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JP5716269B2 - 非水電解質二次電池用正極材料 - Google Patents

非水電解質二次電池用正極材料 Download PDF

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Description

本発明は、非水電解質二次電池用正極材料及びそれを備える非水電解質二次電池に関するものである。
近年、携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器類用及び電気自動車用の電源としてエネルギー密度が高く、サイクル特性の優れた非水電解質二次電池が注目されている。このような非水電解質二次電池の中で、現在最も広く市場に出回っているのが、2Ah以下の携帯電話用を中心とした小型民生用である。
現在、非水電解質二次電池用の正極活物質としては数多くのものが存在するが、最も一般的に知られているのは、作動電圧が4V付近のコバルト酸リチウム(LiCoO)やニッケル酸リチウム(LiNiO)、スピネル構造を持つマンガン酸リチウム(LiMn)等を基本構成とするリチウム含有遷移金属酸化物である。その中でも、コバルト酸リチウムは、電池容量2Ahまでの小容量リチウム二次電池において、充放電特性とエネルギー密度に優れることから正極活物質として広く採用されている。
しかしながら、今後の中型・大型、特に大きな需要が見込まれる産業用途への展開を考えた場合、電池の安全性が非常に重要視されるので、現在の小型電池の仕様では要求される安全性を満足させることができない。この原因の一つは、これらの正極活物質の熱安定性が低いことである。
そこで最近、正極活物質として熱安定性の高いオリビン構造を有するリン酸鉄リチウムが注目を集めている。このリン酸鉄リチウムはリンと酸素とが共有結合しているので、高温においても酸素を放出することが無く、正極活物質として使用することで電池の安全性を飛躍的に高めることができる。
リン酸鉄リチウム材料の電子伝導性を向上させるため、その粒子表面にカーボンを担持する手法が特許文献1〜7に開示されている。
特許文献1では、ラン鉄鋼(Fe(PO・8HO)とリチウムオルトホスフェート(LiPO)を混合し、窒素中の1%プロペンの混合物雰囲気中で350〜700℃で加熱して、炭素質堆積物でコーティングされたリン酸鉄リチウム(LiFePO)を得る技術が開示されている(段落0043の例2参照)。
特許文献2では、LiPOとFe(PO・8HOとを混合し、アセチレンブラック粉末を添加して混合物とし、遊星型ボールミルを用いてミリングした後、600℃で焼成することにより、LiFePO/炭素複合体を得る方法が開示されている。
特許文献3では、リチウム化合物と、鉄化合物と、リン含有アンモニウム塩と、炭素物質微粒子としてカーボンブラックとを混合して混合物とし、この混合物を600〜750℃の温度で焼成する、オリビン構造リチウム鉄複合酸化物(LiFePO)の粒子に炭素物質微粒子が複合化したリチウム二次電池正極材料用炭素含有リチウム鉄複合酸化物の製造方法が開示されている。
特許文献4では、リン酸第一鉄含水塩(Fe(PO・8HO)、リン酸リチウム(LiPO)及び導電性炭素材料としてケッチェンブラックを混合し、この混合物を乾式で粉砕処理して比容積が1.5ml/g以下の反応前駆体を得て、この反応前駆体を焼成してLiFePOの粒子表面を導電性炭素材料で被覆し粉砕する、LiFePOの粒子表面を導電性炭素材料で被覆してなるリチウム鉄リン系複合酸化物炭素複合体の製造方法が開示されている。
特許文献5及び特許文献6では、元素M源とリチウム化合物とP源となる化合物とを混合し、フルフリルアルコールのポリマーからなる導電性炭素源の存在下で、炭素源を熱分解させる、LiMPOからなるコアを炭素で被覆した正極材料の合成方法が開示されている。
特許文献7では、600℃の焼成炉内に気化させたメタノールを含む窒素気流を導入することにより、LiFePO4の粉末にカーボンを坦持する方法が開示されている。また、特許文献7の実施例2には、アスコルビン酸を含有する原料水溶液から水熱法によってLiFePO4前駆体を合成した後、これを熱処理することによってLiFePO4粉末を得る方法が開示されている。
特開2001−015111号公報 特開2002−117833号公報 特開2003−034534号公報 特開2003−292308号公報 特表2004−509058号公報 特表2004−509447号公報 特開2008−117749号公報 ところが、リン酸鉄リチウムのリチウム挿入電位は,3.4V(vs.Li/Li+)と卑であるので、それを備えた非水電解質二次電池のエネルギー密度を高くすることができない。
一方、リン酸鉄リチウムと同じオリビン構造を有する材料として、リン酸マンガンリチウムが知られている。リン酸マンガンリチウムは、理論容量が170mAh/gであると共に、リチウム挿入電位が約4V(vs.Li/Li)とリン酸鉄リチウムに比べて貴であるため、それを備えた非水電解質二次電池のエネルギー密度を高くすることができる可能性がある。
しかしながら、リン酸マンガンリチウムを含む正極材料は、その電子伝導性が、リン酸鉄リチウムに比べても非常に低く、わずかの放電容量しか得られないという問題がある。
