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JP5804672B2 - 結晶性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形体 - Google Patents

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Description

本発明は結晶性ポリ乳酸樹脂組成物およびそれからなる成形体に関するものである。
樹脂製の成形体を得るための原料としては、一般に、ポリプロピレン樹脂(PP)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリアミド樹脂(PA6、PA66等)、ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリカーボネート樹脂(PC)等が使用されている。このような樹脂から製造された成形物は、成形性、機械的強度に優れている。しかし、廃棄する際、ゴミの量を増すうえに、自然環境下で殆ど分解されないために埋設処理しても半永久的に地中に残留する。
そこで、近年、環境保全の見地から、生分解性ポリエステル樹脂が注目されている。中でもポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートなどは、大量生産可能なためコストも安く、有用性が高い。特に、ポリ乳酸は、既にトウモロコシやサツマイモ等の植物を原料として工業生産が可能となっている。またポリ乳酸は、使用後に焼却されても、これらの植物の生育時に吸収した二酸化炭素を考慮すると、炭素の収支として中立であることから、地球環境への負荷の低い樹脂とされている。
ポリ乳酸は、結晶化を充分進行させることにより、耐熱性が向上して、広い用途に適用可能となる。しかし、ポリ乳酸単独では、その結晶化は極めて遅いものである。そこで、通常、結晶化速度を向上させることを目的として、ポリ乳酸への各種結晶核剤の添加処理や、ポリ乳酸の架橋処理がなされている。
詳細には、ポリ乳酸の結晶化を促進するために結晶核剤を添加する手法として、WO2006/137397には、ポリ乳酸に特定分子構造のカルボン酸アミドまたはカルボン酸エステルを添加することが開示されている。JP2006−328163Aには、ポリ乳酸にトリシクロヘキシルトリメシン酸アミドを添加することが開示されている。JP2003−226801Aには、ポリ乳酸にエチレンビス−12−ヒドロキシステアリン酸アミドを添加することが開示されている。
ポリ乳酸の結晶化を促進するためにポリ乳酸を架橋する手法として、例えばJP2003−128901Aには、ポリ乳酸にメタアクリル酸エステル化合物を配合することが開示されている。JP2002−3709Aには、ポリ乳酸にイソシアネート化合物を配合することが開示されている。
しかしながら、ポリ乳酸にこれらの結晶核剤を添加したり、ポリ乳酸に架橋処理を施したりしても、成形体を得るために金型を用いてポリ乳酸を射出成形する際には、実用上充分な結晶化速度を得るために、金型温度を90〜120℃に設定しなければならない。
このため、ポリ乳酸の結晶化が充分に進行していた場合でも、成形品を突き出して取り出す時においてその剛性が低い。その対策として成形サイクルをとりわけ長く設定する必要がある。その結果、ポリ乳酸成形体を製造する際の生産性は、従来の樹脂成形体の場合に比較して低くならざるを得ない。このことが、ポリ乳酸樹脂やその成形体を広範囲な用途へ普及させる上で、大きな妨げとなっている。
また、金型温度を90〜120℃に設定するため、金型温度と室温との温度差が大きくなり、その結果、ポリ乳酸成形体の収縮率は大きくならざるを得ない。したがって、ポリ乳酸成形体を高い寸法精度が求められる用途に適用することに限界がある。また、成形体の収縮率が大きいために既存樹脂用の成形金型を使用することができないので、金型の共用が不可能である。
一方、光学純度の高いポリ乳酸を用いれば、結晶化を促進して、耐熱性を向上することができる。例えば、JP2007−051274には、総乳酸成分のうち、L体が95モル%以上含まれること、あるいは、D体が95モル%以上含まれることが、耐熱性向上に好ましいと記載されている。
しかしながら、例えばポリ乳酸樹脂の射出成形においては、通常、L体が98〜99モル%であるポリ乳酸が使用されているが、この範囲のL体含有量のポリ乳酸と、前記の結晶核剤等とを組み合わせても、成形する際には、金型温度を90〜120℃に設定しなければならない。すなわち、これより低い温度の金型を使用すると、ポリ乳酸の結晶化速度が著しく小さいため、実用上可能な射出成形サイクルにおいて充分な耐熱性を有するポリ乳酸成形体を得ることができない。
本発明は、前記の問題点を解決しようとするものであり、成形性に優れた結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、D体含有量が著しく低いポリ乳酸樹脂を用い、これに結晶核剤を配合することによって得られる結晶性ポリ乳酸樹脂組成物によって、前記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は、下記の通りである。
(1)結晶性ポリ乳酸樹脂組成物の射出成形体を製造するための方法であって、
D体含有量が0.2モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)95〜99.97質量部と、結晶核剤(B)0.03〜5質量部とを含有し、結晶核剤(B)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、および5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上である結晶性ポリ乳酸樹脂組成物(ただし、可塑剤を含有するものを除く)を用いて、
金型温度80℃以下で射出成形することを特徴とする射出成形体の製造方法
(2)ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上の反応性化合物(E)0.1〜20質量部を含有する結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を用いることを特徴とする(1)の射出成形体の製造方法。
)D体含有量が0.2モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)100質量部と、ポリ乳酸樹脂(A)95〜99.97質量部に対して0.03〜5質量部の結晶核剤(B)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)0.01〜20質量部と、過酸化物(D)0.02〜20質量部とが溶融混練されたものであり、結晶核剤(B)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、および5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物(ただし、可塑剤を含有するものを除く)。
)ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上の反応性化合物(E)0.1〜20質量部を含有することを特徴とする()の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
)上記(3)または(4)の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物が成形されたものであることを特徴とする成形体。
)上記()の成形体を製造するための方法であって、上記(3)または(4)の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を金型温度80℃以下で射出成形することを特徴とする成形体の製造方法。
本発明によれば、金型温度を従来より低く設定しても成形性に優れる結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を提供することができる。この樹脂組成物を電気製品の筐体などに用いることで、低環境負荷材料であるポリ乳酸樹脂の使用範囲を大きく広げることができる。このため本発明の産業上の利用価値はきわめて高い。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第1の態様の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と結晶核剤(B)とを含有する組成物である。
本発明の第の態様の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)と(ポリ)アクリル酸エステル化合物(C)と過酸化物(D)とを溶融混練して得られる組成物であって、結晶核剤(B)を含有する組成物である。
本発明の樹脂組成物を構成するポリ乳酸樹脂(A)は、D体含有量が0.2モル%以下であることが必要である。D体含有量がこの範囲外であるポリ乳酸樹脂を用いた場合、成形時の金型温度を90℃よりも低く設定すると、耐熱性を有する成形体を得ることができない
本発明において、D体含有量が0.2モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)を使用する際に、ポリ乳酸樹脂として、D体含有量が0.08モル%未満のものは、入手あるいは作製することが困難になることがあるが、本発明においては、D体含有量が0.08モル%未満のポリ乳酸樹脂も使用することができる
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量とは、ポリ乳酸樹脂(A)を構成する総乳酸単位のうち、D乳酸単位が占める割合(モル%)である。したがって、例えば、D体含有量が0.6モル%のポリ乳酸樹脂(A)の場合、このポリ乳酸樹脂(A)は、D乳酸単位が占める割合が0.6モル%であり、L乳酸単位が占める割合が99.4モル%である。
ポリ乳酸樹脂(A)のD体含有量は、後述するように、ポリ乳酸樹脂(A)を分解して得られるL乳酸とD乳酸を全てメチルエステル化し、L乳酸のメチルエステルとD乳酸のメチルエステルとをガスクロマトグラフィー分析機で分析する方法により、算出することができる。
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)としては、市販の各種ポリ乳酸樹脂のうち、D体含有量が本発明で規定する範囲のポリ乳酸樹脂を用いることができる。
また、ポリ乳酸樹脂(A)として、乳酸の環状2量体であるラクチドのうち、D体含有量の充分低いL-ラクチドを原料に用いて作製したものを使用することもできる。
さらに、本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)として、2種以上のポリ乳酸樹脂を組み合わせてもよい。この場合、D体含有量が本発明で規定する範囲外であるポリ乳酸樹脂、たとえば、D体含有量が0.2モル%を超えるポリ乳酸樹脂を併用してもよい。その場合は、このようなポリ乳酸樹脂と、本発明で規定するD体含有量を満足するポリ乳酸樹脂とを組み合わせて得られるポリ乳酸樹脂(A)において、そのD体含有量が0.2モル%以下であればよい
本発明において、ポリ乳酸樹脂(A)の190℃、荷重21.2Nにおけるメルトフローレート(例えば、JIS規格K−7210(試験条件4)による値)は、0.1〜50g/10分であることが好ましく、0.2〜20g/10分であることがより好ましく、0.5〜10g/10分であることがさらに好ましい。メルトフローレートが50g/10分を超える場合は、溶融粘度が低すぎて成形物の機械的特性や耐熱性が劣る場合がある。また、メルトフローレートが0.1g/10分未満の場合は、成形加工時の負荷が高くなって、操業性が低下する場合がある。
ポリ乳酸樹脂(A)は、公知の溶融重合法で、あるいは、さらに固相重合法を併用して、製造される。ポリ乳酸樹脂(A)のメルトフローレートを所定の範囲に調節する方法として、メルトフローレートが大きすぎる場合は、少量の鎖長延長剤、例えば、ジイソシアネート化合物、ビスオキサゾリン化合物、エポキシ化合物、酸無水物等を用いて、樹脂の分子量を増大させる方法が挙げられる。逆に、メルトフローレートが小さすぎる場合は、メルトフローレートの大きなポリエステル樹脂や低分子量化合物と混合する方法が挙げられる。
本発明の樹脂組成物の一つアスペクトにおいては、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を促進することを目的として、結晶核剤(B)を含有する。
結晶核剤(B)としての化合物は、特に限定されず、種々のものを用いることができる。市販品の結晶核剤としては、例えば、川研ファインケミカル社製 WX−1、新日本理化社製 TF−1、アデカ社製 T−1287N、トヨタ社製 マスターバッチKX238Bなどが挙げられる。具体的な化合物としては、その結晶化促進効果の点から、有機アミド化合物、有機ヒドラジド化合物、カルボン酸エステル系化合物、有機スルホン酸塩、フタロシアニン系化合物、メラミン系化合物、および有機ホスホン酸塩から選ばれる1種以上を、好ましく用いることができる。
有機アミド化合物としては、下記一般式(1)、(2)で表される化合物が好ましい。有機ヒドラジド化合物としては、一般式(3)で表される化合物が好ましい。
−(CONH−R (1)
