本発明のクロメートフリー塗装めっき鋼板は、めっき層中にNi、Coから選ばれる少なくとも1種を0.01〜1質量%を含有するZn系合金めっき鋼板の少なくとも片面に、有機樹脂(A)からなる造膜成分と、シリカ粒子(B)とを含んでなる塗膜(α)が形成されており、前記有機樹脂(A)がスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)を必須成分として含むことを特徴とする。
本発明のクロメートフリー塗装めっき鋼板は、Zn系合金めっき鋼板を下地とする塗装鋼板である。めっき層にZnめっきを使用する場合に比べて、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種を0.01〜1質量%の極微量含有するZn系合金めっき層を使用した場合、耐食性、耐傷付き性が格段に向上する。耐傷付き性の向上に関しては、上述したように、Ni、Coの少なくとも1種を、0.01〜1質量%の極微量含有することによって、めっき層の硬度が有意に向上する効果によるものと考えられる。また、耐食性の向上に関しては、0.01〜1質量%の極微量の添加範囲においても、Ni、Coの少なくとも1種を含有させたZn系合金めっきの方が初期腐食生成物を安定に保持する効果が高いことが寄与していると考えられる。
更に、Ni、Coから選ばれる少なくとも1種を極微量含有するZn系合金めっき層の上を、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂を必須成分として含む有機樹脂を造膜成分とし、シリカ粒子を含んでなる塗膜(α)で被覆することで、これらの効果は格段と向上する。これは、耐食性については、ポリエステル樹脂中に含まれるスルホン酸基が、めっき層表面と化学結合し、めっき腐食生成物の生成を抑制する効果や、上述したZn系合金めっき鋼板のめっき初期腐食生成物が、合金化元素であるNiまたは/及びCoの作用によって強力に保持(化学的な保持効果)される効果に加え、前記塗膜(α)の腐食因子の透過抑制効果(物理的なバリアー効果)と前記初期腐食生成物を強力に保持する効果によって、めっき鋼板の腐食が抑制され、耐食性が相乗的に向上する効果によるものと推定される。耐傷付き性については、Niまたは/及びCoを含有するZn系合金めっきとすることでめっき層表面の硬度が高くなる効果に加え、前記塗膜(α)による良好な下地めっき層との密着性付与効果や潤滑性付与効果等の相乗効果によるものと推定される。
上記Ni、Coから選ばれる少なくとも1種を極微量含有するZn系合金めっき層は、下限3g/m2、上限40g/m2の付着量で、下限0.01質量%、上限1.0質量%のめっき中のNiまたは/及びCo含有率で形成されたものである。付着量および組成がそれぞれ下限付着量3g/m2未満、且つ下限のNiまたは/及びCo含有率0.01質量%未満であると、耐食性や耐傷付き性が低下する。一方、付着量および組成がそれぞれ上限付着量40g/m2超、且つ上限のNiまたは/及びCo含有率1.0質量%超であると、加工性が低下し、経済的にも不利である。
上記Ni、Coから選ばれる少なくとも1種を極微量含有するZn系合金めっきの鋼板へのめっき方法としては、電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、置換めっき、溶融塩電解めっき法等の所定のめっき組成およびめっき付着量が確保できれば、どの方法を使用しても良い。
本発明のクロメートフリー塗装めっき鋼板のZn系合金めっき層を被覆する塗膜(α)は、水系溶媒を用いて水系塗料組成物として塗布、加熱乾燥することで形成されることが好ましい。ここで水系溶媒とは、水が溶媒の主成分である溶媒であることを意味する。本発明の水系溶媒中に占める水の量は50質量%であることが好ましい。本発明における水系溶媒中に含まれる水以外の溶媒は有機溶剤でもよいが、労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則で定義される有機溶剤含有物(労働安全衛生法施行令の別表第六の二に掲げられた有機溶剤を重量の5%を超えて含有するもの)には該当しないものであることがより好ましい。このような水系溶媒を用いることによって、有機溶剤系塗料を使用するための塗装専用ラインを余分に通板する必要がなくなるために、製造コストを大幅に削減することが可能である上に、揮発性有機化合物(VOC)の排出も大幅に抑制できる等の環境面におけるメリットもある。
前記塗膜(α)の塗膜厚みは特に限定されないが、2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは3〜7μmである。2μm未満であると、十分な意匠性(隠蔽性)や耐食性が得られない場合がある。10μm超であると、経済的に不利であるばかりか、前記塗膜(α)が水系塗料組成物から形成される場合等にワキ等の塗膜欠陥が発生することがあり、工業製品として必要な外観を安定して得る事ができない場合がある。
