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JP5878288B2 - 高透過性ポリアミド中空糸膜及びその製造方法 - Google Patents

高透過性ポリアミド中空糸膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明はポリアミド中空糸膜及びその製造方法に関し、特に液体の透過性に優れた中空糸膜に関する。
近年、限外濾過膜や精密濾過膜等の多孔質濾過膜は、飲料水製造、上下水処理、血液浄化等の医療技術、食品工業などの水処理分野や、廃油精製、バイオエタノール製造、半導体産業での薬液ろ過などの有機溶剤処理分野など、多くの産業分野において利用が進んでいる。これに対応して、さまざまな孔径を有する多孔質濾過膜が開発されている。特に、多孔質濾過膜として多用されている孔径がnm〜μmオーダーの濾過膜は、有機高分子溶液の相分離を利用して製造されることが多い。この手法は、多くの有機高分子化合物に対して適用することができ、工業化も容易であるため、現在、濾過膜の工業的生産手法の主流となっている。
相分離法は、非溶媒誘起相分離法(NIPS法)と熱誘起相分離法(TIPS法)とに、大別することができる。NIPS法は、均一な高分子溶液が、非溶媒の進入や溶媒の外部雰囲気への蒸発による濃度変化によって相分離を起こす。一方、比較的新しい方法であるTIPS法は、高温で溶解させた均一な高分子溶液を1相領域と2相領域の境界であるバイノダル(binodal)線以下の温度へ冷却させることにより相分離を誘起させるとともに、高分子の結晶化やガラス転移によりその構造を固定させる。
公知の技術において、多孔質濾過膜の素材としては、一般的に、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース等が用いられることが多い。しかし、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等は、疎水性が強い。この為に、これらを用いて多孔質濾過膜を構成した場合には、水の流量が小さくなる問題や、タンパク質などの疎水性物質を吸着する性質から容易にファウリングし透水量が低下する問題がある。ポリアクリロニトリル、酢酸セルロース等は、比較的親水性の高い樹脂であるが、膜強度が低い上、温度や薬品に弱く、したがって使用温度域や使用pH域が非常に狭いという問題がある(例えば、非特許文献1、2参照)。また、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等は、有機溶剤に弱いために、有機溶剤の濾過の用途には使えないという問題がある。
これら多孔質濾過膜は、フィルターとして用いられる性質上、高い阻止性能と液体透過性を兼ね備えたものが望まれている。しかしながら、従来の多孔質濾過膜は液体透過性を向上させれば阻止性能が低下し、阻止性能を向上させれば液体透過性が低下するという問題があった。
繊維学会誌,56巻,1号,13頁(2000年) 繊維学会誌,56巻,3号,3頁(2000年)
本発明は、上記のような問題点を解決した比較的親水性が高く、耐薬品性も強いポリアミドを用いた中空糸膜であって、優れた阻止性能を有し、かつ液体透過性が高いポリアミド中空糸膜を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、従来までの検討により、阻止能力及び液体透過性がかなり改善したポリアミド中空糸膜を得ているが(例えば、特願2009−90138号)、これらの阻止能力、かつ液体透過性をさらに高めるべく鋭意検討を重ねた結果、熱誘起相分離法を用いてポリアミド中空糸膜を作製するにあたり、ポリアミド溶液を吐出する凝固浴に前記ポリアミドの融点未満の温度で前記ポリアミドを溶解させることができる溶媒を20質量%以上含有せしめることにより、中空糸膜外表面に多くの微細孔が形成され、阻止性能を維持したまま液体透過性を著しく向上できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)ポリアミドからなる中空糸膜であって、外圧透水量が500L/m・atm・h以上、かつ、0.1μmの粒子の阻止率が90%以上であることを特徴とする高透過性ポリアミド中空糸膜。
(2)前記ポリアミドが、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD−6、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10Tからなる群から選択される1又は2以上であることを特徴とする(1)記載の高透過性ポリアミド中空糸膜。
