Nothing Special   »   [go: up one dir, main page]

JP5822247B1 - エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置 - Google Patents

エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5822247B1
JP5822247B1 JP2015521907A JP2015521907A JP5822247B1 JP 5822247 B1 JP5822247 B1 JP 5822247B1 JP 2015521907 A JP2015521907 A JP 2015521907A JP 2015521907 A JP2015521907 A JP 2015521907A JP 5822247 B1 JP5822247 B1 JP 5822247B1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
circuit
pulse
output
voltage
pulse generator
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015521907A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2016017045A1 (ja
Inventor
靖彦 早川
靖彦 早川
清 早川
清 早川
杉山 雅彦
雅彦 杉山
大 鮎澤
大 鮎澤
健輔 三木
健輔 三木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NEPA GENE CO Ltd
Original Assignee
NEPA GENE CO Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NEPA GENE CO Ltd filed Critical NEPA GENE CO Ltd
Priority to JP2015521907A priority Critical patent/JP5822247B1/ja
Priority claimed from PCT/JP2014/084187 external-priority patent/WO2016017045A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5822247B1 publication Critical patent/JP5822247B1/ja
Publication of JPWO2016017045A1 publication Critical patent/JPWO2016017045A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)

Abstract

本発明は、多段階方式エレクトロポレーター装置であって、対象物のインピーダンスの違いに応じてポアーリングパルスの電圧切り替えを数十〜数千ボルトという広範囲で調整でき、且つ連続的に複数回のポアーリングパルスの安定発生を可能とするエレクトロポレーター装置を、効率良く製造可能な仕様にて製造することを目的とする。本発明は、ポアーリングパルス発生手段として、;(A)n段のコッククロフト・ウォルトン回路、;並びに、前記回路の出力側に、(B)(b1)高電圧モードの時にはスイッチオフとなり低電圧モードの時にはスイッチオンとなる切替スイッチ、及び、その出力側に(b2)m1個直列m2並列コンデンサが直列された回路、を含む分岐合流回路、;を有することを特徴とする、エレクトロポレーター用電気パルス発生器を提供する。

