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JP5713800B2 - 筆記具用油性インク組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ロイコ色素の顕色、消色機構を利用した熱変色性のマイクロカプセル顔料を用いた筆記具用油性インク組成物に関し、更に詳しくは、経時的なマイクロカプセル顔料の凝集や変色が発生せず、筆跡を良好に変色させることができる筆記具用油性インク組成物に関する。
従来より、ロイコ色素の顕色、消色機構を利用した熱変色性の色剤を用いた筆記具用油性インク組成物は、通常、上記化合物をマイクロカプセル化した顔料を使用している。
例えば、(イ)ロイコ色素である電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)顕色性物質である電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応をコントロールする反応媒体からなる可逆熱変色性組成物を内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と、主溶剤として20℃における蒸気圧が5mmHg未満の有機溶剤とから少なくともなるボールペン用油性インキ組成物(例えば、特許文献1参照)が知られており、該文献1の段落〔0023〕には、主溶剤として20℃における蒸気圧が5mmHg(=667Pa)未満の有機溶剤として、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールジアセテート類、窒素含有溶剤などが例示されており、更に、実施例ではエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ベンジルアルコール、エチレングリコールが用いられている。
しかしながら、上記特許文献1を含む従来の熱変色性の色剤となるマイクロカプセル顔料を用いた筆記具用油性インク組成物は、インク中に含まれる溶剤などの添加剤の影響により経時的な凝集や変色が起きる場合があり、インクの安定性に悪影響を及ぼすなどの課題がある。特に、油性インク中で大半を占める溶剤が与える影響は大きいものであった。
特開2009−292935号公報(特許請求の範囲、実施例等)
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、マイクロカプセル顔料を用いた筆記具用油性インク組成物において、経時的な凝集や変色が発生せず、筆跡を良好に変色させることができる筆記具用油性インク組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記従来の課題等に鑑み、鋭意研究を行った結果、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むマイクロカプセル顔料と、主溶剤として、特定の溶剤とを含有することにより、上記目的の筆記具用油性インク組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至ったのである。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(5)に存する。
(1) ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むマイクロカプセル顔料と、主溶剤として、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも一つとを含有してなることを特徴とする筆記具用油性インク組成物。
(2) 前記顕色剤が下記式(I)で示されることを特徴とする上記(1)に記載の筆記具用油性インク組成物。
Figure 0005713800
〔上記式(I)中のR1は、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R2は、炭素数4〜10の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。〕
(3) 前記変色温度調整剤が下記式(II)で示されることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の筆記具用油性インク組成物。
Figure 0005713800
〔上記式(II)中のR3及びR4は、炭素数7〜21の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R5及びR6は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、又はCFを示す。〕
(4) 前記マイクロカプセル顔料を構成する壁膜がメラミン樹脂である上記(1)〜(3)の何れか一つに記載の筆記具用油性インク組成物。
(5) 前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.3〜1.0μmであることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の筆記具用油性インク組成物。
本発明によれば、経時的なマイクロカプセル顔料の凝集や変色が発生せず、筆跡を良好に変色させることができる筆記具用油性インク組成物が提供される。
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の筆記具用油性インク組成物は、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むマイクロカプセル顔料と、主溶剤として、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも一つとを含有してなることを特徴とするものである。
用いるマイクロカプセル顔料は、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤から少なくとも構成される熱変色性組成物を内包させたものである。
<ロイコ色素>
用いることができるロイコ色素としては、電子供与性染料で、発色剤としての機能するものであれば、特に限定されものではない。具体的には、発色特性に優れるインクを得る点から、トリフェニルメタン系、スピロピラン系、フルオラン系、ジフェニルメタン系、ローダミンラクタム系、インドリルフタリド系、ロイコオーラミン系等従来公知のものが、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