(3)150℃以上の沸点を有し、かつ、100℃未満の温度では前記ポリアミドと相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で前記ポリアミドを溶解して製膜原液とし、100℃以上の温度に制御した前記製膜原液を100℃未満の凝固浴に押し出して中空糸を形成し、その後、前記中空糸を溶媒に浸漬して前記有機溶媒を除去するポリアミド中空糸膜の製造方法であって、前記凝固浴に用いられる溶媒が、前記ポリアミドの融点未満の温度で前記ポリアミドを溶解させることができる溶媒を20質量%以上含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の高透過性ポリアミド中空糸膜の製造方法。
(4)前記ポリアミドの融点未満の温度が、100℃以上前記ポリアミドの融点未満の温度であることを特徴とする(3)記載の高透過性ポリアミド中空糸膜の製造方法。
(5)前記ポリアミドの融点未満の温度で前記ポリアミドを溶解させることができる溶媒が、アルコール類、非プロトン性極性溶媒の群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする(3)又は(4)記載の高透過性ポリアミド中空糸膜の製造方法。
本発明によれば、高い阻止性能と高い液体透過性能を両立した高性能なポリアミド中空糸膜を得ることができる。本発明のポリアミド中空糸膜は、上下水処理、食品工業、製薬工業、半導体産業、血液浄化などの分野で、好適に用いることができる。本発明のポリアミド中空糸膜は、同様の阻止性能を有する中空糸膜と比較しても液体透過性が高く、詰まりや汚れの吸着による処理量の低下も少ない為に大きい処理量が得られ、フィルターの超寿命化、ポンプ圧の低減、洗浄回数の低減などプロセスのコストダウンに寄与することができる。
本発明の中空糸膜を製造するための装置の一例の概略図である。 図1における紡糸口金の構造を示す図である。 中空糸膜の外圧透水量を測定するための装置の概略図である。 本発明の実施例1の中空糸膜の外表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの画像の例を示す図である。 本発明の実施例6の中空糸膜の外表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの画像の例を示す図である。 本発明の比較例1の中空糸膜の外表面を走査型電子顕微鏡で観察したときの画像の例を示す図である。
1:攪拌モーター
2:加圧ガス流入口
3:コンテナ
4:定量ギアポンプ
5:内部液導入口
6:紡糸口金
7:凝固浴
8:中空糸
9:巻き取り機
10:溶媒抽出浴
11:内部液流入孔
12:製膜原液流入孔
13:送液ポンプ
14:入口圧力計
15:外圧透水量測定用治具
16:出口圧力計
17:出口弁
18:中空糸膜
19:シリンジ
20:キャップ
21:受け皿
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の中空糸膜に用いられるポリアミドは、分子中にアミド結合を有するポリアミドであれば特に限定されないが、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミドMXD−6、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T等が好適に用いられる。
これらの中でポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミドMXD−6、ポリアミド6Tを用いた場合、得られるポリアミド中空糸膜は、その高親水性の観点から、中空糸膜としての経時の使用によっても流量低下しにくいため、より好ましい。ポリアミドは架橋されていても良いし架橋されていなくても良い。
ポリアミドの相対粘度は、強度を向上させる観点から、2.0〜6.0の範囲が好ましく、3.5〜6.0の範囲がさらに好ましい。ポリアミドは1種類で用いても良いし、2種類以上を混合して用いても良い。また、ポリアミドは、本発明の効果を損なわない限り、他の樹脂と混合して用いることもできるが、強度向上、耐薬品性向上、耐熱性向上、透水性向上等の観点から、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル類、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリ酢酸ビニル等が挙げられる。
本発明のポリアミド中空糸膜においては、透過性能の指標として外圧透水量を採用する。外圧透水量とは、例えば、上下水処理、食品工業、製薬工業、半導体産業、血液浄化などの分野で好適に用いられる中空糸膜の液体の透過性能を表わす指標であり、具体的には、一定加圧下、ポリアミド中空糸膜の外側に供給された純水がポリアミド中空糸膜でろ過される際の単位時間当たりの透水量、すなわち、以下に示す外圧式ろ過によって測定した透水量の値である。
詳細には、図3に示すように、ポリアミド中空糸膜18を外圧透水量測定用の治具15に挿入し、その両端の中空部分にその内径に合う径の注射針19を挿入し、一端をキャップ20で封止し、図示の装置にセットした後、送液ポンプ13で出口弁17のバルブを調整して0.05MPaの一定の圧力をかけながら所定時間(分)、試験液(25℃)として純水を通し、中空糸膜18を外側から内側に透過して受け皿21に貯まった水の容量(L)を透過量として、以下の式により求めたものである。
