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JP5811039B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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JP5811039B2
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Description

本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
従来、内燃機関のバルブを駆動するカムを切替えるカム切替機構を備える内燃機関が知られている。例えば特許文献1には、複数のカムを有するカムピースに形成された溝に溝係合部材を係合させることで、カムピースをカムシャフトの軸線方向にカムシャフトに対して移動させるカム切替機構が開示されている。
また従来、クランクシャフトに対するカムシャフトの位相を変更することで、バルブタイミングを変更可能なバルブタイミング可変機構が知られている。このようなバルブタイミング可変機構として、例えば特許文献2および特許文献3には、クランクシャフトに対するカムシャフトの位相を最遅角位相から最進角位相までの間の所定の位相(以下、中間位相と称する)にロックすることが可能なバルブタイミング可変機構が開示されている。このバルブタイミング可変機構によれば、中間位相として内燃機関の始動に適した位相を設定し、機関停止時にクランクシャフトに対するカムシャフトの位相を中間位相にロックすることで、次の機関始動時における内燃機関の始動性を向上させることができる。
特開2005−42717号公報 特開2011−52563号公報 特開2011−252422号公報
ところで、カム切替機構とバルブタイミング可変機構とを備える内燃機関において、例えばイレギュラーな時期に機関停止された場合、機関停止時にカムシャフトの位相を中間位相にロックすることができなくなるおそれがある。その結果、カムシャフトの位相が中間位相よりも遅角した状態で機関始動されるおそれがある。このような場合、機関始動時にカムシャフトの位相を中間位相に早期に戻すことが、内燃機関の始動性を向上させる点で好ましい。しかしながら、従来、このようなカムシャフトの位相を中間位相に早期に戻すための技術がなかったため、内燃機関の始動性を向上させることは困難であった。
上記問題に鑑みて、本発明は、内燃機関の始動性を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
本発明に係る内燃機関の制御装置は、クランクシャフトに対するカムシャフトの位相を最遅角位相から最進角位相までの間の所定の位相である中間位相にロックすることが可能であるとともに、機関停止時に前記カムシャフトの位相が前記中間位相よりも遅角した状態の場合には次の機関始動時に前記カムシャフトに作用する負トルクを利用して前記カムシャフトを進角させることが可能なバルブタイミング可変機構と、バルブを駆動するカムを少なくとも第1カムと前記第1カムよりも作用角の大きい第2カムとの間で切替えることが可能なカム切替機構と、を有する内燃機関の前記バルブタイミング可変機構および前記カム切替機構を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記機関停止時に前記カムシャフトの位相が前記中間位相よりも遅角した状態の場合には、次の前記機関始動時に、前記第2カムが前記バルブを駆動するように前記カム切替機構を制御し、前記カムシャフトの位相が前記中間位相になった場合に前記第1カムが前記バルブを駆動するように前記カム切替機構を制御する。
本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、機関停止時にカムシャフトの位相が中間位相よりも遅角した状態の場合には、次の機関始動時に第2カムによってバルブを駆動することができる。第2カムの作用角は第1カムの作用角よりも大きいことから、第2カムがバルブを駆動する場合の方が第1カムがバルブを駆動する場合よりも、カムシャフトを進角させる力は大きい。したがって、本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、カムシャフトの位相が中間位相よりも遅角した状態で機関停止した場合でも、次の機関始動時に、早期にカムシャフトの位相を中間位相に戻すことができる。それにより、内燃機関の始動性を向上させることができる。またカムシャフトの位相が中間位相に戻った場合には、第1カムでバルブを駆動することができる。それにより、カムシャフトの位相が中間位相に戻った後においても作用角の大きい第2カムでバルブを駆動し続ける場合に比較して、機関始動時の燃焼に必要な燃焼室の圧力を容易に高めることができる。その結果、内燃機関の始動性を向上させることができる。
上記構成において、前記カム切替機構は、外周面に溝が形成された溝形成部と前記第1カムと前記第2カムとを備えるとともに前記カムシャフトに対して前記軸線方向に移動可能かつ前記カムシャフトと一体となって回転可能に前記カムシャフトに配置されたカムピースと、前記溝に係合可能な溝係合部材と、前記制御部によって制御されることで前記溝係合部材を駆動する駆動装置と、を備え、前記溝は、前記溝係合部材が前記溝に係合した状態で前記カムシャフトが回転することで前記カムピースが1回転するまでの間に、前記バルブを駆動する前記カムが前記第2カムから前記第1カムへ切替わるような溝形状を有していてもよい。
この構成によれば、溝係合部材が溝に係合した状態でカシャフトが回転することでカムピースが1回転するまでの間に、バルブを駆動するカムを第2カムから第1カムに切替えることができる。それにより、バルブが1回リフトする間にカムを第2カムから第1カムに切替えることができる。したがって、カムシャフトの位置が中間位相に戻ったときにバルブを駆動するカムを第2カムから第1カムに切替えることが容易にできる。
本発明によれば、内燃機関の始動性を向上させることができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
