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JP5802401B2 - レンズ鏡枠およびレンズ組立体 - Google Patents

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Description

本発明は、レンズ鏡枠およびレンズ組立体に関する。
従来、例えば、カメラ等の光学機器において、熱可塑性樹脂で形成されたレンズ鏡枠にレンズ等の光学素子を熱カシメによって固定したレンズ組立体が用いられている。
例えば、特許文献1には、このようなレンズ鏡枠として、プラスチック材料で略円筒形状に形成されており、その一方の端部開口にはレンズを挿入しレンズを光軸方向で位置決めする凹状のレンズ挿入枠部と、端部開口の周囲にこのレンズ挿入枠部に挿入されたレンズ周縁の上面よりいずれも突出して所定間隔で突起状とされた4つのカシメ部とを備えるレンズ枠が記載されている。また、このレンズ枠にレンズを挿入した後、カシメ部を熱変形させて、レンズの周縁を固定したレンズ組立体が記載されている。
また、高精度が要求されるレンズ組立体では、振動などによってレンズ挿入枠部とのクリアランスの範囲でレンズが移動しないように、カシメ部をレンズ外縁の全周に設けて強固に固定することが周知である。近年では特にカメラ等の高画素化や小型化の要求がより強まっており、それを達成するためにレンズとレンズ枠との固定精度の更なる高精度化が必要となってきている。更に小型化や鏡枠スペース有効利用のためにレンズをDカット形状等の切欠を有するレンズを用いることも多くなってきている。
通常、カシメ固定において高い精度が必要無ければ、このようなD形のレンズのカシメにおいても円形レンズのようにレンズ外縁のうち円弧状の部分の全体にカシメ部を設け、レンズのカシメ固定を行うが、この構造だと、熱カシメ時にカシメ部を通して作用する押圧力によって、レンズがカシメ部のない方に移動しやすく偏心を起こしやすいため、この高精度化対策として従来技術としては、レンズの光軸およびDカット部を挟んで対向する位置にカシメ部を設けることが公知技術としてなされている。
このような従来のレンズ組立体の形状の一例を図10(a)、(b)、(c)、(d)に示す。図10(a)は、従来技術のレンズ組立体の構成の一例を示す模式的な斜視図である。図10(b)は、図10(a)におけるa視の平面図である。図10(c)、(d)は、図10(b)におけるb−b断面図、およびc−c断面図である。
レンズ組立体100は、レンズ側面が円筒面状のレンズ側面101eと光軸oに平行な平面からなるDカット面101dとで構成されたレンズ101を、レンズ鏡枠102に熱カシメして固定した組立体である。
レンズ101は、凸球面からなる第1レンズ面101aと凹球面からなる第2レンズ面101bとを備える負のメニスカスレンズであり、第2レンズ面101bの外縁側にレンズ101の光軸方向の位置決めを行うための取付基準面101cが形成されている。取付基準面101cは光軸oに直交する平面からなる。
レンズ鏡枠102は、中心に貫通孔102eを備える略円筒状の筒部102bの一方の端部にレンズ101の取付基準面101cを当接させるレンズ受面102aを備える。
レンズ受面102aは、筒部102bの中心軸線pに直交する平面からなり、筒部102bの一端側において径方向外側に延ばされたフランジ部に形成されている。ただし、このフランジ部の側面は、円筒面とDカット面102fとからなり、レンズ101の取付基準面101cの外形状と略同様なD形形状が形成されている。
レンズ受面102aの外縁部には、レンズ101のレンズ側面101eを挿入して緩やかに嵌合する1対の部分円筒面からなる枠部102cが光軸o方向に延ばされている。
この1対の枠部102cは、光軸oを挟んで対向して配置され、それぞれレンズ側面101eを中心角90°の範囲で覆っている。このため、1対の枠部102cは、筒部102bの中心軸線pおよびc−c線を通りDカット面102fと直交する平面s(図10(b)、(c)参照)と、中心軸線pを通り平面sと直交する平面t(図10(b)、(d)参照)に対して面対称、あるいは中心軸pに関して180°軸対称となるように配置されている。
また、枠部102cの先端部は、枠部102c内にレンズ101が挿入された後、熱カシメ装置によって熱変形され、第1レンズ面101aの外縁部を光軸o方向に付勢してレンズ101を保持するカシメ固定部102dが形成されている。
このように、レンズ組立体100では、レンズ101はレンズ受面102aとカシメ固定部102dとの間で光軸o方向に挟持されており、これにより取付基準面101cがレンズ受面102aに押圧して固定されている。
特開2007−203625号公報
しかしながら、本出願人は実験検討から、このようなDカットレンズをより高精度にカシメ固定するには、レンズ枠形状、特にはレンズ枠のレンズ受け面の形状に以下のような問題があることを発見した。
上記に説明したレンズ鏡枠102にレンズ101を熱カシメしてレンズ組立体100を形成する場合、レンズ101は、カシメ固定部102dの熱変形に伴ってレンズ受面102a側に押圧して固定される。このとき、レンズ101に第1レンズ面101a側から作用する押圧力は、平面s、tに関して、それぞれ面対称な力が作用するため、カシメ部をC字状に形成する場合に比べるとレンズ101の偏心が低減される。例えば、偏心量の平均を約5μm程度にすることができる。
しかし、近年、高画質化の要求が高まっており、このような偏心量では、熱カシメしたレンズ組立体を採用することが難しいという問題がある。このため、高精度な金属製のレンズ鏡筒やレンズ押さえ環を採用しなければならず、レンズユニットが高価になったり、重くなったりするという問題がある。