以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図5は本発明の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ防止方法の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
ここで、先ず、本発明を適用する自動溶接装置の構成について説明する。
上記自動溶接装置は、図1に符号Iで示すもので、母管1の長手方向に配列して取り付ける複数の枝管2の取付位置に応じて該母管1の長手方向に沿って図示しない移動機構により移動可能に設けた多関節ロボットを備え、該ロボットのロボットハンド3の先端部に、枝管溶接機4を取り付けた構成としてある。
上記枝管溶接機4は、図2に示すように、枝管2を半径方向から挿入して包囲可能な切欠部5aを備えた馬蹄型のガイド5と、上記枝管2を半径方向から挿入して包囲可能な切欠部6aを備え且つ上記馬蹄型ガイド5の下側に該馬蹄型ガイド5の切欠部5aを超えて回転可能に支持された切欠付きのリングギヤ6と、上記馬蹄型ガイド5に対し上記リングギヤ6を相対的に回転駆動させる駆動機構7とを備える。上記リングギヤ6には、該リングギヤ6と同じ位置に切欠部8aを備える配置で該リングギヤ6に固定されたトーチ取付部材8が取り付けられ、該トーチ取付部材8に、先端部(下端部)が上記リングギヤ6の中心側に向くように配置した溶接トーチ10が、トーチ支持ブロック9を介して下向きに取り付けられた構成としてある。
これにより、上記枝管溶接機4は、上記リングギヤ6の切欠部6aの位相を、上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aの位相に合わせた状態で、上記ロボットハンドの3の操作により、該枝管溶接機4を母管1の外周面の上端側位置に仮止めしてある枝管2に対し側方より近接させて、上記馬蹄型ガイド5及びリングギヤ6の切欠部5a,6aを、上記枝管2に外嵌させることができるようにしてある。又、この配置とすることにより、上記枝管溶接機4では、上記リングギヤ6にトーチ取付部材8及びトーチ支持ブロック9を介して取り付けてある上記溶接トーチ10を、上記枝管2と母管1との溶接個所の周方向の1個所に向けて配置できるようにしてある。
よって、上記枝管溶接機4は、その後、上記駆動機構7の駆動によりリングギヤ6を円周動作させることで、該リングギヤ6と一緒に上記溶接トーチ10を、上記枝管2の周りで、上記馬蹄型ガイド5の切欠部5aを越えて円周動作させることができるようにしてある。これにより、上記馬蹄型ガイド5の内側に配置されている枝管2とその下方の母管1との溶接個所は、該枝管2の周りで円周動作する上記溶接トーチ10により、周方向の全周に亘って隅肉溶接できるようにしてある。
上記多関節ロボットには、上記ロボットハンド3の制御を含めて該多関節ロボット全体の制御を行うためのロボット制御盤(ロボットコントローラ)15が接続してある。
上記枝管溶接機4には、上記リングギヤ6と一体の溶接トーチ10の円周動作の制御、及び、溶接トーチ10による溶接処理の制御を含めて、該枝管溶接機4全体の制御を行うための溶接機制御装置16が接続してある。
上記ロボット制御盤15と、溶接機制御装置16は、一定周期、あるいは、予め設定してあるタイミングで相互通信を実施できるようにしてある。
更に、上記枝管溶接機4の溶接トーチ10に供給するワイヤ11には、通電検出式のタッチセンサ12の一方の電極(図1では正極)12aを、通電ライン13を介して接続すると共に、該タッチセンサ12の他方の電極(図1では負極)12bに一端部を接続した通電ライン14の他端部を、上記母管1に接続する。更に、上記タッチセンサ12による接触検出信号は、上記ロボット制御盤15に入力できるようにする。これにより、上記溶接トーチ10のワイヤ11を探触子として、該ワイヤ11が上記母管1や、該母管1に仮付けしてある溶接対象の枝管2に接触すると、その時点で、上記タッチセンサ12により両者の接触を通電により検出できるようにしてある。
したがって、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を母管1に仮付けしてある溶接対象の枝管2に外嵌させた状態では、上記溶接トーチ10のワイヤ11を探触子として、上記溶接対象の枝管2や、その下方近傍に位置する母管1との接触を検出できるようになる。
