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JP5857952B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関へ燃料を噴射する燃料噴射弁に、関する。
従来、軸方向のうち開弁側と閉弁側とへ弁部材を往復移動させることで、弁ハウジングの噴孔を開閉させる燃料噴射弁が、知られている。かかる燃料噴射弁の一種として特許文献1に開示のものでは、弁ハウジングに固定される固定コアと、往復移動可能な可動コアとの間に磁力を発生させることで、可動コアを弁部材と共に開弁側へと移動させて、噴孔からの燃料噴射を実現している。このとき、固定コアの外周側に固定されるソレノイド部の通電に応じて、磁束が固定コア及び可動コアへ案内されることで、それらコア間に磁力が発生する。故に、ソレノイド部への通電が停止して磁力が消失すると、固定コアに保持されるスプリングによって弁部材は、可動コアと共に閉弁側へ押圧駆動されて、噴孔からの燃料噴射を停止させることになる。したがって、固定コアによるスプリングの保持位置は、噴孔からの燃料噴射量を左右することになる。
さて、近年、排出ガス規制が強まる中で燃料噴射弁には、一回の燃焼サイクルにおいて燃料噴射を複数回に分割する分割噴射の必要性が、高まっている。こうした分割噴射では、燃料噴射量の絶対量が小さくなるため、個体間バラツキや、噴射間(ショット間)バラツキ、経年変化の影響が大きくなる。
特開2011−241701号公報
しかし、特許文献1に開示の燃料噴射弁では、個体間バラツキや、噴射間バラツキ、経年変化が燃料噴射量に生じ易くなっている。これは、固定コアにおいて内部に嵌入されたスプリングを開弁側にて保持する保持孔と、ソレノイド部において磁束の通過する磁性ヨークとの位置関係に、問題が生じているからである。以下、その具体的理由を説明する。
特許文献1に開示の燃料噴射弁において磁性ヨークは、軸方向に沿って保持孔の一部のみと重なっている。即ちスプリングは、軸方向に沿って磁性ヨークと重なる位置だけでなく、磁性ヨークよりも軸方向開弁側の位置にて、保持孔に保持されている。
ここで、特許文献1に開示の燃料噴射弁の磁性ヨークでは、周方向の特定箇所にて径方向厚さが薄くなっているため、磁束の通過する磁路面積が当該特定箇所にて減少している。これによれば、磁性の与えられた磁性スプリングの場合、磁性ヨークと重なる位置では、特定箇所の径方向反対側へと押し付けられるものの、磁性ヨークよりも開弁側位置では、任意の径方向に変位可能となる。故に、燃料噴射弁の組み立て時において磁性スプリングが、磁性ヨークよりも開弁側位置にて特定箇所の径方向反対側箇所以外へずれると、個体間バラツキが燃料噴射量に生じてしまう。また、燃料噴射弁の作動時には、噴射毎又は時間経過に伴って磁性スプリングが、磁性ヨークよりも開弁側位置にて特定箇所の径方向反対側箇所以外へずれると、噴射間バラツキ又は経年変化が燃料噴射量に生じてしまう。
本発明は、以上説明した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、燃料噴射量の安定した燃料噴射弁を、提供することにある。
本発明は、内燃機関へ燃料を噴射する噴孔(18)を、有する弁ハウジング(10)と、軸方向のうち開弁側と閉弁側とへ往復移動することにより、噴孔を開閉する弁部材(40)と、弁ハウジングに固定される固定コア(20)と、弁部材と共に往復移動可能に設けられ、固定コアとの間に磁力が発生することにより、開弁側へ移動する可動コア(30)と、固定コアに保持され、弁部材を閉弁側へ押圧駆動する磁性スプリング(50)と、固定コアの外周側に固定され、ソレノイドコイルへの通電に応じて磁束を固定コア及び可動コアへ案内することにより、磁力を発生させるソレノイド部(60)とを、備える燃料噴射弁において、固定コアは、内部に嵌入された磁性スプリングを開弁側にて保持する保持孔(26)を、有し、ソレノイド部は、磁束を案内する磁性ヨーク(63)のうち、ソレノイドコイルの開弁側に位置して径方向への磁束の通過を周方向の特定箇所(S)にて減らすヨーク(63)を、軸方向に沿って保持孔の全域と重なる位置に、有し、部分環状に形成されるヨーク部において開口している特定箇所は、保持孔の全域と軸方向に沿って重なり、コイルスプリングである磁性スプリングは、開弁側の軸方向端から所定巻数部分を、保持孔の全域に嵌入される座巻(52)として有することを特徴とする。