透水量=透過量(L)/[外径(m)×3.14×長さ(m)×{(入口圧(atm)+出口圧(atm))/2}×時間(h)]
入口圧は図3の入口圧力計14で測定し、出口圧は図3の出口圧力計16で測定する。
本発明における高透過性ポリアミド中空糸膜は、外圧透水量500L/m・atm・h以上、且つ0.1μmの粒子の阻止率が90%以上であることを要する。外圧透水量は好ましくは、700L/m・atm・h以上であり、さらに好ましくは1000L/m・atm・h以上である。
なお、前記外圧透水量の測定においては液体の透過性能の一指標として試験液に純水を用いているが、本発明における高透過性ポリアミド中空糸膜は、純水以外の例えば、メタノール、エタノール等のアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、ヘキサン、ガソリン等の炭化水素類、各種オイル類などの液体に対しても高透過性能を示すことが期待される。従って、従来の中空糸膜に比べて、各種幅広い分野に用いられている液体の処理において、ろ過効率が向上し、処理量の向上、低圧運転による省エネが実現できる。
本発明におけるポリアミド中空糸膜においては、従来の中空糸膜に比べて外圧透水量が高くなる理由は明らかではないが、後述する製造方法において、凝固液を最適化することにより、ポリアミド中空糸膜の外表面にスキン層が形成されず、大きな孔が多数形成されるためであると推定している。
本発明のポリアミド中空糸膜は、精密ろ過膜もしくは限外ろ過膜に相当する孔径を有し、このため0.1μmの粒子の阻止率が90%以上である。好ましくは95%以上であり、さらに好ましくは99%以上である。
ここで、本発明における0.1μmの粒子の阻止率とは、中空糸膜が0.1μmの大きさの粒子を含む液体をろ過するにあたり、この粒子の通過を阻止する割合のことをいう。詳細には、0.1%TritonX−100水溶液299mLに、Duke Scientific社製の100nmポリスチレンユニフォームラテックス微粒子3100Aを1mL添加して、3時間攪拌分散し、これを前述の図3の透水量測定装置に通液(25℃)し、膜を透過した液を回収し、膜透過前後における液の380nmの吸光度を測定し、下式により求めたものである。
0.1μmの粒子の阻止率
=(初期吸光度−透過液吸光度)/初期吸光度×100
本発明のポリアミド中空糸膜でろ過する流体は特に限定されない。例えば河川水、湖沼水、地下水、海水、下水、工業排水、ボイラー水、冷却循環水、純水、清涼飲料水、血液、腹水などの水系の液体、アルコール類、ケトン類、アミン類、アルデヒド類、カルボン酸、炭化水素類、脂肪酸類等の有機溶剤系の液体、及びこれらの液体の混合物のろ過に好適に使用される。
本発明の中空糸膜の破断強度は、1.5〜10.0MPaが好ましく、さらに好ましくは2.5〜9.0MPaであり、いっそう好ましくは3.5〜8.0MPaである。破断強度が低くなりすぎると、例えばモジュール化する際に取扱いが困難となり好ましくない。
本発明の中空糸膜の破断伸びは、30〜500%が好ましく、さらに好ましくは50〜350%であり、いっそう好ましくは60〜320%である。破断伸度が小さいと、例えばモジュール化する際の加工張力や、膜分離活性汚泥法(MBR法)などの浸漬膜用途での曝気や、異物の接触により切断し易く、好ましくない。
本発明の中空糸膜の弾性率は、10.0〜100.0MPaが好ましく、さらに好ましくは15.0〜80.0MPaであり、いっそう好ましくは20.0〜70.0MPaである。弾性率が小さくなりすぎると、例えばモジュール化する際に、加工張力により変形し、透液量や0.1μmの粒子の阻止率などの膜特性が安定せず、取扱いが難しくなり好ましくない。
本発明の中空糸膜には、フィラーを含ませる事ができる。フィラーは、使用する樹脂及び/又は有機溶媒にあらかじめ分散させて使用する事が好ましい。フィラーを含ませる事により、中空糸膜の強度、伸度、弾性率が向上する効果がある。添加するフィラーの種類は特に限定されず、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカー、酸化亜鉛ウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカー、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維等の繊維状フィラー;タルク、ハイドロタルサイト、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩;酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラック、シリカ、黒鉛などの非繊維フィラーを用いる事ができる。これらは、2種類以上を併用することも可能である。上記フィラーの中で、タルク、ハイドロタルサイト、シリカ、クレー、酸化チタンが好ましく、タルク、クレーがより好ましい。