図1は実施例1に係る制御装置が適用される内燃機関を示す模式図である。 図2(a)および図2(b)は、保持機構を説明するための模式的断面図である。 図3(a)は溝の詳細を説明するための模式図である。図3(b)〜図3(d)は溝係合部材の溝への係合態様を説明するための模式図である。 図4はバルブタイミング可変機構の詳細を説明するための模式図である。 図5(a)はバルブタイミング可変機構の模式的断面図である。図5(b)はクランクシャフトに対するカムシャフトの位相が最遅角位相になった状態を示す模式的断面図である。 図6(a)はカムシャフトに作用するトルクを説明するための模式図である。図6(b)〜図6(d)はロータの進角側への移動の様子を示す模式的断面図である。 図7(a)は、カムシャフトの位相が最遅角位相から中間位相に戻るまでの間におけるカムシャフトの位相の変化を示す模式図である。図7(b)は、ピンが第1段目〜第3段目に係合する場合のピンの突出時期を説明するための模式図である。図7(c)はピンが第4段目に係合する場合のピンの突出時期を説明するための模式図である。 図8は、カムシャフトの位相が中間位相よりも遅角した状態で機関停止した場合において制御装置がカム切替機構およびバルブタイミング可変機構を制御する際に実行するフローチャートの一例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明の実施例1に係る内燃機関5の制御装置100(以下、制御装置100と略称する)について説明する。まず、制御装置100が適用される内燃機関5の全体構成について説明し、次いで制御装置100の詳細について説明する。図1は内燃機関5を示す模式図である。内燃機関5は車両に搭載されている。内燃機関5の種類は特に限定されるものではなく、燃料としてガソリンを用いるガソリンエンジン、燃料として軽油を用いるディーゼルエンジン等、種々の内燃機関を用いることができる。本実施例に係る内燃機関5は、一例としてディーゼルエンジンである。
内燃機関5は、クランクシャフト10と、バルブ20と、ロッカーアーム21と、バルブスプリング22と、カムシャフト30とを備えている。クランクシャフト10は、内燃機関5のシリンダブロックおよびシリンダヘッド(以下、内燃機関本体と称する場合がある)に形成された気筒に配置されたピストンに、コンロッドを介して接続されており、ピストンの往復運動に伴って回転する。これ以降、クランクシャフト10の回転中心軸線をクランク軸線11と称する。
バルブ20は、内燃機関本体の気筒に形成された吸気ポートを開閉する吸気バルブ、または排気ポートを開閉する排気バルブである。本実施例に係る内燃機関本体は、一気筒当たり2つの吸気ポートおよび2つの排気ポートを有している。そのため内燃機関本体は、一気筒当たり2つの吸気バルブおよび排気バルブを有している。本実施例においては、バルブ20として吸気バルブを用いる。具体的には図1に記載されている2つのバルブ20は、同じ気筒に配置された吸気バルブである。なお、バルブ20の種類は吸気バルブに限定されるものではなく、排気バルブであってもよい。バルブ20は、カム(後述する第1カム64または第2カム65)によって駆動されて、吸気ポートを開閉する。
ロッカーアーム21は、カムの動力をバルブ20に伝達するカム動力伝達部材としての機能を有している。このように本実施例に係るカムによるバルブ20の駆動方式は、ロッカーアーム式の駆動方式であるが、カムによるバルブ20の駆動方式はこれに限定されるものではない。例えばカムによるバルブ20の駆動方式として、カム動力伝達部材としてバルブリフタを用いる直動式の駆動方式を採用することもできる。バルブスプリング22は、バルブ20をロッカーアーム21の方向へ付勢している。つまりバルブスプリング22は、バルブ20を閉弁する方向へ付勢している。カムはバルブスプリング22の付勢力に抗するように、ロッカーアーム21を介してバルブ20をリフトさせる。バルブ20がリフトすることで、吸気ポートは開になる。
カムシャフト30は、バルブ20を駆動するカムを回転させるシャフトである。これ以降、カムシャフト30の回転中心軸線を軸線31と称する。本実施例に係るカムシャフト30の軸線31は、クランク軸線11と同じ方向に延びている。
また内燃機関5は、バルブタイミング可変機構40と、カム切替機構60と、各種センサ(クランクポジションセンサ90およびカムポジションセンサ91)と、制御装置100とを備えている。バルブタイミング可変機構40は、バルブ20のバルブタイミングを変更することが可能な機構である。具体的には本実施例に係るバルブタイミング可変機構40は、クランクシャフト10に対するカムシャフト30の位相を変更することでバルブ20のバルブタイミングを変更することが可能な機構である。バルブタイミング可変機構40の詳細は図4において後述する。
カム切替機構60は、バルブ20を駆動するカムの種類を切替えることが可能な機構である。カム切替機構60の具体的な構成はカムの種類を切替可能なものであれば特に限定されるものではないが、本実施例に係るカム切替機構60は、一例として、カムピース61と、溝係合部材62と、駆動装置63とを備えている。
カムピース61は、カムプロフィールの互いに異なる複数のカムと、外周面に溝66が形成された溝形成部67とを有している。カムピース61は、カムプロフィールの互いに異なる複数のカムとして、第1カム64および第2カム65を有している。第2カム65は、第1カム64よりも作用角が大きなカムプロフィールを有している。また本実施例において、第1カム64および第2カム65は、各バルブ20に対応するように、2組設けられている。その結果、図1に示すカムピース61は、バルブタイミング可変機構40が配置されている側(左側)から順に、第1カム64、第2カム65、溝形成部67、第1カム64および第2カム65を備えている。図1において溝形成部67を挟んで左側の第1カム64および第2カム65が左側のバルブ20に対応したカムであり、右側の第1カム64および第2カム65が右側のバルブ20に対応したカムである。
カムピース61は、カムシャフト30の軸線31の方向(以下、軸線方向と称する場合がある)にカムシャフト30に対して移動可能に、カムシャフト30に配置されている。カムピース61が軸線方向にカムシャフト30に対して移動することで、バルブ20を駆動するカムを第1カム64と第2カム65との間で切替えることができる。
またカムピース61は、カムシャフト30と一体となって回転可能にカムシャフト30に配置されている。本実施例に係るカムシャフト30の少なくともカムピース61が摺動する部分には、スプライン32が形成されており、カムピース61のカムシャフト30の内周面にもスプライン32に対応したスプラインが形成されている。この構成によって、カムシャフト30が回転したときにカムピース61はカムシャフト30と一体となって回転することができるとともに、カムピース61はカム切替え時においてカムシャフト30の軸線方向にカムシャフト30に対して移動することができる。なおカムピース61のカムシャフト30に対する軸線方向の移動を許容しつつカムピース61のカムシャフト30に対する相対的な回転を抑止してカムピース61をカムシャフト30と一体回転させる機構は、本実施例のようなスプライン32を用いた機構に限定されるものではない。