こうした本発明によると、磁束を案内する磁性ヨークのうち、ソレノイドコイルの開弁側に位置して径方向への磁束通過を周方向の特定箇所にて減らすヨークは、固定コアの保持孔全域と軸方向に沿って重なっているので、径方向に通過する磁束の密度分布に周方向における偏りが生じる。これによれば、保持孔内への嵌入保持状態にある磁性スプリングは、磁性ヨークから磁束案内された固定コアとの間にて磁力の作用を受けることで、特定箇所とは径方向反対側にて保持孔全域に押し付けられ得る。故に磁性スプリングは、燃料噴射弁の組み立て時に特定箇所の径方向反対側箇所以外にずれたとしても、燃料噴射弁の作動時には、当該径方向反対側にて保持孔全域に押し付けられることで、径方向にはずれ難くなる。故に、組み立て時の径方向ずれに起因して燃料噴射量の個体間バラツキが生じることも、噴射毎又は時間経過に伴う作動時の径方向ずれに起因して噴射間バラツキ又は経年変化が燃料噴射量に生じることも、抑制できる。以上より本発明は、燃料噴射量の安定した燃料噴射弁を、提供可能である。
さらに本発明によると、コイルスプリングである磁性スプリングにおいて開弁側の軸方向端から所定巻数部分は、座巻として、復原力の発生に実質寄与しない。故に、座巻としての所定巻数部分が保持孔全域に嵌入保持されても、磁性スプリングは、当該所定巻数部分よりも閉弁側部分にて所望の復原力を安定的に発生できる。また、保持孔内の所定巻数部分は、固定コアから磁力作用を受けることで、特定箇所とは径方向反対側にて保持孔全域に押し付けられ得るので、径方向にはずれ難い。以上によれば、磁性スプリングの復原力変動に起因して燃料噴射量の安定性が下がる事態も、磁性スプリングの径方向ずれに起因して燃料噴射量の安定性が下がる事態も、回避可能となる。
また、本発明のさらなる特徴としては、軸方向に延伸する軸部(42)、並びに軸部から突出する突部(44)を、有する弁部材と、軸部が内部を相対移動可能に貫通し、突部が開弁側の軸方向端面に接触することより、弁部材と共に移動可能となる可動コアであって、開弁側の移動端にて固定コアに係止される可動コアと、磁性スプリングとして固定コア及び弁部材の間に介装される閉弁スプリング(50)と、弁ハウジング及び可動コアの間に介装されて、可動コアを開弁側へ押圧駆動する開弁スプリング(51)とを、備える。
かかる特徴の弁部材によると、軸方向に延伸する軸部が可動コア内を相対移動可能に貫通する状態下、軸部から突出する突部が可動コアの軸方向端面に開弁側にて接触することで、弁部材と可動コアとが共に移動可能となる。故に、かかる接触状態下、可動コアが弁ハウジングとの間の開弁スプリングにより開弁側へと押圧駆動されるときには、弁部材が固定コアとの間の閉弁スプリングに抗して開弁側へ移動する。その結果、可動コアが開弁側の移動端にて固定コアに係止されると、慣性により弁部材は、開弁側への移動を継続してオーバーシュートしようとするが、閉弁スプリングにより当該オーバーシュートが抑制され得る。このとき、磁性スプリングとしての閉弁スプリングは、固定コアとの間の磁力作用を受けることで、特定箇所とは径方向反対側にて保持孔全域に押し付けられ得るので、径方向にはずれ難くなる。これによれば、閉弁スプリングによるオーバーシュートの抑制作用を確実且つ安定的に発揮できるので、可動コアに対して当該弁部材がオーバーシュートするような構成のものにおいて、燃料噴射量の安定性のさらなる向上が可能となる。