よって、上記ロボット制御盤15では、該ロボット制御盤15で制御している上記ロボットハンド3の先端部の位置及び向きの情報と、該ロボットハンド3の先端部に取り付けてある枝管溶接機4の形状及びワイヤ11の突出量についての既知のデータ(幾何学的情報)と、上記溶接機制御装置16より入力される上記枝管溶接機4における上記溶接トーチ10の円周動作位置の情報とを基に、上記溶接対象の枝管2や母管1における溶接トーチ10のワイヤ11が接触した個所の位置情報を、XYZの3軸方向についての座標に関して検出できるようにしてある。
なお、図1では、図示する便宜上、上記多関節ロボットのロボットハンド3の先端部以外の部分、及び、上記枝管溶接機4における馬蹄型ガイド5と溶接トーチ10以外の構成の記載は省略してある。又、図中の一点鎖線で描く円弧は、上記溶接トーチ10の円周動作の軌道の概要を示すものである(後述の図7も同様)。
ここで、図4(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)を用いて、上記枝管溶接機4の溶接トーチ10による枝管2の母管1に対する溶接作業時における該溶接トーチ10の枝管2の周囲での円周動作と、該溶接トーチ10の円周動作に伴って上記ロボットハンド3(図1参照)により実施させる枝管溶接機4全体の動作について説明する。なお、図4(a)(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)では、図示する便宜上、枝管溶接機4におけるリングギヤ6と溶接トーチ10と駆動機構7の一部以外の構成の記載は省略してある。図中の一点鎖線で描く円弧は、上記溶接トーチ10の円周動作の軌道の概要を示すものであり、図中の黒点は、該溶接トーチ10の軌道の中心tを示している。又、図中の×印は、枝管2の中心sを示している。
先ず、たとえば、図4(a)に示すように、上記枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5(図2参照)及びリングギヤ6の切欠部5a,6aを上記枝管2に外嵌させた状態で、溶接トーチ10による枝管2の母管1に対する溶接を開始する場合は、上記ロボットハンド3により、枝管溶接機4全体を、上記溶接トーチ10の円周動作の軌道が上記枝管2と同心状配置となる状態から、上記溶接トーチ10の配置されている個所が枝管2の中心sに近接する配置となる方向(図4(a)では図面上、上方向)へ或る寸法シフトさせる。これにより、上記溶接トーチ10は、先端側が溶接個所に押し込まれるように配置されるため、この状態で、上記枝管2の母管1に対する溶接を開始させる。
上記図4(a)のように溶接作業を開始させた後は、上記枝管溶接機4は、上記溶接トーチ10を、たとえば、図4(b)(c)(d)(e)(f)(g)(h)を順に経た後、再び図4(a)に至るように、上記リングギヤ6と一緒に円周動作の軌道に沿って時計回り方向に一定速度で移動させながら、枝管2を周方向の全周に亘り母管1に溶接する溶接作業を行わせるようにしてある。
この溶接作業の際、上記ロボットハンド3は、枝管溶接機4全体を、上記溶接トーチ10の配置されている個所が、常に枝管2の中心sに近接する配置となる方向(図面上、図4(b)では右上方向、図4(c)では右方向、図4(d)では右下方向、図4(e)では下方向、図4(f)では左下方向、図4(g)では左方向、図4(h)では左上方向、図4(a)では上方向)に或る寸法シフトするように配置させることで、枝管溶接機4全体が、上記溶接トーチ10の円周動作の軌道の中心tから偏心した点を中心に円を描くように連続的に移動させるようにしてある。これにより、上記溶接トーチ10は、上記枝管2の母管1に対する溶接作業を実施する間は、該溶接トーチ10の先端側が常に溶接個所に押し込まれるように配置された状態となるようにしてある。
次に、上記構成としてある自動溶接装置Iに適用する本発明の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ防止方法について説明する。
