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JP5885649B2 - 反射防止膜を有する光学素子、光学系および光学機器 - Google Patents

反射防止膜を有する光学素子、光学系および光学機器 Download PDF

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Description

本発明は、反射防止膜を有する光学素子、光学系および光学機器に関する。
反射防止膜として、一般にマルチコートと呼ばれる誘電体多層膜が広く用いられている。これは、屈折率の異なる薄膜を積層することで、各膜の表面および界面で発生する反射名波の振幅と位相を調整し、それらを干渉させることで反射光を低減させる仕組みである。例えば、特許文献1は、屈折率が1.90以上の基板上に真空蒸着や電子銃蒸着を用いて形成した、5層の誘電体薄膜から構成される反射防止膜を有するレンズを開示している。
一方、特許文献2、3は、使用波長よりも小さな微細構造を有する反射防止構造体を有するレンズを開示している。光の波長よりも小さい構造に入射すると光は微細構造を構成する材料の体積比に準じた屈折率(有効屈折率neff)を示す媒質に入射したように振る舞う性質を持つ。このとき、微細構造を構成する材料の屈折率nと空間充填率ffの式(Lorentz−Lorenzの式)により次式が成立する。
特許文献2は、有効屈折率が光入射側から基板に向かって連続的に変化する、酸化アルミニウムを主成分とする板状結晶を最上層に用いた反射防止膜を開示している。光の反射は屈折率の異なる2つの物質の界面で起こるため、このように屈折率が連続的に変化する構造では反射波が抑制される。また、特許文献3には、微細凹凸構造による低屈折率層としての最上層と、最上層と基板との間に設けられた2層以上の多層膜と、を有する反射防止膜を開示している。最上層と基板との間に設けられた多層膜は、基板側から微細凹凸構造に向かって徐々に屈折率が低い構成となっている。
特開2010−271404号公報 特開2008−233880号公報 特開2009−42472号公報
しかしながら、特許文献1、3の反射防止膜は、各膜の表面および界面で発生する反射波の振幅と位相を調整する仕組みのため、干渉条件が崩れる斜入射(特に、入射角度が30度以上)で反射防止特性が低下する。また、膜厚敏感度が高く、数%ばらつくだけで反射防止性能が大きく低下する。一方、特許文献2の反射防止膜は、屈折率の高い基板に対しては微細凹凸構造と有機樹脂層界面の屈折率差が大きくなるため反射防止特性が低下する。
そこで本発明は、屈折率が高い基板に対して波長帯域特性、入射角度特性に優れた反射防止膜を有する光学素子、光学系、光学機器を提供することを例示的な目的とする。
本発明の光学素子は、基板と、該基板の上に形成された反射防止膜と、を有する光学素子であって、前記反射防止膜は、前記基板の上に形成された中間層と、該中間層の上に形成され、複数の凸部を有する凹凸層と、を有し、前記凹凸層は、前記基板の側から順に、屈折率が一定である均質部と、空気側から前記基板の側に向かって屈折率が連続的に大きくなる凹凸部と、を有し、前記中間層は、前記基板に最も近い第1層と、該第1層の上に形成された第2層と、該第2層の上に形成された第3層と、を有し、波長550nmの光に対する、前記基板の屈折率をns、前記第1層の屈折率をn1、前記第2層の屈折率をn2、前記第3層の屈折率をn3、前記均質部の屈折率をna、とし、前記第3層の物理膜厚をd3(nm)、前記均質部の物理膜厚をda(nm)、とするとき、以下の条件式を満たすことを特徴とする。
1.75≦ns≦2.20
n1<n2
n1<ns
1.35≦na≦1.58
75≦n3d3+nada≦130
本発明によれば、屈折率が高い基板に対して波長帯域特性、入射角度特性に優れた反射防止膜を有する光学素子、光学系、光学機器を提供することができる。
本実施形態の反射防止膜の概略部分断面図と屈折率分布図である。 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例1) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例2) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例3) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例4) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例5) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例6) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例7) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例8) 本発明の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。(実施例9) 本発明の光学機器の斜視図である。(実施例10) 比較例1の反射防止膜の屈折率分布と反射率特性のグラフである。 比較例2の反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。