前記塗膜(α)の厚みは、塗膜の断面観察や電磁膜厚計等の利用により測定できる。その他に、単位面積当りに付着した塗膜の質量を、塗膜の比重または塗布溶液の乾燥後比重で除算して算出してもよい。塗膜の付着質量は、塗装前後の質量差、塗装後の塗膜を剥離した前後の質量差、または、塗膜を蛍光X線分析して予め皮膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定する等、既存の手法から適切に選択すればよい。塗膜の比重または塗布溶液の乾燥後比重は、単離した塗膜の容積と質量を測定する、適量の塗布溶液を容器に取り乾燥させた後の容積と質量を測定する、または、塗膜構成成分の配合量と各成分の既知の比重から計算する等、既存の手法から適切に選択すればよい。
上記した各種測定方法の中でも、比重等が異なる塗膜でも簡便に精度よく測定できることから、塗膜の断面観察の利用が好適である。
前記塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法や、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
前記塗膜(α)の造膜成分は、スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)を必須成分として含む有機樹脂(A)からなる。
前記造膜成分の含有量(有機樹脂(A)と、硬化剤(C)を含有する場合は当該硬化剤との合計量)は、前記塗膜(α)中の55〜80質量%であることが好ましい。55質量%未満であると、加工性が低下する場合があり、80質量%超であると、耐傷付き性が低下する場合がある。
前記有機樹脂(A)はスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂を必須成分として含む。スルホン酸基を含有するポリエステル樹脂(A1)を含むことで、加工性、耐食性、耐傷付き性を高次元で両立させることができる。ポリエステル樹脂の構造中に含まれるエステル基は適度の凝集エネルギーを有しているため、塗膜のフィルム物性(伸びと強度のバランス)を高次元に高めることができる。すなわち、ポリエステル樹脂を前記塗膜(α)の造膜成分として適用することは、加工性と耐傷付き性を高次元で両立する上で非常に有効である。加えて、ポリエステル樹脂に含まれるスルホン酸基は、基材であるめっき鋼板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性向上にも寄与するため、加工性や耐傷付き性を高める上で好適である。また、前記塗膜(α)を形成するための塗料組成物が水系である場合、スルホン酸基は高い親水性を有しているため、ポリエステル樹脂の水系塗料組成物中での安定性を高める(塗料組成物の固化、凝集物の発生等を防止する)上でも好適である。特に後述する硬化剤(C)を併用する場合においては、塗料組成物のpH変動が大きくなり、塗料組成物の安定性が低下する場合があるが、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂を用いる場合は、塗料組成物のpH変動の影響を受けにくく、塗料安定性の低下を抑制することができる。なお、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂は有機溶剤に溶解し難い(一部の極性溶剤にしか溶解しない)という特徴を有しているため、該樹脂は有機溶剤を溶媒とする有機溶剤系塗料組成物では使用することが困難な場合がある。したがって、塗膜を形成するための塗料組成物は水系であることが好ましい。塗膜を形成するための塗料組成物が水系であり、且つ後述する着色顔料(E)を含有し、着色顔料が後述するカーボンブラック(E1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水系溶媒中で均一に分散させ、形成された前記塗膜(α)に優れた意匠性を付与させる上でも、スルホン酸基を含有することは好適である。また、硬化剤を用いる場合は、スルホン酸基含有化合物等の硬化触媒を併用することが一般的であるが、このような硬化触媒は塗膜の耐食性を低下させる懸念がある。これに対して、スルホン酸基を含むポリエステル樹脂は硬化触媒を用いなくても、低温乾燥硬化が可能であるため、硬化触媒を添加する必要がなく、硬化触媒添加による耐食性低下の懸念もない。
前記ポリエステル樹脂(A1)の含有量は前記有機樹脂(A)中の10〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜100質量%である。10質量%未満であると、加工性が低下する恐れがある。
前記ポリエステル樹脂(A1)は構造中に、更にビスフェノール構造を含むことが好ましい。ビスフェノール構造は高い凝集エネルギーを持つ上に、耐水性にも優れるため、ビスフェノール構造を含むことは耐傷付き性、耐食性を向上させる上で好ましい。
前記ポリエステル樹脂(A1)としては、構造中にスルホン酸基を含有していれば特に制限はなく、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合し、得ることができる。また、そこで得たポリエステル樹脂を水に溶解もしくは分散することで水系化することもできる。
前記ポリカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、無水エンド酸等の1種または複数種を挙げることができる。
