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JP5865592B2 - サイディング材の塗装方法 - Google Patents

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Description

本発明は,主として建築物の外装材に使用されるサイディング材、例えば窯業系サイディング材の表面を元の状態に再現する、いわゆる再生処理を施すための塗装方法に関するものである。とくに低層建築物の外装材には、主原料としてセメント質原料および繊維質原料を成型し、養生・硬化させた窯業系サイディング材と称される建材が多用されている。近年、高級志向の浸透で,従来からの単色・平板調や単色・単模様板調に代わって、凹凸に富んだレンガ調やタイル貼り調や石材貼り調の目地を有するサイディング材が広く使用されている。これらの多くは、凹凸面にジョイントインクで多彩な意匠模様を施す印刷方法を用いて彩色されている。
ところで、現場での塗装作業では、上記のような規則性がないムラのような表面模様を再現することが困難である。
そこで、レンガ調などの上記種類のサイディング材では、補修時にタッチアップと称される部分塗りが必要になったり、劣化後に全面塗り替えが必要になったりするが、上記レンガ調や石材貼り調のサイディング材では表面を元の状態に再現する再生処理を要する場合、サイディング材自体を張り替えねばならず、作業が煩雑で、高価な費用がかかっていた。
先行技術として、基材表面に、半透明の高耐候性エマルジョン塗料を含浸した不織布等の無方向性の繊維材を繰り返し押しつけて圧着しコンクリート模様調の第一の塗膜を形成し、該第一の塗膜上に、親水性クリアー塗膜からなる第二の塗膜を造膜した構成の打放しコンクリート模様の防汚塗膜を設ける打放しコンクリート面の再生方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−70876号公報
上記のようにレンガ調や石材貼り調のサイディング材表面は色調の微妙な差やムラがあり、それが本来の表面意匠であるから、表面の凹凸とともに色調の微妙な差やムラを塗装作業によって再現する必要がある。しかも、その色調の差やムラは規則性や方向性があると不自然になるから、あくまで無規則かつ無方向性でなければならない。
しかしながら、塗装作業は、通常、刷毛、ローラーあるいはスプレー塗装機を用いて行われるため、どうしても方向性や規則性が出てしまい、上記の条件には合致しない。
そこで、本発明者は平滑な繊維材を刷毛やローラーの代わりに塗料の転写材として採用し、その繊維材に塗料を含浸させて基材表面に「押し付けるだけ」にすれば、方向性が出ない模様を塗装で再現できることを見出した。これに対し、「塗る」という行為の下で刷毛やローラーを動かすと、その動作方向への偏りが必然的に生じてしまう。また、繊維織り目の規則性をも排除するためには、その繊維材は織り目のない不織布であることが好ましいことも分かった。更に、レンガ調や石材貼り調の目地に相当する窪み部分には模様があってはならず、窪み部分に塗料を塗布しないためには、上記の不織布は平滑で、ある程度の剛性を有し、不織布がピント張っていることが必須の条件となる。これに対し、打放しコンクリート面には凹凸がなく、また目地に相当する箇所もないため、繊維材に剛性を持たせて被塗装面を平滑に保つ必要がないから、上記特許文献1に記載の塗装方法では、塗料が凹凸面を均してしまううえに、目地に相当する箇所も模様付けされるおそれがある。
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、塗装作業により、規則性と方向性のない、本来のレンガ調や石材貼り調のリアルな表面状態がかんたんに再現できる、サイディング材の塗装方法を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために本発明にかかるサイディング材の塗装方法は、凹凸に富んだレンガ調、タイル貼り調あるいは石材貼り調で目地部分を有するサイディング材の表面に、前記サイディング材の色調に合わせた着色塗料を塗布器具またはスプレー塗装機を用いて塗布したのち、乾燥させて下地を完全に隠蔽することにより着色塗膜層を形成し、被塗装面が平坦で台木にピンと張りつめた状態に保持され一定厚みの織り目のない繊維材に模様塗りとして半透明塗料を含浸させ、前記繊維材を前記着色塗膜層上に、前記目地部分には塗布されないように、繰り返し押しつけて圧着することを特徴としている。
