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JP5804832B2 - ねじり疲労特性に優れた浸炭用鋼からなる鋼材 - Google Patents

ねじり疲労特性に優れた浸炭用鋼からなる鋼材 Download PDF

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本発明は、例えば自動車や産業機械などに使用されるギヤやシャフトなどの動力伝達部品として用いられる機械構造用鋼からなる鋼材に関し、特にガス浸炭を行って部品を製造した場合にねじり疲労強度に優れた機械構造用鋼からなる鋼材に関する。
自動車の駆動系に使用される部品、特にシャフト類はねじり疲労強度が問題となることが多い。そこで、このねじり疲労強度を向上するために、高周波焼入れ部品がよく用いられる(例えば、特許文献1参照。)。ところで、歯車と一体になったシャフトなどで、形状が非常に複雑な部品は、素材を焼入れ処理する前に切削などをして所要の形状に加工する必要がある。しかし、高周波焼入れ用鋼材はC含有量が0.4〜0.7%程度と高く、被削性に劣るために、このような歯車と一体になったシャフト類などの部品には適用が難しい。そこで、より高い被削性を要求される部品に対しては、高周波焼入れ用鋼材よりC含有量を低くし、C含有量を0.1〜0.27%程度として、被削性の向上した浸炭用鋼とし、この鋼からなる鋼材を用いて所定の形状に切削加工した後、浸炭処理あるいは浸炭浸窒処理して表面硬度を高めるあるいは転動疲労寿命を高めるなどの方法を用いている(例えば、特許文献2参照。)。
さらに、浸炭処理部品は、高周波焼入れ部品よりも高い曲げ疲労強度が得られることも知られており、浸炭処理部品のねじり疲労強度の向上に対してもニーズが高まっている。
特許第2774118公報 特許第3081927号公報
本発明が解決しようとする課題は、自動車や産業機械などに使用されるギヤやシャフトなどの動力伝達用の部品として用いられる機械構造用鋼からなり、被削性の低下を抑えてねじり疲労強度の向上を図った鋼材を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の発明では、質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.30〜0.95%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.20〜2.30%、Cu:0.30%以下、Al:0.008〜0.100%、O:0.0030%以下、N:0.0020〜0.0300%を含有し、Ni:0.09〜0.68%、Mo:1.0%以下の1種または2種を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、下記の(1)式を満足し、被削性を低下させることなくねじり疲労強度に優れた機械構造用鋼からなる鋼材である。
6.0%≧2C+5Si+Cr−3Mn≧2.0%・・・(1)
請求項2の発明では、請求項1の化学成分に加え、さらにTi:0.020〜0.200%、Nb:0.02〜0.20、B:0.0003〜0.0050%のうち少なくとも1種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、下記の(1)式を満足し、被削性を低下させることなくねじり疲労強度に優れた機械構造用鋼からなる鋼材である。
6.0%≧2C+5Si+Cr−3Mn≧2.0%・・・(1)
本発明の鋼の化学成分の限定理由を以下に説明する。なお、%は質量%である。
C:0.15〜0.35 %
Cは、強度を付与するために必要な元素である。Cが0.15%未満では、強度を確保することができない。一方、Cが0.35%を超えると靭性が低下すると共に鋼素材の硬さが上昇して加工性が低下する。そこで、Cは0.15〜0.35 %とし、望ましくは0.45〜0.65%とする。
Si:0.30〜0.95%
Siは、鋼の脱酸に有効な元素であり、鋼に必要な焼入性および強度を付与する。またSiは、一定量以上の添加で浸炭異常層深さを浅くする効果がある。しかし、Siが0.30%未満では、焼戻し軟化抵抗特性が低く、ガス浸炭時の浸炭異常層深さは深くなる。一方、Siが0.95%を超えると素材の硬度が高くなり、加工性が劣化する。そこで、Siは0.30〜0.95%とし、望ましくは0.45〜0.65%とする。
Mn:0.10〜1.00%
