本発明に係る呼吸同期システムの好適な実施形態について、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
[1.比較例の構成]
本実施形態に係る呼吸同期システム10(図4参照)の説明に先立ち、従来の呼吸同期システム30(比較例)の構成について、図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、比較例の呼吸同期システム30は、センサポート12とパーソナルコンピュータ(PC)14とを有する。センサポート12とPC14との間では、中継ボックス16を介して、所定周期毎(例えば、25ms毎)に、パケット通信により信号又は情報の送受信を双方向に行うことが可能である。
センサポート12には、呼吸センサ18と外部機器20とが接続されている。外部機器20は、図示しない患者等の被検体の患部に放射線を照射して放射線治療を行う放射線治療装置、又は、被検体の患部を含む所定の画像を撮影するCT(Computed Tomography)、MRI(Magnetic Resonance Imaging)等の画像診断装置である。一方、ロードセル等の圧力センサ又はレーザセンサからなる呼吸センサ18は、被検体の呼吸動作を検知し、検知結果を呼吸信号としてセンサポート12に出力する。
呼吸信号は、図2に例示するように、周期T(例えば、T=5s)の略正弦波状の波形信号であり、半周期の上側の波形が吸気に対応し、半周期の下側の波形が呼気に対応する。なお、呼吸センサ18及び外部機器20は、特許文献1及び2に開示されているので、本明細書では、その詳細な説明を省略する。
図1に戻り、センサポート12は、記憶部22に予め記憶されているファームウェアを読み出して実行することにより、センサポート12の各種機能を実現する。すなわち、センサポート12は、記憶部22に加え、ゲート信号処理部24及び転送データ生成部28を有する。また、センサポート12は、ファームウェアを実行することにより、PC14の処理周期や、センサポート12とPC14との間のパケット通信の通信周期(25ms)よりも速い処理周期(例えば、2.5ms)で、各種の処理を実行可能である。
ゲート信号処理部24は、PC14から中継ボックス16を介して受信した所定の指示に従って、PC14内で作成されたゲート信号(第1ゲート信号)を外部機器20に供給する。
ここで、ゲート信号とは、被検体の呼吸動作に同期して、被検体に対する放射線の照射又は画像撮影を外部機器20に実行させるために、当該外部機器20に供給される制御信号である。すなわち、図2に例示するように、呼吸信号に対してゲート出力上限値(閾値、変化条件)とゲート出力下限値とが設定されている場合、ゲート出力上限値とゲート出力下限値との間に呼吸信号が入っているときに、ゲート信号はオン状態となる。一方、ゲート出力上限値とゲート出力下限値との間に呼吸信号が入っていないとき、ゲート信号はオフ状態となる。
具体的に、ゲート信号は、吸気側の半周期において時間経過に伴い呼吸信号の値が低下し、時点t1でゲート出力上限値まで下降すれば、オフ状態からオン状態に切り替わる。その後、呼気側の半周期において時間経過に伴い呼吸信号の値が増加し、時点t2でゲート出力上限値まで上昇すれば、ゲート信号は、オン状態からオフ状態に切り替わる。
なお、ゲート出力上限値及びゲート出力下限値は、例えば、使用者がPC14の入力操作部36(図1参照)を操作することで、所望の値に指定することができる。
また、呼吸信号は、周期Tの略正弦波波形の信号であるため、PC14は、周期T毎に、呼気側でオン状態となるパルス信号を作成する。そのため、図2では、t1〜t2の時間帯にパルス信号が作成された後、時点t1から周期T後の時点t3で次のパルス信号が作成される場合を図示している。従って、各周期Tで呼吸信号の値が時間経過に対して同じように変化すれば、PC14は、周期T毎の同じタイミングでゲート信号を繰り返し作成することができる。
このように、PC14が周期T毎にゲート信号としてのパルス信号を繰り返し作成するので、ゲート信号処理部24は、PC14が作成したゲート信号を外部機器20に出力することで、被検体の呼吸動作に同期して、周期T毎の同じタイミングで被検体に対する放射線の照射又は画像撮影を外部機器20に実行させることができる。
転送データ生成部28は、PC14から中継ボックス16を介して送信された所定の指示を受けて、呼吸信号や外部機器20へのゲート信号の供給状態等を含む所定のデータを転送データとして生成し、生成した転送データを通信周期毎にパケット通信により、中継ボックス16を介してPC14に送信する。この場合、転送データ生成部28は、PC14からデータ転送開始指示を受け取ることで、転送データの生成及び送信を開始し、一方で、PC14からデータ転送停止指示を受け取ることで、転送データの生成及び送信を停止する。
一方、図1において、PC14は、記憶部34に予め記憶されているアプリケーション(ソフトウェア)を読み出して実行することにより、PC14の各種機能を実現する。すなわち、PC14は、記憶部34に加え、入力操作部36、表示部38、初期化指示部40、データ転送指示部42、ゲート信号作成部(第1ゲート信号作成部)46及び呼吸異常判断部48を有する。この場合、PC14は、OSを搭載しているので、センサポート12よりも処理速度は低いが、アプリケーションを実行することで、複雑な処理を実行可能である。
具体的に、入力操作部36は、呼吸同期システム30の使用者が操作するキーボード又はマウス等であり、表示部38は、使用者向けに各種の情報が表示されるディスプレイ等の表示装置である。
初期化指示部40は、初期化処理の実行を指示する初期化指示を、中継ボックス16を介してセンサポート12に送信することにより、センサポート12に初期化処理を実行させる。データ転送指示部42は、転送データの送信開始を指示するデータ転送開始指示と、転送データの送信停止を指示するデータ転送停止指示とを、中継ボックス16を介してセンサポート12に送信する。
ゲート信号作成部46は、PC14が受信した転送データに含まれる呼吸信号に基づき第1ゲート信号を作成し、作成した第1ゲート信号を、ゲート出力指示として、中継ボックス16を介してセンサポート12に送信する。
呼吸異常判断部48は、受信した転送データに含まれる呼吸信号の時間変化に基づき、被検体の呼吸動作が異常状態にあるか否かを判断する。
この場合、呼吸異常判断部48は、呼吸動作が異常状態にあると判断すれば、その判断結果をゲート信号作成部46に通知する。ゲート信号作成部46は、通知された判断結果に基づき、第1ゲート信号の作成を停止する。
一方、呼吸異常判断部48は、呼吸動作が異常状態から通常状態に復旧したと判断すれば、その判断結果をゲート信号作成部46に通知する。ゲート信号作成部46は、通知された判断結果に基づき、第1ゲート信号の作成を再開する。
[2.比較例の動作とその課題]
比較例の呼吸同期システム30は、以上のように構成される。次に、比較例の動作と、その課題とについて、図1〜図3を参照しながら説明する。
従来より、呼吸同期システム30の性能を示す重要な指標の一つとして、ゲート遅延時間Tdがある。ゲート遅延時間Tdとは、被検体の呼吸動作が変化してから、その呼吸動作の変化に対応するゲート信号を出力するまでに、当該呼吸同期システム30が要する処理時間と定義される。なお、図2では、理想的なゲート信号の波形を実線で図示すると共に、ゲート遅延時間Tdが発生している場合を一点鎖線で図示している。図2では、t1〜t4、t2〜t5、t3〜t6の時間をゲート遅延時間Tdとして例示している。
そのため、ゲート遅延時間Tdが大きければ、外部機器20が呼吸動作に同期した放射線の照射又は画像撮影(以下、呼吸同期照射ともいう。)を行う際に、誤差が生じる。具体的に、放射線治療の場合では、放射線の照射位置の誤差となる。また、画像撮影の場合には、撮影タイミングの誤差となり、画質の低下につながる。例えば、被検体の呼吸回数が毎分12回である場合、T=5sとなる。そのため、Td=100msであれば、周期Tに対して2%の時間的な誤差が生じることになる。従って、呼吸動作に同期して放射線の照射又は画像撮影を精度良く行うためには、周期Tに対して無視できる程度にまでゲート遅延時間Tdを短縮する必要がある。
比較例の呼吸同期システム30では、呼吸信号からゲート信号を作成する処理は、PC14のソフトウェアで行っている。ゲート信号の作成には複数のゲートモード(ゲート信号作成時の動作モード)があり、ゲートモード毎に参照すべき複数の設定パラメータがある。そのため、ゲート信号の作成条件が複雑となることから、PC14のソフトウェアによって、このような複雑な処理を行っている。
例えば、放射線治療において、咳、くしゃみ、しゃっくり等に起因した呼吸信号の異常状態を検出した場合には、患者の安全を確保するため、一時的にゲート信号をオフ状態にして放射線の照射を中断する必要がある。この場合、呼吸信号の異常状態を検出するためには、呼吸信号の波形予測等、さらに大規模で複雑な処理を必要とする。そのため、比較例では、高性能のCPU(Central Processing Unit)と大容量のメモリとを備えたPC14のソフトウェアで、上記の処理を実現している。従って、PC14のソフトウェアの実行以外の方法により、上記の複雑な処理を実行することは考えられなかった。