またカム切替機構60は、バルブ20を駆動するカムの切替え終了後においてカムピース61がカムシャフト30に対して軸線方向に移動することが抑止されるようにカムピース61のカムシャフト30に対する位置を保持する保持機構70を有している。図2(a)および図2(b)は、保持機構70を説明するための模式的断面図である。具体的には図2(a)および図2(b)は、溝形成部67とカムシャフト30とが接触する部分(図1の軸線31より上側の部分)を拡大して模式的に断面図示している。図2(a)においてバルブ20を駆動するカムは第1カム64であり、図2(b)においてバルブ20を駆動するカムは第2カム65である。
保持機構70は、溝形成部67のカムシャフト30に対向する面に形成された第1凹部71および第2凹部72と、これらの凹部に係合する係合部材73と、係合部材73を付勢する付勢部材74とを備えている。付勢部材74は、カムシャフト30に設けられた穴33に配置されている。係合部材73は、付勢部材74に接続し、付勢部材74によってカムシャフト30の軸線方向に垂直な方向(図2(a)では上方)に付勢させられている。穴33は係合部材73の径よりも大きく設定されている。
本実施例においては付勢部材74の一例として、ばねを用いる。但し付勢部材74の構成は、係合部材73を付勢可能なものであれば、ばねに限定されるものではない。また本実施例においては係合部材73の一例として、球を用いる。但し係合部材73の構成は、第1凹部71および第2凹部72に係合可能なものであれば、球に限定されるものではない。
第1凹部71は、第2凹部72よりも左側に位置している。第1凹部71、第2凹部72および穴33の位置は、バルブ20を駆動するカムが第1カム64の場合に係合部材73が第1凹部71に係合し、バルブ20を駆動するカムが第2カム65の場合に係合部材73が第2凹部72に係合するように設定されている。
図2(a)を参照して、バルブ20を駆動するカムが第1カム64に切替わった場合、付勢部材74によって付勢された係合部材73は第1凹部71に係合する。それにより、バルブ20を駆動するカムを第1カム64に切替えた後におけるカムピース61のカムシャフト30に対する軸線方向の移動が抑制されている。
バルブ20を駆動するカムが第1カム64から第2カム65に切替わる場合、カムピース61はカムシャフト30に対して左側に移動する。カムピース61の移動によって、係合部材73は穴33に入り込むことで第1凹部71から離脱し、次いで図2(b)に示すように第2凹部72に係合する。それにより、バルブ20を駆動するカムを第2カム65に切替えた後におけるカムピース61のカムシャフト30に対する軸線方向の移動が抑制されている。
なお、バルブ20を駆動するカムが第2カム65から第1カム64へ切替わる場合には、カムピース61はカムシャフト30に対して右側に移動する。この場合、係合部材73は上述した場合とは逆の行程を辿る。
以上のようにして本実施例に係る保持機構70は、バルブ20を駆動するカムの切替え終了後におけるカムピース61のカムシャフト30に対する位置を保持している。なお、保持機構70の構成は、カムの切替え終了後におけるカムピース61のカムシャフト30に対する軸線方向の移動を抑制してカムピース61のカムシャフト30に対する位置を保持可能なものであれば、上述した構成に限定されるものではない。
図1を参照して、溝係合部材62は溝66に係合可能な部材である。溝係合部材62は、駆動装置63によって駆動されることで、駆動装置63から突出して溝66に係合する。溝係合部材62の具体的な構成は、溝66に係合可能な構成であれば特に限定されるものではない。本実施例においては溝係合部材62として、棒形状のピンを用いる。溝形成部67の溝66は、カムピース61が溝係合部材62からの力を受けることで軸線方向に移動し、その結果、バルブ20を駆動するカムが第1カム64と第2カム65との間で切替わるように構成されている。溝66の詳細は後述する。
駆動装置63は、溝係合部材62を駆動する装置である。駆動装置63は、溝係合部材62が溝66に係合した場合に駆動装置63がカムシャフト30の軸線方向に移動しないように、内燃機関5の所定部位によって支持されている。駆動装置63を支持する内燃機関5の所定部位は、特に限定されるものではなく、シリンダヘッド、シリンダヘッドカバー等を用いることができる。本実施例に係る駆動装置63は、内燃機関5のシリンダヘッドに固定される形で内燃機関5によって支持されているものとする。
駆動装置63は、溝係合部材62が駆動装置63に対して出没するように溝係合部材62を駆動する。駆動装置63の具体的構成は、特に限定されるものではないが、本実施例においては、一例として電動式のアクチュエータを用いる。電動式のアクチュエータの一例として、ソレノイドアクチュエータを用いる。ソレノイドアクチュエータは、制御装置100からの指示を受けて作動し、溝係合部材62をソレノイドアクチュエータに対して出没させる。
各種センサは、制御装置100の動作に必要な情報を検出するセンサである。図1においては各種センサの一例として、クランクポジションセンサ90とカムポジションセンサ91とが図示されている。クランクポジションセンサ90は、クランクシャフト10の位置を検出し、検出結果を制御装置100に伝える。カムポジションセンサ91は、カムシャフト30の位置を検出し、検出結果を制御装置100に伝える。制御装置100は、カムポジションセンサ91の検出結果およびクランクポジションセンサ90の検出結果に基づいてカムシャフト30のクランクシャフト10に対する相対位置を取得する。それにより制御装置100は、カムシャフト30に形成された溝66の位置を把握することができる。
制御装置100は、バルブタイミング可変機構40およびカム切替機構60を制御する制御部と、制御部の動作に必要な情報を記憶する記憶部とを備えている。制御装置100として、電子制御装置(Electronic Control Unit)を用いることができる。本実施例においては、制御装置100の一例として、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102およびRAM(Random Access Memory)103を備える電子制御装置を用いる。制御部の機能はCPU101によって実現することができる。記憶部の機能はROM102およびRAM103によって実現することができる。