具体的には、6−(ジメチルアミノ)−3,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)フェニル]−1(3H)−イソベンゾフラノン、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−クロロ−3−メチル−6−ジメチルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、2−(2−クロロアニリノ)−6−ジブチルアミノフルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3,6−ジ−n−ブトキシフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−ジブチルアミノフルオラン、1,2−ベンツ−6−エチルイソアミルアミノフルオラン、2−メチル−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(N−フェニル−N-−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−(3’−トリフルオロメチルアニリノ)−6−ジエチルアミノフルオラン、3−クロロ−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、2−メチル−6−シクロヘキシルアミノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオラン、3,6−ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、3−メトキシ−4−ドデコキシスチリノキノリンなどが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
更に、黄色〜赤色の発色を発現させるピリジン系化合物、キナゾリン系化合物、ビスキナゾリン系化合物等も用いることができる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
特に、満足のいく十分な描線濃度が得られる点から、ロイコ色素として、下記式(III)で示される3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メトキシ−7−アニリノフルオランを用いることが望ましい。このロイコ色素は、黒色のロイコ色素として発色特性に優れ、鮮明な黒色の色調となる化合物である。
Figure 0005713800
<顕色剤>
本発明に用いる顕色剤は、上記ロイコ色素を発色させる能力を有する成分となるものである。用いられる顕色剤は、従来公知のものが使用可能であり、例えば、無機酸、芳香族カルボン酸及びその無水物又は金属塩類、有機スルホン酸、その他の有機酸及びフェノール性化合物等が挙げられる。
好ましくは、ビスフェノール誘導体であり、下記式(I)の化合物で示されるものが挙げられる。
Figure 0005713800
〔式(I)中のR1は水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R2は炭素数4〜10の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。〕
前記式(I)の化合物としては、具体的には、4,4’−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール、4,4’−(2−エチルペンチリデン)ビスフェノール、4,4’−オクチリデンビスフェノール、4,4’−ヘキシリデンビスフェノール、4,4’−(4−メチルオクチリデン)ビスフェノール、4,4’−デシリデンビスフェノール、4,4’−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(3−メチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−メチルヘブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,2−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1,5−ジメチルヘキシリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−3−メチルペンチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−メチル−4−メチルヘプチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−ヘキシリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−ペンチリデン)ビスフェノール、4,4’−(1−エチル−オクチリデン)ビスフェノール等の少なくとも1種を挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
本発明においては、これらの顕色剤を1種又は2種以上組み合わせて用いること、または、従来公知の顕色剤を本発明の顕色剤の諸特性を損なわない範囲内で組み合わせて用いることにより、発色時の色彩濃度を自由に調節することができる。従って、その使用量は、所望される色彩濃度に応じて任意に選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、前記したロイコ色素1質量部に対して、0.1〜100質量部程度の範囲内で選択するのが好適である。
<変色温度調整剤>
本発明に用いる変色温度調整剤は、前記ロイコ色素と顕色剤の呈色において変色温度をコントロールする物質である。
用いることができる変色温度調整剤は、従来公知のものが使用可能である。具体的には、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類、アゾメチン類、脂肪酸類、炭化水素類などが挙げられる。
好ましくは、ビスフェノール誘導体と、炭素数8〜22の飽和脂肪酸とから構成されるエステル化合物であり、下記式(II)の化合物で示されるものである。
Figure 0005713800
〔式(II)中のR3及びR4は、直鎖又は分岐の炭素数7〜21のアルキル基を示し、R5及びR6は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、又はCF3を示す。〕