このようにすれば、補修時や劣化後にサイディング材を張り替えなくても,塗装にて本来のレンガあるいは石材が醸し出す表面のムラ状態を再現し、新規のサイディング材に近い状態に補修することができる。
請求項2に記載のように、仕上げ模様塗りとして半透明塗料を前記繊維材に含浸させ、その繊維材前記着色塗膜層上に色調を変えながら複数回押しつけて圧着することが好ましい。
このようにすれば、目地以外の塗装面に濃淡ができ、レンガやタイルあるいは石材の表面の色調がリアルに再現される。
請求項3に記載のように、前記サイディング材の凹凸は最深部と頭頂部との差が3mm以上あることが好ましい。
このようにすれば、タイルや石材等の表明部分と目地部分とが明確に区分される。
請求項4に記載のように、さらに親水性および光触媒機能を有する透明塗料を全面的に塗布することが好ましい。
このようにすれば、汚れにくくなり、タイルや石材、レンガが本来持つ無機物としての汚れにくさが発揮される。
請求項5に記載のように、 前記耐候性透明塗料の主たる樹脂成分が、フッ素樹脂、シロキサン樹脂、アクリルシリコン樹脂、架橋型アクリル樹脂のいずれか、またはそれらを混合した樹脂成分であり、前記耐候性透明塗料は、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレンを樹脂バインダとして光触媒金属酸化物を配合した透明塗料であることが望ましい。
このようにして親水性や光触媒機能を有するクリアー塗膜を表面に設ければ、意匠性を損ねることなく防汚染性を発揮することができる。
請求項6に記載のように、前記半透明塗料の樹脂成分が、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂のエマルジョンを含むいずれか、またはそれらを混合した成分であることが好ましい。
本発明にかかるサイディング材の塗装方法によれば、従来は補修時や劣化後に張り替えが必要で高コストで長期間かかっていた作業が、現場での塗装作業により補修や修復できるようになり、作業が簡単になって作業期間が短縮され,低コスト化が図られる。
図1(a)は石材貼り調サイディング材の一部を、図1(b)はレンガ調サイディング材の一部をそれぞれ示す正面図で、各図の左側は製造時の新規な状態を,各図の右側は補修後の状態をそれぞれ示している。 レンガ調サイディング材の補修態様の実施例における下塗り作業を示す斜視図である。 レンガ調サイディング材の補修態様の実施例における模様塗り作業を示す斜視図である。 レンガ調サイディング材の補修態様の実施例における模様塗り仕上げ作業を示す斜視図である。 レンガ調サイディング材の補修態様の実施例における光触媒塗装作業を示す斜視図である。 石材貼り調サイディング材の補修態様の実施例における下塗り作業を示す斜視図である。 石材貼り調サイディング材の補修態様の実施例における模様塗り作業を示す斜視図である。 石材貼り調サイディング材の補修態様の実施例における模様塗り仕上げ作業を示す斜視図である。 石材貼り調サイディング材の補修態様の実施例における光触媒塗装作業を示す斜視図である。
以下、本発明の塗装方法について実施の形態を図面に基づいて説明する。
実施例1:
レンガ調のサイディング材についての塗装方法である実施例1を図面に基づいて説明する。
レンガ調のサイディング材1は、直方体状のレンガを水平方向に一定間隔をあけて並べるとともに,垂直方向にも一定間隔をあけて積み上げた正面形状を厚さ方向に凹凸を設けて,厚さ10mm程度のセラミック製基材2上に,図1(b)に示すように一体に形成したものである。本例ではレンガ部分3の表面(頭頂部)と目地部分4(最深部)との高低差を3mm以上に設定し、レンガ部分3と目地部分4とを明確に区分している。本例の基材2はプレキャストコンクリート材であるが、素焼きタイル等の吸湿性材料でもよい。
上記のサイディング材1の全面が劣化した場合の補修方法を例にとって説明すると、