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、光軸に沿う方向から見た外形が円弧形状と直線形状とで形成されたレンズをカシメによって精度よく固定することができるレンズ鏡枠およびレンズ組立体を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、光軸に沿う方向から見て円弧状に延びるレンズ側面と直線状に延びるDカット面とを備えるD形の外形を有し、前記光軸に沿う方向から見た外縁部に少なくとも前記レンズ側面に沿って連続する取付基準面を有するレンズを熱カシメによって固定するレンズ鏡枠であって、前記レンズの前記取付基準面を当接させて、前記レンズの光軸に沿う方向に前記レンズを位置決めするレンズ受面と、前記レンズ側面を外嵌して、前記レンズを前記光軸に直交する方向に位置決めするため、前記レンズ受面と交差する方向に延びる軸線を中心軸線とする部分円筒面状の内周面を有し、前記中心軸線に関する径方向において前記レンズ受面よりも外側から、前記中心軸線に沿う方向に突出した側枠部と、該側枠部の突出方向の先端に形成され、変形することで前記レンズ受面との間で前記レンズをカシメ固定する複数のカシメ部と、を備え、前記レンズ受面および前記複数のカシメ部は、それぞれ前記中心軸線にして円環形状を除く軸対称に設けられるとともに、前記中心軸線を含む少なくとも1つの共通の平面に関していずれも面対称に設けられ、前記レンズ受面は、前記中心軸線に沿う方向から見て、前記複数のカシメ部のそれぞれと前記中心軸線との間に、少なくとも一部が配置された構成とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のレンズ鏡枠において、前記レンズ受面は、前記中心軸線回りの閉ループ状に設けられ、前記中心軸線に沿う方向から見た形状が、内周が円形で、外周が前記側枠部の前記内周面に沿う円弧と前記円弧の端部を結ぶ直線とからなる構成とする。
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載のレンズ鏡枠において、前記レンズ受面は、前記中心軸線を挟んで対向する複数領域として設けられた構成とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠において、前記中心軸線に沿う方向から見て、半円よりも大きな円弧状に延びる部分円筒面状の枠部外周面が、前記中心軸線に関する径方向において前記側枠部の内周面よりも外側に設けられた構成とする。
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠において、前記側枠部は、前記中心軸線を挟んで対向して配置された1対からなり、前記側枠部の各外周面は、前記中心軸線に沿う方向から見て前記中心軸線と同軸な円弧状の湾曲面からなる構成とする。
請求項6に記載の発明では、請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠において、熱可塑性樹脂によって形成され、前記カシメ部を熱カシメすることによって前記レンズを固定する構成とする。
請求項7に記載の発明では、レンズ組立体において、請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠と、光軸に沿う方向から見て円弧状に延びるレンズ側面と直線状に延びるDカット面とを備えるD形の外形を有し、前記光軸に沿う方向から見た外縁部に少なくとも前記レンズ側面に沿って連続する取付基準面を有し、前記レンズ鏡枠の前記カシメ部によってカシメ固定されたレンズと、を備える構成とする。
本発明のレンズ鏡枠およびレンズ組立体によれば、レンズ受面が中心軸線に対して軸対称に設けられることによりカシメ時にレンズに作用する力のバランスが良好となるため、光軸に沿う方向から見た外形が円弧形状と直線形状とで形成されたレンズをカシメによって精度よく固定することができるという効果を奏する。
本発明の実施形態に係るレンズ組立体の構成を示す模式的な平面図、およびそのA−A断面図、B−B断面図である。 本発明の実施形態に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図、およびそのA’−A’断面図、B’−B’断面図である。 本発明の実施形態に係るレンズ組立体の製造工程を説明する模式的な工程説明図である。 本発明の実施形態の第1変形例に係るレンズ組立体の構成を示す模式的な平面図、およびそのC−C断面図、D−D断面図である。 本発明の実施形態の第1変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図、およびそのC’−C’断面図、D’−D’断面図である。 本発明の実施形態の第2変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図、およびそのE−E断面図である。 本発明の実施形態の第3変形例に係るレンズ組立体の構成を示す模式的な平面図、およびそのF−F断面図、G−G断面図である。 本発明の実施形態の第3変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な左側面図、平面図、右側面図、および平面図におけるG’−G’断面図である。 本発明の実施形態の第4、第5変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図である。 従来技術のレンズ組立体の構成の一例を示す模式的な斜視図、a視の平面図、およびそのb−b断面図、c−c断面図である。
本発明の実施形態に係るレンズ鏡枠およびレンズ組立体について説明する。
図1(a)は、本発明の実施形態に係るレンズ組立体の構成を示す模式的な平面図である。図1(b)、(c)は、それぞれ図1(a)におけるA−A断面図、B−B断面図である。図2(a)は、本発明の実施形態に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図である。図2(b)、(c)は、それぞれ図2(a)におけるA’−A’断面図、B’−B’断面図である。
本実施形態のレンズ組立体10は、図1(a)、(b)、(c)に示すように、光軸に沿う方向から見た外形が円弧形状と直線形状とで形成されたレンズ1を、その外縁部で厚さ方向に熱カシメしてレンズ鏡枠2に固定した組立体である。カシメ固定部2Dは、熱カシメによって熱変形された後のレンズ鏡枠2の部分である。
レンズ組立体10は、単体もしくは他のレンズ組立体と組み合わされて、レンズユニットを構成するものである。例えば、スチルカメラ、ビデオカメラ、プロジェクタ、スキャナなどの光学機器において、撮像光学ユニット、投影光学ユニット、読取光学ユニットなどのレンズユニットとして用いることができる。
レンズ1のレンズ面の形状は、必要に応じて適宜の形状を採用することができるが、以下では、一例として、凸球面からなる第1レンズ面1aと凹球面からなる第2レンズ面1bを備える負のメニスカスレンズの場合の例で説明する。
レンズ1を光軸Oに沿う方向から見た外形は、優弧形状部と直線形状部とを有するD字状とされている。レンズ1の側面は、優弧形状部に対応するレンズ側面1eおよび直線形状部に対応するDカット面1dを備える。
レンズ側面1eは、レンズ1の基準外形を構成するもので、光軸Oと同軸となるように精度よく形成された半径rの部分円筒面からなる。このため、レンズ側面1eはレンズ1の径方向の位置決めに用いることができる。
Dカット面1dは、レンズ組立体10を用いる光学機器に組み付けたときに、他の部品との干渉を避ける等の目的で設けられた形状であり、光軸Oに平行な平面からなる。