前記式(II)の化合物としては、具体的には、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジカプレート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジパルミエート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジウンデカノエート、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジトリデカエート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジカプレート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジラウレート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジパルミエート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジウンデカノエート、4,4’−(イソプロピリデン)ビスフェノールジトリデカエート、4,4’−メチレンビスフェノールジカプレート、4,4’−メチレンビスフェノールジラウレート、4,4’−メチレンビスフェノールジミリステート、4,4’−メチレンビスフェノールジパルミエート、4,4’−メチレンビスフェノールジウンデカノエート、4,4’−メチレンビスフェノールジトリデカエート等の少なくとも1種が挙げられる。
この変色温度調整剤の使用量は、所望されるヒステリシス幅及び発色時の色彩濃度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、通常、ロイコ色素1質量部に対して、1〜1000質量部程度の範囲内で使用するのが好ましい。
なお、本発明の油性インク組成物の諸特性を損なわない範囲内であれば、この種の感温変色性組成物において従来公知の変色温度調整剤を組み合わせて用いることもできる。
<マイクロカプセル顔料>
本発明に用いるマイクロカプセル顔料は、少なくとも上記ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤からなる熱変色性組成物を、好ましくは、平均粒子径が0.3〜1.0μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、例えば、界面重合法、界面重縮合法、insitu重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
例えば、水溶液からの相分離法では、ロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱攪拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、樹脂原料などを使用、例えば、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
これらロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ色素、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、ロイコ色素1に対して、質量比で顕色剤0.1〜100、変色温度調整剤1〜100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1〜1である。
本発明のマイクロカプセル顔料では、上記ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各顔料の色、任意の発色温度、消色温度を好適な温度に設定することができる。
本発明のマイクロカプセル顔料では、描線濃度、保存安定性、筆記性の更なる向上の点から、壁膜がアミノ樹脂で形成されることが好ましく、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などで形成されること、更に好ましくは、製造性、保存安定性、筆記性の点から、メラミン樹脂で形成されることが望ましい。
マイクロカプセル顔料の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
なお、壁膜がアミノ樹脂で形成するためには、各マイクロカプセル化法を用いる際に、好適なアミノ樹脂原料(メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアンアミン樹脂等)、並びに、分散剤、保護コロイドなどを選択する。
本発明に用いるマイクロカプセル顔料の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性の点、並びに、筆記性への悪影響を抑制する点から、好ましくは、0.3〜1.0μmであるものが望ましい。なお、本発明(実施例等含む)で規定する「平均粒子径」は、粒度分布測定装置〔粒子径測定器N4Plus(COULTER社製)〕にて、体積分布基準による平均粒子径を測定した値である。
この平均粒子径が0.3μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、1.0μmを越えると、筆記性の劣化やマイクロカプセル顔料の分散安定性の低下が発生し、好ましくない。この平均粒子径の範囲(0.3〜1.0μm)となるマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
本発明において、マイクロカプセル顔料の含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは、5〜30質量%(以下、単に「%」という)、更に好ましくは、10〜25%とすることが望ましい。
このマイクロカプセル顔料の含有量が5%未満であると、着色力、発色性が不十分となり、一方、30%を超えると、カスレが生じやすくなり、好ましくない。
本発明に用いる主溶剤としては、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも一つであり、これらの溶剤を主溶剤として選択、使用することで、上記マイクロカプセル顔料の経時的な凝集を発生しないように作用するものである。
本発明で用いるポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールは、各重合度のものが使用できるが、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、ポリプロピレングリコールでは重合度(重量平均)400〜700の範囲の使用が好ましく、ポリブチレングリコールでは重合度(重量平均)500〜700の範囲の使用が好ましい。
また、本発明で用いるポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル〔POP(n)ジグリセリルエーテル〕はジグリセリンの水酸基にポリオキシプロピレンが付加重合したものである。本発明においてポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル〔POP(n)ジグリセリルエーテル〕におけるオキシプロピレンの付加モル数(n)は、本発明の効果を更に発揮せしめる点から、4〜25が好ましく、更に好ましくは4〜14である。