Description

本発明は、ポアーリングパルス発生手段及びトランスファーパルス発生手段を有する多段階方式エレクトロポレーター用電気パルス発生器であって、対象物のインピーダンスの違いに応じて、ポアーリングパルスの電圧切り替えを数十〜数千ボルトという極めて広範囲で調整でき、且つ複数回のポアーリングパルスの安定発生が可能となるエレクトロポレーター用パルス発生器に関する。
また、本発明は、前記パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置、及び前記装置を用いた遺伝子導入法に関する。
エレクトロポレーターは、電気刺激によって対象細胞の細胞膜に微細孔を開け、DNA等核酸分子や薬剤成分などを、簡便且つ効率的に細胞内に導入すること(電気穿孔法、エレクトロポレーション法)を実現するための装置である。
特に、生命科学分野の研究開発現場では、外来DNAやRNA等を細胞内に導入するための装置として極めて重要な装置と認識されており、多くの分野で需要が拡大しつつある装置である。また、装置操作のハンドリングが容易である点、比較的低費用で設備導入できる装置である点など、極めて利用価値が高い装置であることも、エレクトロポレーターの需要拡大の大きな要因となっている。
しかし、エレクトロポレーターの産業技術分野での需要が増大するにつれて、各分野それぞれの現場において適用可能なエレクトロポレーター装置の登場が要望されるようになってきた。即ち、エレクトロポレーション法の使用対象が多用化する伴い、生物種や組織等の違いによって導入対象に適した溶液(特に溶液の電気抵抗)の相違、細胞学的性質(セルサイズ、細胞膜特性など)が大きく異なり、それぞれの導入対象ごとに好適化した条件の電気パルスを与えることが可能な装置の登場が要望されるようになってきた。
特に対象物の電気抵抗(インピーダンス)の相違は、エレクトロポレーションの電気条件に大きな影響を与える。例えば、哺乳類細胞等に電気パルス処理を行う場合、通常のエレクトロポレーションバッファーや培養溶液に塩や緩衝成分が含まれているため、電気パルスを与える対象物のインピーダンスが比較的低くなる。そのため、哺乳類細胞等にエレクトロポレーションを行う場合には、比較的「低い電圧」の電気パルス(細胞に微細孔を開けることが可能なエネルギー量を有し且つ比較的低電圧である数十〜数百ボルト程度の電気パルス)を与えることが必要となる。
一方、バクテリアや酵母等に電気パルス処理を行う場合では、細胞の障害抑制やコンピテンシー(形質転換効率)を維持するためにグリセロールや糖類等を添加した高インピーダンスの溶液(電気抵抗が高い溶液)中でエレクトロポレーション処理を行うことが必要である。そのため、バクテリア等に対するエレクトロポレーションでは、「高い電圧」の電気パルス(数百〜数千ボルト程度の高電圧パルス)を与えることが必要となる。
高インピーダンス対象に対する「数千ボルトでの電気パルス」を発生させてエレクトロポレーションを実現するためには、入力電圧を昇圧してコンデンサに蓄積して高電圧パルス発生させるための電源及び専用回路が必要となる。
通常、コンデンサに電荷を蓄積させて高電圧電気パルスを発生させるためには、所望の電圧帯に応じた専用の直流電源及び充電用回路(コンデンサ回路の充電のために必要な回路:スイッチング回路、昇圧回路、整流回路などの一連の回路構成)が必要となる。
ここで、高電圧を発生させるためにコンデンサを直列させた回路では、電気容量が小さくなるため、出力パルスの電圧波高値の減衰が大きくなる低インピーダンス対象物にエレクトロポレーションをする場合に、十分な電気容量を確保できないという問題が生じる。即ち、単なる高電圧発生回路を採用しただけでは、抵抗の低い対象物に対して電圧パルスを与える場合に、複数回のパルス発生が安定して十分にできないという課題が生じる。
従って、低電圧パルス発生と高電圧パルス発生とを同一の装置で実現しようとする場合、「電気容量が十分に確保された数十〜数百ボルトという低電圧パルス用の直流電源及び充電回路」と同時に、これとは別に「数百〜数千ボルトという高電圧用の直流電源及び充電用回路」が別途に必要となり、製造コストが大幅に増大するという課題が生じる。
また、高耐電圧コンデンサとしては、コストの面を考慮するとケミカルコンデンサを用いることが一般的であるが、市販のケミカルコンデンサでは、耐電圧450V・電気容量560μF程度のものがせいぜいであり、耐電圧500Vを超えるものを低コストで調達することは困難な現状である。
特に、この高低の電圧帯に応じてそれぞれの電源回路が必要となるという課題は、「多段階式エレクトロポレーター装置」の製造において大きな問題となる。
ここで、多段階式エレクトロポレーターとは、導入対象への導入効率と生存率の両方を、飛躍的に向上させる多段階の電気パルスの発生を実現するための装置である。
具体的には、高電圧で短時間の電気パルス(以下、ポアーリングパルス又はPpという)と、低電圧でパルス幅の長い電気パルス(以下、トランスファーパルス又はTpという)を、連続して与えるエレクトロポレーション法を可能とする装置を指すものである。
このような多段階方式のエレクトロポレーター装置としては、複数メーカーから装置が製造販売されている。例えばネッパジーン株式会社製のNEPA21エレクトロポレーターを挙げることができる。また、エレクトロポレーター電源に関する特許文献としては特許文献1を挙げることができる。(なお、特許文献1では、ポアーリングパルスがポレーションパルス、トランスファーパルスがドライビングパルス、と表現されている。)
しかしながら、多段階方式のエレクトロポレーター装置では、「ポアーリングパルス用電源回路」および「トランスファーパルス用電源回路」という少なくとも2種類の電源回路が、既に積装された装置態様となっている。
そのため、多段階方式のエレクトロポレーター装置として、数十ボルトの低電圧から〜数千ボルトの高電圧のパルス発生が可能な装置を実現しようとした場合、これら2種類の電源回路(数十〜数百ボルト用のポアーリングパルス用電源回路、トランスファーパルス用電源回路)に加えて、さらに「数百〜数千ボルト用のポアーリングパルス用高電圧電源回路」を増設することが必要となる。
この点、専用の電源回路(直流電源及び充電用回路)をさらに増設することは、製造コストの観点で大きな問題となる。電源自体が高価であることに加えて、一連のコンデンサ充電用回路及び所望のコンデンサ回路からなる回路構成が別途に必要となるためである。
さらに装置筐体内の省スペース化(製品装置の小型化)の観点からも、別途の電源回路の増設は回避すべき問題である。
なお、現行の多段階方式エレクトロポレーター装置としては、低電圧(数十〜数百ボルト)用のポアーリングパルスの発生が可能な装置しか存在しない。即ち、高インピーダンス対象(バクテリア、酵母等)への多段階式エレクトロポレーションに最適な電気パルス処理が可能であるエレクトロポレーター装置は、実現されていない。
特開2013−198637号公報
本発明は、上記課題を解決し、低インピーダンス対象の生物種や細胞だけでなく、高インピーダンス対象であるバクテリア・真核微生物等を含む幅広い生物種や細胞に対しても、好適に使用可能である多段階方式エレクトロポレーター装置を、効率良く製造可能な仕様にて提供することを目的とする。
具体的に、本発明は、多段階方式エレクトロポレーター装置であって、対象物のインピーダンスの違いに応じてポアーリングパルスの電圧切り替えを数十〜数千ボルトという広範囲で調整でき、且つ連続的に複数回のポアーリングパルスの安定発生を可能にするエレクトロポレーター装置を、効率良く製造可能な仕様にて製造することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ポアーリングパルス発生用電源回路として、「n段のコッククロフト・ウォルトン回路」、並びに、前記回路の出力側に「高電圧モードの時にはスイッチオフとなり低電圧モードの時にはスイッチオンとなる切替スイッチ、及び、その出力側にm個直列m並列コンデンサが直列された回路、を含む分岐合流回路」を接続した回路にすることによって、;直流電源及びコンデンサ用充電回路を1セットしか用いない場合でも、数十〜数千ボルトという極めて広範囲でのポアーリングパルスを、安定して連続的に複数回出力可能な、ポアーリングパルス発生用電源回路を実現できることを見出した。
本発明は、上記知見に基づいて想到されたものであり、具体的には以下の発明に関する。
[1]
ポアーリングパルス発生手段及びトランスファーパルス発生手段を有するエレクトロポレーター用電気パルス発生器であって、
ポアーリングパルス発生手段として、
(A)n段のコッククロフト・ウォルトン回路(nは2以上のいずれかの整数を示す)、並びに、
(B)前記(A)に記載の回路の出力側の配線の分岐点から分岐した回路であって、
(b1)高電圧モードと低電圧モードの切替電圧値が200〜1400Vの範囲にあるいずれかの電圧値であって、高電圧モードの時にはスイッチオフとなり低電圧モードの時にはスイッチオンとなる切替スイッチ、及び、
(b2)コンデンサをm個直列させたものをm並列させた回路(mは1以上のいずれかの整数、mは2以上のいずれかの整数を示す)、
を含み、前記(b1)に記載のスイッチ及び前記(b2)に記載の回路が直列関係になるように接続され、前記(b2)に記載の回路の出力側の配線が、前記分岐点より出力側にて前記(A)に記載の回路の出力側の配線に合流してなる回路、
を有し、且つ、
前記ポアーリングパルス発生手段を構成する回路が、高電圧モードにおいては前記(A)に記載の回路の耐電圧が1500〜5000Vの範囲にあるいずれかの値である、
ことを特徴とする、エレクトロポレーター用電気パルス発生器。
[2]
前記(B)に記載の回路が、当該回路内の前記(b2)に記載の回路の出力側に、出力側に電流が流れる向きで接続されたダイオードを含むものである、前記[1]に記載の電気パルス発生器。
[3]
前記パルス発生器を構成する回路要素のコンデンサが、耐電圧500V以下のコンデンサである、前記[1]又は[2]に記載の電気パルス発生器。
[4]
前記高電圧モードと前記低電圧モードの切替電圧値が、500〜1000Vの範囲にあるいずれかの電圧値である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の電気パルス発生器。
[5]
前記ポアーリングパルス発生手段を構成する回路が、ポアーリングパルス発生用の直流電源及びコンデンサ充電用回路を1セットのみ有し、且つ、低電圧モードにおいては前記(A)に記載の回路と前記(b2)に記載の回路との合計電気容量が500〜4000μFの範囲にあるいずれかの値である、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の電気パルス発生器。
[6]
前記(A)に記載の回路における整数nが4〜13の範囲にあるいずれかの整数であり、且つ、前記(b2)に記載の回路における整数mが2〜6の範囲にあるいずれかの整数であり、且つ、前記(b2)に記載の回路における整数mが2〜10の範囲にあるいずれかの整数である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の電気パルス発生器。
[7]
前記パルス発生器が、出力電圧の極性切替制御手段を有するものである、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の電気パルス発生器。
[8]
前記パルス発生器が、出力パルスのパルス制御手段を有するものである、前記[1]〜[7]のいずれかに記載の電気パルス発生器。
[9]
前記[1]〜[8]のいずれかに記載の前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置。
本発明により、多段階方式エレクトロポレーター装置であって、対象物のインピーダンスの違いに応じてポアーリングパルスの電圧切り替えを数十〜数千ボルトという広範囲で調整でき、且つ連続的に複数回のポアーリングパルスの安定発生を可能にするエレクトロポレーター装置を、効率良く製造可能な仕様にて製造することが可能となる。
これにより本発明は、低インピーダンス対象の生物種や細胞だけでなく、高インピーダンス対象であるバクテリア・真核微生物等を含む幅広い生物種や細胞に対しても、好適に使用可能である多段階方式エレクトロポレーター装置を、効率良く製造可能な仕様にて提供することが可能となる。
また、本発明に係るポアーリングパルス発生用電源回路が簡素な回路構成であるにも関わらず、高性能な多段階式エレクトロポレーター装置を製造することが可能となる。また、省スペース化による小型化も期待される。
また、本発明に係る装置を用いることにより、低インピーダンスと高インピーダンス対象の両方の生物種や細胞に対しても、遺伝子導入効率が極めて良好な外来遺伝子導入を実現することが可能となる。
本発明に係る電源回路の一態様を示した構成図である。
2段コッククロフト・ウォルトン回路の回路構成を示した図である。C:コンデンサ。D:ダイオード。
倍電圧整流回路の回路構成を示した図である。C:コンデンサ。D:ダイオード。
本発明に係るポアーリングパルス用コンデンサ回路の一例(8段コッククロフト・ウォルトン回路および2個直列4並列コンデンサ回路を使用した例)を示した回路図である。C:コンデンサ。D:ダイオード。S:切替スイッチ。R:抵抗。
本発明のトランスファーパルス用コンデンサ回路の一例を示した回路図である。C:コンデンサ。
本発明に係るエレクトロポレーターの出力波形の一例を示す模式図である。ポアーリングパルス3回、極性切替ポアーリングパルス3回、トランスファーパルス3回、及び極性切替トランスファーパルス3回、を出力した4段階パルスの出力例。
製造例1において製作したエレクトロポレーター装置を用いて、高電圧モードにてポアーリングパルスを出力したオシログラムを示した図である。当該図は3段階パルスを出力した結果である。
製造例1において製作したエレクトロポレーター装置を用いて、高電圧モードにてポアーリングパルスを出力したオシログラムを示した図である。当該図は4段階パルスを出力した結果である。
製造例1において製作したエレクトロポレーター装置を用いて、低電圧モードにてポアーリングパルスを出力したオシログラムを示した図である。当該図は3段階パルスを出力した結果である。
製造例1において製作したエレクトロポレーター装置を用いて、低電圧モードにてポアーリングパルスを出力したオシログラムを示した図である。当該図は4段階パルスを出力した結果である。
キュベット電極の外観を撮影した写真像図である。31:1mmギャップキュベット電極。32:2mmギャップキュベット電極。33:4mmギャップキュベット電極。
本出願は、2014年7月28日に日本国に本出願人により出願された特願2014−152730に基づくものであり、その全内容は参照により本出願に組み込まれる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。以下の説明における符号番号は、図面中に使用した符号番号を意味する。
本発明は、ポアーリングパルス発生手段及びトランスファーパルス発生手段を有する多段階方式エレクトロポレーター用電気パルス発生器であって、対象物のインピーダンスの違いに応じて、ポアーリングパルスの電圧切り替えを数十〜数千ボルトという極めて広範囲で調整でき、且つ連続的に複数回のポアーリングパルスの安定発生が可能となるエレクトロポレーター用パルス発生器に関するものである。また、本発明は、前記パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置、及び前記装置を用いた遺伝子導入法に関するものである。
[多段階式エレクトロポレーション法]
多段階式エレクトロポレーション法とは、高電圧でパルス幅の短い電気パルス(以下、ポアーリングパルス又はPpという)と、低電圧でパルス幅の長い電気パルス(以下、トランスファーパルス又はTpという)を、連続して与える多段階のエレクトロポレーション法を指すものである。
特に、哺乳類等の細胞に対する遺伝子導入法として、導入対象への遺伝子導入効率を飛躍的に向上可能な優れた手法であることが知られている。
しかし、従来技術においては、高電圧電源回路を扱う製造技術上の課題から、高インピーダンス対象に適用可能であり且つ多段階方式のエレクトロポレーター装置は、実現されていなかった。
また、エレクトロポレーション法の電気パルス処理では、生物種や細胞種の違いによって、導入対象に適した溶液の相違、細胞学的性質(セルサイズ、細胞膜特性など)が大きく異なるため、それぞれの導入対象ごとに好適化した条件の電気パルス処理が必要となる。
そのため、高電圧パルス処理が必要な高インピーダンス対象の生物種(バクテリア、真核微生物等)に対しては、当該多段階方式のエレクトロポレーション法が実際に有効であるかどうか不明であった。また、高インピーダンス対象の生物種や細胞に対して実際にエレクトロポレーション処理を行うにあたり、どのような電気パルス条件等に設定すべきかの情報についても、一切不明であった。
[ポアーリングパルス発生手段]