Dカット面1dと光軸Oとの距離d(ただし、d<r)は、必要に応じて適宜寸法に設定することができる。
第1レンズ面1aは、図1(a)に示すように、外縁部においてレンズ側面1eおよびDカット面1dと交差している。
第1レンズ面1aの裏面側には、第1レンズ面1aと同軸であって半径d(ただし、d<d)の円形の範囲に第2レンズ面1bが形成されている。
第2レンズ面1bの外周からレンズ側面1eおよびDカット面1dまでの間には、第1レンズ面1aの面頂からの距離が一定値とされた光軸Oと直交する平面からなる取付基準面1cが形成されている。すなわち、本実施形態では、取付基準面1cは、周方向に連続する閉ループ状の平面になっている。
以下では、図1(c)に示すように、レンズ側面1eにおける光軸Oに沿う方向の長さ、すなわち取付基準面1cから第1レンズ面1aの外周までの距離をhで表し、レンズ1のコバ厚hと称する。
レンズ1の材質は、熱カシメによって第1レンズ面1a、第2レンズ面1bが変形しないように、適宜の光学ガラスを採用することができる。レンズ1の製造方法は、機械加工またはガラスモールド加工を採用することができる。
レンズ鏡枠2は、図2(a)、(b)、(c)に示すように半径rの貫通孔2eが中心部に形成された円筒状の筒部2Bと、筒部2Bの軸方向の一端から1つの径方向に沿って両外側に延ばされた1対のフランジ部2Aと、レンズ1のレンズ側面1eに外嵌するために各フランジ部2Aの外縁部から軸方向において筒部2Bと反対側に向かって延ばされた部分円筒形状を有するレンズ挿入枠部2C(側枠部)とを備える。
筒部2Bの外半径dは、本実施形態では、d<r<d<dとなる大きさに設定されている。
1対のフランジ部2Aの平面視の外形は、筒部2Bの外形に整列し中心軸線Pを挟んだ2枚の平行平面から構成される平側面2fと、平側面2fの対向方向に直交する方向において、レンズ側面1eの外半径rよりも大きな半径rを有する部分円筒面とで囲まれた形状を有している。本実施形態では、平側面2fは、中心軸線Pまでの距離、平行度が高精度に形成され、レンズ組立体10を光学機器に取り付ける際の取付や組み立ての基準面として用いることもできる。
フランジ部2Aにおいてレンズ挿入枠部2Cが設けられた側の表面(筒部2Bの先端に重なる領域も含む)は、中心軸線Pに直交する平面からなる。特に、中心軸線Pを中心とする半径r(ただし、r<r<r)の円内には、各レンズ挿入枠部2Cの間に挿入されるレンズ1の取付基準面1cを受けるレンズ受面2aが形成されている。
レンズ挿入枠部2Cは、フランジ部2Aの円筒状の外縁部から延ばされ、中心軸線Pを通り平側面2fに直交する平面Sに関して面対称な略円弧板状に設けられている。
各レンズ挿入枠部2Cの周方向の長さは、中心軸線Pに対する中心角がそれぞれ90°の円弧の長さに等しい設定とされている。
レンズ挿入枠部2Cの内周側には、レンズ側面1eを隙間嵌めで外嵌する1対の部分円筒面からなる挿入面2gが、中心軸線Pと同軸の位置関係に形成されている。挿入面2gの曲率半径は、半径rとされている。挿入面2gとレンズ側面1eの外半径rとの差は、50μm程度以下にすることが好ましい。
レンズ挿入枠部2Cの外周側には、中心軸線Pと同軸の部分円筒面である枠部外周面2hがそれぞれ形成されている。本実施形態の例では、枠部外周面2hは、フランジ部2Aの側方にも延長されてフランジ部2Aの円筒状の外周面も兼ねており、レンズ組立体10の最外の外周面を構成している。
枠部外周面2hは、曲率半径の寸法精度、真円度、中心軸線Pとの同軸度等が良好となるように成形されており、レンズ組立体10の光軸Oの位置決めを行う基準面として用いることができるようになっている。
レンズ挿入枠部2Cの中心軸線Pに沿う方向の先端部には、レンズ1を第1レンズ面1aの外縁部で厚さ方向にかしめてカシメ固定部2Dを形成するため、カシメ部2dが形成されている。カシメ部2dは、レンズ受面2aから中心軸線Pに沿って測った高さが、hからh(ただし、h>h)までの範囲に設けられている。カシメ部2dの先端の高さhは、熱カシメによって形成されるカシメ固定部2Dが、熱カシメ時に第1レンズ面1aのレンズ有効領域外にとどまることができる寸法に設定されている。
また、本実施形態のカシメ部2dは、レンズ挿入枠部2Cの周方向の全体にわたって設けられ、例えば、カシメを行い易いよう外周面には先端に向かって縮径するテーパ形状が付与されている。
このような構成により、レンズ鏡枠2の外形状は図2(a)に示すように、中心軸線Pから見たときに、枠部外周面2hに対応する半径rの円弧と、1対の平側面2fに対応する平行な弦とで囲まれた形状を有している。すなわち、レンズ鏡枠2の外形状は、中心軸線Pに対して直交する方向に最大半径となる半径rの円弧状に形成された基準面である枠部外周面2hと、半径rより小さい切欠状に形成された側面である平側面2fを有している。「切欠状」とは、平側面2fが、枠部外周面2hから延長された円筒面よりも径方向内側に引っ込んでおり、円柱形状を切り欠いたのと同様な形状を有していることを意味する。
また、レンズ挿入枠部2Cは、中心軸線Pに交差する方向においてレンズ受面2aよりも外側に配置され、レンズ受面2aよりも中心軸線Pと同方向に突出した側枠部を構成している。
1対のレンズ挿入枠部2Cおよび1対のカシメ部2dは、それぞれ中心軸線Pを挟んで対向し、中心軸線Pを含み平側面2fと平行な平面Tに関して面対称となる形状、位置に設けられている。
さらに、対をなすレンズ挿入枠部2C同士、およびカシメ部2d同士は、いずれも中心軸線Pを含み平面Tに直交する平面Sに関して面対称となる形状、位置に設けられている。
また、レンズ受面2aは、中心軸線P回りに閉ループ状の一続きの領域として設けられ、平面T、Sに関してそれぞれ面対称となる領域を構成している。
このように、本実施形態では、レンズ挿入枠部2C、カシメ部2d、レンズ受面2aはいずれも平面S、Tに関して面対称に設けられているため、中心軸線Pに関して180°軸対称(回転対称)になっている。
このような構成のレンズ鏡枠2は、適宜の熱可塑性樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂)等を金型によって成形して製造することができる。
次に、本実施形態のレンズ鏡枠2の作用について、レンズ組立体10の製造工程における作用を中心として説明する。
図3(a)、(b)は、本発明の実施形態に係るレンズ組立体の製造工程を説明する模式的な工程説明図である。
レンズ1とレンズ鏡枠2とを組み立ててレンズ組立体10を製造するには、まず、図3(a)に示すような熱カシメ装置3に、レンズ鏡枠2をセットする。