フィラーの添加量は、特に限定されないが、ポリアミド100質量部に対して5〜100質量部であることが好ましく、10〜75質量部であることがより好ましく、25〜50質量部であることがよりいっそう好ましい。ポリアミド100質量部に対して5質量部より少なければ、強伸度や弾性率の向上効果を望めない。反対にポリアミド100質量部に対して100質量部を超えて添加すると、もろくなる問題がある。
次に、本発明のポリアミド中空糸膜の製造方法について説明する。
本発明の製造方法は、ポリアミドを室温で溶解させる溶媒がギ酸、濃硫酸、一部の含フッ素溶媒を除いて無いことから、高温で溶媒に溶解して作製するTIPS法を適用して製造することが必要である。
本発明のポリアミド中空糸膜の製造方法においては、150℃以上の沸点を有し、100℃未満の温度ではポリアミドと相溶せず、かつ100℃以上の温度で前記ポリアミドと相溶する有機溶媒を用いることが必要である。
前記有機溶媒の沸点は、150℃以上が必要であり、180℃以上が好ましく、200℃以上がさらに好ましい。150℃以上の沸点が必要であることの理由は明確ではないが、沸点が150℃未満であれば、後述するように、紡糸ノズルから製膜原液を吐出した際に、溶媒の蒸発による製膜原液中のポリアミドのミクロな濃度の揺らぎが起こりやすく、それが相分離工程における相分離速度、結晶化速度、結晶成長速度などのミクロ的な特性に影響を与えるものと推定される。さらに、有機溶媒の沸点が150℃未満の場合、100℃以上の温度でポリアミドを溶解するに際して、溶媒の蒸気圧が高くなるため、作業環境的に不都合が生じる場合もある。
150℃以上の沸点を有し、100℃未満の温度ではポリアミドと相溶せず、かつ100℃以上の温度で前記ポリアミドと相溶する有機溶媒としては、非プロトン性極性溶媒、グリセリンエステル類、有機酸及び有機酸エステル類、アルコール類などが挙げられる。
非プロトン性極性溶媒の具体例としては、スルホラン、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、δ―バレロラクトン、ε―カプロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
グリセリンエステル類の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
有機酸及び有機酸エステル類の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、サリチル酸メチル、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
アルコール類の具体例としては、例えば、ブチルアルコール類、ペンチルアルコール類、へキシルアルコール類などのモノアルコール類、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3−ブタンジオール、ポリエチレングリコール(分子量100〜600)などの多価アルコール類などが挙げられる。
これらの中で非プロトン性極性溶媒、アルコール類が好ましく、例えば、スルホラン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ε―カプロラクトン、グリセリン、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ブタンジオール類、ポリエチレングリコール(分子量100〜600)、ブチルアルコール類がより好ましく、スルホランが最も好ましい。非プロトン性極性溶媒、アルコール類を用いることで、後述するように、曳糸性が向上するとともに、透水量が向上し、さらには、中空糸膜の強度が向上するという利点が得られる。
これらの理由は明らかではないが、従来の中空糸膜に用いられているポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンに比べ、ポリアミド分子の分子内の極性が比較的高いため、極性の高い非プロトン性極性溶媒、アルコール類、その中でも特にスルホランにおいては、ポリアミドとの相溶性が高く均一に溶解すると共に、水との親和性も高い。この為に、凝固浴として例えば水を用いた場合には、凝固浴中で製膜原液に用いた溶媒と水との適度な交換により結晶化が早くなることで、孔の分布、孔径の制御が容易となるため、その結果、透水性や強度が向上するものと推察される。
なお、100℃未満の温度でポリアミドと相溶する有機溶媒を用いた場合には、後述のように、100℃未満に温度が制御された凝固浴中に押し出した際に、凝固浴により急冷されても、製膜原液中のポリアミドの相分離が遅れるため、その相分離速度、結晶化速度、結晶成長速度などが不適なものとなって、本発明のポリアミド中空糸膜を得ることができない場合がある。