そこで、リン酸マンガンリチウムに対しても、特許文献1〜7に開示された方法を適用して粒子表面にカーボンコートを施すことが考えられる。ところが、特許文献1〜7に開示された手法をリン酸マンガンリチウムに適用しても、まるで期待した効果が得られないといった問題点があった。この問題は、リン酸マンガンリチウム自体の電子伝導度がリン酸鉄リチウム自体の電子伝導度よりも低いことから予測される問題の程度をはるかに下回るものであり、いわば、リン酸マンガンリチウムに対してはカーボンがまるでコートされないと知覚されるような問題として認識されるものであった。換言すれば、本発明が解決しようとする、粒子表面にカーボンをコートすることができないという問題点は、リン酸マンガンリチウムに特有のものであり、リン酸鉄リチウムにおいては本発明の解決課題は存在しない。
それでも、特許文献7の実施例2に記載されているような水熱合成法では、溶液中のアスコルビン酸が後工程の焼成時に炭化され得ることから、水熱合成法によってリン酸マンガンリチウムを合成した場合には、若干ではあるが、粒子表面にアスコルビン酸に由来するカーボンが配置される可能性がないともいえない。しかしながら、水熱法を採用せず固相法によってリン酸マンガンリチウムを合成する場合には、上記課題は少なくとも避けることができない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子にカーボンを坦持させ、電子伝導性を高め、放電容量が大きい非水電解質二次電池用正極材料、またこれを備えた非水電解質二次電池用正極、また、これを備えた非水電解質二次電池を提供することを目的としている。
本発明は、リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の表面にカーボンを備えてなる非水電解質二次電池用正極材料であって、前記基材粒子は、該基材粒子の表面にニッケル元素又は鉄元素が存在することを特徴とする非水電解質二次電池用正極材料である。
また、本発明は、前記非水電解質二次電池用正極材料を備えた非水電解質二次電池用正極である。
また、本発明は、前記非水電解質二次電池用正極材料を備えることを特徴とする非水電解質二次電池である。
また、前記基材粒子が含有する遷移金属は、ニッケルの元素比率が3%以下であることが好ましい。
本願明細書にいうリン酸マンガンリチウムは、LiMnPO4を含むもの、具体的には基本組成がLiMn1−xMPO4(MはMn以外の遷移金属元素、0≦x≦0.1)であれば何ら制限無く本発明に適用することができる。また、ポリアニオン部分がPO4のみからなるものに限らず、一部SiO4と複合したものであってもよく、そのようなものも本発明の範囲に含まれる。
本発明の正極材料を用いれば、放電時の容量が大きい電池を提供できる。
本発明の非水電解質二次電池用正極材料は、リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の粒子表面にニッケル化合物又は鉄化合物を備え、さらに、前記ニッケル化合物又は鉄化合物上にカーボンを備えることを特徴とするものである。
以下に、本発明の正極材料の製造方法を例示するが、本発明は、その形態に限定されるものではない。
本発明の非水電解質二次電池用正極材料は、リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子をニッケルイオン又は鉄イオンを含む水溶液に浸漬させたのちに、その溶液を乾燥して得られた混合物にカーボンを担持することにより製造することができる。
本発明に適用することのできるニッケルイオン又は鉄イオンを含む水溶液としては限定されるものではないが、酢酸ニッケル水溶液、シュウ酸鉄水溶液、硫酸ニッケル水溶液、硫酸鉄水溶液等がある。
また、その溶液濃度は、0.01〜50%の範囲が好ましい。濃度が0.01%より小さくなると、リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の粒子表面にニッケル化合物又は鉄化合物を担持させるための時間が非常に長くなり、工業的ではなくなる。また、濃度が50%より大きくなると、担持されるニッケル化合物又は鉄化合物が不均一となる恐れがある。
上記した、基材粒子の表面のみにニッケル又は鉄を坦持する方法に加え、あるいは、上記した基材粒子の表面のみにニッケル又は鉄を坦持する方法に代えて、リン酸マンガンリチウムの基材粒子自体を合成する際の原料にニッケル元素又は鉄元素を混合しておく方法を採用してもよく、この方法を採用すれば、上記坦持工程を独立して設ける必要がない点で好ましい。
なお、本発明の非水電解質二次電池用正極材料は、リン酸マンガンリチウムの一次粒子が凝集して二次粒子を形成しているが、本明細書において「基材粒子」とは、リン酸マンガンリチウムの一次粒子をいう。
本発明に適用することのできるカーボンの担持方法としては限定されるものではないが、ポリマー有機物とニッケル化合物又は鉄化合物を担持したリン酸マンガンリチウムからなる基材粒子とを熱処理することにより得ることができる。その熱処理温度は、ポリマー有機物が熱分解する温度以上とする必要があり、さらにリン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の粒子成長が生じる温度以下であることが好ましい。また、そのポリマー有機物としては、ショ糖、ポリビニルアルコール等がある。