熱カシメ装置3は、レンズ鏡枠2のカシメ部2dを上向きとして筒部2Bを下方側から保持する保持部3aが設けられた保持台3Aと、保持台3Aの上方で昇降可能に設けられ保持部3aに保持されたレンズ鏡枠2のカシメ部2dを中心軸線Pに向かう内方かつ下方に向けて熱変形させて熱カシメを行う加熱ヘッド3Bとを備える。
保持部3aは、例えば、レンズ鏡枠2の枠部外周面2hを位置決めに用いることにより、中心軸線Pを保持台3Aの水平方向の基準位置に整列させるようになっている。
また、加熱ヘッド3Bは、保持台3Aに保持されたレンズ鏡枠2のカシメ部2dおよびその内周側を覆う円弧状の領域で、カシメ部2dを下方側かつレンズ1の第1レンズ面1aの外縁部の傾斜に倣う方向に加圧する加圧面3bと、加圧面3bによってカシメ部2dが加圧される際にカシメ部2dの外周側への変形を規制する外周規制面3cとを備える。
加熱ヘッド3Bの温度は、レンズ鏡枠2の材質となる合成樹脂が軟化する温度、例えば、ポリカーボネート樹脂の場合は250℃程度に設定する。
次に、保持台3Aに保持されたレンズ鏡枠2のレンズ挿入枠部2Cの内側にレンズ1を挿入する。
レンズ1の挿入姿勢は、取付基準面1cがレンズ鏡枠2のレンズ受面2aに対向するとともに、Dカット面1dがレンズ鏡枠2の平側面2fと略平行となる位置関係に保持して、レンズ側面1eが1対の挿入面2gに挟まれる状態で挿入する。
レンズ1を挿入する際、本実施形態では、不図示の移載装置、例えば、ロボットハンドや挿入治具によって、レンズ1の光軸Oが中心軸線Pと略整列するように挿入する。これにより、レンズ1の挿入時に、レンズ1が挿入面2gとの間の隙間の範囲内で偏った状態に挿入されてしまうことを防止できる。
このため、本実施形態では、レンズ1は、レンズ側面1eと挿入面2gとの間に略均等な隙間をあけた状態で挿入され、レンズ受面2a上に取付基準面1cが重ね合わされる。
次に、図3(b)に示すように、レンズ鏡枠2の材質に応じて、例えば250℃に加熱された加熱ヘッド3Bを下降させる。
加熱ヘッド3Bで加熱されて軟化したカシメ部2dは、外周規制面3cによって外周側への倒れ変形が規制された状態で加圧面3bによって下方側に加圧され、レンズ1の内周側に折り曲げられるとともに第1レンズ面1aの外縁部に向かって徐々に変形していく。
加熱ヘッド3Bが、予め決められた下降位置まで下降すると、熱変形したカシメ部2dは第1レンズ面1aの外縁部と加圧面3bとの間に挟まれ、第1レンズ面1aの外縁部に密着する。これによりカシメ固定部2Dが形成される。
カシメ固定部2Dが塑性(永久)変形し、第1レンズ面1aと均一に密着した状態になったら、加熱ヘッド3Bによる加圧を解除し、加熱ヘッド3Bを上方に退避させる。
カシメ固定部2Dがある程度冷却して、カシメ固定部2Dの形状が安定したら、レンズ1が固定されたレンズ鏡枠2を保持台3Aから取り外す。
このようにして、レンズ組立体10が製造される。
上記の熱カシメを行う工程では、レンズ1はカシメ固定部2Dを介して加熱ヘッド3Bから下方に加圧されため、取付基準面1cを通してレンズ受面2aが押圧される。
レンズ受面2aは、加熱ヘッド3Bから離間しているため熱の影響による軟化がおこりにくい。したがって、カシメ部2dの変形に比べると変形量は少ないものの、ガラスに比べると剛性が低いため、押圧力に応じて略弾性的に変形する。また、レンズ受面2aからレンズ1に対して押圧力に応じた反力分布が生じる。
本実施形態では、レンズ1の取付基準面1cは光軸Oを含みDカット面1dに直交する平面に関して面対称、光軸Oを含みDカット面1dに平行な平面に関しては非対称な形状を有しているが、光軸Oと中心軸線Pとを略整列させた状態でレンズ1をレンズ鏡枠2に挿入するため、取付基準面1cとレンズ受面2aとの接触部位の形状は、平面S、Tに関しては面対称、中心軸線Pに関しては180°軸対称となる。
このため、加圧中のレンズ受面2aの変形と、レンズ受面2aからの反力分布も平面S、Tに関して面対称、中心軸線Pに関しては180°軸対称となる。
例えば、図3(b)に太矢印で示すように、カシメ固定部2Dに対向するレンズ受面2a上では比較的大きな反力が平面Sに関して対称に発生する。一方、カシメ固定部2Dから離れた位置におけるレンズ受面2aでは直上にカシメ固定部2Dが位置しないため反力は小さくなるものの、図1(c)に太矢印で示すように、反力分布は平面Tに関して対称となる。
このように、加圧を受けるレンズ1は、カシメ固定部2D、レンズ受面2aによって平面S、Tに関してそれぞれ対称に押圧されるとともに、カシメ固定部2D、レンズ受面2aとの接触位置とレンズ受面2aの変形も平面S、Tに関してそれぞれ対称となるため、平面S、Tに直交する2軸方向に関する力学的な条件が対称的になっている。また、中心軸線Pに関する力学的な条件が回転対称的になっている。
この結果、レンズ1に作用する外力のつり合いが良好となる。したがって、レンズ1およびレンズ鏡枠2の微細な形状誤差等の個体差や加熱ヘッド3Bの動作バラツキなどの偶発的な誤差要因に基づく微小変位を除けば、加圧を受けている間に、対称面や対称軸に対する対称性がくずれるようなレンズ受面2aに沿う方向に移動が起こりにくくなる。
このため、レンズ鏡枠2によれば、レンズ1をカシメによって精度よく固定することができる。また、レンズ組立体10の偏心が抑制され、レンズ組立体10を用いるレンズユニットの光学性能が良好となる。
ここで、厳密には、光軸Oと中心軸線Pとがずれている場合には、幾何学的に完全な面対称にはならないが、光軸Oと中心軸線Pとがレンズ側面1eと挿入面2gとの間の隙間の範囲でばらつく程度であれば、取付基準面1cの形状が有している非対称性に比べると取付基準面1cとレンズ受面2aとの接触面の非対称性は充分に小さいため、レンズ1が移動しやすい方向と非対称性が強い方向との間には明確な相関は見られない。したがって、本発明における「面対称」、「軸対称」の範囲は、幾何学的に厳密な面対称、軸対称よりも広い範囲が含まれる。
非対称性の大きさ規定するため、取付基準面1cとレンズ受面2aとの「実際の当接面」の図心をCとし、図心Cの平面S、Tに対する距離をそれぞれC、Cと表すと、|C/r|、|C/d|が、それぞれ5%以下は、面対称と見なしてよい非対称性の許容範囲である。また、軸対称の許容範囲は、互いに対称であるべき「実際の当接面」を対称移動させたときの図心のずれ量を半径rで割った値が最大でも5%以下であることが、軸対称と見なしてよい非対称性の許容範囲である。
この非対称性の許容範囲は、レンズ1の挿入位置の誤差によって発生する非対称性のみならず、面対称または軸対称であるべきレンズ受面2aの形状誤差の影響によって「実際の当接面」に発生する非対称性にも適用できる。つまり、「実際の当接面」が非対称性の許容範囲を満たす範囲では、レンズ受面2aが非対称性を有していても対称と見なすことができる。