前記有機溶媒は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用しても良い。単独で使用しても十分な効果が得られるが、2種類以上を混合して用いると、これら2種類以上の有機溶媒で相分離の順序や構造が異なる為、さらに効果的な中空糸膜を製造できるメリットもある。例えば、高い相分離温度を有するポリエチレングリコールを混合する事により、先にポリエチレングリコールが分離して開孔効果を付与させることができる。また例えば、液−液相分離を起こすスルホランを混合する事により、強伸度が向上するスポンジ状構造を付与させることができる。
ここで、ポリアミドが有機溶媒に相溶する温度とは、有機溶媒80質量部にポリアミド20質量部を添加し1時間攪拌したときに、目視で均一となる温度をいう。
ポリアミドを前記有機溶媒に溶解する際の濃度としては、ポリアミドの濃度を5質量%〜50質量%とすることが好ましく、10質量%〜40質量%とすることがより好ましく、15質量%〜30質量%とすることがいっそう好ましい。ポリアミドの濃度が5質量%より低いと、膜の強度が著しく弱くなり粒子阻止率が低下する問題が生じやすい。反対にポリアミドの濃度が50質量%を超えると、透水量が低下しやすくなる。
ポリアミドを有機溶媒に溶解するにあたり、前述のように有機溶媒の温度を100℃以上にしておくことが必要である。具体的には、その系の相分離温度よりも10℃〜50℃高い温度、より好ましくは20℃〜40℃高い温度で溶解させるのがよい。その系の相分離温度とは、樹脂と溶媒を十分に高い温度で混合したものを徐々に冷却し、液−液相分離又は結晶析出による固−液相分離が起こる温度をいう。相分離温度の測定は、ホットステージを備えた顕微鏡等を使用することで、好適に行うことができる。
製造のための次のステップとして、上述のようにポリアミドを前記有機溶媒に溶解することにより作製した製膜原液を100℃以上の温度に制御し、中空糸紡糸用ノズルを用いて100℃未満の凝固液中に押し出すことで、中空糸を形成する。設定された凝固液の温度にまで製膜原液が速やかに冷却されることによって、相分離が誘起され、多孔質構造が形成される。
中空糸紡糸用ノズルとしては、溶融紡糸において芯鞘型の複合繊維を作製する際に用いられるような二重円形状を有する口金を用いることができる。
中空部分となる芯部には、流体を注入する。この注入する流体としては、液体、気体が使用できる。中でも、流体として液体(内部液)を使用した場合には、製膜原液の粘性が低く糸状の形成が難しい条件でも紡糸が可能となる場合があり好ましい。この内部液としては適宜のものを使用できるが、中空糸の内部の孔を大きくしたい場合には当該ポリアミド樹脂と親和性の高い良溶媒を使用することができ、中空糸の内部の孔を小さくしたい場合には貧溶媒を使用することができる。かかる溶媒の具体例として、良溶媒としては、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの非プロトン性極性溶媒が挙げられる。貧溶媒としては、高級脂肪酸類、流動パラフィンなどの、沸点が高くポリアミドと相溶しない任意の流体が挙げられる。製膜原液の粘性が高く、曳糸性に優れている場合には、芯部に不活性ガス等の気体を流入する方法を用いてもよい。
前記芯部に注入する流体(内部液)の流量は、中空糸膜の内径、外径を制御する為に重要であり、内径を大きくしたい場合には内部液の流量を大きくし、内径を小さくしたい場合には内部液の流量を小さくする。かかる内部液の流量としては、1g/分〜20g/分が好ましく、2g/分〜15g/分がさらに好ましい。この範囲より小さければほとんど中空が無い中空糸膜になる場合があり、この範囲より大きければ内部液吐出の勢いが大きくなり中空部の中心がずれたり内表面にマクロボイドができる場合がある。
内径としては、用いられる分野にもよるが、50〜1500μmが好ましく、150〜1000μmがより好ましく、250〜800μmがいっそう好ましい。外径としては、用いられる分野にもよるが、100〜3000μmが好ましく、300〜2500μmが好ましく、500〜2000μmがいっそう好ましい。これら内径、外径は、ろ過する流体、必要なろ過性能などの各種条件に応じて適宜選択することができる。
本発明のポリアミド中空糸膜の製造方法において使用する凝固液は、使用するポリアミドの融点未満の温度で前記ポリアミドを溶解させることができる溶媒を20質量%以上含有することが必要である。ポリアミドを溶解させることができる温度としては、ポリアミドの融点未満の温度の中でも、後述するようなスキン層の形成をより抑制する観点から、100℃以上ポリアミドの融点未満の温度範囲がより好ましい。さらに、かかる溶媒を、30質量%〜90質量%含有することが好ましく、50質量%〜85質量%含有することがいっそう好ましい。
本発明の凝固液に、ポリアミドの融点未満の温度で前記ポリアミドを溶解させることができる溶媒を20質量%以上含有せしめることによって、ポリアミド中空糸膜の0.1μmの粒子の阻止性能と液体透過性能を高いレベルで両立することができる理由は明らかではないが、ポリアミドに対する貧溶媒のみで構成された凝固液を用いた場合に製膜原液が貧溶媒(凝固液)と接触することによって外表面に穴の少ないスキン層が形成されるのに対し、ポリアミドの融点未満の温度で前記ポリアミドを溶解させることができる溶媒を20質量%以上含有する良溶媒を凝固浴として用いることで外表面にスキン層の形成が抑制され、多くの穴が形成されることにより、高透過性が達成できたものと考えられる。よって、かかる溶媒が20質量%未満しか含まれない凝固浴を用いた場合、中空糸膜の液体透過性が低下する問題が生じる。