本発明に係るエレクトロポレーター用パルス発生器とは、「ポアーリングパルス発生用手段」を含むものである。
「ポアーリングパルス」(Poring pulse)とは、多段階式エレクトロポレーション法において、導入対象の細胞膜に微細孔を開ける作用を有する高電圧にて短いパルス幅の電気パルスを指す。
ポアーリングパルスの波形形状としては、スクエアーパルスの場合と、エクスポネンシャルスクエアーパルスのいずれであっても良い。
導入対象が低インピーダンス対象物の場合は、必要な電場強度(V/cm)を得るために、数十〜数百ボルトオーダーでの出力手段があれば十分であるが、一方、高インピーダンス対象物の場合、数千ボルトオーダーの出力手段が必要となる場合がある。
本発明に係るパルス発生器のポアーリングパルス発生手段は、ポアーリングパルス発生用の直流電源、コンデンサ充電用回路、及びコンデンサ回路、を実質な構成要素としてなる電源回路である。なお、当該電源回路においては、当該回路の機能を阻害しない限り、その他の回路要素や機能回路を含む構成となる態様を、排除するものではない。
また、当該ポアーリングパルス発生手段では、直流電源及びコンデンサ充電用回路を1セット含む態様であれば、数十〜数千ボルトという広範囲のポアーリングパルスを連続的に複数回発生させることが実現可能となるが、但し、別途の電源や充電用回路を使用する態様を排除するものではない。
ここで、ポアーリングパルス発生用の直流電源(DC電源:符号1)とは、ポアーリングパルス発生のための電圧波高値を得るために専用に制御された直流電源である。当該直流電源(符号1)の出力側には、「コンデンサ充電用回路」が接続されてなるものである。
当該コンデンサ充電用回路としては、直流電源(符号1)から出力される直流を矩形波(交流)に変換する回路、矩形波(交流)を昇圧するための回路、などを挙げることができる。
例えば、直流電源(符号1)の出力側に、スイッチング回路(符号2)が接続され、その出力側にはパルストランス(符号3)が直列関係にて接続される構成を挙げることができる。ここで、スイッチング回路(符号2)は、直流電源(符号1)から出力される直流を、矩形波(交流)に変換する回路である。また、パルストランス(符号3)は、矩形波(交流)を昇圧するための回路である。
当該回路構成によって、ポアーリングパルス用の「コンデンサ充電用回路」からの出力電圧は、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)に入力される前の電圧波高値として、相応しい値となるように調整されたものとなる。
なお、当該回路構成では、「コンデンサ回路」となるn段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)自身に整流作用があるため、パルストランス(符号3)出力後の別途の整流回路の使用が不要となる。この点、コッククロフト・ウォルトン回路を採用する利点である。
[コッククロフト・ウォルトン回路]
当該コンデンサ充電用回路からの出力は、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)に入力される。
当該ポアーリングパルス発生用電源回路におけるn段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)は、高電圧モードの際の「コンデンサ回路」として機能する。また、低電圧モードにおいては、「コンデンサ回路」と「コンデンサ充電用回路」の両方の機能を発揮する。(後述するが、本発明に係るポアーリングパルス発生用回路の特徴として、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)も、低電圧モード用の際にはコンデンサ充電用回路の一部としても機能するものとなる。)
ここで、「コッククロフト・ウォルトン回路」(以下、CW回路という場合あり。)とは、回路要素コンデンサとダイオードを組み合わせて構成された昇圧整流回路の一種である。n段のコッククロフト・ウォルトン回路の場合、n個直列のコンデンサを2並列した回路において、ダイオードを介して接続した回路構成となる。ここで、nは2以上の整数を示す。(図2は、2段コッククロフト・ウォルトン回路、図4(符号4)は8段コッククロフト・ウォルトン回路である。)
当該コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の回路要素となるコンデンサとしては、特に制限はないが、装置製造上の生産性の向上を踏まえると、市販のケミカルコンデンサを用いることが好適である。特に、耐電圧500V以下、好ましくは耐電圧450V以下のものが好適である。
一方、下限としては、入力電圧の2倍以上の耐電圧を挙げることができるが、耐電圧の高いものを用いることが好適である。例えば、耐電圧100V以上、好ましくは耐電圧200V以上、より好ましくは300V以上、特に好ましくは360V以上のものが好適である。
具体的には、耐電圧300V〜450V、より好ましくは360〜450V、のものが市販品として入手しやすく、好適に用いることができる。
なお、市販低耐電圧コンデンサ(及びダイオード)を使用して、このような高電圧発生回路を実現できることは、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)を使用する利点である。
ここで、n段コッククロフト・ウォルトン回路の耐電圧は、耐電圧及び電気容量が同一の要素コンデンサを用いて回路を組んだ場合、当該要素コンデンサ耐電圧の「n倍」のとなる。また、n段コッククロフト・ウォルトン回路の電気容量は、当該要素コンデンサ電気容量の「2/n倍」の電気容量となる。
なお、当該コッククロフト・ウォルトン回路に用いる要素コンデンサとしては、耐電圧及び電気容量が同一の要素コンデンサを用いることが好適であるが、耐電圧及び電気容量が異なるコンデンサを組み合わせて用いる態様も含まれるものである。
当該n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)としては、ポアーリングパルスとしての出力電圧を逸脱しない範囲の耐電圧であり、且つ、十分な電気容量が確保できるものであれば、「n段」の数として如何なる整数の値を採用することができる。
当該「n段」の数としては、2以上のいずれかの整数であれば良いが、好ましくは下記した耐電圧及び電気容量を確保できる範囲の値であれば、如何なる段数でも好適に採用することができる。
具体的には、n段数の値として4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、特に好ましくは8以上、を挙げることができる。
上限としては例えば、48以下、好ましくは36以下、より好ましくは24以下、さらに好ましくは20以下、特に好ましくは16以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは14以下、特に好ましくは13以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは11以下、を挙げることができる。
例えば、4〜13、好ましくは4〜12、より好ましくは5〜11、さらに好ましくは6〜10、特に好ましくは7〜9、を挙げることができる。
当該n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の耐電圧としては、例えば1500V以上、好ましくは1800V以上、より好ましくは2000V以上、さらに好ましくは2200V以上、特に好ましくは2400V以上、であることが好適である。
上限としては、高電圧モードのポアーリングパルスとしての出力電圧として逸脱しない範囲であれば良いが、例えば5000V以下、好ましくは4600V以下、より好ましくは4200V以下、さらに好ましくは4000V以下、特に好ましくは3800V以下、より好ましくは3600V以下、さらに好ましくは3400V以下、特に好ましくは3200V以下、を挙げることできる。
また、当該n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の電気容量としては、ポアーリングパルスとして上記耐電圧の範囲の電圧を出力しようとする場合であれば、例えば20μF以上、好ましくは30μF以上、より好ましくは40μF以上、さらに好ましくは50μF以上、特に好ましくは55μF以上、が必要である。対象物が高インピーダンス対象物である場合は、出力パルスの電圧波高値の減衰が生じにくいが、十分な回数の複数回パルスを連続発生させるためには、ある程度以上の電気容量が必要だからである。
当該電気容量の上限は高い程良いが、例えば、500μF以下、好ましくは470μF以下、より好ましくは450μF以下、さらに好ましくは400μF以下、特に好ましくは300μF以下、より好ましくは220μF以下、さらに好ましくは200μF以下、特に好ましくは150μF以下、より好ましくは120μF以下、さらに好ましくは100μF以下、特に好ましくは80μF以下、を挙げることができる。
また、一例として、要素コンデンサとして下記表で示したものを用いた場合のコッククロフト・ウォルトン回路を組んだ場合の耐電圧値及び電気容量の関係を示した。
なお、下記表1,2に示した各数値は、数値範囲の上限下限の根拠記載とすることが可能である数値である。(表中の「CW回路」は、「コッククロフト・ウォルトン回路」の略である。)
Figure 0005822247
Figure 0005822247
[分岐合流回路]
当該ポアーリングパルス発生用電源回路は、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の出力側に、所定の分岐合流回路を有することを特徴とするものである。
当該「分岐合流回路」とは、具体的には、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の出力側の配線の分岐点から分岐した回路であって、所定の「切替スイッチ」(符号5)及び「m個直列m並列コンデンサ回路」(符号6)を含み、これらが直列関係になるように接続され、「m個直列m並列コンデンサ回路」(符号6)の出力側の配線が、前記分岐点より出力側において、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の出力側の配線に再び合流してなる回路、を指すものである。
なお、当該回路においては、当該回路の機能を阻害しない限り、その他の回路要素や機能回路を含む回路構成となる態様を、除外するものではない。
当該分岐合流回路は、本発明の電源回路において特徴的な部分である。なお、上記n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)とm個直列m並列コンデンサ(符号6)とを、単に併用して組み合わせた回路構成としただけでは、所定の電圧を得ることができず、コンデンサへの充電を達成することができない。
例えば、パルストランス(符号3)からの出力を、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)を介さずに、m個直列m並列コンデンサ(符号6)に直接バイパスしただけでは、当該コンデンサの充電を達成することができない。この場合、低電圧モードの電圧発生に必要な電圧を得るために、別途に昇圧回路が必要となる。また、必要に応じて高電圧用の直流電源が必要となる場合もある。さらに、矩形波を整流するための整流回路も別途に必要となる。
・高電圧モード/低電圧モード切替スイッチ
当該回路における「切替スイッチ」(符号5)とは、ポアーリングパルスの高電圧モードと低電圧モードの切替機能に関するスイッチである。具体的には、高電圧モードにはスイッチオフとなり、当該切替電圧値以下(又は未満)の低電圧モードにはスイッチオンとなる、切替スイッチである。
当該切替スイッチ(符号5)は、m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の入力側に接続された回路構成であることを要する。もし、m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の入力側に当該切替スイッチ(符号5)を配置しなかった場合、本発明に係る電源回路の機能を発揮させることができない。
・m個直列m並列コンデンサ回路
「m個直列m並列コンデンサ回路」(符号6)は、ポアーリングパルスの低電圧モードの時の「コンデンサ回路」として機能する回路である。要素コンデンサをm個直列させたものをm並列させた回路、を指すものである。
なお、当該回路(符号6)に入力される電圧は、前記n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)から出力された直流電圧であり、パルストランス(符号3)からの矩形波(交流)が、既に整流された後のものである。
当該回路(符号4)の回路要素となるコンデンサとしては、特に制限はないが、装置製造上の生産性の向上を踏まえると、市販のケミカルコンデンサを用いることが好適である。特に、耐電圧500V以下、好ましくは耐電圧450V以下のものが好適である。一方、下限としては、耐電圧の高いものを用いることが好適であるが、耐電圧100V以上、好ましくは耐電圧200V以上、より好ましくは300V以上、特に好ましくは360V以上のものが好適である。
具体的には、耐電圧300V〜450V、より好ましくは360〜450V、のものが市販品として入手しやすく、好適に用いることができる。
ここで、m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の耐電圧に用いる要素コンデンサとしては、耐電圧及び電気容量が同一の要素コンデンサを用いることが好適であるが、耐電圧及び電気容量が異なるコンデンサを組み合わせて用いる態様も許容するものである。
当該m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)としては、低電圧モードのポアーリングパルスとしての出力電圧を逸脱しない範囲の耐電圧であり、且つ、十分な電気容量が確保できるものであれば、直列数である「m」及び並列数「m」の数として、如何なる整数値を採用することができる。
当該直列数を示す「m」の数として具体的には、1以上のいずれかの整数であれば良いが、好ましくは2以上、を挙げることができる。特に好ましくは2〜6、より好ましくは2〜5、さらに好ましくは2〜4を挙げることができる。(なお、mが1の時とは、要素コンデンサの耐電圧が十分に大きい場合に可能な形態であるが、この場合単なる並列コンデンサ回路となる。)
また、当該並列数を示す「m」の数として具体的には、2以上のいずれかの整数であれば良いが、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、特に好ましくは4以上、を挙げることができる。
上限としては、例えば、20以下、好ましくは15以下、より好ましくは12以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8以下、より好ましくは7以下、さらに好ましくは6以下、を挙げることができる。
例えば、2〜20、好ましくは2〜15、より好ましくは2〜10、さらに好ましくは2〜9、特に好ましくは3〜8、さらに好ましくは4〜7、特に好ましくは4〜6を挙げることができる。
ここで、低電圧モードの耐電圧としては、例えば、200V以上、好ましくは300V以上、特に好ましくは400V以上、より好ましくは500V以上、さらに好ましくは600V以上、が好適である。
上限としては、低電圧モードのポアーリングパルスとしての出力電圧として逸脱しない範囲であれば良いが、1400V以下、好ましくは1200V以下、好ましくは1000V以下、好ましくは900V以下、を挙げることができる。
また、当該m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の電気容量としては、低電圧モードにおける低インピーダンス対象に電気パルスを出力する際に、連続的に複数回のパルスを発生させるために十分な電気容量(後述するn段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)とm個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の合計電気容量)として、十分な電気容量であれば良い。
当該電気容量としては、例えば500μF以上、さらに好ましくは600μF以上、特に好ましくは700μF以上、より好ましくは800μF以上、を挙げることができる。
また、電気容量の上限は高い程良いが、例えば、4000μF以下、好ましくは3000μF以下、より好ましくは2500μF以下、さらに好ましくは2000μF以下、特に好ましくは1500μF以下、より好ましくは1200μF以下、を挙げることができる。
なお、当該m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)においては、当該回路の機能を阻害しない限り、その他の回路要素や機能回路を含む回路構成となる態様を、除外するものではない。例えば、抵抗などを組み込んだ回路とすることもできる。