続いて溝66の詳細について説明する。図3(a)は溝66の詳細を説明するための模式図である。具体的には図3(a)は、溝66を溝形成部67の周方向に展開した状態を模式的に図示している。図3(a)においてカムピース61およびカムシャフト30の回転方向は上方向である。溝66は、溝係合部材62が溝66に係合することでバルブ20を駆動するカムが第1カム64と第2カム65との間で切替わるような構造を有している。具体的には本実施例に係る溝66は、溝係合部材62が溝66に係合した状態でカムシャフト30が回転することでカムピース61が1回転するまでの間に、バルブ20を駆動するカムが第1カム64と第2カム65との間で切替わるような溝形状を有している。
より具体的には溝66は、カムシャフト30の軸線方向に対して垂直な溝方向を有する第1垂直部80、第2垂直部82および第3垂直部84を有している。また溝66は、カムシャフト30の軸線方向に対して傾斜した溝方向を有する第1傾斜部81および第2傾斜部83を有している。第1垂直部80、第1傾斜部81、第2垂直部82、第2傾斜部83および第3垂直部84は、この順に接続している。
バルブ20を駆動するカムが第1カム64から第2カム65に切替わる場合、溝係合部材62は、第1垂直部80、第1傾斜部81および第2垂直部82に順に係合する。バルブ20を駆動するカムが第2カム65から第1カム64に切替わる場合、溝係合部材62は、第2垂直部82、第2傾斜部83および第3垂直部84に順に係合する。
図3(b)〜図3(d)は溝係合部材62の溝66への係合態様を説明するための模式図である。図3(b)〜図3(d)の上段には、溝係合部材62が溝66に係合した様子が模式的に図示されており、下段にはバルブ20を駆動するカムが切替わる様子が模式的に図示されている。上段の図においてカムピース61およびカムシャフト30の回転方向は上方向である。
図3(b)に示すように、バルブ20を駆動するカムを第1カム64から第2カム65に切替える場合、制御装置100の制御部は、溝係合部材62が駆動装置63から突出して第1垂直部80のいずれかの箇所に係合するように駆動装置63を制御する。第1垂直部80に係合した溝係合部材62は、カムシャフト30の回転に伴って溝66に対して相対的に移動する。
図3(c)に示すように、溝係合部材62が第1傾斜部81に係合した場合、カムピース61は第1傾斜部81が溝係合部材62から受けるカムシャフト30の軸線方向の力によって左側に移動する。このカムピース61のカムシャフト30の軸線方向の移動は、図3(d)に示すように溝係合部材62が第1傾斜部81への係合を終了して第2垂直部82への係合を開始するまで継続される。溝係合部材62が第2垂直部82に係合した場合、制御部は溝係合部材62が駆動装置63に没入するように駆動装置63を制御する。それにより、溝係合部材62の溝66への係合は終了する。以上のように本実施例に係る溝66は、溝係合部材62が溝66に係合した状態でカムシャフト30が回転することでカムピース61が1回転するまでの間に、バルブ20を駆動するカムが第1カム64から第2カム65に切替わるような溝形状を有している。
一方、バルブ20を駆動するカムを第2カム65から第1カム64へ切替える場合(図示は省略する)、制御部は、溝係合部材62が駆動装置63から突出して第2垂直部82のいずれかの箇所に係合するように、駆動装置63を制御する。第2垂直部82に係合した溝係合部材62は、カムシャフト30の回転に伴って溝66に対して相対的に移動する。溝係合部材62が第2傾斜部83に係合した場合、カムピース61は第2傾斜部83が溝係合部材62から受けるカムシャフト30の軸線方向の力によって右側に移動する。このカムピース61のカムシャフト30の軸線方向の移動は、溝係合部材62が第2傾斜部83への係合を終了して第3垂直部84への係合を開始するまで継続される。溝係合部材62が第3垂直部84に係合した場合、制御部は、溝係合部材62を駆動装置63に没入させることで溝係合部材62の溝66への係合を終了させる。以上のように本実施例に係る溝66は、溝係合部材62が溝66に係合した状態でカムシャフト30が回転することでカムピース61が1回転するまでの間に、バルブ20を駆動するカムが第2カム65から第1カム64に切替わるような溝形状を有している。
なお溝係合部材62が溝66に係合することでバルブ20を駆動するカムを切替えることが可能な構造であれば、溝66は、図3(a)の構造に限定されるものではない。また本実施例に係るカム切替機構60は、カムピース61の溝66に溝係合部材62を係合させることで、カムピース61をカムシャフト30の軸線方向にカムシャフト30に対して移動させてカムの種類を切替えるカム切替機構であるが、カム切替機構60の構成は、バルブ20を駆動するカムを少なくとも第1カム64と第2カム65との間で切替えることが可能なものであれば、本実施例で説明した構成に限定されるものではない。
続いてバルブタイミング可変機構40の詳細について説明する。図4は、バルブタイミング可変機構40の詳細を説明するための模式図である。具体的には図4は、バルブタイミング可変機構40の内部構造を模式的に示している。本実施例に係るバルブタイミング可変機構40は、クランクシャフト10に対するカムシャフト30の位相を最遅角位相(最も遅角した位相)から最進角位相(最も進角した位相)までの間の所定の位相(以下、中間位相と称する)にロックすることが可能であるとともに、機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態の場合には、次の機関始動時にカムシャフト30に作用する負トルクを利用してカムシャフト30を進角させることが可能な機構である。なお本実施例において、機関停止時とは、内燃機関5の運転が停止したとき、具体的には内燃機関5のクランクシャフト10の回転が停止した時をいう。また機関始動時とは、クランキングが開始した時をいう。但し機関停止時および機関始動時の定義は、これに限定されるものではない。
上述したような機構として、本実施例に係るバルブタイミング可変機構40は、クランクシャフト10に連結されたスプロケット41と、スプロケット41と一体となって回転するハウジング42と、ハウジング42の内部に配置され、カムシャフト30に連結されたロータ43と、ロータ43に形成された挿通穴を移動するピン44とを備えている。