ポリアミドの融点未満の温度でポリアミドを溶解させることができる溶媒は、使用するポリアミドの種類によっても異なるが、アルコール類、非プロトン性極性溶媒、グリセリンエステル類、有機酸及び有機酸エステル類から選ばれることが好ましい。
アルコール類としては、たとえば、ブチルアルコール類、ペンチルアルコール類、ヘキシルアルコール類などのモノアルコール類やエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、へキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール類、ヘキサンジオール類、グリセリン、ポリエチレングリコール(分子量100〜600)などの多価アルコール類が挙げられる。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε―カプロラクトン、δ−バレロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン等が挙げられる。
グリセリンエステル類の具体例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどが挙げられる。
有機酸及び有機酸エステル類の具体例としては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル、サリチル酸メチル、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
これらの中で、ブチルアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール類、グリセリン、ポリエチレングリコール200、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホランが前記スキン層形成の抑制の観点から好ましく、ブチルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール類、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホランが前記スキン層形成の抑制の観点から、さらに好ましい。
これらの溶媒は単独で用いても良いし2種類以上を混合して用いても良い。また、これらの溶媒を混合する相手の凝固浴は、相溶するものであれば本発明の効果を損なわない限りいかなる液体を用いることもできる。かかる液体としては、水、アルコール類、ケトン類などが挙げられ、コスト、適度な沸点及び取扱い安さ(低粘度等)の観点から、水やイソプロパノールを用いることが好ましい。
凝固液の温度は100℃未満とすることが必要であり、−20℃〜100℃が好ましく、−10℃〜80℃がより好ましく、0℃〜50℃がいっそう好ましい。100℃未満の温度の凝固浴に前記製膜原液を押し出して急冷することにより、相分離工程での高分子の結晶の成長を抑え、結晶径を細かくすることで、中空糸膜の孔径を、同孔径が小さくなるように制御することが可能となる。すなわち、本発明のポリアミド中空糸膜の製造方法においては、0.1μmの粒子阻止率を90%以上とする為には、100℃以上の紡糸温度から、100℃未満の凝固浴に押し出すことで急冷を行わせることが必要である。100℃未満の温度の製膜原液を紡糸ノズルから吐出しても、凝固浴での冷却が徐冷となるため、相分離工程において高分子の結晶が大きく成長し、その結果、中空糸膜の孔径を十分に小さく制御することができない。そのため、0.1μmの粒子阻止率を90%以上とすることができない場合がある。
さらに、凝固液の温度を前述の範囲内で最適化させることにより、ポリアミドの結晶化速度を変えることができるため、中空糸膜の孔径サイズ、透水量、強度を変化させることができる。一般には、凝固液の温度が低ければ孔径サイズは小さくなり透水量は低下し強度が向上し、凝固液の温度が高ければ孔径サイズは大きくなり透水量は向上し強度は低下する。これらの特性は、凝固浴として選択する溶媒種や、使用するポリアミドの結晶化速度等によって適宜選択される。
凝固浴に導入され固化された中空糸膜は引取り機を用いて一定のスピードで引取ることにより、安定した径を有する中空糸膜が得られる。引取り速度は本発明の効果を損なわない限り特に限定されないが、10〜100m/分であり、15〜80m/分が好ましく、20〜50m/分がさらに好ましい。この速度より遅い場合、中空糸が凝固浴を沈む速度の方が大きくなるためたるみができる問題があり、この速度より速い場合、十分に凝固浴で冷却固化させることができず安定した中空糸膜ができない場合がある。