以下、本実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、屈折率の値は波長550nmの光に対する値である。図1(a)は、後述する各実施例に共通の本実施形態の光学素子の概略部分断面図であり、図1(b)はその屈折率分布図であり、横軸は膜厚、縦軸は屈折率である。図1(a)は、高い屈折率(1.75以上2.2以下の屈折率)の光学基板(ガラス基板、以下単に「基板」と称する)10の表面付近を拡大して示している。100は反射防止膜である。本実施形態では、基板10は、使用波長域である可視光の波長帯域において透明である。
反射防止膜100は、入射または射出する光線の表面反射を低減し、微細凹凸構造30と、基板10と微細凹凸構造(凹凸層)30との間に設けられ、屈折率の異なる多層膜からなる中間層20と、を有する。
微細凹凸構造30は、使用波長域のうち最も短い波長よりも小さいピッチの凹凸構造(複数の凸部)を有する最上層である。微細凹凸構造30は、酸化アルミニウムを主成分とする多孔質層であってもよい。微細凹凸構造30は、光入射側から中間層20側に向かって空間充填率ffが連続的に高くなる部分を有するため(なお、後述する均質部(均質層)では屈折率は一定である)、その有効屈折率neffは光入射側から中間層側20に向かって連続的に増加する。
高い反射防止効果を得るために、微細凹凸構造30の膜厚は180nm以上300nm以下であることが好ましい。膜厚が180nm未満になると、高い反射防止性能が得られる波長帯域が狭くなり、特に可視光の長波長側(650〜700nm付近)で反射率が高くなり、膜厚が300nmより厚くなると、構造のランダム性に起因した散乱により透過率が低下する。
微細凹凸構造30の製造方法は特に限定されないが、量産性を考慮すると、真空成膜法や液相法(ゾルゲル法)により成膜した酸化アルミニウム(アルミナ)を含有する膜を水蒸気処理あるいは温水処理することで形成することが好ましい。このように、微細凹凸構造30は、ウェットプロセスで形成されてもよい。酸化アルミニウムを用いた場合、微細凹凸構造30の有効屈折率は最も光入射側でほぼ1となり、中間層20側に向かって連続的に上昇し、屈折率の最大値は1.35〜1.58の範囲にある。
微細凹凸構造30は、中間層20に接する部分に均質部(屈折率が一定の層)を有してもよい。例えば、酸化アルミニウム膜を水蒸気や温水で処理する場合には、表層に酸化アルミニウムの板状結晶が析出して厚さ方向に空間充填率が変化する微細凹凸構造30を形成するが、その下に不定形の酸化アルミニウム層(均質部)が残存してもよい。このとき、処理時間や処理温度、材料中の酸化アルミニウムの含有量や安定化剤、触媒等の添加物含有量を制御することで、残存する均質部の膜厚を制御することができる。これは酸化アルミニウム膜を水蒸気や温水で処理する場合に限られるわけではなく、ナノインプリント等の方法で光学素子表面に微細凹凸構造を形成する場合も可能である。また、均質部の屈折率は微細凹凸構造30の根本部分(最も均質部に近い部分)と一致させてもよく、異なっていてもよい。
中間層20は、基板10の上に形成され、屈折率の異なる2層以上の多層膜から構成される。微細凹凸構造30は均質構造に比べて緻密性が低いため、外界からの水分等が微細凹凸構造30を通過し、光学基板に影響を与える可能性がある。そこで、微細凹凸構造30と光学基板の間に多層膜からなる中間層20を形成することで、反射防止膜100の安定性を向上することができる。また、より安定性を高めるためには、中間層20を構成する薄膜のうち少なくとも1層は基板10より屈折率が高く緻密な層であることがより好ましい。
中間層20の各膜の製造方法は限定されず、液相法や真空蒸着法、スパッタ法などの任意のプロセスを選定することができる。但し、緻密な膜を形成するためには、ドライプロセスが好ましく、スパッタ法がより好ましい。
基板10の屈折率をns、中間層20を形成する薄膜層のうち最も基板10に近い側から、第1層、第2層、…とする。即ち、第1層は基板10に最も近く、第2層は第1層の上に形成される。第1層の屈折率、第2層の屈折率…をn1、n2、…とすると、n1<nsかつn1<n2の条件式を満たす。なお、n1は1.0よりも大きい。これにより、特許文献3に記載の多層膜層よりも中間層20の各層の膜厚を薄くすることができ、より入射角度特性の優れた反射防止膜を実現することができる。また、この効果を十分発揮するためには、n1とn2は0.1以上の屈折率差があることが好ましく、0.2以上あることがさらに好ましい。
反射防止膜100は、可視全域(波長400〜700nm)にわたる広い波長帯域で、かつ入射角0〜60°以上の大きな入射角度範囲にわたって、優れた反射防止特性を有する。そのため、反射防止膜100を形成した光学素子(レンズ)を有する光学系は、フレアやゴーストなどの不要光が発生しにくい。