しかしながら、PC14のソフトウェアは、OS上のアプリケーションとして実行される。そのため、常に高速な実時間応答性を保証することは難しい。また、OS中の特定のタスクがCPUを占有した場合等、稀に短時間、アプリケーションの実行が阻害されるおそれがあった。さらに、外部機器20に対するゲート信号の供給にかかる時間については、アプリケーションの処理時間に加えて、センサポート12から中継ボックス16を介してPC14に呼吸信号を転送する時間と、ゲート信号(の作成結果)をPC14からセンサポート12に転送する時間とを考慮する必要がある。そのため、呼吸センサ18からセンサポート12への呼吸信号の入力より、センサポート12から外部機器20へのゲート信号の出力までのゲート遅延時間Tdについて、呼吸同期システム30では、大幅に短縮することは困難であった。
ここで、比較例の呼吸同期システム30において、PC14とセンサポート12との間のパケット通信と、外部機器20に対するゲート信号の供給とを含む、外部機器20、センサポート12とPC14との間の信号又は情報の送受信について、図3のシーケンス図を参照しながら説明する。
PC14内において、記憶部34に記憶されたアプリケーションが読み出されて起動すると、PC14では下記の各種処理が実行される。一方、センサポート12内において、記憶部22に記憶されたファームウェアが読み出されて起動すると、センサポート12では下記の各種処理が実現される。
先ず、ステップS1において、初期化指示部40は、初期化指示のパケットをセンサポート12に送信する。センサポート12は、受信したパケットに含まれる初期化設定情報に従って、センサポート12内のハードウェア及びファームウェアの状態を初期化する。
なお、センサポート12から外部機器20に供給されるゲート信号については、放射線の照射又は画像撮影の停止を示すオフ状態に初期化される。
ステップS3において、PC14のデータ転送指示部42は、データ転送開始指示のパケットをセンサポート12に送信する。ステップS4において、センサポート12の転送データ生成部28は、データ転送開始指示を受けて、PC14に対するデータ転送動作を開始する。すなわち、転送データ生成部28は、呼吸センサ18からの呼吸信号に対して、ディジタル化、ノイズ低減及び呼吸位相検出等の処理を行った上で、呼吸信号データ、呼吸位相データ、呼吸センサ18の状態及びセンサポート12の状態等の各種情報を含む転送データを生成し、生成した転送データのパケットを中継ボックス16経由でPC14に送信する。
この場合、転送データ生成部28は、PC14からデータ転送停止指示のパケットを受信するまで、一定時間(例えば、25ms)間隔で転送データのパケットをPC14に送信する(ステップS5)。なお、図3では、他の信号又は情報の送受信と区別するため、ステップS5の送信処理が一定時間間隔で行われることを、破線の矢印で図示している。
PC14では、転送データのパケットを受信する毎に、当該転送データに含まれる上記の各種情報を記憶部34に格納する。そして、ステップS6において、ゲート信号作成部46は、受信した各種情報に基づき、予め設定されたゲート信号出力条件に従ったゲート信号の値を作成する。ゲート信号の値、呼吸波形、呼吸位相、呼吸センサ18の状態及びセンサポート12の状態等の各種情報は、表示部38の画面上に表示される。
ゲート信号作成部46は、作成したゲート信号の値を含むゲート出力指示のパケットをセンサポート12に送信する。ゲート信号処理部24は、ゲート出力指示のパケットを受信すると、ステップS7において、当該値を示すゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、外部機器20は、ステップS8において、供給されたゲート信号に従って、被検体に対する放射線の照射を開始することができる。
ステップS5において、転送データが一定時間間隔でセンサポート12からPC14に送信されるので、ゲート信号作成部46は、転送データを受信する毎にステップS6の処理を実行してゲート信号の値を作成し、一定時間間隔でセンサポート12にゲート出力指示を送信する。従って、センサポート12は、一定時間間隔で、PC14が作成したゲート信号を外部機器20に出力して放射線の照射を指示することができる。
ところで、PC14の呼吸異常判断部48は、PC14で転送データが受信される毎に、転送データに含まれる呼吸信号について、予め設定された正常範囲を逸脱しているか否か、すなわち、呼吸信号に応じた被検体の呼吸動作に異常状態が発生しているか否かを判断している。
そして、ステップS9において、呼吸動作が異常状態にあると判断した場合、呼吸異常判断部48は、その判断結果をゲート信号作成部46に通知する。ステップS10において、ゲート信号作成部46は、呼吸異常判断部48からの通知に基づき、ゲート信号の作成を一旦停止する。すなわち、ゲート信号作成部46は、ゲート信号を構成するパルス信号の値をオン状態からオフ状態に移行させ、その結果を含めたゲート出力指示(オフ)のパケットをセンサポート12に送信する。
ステップS11において、ゲート信号処理部24は、ゲート出力指示(オフ)のパケットを受信すると、オフ状態を示すゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、外部機器20は、ステップS12において、供給されたゲート信号に従って、被検体に対する放射線の照射を停止する。
その後、ステップS13において、PC14で受信される転送データに含まれる呼吸信号に基づき、被検体の呼吸動作が正常状態に復旧したと判断できた場合、呼吸異常判断部48は、その判断結果をゲート信号作成部46に通知する。これにより、ステップS14において、ゲート信号作成部46は、呼吸異常判断部48からの通知に基づき、次に受信される転送データに含まれる呼吸信号データ等の各種情報に基づき、ゲート信号の作成を再開し、作成したゲート信号の値を含むゲート出力指示(オン)のパケットをセンサポート12に送信する。
ステップS15において、ゲート信号処理部24は、ステップS7と同様に、ゲート出力指示のパケットを受信すると、当該値を示すゲート信号を外部機器20に出力する。この結果、ステップS16において、外部機器20は、供給されたゲート信号に従って、被検体に対する放射線の照射を再開することができる。
その後、使用者が入力操作部36を操作して、放射線照射の終了を指示すると、ステップS17において、ゲート信号作成部46は、ゲート信号の作成を終了し、ゲート信号をオン状態からオフ状態に移行させる。そして、ゲート信号作成部46は、ゲート出力指示(オフ)のパケットをセンサポート12に送信する。
ステップS18において、ゲート信号処理部24は、ゲート出力指示(オフ)のパケットを受信すると、ステップS11と同様に、オフ状態を示すゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、外部機器20は、ステップS19において、供給されたゲート信号に従い、被検体に対する放射線照射を終了する。
最後に、ステップS20において、データ転送指示部42は、データ転送停止指示のパケットをセンサポート12に送信する。ステップS21で、転送データ生成部28は、データ転送停止指示を受けて、PC14に対するデータ転送動作を停止する。
以上説明したように、比較例の呼吸同期システム30では、PC14上のソフトウェアによりゲート信号を作成していた。そのため、呼吸動作の異常状態の発生時を含めて、複雑なゲート信号出力条件に基づき、ゲート信号を作成することができる。
しかしながら、前述のように、OS上のアプリケーションとして実行されるので、外部機器20に対するゲート信号の供給にかかる時間は、アプリケーションの処理時間に加え、センサポート12とPC14との間のパケットの通信時間も考慮する必要がある。そのため、ゲート遅延時間Tdを現状の値(例えば、数十ms)よりさらに短縮することが難しい。また、ゲート信号の作成をソフトウェアに頼っているため、ソフトウェアのゲート信号の作成処理等に何らかの不具合が発生し、本来はゲート信号がオフ状態であるべきところ、誤ってオン状態となって出力されれば、被検体に対して放射線が誤照射され、被検体に対して不用意に放射線を照射することになる。
[3.本実施形態の構成]
次に、本実施形態に係る呼吸同期システム10の構成について、図4を参照しながら説明する。なお、呼吸同期システム10の説明において、比較例の呼吸同期システム30(図1参照)と同じ構成要素については、同じ参照符号を用いて説明し、その詳細な説明を省略する。
比較例の呼吸同期システム30と比較して、本実施形態に係る呼吸同期システム10では、PC14側に、中継ボックス16を介してセンサポート12に接続されるゲート遮断スイッチ50が設けられている。また、呼吸同期システム10において、センサポート12は、記憶部22及び転送データ生成部28に加え、電源供給部52と、前述のゲート信号処理部24(図1参照)に複数の新たな機能を持たせたゲート信号処理部54とをさらに有する。さらに、呼吸同期システム10において、PC14は、ゲート信号作成指示部44をさらに有する。
このように構成される本実施形態に係る呼吸同期システム10において、ゲート信号処理部54は、外部機器20に対するゲート信号の供給機能に加え、記憶部22に記憶されたファームウェアを読み出して起動させることにより、さらなる機能を実現可能である。