スプロケット41は、タイミングチェーンを介してクランクシャフト10に連結されている。クランクシャフト10が回転することで、スプロケット41も回転する。なお図4において、スプロケット41の回転方向は時計回りの方向である。
ハウジング42は、ロータ43を収容する部材である。ハウジング42は、スプロケット41の内部に配置されている。具体的にはハウジング42は、スプロケット41が回転した場合にスプロケット41と一体となって回転するように、スプロケット41の内部に配置されている。
ロータ43は、円筒部45と、円筒部45から外側に突出したベーン46とを有している。円筒部45の中心にはカムシャフト30が、ロータ43が回転した場合にカムシャフト30もロータ43と一体となって回転するように挿通されている。なお図4において、カムシャフト30の軸線方向は紙面手前側から奥側に向かう方向である。
本実施例において、ロータ43は3つのベーン46を有している。またハウジング42は、回転中心の側に突出した部分(以下、隔壁47と称する)を3つ有している。各々のベーン46は、隣接する隔壁47の間に配置されている。ベーン46と隔壁47との間には、第1圧力室48と第2圧力室49とが設けられている。内燃機関5の機関運転時において、第1圧力室48および第2圧力室49には作動油が供給される。なお第1圧力室48および第2圧力室49への作動油の供給の制御は、制御装置100の制御部が油圧制御装置(図示せず)を制御することで実行される。
ベーン46が第1圧力室48の圧力と第2圧力室49の圧力との差圧を受けることで、ロータ43はハウジング42に対して相対的に回転する。ロータ43が回転することで、ロータ43に連結されたカムシャフト30は、スプロケット41に対して相対的に回転する。その結果、カムシャフト30の位相を進角または遅角させることができ、バルブ20を駆動するカムの位相も進角または遅角させることができる。このようにしてバルブタイミング可変機構40は、バルブタイミングを可変している。
ピン44は、ロータ43の3つのベーン46のうちいずれか一つのベーン46に設けられた挿通穴に挿通されている。ピン44の動作は制御装置100が制御する。
図5(a)は、バルブタイミング可変機構40の模式的断面図である。具体的には図5(a)は、図4のバルブタイミング可変機構40をX−X線に沿う面で切断して回転中心の側から見た断面を模式的に示したものである。図5(a)において左側が遅角側に相当し、右側が進角側に相当する。ピン44は、制御装置100の制御部によって制御されることで、ベーン46から出没する。なお制御部によるピン44の具体的な制御手法は特に限定されるものではなく、例えば制御部は油圧駆動装置を制御することでピン44を制御してもよく、電磁駆動装置を制御することでピン44を制御してもよく、その他の手法によってピン44を制御してもよい。
本実施例においてハウジング42には、複数の段差を有するラチェット階段50が設けられている。ラチェット階段50の段差の個数は複数であれば特に限定されるものではないが、本実施例においては4つである。具体的には本実施例に係るラチェット階段50は、第1段目51、第2段目52、第3段目53および第4段目54の4つの段差を有している。
第4段目54の部分は、ピン44の径よりも所定のクリアランス分だけ広い径の穴になっている。その結果、ピン44がベーン46から突出して第4段目54に係合した場合、ロータ43のハウジング42に対する回転が抑制されるように構成されている。つまりピン44が第4段目54に係合した場合に、クランクシャフト10に対するカムシャフト30の位相はロックされる。ラチェット階段50は、第4段目54の位置が前述した最遅角位相から最進角位相までの間の所定の位相である中間位相になるように設定されている。すなわち、本実施例に係るラチェット階段50は、ピン44が第4段目54に係合した場合に、クランクシャフト10に対するカムシャフト30の位相(以下、カムシャフト30の位相と略称する場合がある)が中間位相になるように設定されている。
制御装置100の制御部は、通常は、内燃機関5の機関停止時に、ピン44を第4段目54に係合させる。それにより、機関停止時において、カムシャフト30の位相は中間位相にロックされた状態になる。その結果、カムシャフト30の位相が中間位相にロックされた状態で機関始動させることができる。制御部は、機関始動後においてバルブタイミングを変更する場合には、ピン44をベーン46に没入させることで、ピン44のラチェット階段50への係合を解除する。そして制御部は、第1圧力室48および第2圧力室49の圧力を制御することでロータ43をハウジング42に対して回転させる。それにより、カムシャフト30はクランクシャフト10に対して回転し、その結果、バルブタイミングが変更される。
なお中間位相の具体的な値は、特に限定されるものではない。中間位相として、例えばカムシャフト30の位相が中間位相になった状態で内燃機関5が機関始動した場合に、内燃機関5の始動性が良好となるような位相を用いることができる。本実施例に係る中間位相は、このような内燃機関5の始動性が良好となる位相に設定されているものとする。
ここで、仮に機関停止時期が適切でない場合には、機関停止時においてカムシャフト30の位相を中間位相にロックすることが困難になるおそれがある。例えば、内燃機関5がストールした場合のようにイレギュラーな状態で機関停止した場合、第1圧力室48および第2圧力室49の圧力差を制御してベーン46を中間位相の位置まで移動させてピン44を第4段目54に係合させることが困難になってしまう。その結果、カムシャフト30の位相を中間位相にロックすることが困難になってしまう。
図5(b)は、クランクシャフト10に対するカムシャフト30の位相が最遅角位相になった状態を示す模式的断面図である。例えば、機関停止時においてカムシャフト30の位相を中間位相にロックすることができなかった場合に、ロータ43が遅角側に回転した結果、機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角側の位相になることが考えられる。具体的には図5(b)に示すように、機関停止時においてカムシャフト30の位相が最遅角位相になることが考えられる。このような場合に次の機関始動時にカムシャフト30の位相を中間位相にまで早期に戻すために、本実施例に係る制御部は以下に説明するようなカム切替機構60の制御を行う。