本発明の一実施形態による燃料噴射弁を示す縦断面図である。 図1の要部を拡大して示す縦断面図である。 図2のIII−III線横断面図である。 図3に示す燃料噴射弁の特徴を説明するための模式図である。 図4の変形例を示す模式図である。 図2の変形例を示す模式図である。 図2の変形例を示す模式図である。
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の一実施形態として図1に示す燃料噴射弁1は、「内燃機関」であるガソリンエンジンに設置され、当該ガソリンエンジンの燃焼室(図示しない)へ燃料を噴射する。尚、かかる適用形態以外にも、例えば燃料噴射弁1は、ガソリンエンジンの燃焼室に連通する吸気通路へ燃料を噴射するものであってもよい。
(構成)
まず、燃料噴射弁1の構成を説明する。燃料噴射弁1は、弁ハウジング10、固定コア20、可動コア30、弁部材40、スプリング50,51及びソレノイド部60を備えている。
弁ハウジング10は、本体部材12、入口部材13及びノズル部材14等から構成されている。円筒状の本体部材12は、第一磁性部120、非磁性部121及び第二磁性部122を、軸方向の閉弁側から開弁側へ向かってこの順で、有している。金属磁性体からなる各磁性部120,122と、金属非磁性体からなる非磁性部121とは、例えばレーザ溶接等により結合されている。かかる結合構造により非磁性部121は、第一磁性部120と第二磁性部122の間にて磁束が短絡するのを、防止している。
第二磁性部122において非磁性部121とは反対側部分には、円筒状の入口部材13が固定されている。入口部材13は、燃料ポンプ(図示しない)からの燃料供給を受ける燃料流入口15を、形成している。この燃料流入口15に流入する燃料を濾過するために入口部材13の内周側には、燃料フィルタ16が収容されている。
第一磁性部120において非磁性部121とは反対側部分には、ノズル部材14が固定されている。有底円筒状のノズル部材14は、燃料を流通させる燃料通路17を、本体部材12と共同して形成している。ノズル部材14には、噴孔18及び弁座19が設けられている。燃料通路17と連通する噴孔18は、ノズル部材14の中心軸線周りに複数設けられ、それぞれ円筒孔状に形成されている。弁座19は、各噴孔18よりも上流側にて燃料通路17の周囲に、円錐面状に形成されている。
円筒状の金属磁性体からなる固定コア20は、非磁性部121及び第二磁性部122の内周面に同軸上に固定されている。固定コア20の径方向中央部には、金属からなる円筒状のアジャスティングパイプ24が同軸上に圧入されている。固定コア20は、上流側の燃料流入口15と連通する連通通路22を、アジャスティングパイプ24と共同して形成している。連通通路22は、燃料流入口15から流入した燃料を下流側へと導く。
円筒状の金属磁性体からなる可動コア30は、固定コア20よりも閉弁側にて本体部材12の内周側に同軸上に収容され、軸方向のうち開弁側と閉弁側とへ往復移動可能となっている。可動コア30は、開弁側の移動端にて軸方向端面30aを固定コア20の軸方向端面20aに当接させることで、当該コア20に係止される。可動コア30は、軸方向に延伸する軸方向孔34を、径方向中央部にて円筒孔状に形成している。
細長円柱状(ニードル状)の金属非磁性体からなる弁部材40は、本体部材12及びノズル部材14の内周側に同軸上に収容され、開弁側と閉弁側とへ往復移動可能となっている。弁部材40は、軸方向に延伸する円柱状の軸部42を、有している。軸部42は、軸方向孔34に同軸上に嵌入されることで、可動コア30の内部を軸方向に相対移動可能に貫通している。
弁部材40は、軸部42から外周側へ突出する円形鍔状(フランジ状)の突部44を、開弁側の基端に有している。軸方向孔34よりも大径の突部44において閉弁側を向く軸方向端面44aは、可動コア30において開弁側を向く軸方向端面30aと接触する。かかる接触状態にて弁部材40は、可動コア30と共に往復移動可能となっている。