カーボンを担持させた本発明の非水電解質二次電池用正極材料において、リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の質量に対するカーボンの質量の割合は、0.01〜30%であることが好ましい。この割合が0.01%より小さい場合には、カーボンの量が少なすぎて電子伝導性を高めるという効果が見られない。また、30%より大きい場合には、リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の割合が相対的に小さくなり、電池に用いる場合にエネルギー密度が小さくなる。
さらに、本発明による非水電解質二次電池の形態を示す。本発明の非水電解質二次電池は、上記の製造方法により製造された正極材料を含む正極と、負極材料を含む負極と、電解質塩が非水溶媒に含有された非水電解質とから構成され、一般的には、正極と負極との間にセパレータを挟み、積層又は巻回して電極群とし、この電極群を包装する外装体が設けられている。
非水電解質は、一般に非水電解質二次電池等への使用が提案されているものが使用可能である。非水溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート等の環状炭酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;ギ酸メチル、酢酸メチル、酪酸メチル等の鎖状エステル類;テトラヒドロフラン又はその誘導体;1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジブトキシエタン、メチルジグライム等のエーテル類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジオキソラン又はその誘導体;エチレンスルフィド、スルホラン、スルトン又はその誘導体等の単独又はそれら2種以上の混合物等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
電解質塩としては、例えば、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO、Li10Cl10、NaClO、NaI、NaSCN、NaBr、KClO、KSCN等のイオン性化合物が挙げられ、これらのイオン性化合物を単独、あるいは2種類以上混合して用いることが可能である。これらイオン性化合物の中でも、LiN(SOは高温安定性に優れ、充電時におけるアルミニウム集電体、及び端子の腐食を抑制できることから、望ましい。
非水電解質における電解質塩の濃度としては、優れた電池特性を有する非水電解質電池を確実に得るために、0.5mol/l〜5mol/lが好ましく、さらに好ましくは、1mol/l〜2.5mol/lである。
負極材料としては、リチウム金属、リチウム合金(リチウム―アルミニウム、リチウム―鉛、リチウム―錫、リチウム―アルミニウム―錫、リチウム―ガリウム、及びウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えばグラファイト、ハードカーボン、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(LiTi12等)、ポリリン酸化合物等が挙げられる。
これらの中でもグラファイトは、金属リチウムに極めて近い作動電位を有し、高い作動電圧での充放電を実現できるため負極材料として好ましい。例えば、人造黒鉛、天然黒鉛が好ましい。
特に、負極活物質粒子表面を不定形炭素等で修飾してあるグラファイトは、充電中のガス発生が少ないことから望ましい。また、LiTi12は電解質塩としてリチウム塩を採用した場合に自己放電を少なくでき、かつ充放電における不可逆容量を少なくできるので、負極材料として好ましい。
正極活物質の粉体及び負極材料の粉体は、平均粒子サイズ100μm以下であることが望ましい。特に、正極活物質の粉体は、電子伝導性の観点から50μm以下であることが望ましい。粉体を所定の形状で得るためには粉砕機や分級機が用いられる。
例えば乳鉢、ボールミル、サンドミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ジェットミル、カウンタージェトミル、旋回気流型ジェットミルや篩等が用いられる。粉砕時には水、あるいはエタノール等の有機溶剤を共存させた湿式粉砕を用いることもできる。分級方法としては、特に限定はなく、篩や風力分級機などが、乾式、湿式ともに必要に応じて用いられる。
以上、正極及び負極の主要構成成分である正極活物質及び負極材料について詳述したが、前記正極及び負極には、前記主要構成成分の他に、導電剤、結着剤、増粘剤、フィラー等が、他の構成成分として含有されてもよい。
導電剤としては、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば限定されないが、通常、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛、土状黒鉛等)、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウイスカー、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金等)粉、金属繊維、導電性セラミックス材料等の導電性材料を1種又はそれらの混合物として含ませることができる。これらの中で、導電剤としては、電子伝導性及び塗工性の観点よりアセチレンブラックが望ましい。