前記ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、ダイマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の1種または複数種を挙げることができる。
ポリエステル樹脂に前記スルホン酸基を導入する方法としては特に制限はないが、例えば、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2、7−ジカルボン酸、5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸類、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキシルジオール等のグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記スルホン酸基は−SO3Hで表される官能基を指し、それがアルカリ金属類、アンモニアを含むアミン類等で中和されたものであっても構わない。中和する場合は、すでに中和されたスルホン酸基を樹脂中に組み込んでもよいし、スルホン酸基を樹脂中に組み込んだ後に中和してもよい。特にLi、Na、Kなどのアルカリ金属類で中和されたスルホン酸金属塩基が、基材との密着性を高める上や疎水表面を持つ着色顔料の分散性を高める上で特に好ましく、スルホン酸Na塩基が更に好ましい。
前記スルホン酸基を含有するジカルボン酸またはグリコールの使用量は、全ポリカルボン酸成分または全ポリオール成分に対し、0.1〜10モル%含有することが好ましい。0.1モル%未満であると、密着性の向上効果が得られない場合がある。また、水系溶媒を使用する場合、水に対する溶解性または分散性が低下する場合や、更に、着色顔料を使用する場合、着色顔料の分散性が低下し、意匠性が低下する場合がある。10モル%超であると、耐食性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、0.5〜7モル%の範囲にあるのがより好ましい。
前記ビスフェノール構造を導入する場合の方法としては特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物などのグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記ビスフェノール構造を含有するグリコールの使用量は、全ポリオール成分に対し、1〜40モル%含有することが好ましい。1モル%未満であると、耐傷付き性、耐食性の向上効果が得られない場合がある。40モル%超であると、加工性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、5〜30モル%の範囲にあるのがより好ましい。
前記塗膜(α)の造膜成分である前記有機樹脂(A)は、前記ポリエステル樹脂(A1)以外にウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A2)を更に含むことが、耐食性、耐傷付き性を向上させる上で好ましい。加工性と耐傷付き性、耐食性を両立するためには、塗膜の伸びと強度の両者に優れ、且つ基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性を高めることが重要であるが、非常に高い凝集エネルギーを持つウレア基を含有するポリウレタン樹脂(A2)を、前記ポリエステル樹脂(A1)と混合して使用することで伸びと強度の両者に優れ、且つ基材との密着性にも優れる塗膜設計が可能である。
前記有機樹脂(A)に前記ポリエステル樹脂(A1)とともに前記ポリウレタン樹脂(A2)を含む場合、前記ポリエステル樹脂(A1)と前記ポリウレタン樹脂(A2)の合計の含有量は、前記有機樹脂(A)中の60〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは80〜100質量%である。60質量%未満であると、加工性、耐傷付き性、耐食性の改善効果が得られなくなる場合がある。
また、前記ポリエステル樹脂(A1)と前記ポリウレタン樹脂(A2)の固形分質量比(A1)/(A2)は、25/75〜90/10であることが好ましく、50/50〜75/25であることが更に好ましい。25/75未満であると加工性が低下する場合があり、90/10超であると耐食性、耐傷付き性の改善効果が得られない場合がある。
前記ポリウレタン樹脂(A2)としては、構造中にウレア基を含んでいれば特に制限はないが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後に更にアミノ基を含有する鎖伸長剤によって鎖伸長して得られるもの等を挙げることができる。前記ポリオール化合物としては、1分子当たり2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、またはそれらの混合物が挙げられる。前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、またはそれらの混合物が挙げられる。前記鎖伸長剤としては、分子内に1個以上のアミノ基を含有する化合物であれば特に限定されず、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミンや、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンや、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミンや、ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類や、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、または2種類以上の混合物で使用することが出来る。