弁部材40は、軸部42及び突部44に跨って貫通する燃料孔46を、有している。燃料孔46は、可動コア30よりも開弁側にて突部44に開く開口を、連通通路22の下流側部分に連通させている。それと共に燃料孔46は、可動コア30よりも閉弁側にて軸部42に開く開口を、燃料通路17の上流側部分に連通させている。こうした連通構造により燃料孔46は、弁部材40の移動位置に拘らず、燃料を連通通路22から燃料通路17へと流通させる。
弁部材40は、弁座19と対向するシート部48を、閉弁側の先端に有している。弁部材40は、開弁側への移動によりシート部48を弁座19から離座させることで、各噴孔18を燃料通路17に対して開放する。その結果、燃料通路17の燃料が各噴孔18から燃焼室へと噴射される。また一方で弁部材40は、閉弁側への移動によりシート部48を弁座19に着座させることで、各噴孔18を燃料通路17に対して閉塞する。その結果、各噴孔18からの噴射が停止する。このように弁部材40は、往復移動により各噴孔18を開閉することで、それら各噴孔18からの燃料噴射を断続可能となっている。
閉弁スプリング50は、金属からなる圧縮コイルスプリングであり、固定コア20の内周側に同軸上に収容されている。閉弁スプリング50は、アジャスティングパイプ24において閉弁側を向く軸方向端面24aと、突部44において開弁側を向く軸方向端面44bとの間に、挟持されている。かかる挟持構造により閉弁スプリング50は、要素24,44間での圧縮に応じて弾性復原力を発生することで、弁部材40を閉弁側へと押圧駆動する。
開弁スプリング51は、金属からなる圧縮コイルスプリングであり、軸部42の外周側にて本体部材12の内周側に同軸上に収容されている。閉弁スプリング50は、可動コア30において閉弁側を向く凹面30bと、第一磁性部120において開弁側を向く段差面120aとの間に、挟持されている。かかる挟持構造により開弁スプリング51は、要素30,120間での圧縮に応じて弾性復原力を発生することで、可動コア30を開弁側へと押圧駆動する。
ソレノイド部60は、ソレノイドコイル61、絶縁ボビン62、磁性ヨーク63、コネクタ64及びターミナル65等から構成されている。ソレノイドコイル61は、樹脂製の絶縁ボビン62に金属製の線材を巻回してなる。ソレノイドコイル61は、固定コア20の外周側にて磁性部120,122及び非磁性部121の外周面に、絶縁ボビン62を介して同軸上に固定されている。全体として円筒状の金属磁性体からなる磁性ヨーク63は、コア20,30の外周側にて磁性部120,122の外周面に同軸上に固定されることで、ソレノイドコイル61の周囲を覆っている。樹脂製のコネクタ64は、磁性ヨーク63の開口を通じて周方向の一箇所を外部に張り出させている。コネクタ64に埋設される金属製ターミナル65は、ソレノイドコイル61を外部の制御回路(図示しない)に電気接続する。かかる電気接続によりソレノイドコイル61への通電は、制御回路によって制御可能となっている。
以上の如く構成される燃料噴射弁1の開弁作動では、制御回路によって通電されるソレノイドコイル61が励磁することで、磁性ヨーク63、第一磁性部120、可動コア30、固定コア20及び第二磁性部122に磁束が案内される。即ち、それら要素63,120,30,20,122を磁束が通過するように、磁気回路が形成される。すると、互いに対向するコア20,30間には、可動コア30を固定コア20側へと吸引するように、磁力(磁気吸引力)が発生する。かかる磁力と開弁スプリング51の復原力との和が閉弁スプリング50の復原力よりも大きくなると、可動コア30は、軸方向端面30aに接触している突部44を開弁側へと押圧する。その結果、弁部材40と共に可動コア30が開弁側へ移動するので、シート部48が弁座19から離座して各噴孔18から燃料が噴射される。