導電剤の添加量は、正極又は負極の総質量に対して0.1質量%〜50質量%が好ましく、特に0.5質量%〜30質量%が好ましい。特にアセチレンブラックを0.1〜0.5μmの超微粒子に粉砕して用いると必要炭素量を削減できるため望ましい。
これらの混合方法は、物理的な混合であり、その理想とするところは均一混合である。そのため、V型混合機、S型混合機、擂かい機、ボールミル、遊星ボールミルといったような粉体混合機を乾式、あるいは湿式で混合することが可能である。
前記結着剤としては、通常、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム等のゴム弾性を有するポリマーを1種又は2種以上の混合物として用いることができる。結着剤の添加量は、正極又は負極の総質量に対して1〜50質量%が好ましく、特に2〜30質量%が好ましい。
前記増粘剤としては、通常、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等を1種又は2種以上の混合物として用いることができる。また、多糖類の様にリチウムと反応する官能基を有する増粘剤は、例えばメチル化するなどしてその官能基を失活させておくことが望ましい。増粘剤の添加量は、正極又は負極の総質量に対して0.5〜10質量%が好ましく、特に1〜2質量%が好ましい。
フィラーとしては、電池性能に悪影響を及ぼさない材料であれば何でも良い。通常、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ポリマー、無定形シリカ、アルミナ、ゼオライト、ガラス、炭素等が用いられる。フィラーの添加量は、正極又は負極の総質量に対して添加量は30質量%以下が好ましい。
正極及び負極は、前記活物質、導電剤及び結着剤をN−メチルピロリドン、トルエン等の有機溶媒に混合させた後、得られた混合液を下記に詳述する集電体の上に塗布し、乾燥することによって、好適に作製される。
塗布方法については、例えば、アプリケーターロールなどのローラーコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレード方式、スピンコーティング、バーコータ等の手段を用いて任意の厚み及び任意の形状に塗布することが望ましいが、これらに限定されるものではない。
集電体としては、構成された電池において悪影響を及ぼさない電子伝導体であれば何でもよく、つぎのような材料を用いることができる。これらの材料については表面を酸化処理することも可能である。
正極用集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス等の他に、接着性、導電性及び耐酸化性向上の目的で、アルミニウムや銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。
負極用集電体としては、銅、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金等の他に、接着性、導電性、耐還元性の目的で、銅等の表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀等で処理した物を用いることができる。
集電体の形状については、フォイル状の他、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされた物、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体等が用いられる。厚みの限定は特にないが、1〜500μmのものが用いられる。
これらの集電体の中で、正極としては、耐酸化性に優れているアルミニウム箔が、負極としては、耐還元性、電導性に優れ、安価な銅箔、ニッケル箔、鉄箔、及びそれらの一部を含む合金箔を使用することが好ましい。
さらに、粗面表面粗さが0.2μmRa以上の箔であることが好ましく、これにより正極活物質又は負極材料と集電体との密着性は優れたものとなる。よって、このような粗面を有することから、電解箔を使用するのが好ましい。特に、ハナ付き処理を施した電解箔は最も好ましい。さらに、該箔に両面塗工する場合、箔の表面粗さが同じ、又はほぼ等しいことが望まれる。
非水電解質電池用セパレータとしては、優れたレート特性を示す多孔膜や不織布等を、単独あるいは併用することが好ましい。非水電解質電池用セパレータを構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等に代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等に代表されるポリエステル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−パーフルオロビニルエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−フルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロアセトン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−プロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等を挙げることができる。