これに対して、図10(b)、(c)、(d)に示す例のように取付基準面101c、レンズ受面102aが平面sのみに対称である場合、平面sと直交する平面tに関して非対称になり、かつ軸対称でもないため、レンズ受面102aの変形やレンズ受面102aからの反力分布も平面tおよび中心軸線pに関して非対称になる。この結果、レンズ101は、熱カシメする間にDカット面101dが設けられた方向に移動しやすくなり、光軸oを中心軸線pに整列させて熱カシメを開始しても、レンズ101がDカット面101d方向への偏心しやすくなる。このため、レンズ組立体100を用いるレンズユニットの光学性能が低下してしまう。
例えば、レンズ1をこのような従来技術のレンズ鏡枠102に熱カシメして、複数のサンプルで偏心量を測定したところ、偏心量の平均は約5μmとなった。これに対して、レンズ1を本実施形態のレンズ鏡枠2に熱カシメした場合には、偏心量の平均は2μm以内とでき、偏心量を略半減することができた。
また、レンズ組立体10では、熱カシメ時にカシメ固定部2Dを通して押圧されるため、レンズ1には、特にカシメ固定部2Dとレンズ受面2aとで挟まれた領域の近傍での残留歪みが大きくなる。レンズ1とレンズ鏡枠2との当接部分であるカシメ固定部2Dおよびレンズ受面2aの対称性により、この残留歪みも平面S、Tに関してそれぞれ面対称、中心軸線Pに関しては軸対称な分布となる。
このため、残留歪みによって収差劣化が発生したとしても、2軸方向に面対称な収差劣化、軸対称な収差劣化となり画質のバランスがくずれないため目立ちにくく、同様な量で非対称に発生する収差劣化に比べて画質への影響を低減できる。
[第1変形例]
次に、本実施形態の第1変形例について説明する。
図4(a)は、本発明の実施形態の第1変形例に係るレンズ組立体の構成を示す模式的な平面図である。図4(b)、(c)は、それぞれ図4(a)におけるC−C断面図、D−D断面図である。図5(a)は、本発明の実施形態の第1変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図である。図5(b)、(c)は、それぞれ図5(a)におけるC’−C’断面図、D’−D’断面図である。
本変形例のレンズ組立体20は、図4(a)、(b)、(c)に示すように、上記実施形態のレンズ組立体10においてレンズ鏡枠2に代えてレンズ鏡枠12を備えたものである。
本変形例のレンズ鏡枠12は、図5(a)、(b)、(c)に示すように、上記実施形態のレンズ鏡枠2の一方の平側面2fから径方向外側に張り出すD字状突起部12gを設けたものである。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
D字状突起部12gは、中心軸線Pに沿う方向から見て劣弧を有するD字状の外形を備え、中心軸線Pに沿う方向に適宜厚さを有する突起である。本実施形態では、D字状突起部12gの厚さは一例として成形の平均肉厚に等しい一定厚さに設けられている。
D字状突起部12gの突出方向の先端面である突起部外周面12hは、枠部外周面2hを構成する部分円筒面に対して周方向に整列した部分円筒面とされ、周方向の両端部が枠部外周面2hと滑らかに連続している。このため、突起部外周面12hは、枠部外周面2hとともに、レンズ組立体20の基準外形を構成しており、レンズ組立体20の径方向の位置決めの基準面や固定面として用いることが可能である。
このような構成により、枠部外周面2hおよび突起部外周面12hは、優弧形状に設けられた円弧状の基準面を構成している。
D字状突起部12gにおいて、レンズ挿入枠部2C側の表面はレンズ受面2aで受けられたレンズ1の取付基準面1cが接触しないように、レンズ受面2aよりも筒部2B側に引っ込んだ形状の段状部12fが形成されている。段状部12fは、レンズ受面2aよりも筒部2B側に引っ込んでいる適宜形状を採用することができる。本実施形態では、段状部12fは、一例として、レンズ受面2aと平行な平面からなる。
D字状突起部12gとレンズ受面2aとの間の段差部は平側面2fによって形成されている。
段状部12fは、レンズ挿入枠部2Cに挿入されるレンズ1とD字状突起部12gとを接触させないための逃げ部を構成している。
このような構成のレンズ鏡枠12は、上記実施形態のレンズ鏡枠2と同様にしてレンズ1をレンズ挿入枠部2Cに挿入した後、熱カシメ装置3によってカシメ部2dを熱カシメしてカシメ固定部2Dを形成することで、レンズ1を固定することができる。
また、D字状突起部12gの段状部12fは、レンズ受面2aよりも筒部2B側に引っ込んでいるため、レンズ1を熱カシメ時に押圧してもレンズ1と接触することがない。このため、熱カシメの際に、レンズ1の取付基準面1cとレンズ受面2aとは、上記実施形態と同様に当接するため、レンズ1を熱カシメによって精度よく固定することができる。
また、レンズ組立体20では、D字状突起部12gの突起部外周面12hが枠部外周面2hと同様に基準外形を構成している。このため、レンズ組立体20をレンズユニットや光学機器に位置決めしたり装着したりする際に、枠部外周面2hに加えて突起部外周面12hも位置決め基準面や固定面として利用できる。したがって、枠部外周面2hのみを位置決め基準面や固定面として用いる場合に比べて、装着時の組付誤差を低減したり、取付を容易にすることができる。
また、D字状突起部12gは、中心軸線Pに沿う方向から見てレンズ1を取付基準面1c側から覆うように張り出されている。これにより、レンズ組立体10に比べて、レンズ1の露出が低減されているためレンズ保護の機能を有する。すなわち、搬送などの際にも人手、搬送装置、搬送治具などがレンズ1に直接接触したりぶつかったりする可能性を低減することができる。
[第2変形例]
次に、本実施形態の第2変形例について説明する。
図6(a)は、本発明の実施形態の第2変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図である。図6(b)は、図6(a)におけるE−E断面図である。
本変形例のレンズ鏡枠22は、図6(a)、(b)に示すように、上記第1変形例のレンズ鏡枠12のレンズ受面2a、段状部12fに代えて、1対のレンズ受面22a、段状部22fを備え、段状部22iを追加したものである。レンズ鏡枠22は、レンズ鏡枠12と同様に、レンズ1を熱カシメしてレンズ組立体を構成することができる。
以下、上記第1変形例と異なる点を中心に説明する。
1対のレンズ受面22aは、中心軸線Pに直交する平面であって、1対のレンズ挿入枠部2Cの各挿入面2gと貫通孔2eとの間、かつ中心軸線Pに対する中心角がレンズ挿入枠部2Cの円弧の中心角と等しい扇形の内側となる円弧状領域に設けられている。