また、当該m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)は、用途に応じて所定の配置にてダイオードを組み込んだ態様にして、低段数のコッククロフト・ウォルトン回路に変形した回路とすることも可能である。ここで、低段数のコッククロフト・ウォルトン回路としては、段数が2〜4、好ましくは2〜3程度のものを挙げることができる。
・電流制御用回路要素
また、当該分岐合流回路には、m個直列m並列コンデンサ回路の出力側に、電流制御用回路要素を含むものであることが望ましい。ここで、電流制御用回路要素として具体的には、出力側に電流が流れる向きで接続された「ダイオード」(符号7)を挙げることができる。
当該ダイオード(符号7)として、半導体ダイオード(PN接合型ダイオード、ショットキー接合型ダイオードなど)を指すものである。また、ダイオードの耐電圧を確保するために、2個以上のダイオードを直列関係に接続して用いても良い。
当該ダイオード(符号7)の作用によって、低電圧モードにおいて、m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)とn段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)との印加電圧の畳重出力が実現される。
[高電圧モード/低電圧モードの切替]
当該ポアーリングパルス発生用電源回路では、高電圧モード/低電圧モード切替手段を備えたものである。当該回路において、高電圧モード/低電圧モード切替を具体的に実現している回路素子は、上記した切替スイッチ(符号5)である。
高電圧モード/低電圧モードの切替指標となる電圧値は、装置の仕様に応じて所定の電圧値を設定することができる。
例えば、200〜1400V、好ましくは300〜1200V、特に好ましくは400〜1100V、より好ましくは500〜1000V、さらに好ましくは600〜900V、一層好ましくは700〜900V、の範囲にあるいずれかの電圧値を、高電圧モード/低電圧モードの切替電圧値として設定することができる。
例えば、800Vを切替電圧値として設定した場合、当該値を超える(又は当該値以上)の電圧を出力する場合は高電圧モードとなる。また、当該値以下(又は当該未満)の電圧を出力する場合は低電圧モードでの出力となる。
・高電圧モードでの出力
高電圧モードでは、切替スイッチ(符号5)はオフの状態になる。この場合、m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)は充電されずに、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)のみが充電される。そのため、高電圧モードでは、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)に蓄積された電荷を利用して電気パルスが出力される。
n段コッククロフト・ウォルトン回路に入力された矩形波(交流)は、当該回路(符号4)の出力端では、入力波高値の「2n倍」の直流電圧が昇圧整流して出力される。
例えば、パルストランス(符号3)からの50〜200Vの矩形波(交流)が入力された場合、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)からの出力は、800〜3200Vの直流電圧が得られることになる。
高電圧モードで出力可能な電圧の上限値としては、上記したn段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の耐電圧での電圧の出力が可能である。特に上限の電圧値としては、1500〜5000V、好ましくは1800〜4600V、より好ましくは2000〜4000V、さらに好ましくは2200〜3600V、特に好ましくは2400〜3200V、の範囲にあるいずれかの電圧値を、高電圧モードで出力可能な上限値とすることができる。
一方、高電圧モードでの出力下限値は、必然的に上記した高電圧モード/低電圧モードの切替指標である電圧値となる。
高電圧モードで出力可能なパルス幅としては、0.01〜100ミリ秒、好ましくは0.05〜75ミリ秒、より好ましくは0.1〜50ミリ秒、さらに好ましくは0.1〜25ミリ秒、特に好ましくは0.1〜20ミリ秒、より好ましくは0.1〜15ミリ秒、のパルス出力が可能である。
また、パルス連続発生回数としては、上記コンデンサ容量によって、高インピーダンスの対象に対して1〜30回、好ましくは1〜20回、より好ましくは1〜15回、さらに好ましくは1〜12回、特に好ましくは1〜10回、より好ましくは1〜9回、を出力できる。なお、パルスを発生させない(0回とする)ことも可能である。
当該高電圧モードの出力パルスは、高電圧パルスであるにも関わらず、設定電圧と実行電圧値が極めて近く、安定した波形の高電圧電気パルスが出力される。
・低電圧モードでの出力
低電圧モードでは、切替スイッチ(符号5)はオンの状態になる。この場合、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)からの出力は、切替スイッチ(符号5)を経由してm個直列m並列コンデンサ回路(符号6)に入力される。
ここでは、ダイオード(符号7)の働きによって、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)とm個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の両方のコンデンサ回路に、電荷が蓄積し充電がされることになる。即ち、n段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)がm個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の充電源となる。
当該回路構成によって、低電圧モードでは「n段コッククロフト・ウォルトン回路」(符号4)と「m個直列m並列コンデンサ回路」(符号6)の両方に蓄積された電荷を利用して電気パルスが出力される。
ここで、「n段コッククロフト・ウォルトン回路」(符号4)と「m個直列m並列コンデンサ回路」(符号6)の両方に蓄積された合計の電気容量としては、低インピーダンス対象に電気パルスを出力する際に、連続的に複数回のパルスを発生させるために十分な電気容量であれば良い。低インピーダンス対象に対して電気パルスをかけるには、十分な電気容量が確保できないと、十分な回数の電気パルスを発生させることができないためである。
当該合計の電気容量としては、例えば500μF以上、さらに好ましくは600μF以上、特に好ましくは700μF以上、より好ましくは800μF以上、を挙げることができる。
また、電気容量の上限は高い程良いが、例えば、4000μF以下、好ましくは3000μF以下、より好ましくは2500μF以下、さらに好ましくは2000μF以下、特に好ましくは1500μF以下、より好ましくは1200μF以下、を挙げることができる。
具体的には、500〜4000μF、好ましくは500〜3000μF、より好ましくは600〜2500μF、さらに好ましくは600〜2000μF、特に好ましくは700〜1500μF、より好ましくは800〜1200μF、を挙げることができる。
低電圧モードの具体例としては、例えば、要素コンデンサとして電気容量470μFのものを用いて、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)と2個直列4並列コンデンサ(符号6)を組んだ例を挙げることができる。この場合、回路全体のコンデンサ容量は、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の電気容量が55μF、2個直列4並列コンデンサ(符号6)の電気容量が940μFとなり、合計995μFの電気容量が得られる。
また、回路全体として耐電圧値は、2個直列4並列コンデンサ回路の耐電圧値になる。例えば、要素コンデンサとして耐電圧450Vのものを用いて2個直列4並列コンデンサ回路を組んだ場合、出力される電圧としては、900Vまでのポアーリングパルスの出力が可能となる。
低電圧モードで出力可能な電圧の上限としては、m個直列m並列コンデンサ回路(符号6)の耐電圧以下での電圧の出力が可能である。実際には、上記した高電圧モード/低電圧モードの切替指標である電圧値が上限となる。
当該出力の下限としては0Vを超える電圧であれば出力可能であるが、特に1V以上であれば出力可能である。特に下限の電圧値としては、0〜200V(0Vを除く)、好ましくは1〜175V、より好ましくは10〜150V、さらに好ましくは20〜125V、特に好ましくは30〜120V、より好ましくは40〜110V、さらに好ましくは50〜100V、の範囲にあるいずれかの電圧値を、低電圧モードで出力可能な下限値とすることができる。
低電圧モードで出力可能なパルス幅としては、0.01〜500ミリ秒、好ましくは0.05〜300ミリ秒、より好ましくは0.1〜200ミリ秒、さらに好ましくは0.1〜100ミリ秒、特に好ましくは0.1〜75ミリ秒、より好ましくは0.1〜50ミリ秒、のパルス出力が可能である。
また、パルス連続発生回数としては、上記コンデンサ容量によって、低インピーダンスの対象に対して1〜30回、好ましくは1〜20回、より好ましくは1〜15回、さらに好ましくは1〜12回、特に好ましくは1〜10回、より好ましくは1〜9回、を出力できる。なお、パルスを発生させない(0回とする)ことも可能である。
[トランスファーパルス発生手段]
また、本発明に係るエレクトロポレーター用パルス発生器とは、「トランスファーパルス発生用手段」を含むものである。
「トランスファーパルス」(Transfer pulse)とは、多段階式エレクトロポレーション法において、前記ポアーリングパルスの直後に与える電気パルスであって、低い電圧での短いパルス幅の電気パルスを指す。
当該トランスファーパルスの作用によって、ポアーリングパルスによって開いた細胞膜の微細孔から、目的の導入物質(核酸等)を細胞内に効率良く取り込ませることが可能となる。
トランスファーパルスとして必要な電場強度(V/cm)は、比較的低い値であるため、数十〜数百ボルトオーダーでの出力手段があれば十分である。
また、トランスファーパルスの波形形状としては、スクエアーパルスの場合と、エクスポネンシャルスクエアーパルスのいずれであっても良い。
当該トランスファーパルス発生手段は、トランスファーパルス発生用の直流電源、コンデンサ充電用回路、及びコンデンサ回路、を実質な構成要素としてなる電源回路である。
なお、当該回路においては、当該回路の機能を阻害しない限り、その他の回路要素や機能回路を含む構成となる態様を、除外するものではない。
ここで、トランスファーパルス発生用の直流電源(DC電源:符号11)は、トランスファーパルス発生のための電圧波高値を得るために専用に制御された直流電源である。
当該直流電源(符号11)の出力側には、「コンデンサ充電用回路」が接続されてなる。当該コンデンサ充電用回路としては、直流電源(符号11)から出力される直流を矩形波(交流)に変換する回路、矩形波(交流)を昇圧するための回路、矩形波(交流)を整流するための回路、などを挙げることができる。
ここで、出力電圧が十分に高い直流電源(符号11)を採用した場合、例えば、直流電源(符号11)の出力側にスイッチング回路(符号12)を接続して、その出力側に整流回路(符号14)を直列関係で接続する回路構成とすることができる。
ここで、スイッチング回路(符号12)とは、直流電源(符号11)から出力される直流を、矩形波(交流)に変換する回路である。また、整流回路(符号14)とは、矩形波(交流)を直流に整流するための回路である。
なお、スイッチング機能と整流機能を併せ持った回路を、スイッチング回路(符号12)及び整流回路(符号14)として用いることもできる。
一方、出力電圧が低い直流電源(符号11)を採用した場合、スイッチング回路(符号12)の出力側に、矩形波(交流)を昇圧する手段が必要である。
当該昇圧手段としては、例えばスイッチング回路(符号12)と整流回路(符号14)の間に「パルストランス」(符号13)を接続する手段を挙げることができる。当該パルストランス(符号13)の作用によって、スイッチング回路(符号12)からの出力矩形波を昇圧させることができる。
また、当該昇圧手段としては、パルストランス(符号13)とは別途に、整流回路(符号14)として「倍電圧整流回路」(図3参照)を採用する手段を挙げることができる。
ここで、倍電圧整流回路とは、入力電圧を2倍に昇圧して直流に整流する作用を有する高電圧発生回路である。即ち、倍電圧整流回路を採用する態様では矩形波(交流)が直流電圧に整流されて出力され、入力電圧が2倍に昇圧された直流として出力される。
多段階エレクトロポレーションにおけるトランスファーパルスとしては、要求される出力電圧値が比較的低い電気パルスで良いので、直流電源(符号11)の種類の選択によっては、昇圧手段を不要となる。また、昇圧手段が必要な場合であっても、パルストランス(符号13)や倍電圧整流回路(図3)を採用するだけで、目的の入力電圧を得ることが可能となる。また、パルストランス(符号13)と倍電圧整流回路(符号14)は、併用して用いることも可能である。
なお、当該トランスファーパルス用の電圧発生手段においては、パルストランス(符号13)や倍電圧整流回路(図3)以外の他の高電圧発生回路(例えばコッククロフト・ウォルトン回路等)の採用及び/又は併用を、排除するものではない。
当該回路構成によって、トランスファーパルス用の「コンデンサ充電用回路」からの出力電圧は、トランスファーパルス用コンデンサ(符号15)に入力される前の電圧波高値として、相応しい値となるように調整されたものとなる。
・トランスファーパルス用コンデンサ回路
トランスファーパルス用コンデンサ回路(符号15)としては、装置製造上の生産性の向上を踏まえると、耐電圧500V以下、好ましくは耐電圧450V以下の市販のケミカルコンデンサが好適である。一方、下限としては、耐電圧の高いものを用いることが好適であるが、耐電圧100V以上、好ましくは耐電圧200V以上、より好ましくは300V以上、特に好ましくは360V以上のものが好適である。
具体的には、耐電圧300V〜450V、より好ましくは360〜450V、のものが市販品として入手しやすく、好適に用いることができる。
トランスファーパルスは、要求される出力電圧値が比較的低い電気パルスのみで、目的の作用を達することが可能である。
そのため、当該回路(符号15)としては、要素コンデンサを並列接続した回路で十分であるが、要素コンデンサの耐電圧・容量によって、直列及び/又は並列コンデンサ回路に組んだものを使用することができる。トランスファーパルスは、要求される出力電圧値が比較的低い電気パルスのみで、目的の作用を達することが可能である。
例えば、耐電圧300〜500V程度、好ましくは360〜450Vのコンデンサを用いれば、並列接続のみで所望の耐電圧を得ることができる。
なお、当該回路に用いる要素コンデンサとしては、耐電圧及び電気容量が同一の要素コンデンサを用いることが好適であるが、耐電圧及び電気容量が異なるコンデンサを組み合わせて用いる態様も許容するものである。
当該回路(符号15)のコンデンサ並列数としては、回路(符号15)全体で十分な電気容量が担保される数であれば特に制限はないが、例えば、2〜20、好ましくは4〜16、より好ましくは6〜14、さらに好ましくは7〜15の範囲にあるいずれかの並列数を挙げることできる。
ここで、当該トランスファーパルスコンデンサ回路(符号15)の全体の耐電圧としては、例えば、100V以上、好ましくは150V以上、より好ましくは200V以上、さらに好ましくは250V以上、特に好ましくは300V以上、が好適である。
上限としては、トランスファーパルスとしての出力電圧として逸脱しない範囲であれば良いが、600V以下、好ましくは500V以下、より好ましくは450V以下、さらに好ましくは400V以下、を挙げることができる。
また、当該回路(符号15)の電気容量としては、電圧波高値の減衰が激しい低インピーダンス対象を想定した場合であっても、連続的な複数回パルス発生が十分に担保できる電気容量であれば良い。例えば1000μF以上、好ましくは1200μF以上、より好ましくは1500μF以上、特に好ましくは1800μF以上、を挙げることができる。
また、電気容量の上限は高い程良いが、例えば、5000μF以下、好ましくは4000μF以下、より好ましくは3500μF以下、さらに好ましくは3000μF以下、特に好ましくは2500μF以下、を挙げることができる。
・トランスファーパルス出力
トランスファーパルスの発生には、上記トランスファーパルス用コンデンサ回路に蓄積された電荷を利用して電気パルスが出力される。
トランスファーパルスの出力電圧としては、当該トランスファーパルス用コンデンサ回路の耐電圧に応じた出力が可能である。例えば、600V以下、好ましくは500V以下、より好ましくは400V以下、さらに好ましくは350V以下、特に好ましくは300V以下、での出力が可能である。出力の下限としては0Vを超える電圧であれば出力可能であるが、特に1V以上であれば出力可能である。