具体的に、ゲート信号処理部54は、PC14から中継ボックス16を介して受信した所定の指示に従って、呼吸信号に基づく所定のゲート信号(第2ゲート信号)の作成を開始し、又は、該ゲート信号の作成を停止する。すなわち、ゲート信号処理部54は、ゲート信号の作成開始を指示するゲート作成開始指示を受け取ってから当該ゲート信号の作成を開始し、ゲート信号の作成停止を指示するゲート作成停止指示を受け取ると、ゲート信号の作成を停止する第2ゲート信号作成部として機能する。
従って、ゲート信号処理部54は、ゲート作成開始指示を受け取ると、ゲート作成開始指示を参照してゲート出力上限値及びゲート出力下限値を設定した後に、呼吸信号(呼吸動作)に同期して、周期T毎の同じタイミングで第2ゲート信号を繰り返し作成する。
また、ゲート信号処理部54は、作成した第2ゲート信号、又は、PC14内で作成された第1ゲート信号のうち、いずれか一方のゲート信号を外部機器20に供給するゲート信号出力部として機能する。具体的に、ゲート信号処理部54は、ゲート作成開始指示を受け取ってからゲート作成停止指示を受け取るまでの時間帯において、第2ゲート信号を作成中であれば、作成した第2ゲート信号を外部機器20に出力する。一方、第2ゲート信号を作成中でなければ、ゲート信号処理部54は、PC14が作成した第1ゲート信号を外部機器20に出力する。
さらに、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号の作成中、第1ゲート信号がオフ状態のときの第2ゲート信号のオン状態の継続時間を監視し、その継続時間が所定の閾値時間に到達すると、外部機器20に出力するゲート信号をオフ状態に移行させるゲート信号監視部として機能する。
本実施形態では、センサポート12及びPC14の双方がゲート信号をそれぞれ作成する。そのため、ゲート遅延時間Tdを少しでも短くし、ゲート信号をリアルタイムで外部機器20に供給するためには、センサポート12のゲート信号処理部54で第2ゲート信号を作成し、外部機器20に出力すればよい。
しかしながら、使用者が操作するPC14で作成した第1ゲート信号とは異なる第2ゲート信号が作成され、外部機器20に供給される場合には、被検体に対して不用意に放射線の照射又は画像撮影が実行されるおそれがある。これを阻止するため、ゲート信号処理部54は、第1ゲート信号がオフ状態であるにも関わらず、第2ゲート信号がオン状態にあり、この状態が閾値時間以上継続した場合には、安全側の観点から、外部機器20に出力するゲート信号をオフ状態に切り替える。これにより、ゲート信号処理部54から外部機器20へのゲート信号の供給が強制的に停止され、呼吸同期照射を停止させることができる。
さらに、ゲート信号処理部54は、図2の吸気側で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで下降し、第2ゲート信号がオフ状態からオン状態に変化した場合に、ゲート出力上限値を中心としたヒステリシス幅wh(図9参照)の範囲内で呼吸信号が変動している期間中は、第2ゲート信号の次の状態変化であるオン状態からオフ状態への移行を禁止させる呼吸信号監視部として機能する。
また、ゲート信号処理部54は、図2の呼気側で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで上昇し、第2ゲート信号がオン状態からオフ状態に変化した場合に、ゲート出力上限値を中心としたヒステリシス幅whの範囲内で呼吸信号が変動している期間中は、第2ゲート信号の次の状態変化であるオフ状態からオン状態への移行を禁止させる。
図4に戻り、PC14のゲート信号作成指示部44は、使用者による入力操作部36の操作に起因して、ゲート作成開始指示とゲート作成停止指示とを、中継ボックス16を介してセンサポート12に送信する。この場合、呼吸異常判断部48は、センサポート12から受信した転送データに含まれる呼吸信号の時間変化に基づき、被検体の呼吸動作が異常状態にあると判断すれば、その判断結果をゲート信号作成指示部44にも通知する。これにより、ゲート信号作成指示部44は、ゲート信号処理部54が第2ゲート信号を作成中でも、通知された判断結果に基づき、中継ボックス16を介してセンサポート12にゲート作成停止指示を通知する。この結果、ゲート信号処理部54は、受信したゲート作成停止指示に基づき、第2ゲート信号の作成を停止する。
一方、呼吸異常判断部48は、呼吸動作が異常状態から通常状態に復旧したと判断すれば、その判断結果をゲート信号作成指示部44にも通知する。ゲート信号作成指示部44は、ゲート信号処理部54が第2ゲート信号の作成を停止中でも、通知された判断結果に基づき、中継ボックス16を介してセンサポート12にゲート作成開始指示を通知する。これにより、ゲート信号処理部54は、受信したゲート作成開始指示に基づき、第2ゲート信号の作成を再開する。
なお、ゲート遮断スイッチ50と、当該ゲート遮断スイッチ50に関わるセンサポート12及びPC14内の機能とについては、後述する。
本実施形態に係る呼吸同期システム10は、以上のように構成されるものであり、次に、呼吸同期システム10の特徴的な機能(第1実施形態、第2実施形態)について説明する。
[4.第1実施形態の機能]
第1実施形態は、上述の項目2.で説明した比較例の課題を解決するための呼吸同期システム10の特徴的な機能である。
すなわち、第1実施形態は、ゲート遅延時間Tdを短縮した呼吸同期システム10を提供することを第1の目的とする。また、第1実施形態は、ゲート信号の信頼性及び安全性を高めた呼吸同期システム10を提供することを第2の目的とする。さらに、第1実施形態は、呼吸信号に含まれるノイズの影響を受けにくい呼吸同期システム10を提供することを第3の目的とする。
第1及び第2の目的を達成するため、第1実施形態では、PC14内のソフトウェア(により機能する構成要素)が呼吸信号に基づく第1ゲート信号の作成処理を実行する一方で、センサポート12のファームウェア(により機能する構成要素)でも並行して呼吸信号に基づく第2ゲート信号の作成処理を実行する。すなわち、呼吸同期システム10においては、通常、ファームウェアにより作成された第2ゲート信号を外部機器20に出力し、一方で、第2ゲート信号を作成中でないときには第1ゲート信号を外部機器20に出力する。
このように、通常時は、センサポート12のファームウェアが作成した第2ゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、センサポート12とPC14との間の通信時間、及び、PC14のソフトウェアの処理時間を含まない、ゲート遅延時間Tdの短い第2ゲート信号を外部機器20に出力することができる。
また、第1実施形態では、第2ゲート信号がオン状態であると共に、第1ゲート信号がオフ状態である時間帯が一定時間継続した場合には、外部機器20に供給するゲート信号をオフ状態にする。このように、ファームウェアが作成した第2ゲート信号と、ソフトウェアが作成した第1ゲート信号とを照合し、第2ゲート信号のオン状態及び第1ゲート信号のオフ状態が一定時間以上継続したら、安全側のオフ状態のゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、ゲート信号の作成処理における不具合に起因して、危険側のオン状態のゲート信号が出力され続けることを回避し、信頼性及び安全性の高いゲート信号を外部機器20に出力することができる。
さらに、第1実施形態では、呼吸信号に応じた被検体の呼吸動作が異常状態にあることを検出したときには、第1ゲート信号及び第2ゲート信号の作成処理を停止させ、第1ゲート信号及び第2ゲート信号をオフ状態にして、通常状態への復旧を待つようにし、通常状態に復旧したら、第1ゲート信号及び第2ゲート信号の作成処理を再開する。このように、呼吸信号の異常状態の検出や、異常状態の発生後の回復処理等の高度な処理に関しては、PC14のソフトウェアの制御で行うことにより、従来と同様の高い機能レベルを実現することができる。
さらに、第3の目的を達成するため、第1実施形態では、ゲート信号の作成条件に基づきファームウェアが呼吸信号から第2ゲート信号を作成する際に、第2ゲート信号の状態を変化させるべき条件(オン状態からオフ状態、又は、オフ状態からオン状態に変化させるための条件)を検出した場合、第2ゲート信号の状態を変化させると共に、呼吸信号がそのときの値から一定値以上変動しないうちは、第2ゲート信号の次の状態変化を抑止する。このように、呼吸信号のレベル判定処理にヒステリシス特性を持たせることで、呼吸信号に含まれるノイズの振幅が一定値(ヒステリシス幅)未満であれば、第2ゲート信号が短期間のうちに再度変化する現象(変化時のバタツキ)を防ぐことができる。ファームウェアは、ソフトウェアと比較して、第2ゲート信号を高速処理により作成可能である一方で、呼吸信号に含まれるノイズの影響を受けやすい。従って、このようなノイズ対策を施すことにより、より信頼性の高い第2ゲート信号を作成して外部機器20に供給することができる。
[5.第1実施形態の動作]