これらの主溶剤の含有量は、インク組成物中の全溶剤量に対して、50〜100%とすることが好ましく、更に好ましくは、80〜100%とすることが望ましい。
この主溶剤の含有量が、50%未満であると、発明の効果が小さくなる。
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、上記主溶剤の他、主溶剤と相溶する性質を有する溶剤、例えば、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコールなどの溶剤を適宜含有することができる。
本発明の筆記具用油性インク組成物では、上記マイクロカプセル顔料、主溶剤の他、各筆記具用(ボールペン用、マーキングペン用等)の用途に応じて、また、必要に応じて、油性インクに悪影響を及ぼさず相溶することができる樹脂や分散剤、防錆剤、防腐剤、潤滑剤等を含有することができる。
用いることができる樹脂としては、例えば、ケトン樹脂、スチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジンフェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、フェノール系樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、ロジン系樹脂、アクリル系樹脂、尿素アルデヒド系樹脂、マレイン酸系樹脂、シクロヘキサノン系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン等に代表される樹脂が挙げられる。
用いることができる分散剤として、上記に挙げたような樹脂の中からマイクロカプセル顔料を分散できるものを選択して使用することができ、界面活性剤やオリゴマーでも目的に沿うものであれば、含有することができる。
具体的な分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリビニルエーテル、スチレン−マレイン酸共重合体、ケトン樹脂、ヒドロキシエチルセルロースやその誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体等の合成樹脂やPO・EO付加物やポリエステルのアミン系オリゴマー等が挙げることができる。
潤滑剤としては、顔料の表面処理剤にも用いられる多価アルコールの脂肪酸エステル、糖の高級脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン高級脂肪酸エステル、アルキル燐酸エステルなどのノニオン系や、高級脂肪酸アミドのアルキルスルホン酸塩、アルキルアリルスルホン酸塩などのアニオン系、ポリアルキレングリコールの誘導体やフッ素系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンなどが挙げられる。また、防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロへキシルアンモニウムナイトライト、サポニン類など、防腐剤もしくは防菌剤としては、フェノール、ナトリウムオマジン、安息香酸ナトリウム、ベンズイミダゾール系化合物などが挙げられる。
本発明の筆記具用油性インク組成物を製造するには、従来から知られている方法が採用可能であり、例えば、上記マイクロカプセル顔料の他、上記各成分を所定量配合し、ホモミキサー、もしくはディスパー等の攪拌機により攪拌混合することによって得られる。更に必要に応じて、ろ過や遠心分離によってインク組成物中の粗大粒子を除去してもよい。
このように構成される本発明の筆記具用油性インク組成物では、ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むマイクロカプセル顔料と、上記主溶剤を含有するインクを処方し、このインクをボールペン体、マーキングペン体などの筆記具に搭載しても、経時的なマイクロカプセル顔料の凝集や変色が発生せず、筆跡を良好に変色させることができる筆記具用油性インク組成物が得られるものとなる。
次に、実施例及び比較例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。なお、以下において、配合単位である「部」は質量部を意味する。
〔実施例1〜7及び比較例1〜2〕
(マイクロカプセル顔料:A−1〜A−7の処方)
(マイクロカプセル顔料:A−1)
ロイコ色素として、上記化1で示される化合物1部、顕色剤として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノール2部、及び変色性温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステート24部を100℃に加熱溶融して、均質な組成物27部を得た。
上記で得た組成物27部の均一な熱溶液を、保護コロイド剤として、メチルビニルエーテル・無水マレイン酸共重合樹脂〔ガンツレッツAN−179:ISP(株)社製〕40部をNaOHにてpH4に溶解させた90℃の水溶液100部中に徐々に添加しながら、加熱攪拌して直径約0.5〜1.0μmの油滴状に分散させ、次いでカプセル膜剤として、メラミン樹脂(スミテックスレジンM−3、(株)住友化学製)20部を徐々に添加し、90℃で30分間加熱してマイクロカプセル化を行い、膜剤がメラミン樹脂からなる可逆感温変色性ヒステリシス組成物のマイクロカプセル分散液を得た。この分散液を常温に冷却後、酸添加、濾別、水洗を行い、スプレードライ機を用いて乾燥することにより、平均粒子径が0.74μmとなるパウダー状のマイクロカプセル顔料を得た。色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
(マイクロカプセル顔料:A−2)
上記A−1の処方において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−イソプロピリデンビスフェノールジミリステートを用いることを除き、他は上記A−1の処方と同様にして、平均粒子径が0.69μmのマイクロカプセル顔料を得た。
色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
(マイクロカプセル顔料:A−3)
上記A−1の処方において、顕色剤として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノールに代えて、4,4′−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノールを用いること、および、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−イソプロピリデンビフェノールジラウレートを用いることを除き、他は上記A−1の処方と同様にして、平均粒子径が0.78μmのマイクロカプセル顔料を得た。