上記自動溶接装置Iでは、上記したように、枝管2の母管1に対する溶接作業時には、枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円動作とを同時に(同期して)行うようにしてある。
ところで、上記溶接機制御装置で制御するようにしてある枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作と、上記ロボット制御盤15で制御するロボットハンド3による上記枝管溶接機4全体の円動作に、動作開始タイミングの差や、動作速度の差に起因する同期ずれが生じる場合は、溶接狙い位置にずれが生じることになる。
このうち、上記動作開始タイミングの差に起因する上記溶接トーチ10の円周動作と、上記ロボットハンド3による上記枝管溶接機4全体の円動作との同期ずれは、枝管2の周方向に関する溶接開始位置から、溶接終了位置までの溶接品質に継続して影響する。
又、上記溶接トーチ10の円周動作と、上記ロボットハンド3による上記枝管溶接機4全体の円動作との動作速度の差に起因する同期ずれは、溶接開始位置の近傍では、溶接品質に対する影響は小さいが、溶接作業が周方向に進むにしたがって、溶接品質に対する影響が拡大してしまう。
以上の点に鑑みて、本発明の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ防止方法では、枝管2の周方向の溶接作業を行うときに、溶接開始点から溶接終了点までの1周分の溶接行程について、周方向等間隔で複数分割するためのn個(nは自然数)の分割点を予め設定しておき、上記溶接トーチ10の円周動作と、上記ロボットハンド3による上記枝管溶接機4全体の円動作を伴う上記溶接作業の途中で、溶接が上記設定された分割点の位置まで進行すると、該分割点を基準として、上記枝管溶接機4にて円周動作させる溶接トーチ10の位置と、上記ロボットハンド3で円動作させる枝管溶接機4n全体の位置について、位置決め動作を行わせるようにするものとする。
次に、上記本発明の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ方法を実施するためには、上記ロボット制御盤15及び溶接機制御装置16に、枝管2の周方向を複数分割した位置に共通の分割点を設定できるようにした機能を備える。たとえば、図4(a)に示す溶接トーチ10の位置を溶接開始点、及び、周方向に1層(1パス)の溶接作業を実施した後の溶接終了点とする場合は、図5に示すように、上記溶接開始点から溶接終了点までの溶接行程について、枝管2の周方向を8等分した位置にそれぞれ分割点Pm(m=1,2,3・・・7)を設定する機能を備える。
更に、上記溶接機制御装置16は、上記各分割点Pmについて、該各分割点Pmの位置の溶接時に上記枝管溶接機4にて溶接トーチ10を円周動作軌道上のどの位置に配置すべきかを予め算出する機能を備える。
一方、上記ロボット制御盤15は、上記各分割点Pmについて、該各分割点Pmの位置の溶接時に上記溶接トーチ10が配置される位置に応じてロボットハンド3で円動作させる枝管溶接機4全体を、どの位置に配置すべきかを予め算出する機能を備える。
更に、上記溶接機制御装置16と、ロボット制御盤15には、上記枝管溶接機4の溶接トーチ10による枝管2の周方向の全周に亘る母管1への溶接作業を実施するときに、溶接個所が上記各分割点Pmまで進行すると、その時点で、相互通信を行う機能を備えると共に、該各分割点Pmごとに対応させてそれぞれ算出してある上記枝管溶接機4の溶接トーチ10の円周動作軌道上で配置すべき位置と、ロボットハンド3により枝管溶接機4全体を配置すべき位置について、相互の位置合わせを速やかに行う機能を備えるようにしてある。
なお、上記ロボット制御盤15には、前記した特許文献2に示されているような、上記溶接トーチ10のワイヤ11を探触子とするタッチセンシングにより枝管2の傾きが検出されると、枝管溶接機4が取り付けてあるロボットハンド3側で、枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作の軸心位置に座標軸を備えた座標系を、検出された枝管2の傾きのずれ量に対応させて傾けるように補正する機能を備えるようにしてもよい。
以上の機能を備えたロボット制御盤15と溶接機制御装置16により溶接作業を実施する場合の制御フローは、図3に示すようにすればよい。なお、図3におけるAは、上記溶接機制御装置16の制御フローであり、Bは上記ロボット制御盤15の制御フローを示している。