また、高屈折率(1.75≦ns≦2.20)の基板10に対して良好な反射防止特性を得るためには、中間層20は3層構造となることが好ましい。屈折率が1.35以上1.78以下の第1層、屈折率が1.78以上2.40以下の第2層、屈折率が1.38以上1.70以下の第3層からなる3層構造は特に好ましい。即ち、第2層の上に形成される第3層の屈折率をn3とすると、以下の条件式が満足されることが好ましい。
1.35≦n1≦1.78 (2)
1.78≦n2≦2.40 (3)
1.38≦n3≦1.70 (4)
第1層の光学膜厚は25nm以上65nm以下、第2層の光学膜厚は18nm以上65nm以下、第3層の光学膜厚は75nm以上120nm以下が好ましい。即ち、d1(nm)を第1層の物理膜厚、d2(nm)を第2層の物理膜厚とすると、以下の条件式が満たされることが好ましい。但し、数式(7)は均質部がない場合である。
25≦n1d1≦65 (5)
18≦n2d2≦65 (6)
75≦n3d3≦130 (7)
微細凹凸構造が均質部を含む場合には、均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和が75nm以上120nm以下であることが好ましい。即ち、以下の条件式が満たされることが好ましい。但し、d3(nm)を第3層の物理膜厚、naを均質部の屈折率、da(nm)を均質部の物理膜厚とする。
1.35≦na≦1.58 (8)
75≦n3d3+nada≦130 (9)
これは、均質部が第3層の代わりとなってもよく、均質部と第3層の和が第3層としての役割を果たしてもよいためである。そのため、均質部と第3層の屈折率差は、0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。即ち、以下の条件式が満たされることが好ましい。
0≦|n3−na|≦0.1 (10)
0≦|n3−na|≦0.05 (11)
中間層20を構成する各層の材料は特に限定されない。例えば、SiOやMgO、Al、MgO、ZrO、HfO、Ta、TiOなどの金属酸化物、LaF,CeF,MgF,NdF,CaFなどの金属フッ化物の単体やそれらの化合物を用いることができる。
基板10の材質によっては、大気に晒されることで表面に成分が溶け出して曇りや着色(「ヤケ」と呼ばれる)が生じる場合があるため、これを防止するために、第1層にAlを用いることが好ましい。第3層は、反応性が低く大気中でも安定な膜であることが好ましく、例えば、SiOを用いることができる。
微細凹凸構造30と中間層20の界面での屈折率差(つまり、第3層と微細凹凸構造30の根本部分との屈折率差または均質部を含む場合は第3層と均質部との屈折率差)は0.1以下であることが好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。これにより、微細凹凸構造30と中間層20の界面で発生する反射波を抑えることができ、反射防止性能が向上する。
反射防止膜100を形成する光学素子は、レンズ、プリズム、フライアイインテグレータなどを含む。また、この光学素子を有する光学系は、撮像光学系、走査光学系、投射光学系を含み、カメラ、ビデオカメラ、双眼鏡、複写機、プリンター、プロジェクタ、ヘッドマウントディスプレイ等の光学機器に使用することができる。
図2(a)は、実施例1の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフであり、横軸は基板10の表面からの厚さ(nm)、縦軸は屈折率である。縦軸と横軸は他の実施例の対応する図でも同様である。基板表面からの厚さが0以下の領域は基板10を示している。また、表1に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。nは屈折率、dは物理膜厚、nd(n×d)は光学膜厚を意味し、これは他の実施例の対応する表でも同様である。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が2.01の基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚24nm、SiOを主成分とし、屈折率1.46の第1層、物理膜厚14nm、TiOを主成分とし、屈折率2.32の第2層、物理膜厚54nm、SiOを主成分とし、屈折率が1.46の第3層を有する。中間層20の各層は真空蒸着法により形成した。実施例1は、第1層と第3層に同じ材料を用いることで成膜材料の種類を少なくし、製造コストを下げている。中間層20の第1層、第2層、第3層の光学膜厚は、それぞれ35nm、33nm、79nmである。
微細凹凸構造30は、ゾルゲル法によりスピンコートで成膜した酸化アルミニウムを主成分とする膜を温水浸漬処理することで形成されている。微細凹凸構造30は、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から連続的に1.52まで増加する。膜厚方向に対する屈折率変化は一定ではなく、光入射側に近い領域のほうが基板に近い領域より膜厚に対する屈折率変化が小さい構造となる。このような構造は必ずしも必要ではないが、より波長帯域や入射角度特性に優れた反射防止特性を発揮できる。