次の段階として、得られた中空糸を溶媒に浸漬して、中空糸内で相分離を起こしている有機溶媒を抽出除去することで、最終的に中空糸膜を得ることができる。かかる抽出用の溶媒としては、安価で沸点が低く抽出後にポリアミド樹脂の沸点の差などで容易に分離できるものが好ましい。例えば、水、グリセリン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、ジエチルエーテル、ヘキサン、石油エーテル、トルエンなどが挙げられる。これらの中で水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトンが好ましく、水、メタノール、イソプロパノールが特に好ましい。フタル酸エステル、脂肪酸等の水に不溶の溶媒を抽出する際には、イソプロピルアルコール、石油エーテル等を好適に用いることができる。
溶媒に浸漬する時間は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。一般的には、1時間〜2ヶ月間である。好ましくは5時間〜1ヶ月間、さらに好ましくは10時間〜14日間である。有機溶媒を効果的に抽出除去する為に、加温したり、抽出溶媒を入れ替えたり、攪拌したりすることができる。特に中空糸膜を食品工業や浄水設備に使用する場合には、有機溶媒の残存が問題となる為、その抽出除去を時間をかけて徹底的に行う必要がある。
上述した本発明のポリアミド中空糸膜の製造方法を好適に実施するには、図1に示すような、乾湿式紡糸に用いられる一般的な装置を用いることができる。中空糸の製造には、図2に示したような二重円形状を有する口金を用いることができる。
図1において、3はコンテナ、7は凝固浴、9は巻き取り機、10は溶媒抽出浴である。コンテナ3には、ポリアミドを有機溶媒に好ましくは100℃以上で溶解した製膜原液が貯留される。コンテナ3の底部には、定量ポンプ4と紡糸口金6とが設けられている。防止口金6は、図2に示す断面構造を有する。詳細には、紡糸口金6は、中央部の横断面円形の内部流体流出孔11と、この内部流体流出孔11の周囲においてこの内部流体流出孔11と同心状に形成された環状の製膜原液流出孔12とを有する。製膜原液流出孔12には、コンテナ3の内部から定量ポンプ4を経て製膜原液21が供給される。内部流体流出孔11には、図1に示される導入路5から、図示を省略した別の定量ポンプを経て、内部流体22が供給される。図1において、1はコンテナ3に設けられた攪拌用のモータ、2はコンテナ3の内部への加圧ガス供給路である。
このような構成によれば、ポリアミドは、前記の有機溶媒と高温で混合溶解されて製膜原液となり、コンテナ3に溜められる。製膜原液21および内部流体22は、それぞれ定量ポンプによって計量され、紡糸口金6に送られる。口金6から吐出された製膜原液は、わずかなエアーギャップを介して、ポリアミドの融点未満の温度でポリアミドを溶解させることができる溶媒を20質量%以上含有する溶媒を貯留した凝固浴7に導入され、冷却固化される。これにより中空糸8が得られる。このとき、製膜原液が冷却固化される過程で、熱誘起による相分離が起こるため、中空糸8は、その中空の壁部が海島構造を有するにいたる。このようにして得られた中空糸8を巻き取り機9でいったん巻き取った後、これを溶媒抽出浴10へ送る。溶媒抽出浴10では、水等の抽出溶媒を用い、所定の時間をかけて、海島構造の島成分である有機溶媒と、紡糸時に中空部に流し込まれた流体とが除去される。これにより、所望の中空糸膜が得られる。この中空糸膜は、溶媒抽出浴10から取り出される。
以下、本発明を実施例にて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、下記の実施例、比較例において、中空糸膜についての特性値の測定は上述した方法によりおこなった。
<測定方法>
(1)引張強度、弾性率、引張伸び
島津製作所製オートグラフGS−J型を用いて、JIS L−1013号に記載の方法により測定し、弾性率は、強力1.0Nと2.0N間の傾きにより求めた。
(2)相対粘度
96%硫酸を溶媒として、濃度1g/デシリットル、温度25℃で測定した。
実施例1
ポリアミド6のチップ(ユニチカ社製A1030BRT、相対粘度3.53)80gと、スルホラン(東京化成社製、沸点285℃)320gとを、200℃で1.5時間攪拌することで、ポリアミド6をスルホランに溶解させ、製膜原液を調製した。その後、原液温度を190℃に調整した後、図1に示す定量ギアポンプ4を介して紡糸口金6に送液し、10.9g/分で押し出した。前記紡糸口金としては、図2に示す環状の製膜原液流出孔の外径が2.00mm、内径が0.90mmのものを用いた。中空糸を紡糸するための内部液として、グリセリンを用い、6.1g/分の送液速度で流出させた。押出された紡糸原液は、10mmのエアーギャップを介して、15℃の70質量%グリセリン水溶液(凝固浴7)に投入して冷却固化させ、巻き取り機9によって30m/分の巻取速度にて巻き取った。得られた中空糸膜を溶媒抽出浴10にて水に24時間浸漬して溶媒を抽出し、中空糸膜を得た。
得られた中空糸膜の外表面を電子顕微鏡で観察したときの画像を図4に示す。図4に示すように、外表面に穴が多くスキン層が形成されていないことが観察された。