Mnは、鋼の脱酸に有効な元素であり、鋼に必要な焼入性を付与するが、0.10%未満では効果が十分得られない。一方、Mnが1.00%を超えると機械加工性を低下させる。そこで、Mnは0.10〜1.00%とし、望ましくは0.25〜0.40%とする。
P:≦0.030%
Pは、粒界に偏析して衝撃強度や疲労特性を低下させる。そこで、Pは0.030%以下とする。
S:≦0.030%
Sは、MnSの形成により横方向の靭性や疲労強度を低下させる。そこで、Sは0.030%以下とする。
Cr:1.20〜2.30%
Crは、鋼に必要な焼入性を付与するが、1.20%未満ではその効果が十分得られない。一方、Crが2.30%を超えると、浸炭を阻害し、また素材硬度を上昇させて機械加工性を低下する。そこで、Crは1.20〜2.30%とし、望ましくは1.50〜2.20%とする。
Cu:≦0.30%
Cuは、スクラップから含有される不可避な元素であるが、時効性を有し、強度を向上させる効果がある。しかし、Cuが0.30%を超えると、熱間加工性が低下する。そこで、Cuは0.30%以下とする。
Al:0.008〜0.100%
Alは、鋼の脱酸に有効な元素であり、Nと結合してAlNとして結晶粒粗大化抑制効果をもたらすが、0.008%未満ではその効果が得られない。一方、Alが0.100%を超えると大型アルミナ系介在物を形成し、疲労特性および加工性が低下する。そこで、Alは0.008〜0.100%とし、望ましくは0.010〜0.050%とする。
O:≦0.0030%
Oは、鋼中に不可避に含有される元素であり、0.0030%を超えると酸化物の増加により加工性や疲労強度が低下する。そこで、Oは0.0030%以下とし、望ましくは0.0020%以下とする。
N:0.0020〜0.0300%
Nは、AlNやNb窒化物として微細析出し、結晶粒粗大化を防止する効果があるが、0.0020%未満ではその効果が得られない。一方、Nが0.0300%を超えると窒化物が増加し、疲労強度や加工性が低下する。そこで、Nは0.0020〜0.0300%とする。
Ni:0.09〜0.68%
Niは鋼の焼入性および靭性の向上に有効な元素である。ところで、本願の実施例である表1の発明鋼のNo.5及びNo.8の値に基づき、Niの下限値を0.09%としている。また、No.7を削除したので、No.12の値に基づき、Niの上限値を0.68%としている。そこで、Niは0.09〜0.68%とする。
Mo:≦1.0%
Moは、鋼の焼入性、靭性および焼戻し軟化抵抗特性の向上に必要な元素である。しかし、Moが1.0%より多すぎると加工性を低下させ、かつ、鋼材コストが上昇する。そこで、Moは1.0%以下とする。
Ti:0.020〜0.200%
Tiは、鋼中のCと結びついて炭化物を微細に形成し、結晶粒粗大化を防止する効果をもたらすが、その効果を得る場合には、0.020%以上添加する必要がある。一方、Tiが0.200%を超えて添加すると、機械加工性が低下する。そこでTiは0.020〜0.200%とする。
Nb:0.02〜0.20%
Nbは、炭窒化物あるいは窒化物を形成し、結晶粒粗大化抑制効果をもたらすが、0.02%未満ではその効果が得られない。一方、Nbが0.20%を超えると析出物の量が過剰となり、加工性が低下する。そこで、Nbは0.02〜0.20%とし、望ましくは0.03〜0.07%とする。
B:0.0003〜0.0050%
Bは、極少量の含有によって鋼の焼入性が著しく向上する元素である。そこで、Bは0.0003〜0.0050%とする。
6.0%≧2C+5Si+Cr−3Mn ≧2.0%・・・(1)とする理由
ねじり疲労強度を高める場合、合金元素の添加により芯部硬度を上げることが有効である。しかしながら、むやみに合金元素を添加した場合、被削性の低下が懸念される。
(1)式におけるC、Si、Cr、Mnの4元素は全て焼入性を上昇させる元素であり、これらの元素の添加によりねじり疲労強度の向上が見込まれる。ただし、Mnは加工性改善のために行われる焼鈍処理などの熱処理時にミクロ組織の偏析を助長し、鋼のミクロ組織を不均一にする。従って、2C+5Si+Cr−3Mnで表すパラメータを2.0%以上から6.0%以下と制御しておくことで、不均一な鋼組織を抑制し、被削性を確保すると共にねじり疲労強度の向上が図れる。なお、2.0%より低いとねじり疲労強度向上の効果が見られない。また、6.0%より高くなると被削性が低下してしまう。
本発明は、上記の手段の機械構造用鋼からなる鋼材とし、この鋼材にガス浸炭を行うことで、鋼組織の均一性が向上し、かつ、被削性を低下することなく、ねじり疲労強度に優れた機械構造用鋼の鋼材からなる自動車や産業機械などに使用のギヤやシャフトなどの動力伝達用の部品が得られる。