図2に示すように、本例では,下塗りとして「黄土色」のエポキシ樹脂塗料をローラーまたはスプレー塗装機のうち本例ではローラー7により、サイディング材1の全面に凹凸面に沿って塗装する。そして、乾燥させるが、この状態で,レンガ部分3の表面や目地部分4を含め全面的に下地の黄土色に塗装される。なお、望ましくは,接着性向上のために下地塗料の塗布前に,プライマーを塗布しておく。
図3に示すように、上面中央部に把持部5bを設けた台木5aの下面に略20cm角で厚み5mm前後の模様塗り用の不織布6を貼り付けた特殊塗布具5を使用し、不織布6には、半透明の赤レンガ色塗料(本例では、耐候性塗料のフッ素樹脂エマルジョン)を含浸させる。本実施例1においては、フッ素樹脂エマルジョンの塗料を使用するが、アクリルシリコン樹脂、アクリルウレタン樹脂のいずれか、またはそれらを組み合わせた樹脂成分からなる高耐候性エマルジョン塗料を用いることができる。そして、把持部5bをもって不織布6に含浸させた塗料をレンガ部分3の表面に繰り返し押しつけて圧着する。そして、乾燥させる。これにより、方向性がなく規則性のないレンガ状のムラ状態が赤レンガ色塗料によって醸し出される。
図4に示すように、上記の模様塗り赤レンガ色に比べて濃色で半透明の赤レンガ色塗料を不織布6に含浸させる。ここで、模様塗りしたレンガ部分3の表面に2回以上繰り返し押しつけて圧着し、微妙に色調を変える。これにより、レンガ部分3の色彩がリアルに再現される。一方、目地部分4については、不織布6の被塗装面が平坦で台木5aに保持され,ある程度の剛性を備えているから、赤レンガ色塗料が目地部分4には塗布されない。一方、レンガ部分3の表面には半透明の赤レンガ色塗料が塗布されるので、レンガ部分3の表面下地の色彩も外観に表れる。このため、レンガ部分3の表面の色彩がリアルに再現され,不自然さは全くない。この状態で,模様塗り用塗料が乾燥すれば、塗装作業が完了する。
さらに、図5に示すように、塗装済みのサイディング材1の表面全体に透明な光触媒塗料をスプレー噴霧器(図示せず)で塗布する。光触媒塗料には、本例では、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレンのうちナフィオン(登録商標)を樹脂バインダとして光触媒金属酸化物の酸化チタンを配合した透明塗料を使用する。このようにして親水性および光触媒機能を有するクリアー塗膜をサイディング材1の表面に塗布すれば、レンガ調の意匠性を損ねることなく防汚染性を発揮することができる。このため、本来のレンガ調サイディング材1がもつ、汚れにくさが発揮される。なお、上記の下地用塗料および光触媒塗料の塗布には、刷毛塗り、吹きつけ塗り、ローラー塗りのほか、バーコート、浸漬塗り、静電塗装、流し塗り等、公知の塗装手段を適宜選択して塗布することができる。また、光触媒金属物には,酸化チタンのほかに、酸化亜鉛や酸化錫を使用できる。
実施例2:
次に,石材貼り調のサイディング材からなる実施例2を図面に基づいて説明する。
石材貼り調のサイディング材11は、直方体状の石材を水平方向に一定間隔をあけて並べるとともに、垂直方向にも一定間隔をあけて積み上げた正面形状を、厚さ10mm程度のセラミック製基材12上に,図1(a)に示すように一体に形成したものである。石材部分13の表面(頭頂部)と目地部分14(最深部)との高低差は3mm以上に設定され、石材部分13の表面にも細かい凹凸が設けられている。
上記のサイディング材11の一部が損傷した場合の補修方法を例にとって説明すると、
本例では,図6に示すように損傷箇所において下塗りとして「白色」のエポキシ樹脂塗料をローラー7により、サイディング材11の損傷箇所の全面に塗装する。そして、乾燥させるが、この状態で,石材部分13の表面や目地部分14が下地の白色に塗装される。
上記特殊塗布具5を使用し、不織布6に半透明の焦げ茶色塗料(本例では、耐候性塗料のアクリルシリコン樹脂エマルジョン)を含浸させる。不織布6に含浸させた焦げ茶色塗料を把持部5bをもって石材部分13の表面に繰り返し押しつけて圧着する。そして、乾燥させる。これにより、方向性がなく規則性のない石材調のムラ状態が焦げ茶色塗料によって醸し出される。