非水電解質電池用セパレータの空孔率は強度の観点から98体積%以下が好ましい。また、充放電特性の観点から空孔率は20体積%以上が好ましい。また、非水電解質電池用セパレータは、例えばアクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタアクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、ポリフッ化ビニリデン等のポリマーと電解質とで構成されるポリマーゲルを用いてもよい。
さらに、非水電解質電池用セパレータは、上述したような多孔膜や不織布等とポリマーゲルを併用して用いると、電解質の保液性が向上すため望ましい。即ち、ポリエチレン微孔膜の表面及び微孔壁面に厚さ数μm以下の親溶媒性ポリマーを被覆したフィルムを形成し、前記フィルムの微孔内に電解質を保持させることで、前記親溶媒性ポリマーがゲル化する。
前記親溶媒性ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデンの他、エチレンオキシド基やエステル基等を有するアクリレートモノマー、エポキシモノマー、イソシアナート基を有するモノマー等が架橋したポリマー等が挙げられる。該モノマーは、ラジカル開始剤を併用して加熱や紫外線(UV)を用いたり、電子線(EB)等の活性光線等を用いて架橋反応をおこなわせることが可能である。
前記親溶媒性ポリマーには、強度や物性制御の目的で、架橋体の形成を妨害しない範囲の物性調整剤を配合して使用することができる。前記物性調整剤の例としては、無機フィラー類(酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩)、ポリマー類(ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート等)等が挙げられる。前記物性調整剤の添加量は、架橋性モノマーに対して通常50質量%以下、好ましくは20質量%以下である。
本発明に係る非水電解質電池は、電解質を、例えば、非水電解質電池用セパレータと正極と負極とを積層する前又は積層した後に注液し、最終的に、外装材で封止することによって好適に作製される。また、正極と負極とが非水電解質電池用セパレータを介して積層された発電要素を巻回してなる非水電解質電池においては、電解質は、前記巻回の前後に発電要素に注液されるのが好ましい。注液法としては、常圧で注液することも可能であるが、真空含浸方法や加圧含浸方法も使用可能である。
リチウム二次電池の外装体の材料としては、ニッケルメッキした鉄やステンレススチール、アルミニウム、金属樹脂複合フィルム等が一例として挙げられる。リチウム二次電池の構成については特に限定されるものではなく、正極、負極及び単層又は複層のセパレータを有するコイン電池やボタン電池、さらに、正極、負極及びロール状のセパレータを有する円筒型電池、角型電池、扁平型電池等が一例として挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
(LiMn0.99Ni0.01PO/Cの作製)
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)と、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CHCOO)・4HO)と、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)と、炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が0.99:0.01:1.00:0.51になるように計り取ったのちに、これらを窒素雰囲気下において溶媒にアルコールを用いて、ボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMn0.99Ni0.01PO前駆体を得た。つぎに、そのLiMn0.99Ni0.01PO前駆体を乾燥させたのちに、ロータリーキルンに投入し、気化させたメタノールと窒素との混合ガスを供給しながら、750℃、6時間の条件で焼成して、本発明に係るNiを1%置換したリン酸ニッケルマンガンリチウムA(LiMn0.99Ni0.01PO/C)を作製した。なお、そのキルンの回転速度は1 r.p.m.とした。また、気化させたメタノールと窒素との混合ガスは、45℃に保持したメタノール溶液を密閉容器に封入し、キャリアガスとして窒素を用いてバブリングさせることによって作製した。
[実施例2]
(LiMn0.98Ni0.02PO/Cの作製)
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)と、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CHCOO)・4HO)と、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)と、炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が0.98:0.02:1.00:0.51になるように計り取ったのちに、これらを窒素雰囲気下において溶媒にアルコールを用いて、ボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMn0.98Ni0.02PO前駆体を得た。つぎに、そのLiMn0.98Ni0.02PO前駆体を乾燥させたのちに、ロータリーキルンに投入し、気化させたメタノールと窒素との混合ガスを供給しながら、750℃、6時間の条件で焼成して、本発明に係るNiを2%置換したリン酸ニッケルマンガンリチウムB(LiMn0.98Ni0.02PO/C)を作製した。なお、そのキルンの回転速度は1 r.p.m.とした。また、気化させたメタノールと窒素との混合ガスは、45℃に保持したメタノール溶液を密閉容器に封入し、キャリアガスとして窒素を用いてバブリングさせることによって作製した。