色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
(マイクロカプセル顔料:A−4)
上記A−2の処方において、顕色剤として、4,4′−(2−エチルヘキシリデン)ビスフェノールに代えて、4,4′−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノールを用いることを除き、他は上記A−2の処方と同様にして、平均粒子径が0.74μmのマイクロカプセル顔料を得た。
色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
(マイクロカプセル顔料:A−5)
上記A−1の処方において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−エチリデンビスフェノールジラウレートを用いることを除き、他は上記A−1の処方と同様にして、平均粒子径が0.73μmのマイクロカプセル顔料を得た。
色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
(マイクロカプセル顔料:A−6)
上記A−1の処方において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−(1−メチルプロピリデン)ビスフェノールジラウレートを用いることを除き、他は上記A−1の処方と同様にして、平均粒子径が0.78μmのマイクロカプセル顔料を得た。
色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
(マイクロカプセル顔料:A−7)
上記A−1の処方において、変色温度調整剤として、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ビスフェノールジミリステートに代えて、4,4′−(1−エチルプロピリデン)ビスフェノールジラウレートを用いることを除き、他は上記A−1の処方と同様にして、平均粒子径が0.75μmのマイクロカプセル顔料を得た。
色相は、発色状態においては濃厚な黒色を呈し、消色状態においては残色がなく完全に無色となるものであった。
(インクの処方)
下記表1に示す配合処方(マイクロカプセル顔料:A−1〜A−7、溶剤、潤滑剤)にしたがって、常法により各油性ボールペン用インク組成物を調製した。
(油性ボールペンの作製)
上記で得られた各油性インク組成物を用いて油性ボールペンを作製した。具体的には、ボールペン〔三菱鉛筆株式会社製、商品名:シグノUM−100〕の軸を使用し、内径3.8mm、長さ113mmポリプロピレン製インク収容管とステンレス製チップ(超硬合金ボール、ボール径0.5mm)及び該収容管と該チップを連結する継手からなるリフィールに上記各インクを充填し、インク後端に鉱油を主成分とするインク追従体を装填し、油性ボールペンを作製した。
得られた実施例1〜7及び比較例1〜2の油性ボールペンを用いて、下記評価方法で経時凝集安定性、経時発色性及び筆跡の変色性の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
(経時分散安定性の評価方法)
得られた各油性インク組成物を15mlのガラス製蓋付き瓶に充填し、密封した後に、50℃の条件下で3ヶ月保存した後、夫々のインキの状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
○:分離、凝集は発生していない。
△:僅かな分離または凝集が認められる。
×:分離または凝集がある。
(経時発色安定性の評価方法)
得られた各油性インク組成物を15mlのガラス製蓋付き瓶に充填し、密封した後に、50℃の条件下で3ヶ月保存した後、夫々のインキの発色状態を目視で確認し、下記の基準で評価した。
評価基準:
○:初期の発色状態と殆ど変わらない。
△:初期の発色状態からやや変色している。
×:初期の発色状態と比較して大きく変色している、もしくは消色している。
(筆跡の変色性の評価方法)
各ペン体を用いてISO基準に準拠した筆記用紙に、フリーハンドで螺旋筆記後、市販の消しゴム(EP−60:三菱鉛筆株式会社製)にて筆跡を擦過してその変色性を下記の基準で評価した。
○:筆跡が完全に消色する。
△:薄い濃度の筆跡が認識できる。
×:筆跡がはっきりと認識できる。
Figure 0005713800
上記表1の結果から明らかなように、本発明となる実施例1〜7の筆記具用油性インク組成物は、本発明の範囲外となる比較例1〜2の筆記具用油性インク組成物に較べて、経時的なマイクロカプセル顔料の凝集や変色が発生せず、筆跡を良好に変色させることができる筆記具用油性インク組成物となることが判明した。
これに対して、比較例では、経時分散安定性、経時後の発色安定性および筆跡の変色性に劣ることが判った。
経時的なマイクロカプセル顔料の凝集や凝集が発生せず、筆跡を良好に変色させることができるボールペン、マーキングペン用などに好適な筆記具用油性インク組成物が得られる。

Claims (5)

  1. ロイコ色素、顕色剤及び変色温度調整剤を少なくとも含むマイクロカプセル顔料と、主溶剤として、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルから選ばれる少なくとも一つとを含有してなることを特徴とする筆記具用油性インク組成物。
  2. 前記顕色性物質が下記式(I)で示されることを特徴とする請求項1に記載の筆記具用油性インク組成物。
    Figure 0005713800
    〔上記式(I)中のR1は、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基を示し、R2は、炭素数4〜10の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。〕
  3. 前記変色温度調整剤が下記式(II)で示されることを特徴とする請求項1又は2に記載の筆記具用油性インク組成物。
    Figure 0005713800
    〔上記式(II)中のR3及びR4は、炭素数7〜21の直鎖又は分岐のアルキル基を示し、R5及びR6は、水素原子、炭素数1〜2のアルキル基、又はCFを示す。〕
  4. 前記マイクロカプセル顔料を構成する壁膜がメラミン樹脂である請求項1〜3の何れか一つに記載の筆記具用油性インク組成物。
  5. 前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径が0.3〜1.0μmであることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の筆記具用油性インク組成物。
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