まず本実施例に係る制御部は、通常の場合、すなわちカムシャフト30の位相が中間位相にロックされた状態で機関停止した場合には、次の機関始動時において、第1カム64がバルブ20を駆動するようにカム切替機構60を制御する。これに対して、機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態の場合には、制御部は、次の機関始動時に第2カム65がバルブ20を駆動するようにカム切替機構60を制御する。そして、制御部は、カムシャフト30の位相が中間位相に戻った場合には、第1カム64がバルブ20を駆動するようにカム切替機構60を制御する。
また制御部は、カムシャフト30の位相が中間位相に戻るまでの間、以下に説明するようなバルブタイミング可変機構40の制御を行う。続いて、このカムシャフト30の位相が中間位相に戻るまでの間における制御部によるバルブタイミング可変機構40の制御について説明する。まず、機関運転時にカムシャフト30に作用するトルクについて説明する。図6(a)は、カムシャフト30に作用するトルクを説明するための模式図である。図6(a)の縦軸はロッカーアーム21からカムシャフト30に作用するトルクを示し、横軸は時間を示している。ここでバルブ20からの力によってカムには正のトルクと負のトルクとが交互に作用する。その結果、カムシャフト30にも正のトルクと負のトルクとが交互に作用する。
正のトルク(以下、正トルクと称する場合がある)とは、カムおよびカムシャフト30の回転方向に対して逆方向に作用するトルクであり、別の観点で説明すると、カムおよびカムシャフト30の回転を阻害する方向に作用するトルクである。具体的には正トルクは、バルブ20がリフト量がゼロの状態(閉弁状態)からリフト量が最大の状態に向かってリフトしている間(すなわちバルブ20の開弁動作時)にカムおよびカムシャフト30に作用するトルクである。また負のトルク(以下、負トルクと称する場合がある)とは、カムおよびカムシャフト30の回転方向と同方向に作用するトルクであり、別の観点で説明するとカムおよびカムシャフト30の回転を補助する方向に作用するトルクである。具体的には負トルクは、バルブ20がリフト量が最大の状態からリフト量がゼロの状態に向かって移動している間(すなわちバルブ20の閉弁動作時)にカムおよびカムシャフト30に作用するトルクである。
このようにバルブ20の開弁〜閉弁動作中において、カムシャフト30には、正トルクと負トルクとが交互に作用する。以下、この交互に作用する正トルクおよび負トルクを、交番トルクと総称する場合がある。機関始動時においてカムシャフト30に交番トルクが作用した場合、ロータ43は遅角側および進角側に揺動する。具体的にはカムシャフト30に正トルクが作用した場合、ロータ43は遅角側に移動し、負トルクが作用した場合、ロータ43は進角側に移動する。
制御装置100の制御部は、機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態の場合には、機関始動時において、この負トルクを利用してカムシャフト30を進角側に移動させる。図6(b)〜図6(d)は、ロータ43の進角側への移動の様子を示す模式的断面図である。図6(b)に示すように、機関始動時においてロータ43が最遅角位相の位置になっているとする。この場合、カムシャフト30も最遅角位相になっている。カムシャフト30に負トルクが作用した場合、ロータ43は進角側に移動する。その結果、図6(c)を参照して、ロータ43の位置がピン44が第1段目51に係合可能な位置になった場合、制御部はピン44が第1段目51に係合するようにピン44を突出させる。この状態でカムシャフト30に正トルクが作用しても、ロータ43が最遅角位相の位置に戻ることは抑制されている。すなわち、カムシャフト30が最遅角位相に戻ることは抑制されている。
次いでカムシャフト30に負トルクが作用してロータ43が進角側に移動し、その結果、図6(d)に示すようにピン44が第2段目52に係合可能な位置になった場合、制御部はさらにピン44を突出させることで、ピン44を第2段目52に係合させる。この状態でカムシャフト30に正トルクが作用しても、ロータ43が第1段目51の位置に移動することは抑制されている。すなわち、カムシャフト30が第1段目51の位置に相当する位相に戻ることは抑制されている。制御部は、ピン44が第4段目54に係合するまで、この動作を繰り返す。
以上のように、本実施例に係る制御装置100の制御部は、機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態の場合には、次の機関始動時において、バルブ20を駆動するカムを第2カム65に切替えるとともに、カムシャフト30に作用する負トルクを利用しつつピン44をラチェット階段50の各段差に係合させることで、カムシャフト30を進角させてカムシャフト30の位相を中間位相にロックしている。
図7(a)は、カムシャフト30の位相が最遅角位相から中間位相に戻るまでの間におけるカムシャフト30の位相の変化を示す模式図である。図7(a)の縦軸はカムシャフト30のクランクシャフト10に対する位相を示し、横軸は時間を示している。カムシャフト30に交番トルクが作用することで、カムシャフト30の位相は進角と遅角とを交互に繰り返すが、ピン44がラチェット階段50の第1段目51〜第4段目54に順に係合することで、カムシャフト30の位相は段階的に進角していき、最終的に中間位相になる。
具体的には最遅角位相の状態にあるカムシャフト30は、負トルクを受けて進角する。その結果、ピン44は第1段目51に係合可能な位置に移動する。その後、カムシャフト30は正トルクを受けて遅角するが、ピン44が第1段目51に係合可能な状態のときにピン44が突出して第1段目51に係合することで、カムシャフト30の位相が第1段目51に相当する位相よりも遅角することは抑制される。
次いで負トルクを受けたカムシャフト30が進角し、その結果、ピン44は第2段目52に係合可能な位置に移動する。その後、カムシャフト30は正トルクを受けて遅角するが、ピン44が第2段目52に係合可能な状態のときにピン44がさらに突出して第2段目52に係合することで、カムシャフト30の位相が第2段目52の位相よりも遅角することは抑制される。このような動作を繰り返して最終的にピン44が第4段目54に係合した場合に、カムシャフト30の位相は中間位相にロックされる。
本実施例に係るラチェット階段50は、第1段目51〜第3段目53まではクランク角(°CA)でA1の段差に設定され、第4段目54はクランク角(°CA)でA2の段差に設定されている。本実施例においては、A1の一例として7(°CA)を用い、A2の一例として4(°CA)を用いる。但しA1およびA2の具体的な数値は、これに限定されるものではない。
