JP5857909B2 - 鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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この理由は定かではないが、次のように考えられる。
(1)質量%で、C:0.14%以上0.24%以下、Si:0.7%以上1.9%以下、Mn:1.7%以上3.5%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:1.5%以下およびN:0.0200%以下を含有し、残部がFeおよび不純物である化学組成と、体積%で、ポリゴナルフェライト:35%以下、残留オーステナイト:8%以上、焼き戻しマルテンサイト:40%以上を有し、かつ前記焼き戻しマルテンサイトの粒内に存在する残留オーステナイトおよびMAならびに焼き戻しマルテンサイトの粒に接して存在する残留オーステナイトおよびMAの総体積が、鋼組織に占める残留オーステナイトおよびMAの総体積の20体積%以上である鋼組織と、引張強度が980MPa以上であり、引張強度と全伸びとの積が19596MPa・%以上であり、穴広げ率が40%以上である機械特性と、を有することを特徴とする鋼板。
1.化学組成
[C:0.11%以上0.24%以下]
Cは、鋼板の強度を高める作用を有する元素である。C含有量が0.11%未満では、980MPa以上の引張強度を得ることが困難である。したがって、C含有量は0.11%以上とする。好ましくは0.14%以上である。一方、C含有量が0.24%超では、靱性や溶接性が低下する。したがって、C含有量は0.24%以下とする。好ましくは0.22%以下、さらに好ましくは0.17%以下である。
Siは、鋼板の強度を高める作用を有する元素である。さらに、フェライトを強化し、組織を均一化し、加工性を改善するのに有効な元素である。また、Siは脱酸材として作用し、鋼中の介在物量を減少させる働きがある。Si含有量が0.7%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.7%以上とする。好ましくは1.0%以上である。一方、Si含有量が1.9%超では、ポリゴナルフェライトの体積率が過大となり、穴広げ性が低下する。したがって、Siの含有量は1.9%以下とする。好ましくは1.4%以下である。
Mnは、鋼板の強度を高める作用を有する元素である。Mn含有量が1.7%未満では、980MPa以上の引張強度を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は1.7%以上とする。好ましくは2.0%以上である。一方、Mn含有量が3.5%超では、靱性、溶接性、遅れ破壊性が低下する。したがって、Mn含有量は3.5%以下とする。好ましくは2.8%以下である。
Pは、一般に不純物として含有され、靱性を劣化させる作用を有する元素である。P含有量が0.1%超では靭性の劣化が著しくなる。したがって、P含有量は0.1%以下とする。好ましくは0.02%以下である。
Sは、一般に不純物として含有され、鋼中にMnSを形成し、穴広げ性を劣化させる作用を有する。S含有量が0.01%超では、穴広げ性の劣化が著しくなる。したがって、Sの含有量は0.01%以下とする。好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.0012%以下である。
Alは、フェライトを安定化させる作用を有する元素である。sol.Al含有量が1.5%超では、ポリゴナルフェライトの体積率が過大となり、穴広げ性の低下を招く。したがって、sol.Al含有量は1.5%以下とする。なお、Alは、通常は脱酸目的で添加される場合が多いが、本発明においては、Alと同様に脱酸作用を有するSiを多量に含有し、Siによる脱酸が可能であるため、Alの含有は必須ではない。Alは、凝集して表面疵の原因となるアルミナを生成するので、これを抑制する観点からは、sol.Alを0.10%以下とすることが好ましく、0.035%以下とすることがさらに好ましく、0.009%以下とすることが特に好ましい。
Nは、一般に不純物として含有されるが、鋼中に固溶Nとして存在すると焼付硬化能を上げる働きがあるので、積極的に含有させてもよい。しかし、N含有量が0.0200%超では、窒化物として析出することによりスラブの割れの原因となる場合がある。したがって、N含有量は0.0200%と以下する。
TiおよびNbは、析出物となって焼鈍時のオーステナイトの粒成長を抑制することにより、MA中のマルテンサイトの比率を低減させオーステナイトの比率を高めて、延性を向上させる作用を有する。Vは、鉄に固溶しやすく、析出は起こりにくいが、TiやNbと同様に、焼鈍時のオーステナイトの粒成長を抑制する作用を有する。したがって、Ti、NbおよびVからなる群から選択される1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、Ti含有量が0.30%超であったり、Nb含有量が0.30%超であったりすると、焼鈍時のオーステナイトが過度に細粒化するとともに炭化物析出にともなって母相中のC含有量が低下してしまうため、ポリゴナルフェライトが過剰に生成してしまい、穴拡げ性の劣化を招く。また、V含有量を0.30%超としても、上記作用による効果は飽和して、コスト的に不利になる。したがって、Ti含有量は0.30%以下、Nb含有量は0.30%以下、V含有量は0.30%以下とする。Ti含有量は0.020%以下とすることが好ましく、0.009%以下とすることがさらに好ましい。Nb含有量は0.020%以下とすることが好ましく、0.009%以下とすることがさらに好ましい。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.001%以上、Nb:0.001%以上およびV:0.001%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