次に、第1実施形態を実現するための具体的な動作について、図4〜図9を参照しながら説明する。ここでは、図1〜図3で説明した比較例の呼吸同期システム30と同様の動作については、同じステップ番号を付して詳細な説明を省略する。
呼吸同期システム10では、センサポート12がゲート信号処理部54をさらに有し、PC14がゲート信号作成指示部44をさらに有し、これらの構成要素の動作に伴って他の構成要素も所定の動作を行う点で、比較例の呼吸同期システム30とは異なる。これらの構成要素の動作は、センサポート12でのファームウェアの実行、及び、PC14でのアプリケーションの実行によって実現される。また、図5のシーケンス図に示すように、呼吸同期システム10においても、図3の場合と同様に、ステップS1〜S5の処理が先ず実行される。
そして、一定時間毎のステップS5の実行が開始された後のステップS31において、使用者がPC14の入力操作部36を操作して、被検体に対する呼吸同期照射の開始を指示すると、ゲート信号作成指示部44は、第2ゲート信号の作成開始を指示するゲート作成開始指示のパケットをセンサポート12に送信する。このゲート作成開始指示のパケットには、第2ゲート信号の作成条件を示すゲートモードや各種のパラメータ情報が含まれている。
従って、ステップS32において、ゲート信号処理部54は、受信したゲート作成開始指示に従って、呼吸信号に基づき第2ゲート信号の作成を開始する。ステップS33において、作成された第2ゲート信号がオン状態になると、ゲート信号処理部54は、この第2ゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、外部機器20は、ステップS8において、入力された第2ゲート信号に従って、被検体に対する放射線の照射を開始する。なお、第2ゲート信号の作成処理は、通常、PC14からゲート作成停止指示のパケットを受信するまで継続して行われる。
その後、PC14のゲート信号作成部46は、ステップS6の処理を実行し、ゲート出力指示(オン)のパケットをセンサポート12に送信する。センサポート12では、ゲート信号処理部54から外部機器20への第2ゲート信号の出力処理が開始されている。そのため、センサポート12がゲート出力指示(オン)を受信しても、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号を外部機器20へ出力し続ける。
なお、ステップS33で外部機器20に対する第2ゲート信号の出力が開始されると、それ以降のステップS5の処理において、転送データ生成部28は、ゲート信号処理部54が外部機器20に出力したゲート信号の値を、転送データに含めてPC14に送信する。
次に、ステップS9の実行により呼吸動作が異常状態であると呼吸異常判断部48が判断すると、その判断結果は、ゲート信号作成指示部44及びゲート信号作成部46に通知される。これにより、ステップS34において、ゲート信号作成指示部44は、第2ゲート信号の作成停止を指示するゲート作成停止指示のパケットを作成してセンサポート12に送信する。ステップS35において、センサポート12のゲート信号処理部54は、ゲート作成停止指示を受け取ると、第2ゲート信号の作成を停止する。
また、PC14のゲート信号作成部46は、ステップS10において、呼吸異常判断部48の判断結果を受け、第1ゲート信号の作成を停止すると共に、第1ゲート信号がオフ状態になったことを示すゲート出力指示(オフ)のパケットを作成してセンサポート12に送信する。この結果、ステップS36において、ゲート信号処理部54は、外部機器20へ供給するゲート信号をオフ状態とし、外部機器20による放射線の照射を停止させる(ステップS12)。
その後、ステップS13において、呼吸動作が正常状態に復旧したと呼吸異常判断部48が判断すると、その判断結果は、ゲート信号作成指示部44及びゲート信号作成部46に通知される。これにより、ステップS37において、ゲート信号作成指示部44は、第2ゲート信号の作成開始(作成再開)を指示するゲート作成開始指示のパケットを作成してセンサポート12に送信する。ステップS38において、センサポート12のゲート信号処理部54は、ゲート作成開始指示を受け取ると、第2ゲート信号の作成を再開する。この結果、ステップS39において、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号の出力を再開し、外部機器20による放射線の照射を再開させる(ステップS16)。
また、PC14のゲート信号作成部46は、ステップS14において第1ゲート信号の作成を再開し、作成した第1ゲート信号の値を含むゲート出力指示(オン)のパケットをセンサポート12に送信する。
その後、次のステップS40において、作成された第2ゲート信号がオフ状態になると、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号をオン状態からオフ状態に移行させ、オフ状態の第2ゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、外部機器20は、ステップS19において、供給された第2ゲート信号に従って、被検体に対する放射線の照射を停止する。
一方、PC14においても、ステップS17において、ゲート信号作成部46は、第1ゲート信号をオン状態からオフ状態に移行し、ゲート出力指示(オフ)のパケットをセンサポート12に送信する。
次のステップS41において、使用者がPC14の入力操作部36を操作して、呼吸同期照射の終了を指示すると、ゲート信号作成指示部44は、ゲート作成停止指示のパケットを作成してセンサポート12に送信する。ステップS42において、センサポート12のゲート信号処理部54は、ゲート作成停止指示を受け取ると、第2ゲート信号の作成を停止する。第2ゲート信号は既にオフ状態となっているが、第2ゲート信号を作成停止にすることで、ゲート信号処理部54から外部機器20にオン状態の第2ゲート信号が誤って出力されることを阻止することができる。
最後に、データ転送指示部42は、ステップS20の処理を行ってデータ転送停止指示のパケットをセンサポート12に送信し、転送データ生成部28は、ステップS21の処理を行い、データ転送停止指示を受け、PC14に対するデータ転送動作を停止する。
次に、図5のシーケンス図中、センサポート12内の一部の処理の詳細について、図6A〜図6Cを参照しながら説明する。
図6Aは、PC14からゲート出力指示のパケットを受信したときのゲート信号処理部54(図4参照)の処理を図示したフローチャートである。この場合、当該パケットに含まれるパラメータが、第1ゲート信号がオン状態であるゲート出力指示(オン)であるとき(ステップS51:YES)、ゲート信号処理部54は、ステップS52において、第1ゲート信号の値を1(オン状態)に設定する。一方、当該パケットに含まれるパラメータが、第1ゲート信号をオフ状態にするゲート出力指示(オフ)であるとき(ステップS51:NO)、ゲート信号処理部54は、ステップS53において、第1ゲート信号を0(オフ状態)にリセットする。このような処理により、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号の作成を停止している場合には、第2ゲート信号に代えて、第1ゲート信号を外部機器20に供給することが可能となる。
図6Bは、図5のステップS32、S38において、PC14からゲート作成開始指示のパケットを受け取ったときのゲート信号処理部54の処理を図示したフローチャートである。この場合、ゲート信号処理部54は、当該パケットを受け取ると、ステップS54において、パケットに含まれる作成条件(ゲート出力上限値、ゲート出力下限値等)に基づいて、ゲート信号処理部54における第2ゲート信号の作成条件の初期設定を行う。次のステップS55において、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号を作成中であることを示す第2ゲート信号作成中フラグを1にセットする。この結果、ゲート信号処理部54が第2ゲート信号を作成可能な状態に至ると共に、第2ゲート信号を作成中であることをセンサポート12内の各部に認識させることができる。
図6Cは、図5のステップS35、S42において、PC14からゲート作成停止指示のパケットを受け取ったときのゲート信号処理部54の処理を図示したフローチャートである。この場合、ゲート信号処理部54は、当該パケットを受け取ると、ステップS56において、第2ゲート信号作成中フラグを0にリセットする。この結果、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号の作成を停止すると共に、第2ゲート信号の作成停止をセンサポート12内の各部に認識させることができる。
呼吸同期システム10の第1実施形態における外部機器20、センサポート12及びPC14間での信号又は情報の送受信については、概略以上の通りである。次に、センサポート12におけるゲート信号の作成処理について、図7〜図9を参照しながら、より具体的に説明する。ここでは、主として、ゲート信号処理部54の動作について説明する。