閉弁側への移動により可動コア30は、軸方向端面20aと衝突することで、固定コア20に係止される。このとき弁部材40は、慣性移動を継続するので、軸方向端面30aから突部44を離間させる。これにより、可動コア30が固定コア20との衝突反力を受けて閉弁側にバウンドしても、軸方向端面30aからの離間により当該衝突反力の作用を抑制される弁部材40は、各噴孔18を誤閉じして燃料噴射量のバラツキを招くバウンスを、生じ難くなる。また、軸方向端面30aからの離間により弁部材40は、閉弁スプリング50の復原力を閉弁側へと受けることで、開弁側への過剰な移動であるオーバーシュートを、生じ難くなる。
こうした開弁作動後の閉弁作動では、制御回路によって通電停止されるソレノイドコイル61が消磁するので、コア20,30間の磁力が消失する。かかる磁力の消失により弁部材40は、開弁スプリング51よりも大きな復原力を閉弁スプリング50から受けることで、軸方向端面44aに接触している可動コア30を閉弁側に押圧する。その結果、可動コア30と共に弁部材40が閉弁側へと移動するので、シート部48が弁座19に着座して各噴孔18からの燃料噴射が停止する。
(スプリング保持構造)
次に、燃料噴射弁1において閉弁スプリング50を保持するスプリング保持構造につき、詳細に説明する。
図2,3に示すように磁性ヨーク63は、共に金属磁性体からなる第一ヨーク部630及び第二ヨーク部631を、有している。第一ヨーク部630は、周方向に連続する有底円筒状に、実質一定の径方向厚さをもって形成されている。第一ヨーク部630は、閉弁側に開口630aを向けて配置され、開弁側の底壁630bにて第一磁性部120の外周面に固定されている。
第二ヨーク部631は、周方向の一箇所Sにて開口する部分円環状(C字状)に、実質一定の径方向厚さをもって形成されている。第二ヨーク部631は、径方向において開口630aの内周面と第二磁性部122の外周面との間に、同軸上に嵌入されている。また図2に示すように、軸方向において第二ヨーク部631と底壁630bとの間には、ソレノイドコイル61及び絶縁ボビン62が収容されている。かかる収容形態により第二ヨーク部631は、ソレノイドコイル61よりも開弁側に位置している。
図2,3に示すように、第二ヨーク部631において開口部632が形成される特定箇所Sは、コネクタ64の張り出し箇所として利用されている。即ち特定箇所Sでは、コネクタ64の形成樹脂やターミナル65等が開口部632内へと入り込んでいる。故に、ソレノイドコイル61への通電時には、特定箇所S以外の残余部分(即ち、C字形の磁性材部分)では、図4に矢印で示すように磁束が径方向に通過し得る一方、特定箇所Sの開口部632では、かかる径方向への磁束通過が減らされ得る。以上より、第二ヨーク部631を径方向に通過する磁束の密度分布には、周方向において偏りが生じることになる。
図2,3に示すように固定コア20は、連通通路22を形成する保持孔26及び遊挿孔28を、有している。保持孔26は、図2に示す固定コア20の径方向中央部においてアジャスティングパイプ24の閉弁側に隣接した中心孔部分をいい、固定コア20の軸方向端面20aには到らない軸方向長さを、有している。保持孔26の内径は、アジャスティングパイプ24の内径よりも大きく設定されている。かかる内径設定によりアジャスティングパイプ24は、保持孔26内に軸方向端面24aを露出させている。
ここで、軸方向において保持孔26の全域は、第二ヨーク部631の一方の軸方向端面631aよりも閉弁側且つ第二ヨーク部631の他方の軸方向端面631bよりも開弁側に、配置されている。かかる配置形態により保持孔26の全域は、特定箇所Sに開口部632を形成する第二ヨーク部631と、第一ヨーク部630のうち当該第二ヨーク部631の外周を覆う外筒部分630cのみに対して、軸方向に沿って重なっている。換言すれば、磁性ヨーク63において第二ヨーク部631及び外筒部分630cに囲まれる特定箇所Sは、保持孔26の全域と軸方向に沿って重なっている。
遊挿孔28は、固定コア20の径方向中央部において保持孔26の閉弁側に隣接した中心孔部分をいい、固定コア20の軸方向端面20aまで到る軸方向長さを、有している。図2,3に示すように遊挿孔28の内径は、同孔28内での突部44の往復摺動を可能にする範囲にて、保持孔26の内径よりも大きく設定されている。