続いて、上記の模様塗り焦げ茶色に比べて濃色あるいは淡色で半透明の焦げ茶色または茶色塗料を不織布6に含浸させる。ここで、最初に模様塗りした石材部分13の表面に2回以上繰り返し押しつけて圧着し、微妙に色調を変化させる。これにより、石材部分13の色調がリアルに再現される。一方、目地部分14については、図7に示すように、不織布6の被塗装面が平坦で台木5aの下面に貼着され、不織布6がピンと張りつめた状態に保持され、ある程度の剛性を備えているから、塗料は目地部分14には塗布されない。一方、石材部分13の細かい凹凸表面には半透明の焦げ茶色や茶色の塗料が点在した状態で塗布されるので、石材部分13の表面の下地の白色や最初に模様塗りした焦げ茶色も外観に表れる。このため、石材部分13の表面の色彩がリアルに再現され,不自然さが全くない。この状態で,模様塗り用塗料が乾燥すれば、塗装作業が完了する。なお、折り目のない平坦な繊維材であれば不織布以外にも使用できることは言うまでもない。
さらに、図8に示すように塗装済みのサイディング材11の補修部分全体に透明な光触媒塗料を刷毛(図示せず)またはローラー(図示せず)などで塗布する。光触媒塗料には、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレンのうち本例でもナフィオン(登録商標)を樹脂バインダとして光触媒金属酸化物の酸化チタンを配合した透明塗料を使用する。このようにして親水性および光触媒機能を有するクリアー塗膜をサイディング材11の補修部分の表面に塗布すれば、石材本来の耐候性を備えるとともに、石貼り調の意匠性を損ねることなく防汚染性を発揮することができる。上記親水性クリアー塗料の主たる樹脂成分が、フッ素樹脂、シロキサン樹脂、アクリルシリコン樹脂、架橋型アクリル樹脂のいずれか、またはそれらを混合した樹脂成分であってもよい。
なお、上記実施例1・2のサイディング材1・11のほか,例えばタイル貼り調のサイディング材にも本発明を適用できる。また、上記実施形態で示した窯業系サイディング材1・11のほか、基材が金属板からなる金属系サイディング材についても,本発明の塗装方法を同様に実施できる。
産業上の利用分野
本発明の塗装方法は、劣化すれば張り替えるしか方法はないと考えられていたレンガ調や石材貼り調のサイディング材がかんたんな塗装工事で再生できる。また現在、単色のサイディング材塗装仕上げの既存の建物に対しても、石材貼り調やタイル調の外装にして高級感を向上することができる。
1:レンガ調サイディング材
2:セラミック製基材
3:レンガ部分
4:目地部分
5:台木
5b:把持部
6:不織布
7:ローラー
11:石材貼り調サイディング材
12:セラミック製基材
13:石材部分
14:目地部分

Claims (6)

  1. 凹凸に富んだレンガ調、タイル貼り調あるいは石材貼り調で目地部分を有するサイディング材の表面に、前記サイディング材の色調に合わせた着色塗料を塗布器具またはスプレー塗装機を用いて塗布したのち、乾燥させて下地を完全に隠蔽することにより着色塗膜層を形成し、
    被塗装面が平坦で台木にピンと張りつめた状態に保持され一定厚みの織り目のない繊維材に模様塗りとして半透明塗料を含浸させ、前記繊維材を前記着色塗膜層上に、前記目地部分には塗布されないように、繰り返し押しつけて圧着することを特徴としたサイディング材の塗装方法。
  2. 仕上げ模様塗りとして半透明塗料を前記繊維材に含浸させ、その繊維材を前記着色塗膜層上に色調を変えながら複数回押しつけて圧着する請求項1に記載のサイディング材の塗装方法。
  3. 前記サイディング材の凹凸度合いは最深部と頭頂部との差が3mm以上である請求項1または2に記載のサイディング材の塗装方法。
  4. 親水性および光触媒機能を有する耐候性透明塗料を前記サイディング材の表面に塗布する請求項1〜3のいずれか1つに記載のサイディング材の塗装方法。
  5. 前記耐候性透明塗料の主たる樹脂成分が、フッ素樹脂、シロキサン樹脂、アクリルシリコン樹脂、架橋型アクリル樹脂のいずれか、またはそれらを混合した樹脂成分であり、
    前記耐候性透明塗料は、スルホン酸基がグラフト重合されたポリ4フッ化エチレンを樹脂バインダとして光触媒金属酸化物を配合した透明塗料である請求項4に記載のサイディング材の塗装方法。
  6. 前記半透明塗料の樹脂成分が、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂のエマルジョンを含むいずれか、またはそれらを混合した成分である請求項1〜5のいずれか1つに記載のサイディング材の塗装方法。
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