図7は、ゲート信号処理部54の処理動作を説明するためのフローチャートである。図7に示す動作としては、第2ゲート信号を作成して外部機器20に出力する場合と、第2ゲート信号に代えて第1ゲート信号を外部機器20に出力する場合と、オフ状態のゲート信号を強制的に出力する場合とがある。従って、図7は、図5中、ステップS2、S32、S33、S35、S36、S38、S39、S40、S42の処理に対応する。
具体的に、ゲート信号処理部54におけるゲート信号の作成処理は、ゲート信号処理の先頭部分で行われる処理であり、タイマ割込みの形で、一定時間(例えば、2.5ms)間隔で常に実行される。
すなわち、ステップS61において、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号作成中フラグが1であるか否かを判断する。ステップS2等の初期状態では第2ゲート信号作成中フラグは0であるから(ステップS61:NO)、ゲート信号処理部54は、次のステップS62において、第1ゲート信号を外部機器20に供給すべきゲート信号として設定する。これにより、ゲート信号処理部54は、設定内容に従って、第1ゲート信号を外部機器20に供給する。
また、ゲート信号処理部54は、図示しないタイマを有しており、ステップS63において、タイマの値を0にリセットし、今回の処理を終了する。
その後、ステップS32等でゲート作成開始指示のパケットをセンサポート12が受信すると、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号作成中フラグを1に設定しているため(ステップS61:YES)、ステップS64で第2ゲート信号の作成処理を行う。従って、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号作成中フラグが1であり、且つ、第2ゲート信号の作成処理を行っているため、ステップS65において、第2ゲート信号を外部機器20に供給すべきゲート信号として設定する。
次のステップS66において、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号が1(オン状態)、且つ、第1ゲート信号が0(オフ状態)であるか否かを判断する。第2ゲート信号が0であるか、又は、第1ゲート信号が1であれば(ステップS66:NO)、ゲート信号処理部54は、ステップS63の処理を行ってタイマを0にリセットし、今回の処理を終了する。
一方、ステップS66において、第2ゲート信号が1、且つ、第1ゲート信号が0の場合(ステップS66:YES)、ゲート信号処理部54は、タイマの値が200未満であれば(ステップS67:YES)、ステップS68において、タイマの値を1だけ加算して、今回の処理を終了する。
図7の処理を繰り返し行った結果、ステップS67において、タイマの値が200に到達すれば(ステップS67:NO)、ゲート信号処理部54は、ステップS69において、外部機器20に供給すべきゲート信号をオフ状態にして、今回の処理を終了する。
なお、第1ゲート信号が0で、且つ、第2ゲート信号が1の場合(ステップS66:YES)とは、PC14側で第1ゲート信号をオフ状態にすべき旨の指示を出しているにも関わらず、第2ゲート信号がオン状態になっていることをいう。この場合、センサポート12から外部機器20への第2ゲート信号の供給を継続すれば、被検体に対して不用意に放射線が照射される可能性がある。
そこで、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号が1で且つ第1ゲート信号が0である、ゲート信号の異常状態が継続していることを監視するタイマを有している。これにより、図7に示す処理が2.5ms毎に実行されるとタイマの値を1だけ加算し、タイマの値が200に到達、すなわち、タイマの計時開始から500ms(=2.5ms×200)経過すると、それ以降、ゲート信号の異常状態が解消されるまで、ゲート信号処理部54は、センサポート12から外部機器20へのゲート信号の出力をオフにする。
次に、図7のステップS64の処理について、図8のフローチャート及び図9のタイミングチャートを参照しながら、より詳しく説明する。
ステップS71において、ゲート信号処理部54は、ゲート変化抑止フラグが0であるか否かを判断する。
ここで、ゲート変化抑止フラグについて、図9を参照しながら説明する。時間経過に伴って呼吸信号が略正弦波状に変化する場合(図2参照)、時点t1で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで低下すると、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号をオフ状態からオン状態に移行させる。この場合、ゲート信号処理部54は、時点t1から時点t2まで第2ゲート信号をオン状態に維持し、その後、時点t2で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで上昇すると、第2ゲート信号をオン状態からオフ状態に移行させる。
ところで、図9に示すように、呼吸信号にノイズが含まれている場合、例えば、時点t1でオン状態に移行し、時点t1直後の時点t7で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで上昇すると、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号をオン状態からオフ状態に移行させる。そして、時点t7から時間Tc1経過後の時点t8で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで低下すると、オン状態に移行させる。
すなわち、第2ゲート信号は、理想的には、周期T中、時点t1から時点t2までオン状態となる。しかしながら、図9に一点鎖線で示す理想的な呼吸信号の波形に、実線で示したノイズが重畳すると、時点t1での第2ゲート信号の状態変化時にバタツキ(チャタリング)が発生することになる。
このことは、時点t2での第2ゲート信号の状態変化時にも発生するおそれがある。この場合、時点t2直後の時点t9で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで下降すると、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号をオフ状態からオン状態に移行させ、時点t9から時間Tc2経過後の時点t10で呼吸信号の値がゲート出力上限値まで上昇すると、オフ状態に移行させる。
そこで、呼吸同期システム10では、センサポート12のゲート信号処理部54が、時点t1、t2の周辺で、ゲート出力上限値を中心とした上下にwhのヒステリシス幅を設定する。そして、時点t1以降、呼吸信号がヒステリシス幅wh内で上下動する場合、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号のオン状態を維持して、次の状態変化であるオフ状態への移行を禁止する。また、時点t2以降、呼吸信号がヒステリシス幅wh内で上下動する場合、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号のオフ状態を維持して、次の状態変化であるオン状態への移行を禁止する。これによって、呼吸信号に重畳したノイズによる第2ゲート信号の状態変化時のバタツキの発生を抑止するようにしている。
そこで、図8に戻り、ステップS71でのゲート変化抑止フラグとは、第2ゲート信号の状態が変化したときに1にセットされ、呼吸信号がヒステリシス幅wh内に留まっている間、1の値をとるフラグである。そのため、ゲート変化抑止フラグは、ヒステリシス幅wh内の期間中、第2ゲート信号の次の状態変化を抑止する役割を持つ。なお、この期間以外の時間では、ゲート変化抑止フラグは0となる。
ここで、ヒステリシス幅whは、呼吸信号に重畳するノイズの振幅より大きな値とする必要がある。従って、ヒステリシス幅whは、予め定められた所定値(例えば、呼吸信号の可変範囲の2%)とするか、又は、PC14からゲート信号作成開始指示のパケットのパラメータで指定してもよい。
従って、図5のステップS2等の初期状態では、ゲート作成開始指示のパケットをセンサポート12が受信していないため、図8でゲート変化抑止フラグは0である(ステップS71:YES)と共に、第2ゲート信号も0である(ステップS72:YES)。
次に、ゲート信号処理部54は、現在の呼吸信号の値がゲート作成条件、すなわち、ゲート出力上限値とゲート出力下限値との間に入っているかどうかを検査する(ステップS73)。呼吸信号の値がゲート出力上限値とゲート出力下限値との間にあれば(ステップS73:YES)、ゲート信号処理部54は、ステップS74で第2ゲート信号を1にセットし、次のステップS75でゲート変化抑止フラグを1にセットして、今回のステップS64の処理を終了する。
一方、ゲート出力上限値とゲート出力下限値との間に呼吸信号の値が入っていなければ(ステップS73:NO)、ゲート信号処理部54は、今回のステップS64の処理を直ちに終了する。
