。重合反応温度が上記範囲を外れると、重合率の低下や生産性の低下をもたらすおそれがある。
上記単量体成分の重合の際の重合時間としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な重合時間を採用し得る。このような重合時間としては、好ましくは0.5時間〜10時間であり、より好ましくは0.5時間〜8時間であり、さらに好ましくは1時間〜6時間である。重合時間が上記範囲を外れると、重合率の低下や生産性の低下をもたらすおそれがある。
上記単量体成分の反応容器への投入方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。このような投入方法としては、例えば、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法等が挙げられる。具体的には、単量体(a)の全量と単量体(b)の全量と単量体(c)の全量とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部を反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の全量と単量体(c)の全量とを反応容器に連続投入する方法、単量体(a)の一部と単量体(b)の一部とを反応容器に初期に投入し、単量体(a)の残りと単量体(b)の残りと単量体(c)の全量とをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入する方法などが挙げられる。さらに、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えて、各単量体の単位時間あたりの投入質量比を連続的又は段階的に変化させることにより、構成単位(I)と構成単位(II)と構成単位(III)との比率が異なる2種以上の共重合体を重合反応中に同時に合成するようにしてもよい。なお、重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでも良く、反応容器へ滴下しても良く、また目的に応じてこれらを組み合わせても良い。
上記単量体成分の重合の際には、連鎖移動剤を用い得る。連鎖移動剤を用いると、得られる共重合体の分子量調整が容易となる。連鎖移動剤は、1種のみを用いても良いし、2種以上を用いても良い。
上記連鎖移動剤としては、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。このような連鎖移動剤としては、具体的には、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン化物;イソプロパノール等の第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;等が挙げられる。
所定の分子量の共重合体を再現性良く得るためには、共重合反応を安定に進行させることが重要である。このため、溶液重合を行う場合には、使用する溶媒の25℃における溶存酸素濃度が、好ましくは5ppm以下であり、より好ましくは0.01ppm〜4ppmであり、さらに好ましくは0.01ppm〜2ppmであり、特に好ましくは0.01ppm〜1ppmである。
溶媒の溶存酸素濃度の調整は、反応容器内で行なってもよく、あらかじめ溶存酸素量を調整した溶媒を用いてもよい。溶媒中の酸素を追い出す方法としては、例えば、下記の(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)溶媒を入れた密閉容器内に窒素等の不活性ガスを加圧充填した後、密閉容器内の圧力を下げることにより、溶媒中の酸素分圧を低くする。窒素気流下で密閉容器内の圧力を下げてもよい。
(2)溶媒を入れた容器内の気相部分を窒素等の不活性ガスで置換したまま、液相部分を長時間激しく攪拌する。
(3)容器内に入れた溶媒に、窒素等の不活性ガスを長時間バブリングする。
(4)溶媒を一旦沸騰させた後、窒素等の不活性ガス雰囲気下で冷却する。
(5)配管の途中に静止型混合機(スタティックミキサー)を設置し、溶媒を重合反応槽に移送する配管内で窒素等の不活性ガスを混合する。
上記のような製造方法によって得られた共重合体は、そのままでも本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体として用いることもできるが、取り扱い性の観点から、製造後の反応溶液のpHを5以上に調整しておくことが好ましい。この場合、重合をpH5以上で行ってもよいが、その場合、重合率の低下が起こると同時に共重合性が悪くなるおそれがあるため、pH5未満で重合を行い、重合後にpHを5以上に調整することが好ましい。pHの調整は、例えば、一価金属又は二価金属の水酸化物や炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アミン;等のアルカリ性物質を用いて行うことができる。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、製造によって得られた溶液に対して、必要に応じて、濃度調整を行うこともできる。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、溶液の形態でそのまま使用しても良いし、あるいは、カルシウム、マグネシウム等の二価金属の水酸化物で中和して多価金属塩とした後に乾燥させたり、シリカ系微粉末等の無機粉体に担持して乾燥させたりすることにより粉体化して使用しても良い。
≪セメント混和剤≫
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、必要に応じて任意の適切な成分と併せて、セメント混和剤とすることができる。
本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と併せてセメント混和剤とすることができる成分としては、例えば、セメント分散剤が挙げられる。セメント分散剤を用いる場合、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体とセメント分散剤との配合比(本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体/セメント分散剤)は、使用するセメント分散剤の種類、配合条件、試験条件等の違いによって一義的には決められないが、固形分換算での重量割合(重量%)として、好ましくは1〜99/99〜1であり、より好ましくは5〜95/95〜5であり、さらに好ましくは10〜90/90〜10である。セメント分散剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
セメント分散剤としては、例えば、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤、分子中にポリオキシアルキレン鎖とカルボキシル基とを有するポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(あるいはビニルスルホン酸(塩)あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で2〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)の3種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体にさらに(メタ)アクリルアミドおよび/または2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸をグラフト重合した共重合体;エチレンオキシドを平均付加モル数で5〜50付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体とエチレンオキシドを平均付加モル数で1〜30付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体と(メタ)アリルスルホン酸(塩)(あるいはp−(メタ)アリルオキシベンゼンスルホン酸(塩)のいずれか)の4種の単量体を必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル系単量体とマレイン酸のポリアルキレングリコールエステル系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコール3−メチル−3−ブテニルエーテル系単量体とマレイン酸系単量体とを必須成分として含む単量体成分を共重合して得られる共重合体;などが挙げられる。