前記塗膜(α)の造膜成分である前記有機樹脂(A)は、前記ポリエステル樹脂(A1)以外にアクリル樹脂を更に含むことが、基材であるめっき鋼板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性や耐傷付き性を高める上で好ましい。加えて、前記塗膜(α)を形成するための塗料組成物が水系で、更に後述する着色顔料(E)を含有し、着色顔料が後述するカーボンブラック(E1)のような疎水表面を持つ顔料である場合、顔料を水系溶媒中で均一に分散させ、形成された前記塗膜(α)に優れた意匠性を付与させる上でも、アクリル樹脂を含有することは好適である。
前記アクリル樹脂としては特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体の単独もしくは2種以上を共重合したものや、それに更に、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体;(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルとε−カプロラクトンとの反応物等のヒドロキシル基含有エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ブチルアミノエチル等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体;アミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体;アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体;(メタ)アクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体等を単独もしくは2種以上共重合したものを使用することができる。これらの単量体の重合方法としては特に限定されず、例えば、これらの単量体を水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合する方法を挙げることができる。前記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。ここで、(メタ)アクリルという表現は、アクリルまたはメタクリルを意味する。
前記アクリル樹脂の含有量は、前記有機樹脂(A)中の0.5〜20質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、意匠性、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、20質量%超であると、耐食性や加工性が低下する場合がある。
前記塗膜(α)にはシリカ粒子(B)が含まれていることを要する。前記シリカ粒子(B)は耐食性、耐傷付き性を向上させる効果を有しているが、前記塗膜(α)には平均粒子径5〜50nmの球状シリカ粒子(B1)と平均粒子径0.3〜5μmの球状シリカ粒子(B2)の両方を含有することが好ましい。特に平均粒子径5〜50nmの微粒子として含有されている前記球状シリカ粒子(B1)は耐食性を向上させる効果が大きく、平均粒子径0.3〜5μmの比較的大きい粒子として含有されている前記球状シリカ粒子(B2)は耐傷付き性を向上させる効果が大きい。それぞれ異なる特徴を有する粒子径の異なる球状粒子を同時に含有することで、耐食性、耐傷付き性は相乗的に向上する。本発明における「球状」とは真球のみならず、球に近似した形状のことを指し、楕円体も含まれる。ただし、楕円体の場合は長径に対する短径の比が0.7以上であることが加工性、耐食性、耐傷付き性の観点から好ましく、0.8以上であることがより好ましい。また、平均粒子径0.3〜5μmの比較的大きい粒子として含有されている前記球状シリカ粒子(B2)は、塗装めっき鋼板の艶を落とす効果も有しており、それにより前記塗膜(α)に傷が多少入っても目立ちにくくなるとの利点も有している。前記塗膜(α)に後述する着色顔料(E)を更に含有する着色塗膜の場合、その効果は特に大きい。前記球状シリカ粒子(B1)の平均粒子径を5nm未満にすることは、粒子の安定性(粒子の凝集や塗料組成物のゲル化等の問題が生じる)の観点から技術的に困難であり、平均粒子径が50nm超であると耐食性の向上効果が小さい。より好ましい平均粒子径の範囲は8〜30nmである。前記球状シリカ粒子(B2)の平均粒子径が0.3μm未満であると耐傷付き性の向上効果が小さく、5μm超であると、加工性や耐食性が低下する。また塗料組成物中での分散安定性も劣る(沈降等が生じる)。より好ましい平均粒子径の範囲は0.5〜3μmである。