トランスファーパルスとして出力可能なパルス幅としては、0.01〜1000ミリ秒、好ましくは0.05〜750ミリ秒、より好ましくは0.1〜500ミリ秒、さらに好ましくは0.1〜250ミリ秒、特に好ましくは0.1〜200ミリ秒、より好ましくは0.1〜150ミリ秒、さらに好ましくは0.1〜100ミリ秒、のパルス出力が可能である。
また、パルス連続発生回数としては、上記コンデンサ容量によって、電圧波高値の減衰が激しい低インピーダンス対象を想定した場合であっても、1〜50回、好ましくは1〜40回、より好ましくは1〜30回、さらに好ましくは1〜25回、特に好ましくは1〜20回、を出力できる。なお、パルスを発生させない(0回とする)ことも可能である。
[制御手段]
本発明のパルス発生器としては、多段階方式エレクトロポレーションに使用可能なパルス発生を実現するために、上記電源回路を制御するための制御手段を備えることが望ましい。
・極性切替回路
当該パルス発生器は、出力電圧の正極性(+:プラス)/負極性(−:マイナス)の切替を可能とする制御手段(極性切替制御手段)を有するものであることが好適である。当該手段は、極性切替回路(符号8,16)によって実現することが可能となる。
なお、多段階方式エレクトロポレーション法では、正極性電気パルスを与えた後に、極性を切り替えた負極性電気パルスを与えることによって、エレクトロポレーション効率をさらに向上させることが可能となる。特に、正極性トランスファーパルスを与えた後に、負極性トランスファーパルスを与える出力波形パターンは、細胞内への外来物質の取り込み効率をさらに向上できると言われている。
極性切替回路の接続位置としては、ポアーリングパルス発生用電源回路の出力側およびトランスファーパルス発生電源回路の出力側のそれぞれに接続する態様を挙げることができる。当該態様の場合、極性反転制御が二カ所それぞれで行われることとなる。
当該態様の場合、ポアーリングパルス発生用電源回路の出力側(上記分岐合流回路の合流点の出力側)には、ポアーリングパルス用の極性切替回路(符号8)が接続される。一方、トランスファーパルス発生用電源回路の出力側(トランスファーパルス用コンデンサ回路の出力側)には、トランスファーパルス用の極性切替回路(符号16)が接続される。
また、極性切替回路の接続位置としては、ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替制御回路(符号21)の出力側に接続する態様を挙げることもできる。当該態様の場合、極性反転制御が一カ所のみで行われることとなる。
・ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替回路
当該パルス発生器は、ポアーリングパルス発生用電源回路からの配線とトランスファーパルス発生用電源回路からの配線を合流させ、出力を切替制御するための手段を有するものであることが好適である。当該手段は、ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替回路(符号21)によって実現することが可能となる。
ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替回路(符号21)の接続位置としては、ポアーリングパルス発生用電源回路及びトランスファーパルス発生用電源回路の両方の電源回路の出力側であれば良い。
・パルス制御回路
本発明のパルス発生器は、パルス制御回路(符号22)により、出力されるパルスの全体的な制御を実現するものであることが望ましい。例えば、出力される電気パルスのパルス幅、パルス間隔、パルス数等は、当該制御回路によって制御することが好適である。
また、対象のインピーダンス測定、実行電圧値、実行電流値の測定部を含む場合であれば、これらの測定値から情報をフィードバックし、適正なパルス発生(出力値、波形形状等)が担保されるように、自律制御させることも可能である。
[エレクトロポレーター装置]
本発明に係るパルス発生器は、エレクトロポレーター装置のパルス発生源として用いることができる。
エレクトロポレーター装置には、パルス発生器への入力情報等の制御を行う電源制御部を設けることが望ましい。例えば、装置操作時における高電圧モード/低電圧モード切替、電圧の極性切替、各種電気パルス条件設定などの入力情報からのパルス電源回路の制御は、当該電源制御部によって行うことができるようにすることが望ましい。
当該電源制御部としては、設定操作を可能とするような所定の回路構成を採用することが可能である。
また、装置の仕様等に応じて、対象のインピーダンス(抵抗)測定、実行電圧値、実行電流値などの測定機器を搭載し、表示部に表示させる機能を有する装置とすることもできる。また、測定結果から、電気パルスエネルギーの発生量を熱量(J)として算出して、モニター等の表示部に表示させる機能を有する装置とすることもできる。また、出力されたパルス波形の形状を表示部に表示可能な装置とすることもできる。
ここで、出力表示の表示手段としては、モニター、液晶、LED表示部等の表示部を装置に内蔵させることもできるが、外付けの表示手段に出力するための外部出力端子を有する仕様とすることもできる。また、一部の情報を内蔵表示手段で表示し、他の情報を外部出力して表示させる仕様とすることも可能である。例えば、オシロスコープ等に接続する態様も可能である。
また、USB等の端子やブルートゥース機能を有する仕様として、パソコンやハードディスク等各種PC関連機器に、データの出力や保存を可能とすることもできる。
当該エレクトロポレーター装置では、高電圧発生に関して、安全装置としてリミッター機能を搭載させる仕様も好適である。
当該エレクトロポレーター装置は、ポアーリングパルス発生用の直流電源及びコンデンサ充電用回路を1セットのみ有する回路構成であるにも関わらず、対象物のインピーダンスの違いに応じて、ポアーリングパルスの電圧切替を数十〜数千ボルトという極めて広範囲で行うことを可能とする装置にすることができる。また、同時に、低電圧モードにおける大規模な電気容量を実現しているため、低インピーダンス対象に対しても十分な回数の複数回パルス発生が可能である。
これにより、当該エレクトロポレーター装置は、様々な対象の生物種や細胞に対して、多段階方式エレクトロポレーターでのエレクトロポレーション法の適用が可能となる。
なお、当該エレクトロポレーター装置に係る当該ポアーリングパルス用電源回路は、高性能且つ簡素な回路構成であるため、製造工程において効率良く製造可能な仕様とすることが可能となる。そして、当該仕様により省スペース化による小型化も実現される。
・出力パルス
パルス制御回路(符号22)からは、高電圧モード又は低電圧モードに対応したポアーリングパルス、及び、トランスファーパルスが連続して出力される。また、極性反転させたパルス発生も可能である。また、ポアーリングパルス、及び、トランスファーパルスは、それぞれを複数回連続して発生させることが可能である(図6〜10参照)。
ここで、当該電気パルス発生器を用いて出力可能なパルス波形パターンとしては、多段階方式エレクトロポレーションに使用可能な全ての波形を出力可能である。
例えば、ポアーリングパルスとトランスファーパルスを連続して出力する2段階方式の出力が可能である。
また、ポアーリングパルス、トランスファーパルス、及び極性切替トランスファーパルス、を連続して出力する3段階方式の出力が可能である。
また、ポアーリングパルス、極性切替ポアーリングパルス、トランスファーパルス、及び極性切替トランスファーパルス、を連続して出力する4段階方式の出力が可能である。
また、極性切替を頻繁に行って、ポアーリングパルス、極性切替ポアーリングパルス、トランスファーパルス、及び極性切替トランスファーパルスの順番を任意に組み替えて出力することも可能である。
勿論であるが、ポアーリングパルス及びトランスファーパルスは、それぞれのパルスを複数回連続して発生させることが可能である。
当該出力パルスは、スクエアー形状にて出力することも可能であるが、接続した電極や対象物のインピーダンスの種類によって、パルス波高値が減衰曲線を描くエクスポネンシャルスクエアーパルス形状となる場合がある。また、複数回パルスを発生させた場合、2回目以降の波高値が、直前のパルスの減衰後の波高値と同じ高さ(極性切替した場合は、逆の極性で同じ絶対値の波高値)になる場合がある。
当該減衰現象は、コンデンサに蓄積された電荷を物質に印加することによって生じる現象(自然減衰)によるものである。当該減衰の程度は、接続した電極や対象物のインピーダンスによって異なるが、高インピーダンス対象の場合、減衰の度合は緩やかとなる。
なお、本発明においては、パルス制御手段として、パルス波高値を制御する手段を組み込むことで、スクエアー形状を保持したパルスとすることも可能である。また、複数回パルスの全てを同じ波高値にて出力することも可能である。
さらに本発明では、当該パルス波高値の減衰度合を制御して、所望の減衰曲線を描くパルス波形にすることも可能である。
なお、発生するパルスどうしの間隔(パルス間隔:Ppどうしの間隔、Tpどうしの間隔、PpとTpの間隔など)としては、特に制限はないが、例えば、0.05ミリ秒〜100秒、好ましくは0.5ミリ秒〜50秒、より好ましくは5ミリ秒〜10秒、さらに好ましくは10ミリ秒〜5秒、一層好ましくは25ミリ秒〜2.5秒、特に好ましくは50ミリ秒〜1秒、を挙げることができる。
・エレクトロポレーション
当該エレクトロポレーター装置においては、パルス制御回路(符号22)からの出力側の配線に、用途に応じた所望の形状・材質の電極を接続することで、様々な生物種や細胞種に応じた多段階エレクトロポレーション法への使用が可能となる。得られる出力パルスは、一連のシーケンス制御により連続的に対象物に与えられる。
接続可能な電極としては、現在使用可能なエレクトロポレーション用電極の全てが使用可能であるが、例えば、キュベット電極、プレート電極、脚付き電極、針電極、ピンセット型電極、ロッド型電極、シャーレ型電極などの、あらゆる電極の使用が可能である。
従って、当該エレクトロポレーター装置は、In Vitro、In Vivo、Ex Vivo、In Ovoなど、あらゆるエレクトロポレーション用途において使用可能な装置である。
特には、当該エレクトロポレーター装置は、従来技術では不可能であった高インピーダンス対象(バクテリア、真核微生物等)への多段階エレクトロポレーション法を実現可能とする装置であることから、キュベット電極(図11参照)を用いた使用態様において、格別顕著な効果が期待される装置である。
高インピーダンス対象のエレクトロポレーション用の試料としては、エレクトロポレーション時に用いる溶液として、細胞障害抑制やコンピテンシー(形質転換効率)維持の観点から、グリセロールや糖類等を含む水溶液(電気抵抗の高い溶液)を用いてエレクトロポレーションを行う生物種や細胞を指すものである。
例えば、バクテリア(具体的には、真正細菌、古細菌、シアノバクテリア等の原核生物)、真核微生物等(特に、酵母,原虫などの単細胞真核生物、カビ等の糸状菌類など)を含む、試料溶液を挙げることができる。
特に、その細胞学的又は菌学的性質に起因する原因により、従来の装置を用いた高電圧エレクトロポレーション法でも良好な遺伝子導入効率を得ることが困難な試料において、当該多段階方式エレクトロポレーターを用いることによって、極めて高効率な遺伝子導入が実現可能となる。
高インピーダンスの範囲としては、例えば0.5kΩ以上、好ましくは0.8kΩ以上、より好ましくは1kΩ以上、さらに好ましくは2kΩ以上、特に好ましくは3kΩ以上、より好ましくは4kΩ以上、さらに好ましくは5kΩ以上の溶液は、電気抵抗が高い溶液と言える。
上限としては、当該電気パルスの電圧で十分な電場強度が発生可能な範囲であれば特にないが、例えば、50kΩ以下、好ましくは40kΩ以下、より好ましくは30kΩ以下、さらに好ましくは25kΩ以下、を挙げることができる。
なお、高インピーダンス対象に対する十分なポアーリングパルスの電場強度としては、例えば、5〜30kV/cm、好ましくは8〜27kV/cm、より好ましくは9〜25kV/cm、さらに好ましくは10〜24kV/cm、特に好ましくは11〜23kV/cm、より好ましくは12〜22kV/cm、さらに好ましくは13〜21kV/cm、特に好ましくは14〜20kV/cm、を挙げることができる。
また、高インピーダンス対象に対するトランスファーパルスの電場強度としては、例えば、0.01〜4kV/cm、好ましくは0.05〜3.5kV/cm、より好ましくは0.1〜3kV/cm、さらに好ましくは0.2〜2.5kV/cm、特に好ましくは0.2〜2kV/cm、最も好ましくは0.5〜2kV/cm、を挙げることができる。
なお、当該エレクトロポレーター装置では、低インピーダンス対象の生物種の組織や細胞等(例えば、動物細胞、植物細胞等)に電気パルス出力を行って、低電圧モードでの多段階方式エレクトロポレーションを行うことも可能である。
ここで、低インピーダンスの範囲としては、例えば500Ω未満、好ましくは450Ω以下、より好ましくは400Ω以下、さらに好ましくは300Ω以下、特に好ましくは200Ω以下、より好ましくは100Ω以下、を挙げることができる。
この場合、従来法の電気パルス条件等を参照にして、多段階方式のエレクトロポレーションを行うことが可能である。
なお、当該エレクトロポレーター装置により細胞内に導入する物質としては、外来DNAやRNAなどの核酸分子を特に挙げることができるが、核酸類似物質、蛋白質、薬剤、蛍光物質などの他の化合物等についても、効率良く細胞内へ導入することが可能である。
特には、当該エレクトロポレーター装置は、外来遺伝子導入法による、形質転換、形質導入、機能欠失、相同組み換え、ゲノム編集などに、好適に用いることができる。具体的には、プラスミドDNA,コンストラクトDNA、ウイルスベクター、アンチセンス核酸、siRNA、オリゴヌクレオチドなどの導入にも好適に使用できる。また、核酸類似物質(例えばモルフォリノ重合体など)の導入にも好適に使用可能である。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態を説明するが、本発明の範囲は当該実施例に限定されるものではない。
[製造例1]『本発明に係るエレクトロポレーター装置』
本発明に係るパルス発生器を有するエレクトロポレーターとして、図1に示す電源回路のパルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置を製造した。
(1)「ポアーリングパルス発生用電源回路」
当該製造例のポアーリングパルス用電源回路を説明する。ポアーリングパルス用に制御されたDC電源(符号1)からの直流は、スイッチング回路(符号2)で矩形波に変換され、パルストランス(符号3)で昇圧され、「8段コッククロフト・ウォルトン回路」(符号4)に入力される回路となっている。
当該8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の出力側には、切替スイッチ(符号5)を介して「2個直列4並列コンデンサ」(符号6)に接続されているが、当該2個直列4並列コンデンサ(符号6)を含む回路は、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)からの配線に対して分岐合流回路となっている。
8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)と2個直列4並列コンデンサ(符号6)からの配線は合流点で接続され、その合流点の出力側には極性切替回路(符号8)が接続された回路構成となっている。
(i) 高電圧モード
当該実施形態では800Vを超える電圧の場合に高電圧モードとなり、切替スイッチ(符号5)はオフの状態になる。この場合、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)のみが充電される(2個直列4並列コンデンサ(符号6)は充電されない)。
当該8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)は、当該8段直結コンデンサは、2式並列接続された構成となっており、内蔵されるこれらのコンデンサに電荷が蓄積して充電される。
8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)に入力された電圧は、当該回路の作用によって昇圧整流され、その出力端では入力矩形波の波高値の2×8倍の直流電圧が出力される。
本実施形態における当該8段コッククロフト・ウォルトン回路では、構成する1個あたりのコンデンサとして、耐電圧(Vc)は450Vのものを用いたので、当該8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の耐電圧は、450V×8=3600Vとなる。