図2(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフであり、横軸は波長、縦軸は屈折率、0°、15°、・・・60°は入射角度を表している。縦軸や横軸などは他の実施例の対応する図でも同様である。図2(b)より、本実施例1の反射防止膜は、入射角0°〜45°で、可視域全域で0.2%以下の反射率を達成しており、高い反射防止性能を発揮していることが分かる。
図3(a)は、実施例2の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表2に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が1.97の基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚19nm、SiOを主成分とし、屈折率1.46の第1層、物理膜厚27nm、Taを主成分とし、屈折率2.03の第2層、物理膜厚が13nm、SiOを主成分とし、屈折率が1.46の第3層を有する。中間層20の各層はスパッタ法により形成した。中間層20の第1層、第2層、第3層の光学膜厚は、それぞれ28nm、55nm、19nmである。微細凹凸構造30の下部に均質部が残存している。微細凹凸構造30は、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.52に連続的に増加し、均質部は物理膜厚49nm、屈折率1.52、光学膜厚75nmである。均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和は94nmである。
図3(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。図3(b)より、可視域全域(波長400nm〜700nm)にわたり、高い反射防止性能を発揮していることが分かる。入射角0°〜45°では、可視域全域で0.3%以下の反射率を達成し、入射角60°でも可視全域で1.0%以下と極めて良好な斜入射特性を示すことが分かる。
本実施例のように、微細凹凸構造30の下部に均質部が残存する場合にも、中間層20の膜厚、特に第3層の膜厚を最適化することによって、高い反射防止性能を発揮することができる。また、残存する均質部の膜厚や屈折率を制御することで、より高い反射防止性能を実現することもできる。
(比較例1)
図12(a)は、比較例1の反射防止膜の屈折率分布を示すグラフである。また、表10に比較例1の反射防止膜100の構成を示す。
比較例1において、基板は実施例1と同様で屈折率は2.01である。中間層は、物理膜厚25nm、Alを主成分とし、屈折率が1.65の第1層、物理膜厚20nm、Taを主成分とし、屈折率2.03の第2層、物理膜厚が45nm、AlとSiOを主成分とし、屈折率が1.52の第3層を有する。微細凹凸構造は、物理膜厚148nm、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.52に連続的に増加する。
図12(b)は、比較例1の反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。入射角0°において、波長700nmでの反射率が0.5%以上となっており、入射角度が大きくなるに従って反射防止特性は悪化している。特に、入射角60°では波長700nmでの反射率が5%を超えてしまっている。
微細凹凸構造の厚さが180nmよりも小さくなると、このように、長波長側や大きな入射角での反射特性が悪化するため、微細凹凸構造の厚さは180nm以上であることが好ましい。
図4(a)は、実施例3の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表3に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が2.01の基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚25nm、Alを主成分とし、屈折率1.65の第1層、物理膜厚20nm、Taを主成分とし、屈折率2.03の第2層を有する。本実施例の中間層20には第3層がない。中間層20の第1層、第2層の光学膜厚は、それぞれ41nm、41nmである。微細凹凸構造30は実施例1と同様に形成されているが、微細凹凸構造30の下部に均質部が残存している。均質部は屈折率1.52、物理膜厚56nm、光学膜厚85nmである。均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和は85nmである。
図4(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。図4(b)より、可視域全域(波長400nm〜700nm)にわたり、高い反射防止性能を発揮していることが分かる。入射角0°〜45°では、可視域全域で0.2%以下の反射率を達成し、入射角60°でも可視全域で1.8%以下と極めて良好な斜入射特性を示すことが分かる。実施例3では、均質部が残存し、中間層が2層構成でも3層構成の場合とほぼ同等の高い反射率性能を実現している。