実施例2
凝固浴を50質量%のグリセリン水溶液に変えた以外は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。
実施例3
凝固浴を30質量%のグリセリン水溶液に変えた以外は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。
実施例4
ナイロン6チップを64gとし、スルホランを336gとした以外は実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。
実施例5
製膜原液を31.3g/分で押し出し、内部液として、グリセリンを12.6g/分で流した以外は、実施例4と同様にして中空糸膜を作製した。
実施例6
凝固浴を100%プロピレングリコールに変えた以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の外表面を電子顕微鏡で観察したときの画像を図5に示す。図5に示したように、外表面に大きい穴が多く形成され、スキン層が形成されていないことが観察された。
実施例7
凝固浴を100%プロピレングリコールに変えた以外は実施例5と同様にして中空糸膜を作製した。
実施例8
凝固浴を100%イソブチルアルコールに変えた以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜を作製した。
実施例9
凝固浴をグリセリン:N−メチル−2−ピロリドン(質量比)=1:1の混合溶媒に変えた以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜を作製した。
実施例10
ポリアミドをポリアミド12(アルケマ(株)製リルサンAECN0TL、相対粘度2.25)とし、製膜原液調製温度を190℃、紡糸温度を180℃とした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。
実施例11
ポリアミドをポリアミド66(宇部興産社製、UBEナイロン2020B)とし、製膜原液調製温度及び紡糸温度を210℃とした以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜を作製した。
実施例12
ポリアミドをポリアミド610(東レ社製、CM2001)とした以外は、実施例1と同様にして、中空糸膜を作製した。
実施例13
実施例4で得られた中空糸膜を熱風乾燥機で50℃で60分間乾燥させた後、25℃で1.3倍長に延伸し、中空糸膜を作製した。
実施例14
実施例5で得られた中空糸膜を熱風乾燥機で50℃で60分間乾燥させた後、25℃で1.3倍長に延伸し、中空糸膜を作製した。
比較例1
凝固浴を水100%にした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。得られた中空糸膜の外表面を電子顕微鏡で観察したときの画像を図6に示す。図6に示すように、外表面には穴が少なくスキン層と思われるものが形成されていることが観察された。
比較例2
凝固浴を15質量%グリセリン水溶液にした以外は、実施例1と同様にして中空糸膜を作製した。
比較例3
凝固浴を水100%にした以外は、実施例10と同様にして中空糸膜を作製した。
比較例4
凝固浴を水100%にした以外は実施例12と同様にして中空糸膜を作製した。
得られた中空糸膜の物性値、各液での外圧透液量、0.1μmの粒子の阻止率等の測定結果を表1に示した。
表1に示すように、実施例1〜14は、いずれも高い外圧透水量を示し、0.1μmの粒子の阻止率に優れるものであった。一方、凝固浴に用いた溶媒がポリアミドの融点未満の温度で前記ポリアミドを溶解させることができる溶媒量が20質量%未満である比較例1〜4は、いずれも外圧透水量が500L/m・atm・h未満となり、高い阻止性能と高い液体透過性が両立できなかった。

Claims (2)

  1. ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12からなる群から選択される1又は2以上であるポリアミドからなる中空糸膜であって、外圧透水量が500L/m・atm・h以上、かつ、0.1μmの粒子の阻止率が99%以上であることを特徴とする高透過性ポリアミド中空糸膜。
  2. 150℃以上の沸点を有し、かつ、100℃未満の温度では前記ポリアミドと相溶しない有機溶媒に、100℃以上の温度で前記ポリアミドを溶解して製膜原液とし、100℃以上の温度に制御した前記製膜原液を100℃未満の凝固浴に押し出して中空糸を形成し、その後、前記中空糸を溶媒に浸漬して前記有機溶媒を除去するポリアミド中空糸膜の製造方法であって、前記凝固浴に用いられる溶媒が、グリセリン、プロピレングリコール、イソブチルアルコール又はN−メチル−2−ピロリドンを20質量%以上含有することを特徴とする請求項1に記載の高透過性ポリアミド中空糸膜の製造方法
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