前記シリカ粒子(B)の種類としては特に限定されず、例えば、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカなどのシリカ粒子を挙げることができる。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業)、アエロジル200(日本アエロジル)、機能性球状シリカHPSシリーズ(東亜合成)、Nipsilシリーズ(東ソー・シリカ)等を挙げることができる。
前記球状シリカ粒子(B1)の含有量は、前記塗膜(α)中に3〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。3質量%未満であると、耐食性、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、30質量%超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
前記球状シリカ粒子(B2)の含有量は、前記塗膜(α)中に3〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量%である。3質量%未満であると、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、20質量%超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
前記球状シリカ粒子(B1)と前記球状シリカ粒子(B2)の含有量の合計(前記シリカ粒子(B)の含有量)は、前記塗膜(α)中に10〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜30質量%である。10質量%未満であると、耐食性、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、40質量%超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。前記球状シリカ粒子(B1)と前記球状シリカ粒子(B2)との塗膜中の含有割合は質量比で30/70〜80/20の割合で含有することが好ましい。また、前記塗膜(α)中に含有されている前記球状シリカ粒子(B1)と前記球状シリカ粒子(B2)の数平均粒子径の比は1/350〜1/16であることが好ましい。
前記塗膜(α)の造膜成分である前記有機樹脂(A)は、前記有機樹脂(A)を硬化可能な硬化剤(C)で硬化されていることが、耐傷付き性や耐食性を改善する上で好ましい。前記硬化剤(C)は、前記有機樹脂(A)を硬化させるものであれば特に制限はないが、例えば、メラミン樹脂やポリイソシアネート化合物を挙げることができる。メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメチロール基の一部またはすべてをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、そのブロック化物は、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物であるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化物、イソホロンジイソシアネートのブロック化物、キシリレンジイソシアネートのブロック化物、トリレンジイソシアネートのブロック化物等を挙げることができる。これらの硬化剤は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化剤(C)の含有量は、前記有機樹脂(A)100質量%に対し、5〜35質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、焼付硬化が不十分で、耐食性、耐傷付き性の改善効果が得られない場合があり、35質量%超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性、加工性が低下する場合がある。
耐傷付き性の観点から、前記硬化剤(C)にはメラミン樹脂を含有することが好ましい。メラミン樹脂の含有量は、前記硬化剤(C)中に30〜100質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、耐傷付き性の改善効果が得られない場合がある。
前記塗膜(α)は、アクリル樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(D)を更に含有することが好ましい。前記樹脂粒子(D)は耐傷付き性を向上させる効果、塗装金属板の艶を落とし、傷が多少入っても目立ちにくくする効果を有している。
前記アクリル樹脂の種類としては特に限定はされず、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリメタクリル酸ブチル、非架橋ポリメタクリル酸メチル、非架橋ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸アルキルなどを挙げることができる。耐傷付き性と加工性を高次元で両立させる上では架橋ポリメタクリル酸メチルが特に好ましい。