また、反射防止膜100は、膜厚がばらついても反射率が大きく悪化しない。図4(c)に、各層が10%厚くなった場合の反射率特性を示す。各層の物理膜厚は、微細凹凸構造30が243nm、中間層20が基板側から28nm、22nm、62nmである。10%厚くなった場合でも反射防止特性に変化はほとんどなく、入射角60°での性能はむしろ向上している。また、図4(d)に、各層が10%薄くなった場合の反射率特性を示す。各層の物理膜厚は、微細凹凸構造30が199nm、中間層20が基板側から23nm、18nm、50nmである。10%薄くなった場合でも45°以上の入射角で長波長側(〜700nm)での反射率性能が若干高くなっているが、反射防止特性を維持している。
(比較例2)
図13(a)は、特許文献1に記載の反射防止膜としての比較例2の反射防止膜の反射率特性を示すグラフである。比較例2の計算では、基板や各膜の屈折率分散を考慮していないために、若干の誤差があり、特許文献1に記載の値よりやや高くなっている。垂直入射での反射率は、450〜650nmの範囲で反射率0.5%以下と、本発明の反射防止膜より高い反射率となっている。
図13(b)は、各層の厚さがそれぞれ10%厚くなった場合、すなわち物理膜厚が第1層16nm、第2層56nm、第3層28nm、第4層157nm、第5層103nmになった場合の反射率特性を示すグラフである。図13(c)は、各層の厚さがそれぞれ10%薄くなった場合、すなわち物理膜厚が第1層13nm、第2層46nm、第3層23nm、第4層129nm、第5層84nmになった場合の反射率特性を示すグラフである。図13より、実施例1の方が、膜厚が±10%変化した場合の反射率特性変動が少なく、膜厚がばらついても反射率特性が大きく悪化しない、つまり膜厚ばらつきに対して許容度が大きいことが分かる。
図5(a)は、実施例4の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表4に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が1.89の基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚22nm、SiOを主成分とし、屈折率1.46の第1層、物理膜厚20nm、Taを主成分とし、屈折率2.03の第2層、物理膜厚56nm、SiOを主成分とし、屈折率1.46の第3層を有する。微細凹凸構造30は、物理膜厚266nmと厚く、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.48に連続に変化する。
図5(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。図5(b)より、可視域全域(波長400nm〜700nm)にわたり、高い反射防止性能を発揮していることが分かる。本実施例では微細凹凸構造が厚いため、高入射角での反射防止性能に優れ、入射角60°で、可視全域の反射率が1.2%以下と極めて良好な特性を示す。
図6(a)は、実施例5の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表5に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が2.20と高い基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚22nm、Alを主成分とし、屈折率1.65の第1層、物理膜厚16nm、TiOを主成分とし、屈折率2.32の第2層、物理膜厚56nm、SiOを主成分とし、屈折率1.46の第3層を有する。中間層20の第1層、第2層、第3層の光学膜厚は、それぞれ36nm、37nm、20nmである。微細凹凸構造30は、物理膜厚221nm、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.56に連続に変化する。微細凹凸構造30の下部に均質部が残存している。均質部は屈折率1.56、物理膜厚38nm、光学膜厚59nmである。均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和は79nmである。
図6(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。基板の屈折率が2.2と高いにもかかわらず、図6(b)より、可視域全域(波長400nm〜700nm)にわたり、高い反射防止性能を発揮していることが分かる。入射角0°〜45°では、可視域全域で0.2%以下の反射率を達成し、入射角60°でも可視全域で1.9%以下と極めて良好な斜入射特性を示すことが分かる。