すなわち、先ず、溶接作業を開始させる前に、上記溶接機制御装置16では、枝管溶接機4について、溶接条件、該溶接条件に応じた上記溶接トーチ10の円周動作の条件に加えて、上記各分割点Pmの数と、該各分割点Pmの溶接時に溶接トーチ10を配置すべき位置についての設定を行う(ステップA1)。
一方、上記ロボット制御盤15では、溶接作業を開始前に、上記溶接条件に基づく溶接トーチ10の円周動作の条件に応じて、ロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円動作の設定を行う(ステップB1)。
次に、上記溶接機制御装置16及びロボット制御盤15では、それぞれ対応する枝管溶接機4及びロボットハンド3を起動させる(ステップA2,ステップB2)。
上記ロボット制御盤15は、図示しないセンサにより予め検出してある母管1に仮止めされた溶接対象の枝管2の位置に応じて、ロボットハンド3の操作により枝管溶接機4を移動させて、図4(a)に示したように、該枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5(図2参照)及びリングギヤ6の切欠部5a,6aを、上記枝管2に外嵌させる(ステップB3)。
次いで、上記ロボット制御盤15は、前述した溶接トーチ10のワイヤ11を探触子とするタッチセンシングを行い(ステップB4)、検出された上記枝管2の傾きのずれ量に応じて、枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作の軸心位置に座標軸を備えた座標系を補正する(ステップB5)。その後、上記ロボット制御盤15は、上記溶接機制御装置16で設定された上記各分割点Pmに応じて、各分割点Pmの位置の溶接時にロボットハンド3で枝管溶接機4全体を配置すべき位置を算出する(ステップB6)。
その後、上記溶接機制御装置16及びロボット制御盤15は、溶接動作を開始させる(ステップA3,ステップB7)。これにより、上記枝管溶接機4では、溶接トーチ10が、図4(a)に示した状態で、枝管2と母管1との溶接個所についての溶接を開始した後、該溶接トーチ10の時計回り方向の円周動作が開始されるようになる。又、この際、上記ロボットハンド3では、上記枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作に対応して、枝管溶接機4全体の円動作が開始されるようになる。
よって、上記自動溶接装置Iでは、上記枝管2と母管1との溶接個所について、1層目(1パス)の溶接作業が開始される(ステップB8)。
上記のようにして溶接作業を開始した後、上記溶接トーチ10の円周動作による上記枝管2の周方向の溶接作業が、該枝管2の周方向に設定してある1番目の分割点Pm(m=1)まで進行すると(ステップA4,ステップB9)、上記溶接機制御装置16及びロボット制御盤15は、相互通信を行い、その後、速やかに、上記ステップA1とステップB6で上記分割点Pm(m=1)についてそれぞれ設定(あるいは算出)されている枝管溶接機4で溶接トーチ10を配置すべき位置と、ロボットハンド3で枝管溶接機4全体を配置すべき位置を目標として、それぞれの位置決め動作を実施する(ステップA5,ステップB10)。この位置決め動作では、上記図4(b)に示したと同様の配置について、枝管溶接機4による溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3(図1参照)による枝管溶接機4全体の円動作との動作開始タイミングの差や、動作速度の差に起因する同期ずれが解消されるようになるため、溶接狙い位置のずれが一旦解消されるようになる。
上記溶接機制御装置16及びロボット制御盤15は、相互通信によりそれぞれの位置決め動作の完了が確認されると、上記枝管溶接機4による溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円動作を再開させて、上記枝管2の周方向に設定してある順序が次の分割点Pm(m=2)(図5参照)までの溶接作業を再開するようにしてある。