次に、ステップS71において、ゲート変化抑止フラグが1の場合、すなわち、第2ゲート信号の状態が変化した直後の場合(ステップS71:NO)、次のステップS76において、ゲート信号処理部54は、現在の呼吸信号の値がヒステリシス幅wh内に収まっているか否かを検査する。呼吸信号の値がヒステリシス幅wh内に収まっていれば(ステップS76:YES)、ゲート信号処理部54は、今回のステップS64の処理を直ちに終了する。すなわち、時点t1又は時点t2で一旦オン状態又はオフ状態となった第2ゲート信号の状態を維持し、ノイズに起因したヒステリシス幅wh内での第2ゲート信号の次の状態変化の発生を阻止する。
一方、呼吸信号の値がヒステリシス幅whから脱していれば(ステップS76:NO)、次のステップS77において、ゲート信号処理部54は、ノイズに起因する第2ゲート信号の状態変化は発生しないと判断し、ゲート変化抑止フラグを0にリセットして今回のステップS64の処理を終了する。
このように、ゲート変化抑止フラグは、第2ゲート信号の値が変化したときに1にセットされ、ゲート出力上限値を中心とするヒステリシス幅whから呼吸信号が離れるまで、第2ゲート信号の次の状態変化を抑止する役割を持つ。これにより、第2ゲート信号の状態変化時、呼吸信号に含まれるノイズにより第2ゲート信号が短期間のうちに再度変化する現象(状態変化時のバタツキ)の発生を防ぐことができる。
次に、ゲート変化抑止フラグが0(ステップS71:YES)、且つ、第2ゲート信号が1(ステップS72:NO)の場合、ステップS78において、ゲート信号処理部54は、現在の呼吸信号の値がゲート出力上限値とゲート出力下限値との間に入っているか否かを検査する。
呼吸信号の値がゲート出力上限値とゲート出力下限値との間に入っていない場合(ステップS78:NO)、次のステップS79において、ゲート信号処理部54は、第2ゲート信号を0にリセットする。次のステップS80において、ゲート信号処理部54は、ゲート変化抑止フラグを1にセットして、今回のステップS64の処理を終了する。
一方、ゲート出力上限値とゲート出力下限値との間に呼吸信号の値が入っていれば(ステップS78:YES)、ゲート信号処理部54は、今回のステップS64の処理を直ちに終了する。
[6.第1実施形態の効果]
以上説明したように、第1実施形態では、外部機器20に接続されたセンサポート12に備わるゲート信号処理部54が第2ゲート信号を作成し、外部機器20に出力する。これにより、外部機器20に出力されるゲート信号のゲート遅延時間Tdを容易且つ確実に短くすることができる。この結果、外部機器20に対してゲート信号をリアルタイムで供給し、より高い精度で呼吸に同期して当該外部機器20を動作させることができる。
すなわち、第1実施形態では、呼吸信号からゲート信号を作成する処理を、従来のPC14のソフトウェアに加えて、センサポート12のファームウェアでも並行して行うようにしている。従って、通常は、ファームウェアが作成した第2ゲート信号を外部機器20に出力する。これにより、通常時は、ファームウェアが作成した第2ゲート信号を外部機器20に出力することで、センサポート12とPC14との間の通信時間及びソフトウェアの処理時間を含まない、ゲート遅延時間Tdの短いゲート信号を外部機器20に出力することができる。
なお、第2ゲート信号を作成中でなければ、ゲート信号処理部54は、外部機器20を確実に動作させるため、第1ゲート信号を外部機器20に供給する。
また、ゲート信号作成指示部44は、第2ゲート信号の作成開始を指示するゲート作成開始指示と、第2ゲート信号の作成停止を指示するゲート作成停止指示とをセンサポート12に通知するので、ゲート信号処理部54は、ゲート作成開始指示を受けてからゲート作成停止指示を受けるまでの間、第2ゲート信号を確実に作成することができる。
また、センサポート12のゲート信号処理部54は、第2ゲート信号の作成中、第1ゲート信号がオフ状態のときの第2ゲート信号のオン状態の継続時間を監視し、継続時間が所定の閾値時間(第1実施形態では500ms)に到達した場合に、第2ゲート信号をオフ状態に移行させる。ファームウェアが作成した第2ゲート信号がオン状態で、ソフトウェアが作成した第1ゲート信号がオフ状態であり、このような状態が一定時間継続した場合には、ゲート信号をオフ状態にして外部機器20に出力する。これにより、安全性及び信頼性の高いゲート信号の供給を可能とする。
すなわち、PC14側でオフ状態の第1ゲート信号を作成しているにも関わらず、センサポート12側でオン状態の第2ゲート信号を作成し続けている場合には、外部機器20に供給するゲート信号を強制的にオフ状態に移行させることで、不要なゲート信号が外部機器20に供給されて、被検体に対する放射線治療又は画像撮影が不用意に行われることを回避することができる。
このように、ファームウェアが作成した第2ゲート信号とソフトウェアが作成した第1ゲート信号とを照合し、第2ゲート信号のオン状態と第1ゲート信号のオフ状態とが一定時間以上継続したら、外部機器20に対して安全側のオフ状態のゲート信号を出力することにより、ファームウェア又はソフトウェアにおけるゲート信号の作成処理の不具合に起因して、危険側のオン状態のゲート信号が出力され続けることを回避し、信頼性及び安全性の高いゲート信号を外部機器20に出力することができる。
また、PC14は、呼吸信号に基づいて呼吸動作が異常状態にあるか否かを判断する呼吸異常判断部48を有している。これにより、ゲート信号作成指示部44は、呼吸動作が異常状態にあると呼吸異常判断部48が判断した場合、ゲート作成停止指示をセンサポート12に送信し、一方で、呼吸動作が異常状態から通常状態に復旧したと呼吸異常判断部48が判断した場合、ゲート作成開始指示をセンサポート12に送信することができる。この場合でも、安全性及び信頼性の高いゲート信号の供給が可能となる。
つまり、ソフトウェアが呼吸信号の異常状態を検出したときには、ファームウェアによる第2ゲート信号の作成処理を停止させ、第2ゲート信号をオフ状態にして異常状態からの復旧を待ち、通常状態に復旧したらファームウェアによる第2ゲート信号の作成処理を再開させる。従って、呼吸信号の異常状態の検出や、異常状態からの回復処理等の高度な処理については、ソフトウェアの制御で行うことで、第1実施形態では、従来と同様の高い処理レベルを実現することができる。
また、ゲート作成開始指示には、指定されたゲート出力上限値及びゲート出力下限値が第2ゲート信号の状態を変化させる条件として含まれている。そして、センサポート12のゲート信号処理部54は、この変化条件に基づき第2ゲート信号を作成する場合に、第2ゲート信号の状態が変化した後に、ゲート出力上限値を中心とした所定のヒステリシス幅whの範囲内で呼吸信号が変動しているときには、第2ゲート信号の次の状態変化を禁止する。
つまり、第2ゲート信号の作成条件に基づいて、ファームウェアが呼吸信号から第2ゲート信号を作成する際に、第2ゲート信号の状態を変化させるべき条件を検出したら、第2ゲート信号の状態を変化させると共に、呼吸信号がそのときの値からヒステリシス幅wh以上変動しないうちは、第2ゲート信号の次の状態変化を抑止する。
このように、第2ゲート信号の状態変化後にヒステリシス幅の範囲内で呼吸信号が変動している間、第2ゲート信号の次の状態変化を禁止することで、呼吸信号に含まれるノイズに起因して、第2ゲート信号の状態変化後の短期間で当該第2ゲート信号の状態が再度変化する現象(状態変化時のバタツキ)が発生することを防ぐことができる。
[7.第2実施形態の構成]
次に、本実施形態に係る呼吸同期システム10の第2実施形態について、図10〜図12を参照しながら説明する。
第2実施形態では、図4に示したように、PC14側にゲート遮断スイッチ50を設け、センサポート12に電源供給部52及びゲート信号処理部54を設ける。そして、第2実施形態では、使用者のゲート遮断スイッチ50の操作に起因して、ゲート信号処理部54から外部機器20へのゲート信号の出力を強制的に停止させる。以下に、第2実施形態について、詳細に説明する。
なお、第1実施形態でも説明したように、ゲート信号処理部54は、図7のフローチャートに従って、外部機器20に供給するゲート信号を作成する。そのため、以下の第2実施形態の説明において、「ゲート信号」は、ゲート信号処理部54から外部機器20に供給される信号をいう。
図10に示すように、センサポート12とゲート遮断スイッチ50との間には、3本の配線が設けられている。このうち、2本は、電源供給線としての電源線58と接地線60とであり、残りの1本は、ゲート遮断信号線62である。電源供給部52は、抵抗値R1を有する抵抗器64が電源線58に接続されている。
ゲート遮断スイッチ50では、発光素子としての発光ダイオード(LED)66と常開型のスイッチ部68とが直列に接続されている。この場合、LED66のアノード側に電源線58が接続されている。また、LED66のカソード側とスイッチ部68との間の接続点70には、ゲート遮断信号線62が接続されている。スイッチ部68の接続点70とは反対側の端部は、接地線60を介してセンサポート12のアース72に接地されている。センサポート12において、ゲート遮断信号線62と接地線60との間には、抵抗値R2(R1≪R2)の抵抗器74が接続されている。なお、LED66とスイッチ部68とによって直列回路76が構成される。
この場合、電源供給部52から抵抗器64、電源線58及び接地線60を介してゲート遮断スイッチ50に電源供給(例えば、+5Vの電源供給)が行われている場合に、スイッチ部68が押されていなければ、抵抗器74の抵抗値R2が大きいため、LED66には僅かな順方向電流しか流れず、LED66は消灯状態を維持する。この状態では、抵抗器64及びLED66の電圧降下は小さいため、ゲート遮断信号線62は+5Vに近いハイレベル電圧となる。