本発明のセメント混和剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のセメント添加剤(材)を含有することができる。このような他のセメント添加剤(材)としては、例えば、以下の(1)〜(20)に例示するような他のセメント添加剤(材)が挙げられる。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体とこのような他のセメント添加剤(材)との配合比は、用いる他のセメント添加剤(材)の種類や目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
(1)水溶性高分子物質
水溶性高分子物質としては、例えば、ポリアクリル酸(ナトリウム)、ポリメタクリル酸(ナトリウム)、ポリマレイン酸(ナトリウム)、アクリル酸・マレイン酸共重合物のナトリウム塩等の不飽和カルボン酸重合物;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の非イオン性セルローズエーテル類;メチルセルローズ、エチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルロース等の多糖類のアルキル化もしくはヒドロキシアルキル化誘導体の一部または全部の水酸基の水素原子が、炭素数8〜40の炭化水素鎖を部分構造として有する疎水性置換基と、スルホン酸基又はそれらの塩を部分構造として含有するイオン性親水性置換基で置換されてなる多糖誘導体;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類(直鎖状、分岐鎖状のいずれでも良く、一例を挙げれば、カードラン、パラミロン、パキマン、スクレログルカン、ラミナラン等)等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド;ポリビニルアルコール;デンプン;デンプンリン酸エステル;アルギン酸ナトリウム;ゼラチン;分子内にアミノ基を有するアクリル酸のコポリマーおよびその四級化合物;などが挙げられる。
(2)高分子エマルジョン
高分子エマルジョンとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物などが挙げられる。
(3)遅延剤
遅延剤としては、例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、またはクエン酸、および、これらの、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の無機塩または有機塩等のオキシカルボン酸;グルコース、フラクトース、ガラクトース、サッカロース、キシロース、アピオース、リボース、異性化糖などの単糖類や、二糖、三糖等のオリゴ糖、またはデキストリン等のオリゴ糖、またはデキストラン等の多糖類、これらを含む糖蜜類等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール;珪弗化マグネシウム;リン酸ならびにその塩またはホウ酸エステル類;アミノカルボン酸とその塩;アルカリ可溶タンパク質;フミン酸;タンニン酸;フェノール;グリセリン等の多価アルコール;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)およびこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等のホスホン酸およびその誘導体;などが挙げられる。
(4)早強剤・促進剤
早強剤・促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート;などが挙げられる。
(5)鉱油系消泡剤
鉱油系消泡剤としては、例えば、燈油、流動パラフィンなどが挙げられる。
(6)油脂系消泡剤
油脂系消泡剤としては、例えば、動植物油、ごま油、ひまし油、これらのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
(7)脂肪酸系消泡剤
脂肪酸系消泡剤としては、例えば、オレイン酸、ステアリン酸、これらのアルキレンオキシド付加物などが挙げられる。
(8)脂肪酸エステル系消泡剤
脂肪酸エステル系消泡剤としては、例えば、グリセリンモノリシノレート、アルケニルコハク酸誘導体、ソルビトールモノラウレート、ソルビトールトリオレエート、天然ワックスなどが挙げられる。
(9)オキシアルキレン系消泡剤
オキシアルキレン系消泡剤としては、例えば、(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン付加物等のポリオキシアルキレン類;ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2−エチルヘキシルエーテル、炭素原子数12〜14の高級アルコールへのオキシエチレンオキシプロピレン付加物等の(ポリ)オキシアルキルエーテル類;ポリオキシプロピレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等の(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル類;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール,3−メチル−1−ブチン−3−オール等のアセチレンアルコールにアルキレンオキシドを付加重合させたアセチレンエーテル類;ジエチレングリコールオレイン酸エステル、ジエチレングリコールラウリル酸エステル、エチレングリコールジステアリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸エステル等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミン等の(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド;などが挙げられる。
(10)アルコール系消泡剤
アルコール系消泡剤としては、例えば、オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、グリコール類などが挙げられる。
(11)アミド系消泡剤
アミド系消泡剤としては、例えば、アクリレートポリアミンなどが挙げられる。
(12)リン酸エステル系消泡剤
リン酸エステル系消泡剤としては、例えば、リン酸トリブチル、ナトリウムオクチルホスフェートなどが挙げられる。
(13)金属石鹸系消泡剤
金属石鹸系消泡剤としては、例えば、アルミニウムステアレート、カルシウムオレエートなどが挙げられる。
(14)シリコーン系消泡剤
シリコーン系消泡剤としては、例えば、ジメチルシリコーン油、シリコーンペースト、シリコーンエマルジョン、有機変性ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン等のポリオルガノシロキサン)、フルオロシリコーン油などが挙げられる。
(15)AE剤
AE剤としては、例えば、樹脂石鹸、飽和あるいは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステルまたはその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステルまたはその塩、蛋白質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネートなどが挙げられる。
(16)その他の界面活性剤