磁性を有する「磁性スプリング」として本実施形態の閉弁スプリング50には、金属磁性体からなる研削エンド型の圧縮コイルスプリングが、採用されている。図2に示すように閉弁スプリング50は、開弁側の軸方向端と閉弁側の軸方向端とからそれぞれ所定巻数部分(本実施形態では、二巻部分)を、復原力の発生には実質寄与しない座巻52,54として、有している。
閉弁スプリング50において開弁側の座巻52は、保持孔26内に同軸上に嵌入されることで、固定コア20により保持されている。ここで特に座巻52は、保持孔26内に露出したアジャスティングパイプ24の軸方向端面24aに対して、軸方向端の研削面52aを接触させている。それと共に座巻52の軸方向長さは、保持孔26の軸方向長さと実質等しく設定されている。こうした接触形態及び長さ設定により保持孔26は、閉弁スプリング50において座巻52のみを保持している。
閉弁スプリング50において座巻52の閉弁側に隣接する箇所から座巻54まで延伸する部分は、遊挿孔28内に径方向隙間28aをあけて、同軸上に遊挿されている。ここで特に座巻54は、遊挿孔28内を摺動する突部44の軸方向端面44bに対して、軸方向端の研削面54aを接触させている。
以上の構成により閉弁スプリング50は、開弁側にて固定コア20に保持された状態下、弁部材40に対して閉弁側の復原力を付与する。
(作用効果)
以上説明した燃料噴射弁1の作用効果を、以下に説明する。
燃料噴射弁1によると、磁束を案内する磁性ヨーク63のうち、径方向への磁束通過を図4の如く周方向の特定箇所Sにて減らす第二ヨーク63は、固定コア20の保持孔26全域と軸方向に沿って重なっているので、径方向に通過する磁束の密度分布に周方向における偏りが生じる。これによれば、保持孔26内への嵌入保持状態にある磁性の閉弁スプリング50は、磁性ヨーク63から磁束案内された固定コア20との間にて磁力の作用を受けることで、特定箇所Sとは径方向反対側にて保持孔26全域に押し付けられ得る。故に閉弁スプリング50は、燃料噴射弁1の組み立て時に特定箇所Sの径方向反対側箇所以外にずれたとしても、燃料噴射弁1の作動時には、当該径方向反対側にて保持孔26全域に押し付けられることで、径方向にはずれ難くなる。故に、組み立て時の径方向ずれに起因して燃料噴射量の個体間バラツキが生じることも、噴射毎又は時間経過に伴う作動時の径方向ずれに起因して噴射間バラツキ又は経年変化が燃料噴射量に生じることも、抑制できる。以上より、燃料噴射量の安定した燃料噴射弁1を、提供可能である。
ここで燃料噴射弁1のように、第二ヨーク63における特定箇所Sを保持孔26全域と軸方向に沿って重ねることによれば、径方向に通過する磁束の密度分布の偏りを大きくして、固定コア20とその保持孔26内の閉弁スプリング50との間に生じる磁力を、確実に増大させ得る。これにより、特定箇所Sとは径方向反対側にて閉弁スプリング50を押し付ける磁力も、確実に増大させ得るので、当該スプリング50の径方向ずれに起因する個体間乃至は噴射間バラツキ並びに経年変化を抑制することにつき、その効果を高めることができる。したがって、燃料噴射量の安定性を増すことが、可能となる。
また、コイルスプリングである閉弁スプリング50において開弁側の軸方向端から所定巻数部分は、座巻52として、復原力の発生に実質寄与しない。故に、座巻52としての所定巻数部分が保持孔26全域に嵌入保持されても、閉弁スプリング50は、当該所定巻数部分よりも閉弁側部分にて所望の復原力を安定的に発生できる。また、保持孔26内の所定巻数部分は、固定コア20との間の磁力作用を受けることで、特定箇所Sとは径方向反対側にて保持孔26全域に押し付けられ得るので、径方向にはずれ難い。以上によれば、閉弁スプリング50の復原力変動に起因して燃料噴射量の安定性が下がる事態も、閉弁スプリング50の径方向ずれに起因して燃料噴射量の安定性が下がる事態も、回避可能となる。