また、当該回路(符号4)では、1個のコンデンサの容量(Cc)は220μFのものを用いたので、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)に蓄積されるコンデンサ容量は、220μF/8×2=55μFとなる。
従って、当該実施形態においては、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)は、耐電圧3600V及びコンデンサ容量55μFのコンデンサ回路として機能するものとなる。
この結果、当該高電圧モードでは、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の電気容量55μFに蓄積された電荷が、ポアーリングパルス用パルスとして使用される。
当該回路(符号4)の耐電圧は3600Vであるので、3000Vのポアーリングパルスの発生には十分に耐えることが可能となる。
また、当該コンデンサ容量を考慮すると、1〜9回までの連続パルスの発生が可能となる。なお、パルスを発生させない(0回とする)ことも可能である。
(ii) 低電圧モード
8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の出力電圧が、低電圧モードの上限電圧以下値(ここでは、800V以下)である時は、切替スイッチ(符号5)はオンの状態となる。
この場合、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)からの出力は、切替スイッチ(符号5)を経由して2個直列4並列コンデンサ(符号6)が充電される。
即ち、低電圧モードでは、「8段コッククロフト・ウォルトン回路」(符号4)と「2個直列4並列コンデンサ」(符号6)の両方のコンデンサ回路に電荷が蓄積し、充電がされることになる。
そして、ダイオード(符号7)の働きによって、「8段コッククロフト・ウォルトン回路」(符号4)の出力と「2個直列4並列コンデンサ」(符号6)の出力が重畳され、両方のコンデンサの荷電がポアーリングパルス用の電荷となる。
当該2個直列4並列コンデンサ回路(符号6)では、構成する1個あたりのコンデンサとして耐電圧(Vp)が450Vのものを用いたので、当該回路(符号6)の耐電圧は、450V×2=900Vとなる。
また、当該回路では、1個のコンデンサの容量(Cp)が470μFのものを用いたので、当該回路(符号6)に蓄積されるコンデンサ容量は、470μF/2×4=940μFとなる。
この結果、当該低電圧モードでは、8段コッククロフト・ウォルトン回路(符号4)の容量55μFと、当該2個直列4並列コンデンサ回路(符号6)の容量940μFを合わせた合計995μFが、回路全体のコンデンサ容量となる。また、耐電圧は、耐電圧900Vであるので、800Vの電圧に十分耐えることができる。
また、当該コンデンサ容量を考慮すると、1〜9回までの連続パルスの発生が可能となる。なお、パルスを発生させない(0回とする)ことも可能である。
(2)「トランスファーパルス発生用電源回路」
次に、当該製造例におけるトランスファーパルス用電源回路について説明する。トランスファーパルスの発生手段では、ポアーリングパルス用に制御されたDC電源(符号1)とは別電源である「トランスファーパルス用に制御されたDC電源(符号11)」が用いられている。
トランスファーパル用DC電源(符号11)からの直流は、スイッチング回路(符号12)で矩形波に変換され、整流回路(符号14)で整流された後、トランスファーパルス用コンデンサ(符号15)に入力される回路構成になっている。当該コンデンサ(符号15)に蓄積した電荷は、トランスファーパルス用の電気パルスとして利用される。
トランスファーパルス用コンデンサ回路(符号15)の出力側には、極性切替回路(符号16)が接続されている。
当該実施形態におけるトランスファーパルスは、比較的出力電圧が低い電気パルスである。また、トランスファーパルス用DC電源(符号11)として、300Vの出力が可能なものを用いているため、電圧の昇圧手段を使用することなく、目的の入力電圧を得ることが可能となる。
当該実施形態では、トランスファーパルス用コンデンサ回路(符号15)に使用した1個のコンデンサ(耐電圧400V・電気容量270μF)を、直列接続することなくコンデンサ容量を増加させるために並列接続して使用している。
そのため、トランスファーパルス用コンデンサ回路(符号15)全体の耐電圧は要素コンデンサの耐電圧と同じ400Vのままであるが、8個のコンデンサを並列しているので(図4参照)、当該回路全体でのコンデンサ容量は、270μF×8=2160μFとなる。
当該コンデンサ容量を考慮すると、1〜20回までの連続パルスの発生が可能となる。なお、パルスを発生させない(0回とする)ことも可能である。
(3)「出力電圧の極性切替」
上記ポアーリングパルス用電源回路のコンデンサ回路によって出力された電圧は、極性切替回路(符号8)にて、正極性(+)又は負極性(−)のいずれを出力するかの切替を行うことが可能となる。極性の切替は、入力のプラス・マイナスを反転させることで行う。
また、トランスファーパルス用電源回路のコンデンサ回路によって出力された電圧についても、極性切替回路(符号16)にて、正極性(+)又は負極性(−)のいずれを出力するかの切替を行うことが可能となる。
(4)「ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替」
当該実施形態のパルス発生器においては、ポアーリングパルス発生用電源回路とトランスファーパル用電源回路の合流点に、「ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替制御回路」(符号21)が接続されている。
当該パルス発生器では、「ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替制御回路」(符号21)において、ポアーリングパルスとトランスファーパルスのいずれかを出力するかを制御している。
(5)「パルス制御」
当該実施形態のパルス発生器では、「ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替制御回路」(符号21)の出力側に、「パルス制御回路」(符号22)が接続され、出力されるパルスの全体的な制御がされる。なお、各種入力情報に応じた制御等は、電源制御部(特には図示せず)によって、所定の制御が行われる。
(6)「装置仕様」
当該実施形態のパルス発生器を内蔵したエレクトロポレーター装置を製造した。当該エレクトロポレーター装置の仕様概略は、表3に示す通りである。
Figure 0005822247
(7)「パルス波形の出力例」
当該エレクトロポレーター装置にオシロスコープを接続して、出力波形パターンを検出した。波形パターンの検出結果(オシログラム)を図7〜10に示した。
・高電圧モードでの出力波形
図7及び8は、1kΩの対象に対して所定の設定条件(Pp:電圧3000V,パルス幅2.5m秒,回数3回,Tp:電圧300V,パルス幅50m秒,回数3回)にてパルス出力した例である。
図7は、3段階方式の出力例であり、ポアーリングパルス3回、トランスファーパルス3回、及び極性切替トランスファーパルス3回、を出力した例である。図7の例において測定したP−P値(peak to peak value)は3240V、最大電圧値は2920V、最小電圧値は−320V、Ppパルス幅は2.442m秒、Tpパルス幅は49.97m秒であった。
また、図8は、4段階方式の出力例であり、ポアーリングパルス3回、極性切替ポアーリングパルス3回、トランスファーパルス3回、及び極性切替トランスファーパルス3回、を出力した例である。図8の例において測定したP−P値(peak to peak value)は5400V、最大電圧値は2920V、最小電圧値は−2480V、Ppパルス幅は3.160m秒、Tpパルス幅は49.64m秒であった。
図7及び8の両例において、ポアーリングパルスの実測最大電圧値は2920Vであった。この点、高電圧パルスの出力であるにも関わらず、設定電圧と実行電圧値が極めて近い値であり、安定した高電圧電気パルスの出力が可能であることが示されている。
・低電圧モードでの出力波形
図9及び10は、50Ωの対象に対して所定の設定条件(Pp:電圧180V,パルス幅5m秒,回数3回,Tp:電圧50V,パルス幅50m秒,回数3回)にてパルス出力した例である。
図9は、3段階方式の出力例であり、ポアーリングパルス3回、トランスファーパルス3回、及び極性切替トランスファーパルス3回、を出力した例である。図9の例において測定したP−P値(peak to peak value)は192V、最大電圧値は180V、最小電圧値は−12.0V、Ppパルス幅は5.211m秒、Tpパルス幅は50.01m秒であった。
また、図10は、4段階方式の出力例であり、ポアーリングパルス3回、極性切替ポアーリングパルス3回、トランスファーパルス3回、及び極性切替トランスファーパルス3回、を出力した例である。図10の例において測定したP−P値(peak to peak value)は310V、最大電圧値は180V、最小電圧値は−130Vであった。
図9及び10の両例において、ポアーリングパルスの実測最大電圧値は180Vであった。
・出力波形知見
図7〜10のオシログラムが示すように、当該エレクトロポレーター装置では、高電圧及び低電圧の両方のモードにおいて、ポアーリングパルス及びトランスファーパルスを連続的に与える多段階パルス発生が可能となることが示された。
特に、高インピーダンス対象に対する高電圧モードでは、スクエアー形状に近い綺麗なパルス発生が可能であることが示された。
[実施例1]『高インピーダンス対象への遺伝子導入例』
大腸菌(グラム陰性菌)懸濁液に対して、製造例1にて製作したエレクトロポレーターを用いて多段階エレクトロポレーションによる遺伝子導入試験を行った。
(1)「実験手順」
大腸菌(DH5α)のEP用コンピテントセルを調製した。コンピテントセルの調製は対数増殖期の細胞を集菌し常法により行った。
当該EP用コンピテントセル(1サンプルあたり菌数10〜1011 10%グリセロール溶液)、pUC19ベクター(1サンプルあたり10pg)を混合し、当該混合液20μLを1mmギャップキュベット電極(ネッパジーン社製)内に注入した。なお、当該一連の操作は、氷上にて冷却しながら行った。
当該菌及びDNA混合液を注入したキュベット電極を、製造例1にて製造したエレクトロポレーターに接続したキュベット電極用チャンバーに挿入し、表4に示した電気パルス条件にて3段階方式のエレクトロポレーション処理(高電圧ポアーリングパルス1回→トランスファーパルス5回→極性切替トランスファーパルス5回)を行った。なお、各パルス間の間隔は50m秒に設定した。
一方、比較実験として、エクスポネンシャル出力でのエレクトロポレーター装置(ECM630, BTX社製)を用いたこと以外は同様にして、表4に示した電気パルス条件でのエレクトロポレーション処理(高電圧エクスポネンシャルパルス1回)を行った。
その後、アンピシリン含有LB寒天培地上にプレーティングし、pUC19DNAの導入により薬剤耐性を獲得して生育したコロニー数をカウントした。プラスミド1μgあたりのコロニー数を算出し、遺伝子導入効率(cfu/μg)として評価した。なお、当該遺伝子導入実験は2反復で行い、平均値を算出した。
(2)「結果」
その結果、表5に示すように、高インピーダンス対象である大腸菌の懸濁液(サンプル抵抗値=約7.7kΩ)に対して、製造例1で製作した多段階方式エレクトロポレーターを用いて電気パルス処理を行うことによって、極めて高い遺伝子導入効率が実現できることが示された。
具体的には、2000Vのポアーリングパルスを与えた後、トランスファーパルス5回、及び極性切替トランスファーパルス5回を与える電気処理を行った場合(実験1−1)、従来のエクスポネンシャル出力でのエレクトロポレーター装置を用いて同電圧の高電圧パルス処理を行った場合(実験1−3)よりも、約4.9倍も高い遺伝子導入効率が達成できることが示された。
また、当該多段階方式エレクトロポレーターを用いて1800Vのポアーリングパルスを与えた後同様のトランスファーパルスを与えた場合(実験1−2)でも、従来のエレクトロポレーター装置を用いた場合(実験1−3)よりも、約3.1倍も高い遺伝子導入効率が達成できることが示された。
なお、実験1−3で用いた比較装置で電圧値2000Vを採用した理由は、予備実験において、当該値でエレクトロポレーションを行う場合の好適条件だったためである。
これらのことから、製造例1で製作したエレクトロポレーターを用いることによって、従来では不可能であった大腸菌のコンピテントセルのような高インピーダンスの対象物に対しても、多段階方式のエレクトロポレーション処理が可能となり、極めて高効率な遺伝子導入が実現可能となることが示された。
Figure 0005822247
Figure 0005822247
[実施例2]『低インピーダンス対象への遺伝子導入例』
動物細胞の懸濁液に対して、製造例1にて製作したエレクトロポレーターを用いて、多段階エレクトロポレーションによる遺伝子導入試験を行った。
(1)「実験手順」
HT1080細胞(ヒト線維肉腫細胞:付着細胞)を培養し、トリプシン処理を行って付着状態の細胞を剥離させた。細胞が剥がれることを確認した後、トリプシンを除去し、細胞をOpti−MEM培地(血清及び抗生物質フリー)で洗浄し、同液体培地に再懸濁させた。
当該HT1080細胞(1サンプルあたり10細胞 Opti−MEM培地(血清及び抗生物質フリー))、pCMV−EGFPベクター(1サンプルあたり10μg)を混合し、当該混合液100μLを2mmギャップキュベット電極(ネッパジーン社製)内に注入した。なお、当該細胞を扱う操作は、室温にて行った。
当該細胞及びDNA混合液を注入したキュベット電極を、製造例1で製造したエレクトロポレーターに接続したキュベット電極用チャンバーに挿入し、表6に示した電気パルス条件にて3段階方式のエレクトロポレーション処理(高電圧ポアーリングパルス1〜2回→トランスファーパルス5回→極性切替トランスファーパルス5回)を行った。なお、各パルス間の間隔は50m秒に設定した。
また、キュベット注入を行ったのみで、エレクトロポレーション処理を行わなかったサンプルを対照(コントロール)とした。
その後、ウシ胎児血清を含むDMEM培地を用いて各細胞を通常の培養条件にて24時間培養し、FACS解析により生存率と導入率を算出した。「生存率」は、24時間培養後における‘全細胞数’に対する‘生細胞数’の割合で表した。具体的には、FACS解析で正常な形態を有する細胞を生細胞とした。FACS解析で算出した生細胞は、トリパンブルー染色およびコロニー形成試験で算出した生細胞の結果と一致した。
また、遺伝子の「導入率」は、‘生細胞数’に対する‘遺伝子導入されたEGFP遺伝子が発現している細胞数’の割合を、FACS解析にて算出することで求めた。
(2)「結果」
その結果、表7に示すように、低インピーダンス対象である動物細胞を懸濁した溶液(サンプル抵抗値=約41.6Ω)に対して、製造例1で製作した多段階方式エレクトロポレーターを用いて130〜180Vのポアーリングパルスを与える電気パルス処理を行うことによって、生存率と導入率の両方が良好な遺伝子導入が達成できることが示された。
当該結果から、製造例1で製作したエレクトロポレーターは、低インピーダンス対象の細胞溶液に対しても、多段階方式エレクトロポレーションによる高効率遺伝子導入が可能な装置であることが示された。
なお、エクスポネンシャル方式でのエレクトロポレーターを使用して、減衰波電気パルス法での標準的条件での電気パルス処理(例えば、100〜200Vでのエクスポネンシャルパルス1回処理)を行った場合では、このような高い効率は達成できない。
なお、当該実験においては、対照サンプルの極僅かな細胞(生細胞の0.4%)で蛍光が検出された。この原因としては、(i) HT1080細胞は自家蛍光が強い細胞であること、(ii) DMEM培地がGFP蛍光と同波長の蛍光をやや発すること、(iii) 一部細胞がプラスミドを貪食した可能性、などが考えられたが、いずれにしろ全体量から見ると僅かであり、当該実施例の本論には影響しない結果である。
Figure 0005822247
Figure 0005822247
[実施例1,2からの知見]
製造例1で製作した本発明に係る多段階方式エレクトロポレーターを用いることのよって、高インピーダンス対象である生物種や細胞に対しても極めて高い遺伝子導入効率が実現できることが示された。
また、当該結果から、高インピーダンス対象の生物に対しても、多段階方式エレクトロポレーション法が実際に有効であることが、実証例として示された。
また、製造例1で製作した本発明に係る多段階方式エレクトロポレーターは、低インピーダンス対象である生物種や細胞に対しても良好な多段階方式エレクトロポレーションを行うことが可能な装置であることが示した。
以上の結果から、本発明に係る多段階方式エレクトロポレーターは、低インピーダンスと高インピーダンス対象の両方の生物種や細胞に対して、極めて良好な外来遺伝子導入を実現することが可能な装置であることが示された。