図7(a)は、実施例6の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表6に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が1.75の基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚18nm、MgFを主成分とし、屈折率1.38の第1層、物理膜厚15nm、Taを主成分とし、屈折率2.03の第2層、物理膜厚48nm、SiOを主成分とし、屈折率1.46の第3層を有する。中間層20の第1層、第2層、第3層の光学膜厚は、それぞれ25nm、31nm、70nmである。微細凹凸構造30は、物理膜厚216nm、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.40に連続に変化する。微細凹凸構造30の下部に均質部が残存している。均質部は屈折率1.40、物理膜厚41nm、光学膜厚75nmである。均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和は145nmである。
図7(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。0°入射では可視域全域(波長400nm〜700nm)にわたり、0.2%以下、45°入射でも0.5%以下と高い反射防止性能を発揮していることが分かる。
図8(a)は、実施例7の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表7に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が1.89の基板10に形成されている。第1層は、物理膜厚32nm、ZrOとAlの混合物を主成分とし、屈折率1.78を有する。第2層は、物理膜厚10nm、ZrOとAlの混合物を主成分とし、屈折率1.98を有する。第3層は、物理膜厚30nm、Alを主成分とし、屈折率1.63を有する。中間層20の第1層、第2層、第3層の光学膜厚は、それぞれ57nm、20nm、49nmである。微細凹凸構造30は、物理膜厚216nm、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.53に連続に変化する。微細凹凸構造30の下部に均質部が残存している。均質部は屈折率1.53、物理膜厚39nm、光学膜厚60nmである。均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和は109nmである。
図8(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。図8(b)より、0°入射では可視域全域で0.2%以下、45°入射でも0.5%以下と高い反射率性能を発揮していることが分かる。
図9(a)は、実施例8の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表8に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が2.01の基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚23nm、Alを主成分とし、屈折率1.63の第1層、物理膜厚23nm、Taを主成分とし、屈折率2.03の第2層、物理膜厚17nm、MgFを主成分とし、屈折率1.38の第3層を有する。中間層20の第1層、第2層、第3層の光学膜厚は、それぞれ24nm、47nm、24nmである。微細凹凸構造30は、物理膜厚216nm、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.53に連続に変化する。微細凹凸構造30の下部に均質部が残存している。均質部は屈折率1.53、物理膜厚39nm、光学膜厚60nmである。均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和は84nmである。
図9(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。図9(b)より、0°入射では可視域全域で0.2%以下、45°入射でも0.4%以下と高い反射率性能を発揮していることが分かる。
図10(a)は、実施例9の反射防止膜100の屈折率分布を示すグラフである。また、表9に本実施例の反射防止膜100の構成を示す。
本実施例の反射防止膜100は、屈折率が2.17の基板10に形成されている。中間層20は、基板側から物理膜厚18nm、Alを主成分とし、屈折率1.63の第1層、物理膜厚30nm、ZrOを主成分とし、屈折率2.04の第2層、物理膜厚25nm、SiOを主成分とし、屈折率1.46の第3層を有する。中間層20の第1層、第2層、第3層の光学膜厚は、それぞれ29nm、61nm、37nmである。微細凹凸構造30は、物理膜厚224nm、光入射側から基板側に向かって屈折率が1から1.50に連続に変化する。微細凹凸構造30の下部に均質部が残存している。均質部は屈折率1.50、物理膜厚34nm、光学膜厚51nmである。均質部の光学膜厚と第3層の光学膜厚の和は88nmである。
図10(b)は、本実施例の反射防止膜100の反射率特性を示すグラフである。図10(b)より、0°入射では可視域全域で0.1%以下、45°入射でも0.2%以下、60°入射でも1.7%以下と高い反射率性能を発揮していることが分かる。
