JP5981251B2 - 鍛造用Ni基合金および鍛造部品 - Google Patents
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Cは、強化相である炭化物の構成元素として有用であるとともに、結晶粒界の移動を阻止する、炭化物のピン止め効果によって、高温下における結晶粒の粗大化を抑制する働きがある。Cの含有率が0.01未満の場合には、炭化物による強化が十分でないとともに、炭化物の十分な析出量を確保できないことにより、結晶粒の粗大化を引き起こす恐れがある。一方、Cの含有率が0.15%を超えると、鍛造性が低下する。そのため、Cの含有率を0.01〜0.15%とした。また、より好ましいCの含有率は、0.02〜0.06%である。
Crは、Ni基合金の耐酸化性、耐食性および高温強度特性を高めるのに不可欠な元素である。Crの含有率が14%未満の場合には、耐酸化性および耐食性が低下する。一方、Crの含有率が26%を超えると、クリープ強度の低下を引き起こすσ相の析出が顕著になるとともに、鍛造性が悪化する。そのため、Crの含有率を14〜26%とした。また、より好ましいCrの含有率は、16〜20%である。
Coは、Ni基合金において、母相内に固溶し、クリープ強度および引張強度を向上させる。Coの含有率が10%未満の場合には、十分な機械的強度が得られない。一方、Coの含有率が15%を超えると、鍛造性が低下する。そのため、Coの含有率を10〜15%とした。また、より好ましいCoの含有率は、11〜14%である。
Moは、Ni母相中に固溶し、クリープ強度および引張強度を向上させ、また、M23C6型炭化物中に一部が置換することによって炭化物の安定性を高める。Moの含有率が12%を超えると、熱間加工性が低下する。一方、Moの含有率が5%未満の場合には、機械的強度の向上が得られない。そのため、Moの含有率を5〜12%とした。また、より好ましいMoの含有率は、7〜10%である。
Alは、Niとともにγ’(Ni3Al)相を生成し、析出によるNi基合金の機械的強度を向上させる。Alの含有率が0.8%未満の場合には、γ’相の析出による効果が発揮されない。一方、Alの含有率が3%を超えると、σ相の析出が助長され、機械的特性が低下するとともに、熱間加工性が著しく低下する。そのため、Alの含有率を0.8〜3%とした。また、より好ましいAlの含有率は、1〜2%である。
Tiは、Alと同様、Niとともにγ’(Ni3(Al,Ti))相を生成し、Ni基合金の機械的強度を向上させる。Tiの含有率が0.8%未満の場合には、γ’相の析出による効果が発揮されない。一方、Tiの含有率が3%を超えると、σ相やη相の析出が助長され、機械的特性が低下するとともに、熱間加工性が低下する。そのため、Tiの含有率を0.8〜3%とした。また、より好ましいTiの含有率は、1〜2%である。
Bは、粒界に偏析して高温強度特性を向上させる。Bの含有率が0.001%未満の場合には、この高温強度特性を向上させる効果が発揮されない。一方、Bの含有率が0.006%を超えると、粒界脆化を招く。そのため、Bの含有率を0.001〜0.006%とした。また、より好ましいBの含有率は、0.002〜0.004%である。
Taは、γ’(Ni3(Al,Ti))相に固溶して、このγ’相の析出強度を安定させる。Taの含有率が0.05%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Taの含有率が0.7%を超えると、鍛造性が低下する。そのため、Taの含有率を0.05〜0.7%とした。また、より好ましいTaの含有率は、0.08〜0.12%である。
Nbは、Taと同様に、γ’(Ni3(Al,Ti))相に固溶して、このγ’相を安定させる。Nbの含有率が0.1%未満の場合には、上記した効果が発揮されない。一方、Nbの含有率が0.7%を超えると、溶解や鋳造時において偏析を招くとともに、鍛造性が低下する。そのため、Nbの含有率を0.1〜0.7%とした。また、より好ましいNbの含有率は、0.2〜0.5%である。
上記したとおり、Al、Ti、TaおよびNbは、γ’相を形成し、材料の強度を向上させる。一方、これらの元素の過剰の添加は、γ’相の固溶温度を上昇させ、鍛造中のγ’相の析出を引き起こし、熱間鍛造の際の加工性を低下させる。実施形態の鍛造用Ni基合金においては、十分な鍛造性を確保しながら、可能な限りγ’相を析出させることが重要である。
Si、Mn、N、Cu、FeおよびSは、実施形態の鍛造用Ni基合金においては、不可避的不純物に分類されるものである。これらの不可避的不純物は、可能な限りその残存含有率を0%に近づけることが望ましい。また、これらの不可避的不純物のうち、少なくとも、SiおよびMnは、0.1%以下、およびNは、0.01%以下に抑制されることが好ましい。
以下に、実施形態の鍛造用Ni基合金が、強度特性および鍛造性に優れていることを説明する。
Claims (6)
- 質量%で、C:0.01〜0.04、Cr:14〜26、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.8〜3、Ti:0.8〜3、B:0.001〜0.006を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、かつ2.2質量%≦Al+Ti≦4質量%の関係を満たし、結晶粒界上に断続的に析出した塊状の炭化物を有することを特徴とする鍛造用Ni基合金。
- 質量%で、C:0.01〜0.04、Cr:14〜26、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.8〜3、Ti:0.8〜3、B:0.001〜0.006、Ta:0.05〜0.7を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、かつ2.2質量%≦Al+Ti+0.2Ta≦4質量%の関係を満たし、結晶粒界上に断続的に析出した塊状の炭化物を有することを特徴とする鍛造用Ni基合金。
- 質量%で、C:0.01〜0.04、Cr:14〜26、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.8〜3、Ti:0.8〜3、B:0.001〜0.006、Nb:0.1〜0.7を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、かつ2.2質量%≦Al+Ti+0.6Nb≦4質量%の関係を満たし、結晶粒界上に断続的に析出した塊状の炭化物を有することを特徴とする鍛造用Ni基合金。
- 質量%で、C:0.01〜0.04、Cr:14〜26、Co:10〜15、Mo:5〜12、Al:0.8〜3、Ti:0.8〜3、B:0.001〜0.006、Ta:0.05〜0.7、Nb:0.1〜0.7を含有し、残部がNiおよび不可避的不純物からなり、かつ2.2質量%≦Al+Ti+0.2Ta+0.6Nb≦4質量%の関係を満たし、結晶粒界上に断続的に析出した塊状の炭化物を有することを特徴とする鍛造用Ni基合金。
- 前記不可避的不純物のうち、少なくとも、Siを0.1質量%以下、Mnを0.1質量%以下、Nを0.01質量%以下に抑制したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の鍛造用Ni基合金。
- 請求項1乃至5のいずれか1項記載の鍛造用Ni基合金を用いて、少なくとも所定部位が作製されたことを特徴とする鍛造部品。
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