[式中、Rは、炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、飽和あるいは不飽和の脂肪環、あるいは、芳香環を表す。Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基あるいはシクロアルケニル基、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、あるいは、下記の式(a)〜(d)のいずれかで表される基を表す。1つ以上の水素原子がヒドロキシル基で置換されてもよい。aは2〜6の整数を表す。]
Figure 0005804672
[式中、Rは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、フェニル基、あるいは、ハロゲン原子を表す。lは1〜5の整数を表す。]
Figure 0005804672
[式中、Rは、炭素数1〜4の直鎖状、あるいは、分岐鎖状のアルキレン基を表す。Rは、前記のRと同義である。mは0〜5の整数を表す。]
Figure 0005804672
[式中、Rは前記のRと同義である。nは1〜5の整数を表す。]
Figure 0005804672
[式中、Rは前記のRと同義であり、Rは前記のRと同義である。oは0〜6の整数を表す。]
−(NHCO−R10 (2)
[式中、Rは炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、または芳香環を表す。R10は前記のRと同義である。fは2〜6の整数を表す。]
11−(CONHNHCO−R12 (3)
[式中、R11は、炭素数2〜30の飽和あるいは不飽和の脂肪鎖、不飽和の脂肪環、または芳香環を表す。R12は前記のRと同義である。hは2〜6の整数を表す。]
一般式(1)〜(3)で表される具体的な化合物としては、例えば、ヘキサメチレンビス−9、10−ジヒドロキシステアリン酸ビスアミド、p−キシリレンビス−9、10ジヒドロキシステアリン酸アミド、デカンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、ヘキサンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジアニリド、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアニリド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジシクロヘキシルアミド、N,N′−ジベンゾイル−1,4−ジアミノシクロヘキサン、N,N′−ジシクロヘキサンカルボニル−1,5−ジアミノナフタレン、エチレンビスステアリン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジドなどがあげられる。
このうち、樹脂中への分散性および耐熱性の面から、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジドが好ましく、さらに、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミドが特に好ましい。
カルボン酸エステル系化合物としては、種々のものを用いることができるが、例えば、脂肪族ビスヒドロキシカルボン酸エステル等が好ましい。
有機スルホン酸塩としては、スルホイソフタル酸塩など、種々のものを用いることができるが、中でも、5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。さらに、バリウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、ナトリウム塩などが好ましい。
フタロシアニン系化合物としては、種々のものを用いることができるが、遷移金属錯体を用いることが好ましく、中でも、銅フタロシアニンが結晶化促進効果の点から好ましい。
メラミン系化合物としては、種々のものを用いることができるが、結晶化促進効果の点から、メラミンシアヌレートが好ましい。
有機ホスホン酸塩としては、フェニルホスホン酸塩が、結晶化促進効果の点から好ましい。そのうち、特にフェニルホスホン酸亜鉛が好ましい。
結晶核剤(B)としては、これらのものを単独で用いることができる。あるいは、2種以上を併用して配合することができる。なお、これら有機系の結晶核剤(B)に対して、無機系の各種結晶核剤を併用しても構わない。
本発明のポリ乳酸樹脂(A)と結晶核剤(B)とを含有する樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が95〜99.97質量部であり、結晶核剤(B)の含有量が0.03〜5質量部であることが必要である。ポリ乳酸樹脂(A)の含有量が96〜99.9質量部であり、結晶核剤(B)の含有量が0.1〜4質量部であることが好ましい。結晶核剤(B)の含有量が0.03質量部未満であると、これを配合することの効果が乏しい。一方、含有量が5質量部を超えると、結晶核剤としての効果が飽和し、経済的に不利であるだけでなく、生分解後の残渣分が増大するために環境面でも好ましくない。
本発明においては、ポリ乳酸樹脂(A)の結晶化を促進する方法として、上記のようにポリ乳酸樹脂(A)に結晶核剤(B)を配合する方法以外に、ポリ乳酸樹脂(A)を(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)と過酸化物(D)によって架橋する方法を採ることもできる。また、ポリ乳酸樹脂(A)を(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)と過酸化物(D)によって架橋して得られる架橋ポリ乳酸樹脂に、結晶核剤(B)を配合してもよい。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)は、前述のように、樹脂組成物の結晶化を促進し、耐熱性を改善することを目的として配合されるものである。