さらに、閉弁スプリング50において座巻52の閉弁側に隣接する部分は、保持孔26の閉弁側に隣接した遊挿孔28内への遊挿部分となるので、当該遊挿孔28を有する固定コア20とは干渉し難い。これによれば、固定コア20と干渉した閉弁スプリング50の復原力低下に起因して燃料噴射量の安定性が下がる事態も、回避可能となる。
またさらに、特定箇所Sにて開口する部分円環状の第二ヨーク63では、当該特定箇所Sにて磁束の径方向通過が図4の如く確実に減らされ得る。これによれば、特定箇所Sとは径方向反対側にて閉弁スプリング50を押し付ける磁力を増大し得るので、当該スプリング50の径方向ずれに起因する個体間乃至は噴射間バラツキ並びに経年変化を抑制することにつき、その効果を高めることができる。したがって、燃料噴射量の安定性を増すことが、可能となる。
加えて、弁部材40によると、可動コア30と相対運動可能である。具体的に弁部材40によると、軸方向に延伸する軸部42が可動コア30内を相対移動可能に貫通する状態下、軸部42から突出する突部44が可動コア30の軸方向端面30aに開弁側にて接触することで、弁部材40と可動コア30とが共に移動可能となる。故に、かかる接触状態下、可動コア30が弁ハウジング10との間の開弁スプリング51により開弁側へと押圧駆動されるときには、弁部材40が固定コア20との間の閉弁スプリング50に抗して開弁側へ移動する。その結果、可動コア30が開弁側の移動端にて固定コア20に係止されると、慣性により弁部材40は、開弁側への移動を継続してオーバーシュートしようとするが、閉弁スプリング50により当該オーバーシュートが抑制され得る。このとき閉弁スプリング50は、固定コア20との間の磁力作用を受けることで、特定箇所Sとは径方向反対側にて保持孔26の全域に押し付けられ得るので、径方向にはずれ難くなる。これによれば、閉弁スプリング50によるオーバーシュートの抑制作用を確実且つ安定的に発揮できるので、可動コア30に対して当該弁部材40がオーバーシュートするような構成のものにおいて、燃料噴射量の安定性のさらなる向上が可能となる。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、当該実施形態に限定して解釈されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用することができる。
具体的に変形例1では、図5に示すように、周方向に連続する円環状の第二ヨーク部631において特定箇所Sの径方向厚さを、当該箇所S以外の残余部分の径方向厚さよりも薄くすることで、径方向への磁束通過を当該箇所Sにて減らす開口部632を、形成してもよい。
変形例2では、図6に示すように、磁性ヨーク63において保持孔26の全域と軸方向に沿って重なる部分を、特定箇所S(第二ヨーク部631及び外筒部分630c)の一部と、当該箇所Sよりも閉弁側部分(第一ヨーク部630において外筒部分630cの閉弁側に隣接する部分630d)としてもよい。この変形例2の場合に特定箇所Sは、保持孔26の一部のみと軸方向に沿って重なることになる。あるいは変形例3では、図7に示すように、磁性ヨーク63において保持孔26の全域と軸方向に沿って重ねる部分を、特定箇所Sよりも閉弁側部分(第一ヨーク部630において外筒部分630cの閉弁側に隣接する部分630d)のみとしてもよい。この変形例3の場合に特定箇所Sは、保持孔26とは軸方向に沿って重ならないことになる。
変形例4では、コイルスプリング以外のスプリングを閉弁スプリング50に採用してもよい。また、変形例5では、コイルスプリング以外のスプリングを、開弁スプリング51に採用してもよい。
変形例6では、閉弁スプリング50の座巻52を、保持孔26内から遊挿孔28内へ遊挿状態にて突入させてもよい。あるいは変形例7では、閉弁スプリング50において座巻52の閉弁側に隣接する部分を、保持孔26内に嵌入保持させてもよい。