段状部22f、22iは、いずれも、レンズ挿入枠部2Cに挿入されるレンズ1の取付基準面1cが、レンズ受面22aのみと接触するように、D字状突起部12gおよびフランジ部2Aのレンズ挿入枠部2C側の表面に設けられた逃げ部である。
段状部22fは、D字状突起部12gが設けられた側であって1対のレンズ受面22aによって周方向に挟まれた領域において、レンズ受面22aよりも筒部2B側に引っ込んだ形状に設けられている。
段状部22iは、中心軸線Pを挟んで段状部22fと対向する領域のフランジ部2A上であって1対のレンズ受面22aによって周方向に挟まれた領域において、レンズ受面22aよりも筒部2B側に引っ込んだ形状に設けられている。
本変形例の段状部22f、22iは、一例としてレンズ受面22aに平行な平面からなるが、上記第1変形例の段状部12fと同様、この構成には限定されない。
このように、レンズ鏡枠22は、レンズ受面22aが複数からなり、中心軸線P回りに閉ループ状には設けられていない場合の例になっている。このような構成でも、上記実施形態のレンズ鏡枠2や上記第1変形例のレンズ鏡枠12と同様に、中心軸線Pを含んで互いに直交する平面S、Tに関して面対称となる領域に形成されているため、レンズ1を熱カシメによって精度よく固定することができる。
また、本変形例によれば、レンズ1が固定されたとき、段状部22f、22iに対向する取付基準面1cは押圧力を受けないため、1対のレンズ受面22aに挟まれた領域のレンズ1内に残留歪みが発生しにくくなる。
[第3変形例]
次に、本実施形態の第3変形例について説明する。
図7(a)は、本発明の実施形態の第3変形例に係るレンズ組立体の構成を示す模式的な平面図である。図7(b)、(c)は、図7(a)におけるF−F断面図、G−G断面図である。図8(a)、(b)、(c)は、本発明の実施形態の第3変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な左側面図、平面図、右側面図である。図8(d)は、図8(b)におけるG’−G’断面図である。
本変形例のレンズ組立体30は、図7(a)、(b)、(c)に示すように、レンズ1のDカット面1dの光軸Oからの距離をより小さくしたレンズ31を、その外縁部で厚さ方向に熱カシメしてレンズ鏡枠32に固定した組立体である。カシメ固定部32Dは、熱カシメによって熱変形されたレンズ鏡枠32の部分を示す。
すなわち、レンズ31は、上記実施形態のレンズ1のDカット面1dに代えて、光軸Oに平行な平面からなり、光軸Oとの距離eが、e<dとされたものである。距離eは、例えば、取付基準面1cの内半径d以下であってもよい。e<dの場合には、取付基準面1cは、Dカット面31dによって周方向に分断されるため、光軸Oに沿う方向から見てC字状の形状となる。
このようなレンズ31の外形に対応して、レンズ鏡枠32は、上記第1変形例のレンズ鏡枠12の1対のフランジ部2A、筒部2B、D字状突起部12g、1対のレンズ挿入枠部2Cに代えて、1対のフランジ部32A、1対のフランジ支持枠部32B、C字状突起部32g、1対のレンズ挿入枠部32C(側枠部)を備え、Dカット挿入枠部32j(側枠部)を追加したものである。
以下、上記第1変形例と異なる点を中心に説明する。
1対のフランジ部32Aは、図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、上記第1変形例のフランジ部2Aの幅を平面Tに直交する方向に狭めた形状を有する。
すなわち、フランジ部32Aは、レンズ31のDカット面31dが配置される側において、平面Tからの距離が距離e(ただし、e<e<d)となる位置に、平側面2fに代えて平側面32nが形成されている。
また、フランジ部32Aの平面Tを挟んで反対側には、平面Tからの距離が距離eとなる位置に、平側面2fに代えて平側面32mが形成されている。
各フランジ部32Aには、上記第1変形例の貫通孔2eに沿って周方向に延ばされるとともに平側面32m、32nの間に挟まれた範囲で中心軸線Pに沿って延ばされた円弧板状のフランジ支持枠部32Bが接続されている。フランジ支持枠部32Bの形状は、上記第1変形例の筒部2Bにおいて平側面32m、32nの外側となる部分を切除した形状に相当している。
1対のフランジ部32Aは、それぞれの平側面32mにおいてC字状突起部32gにより周方向に連結されている。C字状突起部32gは、平側面32mから径方向外側に張り出したC字状とされ、上記第1変形例のD字状突起部12gと同様に中心軸線Pに沿う方向に適宜厚さを有する。
C字状突起部32gの内周面は、フランジ支持枠部32Bの内周面を形成する貫通孔2eが延長された半径rの部分円筒面である。
C字状突起部32gの突出方向の先端面(外周面)は、上記第1変形例のD字状突起部12gと同様の突起部外周面12hが形成されている。すなわち、突起部外周面12hは、後述するレンズ挿入枠部32Cの枠部外周面2hに整列された半径rの部分円筒面である。
このため、突起部外周面12hは、後述するレンズ挿入枠部32Cの枠部外周面2hとともに、レンズ組立体30の基準外形を構成しており、レンズ組立体30の径方向の位置決めの基準面や固定面として用いることが可能である。
また、1対のフランジ部32Aにおいて、フランジ支持枠部32Bが設けられたのと反対側の表面には、各平側面32nと整列する位置に平面Tと平行で、中心軸線Pと内周面32iとの距離が距離e(ただし、e>e)、厚さが(e−e)の壁体であるDカット挿入枠部32jが架設されている。Dカット挿入枠部32jの壁体高さは、レンズ31のコバ厚hよりも低くなる寸法とされている。
ここで、距離eは、(e−e)が後述する1対のレンズ挿入枠部2Cとレンズ31のレンズ側面1eとの隙間(r−r)と同等の寸法となるように設定する。
このような構成により、1対のフランジ部32Aは、C字状突起部32gおよびDカット挿入枠部32jによって対向方向に連結されている。
このため、レンズ鏡枠32の内側には中心軸線Pから見たとき、半径rの優弧と中心軸線Pからの距離eの内周面32iとで囲まれたD字状の穴部が形成されている。
1対のフランジ部32Aにおいてフランジ支持枠部32Bが設けられたのと反対側の表面には、1対のレンズ挿入枠部32Cが中心軸線Pに沿って延ばされている。
1対のレンズ挿入枠部32Cは、上記第1変形例のレンズ挿入枠部2Cの周方向の幅寸法を、フランジ部32Aの範囲内に収まるように短縮したものである。本変形例では、各レンズ挿入枠部32Cの周方向の寸法を中心軸線Pに対する中心角をθとしたとき、rcos(θ/2)≦eとなる設定とし、かつ平面Tに関して面対称となる位置に配置している。
