JP5983981B2 - 多孔質膜の製造方法 - Google Patents
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Description
さらに、非溶媒相分離法のひとつの方法として、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを含む多孔質膜の製膜原液を気相中に吐出する(空走区間を走らせる)ことにより相分離構造を形成したのち、そのまま凝固液中に浸漬することを特徴とする乾湿式法が知られており、高い濾過流量と良好な分画層が得られることから、多量の水処理には好適である。
まず、膜基材となる疎水性ポリマーと、相分離を制御するための親水性ポリマーを、それぞれのポリマーを溶解することができる共通の良溶媒を用いて溶解させ、製膜原液とする。
疎水性ポリマーと親水性ポリマーを共通の良溶媒に溶かした原液を、一定の疎水性ポリマーの非溶媒を含む凝固液に吐出すると、原液中に非溶媒が拡散するに従い、疎水性ポリマーと親水性ポリマーが相分離を起こす。相分離が進行する過程で、構造を固定させることで、疎水性ポリマーと親水性ポリマーが相互に連通した構造となる。この時、形成される膜構造は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーの分子量、質量濃度比によって大きな影響を受ける。これは両ポリマーの分子量、質量濃度比がそれぞれのポリマーの相分離する速度に影響を及ぼすからである。
さらに、(空走区間の絶対湿度)×(空走区間の滞在時間)は、400g/m3・sec以上であることが表面孔径を制御しやすいと言う点でより好ましい。
多孔質膜の表面構造を、オリンパス社株式会社製ナノサーチ顕微鏡LEXTOLS3500で100倍の対物レンズを用い観察を行い得られた粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値を算術平均表面粗さとして算出した。
疎水性ポリマーとして、アルケマ社製ポリフッ化ビリニデン、商品名:カイナーHSV900(232℃、100sec−1における溶融粘度50KPoise)を用い、親水性ポリマーとして、日本触媒社製ポリビニルピロリドン、商品名:K30(粘度平均分子量40,000)を用いた。これらのポリマーを、疎水性ポリマー:親水性ポリマー:ジメチルアセトアミド=19:10:71(質量比)となるような組成で、ジメチルアセトアミドに40℃で溶解させ、製膜原液を調整した。
この多孔質膜をスライドガラスから取り出した後、約8%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液に、40℃で3時間浸漬し、さらに40℃で3時間水洗した。
観察は、得られた多孔質膜を液体窒素中に約5分間浸漬させ、凍結させた後に、カミソリで切断したものについて行った。結果を図1に示した。得られた多孔質膜は3次元網目構造を有し、かつマクロボイドは観察されなかった。
23℃、相対湿度55%の環境下における静置時間を実質設けなかった以外(23℃における飽和水蒸気量は21g/m3絶対湿度は、(飽和水蒸気量)×(相対湿度)から11g/m3であり、空走区間の滞在時間は1sec未満であり、(空走区間の絶対湿度)×(空走区間の滞在時間)の値は11g/m3・sec未満となる。)は、実施例1と同様の方法で多孔質膜を作製し、SEM観察を行ったところ、得られた膜は図3に示したように網目構造が形成されたが、マクロボイドの発生がみられた。
溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(以下NMP)、凝固液として8%NMP水溶液を用いた以外は実施例1と同様の方法で多孔質膜を作成・洗浄し、洗浄後の多孔質膜の断面構造を、SEMで1000倍及び5000倍の倍率で観察した。
観察は、得られた多孔質膜を液体窒素中に約5分間浸漬させ、凍結させた後に、カミソリで切断したものについて行った。結果を図4及び図5に示した。得られた多孔質膜は3次元網目構造を有し、かつマクロボイドは観察されなかった。
疎水性ポリマーとして、アルケマ社製ポリフッ化ビリニデン、商品名:カイナーHSV900(232℃、100sec−1における溶融粘度50KPoise)を用い、親水性ポリマーとして、第一工業製薬社製ポリビニルピロリドンK50(粘度平均分子量94,000)を用いた。これらのポリマーを、疎水性ポリマー:親水性ポリマー:NMP=16:4:80(質量比)となるような組成で、NMPに40℃で溶解させ、製膜原液を調整した。
観察は、得られた多孔質膜を液体窒素中に約5分間浸漬させ、凍結させた後に、カミソリで切断したものについて行った。結果を図6及び図7に示した。得られた多孔質膜は3次元網目構造を有し、かつ、マクロボイドは観察されなかった。