その後、上記溶接機制御装置16及びロボット制御盤15は、上記溶接トーチ10による上記枝管2の周方向の溶接作業が、該枝管2の周方向に順次設定してある分割点Pm(m=2,3,4,・・・)まで進行するごとに(ステップA6,ステップB11)、上記ステップA5,ステップB10と同様に、該分割点Pmに対応した枝管溶接機4で溶接トーチ10を配置すべき位置と、ロボットハンド3で枝管溶接機4全体を配置すべき位置を目標とする位置決め動作を実施し(ステップA7,ステップB12)、該位置決め動作の完了の確認後に、順序が次の分割点Pmに向けての溶接作業を再開させる処理を繰り返すようにしてある。
これにより、上記各分割点Pmでは、枝管溶接機4による溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3(図1参照)による枝管溶接機4全体の円動作との動作開始タイミングの差や、動作速度の差に起因する同期ずれが解消されるため、溶接作業が該各分割点Pmに達するごとに、溶接狙い位置のずれが、それぞれ解消されるようになる。
上記溶接機制御装置16及びロボット制御盤15は、枝管2の周方向の溶接作業が、すべての分割点Pmを経た後、溶接開始点と一致する溶接終了点に達して、該枝管2の周方向の全周に亘る溶接作業が終了すると、1層目の溶接を終了する(ステップA8,ステップB13)。
その後は、上記溶接機制御装置16及びロボット制御盤15は、必要に応じて、上記ステップA3〜A8、及び、ステップB7〜B13と同様の処理によるN層目の溶接作業を実施し(ステップA9,ステップB14)、設定されたすべての層についての溶接作業が完了すると(ステップA10,ステップB15)、それぞれ溶接動作を終了するようにしてある。
このように、本発明の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ防止方法によれば、枝管2と母管1との溶接個所を、該枝管2の周方向に沿って全周に亘り溶接する際に、周方向の途中位置に設定してある分割点Pmの位置で、枝管溶接機4による溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円動作との動作開始タイミングの差や、動作速度の差に起因する同期ずれを解消させて、溶接狙い位置のずれを解消させることができる。
したがって、枝管2の周方向の全周に亘る溶接作業では、溶接トーチ10を周方向に移動させる間に、溶接狙い位置のずれが一時的に生じたとしても、その溶接狙い位置のずれが周方向の全周に亘る溶接作業全体に影響したり、溶接狙い位置のずれが蓄積する虞を防止することができる。
これにより、本発明の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ防止方法では、枝管2の母管1に対する溶接作業を行う際に、溶接狙い位置のずれを抑制することができて、溶接品質の向上化を図ることができるようになる。
上記実施の形態においては、図3に溶接機制御装置16及びロボット制御盤15の制御フローを示したように、溶接トーチ10のワイヤ11を探触子とするタッチセンシング(ステップB4)によって検出された枝管2の傾きのずれ量に応じて、枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作の軸心位置に座標軸を備えた座標系を補正する処理は、ロボット制御盤15のステップB5で行わせるものとして示したが、図6に示すように、溶接機制御装置16で行わせるようにしてもよい(ステップA11)。
この場合も、上記図1乃至図5の実施の形態と同様の処理を行うことができて、同様の効果を得ることができる。
次に、図7及び図8は本発明の実施の他の形態として、図1乃至図5の実施の形態の応用例を示すものである。
すなわち、本実施の形態の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ防止方法を適用する自動溶接装置Iは、図7に示すように、図1に示したと同様の構成において、枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作を制御するための溶接機制御装置16を、ロボット制御盤15とは別体に備える構成に代えて、上記枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作を制御するための機能を、ロボット制御盤15aに持たせるようにした構成とするものである。