図7(b)は、ピン44が第1段目51〜第3段目53に係合する場合のピン44の突出時期を説明するための模式図である。具体的には図7(b)は、図7(a)のA部分を拡大して示した図である。例えば、カムシャフト30の位相を第1段目51の位相から第2段目52の位相に進角させる場合、制御部は、第2段目52の位相よりも進角した期間(図7(b)において第2段目52よりもオーバーシュートしている期間)においてピン44を突出させて第2段目52に係合させる。カムシャフト30を最遅角位相から第1段目51の位相に進角させる場合および第2段目52の位相から第3段目53の位相に進角させる場合も、制御部は同様の制御を行う。
図7(c)は、ピン44が第4段目54に係合する場合のピン44の突出時期を説明するための模式図である。具体的には図7(c)は、図7(a)のB部分を拡大して示した図である。図5(a)において前述したように、本実施例において第4段目54の径は、ピン44の径よりも所定のクリアランス分だけ広く設定されている。それにより、ピン44が第4段目54に係合するときのカムシャフト30の進角側および遅角側への移動は、このクリアランス分だけの移動に制限されている。そのため、図7(c)に示すように、カムシャフト30の位相を第3段目53の位相から第4段目54の位相に進角させる場合、制御部は、第4段目54の位相よりもクリアランス分だけ進角した期間(オーバーシュートしている期間)においてピン44を突出させて第4段目54に係合させる。
図8は、カムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態で機関停止した場合において制御装置100がカム切替機構60およびバルブタイミング可変機構40を制御する際に実行するフローチャートの一例を示す図である。制御装置100の制御部は図8のフローチャートを所定期間毎に繰り返し実行する。なお、図8のスタート時点においてバルブ20を駆動するカムは第1カム64である。
まず制御部は、機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態であるか否かを判定する(ステップS10)。具体的には制御部は、内燃機関5の機関停止時においてクランクポジションセンサ90およびカムポジションセンサ91の検出結果に基づいてカムシャフト30の位相を取得し、取得した位相が中間位相よりも遅角した位相であるか否かを判定する。但しステップS10の具体的な実行手法は、これに限定されるものではない。
ステップS10において機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態であると判定されなかった場合、制御部はフローチャートの実行を終了する。ステップS10において機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態であると判定された場合、制御部は、次の機関始動時において第2カム65がバルブ20を駆動するようにカム切替機構60を制御する(ステップS20)。
具体的にはステップS20において制御部は、内燃機関5が搭載された車両のキースイッチがONにされることでクランキングが開始された場合(すなわち、機関始動時)に、溝係合部材62が溝66の第1垂直部80、第1傾斜部81および第2垂直部82にかけて係合するように駆動装置63を制御する。それにより、バルブ20を駆動するカムは第1カム64から第2カム65に切替わる。
次いで制御部は、バルブタイミング可変機構40を制御する(ステップS30)。具体的には制御部は、カムシャフト30の位相が中間位相に戻るように、ピン44をラチェット階段50の複数の段差のうち遅角側の段差から進角側の段差にかけて順に係合させる。次いで制御部は、カムシャフト30の位相が中間位相になったか否かを判定する(ステップS40)。ステップS40においてカムシャフト30の位相が中間位相になったと判定されなかった場合、制御部はステップS30を実行する。すなわち、ステップS30は、ステップS40においてカムシャフト30の位相が中間位相になったと判定されるまで実行される。なお、カムシャフト30の位相が中間位相になった場合、ピン44は第4段目54に係合している。
ステップS40においてカムシャフト30の位相が中間位相になったと判定された場合、制御部はバルブ20を駆動するカムが第1カム64に切替わるようにカム切替機構60を制御する(ステップS50)。具体的には制御部は、溝係合部材62が溝66の第2垂直部82、第2傾斜部83および第3垂直部84にかけて係合するように、駆動装置63を制御する。次いで制御部はフローチャートの実行を終了する。
以上説明したように、本実施例に係る制御装置100によれば、機関停止時にカムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態の場合には、次の機関始動時に第2カム65によってバルブ20を駆動することができる。ここで第2カム65の作用角は第1カム64の作用角よりも大きいことから、第2カム65がバルブ20を駆動する場合におけるカムシャフト30に負トルクが作用する時間は、第1カム64がバルブを駆動する場合におけるカムシャフト30に負トルクが作用する時間よりも大きい。すなわち、第2カム65がバルブ20を駆動する場合の方が第1カム64がバルブ20を駆動する場合よりも、カムシャフト30を進角させる力は大きい。したがって、本実施例に係る制御装置100によれば、カムシャフト30の位相が中間位相よりも遅角した状態で機関停止した場合でも、次の機関始動時に、早期にカムシャフト30の位相を中間位相に戻すことができる。それにより、内燃機関5の始動性を向上させることができる。
また制御装置100によれば、カムシャフト30の位相が中間位相に戻った場合にはバルブ20を駆動するカムを第1カム64に切替えることで、第1カム64でバルブ20を駆動することができる。それにより、カムシャフト30の位相が中間位相に戻った後においても作用角の大きい第2カム65でバルブ20を駆動し続ける場合に比較して、機関始動時の燃焼に必要な燃焼室の圧力を容易に高めることができる。それにより、例えば、燃焼室において燃料が燃焼せずにピストン等に付着してしまい、その結果、燃料が燃焼室に多量に溜まってしまうこと(いわゆる、かぶりの発生)を抑制することができる。この点においても、制御装置100によれば、内燃機関5の始動性を向上させることができる。