図11は、実施例10の光学機器(撮像装置)としてのデジタルカメラ200の斜視図である。デジタルカメラ200は物体の光学像を形成する撮影光学系を有し、撮影光学系200は複数のレンズによって構成され、少なくとも1つのレンズに反射防止膜100が形成されている。そのため、本実施例のデジタルカメラ200は、フレアやゴーストなどの有害光の発生を抑制した画像が得られ、高品位な光学機器が実現可能である。
また、本実施例では光学機器をデジタルカメラとしたが、本発明はこれに限定されるものではなく双眼鏡や液晶プロジェクタなどの光学機器でもよい。
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は実施例に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
本発明の反射防止膜を有する光学素子は、カメラなどの光学機器に適用することができる。
10…基板、20…中間層、30…微細凹凸構造体、100…反射防止膜、200…光学機器

Claims (15)

  1. 基板と、該基板の上に形成された反射防止膜と、を有する光学素子であって、
    前記反射防止膜は、前記基板の上に形成された中間層と、該中間層の上に形成され、複数の凸部を有する凹凸層と、を有し、
    前記凹凸層は、前記基板の側から順に、屈折率が一定である均質部と、空気側から前記基板の側に向かって屈折率が連続的に大きくなる凹凸部と、を有し、
    前記中間層は、前記基板に最も近い第1層と、該第1層の上に形成された第2層と、該第2層の上に形成された第3層と、を有し、
    波長550nmの光に対する、前記基板の屈折率をns、前記第1層の屈折率をn1、前記第2層の屈折率をn2、前記第3層の屈折率をn3、前記均質部の屈折率をna、とし、前記第3層の物理膜厚をd3(nm)、前記均質部の物理膜厚をda(nm)、とするとき、以下の条件式を満たすことを特徴とする光学素子。
    1.75≦ns≦2.20
    n1<n2
    n1<ns
    1.35≦na≦1.58
    75≦n3d3+nada≦130
  2. 以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
    1.38≦n3≦1.70
  3. 前記凹凸層の物理膜厚は、180nm以上300nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学素子。
  4. 前記凹凸部の膜厚方向の位置に対する屈折率変化は、空気側に近い領域の方が前記基板に近い領域よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  5. 記凹凸層の波長550nmの光に対する屈折率の最大値は1.35〜1.58の範囲にあることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  6. 前記第1層の物理膜厚をd1(nm)、前記第2層の物理膜厚をd2(nm)、とするとき、以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の光学素子。
    1.35≦n1≦1.78
    1.78≦n2≦2.40
    25≦n1d1≦65
    18≦n2d2≦65
  7. n1とn2の差は、0.1以上であることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  8. n2はnsよりも大きいことを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  9. 以下の条件式を満たすことを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか1項に記載の光学素子。
    0≦|n3−na|≦0.1
  10. 前記凹凸層は、酸化アルミニウムを主成分とする多孔質層であることを特徴とする請求項1乃至のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  11. 前記第1層はAlを含むことを特徴とする請求項1乃至10のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  12. 前記第3層はSiOを含むことを特徴とする請求項乃至11のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  13. 前記複数の凸部は、使用波長域のうち最も短い波長よりも小さいピッチを有することを特徴とする請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載の光学素子。
  14. 複数の光学素子を有し、該複数の光学素子のうち少なくとも1つは請求項1乃至13のうちいずれか1項に記載の光学素子であることを特徴とする光学系。
  15. 請求項14に記載の光学系を有し、該光学系を介して物体の画像を取得することを特徴とする光学機器。
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