具体的な化合物としては、ポリ乳酸樹脂(A)との反応性が高く、モノマーが残りにくく、かつ、毒性が少なく、樹脂の着色も少ないことから、分子内に2個以上の(メタ)アクリル基を有するか、または、1個以上の(メタ)アクリル基と1個以上のグリシジル基もしくはビニル基を有する化合物が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)の具体例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、アリロキシポリエチレングリコールモノアクリレート、アリロキシ(ポリ)エチレングリコールモノメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジメタクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジアクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジメタクリレート、または、これらのアルキレングリコール部が様々な長さのアルキレンの共重合体、ブタンジオールメタクリレート、ブタンジオールアクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが必要であり、0.05〜1質量部であることが好ましい。添加量が0.01質量部未満では、目的とする耐熱性が得られず、これに対し、添加量が20質量部を超えると、混練時の操業性が低下する。
本発明において、過酸化物(D)は、(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)とポリ乳酸樹脂(A)との反応を促進し、耐熱性を改善することを目的として配合されるものである。
過酸化物(D)の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ビス(ブチルパーオキシ)シクロドデカン、ブチルビス(ブチルパーオキシ)バレレート、ジクミルパーオキサイド、ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキサイド、ビス(ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルジ(ブチルパーオキシ)ヘキシン、ブチルパーオキシクメンなどが挙げられる。
過酸化物(D)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.02〜20質量部であることが必要であり、0.1〜10質量部であることが好ましい。添加量が0.02質量部未満では、目的とする効果が得られず、また、添加量が20質量部を超えると、混練時の操業性が低下する場合がある。
なお、過酸化物(D)は、樹脂との混合の際に分解するため、たとえ配合時に使用されても、得られた樹脂組成物中には含まれていない場合がある。
ポリ乳酸樹脂(A)と結晶核剤(B)とを混合したり、ポリ乳酸樹脂(A)と(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)と過酸化物(D)とを溶融混練したり、さらにこれらに後述する反応性化合物(E)とを混合したりする手段は、特に限定されないが、一軸あるいは二軸の押出機を用いて溶融混練する方法を挙げることができる。混練状態をよくする意味で、二軸の押出機を使用することが好ましい。混練温度は(ポリ乳酸樹脂(A)の融点+5℃)〜(ポリ乳酸樹脂(A)の融点+100℃)であることが、また、混練時間は20秒〜30分であることが、それぞれ好ましい。この範囲より低温や短時間であると、混練や反応が不充分となりやすい。逆に高温や長時間であると、樹脂の分解や着色が起きる場合がある。
本発明において、樹脂組成物は下記の反応性化合物(E)を含有することが好ましい。反応性化合物(E)を含有させることにより、樹脂組成物の耐久性を向上させ、その難燃性および耐熱性を長期間、安定的に維持することができる。
本発明において反応性化合物(E)は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上である。
カルボジイミド化合物としては、種々のものを用いることができる。詳細には、分子中に1個以上のカルボジイミド基を持つものであれば、特に限定されない。例えば、脂肪族モノカルボジイミド、脂肪族ポリカルボジイミド、脂環族モノカルボジイミド、脂環族ポリカルボジイミド、芳香族モノカルボジイミド、芳香族ポリカルボジイミドなど、この範囲の全てのものを用いることができる。さらに、分子内に各種複素環あるいは各種官能基を持つものであっても構わない。
またカルボジイミド化合物としては、イソシアネート基を分子内に有するカルボジイミド化合物、およびイソシアネート基を分子内に有しないカルボジイミド化合物のどちらも区別無く用いることができる。
カルボジイミド化合物のカルボジイミド骨格としては、N,N′−ジ−o−トリイルカルボジイミド、N,N′−ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N′−シクロヘキシルカルボジイミド、N−トリイル−N′−フェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N′−ジ−p−トリイルカルボジイミド、p−フェニレン−ビス−ジ−o−トリイルカルボジイミド、4,4′−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド、テトラメチルキシリレンカルボジイミド、N,N−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなど、多くのカルボジイミド骨格が挙げられる。
カルボジイミド化合物の具体例としては、多くのものが挙げられる。例えば、脂環族モノカルボジイミドとしては、ジシクロヘキシルカルボジイミドなどが挙げられる。脂環族ポリカルボジイミドとしては、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられる。芳香族モノカルボジイミドとしては、N,N′−ジフェニルカルボジイミド、N,N′−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドなどが挙げられる。芳香族ポリカルボジイミドとしては、フェニレン−p−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミド、1,3,5−トリイソプロピル−フェニレン−2,4−ジイソシアネートに由来するポリカルボジイミドなどが挙げられる。
なお、ポリカルボジイミドにおいては、その分子の両端あるいは分子中の任意の部位が、イソシアネート基等の官能基を有する、あるいは、分子鎖が分岐しているなど他の部位と異なる分子構造となっていても構わない。
カルボジイミド化合物を製造する方法としては、特に限定されず、イソシアネート化合物を原料に製造する方法など、多くの方法が挙げられる。