本発明の熱処理パターンを示す図である。 本発明における試験片の形状を示す図である。 本発明の焼鈍処理パターンを示す図である。
表1に示す化学成分の組成の鋼を100kg真空溶解炉で溶製し、得られた鋼を1250℃に加熱して5時間保持した後、直径35mmの棒鋼に製造した。続いて、930℃に60分保持した後空冷して焼準した。次に直径35mmの棒鋼から、図1に示す形状(両端の上下が非対称であるのは、試験時に試験片が動かないようにするためである)のねじり疲労試験片1を作製し、図2に示すヒートパターンの条件により、930℃に加熱保持して0.5時間の均熱処理、3.0時間の浸炭処理、2.5時間の拡散処理からなる、ガス浸炭による浸炭焼入と180℃の焼戻しを実施し焼準材を得た。その後、試験条件を、片振り(0°から片方向だけに負荷を掛ける)、周波数5Hzにて、下記に示すねじり疲労試験を実施した。
Figure 0005804832
なお、表1においてハッチングで示す成分は本発明の発明鋼の範囲から外れていることを示す。
被削性の評価は、上記で得た焼準材と、この焼準材とした後に、図3に示すように、1時間当たり300℃の昇温速度で795℃に加熱して2.0時間保持し、5.0時間掛けて720℃に温度を下げ、さらに3.0時間掛けて670℃に温度を下げ、この温度から空冷により冷却する焼鈍処理を行った焼鈍材とにより実施し、その結果を表2に示す。
Figure 0005804832
表2の疲労限度は、上記の焼準材に対してねじり疲労試験の条件を、片振り、周波数が5Hz、疲労限度が2.0×106サイクルにおける値とし、この値の数字が大きいほど高強度であることを示している。
同じく、表2の被削性は、焼準材、焼鈍材ともに被削性試験条件を、切込み量が0.5mm、切削速度が毎秒150m、送り量が0.25mm/rev、試験時間が10分とし、バイトの逃げ面の摩耗量で評価し、この値の数字が大きいほど被削性は低下していることを示している。
同じく、表2において、疲労限度の目標値は、比較鋼No.14の1.0に対して1.2以上とする。さらに、被削性の目標値は、比較鋼No.14の1.0に対して1.3以下とする。
表2において、本願の発明鋼のNo.1〜6およびNo.8〜12は、6.0%≧2C+5Si+Cr−Mn≧2.0%・・・(1)式を満足している。一方、比較鋼のNo.14〜29は、本願の発明鋼に対する比較鋼であり、この全ての鋼種において6.0%≧2C+5Si+Cr−Mn≧2.0%・・・(1)式を満足していない。
本願の発明鋼は、比較鋼のNo.14に比べてねじり疲労強度は向上し、かつ被削性の低下は見られない
一方、比較鋼No.16、No.17、No.20〜22およびNo.29は比較鋼No.14に比べてねじり疲労強度は向上している。しかし、それらはいずれも被削性が低下しており、本願の発明鋼とは異なる。さらに、比較鋼No.15、No.18、No.19およびNo.23〜28は、比較鋼No.14に比べて被削性の低下は見られない。しかし、それらは、いずれもねじり疲労強度が向上しておらず本願の発明鋼とは異なる。
1 ねじり疲労試験片

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.30〜0.95%、Mn:0.10〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:1.20〜2.30%、Cu:0.30%以下、Al:0.008〜0.100%、O:0.0030%以下、N:0.0020〜0.0300%を含有し、Ni:0.09〜0.68%、Mo:1.0%以下の1種または2種を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、下記の(1)式を満足することを特徴とする被削性を低下せることなくねじり疲労強度に優れた機械構造用鋼からなる鋼材。
    6.0%≧2C+5Si+Cr−3Mn≧2.0%・・・(1)
  2. 請求項1の化学成分に加え、Ti:0.020〜0.200%、Nb:0.02〜0.20、B:0.0003〜0.0050%のうち少なくとも1種以上を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、下記の(1)式を満足することを特徴とする被削性を低下させることなくねじり疲労強度に優れた機械構造用鋼からなる鋼材。
    6.0%≧2C+5Si+Cr−3Mn≧2.0%・・・(1)
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