前記シリコーン樹脂の種類としては特に限定はされず、例えば、ジメチルポリシロキサン、ポリオルガノシルセスキオキサンなどが挙げられる。耐傷付き性と加工性を高次元で両立させる上ではポリオルガノシルセスキオキサンが特に好ましい。
前記樹脂粒子(D)の平均粒子径は特に限定はされないが、前記塗膜(α)中に前記樹脂粒子(D)が平均粒子径1〜5μmの球状粒子として分散されていることが好ましい。平均粒子径が1μm未満であると、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、平均粒子径が5μm超であると、塗料組成物中での分散安定性を担保することが難しく、粒子が沈降し、固形化する等の不具合を生じる場合がある。加えて、加工性も低下する場合がある。
前記塗膜(α)中に分散されている前記樹脂粒子(D)の平均粒子径がcμm、前記塗膜(α)の厚みをbμmとしたとき、0.3≦c/b≦1.2を満足することが好ましい。c/bが0.3未満であると、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、c/bが1.2超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
前記樹脂粒子(D)のの含有量は、前記塗膜(α)中に0.5〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。0.5質量%未満であると、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、15質量%超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
前記塗膜(α)には着色顔料(E)を更に含有することができる。着色顔料(E)の種類としては特に限定はされず、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド、等の着色有機顔料;アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝材等を挙げることができる。
前記塗膜(α)に濃色系の着色をする場合や膜厚が10μm以下の薄膜で優れた意匠性を付与する場合には、前記着色顔料(E)にカーボンブラック(E1)を含有することが好ましい。前記カーボンブラック(E1)の種類としては、特に限定されず、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等、公知のカーボンブラックを使用することができる。また、公知のオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理されたカーボンブラックも使用することができる。使用するカーボンブラックの粒子径は塗布溶液中での分散性や塗膜品質、塗装性に問題が無い範囲であれば特に制約は無く、具体的には一次粒子径で10〜120nmのものの使用が可能である。薄膜での意匠性や耐食性を考慮すると、一次粒子径が10〜50nmの微粒子カーボンブラックを使用することが好ましい。これらのカーボンブラックを水系溶媒中に分散する場合、分散過程で凝集が起こるため、一次粒子径のまま分散することは一般的に難しい。すなわち、実際には一次粒子径よりも大きな粒子径を持った二次粒子の形態で塗布溶液中では存在し、該塗布溶液から形成する前記塗膜(α)中でも同様の形態で存在する。薄膜での意匠性や耐食性を担保するためには、前記塗膜(α)中に分散する前記カーボンブラック(E1)の粒子径が重要であり、その数平均粒子径が20〜300nmにあることが好ましい。
前記カーボンブラック(E1)の前記塗膜(α)中の含有量をd質量%、前記塗膜(α)の厚みをbμmとしたとき、d≦15、b≦10、d×b≧20を満足することが好ましい。意匠性(隠蔽性)を担保するためには、前記塗膜(α)中に含まれるカーボンブラックの絶対量を一定量以上確保することも肝要である。カーボンブラックの絶対量は、塗膜中に含まれるカーボンブラックの含有量(d質量%)と塗膜厚み(bμm)の積によって表すことができる。すなわち、d×bが20未満であると、意匠性(隠蔽性)が低下する場合がある。また、dが15超であると、塗膜の造膜性が低下し、耐食性や加工性が低下する場合がある。
前記塗膜(α)に淡彩系の着色をする場合は、前記着色顔料(E)に二酸化チタン(E2)を含有することが好ましい。前記二酸化チタン(E2)の前記塗膜(α)中の含有量は5〜30質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、意匠性(隠蔽性)が低下する場合があり、30質量%超であると加工性や耐食性が低下する場合がある。一般的に、前記塗膜(α)が前記カーボンブラック(E1)を含有し、濃色系の着色をされている場合、着色がない場合や淡彩系の着色をされている場合よりも、傷が入ったときに目立ち易いという特徴を有している。前記二酸化チタン(E2)は耐傷付き性を底上げする効果を有している上に、外観を淡彩色に近づけ、傷を目立ちにくくする効果も有している。したがって、特に膜厚が10μm以下の薄膜で着色時の意匠性(隠蔽性)、加工性、耐食性を担保しながら、耐傷付き性を向上させるには、前記塗膜(α)中に前記カーボンブラック(E1)と前記二酸化チタン(E2)の双方を含有することが好ましい。この場合、前記カーボンブラック(E1)に対する前記二酸化チタン(E2)の割合は質量比で0.5/9.5〜3/7の割合で含有することが好ましい。