25℃、相対湿度60%の環境下における静置時間を1秒以下と実質設けなかった以外(25℃における飽和水蒸気量は23g/m3(飽和水蒸気量)×(相対湿度)から絶対湿度25g/m3)、空走区間の滞在時間は1sec以下として計算し、(空走区間の絶対湿度)×(空走区間の滞在時間)は14g/m3・sec以下となる。)は、実施例3と同様の方法で多孔質膜を作製し、1000倍でSEM観察を行ったところ、得られた膜は図8に示したように網目構造が形成されたが、マクロボイドの発生がみられた。
膜基材を形成するポリマーとして、アルケマ社製ポリフッ化ビリニデン、商品名:カイナー761A(232℃、100sec−1における溶融粘度:34KPoise)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で多孔質膜を作製し、SEM観察を行ったところ、得られた膜は図9に示した様に、膜表面近傍に3次元網目構造は有しているものの、マクロボイドの発生が顕著であった。
疎水性ポリマーとして、アルケマ社製ポリフッ化ビリニデン、商品名:カイナーHSV900(232℃、100sec−1における溶融粘度50KPoise)を、HSV900:N−メチルー2−ピロリドン=12:88(質量比)となるような組成で、N−メチルー2−ピロリドンに40℃で溶解させ、製膜原液を調整した以外は実施例1と同様の方法で多孔質膜を作製し、SEM観察を行ったところ、得られた膜は図10に示したように膜表面近傍に3次元網目構造は有しているものの、マクロボイドの発生が顕著であった。
アルケマ社製ポリフッ化ビリニデン、商品名:カイナーHSV900(232℃、100sec−1における溶融粘度56KPoise)とを18.3質量%と日本触媒社製ポリビニルピロリドン、商品名:K30(粘度平均分子量40,000)を8.3質量%と溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン73.4質量%を常温にて攪拌混合して、製膜原液を得た。
65℃における飽和水蒸気量は161g/m3、空走区間の滞在時間は0.4secであり、(空走区間の絶対湿度)×(空走区間の滞在時間)は63g/m3・secとなる。
純水透過係数は、濾過有効長が4cmとなる1本の中空糸分離膜からなるミニモジュールを作製し、エタノールに浸漬し親水化処理を行なった後、加圧100kPaの条件で膜の外側から内側へ純水を送液して一定時間の透水量(m3)を測定して得られた値から単位有効膜面積(m2)、単位時間(hr)、単位圧力(MPa)における値に換算して算出した。
観察面の算術平均粗さを求めたところ1μm以下と平滑な表面であった。
25℃、相対湿度70%の環境下に20秒静置した(25℃における飽和水蒸気量は23g/m3(飽和水蒸気量)×(相対湿度)から絶対湿度16g/m3)、空走区間の滞在時間は20secであり、(空走区間の絶対湿度)×(空走区間の滞在時間)は322g/m3・secとなる。)以外は、実施例1と同様の方法で多孔質膜を作製し、1000倍でSEM観察を行った。結果を図12に示した。得られた多孔質膜は3次元網目構造を有し、かつマクロボイドは観察されなかった。
40℃、相対湿度100%の環境下に15秒静置した以外(40℃における飽和水蒸気量は51g/m3(飽和水蒸気量)×(相対湿度)から絶対湿度51g/m3)、空走区間の滞在時間は15secであり、(空走区間の絶対湿度)×(空走区間の滞在時間)は766g/m3・secとなる。)は、実施例1と同様の方法で多孔質膜を作製し、SEM観察を行った。得られた膜の表面は図14に示したように1μmを超える粗大な孔が形成されていた。
Claims (3)
- 疎水性ポリマーと親水性ポリマーとを溶媒に溶解させた製膜原液を用いて乾湿式法により多孔質膜を製造する方法であって、前記疎水性ポリマーが、232℃、100sec−1における溶融粘度が45KPoise以上のポリフッ化ビニリデンであり、(空走区間の絶対湿度)×(空走区間の滞在時間)の値が、22g/m3・sec以上500g/m3・sec以下であり、
前記親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドンであり、かつ、前記ポリビニルピロリドンの粘度平均分子量が100,000以下である、多孔質膜の製造方法。 - 原液中の親水性ポリマーの前記ポリフッ化ビニリデンに対する重量比が1未満である請求項1に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記乾湿式法において、紡糸原液を凝固液に浸漬後に、薬剤を用いて親水性ポリマーを除去する請求項1又は2に記載の多孔質膜の製造方法。
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