具体的には、上記ロボット制御盤15aは、溶接機制御部17を一体に組み込んで備えてなる構成として、該溶接機制御部17により、上記枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作を制御することができるようにしてある。
その他の構成は図1乃至図5に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
かかる構成のロボット制御盤15aにより溶接作業を実施する場合の制御フローは、図8に示すようにすればよい。なお、図8におけるCは、上記ロボット制御盤15aの溶接機制御部17による枝管溶接機4の制御用の制御フローであり、図8のBaは上記ロボット制御盤15aにおけるロボットハンド3の制御用の制御フローを示している。
上記ロボット制御盤15aにおけるロボットハンド3の制御フローBaは、図3に示した制御フローBと同様の処理手順において、ステップB1に代えて、ステップB16を備える。該ステップB16では、図1に示した装置構成では溶接機制御装置16により行わせていた図3のステップA1に示したと同様の処理、すなわち、溶接作業開始前に、枝管溶接機4について、溶接条件、該溶接条件に応じた上記溶接トーチ10の円周動作の条件、各分割点Pmの数と、該各分割点Pmの溶接時に溶接トーチ10を配置すべき位置についての設定を、図3に示したステップB1と同様の上記溶接条件に基づく溶接トーチ10の円周動作に対応するロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円動作の設定と共に行うようにしてある。
更に、上記ロボット制御盤15aは、上記制御フローBaのステップB7で、ロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円運動の開始による溶接動作を開始させるときには、上記溶接機制御部17により、ステップC1として、図3に示した制御フローAにおけるステップA3と同様の枝管溶接機4の溶接動作の開始処理を行う。これにより、上記枝管溶接機4では、溶接トーチ10が、枝管2と母管1との溶接個所についての溶接を開始した後、該溶接トーチ10の時計回り方向の円周動作が開始されるようになる。
よって、自動溶接装置Iでは、上記枝管2と母管1との溶接個所について、1層目(1パス)の溶接作業が開始されるようになる(ステップB8)。
その後、上記ロボット制御盤15aは、上記のようにして溶接作業を開始した後、上記溶接トーチ10の円周動作による上記枝管2の周方向の溶接作業が、該枝管2の周方向に設定してある1番目の分割点Pm(m=1)まで進行すると(ステップB9)、ステップB10に進んで、上記ステップB16で上記分割点Pm(m=1)に対応して算出されているロボットハンド3で枝管溶接機4全体を配置すべき位置を目標として、位置決め動作を実施する。この際、同時に、上記溶接機制御部17では、ステップC2として、図3のステップA5と同様に、上記ステップB16で上記分割点Pm(m=1)に対応して設定された枝管溶接機4で溶接トーチ10を配置すべき位置を目標として、位置決め動作を実施する。
上記ステップB10及びステップC2で位置決め動作を実施した後は、ロボット制御盤15aは、上記枝管溶接機4による溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円動作を再開させて、上記枝管2の周方向に設定してある順序が次の分割点Pm(m=2)(図5参照)までの溶接作業を再開する。
その後、上記ロボット制御盤15aと溶接機制御部17は、上記溶接トーチ10による上記枝管2の周方向の溶接作業が、該枝管2の周方向に順次設定してある分割点Pm(m=2,3,4,・・・)まで進行するごとに(ステップB11)、上記ステップC2,ステップB10と同様に、該分割点Pmに対応した枝管溶接機4で溶接トーチ10を配置すべき位置と、ロボットハンド3で枝管溶接機4全体を配置すべき位置を目標とする位置決め動作を実施してから(ステップC3,ステップB12)、順序が次の分割点Pmに向けての溶接作業を再開させる処理を繰り返すようにしてある。