参考例3]
(LiMn0.96Ni0.04PO/Cの作製)
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)と、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CHCOO)・4HO)と、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)と、炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が0.96:0.04:1.00:0.51になるように計り取ったのちに、これらを窒素雰囲気下において溶媒にアルコールを用いて、ボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMn0.98Ni0.02PO前駆体を得た。つぎに、そのLiMn0.96Ni0.04PO前駆体を乾燥させたのちに、ロータリーキルンに投入し、気化させたメタノールと窒素との混合ガスを供給しながら、750℃、6時間の条件で焼成して、本発明に係るNiを2%置換したリン酸ニッケルマンガンリチウムB(LiMn0.96Ni0.04PO/C)を作製した。なお、そのキルンの回転速度は1 r.p.m.とした。また、気化させたメタノールと窒素との混合ガスは、45℃に保持したメタノール溶液を密閉容器に封入し、キャリアガスとして窒素を用いてバブリングさせることによって作製した。
[比較例1]
(LiMnPO/Cの作製)
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)と、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)と、炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が1.00:1.00:0.51になるように計り取ったのちに、これらを窒素雰囲気下において溶媒にアルコールを用いて、ボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMnPO前駆体を得た。つぎに、そのLiMnPO前駆体を乾燥させたのちに、ロータリーキルンに投入し、気化させたメタノールと窒素との混合ガスを供給しながら、750℃、6時間の条件で焼成して、リン酸マンガンリチウムC(LiMnPO/C)を作製した。なお、そのキルンの回転速度は1 r.p.m.とした。また、気化させたメタノールと窒素との混合ガスは、45℃に保持したメタノール溶液を密閉容器に封入し、キャリアガスとして窒素を用いてバブリングさせることによって作製した。
[比較例2]
(LiMn0.95Ni0.05PO/Cの作製)
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)と、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CHCOO)・4HO)と、リン酸二水素アンモニウム(NHPO)と、炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が0.95:0.05:1.00:0.51になるように計り取ったのちに、これらを窒素雰囲気下において溶媒にアルコールを用いて、ボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMn0.95Ni0.05PO前駆体を得た。つぎに、そのLiMn0.95Ni0.05PO前駆体を乾燥させたのちに、ロータリーキルンに投入し、気化させたメタノールと窒素との混合ガスを供給しながら、750℃、6時間の条件で焼成して、Niを5%置換したリン酸ニッケルマンガンリチウムD(LiMn0.95Ni0.05PO/C)を作製した。なお、そのキルンの回転速度は1 r.p.m.とした。また、気化させたメタノールと窒素との混合ガスは、45℃に保持したメタノール溶液を密閉容器に封入し、キャリアガスとして窒素を用いてバブリングさせることによって作製した。
実施例1〜2、参考例3及び比較例1、2で得られた正極材料をそれぞれ正極活物質として用い、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ミキサー混合工程を経て、該正極活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を80:8:12の質量比で含有する正極ペーストを得た。基材としてのアルミメッシュに前記正極ペーストを塗布後、150℃での真空乾燥を経て、正極板を作製した。正極活物質として得られた正極板を用い、対極及び参照極としてLi板を用い、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の1:1の溶媒にLiPFを1mol/lの濃度で溶解したものを用いて、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で三極式のガラスセルを作製し、評価用非水電解質二次電池とした。