本発明により、エレクトロポレーター需要の拡大と用途の多様化に対応可能な、幅広い生物種や細胞に対して好適に施用可能であるエレクトロポレーター装置を、効率良く製造可能な仕様にて提供することが可能となる。
これにより本発明は、生命科学全般(分子生物、遺伝子、微生物、医薬、飲食品、農芸化学、畜産など)の研究開発分野、および、治療分野において、極めて有効に利用されることが期待される。
1. ポアーリングパルス用DC電源
2. ポアーリングパルス用スイッチング回路
3. ポアーリングパルス用パルストランス
4. n段コッククロフト・ウォルトン回路
5. 切替スイッチ
6. m個直列m並列コンデンサ回路
7. ダイオード
8. 極性切替回路
11. トランスファーパルス発生用DC電源
12. トランスファーパルス用スイッチング回路
13. トランスファーパルス用パルストランス
14. 整流回路
15. トランスファーパルス用コンデンサ回路
16. 極性切替回路
21. ポアーリングパルス/トランスファーパルス切替回路
22. パルス制御回路
31. 1mmギャップキュベット電極
32. 2mmギャップキュベット電極
33. 4mmギャップキュベット電極

Claims (9)

  1. ポアーリングパルス発生手段及びトランスファーパルス発生手段を有するエレクトロポレーター用電気パルス発生器であって、
    ポアーリングパルス発生手段として、
    (A)n段のコッククロフト・ウォルトン回路(nは2以上のいずれかの整数を示す)、並びに、
    (B)前記(A)に記載の回路の出力側の配線の分岐点から分岐した回路であって、
    (b1)高電圧モードと低電圧モードの切替電圧値が200〜1400Vの範囲にあるいずれかの電圧値であって、高電圧モードの時にはスイッチオフとなり低電圧モードの時にはスイッチオンとなる切替スイッチ、及び、
    (b2)コンデンサをm個直列させたものをm並列させた回路(mは1以上のいずれかの整数、mは2以上のいずれかの整数を示す)、
    を含み、前記(b1)に記載のスイッチ及び前記(b2)に記載の回路が直列関係になるように接続され、前記(b2)に記載の回路の出力側の配線が、前記分岐点より出力側にて前記(A)に記載の回路の出力側の配線に合流してなる回路、
    を有し、且つ、
    前記ポアーリングパルス発生手段を構成する回路が、高電圧モードにおいては前記(A)に記載の回路の耐電圧が1500〜5000Vの範囲にあるいずれかの値である、
    ことを特徴とする、エレクトロポレーター用電気パルス発生器。
  2. 前記(B)に記載の回路が、当該回路内の前記(b2)に記載の回路の出力側に、出力側に電流が流れる向きで接続されたダイオードを含むものである、請求項1に記載の電気パルス発生器。
  3. 前記パルス発生器を構成する回路要素のコンデンサが、耐電圧500V以下のコンデンサである、請求項1又は2に記載の電気パルス発生器。
  4. 前記高電圧モードと前記低電圧モードの切替電圧値が、500〜1000Vの範囲にあるいずれかの電圧値である、請求項1〜3のいずれかに記載の電気パルス発生器。
  5. 前記ポアーリングパルス発生手段を構成する回路が、ポアーリングパルス発生用の直流電源及びコンデンサ充電用回路を1セットのみ有し、且つ、低電圧モードにおいては前記(A)に記載の回路と前記(b2)に記載の回路との合計電気容量が500〜4000μFの範囲にあるいずれかの値である、請求項1〜4のいずれかに記載の電気パルス発生器。
  6. 前記(A)に記載の回路における整数nが4〜13の範囲にあるいずれかの整数であり、且つ、前記(b2)に記載の回路における整数mが2〜6の範囲にあるいずれかの整数であり、且つ、前記(b2)に記載の回路における整数mが2〜10の範囲にあるいずれかの整数である、請求項1〜5のいずれかに記載の電気パルス発生器。
  7. 前記パルス発生器が、出力電圧の極性切替制御手段を有するものである、請求項1〜6のいずれかに記載の電気パルス発生器。
  8. 前記パルス発生器が、出力パルスのパルス制御手段を有するものである、請求項1〜7のいずれかに記載の電気パルス発生器。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置。
JP2015521907A 2014-07-28 2014-12-24 エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置 Active JP5822247B1 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015521907A JP5822247B1 (ja) 2014-07-28 2014-12-24 エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置