エポキシ化合物としては、N−グリシジルフタルイミド、N−グリシジル−4−メチルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−3−メチルフタルイミド、N−グリシジル−3,6−ジメチルフタルイミド、N−グリシジル−4−エトキシフタルイミド、N−グリシジル−4−クロルフタルイミド、N−グリシジル−4,5−ジクロルフタルイミド、N−グリシジル−3,4,5,6−テトラブロムフタルイミド、N−グリシジル−4−n−ブチル−5−ブロムフタルイミド、N−グリシジルサクシンイミド、N−グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N−グリシジル−1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、N−グリシジルマレインイミド、N−グリシジル−α,β−ジメチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−エチルサクシンイミド、N−グリシジル−α−プロピルサクシンイミド、N−グリシジルベンズアミド、N−グリシジル−p−メチルベンズアミド、N−グリシジルナフトアミド、N−グリシジルステラミド、N−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−エチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−フェニル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−ナフチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、N−トリル−3−メチル−4,5−エポキシシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸イミド、オルソフェニルフェニルグリシジルエーテル、2−メチルオクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、3−(2−キセニルオキシ)−1,2−エポキシプロパン、アリルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、シクロヘキシルグリシジルエーテル、α−クレシルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、スチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。さらには、テレフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジメチルジグリシジルエステル、フェニレンジグリシジルエーテル、エチレンジグリシジルエーテル、トリメチレンジグリシジルエーテル、テトラメチレンジグリシジルエーテル、ヘキサメチレンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
オキサゾリン化合物の具体例としては、2−メトキシ−2−オキサゾリン、2−エトキシ−2−オキサゾリン、2−プロポキシ−2−オキサゾリン、2−ブトキシ−2−オキサゾリン、2−ペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−ヘプチルオキシ−2−オキサゾリン、2−オクチルオキシ−2−オキサゾリン、2−ノニルオキシ−2−オキサゾリン、2−デシルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロペンチルオキシ−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシルオキシ−2−オキサゾリン、2−アリルオキシ−2−オキサゾリン、2−メタアリルオキシ−2−オキサゾリン、2−クロチルオキシ−2−オキサゾリン、2−フェノキシ−2−オキサゾリン、2−クレジル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェノキシ−2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−プロピル−2−オキサゾリン、2−ブチル−2−オキサゾリン、2−ペンチル−2−オキサゾリン、2−ヘキシル−2−オキサゾリン、2−ヘプチル−2−オキサゾリン、2−オクチル−2−オキサゾリン、2−ノニル−2−オキサゾリン、2−デシル−2−オキサゾリン、2−シクロペンチル−2−オキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−アリル−2−オキサゾリン、2−メタアリル−2−オキサゾリン、2−クロチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2−o−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−o−フェニルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−エチルフェニル−2−オキサゾリン、2−m−プロピルフェニル−2−オキサゾリン、2−p−フェニルフェニル−2−オキサゾリンなどが挙げられる。さらには、2,2′−ビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−エチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4,4′−ジエチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−プロピル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ブチル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−フェニル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−シクロヘキシル−2−オキサゾリン)、2,2′−ビス(4−ベンジル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−p−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−m−フェニレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−デカメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2′−テトラメチレンビス(4,4′−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2′−9,9′−ジフェノキシエタンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−シクロヘキシレンビス(2−オキサゾリン)、2,2′−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物など、例えばスチレン・2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体などが挙げられる。