これにより、上記各分割点Pm(m=1,2,3,・・・)では、枝管溶接機4による溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3(図1参照)による枝管溶接機4全体の円動作との動作開始タイミングの差や、動作速度の差に起因する同期ずれが解消されるため、溶接作業が該各分割点Pmに達するごとに、溶接狙い位置のずれが、それぞれ解消されるようになる。
上記ロボット制御盤15aは、枝管2の周方向の溶接作業が、すべての分割点Pmを経た後、溶接開始点と一致する溶接終了点に達して、該枝管2の周方向の全周に亘る溶接作業が終了すると、1層目の溶接を終了する(ステップB13)。
その後は、上記ロボット制御盤15aと溶接機制御部17は、必要に応じて、上記ステップB7〜B13、及び、ステップC1〜C3と同様の処理によるN層目の溶接作業を実施し(ステップB14)、設定されたすべての層についての溶接作業が完了すると(ステップB15)、溶接動作を終了するようにしてある。
このように、本実施の形態の自動溶接装置の溶接狙い位置ずれ防止方法によれば、溶接機制御部17がロボット制御盤15aに組み込まれているので、枝管溶接機4における溶接トーチ10の円周動作と、ロボットハンド3による枝管溶接機4全体の円動作の動作開始タイミングに差が生じる虞を低減できる。又、動作タイミングの差や、各動作の動作速度の差に起因する同期ずれは、上記溶接作業の途中の各分割点Pmごとに解消させることができる。よって、各分割点Pmでは、溶接狙い位置のずれを解消させることができる。
したがって、本実施の形態によっても、図1乃至図5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、枝管2の周方向に設定する分割点Pmの数は、1つ以上であれば任意に設定してよい。これにより、枝管溶接機4の溶接トーチ10の円周動作による枝管2の周方向の全周に亘る溶接作業の途中で、上記分割点Pmに対応させて予め設定してある枝管溶接機4で溶接トーチ10を配置すべき位置と、ロボットハンド3で枝管溶接機4全体を配置すべき位置を目標とする位置決め動作は1回以上行うことができる。このため、上記位置決め動作の時点で、溶接狙い位置のずれが一旦解消されてから、溶接作業が再開されるようになるため、枝管2の周方向の全周に亘る溶接作業では、溶接狙い位置のずれが一時的に生じたとしても、その溶接狙い位置のずれが周方向の全周に亘る溶接作業全体に影響したり、溶接狙い位置のずれが蓄積する虞を防止することができる。
なお、上記分割点Pmは、多く設定する方が望ましい。これは、枝管2の周方向の溶接作業を開始してから順番が最初の分割点に至るまで、及び、或る分割点Pmから順番が次の分割点Pmに至るまでに生じる溶接狙い位置のずれを小さく抑えることができ、又、各分割点Pmで行う枝管溶接機4による溶接トーチ10の位置決め動作、及び、ロボットハンド3による枝管溶接機全体の位置決め動作に要する時間を短くすることができる。
上記ロボットハンド3の先端部には、特許文献1に示されたものと同様に、枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を溶接対象となる枝管2に外嵌させる前に、該枝管2の位置をタッチセンシングにより予め検出するための探触子を取り付ける構成としてもよい。
溶接対象の枝管2に、枝管溶接機4の馬蹄型ガイド5を外嵌させた後に、溶接トーチ10のワイヤ11を用いたタッチセンシングにより、上記溶接対象の枝管2と、その下方の母管1との溶接個所に関し、周方向の全周に亘る位置情報を得るものとして示したが、該溶接個所の周方向の全周に亘る位置情報を得ることができるようにしてあれば、上記タッチセンシングに代えて、耐熱型の光学式又は磁気式の変位センサによるセンシングを行うようにして、その信号をロボット制御盤15,15aに入力させるようにすればよい。
枝管2と母管1との溶接個所を該枝管2の周方向の全周に亘り溶接するときに溶接トーチ10を円周動作させる方向は、任意の方向でよい。又、多層の溶接を行う場合は、奇数層目の溶接作業時と、偶数層目の溶接作業時で、溶接トーチ10を円周動作させる方向を反転させるようにすればよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。