CrおよびMoは、Mnと同様にオ−ステナイトを安定化することで変態強化を促進する作用を有し、鋼板の高強度化に有効である。したがって、CrおよびMoからなる群から選択される1種または2種を含有させてもよい。しかし、Cr含有量が2.0%を超えたり、Mo含有量が2.0%を超えると、化成処理性の低下を招く。したがって、Cr含有量は2.0%以下、Mo含有量は2.0%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るにはCr:0.001%以上およびMo:0.001%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
CuおよびNiは、腐食抑制効果があり、表面に濃化して水素の侵入を抑え、遅れ破壊を抑制する作用を有する。したがって、CuおよびNiからなる群から選択される1種または2種を含有させてもよい。しかし、いずれの元素も2.0%を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、Cu含有量は2.0%以下、Ni含有量は2.0%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Cu:0.001%以上およびNi:0.001%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
CaおよびREMは、鋼中のSと結合して、硫化物を球状化させることにより、局部延性を向上させる作用を有する。したがって、CaおよびREMからなる群から選択される1種または2種を含有させてもよい。しかし、Caについては0.01%を超えて含有させても、REMについては0.1%を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、Ca含有量は0.01%以下、REM含有量は0.1%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、Ca:0.0001%以上およびREM:0.0001%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
Bは、粒界からの核生成を抑え、焼き入れ性を高めることにより、強度を高める作用を有する。したがって、Bを含有させてもよい。しかし、B含有量が0.02%超では、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、B含有量は0.02%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るには、B含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
Mnなどがミクロ偏析すると、硬さの不均一なバンド組織が発達して加工性を低下させる。Biは凝固界面に濃化してデンドライト間隔を狭くし、凝固偏析を小さくする作用がある。したがって、Biを含有させてもよい。しかし、Bi含有量が0.05%超では、表面品質の劣化を生じさせる。したがって、Bi含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.0050%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0003%以上である。
本発明に係る鋼板は、体積%で、ポリゴナルフェライト:35%以下、残留オーステナイト:5%以上、焼き戻しマルテンサイト:40%以上であって、焼き戻しマルテンサイトの粒内に存在する残留オーステナイトおよびMAならびに焼き戻しマルテンサイトの粒に接して存在する残留オーステナイトおよびMAの総体積が、鋼組織に占める残留オーステナイトおよびMAの総体積の20体積%以上である鋼組織を有する。
ポリゴナルフェライトは、軟質な相であるため、割れの起点となりやすい。ポリゴナルフェライトの体積率が35%を超えると穴広げ性が劣化する。したがって、ポリゴナルフェライトの体積率は35%以下とする。好ましくは15%以下、さらに好ましくは5%以下である。ポリゴナルフェライトは少ないほど好ましいので、ポリゴナルフェライトの体積率の下限は規定する必要はなく、0%であってもよい。
残留オーステナイトは、成形加工中に硬質なマルテンサイトに変態することにより、n値を向上させて、延性を高める作用を有する。残留オーステナイトの体積率が5%未満では、上記効果を得ることが困難である。したがって、残留オーステナイトの体積率は5%以上とする。好ましくは8%以上、さらに好ましくは10%以上である。
焼き戻しマルテンサイトは、組織の不均一性を抑え、高い強度と優れた穴広げ性とを両立させる作用を有する。焼き戻しマルテンサイトの体積率が40%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、焼き戻しマルテンサイトの体積率は40%以上とする。好ましくは50%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。
上述したように、残留オーステナイトを含有させることにより、鋼板の延性を向上させることが可能となる。しかし、残留オーステナイトは、成形加工による変形中に硬質なマルテンサイト変態し、大きな組織間硬度差を生じて穴拡げ加工時の亀裂発生の要因となることが一般的である。このため、単に残留オーステナイトを含有させたのでは、延性の向上を図ることができたとしても、優れた穴拡げ性を確保することが困難となる。
本発明に係る冷延鋼板は、高強度鋼板として必要な980MPa以上の引張強度を有すると共に、延性および穴広げ性にも優れている。高い延性の目安として、引張強度×全伸びの積は17000MPa・%以上であることが好ましく、19000MPa・%以上であることがさらに好ましい。穴広げ率は、JIS Z 2256に従った測定において30%以上であることが好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