反応性化合物(E)の添加量は、ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、0.2〜15質量部であることがより好ましい。添加量が0.5質量部未満では、目的とする耐久性が得られない場合がある。反対に添加量が20質量部を超えると、耐熱性が低下し、また経済的にも好ましくなく、さらには、色調が大きく損なわれる場合もある。
本発明の樹脂組成物には、その特性を大きく損なわない限りにおいて、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、無機充填材、植物繊維、強化繊維、耐候剤、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、耐衝撃剤、相溶化剤などを配合することができる。
熱安定剤や酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール類、ヒンダードアミン、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物などが例示される。
無機充填材としては、例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、アルミナ、マグネシア、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維、層状珪酸塩などが例示される。層状珪酸塩を配合することにより、樹脂組成物のガスバリア性を改善することができる。
植物繊維としては、例えば、ケナフ繊維、竹繊維、ジュート繊維、その他のセルロース系繊維などが例示される。
強化繊維としては、例えば、アラミド繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリマー繊維などの有機強化繊維や、ガラス繊維などが挙げられる。
可塑剤としては、例えば、脂肪族エステル誘導体または脂肪族ポリエーテル誘導体から選ばれた1種以上の可塑剤などが挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、グリセリンジアセトモノカプレート、グリセリンジアセトモノラウレートなどが挙げられる。可塑剤を配合することにより、結晶核剤(B)のポリ乳酸樹脂(A)への分散を促進することができる。
滑剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができる。中でも、各種カルボン酸金属塩が好ましく、特に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが好ましい。
離型剤としては、各種カルボン酸系化合物を用いることができる。中でも、各種カルボン酸エステル、各種カルボン酸アミドなどが、好適に用いられる。
耐衝撃剤としては、特に限定されず、コアシェル型構造を持つ(メタ)アクリル酸エステル系耐衝撃剤など、種々のものを用いることができる。具体的な市販の商品としては、例えば、三菱レイヨン社製の「メタブレンシリーズ」などが挙げられる。
相溶化剤としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン系共重合樹脂を主鎖に持つグラフト共重合体が挙げられる。具体的な化合物としては、例えば、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリメチルメタクリレートグラフト共重合体や、ポリ(エチレン/グリシジルメタクリレート)−ポリ(アクリロニトリル/スチレン)グラフト共重合体などが挙げられる。具体的な市販の商品としては、例えば、日本油脂社製の「モディパーシリーズ」などが挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂(A)以外の樹脂を配合して、ポリ乳酸樹脂(A)とのアロイとすることも可能である。
ポリ乳酸樹脂(A)のアロイ相手材となる樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)共重合体、液晶ポリマー、ポリアセタールなどが挙げられる。
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
ポリエステルとしては、各種芳香族ポリエステル、各種脂肪族ポリエステルをはじめ、多くのものが挙げられる。芳香族ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリブチレンアジペートテレフタレートなどが挙げられる。脂肪族ポリエステルとしては、具体的には、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリヒドロキシ酪酸などが挙げられる。
この他のポリエステル系のものとしては、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリブチレンイソフタレートコテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、シクロヘキシレンジメチレンイソフタレートコテレフタレート、p−ヒドロキシ安息香酸残基とエチレンテレフタレート残基からなるコポリエステル、植物由来の原料である1,3−プロパンジオールからなるポリトリメチレンテレフタレート等などが挙げられる。
ポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド6Tなどが挙げられる。
本発明において、ポリ乳酸樹(A)にこれらを混合する方法は、特に限定されない。
本発明の樹脂組成物は、射出成形、ブロー成形、押出成形、インフレーション成形、インフレーションブロー成形、発泡シート成形、および、シート加工後の真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の成形方法により、各種成形体とすることができる。すなわち、射出成形してなる成形体;押出し成形してなるフィルム、シート;これらフィルム、シートを加工してなる成形体;ブロー成形してなる中空体;この中空体を加工してなる成形体などとすることができる。
本発明においては、とりわけ、射出成形法を採ることが好ましく、一般的な射出成形法のほか、ガス射出成形法、射出プレス成形法等も採用できる。本発明の樹脂組成物に適した射出成形条件の一例を挙げれば、シリンダ温度を樹脂組成物の融点または流動開始温度以上、好ましくは170〜250℃、最適には170〜230℃の範囲とし、また、金型温度は(樹脂組成物の融点−40℃)以下とするのが適当である。シリンダ温度が低すぎると、成形品にショートが発生するなど操業性が不安定になったり、過負荷に陥りやすい。逆に、成形温度すなわちシリンダ温度が高すぎると、樹脂組成物が分解して、得られる成形体の強度が低下したり、着色したりする等の問題が発生しやすい。