各レンズ挿入枠部32Cの先端部には、上記第1変形例のカシメ部2dと周方向の長さのみが異なるカシメ部32dが設けられ、これにより、熱カシメしたときにカシメ固定部32Dが形成されるようになっている。
フランジ部32Aにおいてレンズ挿入枠部32Cが設けられた側の表面(フランジ支持枠部32Bの先端に重なる領域も含む)は、中心軸線Pに直交する平面からなる。特に、中心軸線Pを中心とする半径r(ただし、r<r<r)の円内であって、平側面32mと内周面32iで挟まれる領域には、各レンズ挿入枠部32CおよびDカット挿入枠部32jの間に挿入されるレンズ31の取付基準面1cを受ける1対のレンズ受面32aが形成されている。各レンズ受面32aは、平面S、Tに関してそれぞれ面対称な形状を有しており、中心軸線Pに関しては180°軸対称な形状を有している。
また、C字状突起部32gは、上記第1変形例のD字状突起部12gと同様、レンズ受面32aに対する逃げ部を構成しており、レンズ挿入枠部32C側の表面にはレンズ受面32aで受けられたレンズ1の取付基準面1cが接触しないように、レンズ受面32aよりもフランジ支持枠部32B側に引っ込んだ形状の段状部32fが形成されている。段状部32fは、レンズ受面32aよりもフランジ支持枠部32B側に引っ込んでいる適宜形状を採用することができる。本実施形態では、段状部32fは、一例として、レンズ受面32aと平行な平面からなる。
C字状突起部32gとレンズ受面32aとの間の段差部は平側面32mによって形成されている。
このような構成のレンズ鏡枠32は、上記実施形態のレンズ鏡枠2と同様にしてレンズ1をレンズ挿入枠部32Cに挿入した後、熱カシメ装置3によってカシメ部32dを熱カシメしてカシメ固定部32Dを形成することで、レンズ31を固定することができる。
また、C字状突起部32gの段状部32fは、レンズ受面32aよりもフランジ支持枠部32B側に引っ込んでいるため、レンズ31を熱カシメ時に押圧してもレンズ31と接触することがない。このため、レンズ31の取付基準面1cとレンズ受面32aとの当接面の形状は、平面S、Tに関しては面対称となり、中心軸線Pに関しては180°軸対称になっているので、レンズ31を熱カシメによって精度よく固定することができる。
また、レンズ組立体30では、上記第1変形例と同様に、C字状突起部32gの突起部外周面12hが枠部外周面2hと同様に基準外形を構成している。このため、レンズ組立体30をレンズユニットや光学機器に位置決めしたり装着したりする際に、枠部外周面2hに加えて突起部外周面12hも位置決め基準面や固定面として利用できる。したがって、枠部外周面2hのみを位置決め基準面や固定面として用いる場合に比べて、装着時の組付誤差を低減したり、取付を容易にしたりすることができる。
また、C字状突起部32gは、中心軸線Pに沿う方向から見てレンズ31の外縁部を取付基準面1c側から覆うように張り出されている。これにより、レンズ組立体10に比べて、レンズ1の露出が低減されているためレンズ保護の機能を有する。すなわち、搬送などの際にも人手、搬送装置、搬送治具などがレンズ31に直接接触したりぶつかったりする可能性を低減することができる。
[第4、第5変形例]
次に、本実施形態の第4、第5変形例について説明する。第4変形例、第5変形例は、レンズ鏡枠にレンズ受面を複数設ける場合の配置に関する変形例である。第4、第5変形例の各レンズ鏡枠は、上記実施形態のレンズ鏡枠2と同様にレンズ1を好適に固定して、レンズ組立体を形成することができる。
以下、上記実施形態と異なる点を中心に説明する。
図9(a)、(b)は、本発明の実施形態の第4、第5変形例に係るレンズ鏡枠の構成を示す模式的な平面図である。
第4変形例のレンズ鏡枠42は、図9(a)に示すように、直線部として1箇所の平側面2fを有するD字状のフランジ部42A上において、中心軸線Pに関して90°軸対称となる位置に4箇所のレンズ受面42aが設けられている。平側面2fは、隣り合う2箇所のレンズ受面42aに挟まれた位置に形成されている。このため、各レンズ受面42aは、フランジ部42Aの優弧状の側面に沿って配置されている。
各レンズ受面42aの間には、レンズ1を受ける際の逃げ部として、レンズ受面42aより凹んだ段状部42fがそれぞれ形成されている。
また、フランジ部42A上には、中心軸線Pを通り平側面2fに直交する平面Sに関して面対称、すなわち中心軸線Pに関して180°軸対称となるように、円弧状に湾曲された1対のレンズ挿入枠部42Cが設けられている。レンズ挿入枠部42Cの形状は、上記実施形態のレンズ挿入枠部2Cと周方向の長さが異なるのみであり、本変形例では、隣り合う2箇所のレンズ受面42aを径方向外側から覆うことができる周方向長さを有している。レンズ挿入枠部42Cの突出方向の先端(図9(a)の紙面手前側)には、レンズ挿入枠部2Cと同様のカシメ部2dが設けられている。
このような構成により、レンズ鏡枠42は、中心軸線Pに関して、180°軸対称のカシメ部2dと、90°軸対称のレンズ受面42aを有するため、上記実施形態と同様に、レンズ1をカシメによって精度よく固定することができる。
第5変形例のレンズ鏡枠52は、図9(b)に示すように、直線部として1箇所の平側面2fを有するD字状のフランジ部52A上において、中心軸線Pに関して120°軸対称となる位置に3箇所のレンズ受面52aが設けられている。平側面2fは、隣り合う2箇所のレンズ受面52aに挟まれた位置に形成されている。このため、各レンズ受面52aは、フランジ部52Aの優弧状の側面に沿って配置されている。
各レンズ受面52aの間には、レンズ1を受ける際の逃げ部として、レンズ受面52aより凹んだ段状部52fがそれぞれ形成されている。
また、フランジ部52A上には、レンズ受面52aの配置に対応して、中心軸線Pに関して120°軸対称となるように、円弧状に湾曲された3つのレンズ挿入枠部52Cが設けられている。レンズ挿入枠部52Cの形状は、上記実施形態のレンズ挿入枠部2Cと周方向の長さが異なるのみであり、本変形例では、各レンズ受面52aを径方向外側から覆うことができる周方向長さを有している。レンズ挿入枠部52Cの突出方向の先端(図9(b)の紙面手前側)には、レンズ挿入枠部2Cと同様のカシメ部2dが設けられている。
このような構成により、レンズ鏡枠52は、中心軸線Pに関して、120°軸対称のカシメ部2dと、120°軸対称のレンズ受面52aを有するため、上記実施形態と同様に、レンズ1をカシメによって精度よく固定することができる。
本変形例は、レンズ受面が、互いに直交する2平面に関して面対称とならない軸対称の位置に設けられた場合の例になっている。
なお、上記の説明では、カシメ固定部が第1レンズ面の外縁部を押圧する場合の例で説明したが、レンズは外縁部に基準外形を有する取付用フランジ部が形成された構成としてもよい。