一方、スイッチ部68が押されて導通状態となっている間、スイッチ部68によって抵抗器74が短絡されるので、LED66には大きな順方向電流が流れ、LED66は点灯する。この場合、ゲート遮断スイッチ50は、接続点70の電位に応じた信号を、ゲート遮断信号として、ゲート遮断信号線62を介してセンサポート12に出力する。なお、スイッチ部68が導通状態となった場合、アース72と接続点70とが略同じ電位となるため、ゲート遮断信号は、0Vに近いローレベル信号となる。
ゲート信号処理部54は、スイッチ部68が押されてローレベルのゲート遮断信号が入力された場合、外部機器20へのゲート信号の出力を停止する。一方、スイッチ部68が開放状態となってローレベルのゲート遮断信号が入力されなくなると、ゲート信号処理部54は、外部機器20へのゲート信号の出力を再開する。
また、ゲート信号処理部54は、ゲート遮断信号の入力に起因して外部機器20に対するゲート信号の出力を停止した後、スイッチ部68が開放状態に戻ることに起因してゲート遮断信号の入力が停止し、ゲート信号の出力を再開する際、センサポート12に対するゲート遮断スイッチ50の動作モードを設定するモード設定部として機能する。具体的に、ゲート信号は、図11に示すように、所定の周期T毎に繰り返し作成されるパルス信号であるため、ゲート信号処理部54は、ゲート遮断信号の入力が停止するとゲート信号の出力を直ちに再開する第1モード(治療モード)に設定するか、又は、ゲート遮断信号の入力が停止すると次のパルス信号の立ち上がりからゲート信号の出力を再開する第2モード(診断モード)に設定する。
図11では、時点t11から時点t12までの時間Tgだけスイッチ部68が押された場合を図示している。この場合、第1モードでは、時間Tgの経過後、時点t12から直ちにゲート信号の出力が再開される。
一方、第2モードでは、時点t12でゲート信号の出力が再開されることはなく、2番目のパルス信号が時点t13でオフ状態となり、時点t11から時間Ts経過後の時点t14で3番目のパルス信号がオン状態となるタイミングで、外部機器20に対するゲート信号の出力を再開する。これにより、ゲート信号は、常に、呼吸信号に同期したタイミングで立ち上がる。
なお、治療モードとは、外部機器20が放射線治療装置である場合に、被検体に対して放射線を照射する放射線治療を行う場合でのゲート信号の供給モードをいう。また、診断モードとは、外部機器20が画像診断装置である場合に、被検体に対して画像撮影を行う場合でのゲート信号の供給モードをいう。
また、第2実施形態でも、センサポート12からPC14に一定間隔毎に転送データのパケットが送信される。そのため、ゲート遮断スイッチ50からセンサポート12にゲート遮断信号が入力された場合、ゲート信号処理部54が第1モード又は第2モードを設定し、ゲート信号処理部54が設定した動作モードによって外部機器20に対するゲート信号の出力が停止又は再開したときに、転送データ生成部28は、これらの状況を示す情報を転送データに含ませてPC14に送信することができる。従って、PC14では、当該転送データを受信すると、表示部38は、ゲート遮断スイッチ50の操作状態の情報も画面上に表示することができる。
[8.第2実施形態の特徴的な機能]
次に、第2実施形態の特徴的な機能について説明する。
先ず、第2実施形態において、ゲート遮断スイッチ50は、被検体に対する放射線治療又は画像撮影の実行中に、被検体に呼吸状態の突発的な変化等、何らかの異常が発生した場合、外部機器20に出力されるゲート信号を直ちにオフ状態に移行させて、放射線の照射又は画像撮影を停止するための操作手段として機能する。
従って、ゲート遮断スイッチ50は、通常操作されることはほとんどない。但し、被検体の異常時に放射線の照射や画像撮影を停止するための重要な安全手段であるため、実際に使用する際に故障していて、本来の機能を果たせないという不具合が発生しないようにする必要がある。そこで、第2実施形態では、ゲート遮断スイッチ50等を構成する部品のうち、いずれか1個の部品の単一故障、すなわち、1個の部品だけが故障し、他の部品は正常であるような故障が発生した場合に、当該故障により被検体に及ぼす影響を回避すると共に、ゲート遮断スイッチ50の操作が効かないという事態を回避するようにしている。
すなわち、第2実施形態において、使用者は、放射線の照射又は画像撮影に先立ち、電源供給部52からゲート遮断スイッチ50に電源供給が行われる状態で、スイッチ部68を押してLED66が点灯し、且つ、スイッチ部68から手を離すことによりLED66が消灯することを事前に確認する。この事前確認の結果、ゲート遮断スイッチ50等を構成する各部品の単一故障が発生した場合に現れる障害現象について、以下に説明する。
(1)LED66の短絡故障又は開放故障が発生している場合、事前確認時にスイッチ部68を押しても、LED66は点灯しない。従って、当該事前確認によりLED66の短絡故障又は開放故障を検出することが可能である。
(2)スイッチ部68の短絡故障が発生している場合、抵抗器74が短絡状態となるので、スイッチ部68を押さなくても、LED66は常時点灯する。従って、事前確認によりスイッチ部68の短絡故障を検出することが可能である。
(3)スイッチ部68の開放故障が発生している場合、スイッチ部68を押しても、LED66は点灯しない。従って、事前確認によりスイッチ部68の開放故障を検出することが可能である。
(4)抵抗器64は、電源線58を流れる電流を抑制する電流制限抵抗器として機能する。そのため、抵抗器64の短絡故障が発生している場合、事前確認時、電源線58には過大電流が流れる。従って、図示しない電流センサ等で過大電流を検出することにより、抵抗器64の短絡故障を事前に検出することが可能である。なお、電流センサの検出結果についても、転送データに含めてセンサポート12からPC14に送信し、使用者に通知してもよい。
(5)抵抗器64の開放故障が発生している場合、事前確認時、スイッチ部68を押しても、LED66は点灯しない。従って、事前確認により抵抗器64の開放故障を検出することが可能である。
(6)抵抗器74の短絡故障が発生している場合、正常時にスイッチ部68を押したときと同じ状態になる。そのため、スイッチ部68を押さなくても、LED66は常時点灯する。従って、事前確認により抵抗器74の短絡故障を検出することが可能である。
(7)抵抗器74の開放故障が発生している場合、抵抗値R2が極めて大きな値になっている状態であり、事前確認時には、スイッチ部68を押すとLED66は点灯し、スイッチ部68から手を離すとLED66は消灯する。この状態は、ゲート遮断スイッチ50の動作上、故障による影響はなく、正常に動作する。
(8)電源線58の断線が発生している場合、事前確認時、スイッチ部68を押しても、LED66は点灯しない。従って、事前確認により電源線58の断線故障を検出することが可能である。
(9)ゲート遮断信号線62の断線が発生している場合、常時、ゲート遮断信号線62の電位が低いので、ゲート遮断スイッチ50からゲート遮断信号が出力され続けている状態となる。この場合、安全側への故障障害となる。また、この故障障害の結果についても、ゲート遮断スイッチ50の操作状態を転送データに含めてセンサポート12からPC14に通知し、PC14の表示部38が当該操作状態の情報を表示(通知)することにより、使用者は、前記操作状態を事前に検出することができる。
(10)接地線60の断線、又は、電源線58とゲート遮断信号線62との短絡が発生している場合、事前確認時、スイッチ部68を押しても、LED66は点灯しない。従って、事前確認により、接地線60の断線、又は、電源線58とゲート遮断信号線62との短絡を検出することが可能である。
(11)接地線60とゲート遮断信号線62との短絡が発生している場合、スイッチ部68を押さなくても、LED66は常時点灯する。従って、事前確認により、接地線60とゲート遮断信号線62との短絡を検出することが可能である。
(12)電源線58と接地線60との短絡が発生している場合、事前確認時、スイッチ部68を押しても、LED66は点灯しない。従って、事前確認により、電源線58と接地線60との短絡を検出することが可能である。
このように、(7)及び(9)以外の故障は、全て事前確認により検出可能である。すなわち、(7)の故障は、ゲート遮断スイッチ50の動作に影響しない。また、(9)の故障の場合、常にゲート遮断動作が行われるため、外部機器20に対してゲート信号が出力されないという安全側の障害になる。
この結果、放射線の照射又は画像撮影中にゲート遮断スイッチ50が効かないという障害の発生を回避することができる。また、(9)の故障については、前述のように、センサポート12がゲート遮断信号の状態をPC14に通知し、ソフトウェアによってゲート遮断スイッチ50の状態を表示部38の画面上に表示して使用者に通知すれば、事前に検出することが可能となる。
ところで、外部機器20が放射線治療装置である場合、放射線治療装置は、ゲート信号がオン状態のときに放射線を照射し、ゲート信号がオフ状態のときに放射線の照射を停止する。一方、外部機器20がCT、MRI等の画像診断装置である場合には、ゲート信号の立上り(オフ状態からオン状態への状態変化時)に撮影を行う。