本発明の塗膜(α)には更に潤滑剤を含有することが好ましい。潤滑剤を含有させることで、耐傷付き性が向上する。潤滑剤としては特に制限されず、公知の潤滑剤が使用できるが、フッ素樹脂系、ポリオレフィン樹脂系から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。
フッ素樹脂系としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが使用可能である。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
前記ポリオレフィン樹脂系としては特に限定されず、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン等の炭化水素系のワックス、及びこれらの誘導体等を挙げることができるが、ポリエチレン樹脂(F)であることが好ましい。前記誘導体としては特に限定されず、例えば、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等を挙げることができる。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。前記ポリエチレン樹脂(F)を使用する場合、前記塗膜(α)中に平均粒子径0.5〜3μmの粒子で分散されていることが、耐食性や耐傷付き性の観点から好ましい。
前記ポリエチレン樹脂の含有量は、前記塗膜(α)中に0.5〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜7質量%である。0.5質量%未満であると、潤滑性向上効果が小さく、耐傷付き性向上効果が得られない場合があり、10質量%超であると、耐食性や加工性が低下する場合がある。
前記ポリエチレン樹脂粒子(F)の平均粒子径は特に限定はされないが、0.5〜3μmの球状粒子であることが好ましい。平均粒子径が0.5μm未満であると、耐傷付き性の向上効果が得られない場合があり、平均粒子径が3μm超であると、耐食性が低下する場合がある。
一般に、薄い塗膜中に含まれる粒子の形状や大きさを特定することは極めて困難である。とは言え、塗膜の形成に用いる塗料(塗膜の構成成分を含有している溶液又は分散液(着色組成物))中に含まれている粒子状成分は、塗膜の形成過程で何らかの物理的又は化学的変化(例えば、粒子どうしの結合や凝集、塗料溶媒への有意の溶解、他の構成成分との反応など)を被らない限り、塗膜形成後においても、塗料中に存在していたときの形状や大きさを保持していると見なすことができる。本発明で用いる粒子状成分であるシリカ粒子(B)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(D)、着色顔料(E)、ポリエチレン樹脂粒子(F)は、本発明の塗膜の形成に用いる塗料の水系溶媒には有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれる。また、これらの粒子状成分の塗料中での存在形態の保持性を高める目的で、必要に応じて、予め公知の界面活性剤や水溶性樹脂等の分散剤で水系溶媒中に分散したものを塗料の原料として使用することもできる。従って、本発明において規定している塗膜中に含まれるこれらの粒子状成分の粒子径は、塗膜の形成に用いた塗料中でのそれらの粒子径でもって表すことができる。
具体的に言えば、シリカ粒子(B)のうちの平均粒子径5〜50nmの球状シリカ粒子(B1)、着色顔料(B)のカーボンブラック(B1)や二酸化チタン(B2)などの比較的微細な粒子の径は、動的光散乱法(ナノトラック法)によって測定できる。動的散乱法によれば、温度と粘度と屈折率が既知の分散媒中の微粒子の径を簡単に求めることができる。本発明で用いる粒子状成分は、塗料の溶媒に有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれるので、所定の分散媒中で粒子径を測定して、それを塗料中における粒子状成分の粒子径として採用することができる。動的光散乱法では、分散媒中に分散しブラウン運動している微粒子にレーザー光を照射して粒子からの散乱光を観測し、光子相関法により自己相関関数を求め、キュムラント法を用いて粒子径を測定する。動的光散乱法による粒径測定装置として、例えば、大塚電子社製のFPAR−1000を使用することができる。本発明では、測定対象の粒子を含有する分散体サンプルを25℃で測定してキュムラント平均粒子径を求め、合計5回の測定の平均値を当該粒子の平均粒子径とする。動的光散乱法による平均粒子径の測定については、例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics)第57巻11号(1972年12月)第4814頁、に記載されている。