その他の界面活性剤としては、例えば、オクタデシルアルコールやステアリルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂肪族1価アルコール、アビエチルアルコール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する脂環式1価アルコール、ドデシルメルカプタン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有する1価メルカプタン、ノニルフェノール等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアルキルフェノール、ドデシルアミン等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するアミン、ラウリン酸やステアリン酸等の分子内に6〜30個の炭素原子を有するカルボン酸に、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを10モル以上付加させたポリアルキレンオキシド誘導体類;アルキル基又はアルコキシ基を置換基として有しても良い、スルホン基を有する2個のフェニル基がエーテル結合した、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩類;各種アニオン性界面活性剤;アルキルアミンアセテート、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤;などが挙げられる。
(17)防水剤
防水剤としては、例えば、脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックスなどが挙げられる。
(18)防錆剤
防錆剤としては、例えば、亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛などが挙げられる。
(19)ひび割れ低減剤
ひび割れ低減剤としては、例えば、ポリオキシアルキルエーテルなどが挙げられる。
(20)膨張材
膨張材としては、例えば、エトリンガイト系膨張材、石炭系膨張材などが挙げられる。
本発明のセメント混和剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記のような他のセメント添加剤(材)以外に、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤などのその他の成分を含んでいても良い。本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体とこのようなその他の成分との配合比は、用いるその他の成分の種類や目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
本発明のセメント混和剤の特に好適な実施形態としては、次の1)〜7)が挙げられる。
1)(1)本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、(2)オキシアルキレン系消泡剤の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(2)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜10重量部である。
2)(1)本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、(2)炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖を有するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体と、(メタ)アクリル酸系単量体及びこれらの単量体と共重合可能な単量体からなる共重合体(特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報、特開平9−241056号公報等参照)、(3)オキシアルキレン系消泡剤の3成分を必須とする組み合わせ。なお、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と(2)の共重合体との配合重量比としては、好ましくは5:95〜95:5であり、より好ましくは10:90〜90:10である。また、(3)のオキシアルキレン系消泡剤の配合重量比としては、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と(2)の共重合体との合計量100重量部に対して、好ましくは0.01重量部〜10重量部である。
3)(1)本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、(2)分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤の2成分を必須とする組み合わせ。スルホン酸系分散剤としては、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩、アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等のアミノスルホン酸系の分散剤等が使用可能である。なお、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と(2)のスルホン酸系分散剤との配合重量比としては、好ましくは5:95〜95:5であり、より好ましくは10:90〜90:10である。
4)(1)本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、(2)リグニンスルホン酸塩の2成分を必須とする組み合わせ。なお、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と(2)のリグニンスルホン酸塩との配合重量比としては、好ましくは5:95〜95:5であり、より好ましくは10:90〜90:10である。
5)(1)本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、(2)材料分離低減剤の2成分を必須とする組み合わせ。材料分離低減剤としては、非イオン性セルローズエーテル類等の各種増粘剤、部分構造として炭素数4〜30の炭化水素鎖からなる疎水性置換基と炭素数2〜18のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜300付加したポリオキシアルキレン鎖とを有する化合物等が使用可能である。なお、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と(2)の材料分離低減剤との配合重量比としては、好ましくは10:90〜99.99:0.01であり、より好ましくは50:50〜99.9:0.1である。この組み合わせからなるセメント混和剤は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材などに好適である。
6)(1)本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、(2)遅延剤の2成分を必須とする組み合わせ。遅延剤としては、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類、グルコース等の糖類、ソルビトール等の糖アルコール類、アミノトリ(メチレンホスホン酸)等のホスホン酸類等が使用可能である。なお、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と(2)の遅延剤との配合重量比としては、好ましくは50:50〜99.9:0.1であり、より好ましくは70:30〜99:1である。