また、上記の説明では、レンズ鏡枠に1つのレンズを固定する場合の例で説明したが、例えば、レンズ鏡枠は、表裏にレンズ受面を備え、それぞれのレンズ受面側から別々のレンズ挿入枠部が設けられ、2枚のレンズをレンズ鏡枠の表裏に固定する構成としてもよい。
また、上記の説明では、光軸に沿う方向から見た外形が円弧形状と直線形状とで形成されたレンズとして、レンズ側面が光軸に平行な平面によって1箇所で切除されたD形の外形を有する場合の例で説明した。これは直線形状が1箇所に設けられている場合の例である。直線形状の部分は、2箇所以上でもよいし、切除形状は光軸に平行な平面には限定されず、光軸に非平行な平面も採用することができる。
また、レンズの光軸に沿う方向から見た外形は、光軸に対して軸対称な形状であってもよいが、本発明は軸対称とならない場合に特に好適である。
また、上記の説明では、D字状突起部やC字状突起部を備える場合に、これらを板状に形成し、その先端部に基準外形を設けた場合の例で説明したが、レンズ鏡枠の中心軸線に沿って長く延びる部分円筒状の側壁面を形成して、軸方向に長い基準外形を形成してもよい。すなわち、レンズ鏡枠12、22、32において、それぞれD字状突起部12g、C字状突起部32g上でレンズ挿入枠部2C、32Cが周方向に延長されて互いに連結され、中心軸線Pに沿う方向から見た形状がC字状となる側枠部を構成してもよい。
また、上記の説明では、レンズの取付基準面が光軸に直交する平面からなる場合の例を挙げたため、レンズ受面は、中心軸線Pに直交する平面として形成された場合の例で説明した。しかしながら、レンズ受面は、レンズの取付基準面の形状に応じて、中心軸線Pに交差する方向に延ばされていればよく、中心軸線Pに直交する平面には限定されない。
例えば、レンズの取付基準面が、凸形状または凹形状のレンズ面である場合、レンズ面の接平面となる傾斜面や、接曲面となる円錐面などの形状を採用することができる。
また、上記の説明では、レンズ鏡枠の全体が熱可塑性樹脂で形成され場合の例で説明したが、熱カシメする部分を含む一部のみを熱可塑性樹脂で構成し、他の箇所を熱硬化性樹脂や金属等の異材質で構成してもよい。このような構成の場合には、平均肉厚を一定にする必要はなくなるため、形状の自由度を向上できる。
また、上記の説明では、レンズをレンズ鏡枠に熱カシメによって固定する場合の例で説明したが、レンズに対する負荷が許容できる場合には、金属カシメを採用してもよい。
また、上記実施形態および各変形例に説明したすべての構成要素は、本発明の技術的思想の範囲で適宜組み合わせたり削除したりして実施することができる。
1、31 レンズ
1a 第1レンズ面
1b 第2レンズ面
1c 取付基準面
1d、31d Dカット面
1e レンズ側面(基準面)
2、12、22、32、42、52 レンズ鏡枠
2C、32C、42C、52C レンズ挿入枠部(側枠部)
2D、32D カシメ固定部
2a、22a、32a、42a、52a レンズ受面
2d、32d カシメ部
2g 挿入面
2h 枠部外周面(基準面)
3 熱カシメ装置
3B 加熱ヘッド
10、20、30 レンズ組立体
12f、22f、22i、32f 段状部
12g D字状突起部
12h 突起部外周面(基準面)
32g C字状突起部
32i 内周面
32j Dカット挿入枠部(側枠部)
O 光軸
P 中心軸線
S、T 平面
h コバ厚

Claims (7)

  1. 光軸に沿う方向から見て円弧状に延びるレンズ側面と直線状に延びるDカット面とを備えるD形の外形を有し、前記光軸に沿う方向から見た外縁部に少なくとも前記レンズ側面に沿って連続する取付基準面を有するレンズを熱カシメによって固定するレンズ鏡枠であって、
    前記レンズの前記取付基準面を当接させて、前記レンズの光軸に沿う方向に前記レンズを位置決めするレンズ受面と、
    前記レンズ側面を外嵌して、前記レンズを前記光軸に直交する方向に位置決めするため、前記レンズ受面と交差する方向に延びる軸線を中心軸線とする部分円筒面状の内周面を有し、前記中心軸線に関する径方向において前記レンズ受面よりも外側から、前記中心軸線に沿う方向に突出した側枠部と、
    該側枠部の突出方向の先端に形成され、変形することで前記レンズ受面との間で前記レンズをカシメ固定する複数のカシメ部と、
    を備え、
    前記レンズ受面および前記複数のカシメ部は、
    それぞれ前記中心軸線にして円環形状を除く軸対称に設けられるとともに、
    前記中心軸線を含む少なくとも1つの共通の平面に関していずれも面対称に設けられ、
    前記レンズ受面は、
    前記中心軸線に沿う方向から見て、前記複数のカシメ部のそれぞれと前記中心軸線との間に、少なくとも一部が配置された
    ことを特徴とするレンズ鏡枠。
  2. 前記レンズ受面は、
    前記中心軸線回りの閉ループ状に設けられ、前記中心軸線に沿う方向から見た形状が、内周が円形で、外周が前記側枠部の前記内周面に沿う円弧と前記円弧の端部を結ぶ直線とからなる
    ことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡枠。
  3. 前記レンズ受面は、前記中心軸線を挟んで対向する複数領域として設けられたことを特徴とする請求項1に記載のレンズ鏡枠。
  4. 前記中心軸線に沿う方向から見て、半円よりも大きな円弧状に延びる部分円筒面状の枠部外周面が、前記中心軸線に関する径方向において前記側枠部の内周面よりも外側に設けられた
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠。
  5. 前記側枠部は、前記中心軸線を挟んで対向して配置された1対からなり、
    前記側枠部の各外周面は、前記中心軸線に沿う方向から見て前記中心軸線と同軸な円弧状の湾曲面からなる
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠。
  6. 熱可塑性樹脂によって形成され、前記カシメ部を熱カシメすることによって前記レンズを固定する
    ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載のレンズ鏡枠と、
    光軸に沿う方向から見円弧状に延びるレンズ側面と直線状に延びるDカット面とを備えるD形の外形を有し、前記光軸に沿う方向から見た外縁部に少なくとも前記レンズ側面に沿って連続する取付基準面を有し、前記レンズ鏡枠の前記カシメ部によってカシメ固定されたレンズと、
    を備えることを特徴とするレンズ組立体。
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