実施例1〜2、参考例3及び比較例1、2のそれぞれに対応する4種類の評価用非水電解質二次電池について、電流0.01ItmAで充電を行ったのち、電流0.01ItmAで放電を行った。ここで、充電は全て定電流定電圧充電であり、充電電位4.5V(vs.Li/Li+)、充電時間150時間である。また、放電は全て定電流放電であり、放電終止電位は2.0V(vs.Li/Li+)である。これらの試験はすべて25℃の条件下で実施した。Niの含有効果を明らかにするために、Niを含有していない比較例1の電池の放電容量に対するそれぞれの非水電解質電池の容量の割合を算出した。その結果を図1に示す。なお、この割合はつぎの式により算出した。
(比較例1の電池に対する放電容量の割合 = 各電池の0.01ItmA放電時に得られた放電容量 / 比較例1の電池の0.01ItmA放電時に得られた放電容量 × 100)
また、横軸は、正極材料中に含まれる遷移金属中に占めるNi元素の含有割合を示し、データポイントの左から、比較例1(0%)、実施例1(1%)、実施例2(2%)、参考例3(4%)及び比較例2(5%)と対応する。
図1からわかるように、実施例1〜2、参考例3の非水電解質電池においては、比較例1の非水電解質電池に比べて放電容量が増大した。リン酸マンガンリチウム中のニッケルは価数変化することがないから、リン酸マンガンリチウムがニッケルを含有することにより、リン酸マンガンリチウムの理論放電容量は確実に低下するはずである。これに反して、ニッケルを含有する実施例1〜2、参考例3の非水電解質電池の放電容量が、ニッケルを含有しない比較例1の非水電解質電池に比べて増大した理由は、リン酸マンガンリチウム粒子の表面に存在するニッケル元素が触媒となって、メタノールの熱分解炭化反応が著しく促進される結果、カーボンがリン酸マンガンリチウムに効果的に担持されたことに起因すると推定される。
ニッケル含有量の多い比較例2では比較例1に比べて放電容量が低下する結果となったが、これは、実施例1〜2、参考例3及び比較例2では、リン酸マンガンリチウムの合成時の原料中にニッケルも同時に混合してリン酸マンガンリチウムを合成したことにより、電気化学的に作用しないニッケル元素がリン酸マンガンリチウムの基材粒子の表面のみならず、該基材粒子の内部にも存在するものとなり、このため、リン酸マンガンリチウムの理論容量が低下してしまったことによると考えられる。従って、上記実施例のように、リン酸マンガンリチウムの基材粒子の内部にまでニッケルが存在している態様を採用する場合には、前記基材粒子全体に占めるニッケルの元素比率は、3%以下であることが好ましいことがわかる。逆に、リン酸マンガンリチウムの基材粒子の表面のみにニッケル又は鉄を配置する方法を採用する場合には、熱分解炭化反応に対する触媒作用という作用機構からみて、前記基材粒子の表面におけるニッケル又は鉄の量が3%を超えても問題とはならないと考えられる。
[実施例4]
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)とリン酸二水素アンモニウム(NHPO)と炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が2:2:1になるように計り取った後に、これらを不活性雰囲気下においてボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMnPO前駆体を得た。さらに、そのLiMnPO前駆体を窒素流通下(2.0l/min)で700℃、12時間の条件で焼成することによってLiMnPO粉末を得た。
つぎに、5mol/lの酢酸ニッケル水溶液の入ったビーカーにLiMnPO粉末を加え、45℃で2時間攪拌した。つづいて、そのビーカーを60℃で24時間静置することによって溶媒を揮発させてLiMnPO粒子の表面にニッケル化合物を備えた粉体を得た。
さらに、LiMnPO粒子の表面にニッケル化合物を備えた粉体とポリビニルアルコールとを、ポリビニルアルコールの熱処理により生成する炭素質量が粉体の5質量%になるように混合した。この混合物を窒素流通下(1.5l/min)で700℃、2時間の条件で熱処理して粒子表面にニッケル化合物を備えたLiMnPOにカーボンを担持した本発明による非水電解質二次電池用正極材料Aを作製した。
[実施例5]
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)とリン酸二水素アンモニウム(NHPO)と炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が2:2:1になるように計り取った後に、これらを不活性雰囲気下においてボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMnPO前駆体を得た。さらに、そのLiMnPO前駆体を窒素流通下(2.0l/min)で700℃、12時間の条件で焼成することによってLiMnPO粉末を得た。
つぎに、5mol/lのシュウ酸鉄水溶液の入ったビーカーにLiMnPO粉末を加え、45℃で2時間攪拌した。つづいて、そのビーカーを60℃で24時間静置することによって溶媒を揮発させてLiMnPO粒子の表面に鉄化合物を備えた粉体を得た。