また本実施例において制御装置100が適用される内燃機関5のカム切替機構60は、外周面に溝66が形成された溝形成部67と第1カム64と第2カム65とを備えるカムピース61と、溝66に係合可能な溝係合部材62と、制御部によって制御されることで溝係合部材62を駆動する駆動装置63とを備えており、溝66は、溝係合部材62が溝66に係合した状態でカムシャフト30が回転することでカムピース61が1回転するまでの間に、バルブ20を駆動するカムが第2カム65から第1カム64へ切替わるような溝形状を有している。それにより、制御装置100によれば、溝係合部材62が溝66に係合した状態でカムシャフト30が回転することでカムピース61が1回転するまでの間に、バルブ20を駆動するカムを第2カム65から第1カム64に切替えることができる。その結果、バルブ20が1回リフトする間にカムを第2カム65から第1カム64に切替えることができる。したがって、カムシャフト30の位置が中間位相に戻ったときにバルブ20を駆動するカムを第2カム65から第1カムに切替えることが容易にできる。但し、内燃機関5は、バルブ20を駆動するカムを切替えることが可能な機構であれば、本実施例のようなカム切替機構60以外のカム切替機構を備えていてもよい。
また本実施例に係るカム切替機構60の駆動装置63は電動式のアクチュエータ(具体的にはソレノイドアクチュエータ)であることから、駆動装置63として、例えば内燃機関5によって駆動されることで回転する油圧ポンプからの油圧によって駆動される油圧アクチュエータを用いる場合に比較して、油圧アクチュエータの動作に必要な油圧を確保することが困難な状態(例えば、内燃機関5の回転数が低回転の場合や作動温度が低温の場合)であっても、溝係合部材62を溝66に係合させることができる。
なお本実施例において、カムピース61は、カムプロフィールの異なるカムとして、第1カム64および第2カム65を有しているが、これ以外のカムをさらに有していてもよい。すなわちカムピース61は、少なくとも第1カム64および第2カム65を有していればよい。
例えばカムピース61が、第1カム64および第2カム65の他に第3カムを有している場合、第2カム65の作用角は第1カム64および第3カムの作用角よりも大きく設定される。またカム切替機構60は、本実施例に係る第1カム64と第2カム65とを切替える構成の他に、第1カム64と第3カムとを切替える構成および第2カム65と第3カムとを切替える構成を備えている。具体的にはカム切替機構60は、溝として、本実施例に係る溝66の他に、第1カム64と第3カムとを切替えるための溝と、第3カムと第2カム65とを切替えるための溝とをさらに有している。またカム切替機構60は、必要であれば、第1カム64と第3カムとを切替えるための溝に係合する溝係合部材およびこれを駆動する駆動装置と、第3カムと第2カム65とを切替えるための溝係合部材およびこれを駆動する駆動装置とを有している。
そして制御部は、例えば図8のステップS50においてバルブ20を駆動するカムを第2カム65から第1カム64に切替えた後に、さらに所定のカム切替条件が満たされた場合には、第1カム64を第3カムに切替える。第1カム64を第3カムに切替えるカム切替条件は、特に限定されるものではなく、例えば内燃機関5の暖機運転が終了したとの条件(例えば内燃機関5の冷媒の温度が所定温度以上となったとの条件)を用いることができる。また制御部は、ステップS10で肯定判定された場合に実行されるステップS20において、バルブ20を駆動するカムを第3カムまたは第1カム64から第2カム65に切替える。
また本実施例に係るバルブタイミング可変機構40は、一つのピン44がラチェット階段50に係合する構成を採用しているが、これに限定されるものではない。例えばバルブタイミング可変機構40は、複数のピン44がラチェット階段50に係合する構成を有していてもよい。この場合、例えばバルブタイミング可変機構40は、図4においてピン44が配置されていない2つのベーン46のうち、いずれか一方のベーン46にさらにピン44を備え、ハウジング42は、各々のピン44に対応したラチェット階段50を備えていればよい。
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
5 内燃機関
10 クランクシャフト
20 バルブ
30 カムシャフト
40 バルブタイミング可変機構
50 ラチェット階段
51 第1段目
52 第2段目
53 第3段目
54 第4段目
60 カム切替機構
61 カムピース
62 溝係合部材
63 駆動装置
64 第1カム
65 第2カム
100 制御装置

Claims (2)

  1. クランクシャフトに対するカムシャフトの位相を最遅角位相から最進角位相までの間の所定の位相である中間位相にロックすることが可能であるとともに、機関停止時に前記カムシャフトの位相が前記中間位相よりも遅角した状態の場合には次の機関始動時に前記カムシャフトに作用する負トルクを利用して前記カムシャフトを進角させることが可能なバルブタイミング可変機構と、バルブを駆動するカムを少なくとも第1カムと前記第1カムよりも作用角の大きい第2カムとの間で切替えることが可能なカム切替機構と、を有する内燃機関の前記バルブタイミング可変機構および前記カム切替機構を制御する制御部を備え、
    前記制御部は、前記機関停止時に前記カムシャフトの位相が前記中間位相よりも遅角した状態の場合には、次の前記機関始動時に、前記第2カムが前記バルブを駆動するように前記カム切替機構を制御し、前記カムシャフトの位相が前記中間位相になった場合に前記第1カムが前記バルブを駆動するように前記カム切替機構を制御する、内燃機関の制御装置。
  2. 前記カム切替機構は、外周面に溝が形成された溝形成部と前記第1カムと前記第2カムとを備えるとともに前記カムシャフトに対して前記軸線方向に移動可能かつ前記カムシャフトと一体となって回転可能に前記カムシャフトに配置されたカムピースと、前記溝に係合可能な溝係合部材と、前記制御部によって制御されることで前記溝係合部材を駆動する駆動装置と、を備え、
    前記溝は、前記溝係合部材が前記溝に係合した状態で前記カムシャフトが回転することで前記カムピースが1回転するまでの間に、前記バルブを駆動する前記カムが前記第2カムから前記第1カムへ切替わるような溝形状を有している請求項1記載の内燃機関の制御装置。
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