本発明の樹脂組成物は、成形の際に結晶化を促進させることにより、その耐熱性をさらに高めることができる。このための方法としては、例えば、射出成形時に金型内で結晶化を促進させる方法がある。その場合には、樹脂組成物のガラス転移温度以上かつ(融点−40℃)以下に保たれた金型内で、一定時間、成形品を保持した後、金型より取り出す方法が好適である。このような方法をとらずに金型より取り出された成形品であっても、あらためて、ガラス転移温度以上かつ(融点−40℃)以下で熱処理することにより、結晶化を促進することができる。
本発明の成形体の具体例としては、パソコン筐体部品および筐体、携帯電話筐体部品および筐体、その他OA機器筐体部品、コネクター類等の電化製品用樹脂部品;バンパー、インストルメントパネル、コンソールボックス、ガーニッシュ、ドアトリム、天井、フロア、エンジン周りのパネル等の自動車用樹脂部品;コンテナーや栽培容器等の農業資材や農業機械用樹脂部品;浮きや水産加工品容器等の水産業務用樹脂部品;皿、コップ、スプーン等の食器や食品容器;注射器や点滴容器等の医療用樹脂部品;ドレーン材、フェンス、収納箱、工事用配電盤等の住宅・土木・建築材用樹脂部品;花壇用レンガ、植木鉢等の緑化材用樹脂部品;クーラーボックス、団扇、玩具等のレジャー・雑貨用樹脂部品;ボールペン、定規、クリップ等の文房具用樹脂部品等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物は、フィルム、シート、パイプ等の、押出成形品や中空成形品等とすることもできる。その例としては、農業用マルチフィルム、工事用シート、各種ブロー成形ボトルなど、多数挙げられる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下の実施例および比較例における樹脂組成物の各種物性の測定方法および評価方法と、樹脂組成物を製造するための原料とは、次のとおりである。
[測定方法および評価方法]
(1)D体含有量:
ポリ乳酸樹脂(A)または樹脂組成物の約0.3gを1N−水酸化カリウム/メタノール溶液6mLに加え、65℃にて充分撹拌した後、硫酸450μLを加えて、65℃にて撹拌し、ポリ乳酸を分解させた。そのサンプル5mLと、純水3mLと、塩化メチレン13mLとを混合して振り混ぜた。そしてこれを静置分離した後、下部の有機層を約1.5mL採取し、孔径0.45μmのHPLC用ディスクフィルターでろ過後、HewletPackard社製「HP−6890SeriesGCsystem」でGC測定した。乳酸メチルエステルの全ピーク面積に占めるD−乳酸メチルエステルのピーク面積の割合(%)を算出し、これをD体含有量(%)とした。
(2)メルトフローレート(MFR):
ポリ乳酸樹脂(A)または樹脂組成物を、JIS K7210に準拠し、190℃において測定した。
(3)成形サイクル:
ISO準拠の試験片を射出成形機において所定の成形条件で成形した際、得られた試験片を変形することなく取り出せる最短の所要時間(射出時間+保圧時間+冷却時間)を、成形サイクルとした。なお、成形サイクルが100秒を上回る場合は、成形作業性が著しく劣るだけでなく、シリンダ内に滞留する溶融樹脂の劣化の影響も大きくなり、実用上成形困難であるため、成形サイクルの見極めにおいては上限を100秒とした。
(4)熱変形温度:
ISO 75に準拠し、荷重0.45MPaで熱変形温度を測定した。そのとき、熱変形温度が100℃を超えるものを「優秀」と評価して「◎」と表し、熱変形温度が80〜100℃であるものを「良好」と評価して「○」と表し、熱変形温度が70〜80であるものを「やや劣る」と評価して「△」と表し、熱変形温度が70℃未満であるものを「不良」と評価して「×」と表した。
(5)結晶化度:
金型温度80℃で成形された試験片を用い、X線回折装置(理学電気工業社製、RAD-rB)において、WAXD反射フィルム法によって広角X線回折測定をおこない、多重ピーク分離法で解析することにより得られた結晶部面積比率を用いて測定した。成形サイクルが100秒を上回る場合は、成形サイクル100秒における成形試験片を用いて測定した。
(6)降温時結晶化熱量(ΔH)、降温時結晶化ピーク温度:
DSC測定装置(Perkin Elmer Thermal Analysis)を用い、試料を完全融解した後、50℃/分で降温し、そのときのピーク面積から、結晶化の際の熱量(J/g)を算出した。このピークのピークトップの温度を結晶化ピーク温度とした。
(7)耐久性:
成形したISO試験片を50℃50%RHの高温高湿度環境に72時間曝したうえで、ISO178に準拠して曲げ強度を測定した。そのとき、暴露前の値に対する保持率が95%以上であれば「優秀」と評価して「◎」と表し、80〜95%であれば「良好」と評価して「○」と表し、50〜80%であれば「やや劣る」と評価して「△」と表し、50%以下であれば「不良」と評価して「×」と表した。
[原料]
(1)ポリ乳酸樹脂(A)
・S−06:トヨタ社製、D体含有量=0.2モル%、MFR=4g/10分
・S−09:同社製、D体含有量=0.1モル%、MFR=6g/10分
・S−12:同社製、D体含有量=0.1モル%、MFR=8g/10分
・S−17:同社製、D体含有量=0.1モル%、MFR=11g/10分
・A−1:同社製、D体含有量=0.6モル%、MFR=2g/10分
・TE−4000:ユニチカ社製、D体含有量=1.4%、MFR=10g/10分
・合成例1:D体含有量0.08モル%のL−ラクチド2,000gと、ヘキサンジオール1.4gとをガラス製重合管内に入れ、窒素気流下、加熱融解した。その後、ジオクチル錫0.4gを加え、撹拌しながら180℃で1時間反応させた。その30分後に5hPaに減圧し、その後、生成したポリL-乳酸樹脂を払い出した。得られたポリL-乳酸樹脂は、D体含有量が0.08モル%、MFRが15g/10分であった。
(2)結晶核剤(B)
・トヨタ社製、KX238B(ポリ乳酸をベースとした、結晶核剤10質量%含有マスターバッチ)
・N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド:川研ファインケミカル社製、WX−1
・N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド:新日本理化社製、TF−1
・5−スルホイソフタル酸ジメチルナトリウム:東京化成工業社製
・オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド:アデカ社製、T−1287N
(3)(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)
・エチレングリコールジメタクリレート:日本油脂社製、ブレンマーPDE−50
(4)過酸化物(D)
・ジ−t−ブチルパーオキサイド:日本油脂社製、パーブチルD
(5)反応性化合物
・イソシアネート変性カルボジイミド:日清紡社製、LA−1(イソシアネート基含有率1〜3質量%)
・カルボジイミド:松本油脂製薬社製、EN−160
(6)架橋剤
・ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HMDI」と称す)
実施例1
ポリ乳酸樹脂として表1に示すようにS−12を90質量部用い、また結晶核剤としてKX238B(結晶核剤10質量%含有)を10質量部(結晶核剤量:1質量部)用いた。これらをドライブレンドして二軸押出機(東芝機械社製、TEM37BS型)の根元供給口から供給し、バレル温度180℃、スクリュー回転数200rpm、吐出量15kg/hの条件で、ベントを効かせながら押出しを実施した。
得られたペレットを70℃×24時間真空乾燥したのち、東芝機械社製、IS−80G型射出成形機を用いて、金型表面温度を80℃、および、100℃に調整し、一般物性測定用試験片(ISO型)を作製した。試験片作製の際、成形サイクルを測定した。その後、作製した試験片を各種測定に供した。試験片の一部は、50℃50%RHの高温高湿度環境に100時間曝したうえで、曲げ物性を測定した。
実施例2〜16、参考例1〜7、比較例1〜7
ポリ乳酸樹脂、結晶核剤、(メタ)アクリル酸エステル化合物、過酸化物、反応性化合物について、配合の有無、種類、量を変えた。それ以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物ペレットを得た。
各実施例、比較例において、(メタ)アクリル酸エステル化合物や過酸化物は、ポリ乳酸樹脂と結晶核剤とを混練している二軸押出機のシリンダ内に供給した。
得られたペレットを乾燥後、射出成形によって、一般物性測定用試験片(ISO型)を作製し、同時に、成形サイクルを測定した。作製した試験片を各種測定に供した。
実施例1〜16、参考例1〜7、比較例1〜7の評価結果を、表1、2に示す。
Figure 0005804672
Figure 0005804672
表1および表2から明らかなように、実施例1〜16、参考例1〜7においては、成形性に優れた樹脂組成物が得られ、それらの樹脂組成物は耐熱性も良好であった。結晶化度についても、充分結晶化が進行していることが示された。
実施例1016、参考例7は、結晶核剤が配合され、さらに、(メタ)アクリル酸エステル化合物、および過酸化物が配合されていたため、成形性が特に優れていた。D体含有量が0.5質量%と高い参考例7を除き、金型温度80℃において、40秒未満の成形サイクルでの成形が可能であった。参考例7においても、D体含有量が同程度未満の参考例2と比較して、より優れた成形性が得られた。
実施例9、参考例4〜5は、カルボジイミド化合物が反応性化合物として配合されているため、優れた耐久性が得られた。
実施例は、結晶核剤配合量が5質量部と特に多かったが、他の実施例と比較して、成形性における顕著な効果は認められなかった。
比較例1〜4は、結晶核剤等による結晶化促進処方が施されているものの、D体含有量が多かったため、金型温度80℃において成形不可能であった。
比較例5〜6は、D体含有量は充分少ないが、結晶化促進処方が施されていないか、あるいは不充分であったため、金型温度80℃において成形不可能であった。
比較例7も、D体含有量は充分少なく、また、HMDIが配合されていたが、(メタ)アクリル酸エステル化合物が用いられていなかったため、やはり、金型温度80℃において成形不可能であった。

Claims (6)

  1. 結晶性ポリ乳酸樹脂組成物の射出成形体を製造するための方法であって、
    D体含有量が0.2モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)95〜99.97質量部と、結晶核剤(B)0.03〜5質量部とを含有し、結晶核剤(B)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、および5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上である結晶性ポリ乳酸樹脂組成物(ただし、可塑剤を含有するものを除く)を用いて、
    金型温度80℃以下で射出成形することを特徴とする射出成形体の製造方法
  2. ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上の反応性化合物(E)0.1〜20質量部を含有する結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1記載の射出成形体の製造方法
  3. D体含有量が0.2モル%以下であるポリ乳酸樹脂(A)100質量部と、ポリ乳酸樹脂(A)95〜99.97質量部に対して0.03〜5質量部の結晶核剤(B)と、(メタ)アクリル酸エステル化合物(C)0.01〜20質量部と、過酸化物(D)0.02〜20質量部とが溶融混練されたものであり、結晶核剤(B)が、N,N′,N″−トリシクロヘキシルトリメシン酸アミド、N,N′−エチレンビス(12−ヒドロキシステアリン酸)アミド、オクタンジカルボン酸ジベンゾイルヒドラジド、および5−スルホイソフタル酸ジメチル金属塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする結晶性ポリ乳酸樹脂組成物(ただし、可塑剤を含有するものを除く)。
  4. ポリ乳酸樹脂(A)100質量部に対して、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、およびオキサゾリン化合物から選ばれる1種以上の反応性化合物(E)0.1〜20質量部を含有することを特徴とする請求項3記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 請求項3または4記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物が成形されたものであることを特徴とする成形体。
  6. 請求項5記載の成形体を製造するための方法であって、請求項3または4記載の結晶性ポリ乳酸樹脂組成物を金型温度80℃以下で射出成形することを特徴とする成形体の製造方法。
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