7)(1)本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体、(2)促進剤の2成分を必須とする組み合わせ。促進剤としては、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類、チオ硫酸塩、ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類等が使用可能である。なお、(1)のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体と(2)の促進剤との配合重量比としては、好ましくは10:90〜99.9:0.1であり、より好ましくは20:80〜99:1である。
≪セメント組成物≫
本発明のセメント組成物は、本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体とセメントと水を含む。
本発明のセメント組成物は、好ましくは、本発明のセメント混和剤とセメントと水を含む。
本発明のセメント組成物に含まれるセメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、本発明のセメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
本発明のセメント組成物には、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材が含まれていても良い。
このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
本発明のセメント組成物には、任意の適切な消泡剤が含まれていても良い。このような消泡剤としては、例えば、前述した各種消泡剤などが挙げられる。
本発明のセメント組成物においては、その1m3あたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m3〜185kg/m3であり、使用セメント量が250kg/m3〜800kg/m3であり、水/セメント比(重量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m3〜175kg/m3であり、使用セメント量が270kg/m3〜800kg/m3であり、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.65である。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。また、本発明のセメント組成物は、比較的高減水率の領域、すなわち、水/セメント比(重量比)=0.15〜0.5(好ましくは、0.15〜0.4)といった水/セメント比の低い領域においても、良好に使用することができる。
本発明のセメント組成物中の本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100重量部に対する本発明のセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体の含有割合として、好ましくは0.01重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.02重量部〜5重量部であり、さらに好ましくは0.05重量部〜3重量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01重量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10重量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のセメント組成物中の本発明のセメント混和剤の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、セメント100重量部に対する本発明のセメント混和剤の含有割合として、好ましくは0.01重量部〜10重量部であり、より好ましくは0.05重量部〜8重量部であり、さらに好ましくは0.1重量部〜5重量部である。上記含有割合が0.01重量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10重量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
本発明のセメント組成物は、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、高流動コンクリート、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
本発明のセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調整すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は重量部を意味し、%とある場合は重量%を意味する。
<重量平均分子量>
装置:Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製 Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
カラム:TSKgel ガードカラム(内径6.0×40mm)+G4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL(各内径7.8×300mm)
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters 2414)、多波長可視紫外(PDA)検出器(Waters 2996)
溶離液:イオン交換水10999gとアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶かし、さらに酢酸でpH6.0に調整したもの。
流量:1.0ml/分
カラム・検出器温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μl(試料濃度0.5重量%の溶離液溶液)
GPC標準サンプル:東ソー(株)製ポリエチレングリコール Mp=300000、200000、107000、50000、24000、11840、6450、4250、1470の9点を使用。
検量線:上記ポリエチレングリコールのMp値を用いて3次式で作成。
<コンクリート試験>
(固形分測定方法)
性能試験に用いる共重合体は、下記の手順で不揮発分を測定し、不揮発分を固形分(共重合体)として濃度を計算した。
アルミカップに共重合体水溶液を約0.5g量り採り、イオン交換水を約1g加えて均一に広げた。これを窒素雰囲気下、130℃で1時間乾燥させ、乾燥前後の重量差から不揮発分を測定した。
(セメント混和剤の調製)
共重合体と消泡剤、AE剤とを用いて調製した。所定量の共重合体水溶液を量り取り、消泡剤としてマイクロエア404(BASFポゾリス製)を、AE剤としてマイクロエア202(BASFポゾリス製)を添加し、空気量が4.5±0.5vol%になるよう調節した。
水硬性材料(セメント)重量に対するセメント混和剤の配合量は、混和剤(共重合体)の固形分量で計算し、%(重量%)で示した。
(コンクリート試験配合)
配合単位量は、
水:172kg/m3、
セメント(太平洋セメント社製:普通ポルトランドセメント):324kg/m3、
粗骨材(青梅産砕石):938kg/m3、
細骨材(大井川産/君津産=80/20):842kg/m3とした。
(セメント組成物の調製)
上記配合で、50L強制練りパン型ミキサーにセメント、細骨材および粗骨材を投入して10秒間空練りを行い、次いで、セメント混和剤を配合した水を加えて、さらに90秒間混練し、コンクリートを製造した。得られたコンクリートのスランプフロー値は、日本工業規格(JIS A1101)に準拠して行った。