本発明に係る鋼板は、上記化学組成を有する冷間圧延鋼板に対して、820℃以上の温度域に15秒間以上保持した後、550℃以上800℃以下の温度域まで0.5℃/秒以上15℃/秒以下の冷却速度で冷却し、前記温度域から15℃/秒以上200℃/秒以下の冷却速度で150℃以上390℃以下の温度域まで冷却し、330℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上600秒間以下保持した後、室温まで冷却するという条件で焼鈍を施すことにより製造することができる。
焼鈍時の加熱温度が820℃未満であったり、加熱保持時間が15秒間未満であったりすると、焼鈍過程におけるオーステナイトへの変態量が不足し、最終製品においてポリゴナルフェライトの体積率が過大となり、穴広げ性が劣化する場合がある。したがって、焼鈍温度は820℃以上とする。好ましくは850℃以上であり、さらに好ましくはオーステナイト単相域である。また、焼鈍時間は15秒間以上とする。焼鈍温度および焼鈍時間の上限は特に規定しないが、製造コストおよび表面品質の観点からは、焼鈍温度は900℃以下とすることが好ましく、焼鈍時間は300秒間以下とすることが好ましい。
変態の潜伏時間を消費しつつポリゴナルフェライトの生成を抑制することにより、最終製品において目的とする鋼組織を得るために、焼鈍温度に加熱した後にこのような緩冷却を行う。冷却速度は1℃/秒以上8℃/秒以下とすることが好ましい。
上記緩冷却の後、急冷を行う。急冷開始温度が550℃未満であったり、その冷却速度が15℃/秒未満であったりすると、ポリゴナルフェライト生成量が過剰となり、穴広げ性が劣化する場合がある。したがって、急冷開始温度は550℃以上、冷却速度は15℃/秒以上とする。冷却速度は30℃/秒以上とすることが好ましい。
この温度保持は焼き戻し熱処理であり、マルテンサイトを焼き戻すためと残留オーステナイト中にCを濃縮させて安定化させるために行う。
Claims (10)
- 質量%で、C:0.14%以上0.24%以下、Si:0.7%以上1.9%以下、Mn:1.7%以上3.5%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:1.5%以下、およびN:0.0200%以下を含有し、残部がFeおよび不純物である化学組成と、
体積%で、ポリゴナルフェライト:35%以下、残留オーステナイト:8%以上、焼き戻しマルテンサイト:40%以上を有し、かつ前記焼き戻しマルテンサイトの粒内に存在する残留オーステナイトおよびMAならびに焼き戻しマルテンサイトの粒に接して存在する残留オーステナイトおよびMAの総体積が、鋼組織に占める残留オーステナイトおよびMAの総体積の20体積%以上である鋼組織と、
引張強度が980MPa以上であり、引張強度と全伸びとの積が19596MPa・%以上であり、穴広げ率が40%以上である機械特性と、
を有することを特徴とする鋼板。 - 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.30%以下、Nb:0.30%以下およびV:0.30%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有する請求項1に記載の鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:2.0%以下およびMo:2.0%以下からなる群から選択される1種または2種を含有する請求項1または請求項2に記載の鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cu:2.0%以下およびNi:2.0%以下からなる群から選択される1種または2種を含有する請求項1から請求項3までのいずれかに記載の鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.01%以下およびREM:0.1%以下からなる群から選択される1種または2種を含有する請求項1から請求項4までのいずれかに記載の鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、B:0.02%以下を含有する請求項1から請求項5までのいずれかに記載の鋼板。
- 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Bi:0.05%以下を含有する請求項1から請求項6までのいずれかに記載の鋼板。
- 冷延鋼板を、820℃以上の温度域に15秒間以上保持した後、550℃以上800℃以下の温度域まで0.5℃/秒以上14℃/秒以下の冷却速度で冷却し、前記温度域から15℃/秒以上200℃/秒以下の冷却速度で150℃以上390℃以下の温度域まで冷却し、330℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上600秒間以下保持した後、室温まで冷却することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の鋼板の製造方法。
- 冷延鋼板を、820℃以上の温度域に15秒間以上保持した後、550℃以上800℃以下の温度域まで0.5℃/秒以上14℃/秒以下の冷却速度で冷却し、前記温度域から15℃/秒以上200℃/秒以下の冷却速度で150℃以上390℃以下の温度域まで冷却し、330℃以上500℃以下の温度域で30秒間以上600秒間以下保持した後、溶融亜鉛めっきを施し、室温まで冷却することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかに記載の鋼板の製造方法。
- 前記溶融めっきの後に、合金化熱処理を実施する、請求項9に記載の鋼板の製造方法。
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JP2014034716A (ja) | 2014-02-24 |
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