さらに、LiMnPO粒子の表面に鉄化合物を備えた粉体とポリビニルアルコールとを、ポリビニルアルコールの熱処理により生成する炭素質量が粉体の5質量%になるように混合した。この混合物を窒素流通下(1.5l/min)で700℃、2時間の条件で熱処理して粒子表面に鉄化合物を備えたLiMnPOにカーボンを担持した本発明による非水電解質二次電池用正極材料Bを作製した。
[比較例3]
まず、酢酸マンガン四水和物(Mn(CHCOO)・4HO)とリン酸二水素アンモニウム(NHPO)と炭酸リチウム(LiCO)とをモル比が2:2:1になるように計り取った後に、これらを不活性雰囲気下においてボールミルで2時間、粉砕・混合をおこないLiMnPO前駆体を得た。さらに、そのLiMnPO前駆体を窒素流通下(2.0l/min)で700℃、12時間の条件で焼成することによってLiMnPO粉末を得た。
つぎに、LiMnPO粉末とポリビニルアルコールとを、ポリビニルアルコールの熱処理により生成する炭素質量が粉体の5質量%になるように混合した。この混合物を窒素流通下(1.5l/min)で700℃、2時間の条件で熱処理してLiMnPOにカーボンを担持した非水電解質二次電池用正極材料Cを作製した。
実施例4、5及び比較例3で得られた正極材料をそれぞれ正極活物質として用い、N−メチルピロリドンを溶媒とし、ミキサー混合工程を経て、該正極活物質、アセチレンブラック及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を80:8:12の質量比で含有する正極ペーストを得た。基材としてのアルミメッシュに前記正極ペーストを塗布後、150℃での真空乾燥を経て、正極板を作製した。正極活物質として得られた正極板を用い、対極及び参照極としてLi板を用い、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の1:1の溶媒にLiPFを1mol/lの濃度で溶解したものを用いて、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で三極式のガラスセルを作製し、評価用非水電解質二次電池A、B、及びCとした。
実施例4、5及び比較例3のそれぞれに対応する2種類の評価用非水電解質二次電池A、B及びCについて、電流0.01ItmAで充電を行ったのち、電流0.01ItmAで放電を行った。ここで、充電は全て定電流定電圧充電であり、充電電位4.5V(vs.Li/Li)、充電時間150時間である。また、放電は全て定電流放電であり、放電終止電位は2.0V(vs.Li/Li)である。これらの試験はすべて25℃の条件下で実施した。0.01ItmA放電時に得られた放電容量の結果を表1に示す。
表から、本発明による非水電解質二次電池A、Bの放電容量は、非水電解質二次電池Cのものと比較して大きいことがわかる。
このことは、ポリビニルアルコールの熱分解炭化反応が、リン酸マンガンリチウム粒子の表面に担持されたニッケル化合物又は鉄化合物が触媒となるために、著しく促進される結果、電子伝導性の高いカーボンがリン酸マンガンリチウムに担持されることに起因すると推定される。
なお、上記実施例においては、カーボン源として液体又は固体状の有機材料を用いた例について記載したが、特許文献7に示されるように、低級アルコール等の有機材料をガス状態でリン酸マンガンリチウムに適用しても、本発明の効果が奏されることはいうまでもない。
上記実施例においては、粒子表面に備える化合物がニッケル化合物である場合と鉄化合物である場合について、放電容量の点で同等の効果を奏することを示したが、保存性能や充放電サイクル性能といった各種寿命性能の観点からいえば、ニッケル化合物を選択することが好ましい。その理由は、Ni又はFeが触媒となってカーボンが成長する過程においては、触媒がFeを含む場合には、触媒元素であるFeがカーボン成長端に位置した状態で、即ち、Feがリン酸マンガンリチウム粒子から離反するようにカーボン成長が進行するのに対して、触媒がNiを含む場合には、触媒元素であるNiがカーボン成長根にとどまった状態のままカーボン成長が進行する。このことから、触媒としてニッケル化合物を用いた場合には、触媒として鉄化合物を用いた場合に比べて、電池内で前記触媒となった金属元素の溶出が抑制される。従って、触媒元素としてニッケル化合物を選択することにより、溶出した金属元素が負極に到達して電池性能の低下を引き起こす虞を低減することができる。
本発明電池及び比較電池の放電容量を示すグラフである。

Claims (2)

  1. リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の表面にカーボンを備えてなる非水電解質二次電池用正極材料であって、前記基材粒子は、前記基材粒子が含有する遷移金属元素が、前記遷移金属元素全体に対するマンガン元素の比率が90%以上であり、ニッケル元素又は鉄元素の比率が3%以下であり、該基材粒子自体の表面を構成するニッケル元素又は鉄元素の比率が1%以上であることを特徴とする非水電解質二次電池用正極材料。
  2. リン酸マンガンリチウムからなる基材粒子の表面にカーボンを備えてなる非水電解質二次電池用正極材料であって、前記基材粒子は、前記基材粒子の粒子表面にさらにニッケル化合物又は鉄化合物を備えたことを特徴とする非水電解質二次電池用正極材料。
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