〔実施例1〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水303部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)487部、アクリル酸(AA)6.7部を仕込み、60℃に昇温した。次に、アクリル酸(AA)20.1部およびアクリル酸メチル(MA)16.2部を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水77.8部に過硫酸アンモニウム3.24部を溶解させた水溶液と、イオン交換水78.2部にL−アスコルビン酸0.63部および2−メルカプトプロピオン酸1.06部を溶解させた水溶液とを、3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=7まで中和した。このようにして、共重合体(1)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(1)の重量平均分子量Mwは45000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(1)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
〔実施例2〕
アクリル酸メチル(MA)に代えてアクリル酸エチル(EA)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、共重合体(2)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(2)の重量平均分子量Mwは46000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(2)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
〔実施例3〕
アクリル酸メチル(MA)に代えてアクリル酸ブチル(BA)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、共重合体(3)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(3)の重量平均分子量Mwは46000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(3)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
〔実施例4〕
アクリル酸メチル(MA)に代えてアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、共重合体(4)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(4)の重量平均分子量Mwは45000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(4)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
〔実施例5〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水293部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)471部、アクリル酸(AA)6.7部を仕込み、60℃に昇温した。次に、アクリル酸(AA)20.1部およびアクリル酸ブチル(BA)32.3部を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水90.9部に過硫酸アンモニウム3.79部を溶解させた水溶液と、イオン交換水70.5部にL−アスコルビン酸0.73部および2−メルカプトプロピオン酸2.11部を溶解させた水溶液とを、3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=7まで中和した。このようにして、共重合体(5)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(5)の重量平均分子量Mwは30000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(5)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
〔実施例6〕
不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)に代えて、2−メチル−2−プロペン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(MLA−50)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、共重合体(6)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(6)の重量平均分子量Mwは44000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(6)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
〔比較例1〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水313部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)503部、アクリル酸(AA)6.7部を仕込み、60℃に昇温した。次に、アクリル酸(AA)20.1部を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水64.8部に過硫酸アンモニウム2.7部を溶解させた水溶液と、イオン交換水68.8部にL−アスコルビン酸0.52部および2−メルカプトプロピオン酸0.57部を溶解させた水溶液とを、3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=7まで中和した。このようにして、共重合体(C1)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(C1)の重量平均分子量Mwは52000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(C1)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水273部、3−メチル−3−ブテン−1−オールにエチレンオキシドが平均50モル付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(IPN−50)445部、アクリル酸(AA)0.8部を仕込み、60℃に昇温した。次に、アクリル酸(AA)30.2部およびアクリル酸ブチル(BA)54.0部を反応容器内に3時間かけて滴下し、それと同時に、イオン交換水68.7部に過硫酸アンモニウム2.86部を溶解させた水溶液と、イオン交換水123.1部にL−アスコルビン酸0.55部および2−メルカプトプロピオン酸2.22部を溶解させた水溶液とを、3.5時間かけて滴下した。その後、1時間引き続いて60℃に温度を維持し、重合反応を終了した。その後、重合反応温度以下の温度において水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応溶液のpHをpH=7まで中和した。このようにして、共重合体(C2)を含む重合体水溶液を得た。得られた共重合体(C2)の重量平均分子量Mwは32000であった。結果を表1に示す。
得られた共重合体(C2)を用いてコンクリート試験を行った。結果を表2に示す。
実施例で得られたセメント混和剤用ポリカルボン酸系共重合体は、コンクリート試験において、経時でのフローロスがおよそ100前後と小さく、高い経時流動保持性が発現できていることが判る。
比較例1で得られた共重合体は、コンクリート試験において、経時でのフローロスが117と大きくなっており、実施例に比べて経時流動保持性が低いレベルであることが判る。
比較例2で得られた共重合体は、コンクリート試験において、混練直後から流動性が悪く、添加量を実施例に比べて多くしても、混練直後から流動性が悪くなっていることが判る。