変形例8では、遊挿孔28内に突部44を遊挿してもよい。また、変形例9では、可動コア30に対して弁部材40を相対移動不能に固定して、開弁スプリング51を設けなくてもよく、さらにこの場合には、突部44を設けなくてもよい。
1 燃料噴射弁、10 弁ハウジング、18 噴孔、20 固定コア、26 保持孔、28 遊挿孔、28a 径方向隙間 30 可動コア、30a 軸方向端面、34 軸方向孔、40 弁部材、42 軸部、44 突部、50 閉弁スプリング、51 開弁スプリング、52 座巻、60 ソレノイド部、63 磁性ヨーク、630 第一ヨーク部、631 第二ヨーク部、S 特定箇所

Claims (6)

  1. 内燃機関へ燃料を噴射する噴孔(18)を、有する弁ハウジング(10)と、
    軸方向のうち開弁側と閉弁側とへ往復移動することにより、前記噴孔を開閉する弁部材(40)と、
    前記弁ハウジングに固定される固定コア(20)と、
    前記弁部材と共に往復移動可能に設けられ、前記固定コアとの間に磁力が発生することにより、前記開弁側へ移動する可動コア(30)と、
    前記固定コアに保持され、前記弁部材を前記閉弁側へ押圧駆動する磁性スプリング(50)と、
    前記固定コアの外周側に固定され、ソレノイドコイルへの通電に応じて磁束を前記固定コア及び前記可動コアへ案内することにより、前記磁力を発生させるソレノイド部(60)とを、備える燃料噴射弁において、
    前記固定コアは、
    内部に嵌入された前記磁性スプリングを前記開弁側にて保持する保持孔(26)を、有し、
    前記ソレノイド部は、磁束を案内する磁性ヨーク(63)のうち、前記ソレノイドコイルの前記開弁側に位置して径方向への磁束の通過を周方向の特定箇所(S)にて減らすヨーク(63)を、軸方向に沿って前記保持孔の全域と重なる位置に、有し、
    部分環状に形成される前記ヨーク部において開口している前記特定箇所は、前記保持孔の全域と軸方向に沿って重なり、
    コイルスプリングである前記磁性スプリングは、前記開弁側の軸方向端から所定巻数部分を、前記保持孔の全域に嵌入される座巻(52)として有することを特徴とする燃料噴射弁。
  2. 前記磁性ヨークは、
    前記ソレノイドコイルの周囲に位置する第一ヨーク部と、
    前記ソレノイドコイルの前記開弁側に位置する前記ヨーク部としての第二ヨーク部とを、有することを特徴とする請求項1に記載の燃料噴射弁。
  3. 前記第一ヨーク部は、周方向に連続する円筒状に形成されることを特徴とする請求項2に記載の燃料噴射弁。
  4. 前記固定コアは、
    前記保持孔の前記閉弁側に隣接して遊挿孔(28)を、有し、
    前記磁性スプリングは、
    前記遊挿孔に遊挿される遊挿部分を、前記座巻の前記閉弁側に隣接して有することを特徴とする請求項3に記載の燃料噴射弁。
  5. 前記弁部材は、前記可動コアと相対運動可能であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
  6. 軸方向に延伸する軸部(42)、並びに前記軸部から突出する突部(44)を、有する前記弁部材と、
    前記軸部が内部を相対移動可能に貫通し、前記突部が前記開弁側の軸方向端面(30a)に接触することより、前記弁部材と共に移動可能となる前記可動コアであって、前記開弁側の移動端にて前記固定コアに係止される前記可動コアと、
    前記磁性スプリングとして前記固定コア及び前記弁部材の間に介装される閉弁スプリング(50)と、
    前記弁ハウジング及び前記可動コアの間に介装されて、前記可動コアを前記開弁側へ押圧駆動する開弁スプリング(51)とを、備えることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の燃料噴射弁。
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