Applications Claiming Priority (4)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014152730 2014-07-28
JP2014152730 2014-07-28
JP2015521907A JP5822247B1 (ja) 2014-07-28 2014-12-24 エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置
PCT/JP2014/084187 WO2016017045A1 (ja) 2014-07-28 2014-12-24 エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5822247B1 true JP5822247B1 (ja) 2015-11-24
JPWO2016017045A1 JPWO2016017045A1 (ja) 2017-04-27

Family

ID=54610988

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015521907A Active JP5822247B1 (ja) 2014-07-28 2014-12-24 エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5822247B1 (ja)

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002532166A (ja) * 1998-12-17 2002-10-02 ユニヴァーシティー・オブ・サウス・フロリダ 非貫通性エレクトロポレーション装置および方法
JP2004245811A (ja) * 2003-02-14 2004-09-02 Nasuko Biosystems:Kk 高電圧ゲージ場における低エネルギーニュートリノの発生方法及び装置の開発
JP2006314559A (ja) * 2005-05-12 2006-11-24 Olympus Medical Systems Corp 超音波診断用カプセル
JP2010512535A (ja) * 2006-12-12 2010-04-22 コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ 細胞分析方法及び装置
JP2013085813A (ja) * 2011-10-20 2013-05-13 Daicel Corp 注射器
JP2013198637A (ja) * 2012-03-26 2013-10-03 Toshiyuki Moriizumi エレクロトポレーター用電源

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002532166A (ja) * 1998-12-17 2002-10-02 ユニヴァーシティー・オブ・サウス・フロリダ 非貫通性エレクトロポレーション装置および方法
JP2004245811A (ja) * 2003-02-14 2004-09-02 Nasuko Biosystems:Kk 高電圧ゲージ場における低エネルギーニュートリノの発生方法及び装置の開発
JP2006314559A (ja) * 2005-05-12 2006-11-24 Olympus Medical Systems Corp 超音波診断用カプセル
JP2010512535A (ja) * 2006-12-12 2010-04-22 コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ 細胞分析方法及び装置
JP2013085813A (ja) * 2011-10-20 2013-05-13 Daicel Corp 注射器
JP2013198637A (ja) * 2012-03-26 2013-10-03 Toshiyuki Moriizumi エレクロトポレーター用電源

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2016017045A1 (ja) 2017-04-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2016017045A1 (ja) エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置
EP1472358B1 (en) Non-linear amplitude dielectrophoresis waveform for cell fusion
Kim et al. A multi-channel electroporation microchip for gene transfection in mammalian cells
CN109679844A (zh) 一种流式电穿孔装置
Shi et al. Reconstruction of the mouse inflammasome system in HEK293T cells
US9078862B2 (en) Platelet activation using long electric field pulses
US11390840B2 (en) Systems and methods including porous membrane for low-voltage continuous cell electroporation
US8248050B2 (en) Multi-channel low voltage micro-electric-field generator
JP5822247B1 (ja) エレクトロポレーター用電気パルス発生器及び前記電気パルス発生器を備えたエレクトロポレーター装置
JP2013198637A (ja) エレクロトポレーター用電源
JP2004147517A (ja) 遺伝子導入装置
JP6117482B2 (ja) 選定分子導入装置
JPWO2019244895A1 (ja) 形質転換細胞の製造方法
Marjanovič et al. An experimental system for controlled exposure of biological samples to electrostatic discharges
CN101168744B (zh) 一种在体基因转导装置
CN208250334U (zh) 一种流式电穿孔装置
CN113260697B (zh) 电穿孔装置以及外来物质导入细胞的制造方法
JP2013255475A (ja) 標的細胞への選定分子の導入方法およびそれに用いる選定分子導入装置
Kurita et al. Fundamental study on a gene transfection methodology for mammalian cells using water-in-oil droplet deformation in a DC electric field
CN116614020A (zh) 一种基于反激式电路的便携式电转设备及电转方法
JP7176770B2 (ja) 細胞への物質導入装置、および細胞への物質導入方法
CN116865589A (zh) 一种基于电感升压式电路的便携式电转设备及电转方法
Reberšek et al. Generator and setup for emulating exposures of biological samples to lightning strokes
CN1109101C (zh) 处理带有可变方向的电场的物质的方法和装置
Oakley et al. Cell Lysis in SWLA-2 Hybridomas due to 1 kHz AC Electric Fields

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150821

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150826

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20150915

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20150929

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5822247

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R154 Certificate of patent or utility model (reissue)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R154