従って、ゲート遮断スイッチ50が操作された場合、センサポート12は、直ちにゲート信号をオフ状態にする。そして、ゲート遮断スイッチ50の操作が解除された後のゲート信号の出力再開方法に関して、センサポート12は、外部機器20の要求条件に応じて、第1モード(治療モード)と第2モード(診断モード)との2つの動作モードを持つ。従って、センサポート12は、いずれか一方の動作モードで動作することにより、ゲート信号の出力を再開する。この動作モードは、予めPC14のソフトウェアに設定された情報に基づき、ソフトウェアがセンサポート12に対する初期化指示(図3及び図5のステップS1参照)の一環として、センサポート12に指示すればよい。
図11に示すように、使用者が時点t11から時点t12の時間Tgの間、ゲート遮断スイッチ50を押下する場合、第1モードでは、ゲート遮断スイッチ50が操作された期間だけゲート信号をオフ状態とし、ゲート遮断スイッチ50の操作が解除された時点で、直ちにゲート信号の出力を再開する。これにより、第1モードでは、時点t12からゲート信号が出力される。この結果、放射線治療の場合には、治療時間の短縮化を図ることができる。
一方、第2モードでは、ゲート遮断スイッチ50が操作された期間(時間Tg)に加え、操作解除後のパルス信号の立下り(時点t13)までゲート信号をオフ状態とする。そして、次のパルス信号の立上り(時点t14)からゲート出力を再開する。つまり、時点t11から時点t14までの時間Tsでは、ゲート信号の出力が禁止される。
従って、CT、MRI等の画像診断の場合、ゲート遮断スイッチ50の操作が解除されたら、次のパルス信号の立上りから被検体の呼吸動作に同期して撮影が再開される。これにより、ゲート遮断スイッチ50の操作による診断画像に乱れが発生することを抑制することができる。
[9.第2実施形態の動作]
次に、第2実施形態の動作について、図12を参照しながら説明する。図12は、センサポート12のゲート信号処理部54におけるゲート遮断処理を説明したものである。
ゲート遮断処理は、ゲート信号処理の最終部分、すなわち、ゲート信号をセンサポート12から外部機器20に出力する段階で行われる処理であり、タイマ割込みの形で、一定周期(例えば、2.5ms)毎に常に実行される。
センサポート12において、初期状態では、図7のフローチャートによって作成されるゲート信号の値は0であるから(ステップS81:NO)、ゲート信号処理部54は、ステップS82において、第2モード(診断モード)でゲート遮断動作を実行中であることを示すゲート遮断フラグを0にリセットする。その後、ステップS83において、ゲート信号処理部54から外部機器20に出力されるゲート信号の値を0(オフ状態)に設定して、今回の処理を終了する。
次に、PC14からセンサポート12への第1ゲート信号の供給が開始されるか、又は、ゲート信号処理部54で第2ゲート信号の作成が開始されると、ゲート信号が1(オン状態)になる(ステップS81:YES)。そこで、ステップS84において、ゲート信号処理部54は、ゲート遮断スイッチ50から入力したゲート遮断信号の値を確認する。
この場合、ゲート遮断信号がハイレベル信号であれば、スイッチ部68が押されていないことになるので(ステップS84:NO)、次のステップS85において、ゲート信号処理部54は、ゲート遮断フラグが0であるか否かを判断する。初期状態では、ゲート遮断フラグが0であるため(ステップS85:YES)、ゲート信号処理部54は、ステップS83において、外部機器20に出力するゲート信号の値を1に設定して、今回の処理を終了する。すなわち、ゲート信号処理部54は、オン状態のゲート信号を外部機器20に供給する。
次に、ゲート遮断スイッチ50のスイッチ部68が押されて、ゲート遮断信号がローレベル信号になると(ステップS84:YES)、次のステップS86において、第2モード(診断モード)であれば(ステップS86:YES)、ゲート信号処理部54は、ステップS87において、ゲート遮断フラグを1にセットし、次のステップS88において、外部機器20に出力するゲート信号の値を0に設定する。これにより、ゲート信号処理部54は、ステップS83で、オフ状態のゲート信号を外部機器20に出力する。
ゲート遮断フラグは、第2モードでゲート遮断動作を開始したことを記憶部22に記憶するための制御フラグである。この場合、ゲート遮断フラグが一旦セットされると(ステップS85:NO)、ゲート遮断スイッチ50が解除され、ゲート遮断信号がハイレベル信号に戻っても、ステップS88において、ゲート信号を0に変えて、オフ状態のゲート信号を外部機器20に出力する。従って、第2モードでは、ゲート遮断動作は、図7のフローチャートにより作成されたゲート信号が0になり、ゲート遮断フラグが0にリセットされるまで継続される。
一方、第1モード(治療モード)では(ステップS86:NO)、ゲート遮断フラグはセットされないため、ゲート遮断スイッチ50のスイッチ部68が押され、ゲート遮断信号が0である期間に限り、ゲート遮断動作を行うことになる。
[10.第2実施形態の効果]
従来は、被検体に対する放射線治療又は画像撮影の実行中、使用者が被検体の外観的状態や呼吸信号の時間的変化から、被検体の呼吸動作が異常状態にあることを検出した場合、使用者は、例えば、PC14の入力操作部36を操作して、ゲート信号の供給停止をPC14に指示することにより、外部機器20に対するゲート信号の供給を停止させ、外部機器20による放射線治療又は画像撮影を停止させていた。
一方、被検体の呼吸動作が異常状態から通常状態に復旧した場合には、復旧を認識した使用者は、入力操作部36を操作して、ゲート信号の供給再開をPC14に指示することにより、外部機器20に対するゲート信号の供給を再開させ、被検体に対する放射線治療又は画像撮影を再開させていた。
しかしながら、ゲート信号の供給停止をPC14の入力操作部36から行う場合、例えば、マウスでカーソルを特定の位置に移動した上でクリックする等の一連の操作を要するため、ゲート信号の供給停止を迅速且つ誤りなく確実に行うことは難しかった。
そこで、第2実施形態では、上述のように、被検体に対する放射線治療又は画像撮影の実行中に、被検体の呼吸動作が異常状態であることを使用者が検出した場合、使用者は、スイッチ部68を押すことにより、ゲート遮断スイッチ50からセンサポート12にゲート遮断信号を出力させる。当該センサポート12は、ゲート遮断信号に基づき外部機器20へのゲート信号の供給を停止するので、放射線治療又は画像撮影は停止に至る。
従って、第2実施形態によれば、被検体の呼吸動作が異常状態にある場合、使用者がスイッチ部68を押すだけで、ゲート信号の供給が停止され、これにより、放射線治療又は画像撮影が停止される。この結果、PC14の入力操作部36から、例えば、マウスでカーソルを特定の位置に移動した上でクリックする等の一連の操作を行う方法と比べて、第2実施形態では、ゲート信号の供給停止を単純な操作で迅速且つ誤りなく確実に行うことができる。
また、第2実施形態では、呼吸同期システム10を上記のように構成することで、以下のような効果も得られる。
すなわち、ゲート遮断スイッチ50内でLED66及びスイッチ部68が直列接続され、直列回路76に対して電源線58、接地線60及びゲート遮断信号線62が接続される。そのため、使用者が呼吸同期システム10を動作させる前に、スイッチ部68を押してLED66の点灯の有無を確認することにより、ゲート遮断スイッチ50が正常に機能することを事前に確認することが可能となる。この結果、放射線治療又は画像撮影中に使用者がスイッチ部68を押しても、ゲート遮断スイッチ50が故障していたため機能しない(ゲート遮断スイッチ50を操作しても故障のためゲート信号を遮断できない)という問題を回避することができる。
また、第2実施形態において、ゲート信号処理部54は、ゲート遮断信号の入力が停止すると外部機器20に対するゲート信号の供給を直ちに再開する第1モード、又は、ゲート遮断信号の入力が停止すると次のパルス信号の立ち上がりから外部機器20に対するゲート信号の供給を再開する第2モードのいずれかに設定する。
これにより、被検体の呼吸動作に同期し、且つ、外部機器20の種類に応じた的確なタイミングで、外部機器20に対するゲート信号の供給を再開することができる。
すなわち、外部機器20が放射線治療装置である場合には、ゲート信号の供給期間中に放射線が照射されるので、放射線治療に対する被検体の拘束時間を少しでも短縮するため、第1モードにより、ゲート遮断信号の入力停止後、直ちにゲート信号の供給を再開すればよい。
一方、外部機器20がCT又はMRI等の画像診断装置である場合には、ゲート信号の供給の立ち上がりに同期して画像撮影を行わせるため、第2モードにより、ゲート遮断信号の入力停止後、次のパルス信号が立ち上がるのを待ってゲート信号の供給を再開すればよい。呼吸信号に同期せずにゲート信号の供給を再開すると、取得される診断画像の画質が低下するが、次のパルス信号が立ち上がるのを待ってゲート信号の供給を再開することで、呼吸信号に同期して撮影された、より高画質の診断画像を取得することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。