一方、シリカ粒子(B)のうちの平均粒子径が0.3〜5μmの球状シリカ粒子(B2)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(D)、ポリエチレン樹脂粒子(F)などの、比較的大きな粒子の径としては、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)によって測定した粒度分布における積算値50%での粒子径を採用することができる。レーザー回折・散乱法は、粒子に光を照射したときに散乱される散乱光量とパターンが粒子径によって異なることを利用して、サブミクロン領域から数ミリメートル程度の粒子径を測定するのに広く用いられている。この場合も、本発明で用いる粒子状成分は、塗料の水系溶媒に有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれるので、測定した粒子径を塗料中における粒子状成分の粒子径として採用することができる。レーザー回折・散乱法による測定には、例えば、日機装社製のマイクロトラック粒度分析計などを使用することができる。本発明では、合計5回の測定の平均値を当該粒子の平均粒子径とする。
また、前記塗膜(α)中に、シリカ粒子(B)、アクリル樹脂、シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子(D)、着色顔料(E)、ポリエチレン樹脂粒子(F)のうちの少なくとも1種が粒子状成分として存在する場合、着色塗膜(α)を断面から観察し、直接その形状や粒子径を測定することも可能である。粒子が真球状ではない場合は、その粒子の長径、短径を各々測定し、その平均値を粒子径として採用することができる。塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法や、FIB(集束イオンビ−ム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50nm〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
本発明の前記塗膜(α)は、水系溶媒を用いて水系塗料組成物として塗布、加熱乾燥することで形成されることが好ましい。前記水系塗料組成物の塗布方法に特に制限はないが、公知のロールコート、カーテンコート、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。
前記水系塗料組成物の製造方法は特に限定されないが、例えば、水中に各々の塗膜(α)形成成分を添加し、ディスパーで攪拌し、溶解もしくは分散する方法が挙げられる。各々の塗膜(α)形成成分の溶解性、もしくは分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等を添加してもよい。
焼付乾燥方法は特に制限はなく、あらかじめ金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。焼付乾燥温度については、めっき鋼板の到達板温度で150℃〜250℃であることが好ましく、170℃〜240℃であることが更に好ましく、180℃〜230℃であることが最も好ましい。到達温度が150℃未満であると、焼付硬化が不十分で、加工性、耐食性、耐傷付き性が低下する場合があり、250℃超であると、前記塗膜(α)の焼付硬化が過剰になり、耐食性、加工性が低下する場合がある。焼付乾燥時間は1〜60秒であることが好ましく、3〜20秒であることが更に好ましい。1秒未満であると、焼付硬化が不十分で、耐食性、耐傷付き性が低下する場合があり、60秒超であると、生産性が低下する。
本発明のクロメートフリー塗装めっき鋼板は、前記塗膜(α)の下層に下地処理層(β)を有することもできる。前記下地処理層(β)は特に限定されるものではないが、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種を含む下地処理層(β)を設けることで、下地金属板との密着性を更に高め、耐食性を更に高めることができる。また、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物をすべて含む下地処理層(β)を設けることで、下地金属板との密着性を特に高め、耐食性を特に高めることができる。
前記下地塗膜層(β)に含まれるシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、チッソ社、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。前記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記下地処理層(β)に含まれる有機樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の有機樹脂を使用することができる。下地めっき鋼板との密着性を更に高めるためには、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の少なくとも1種を使用することが好ましく、前記塗膜(α)中に含まれる前記ポリエステル樹脂(A1)との相溶性を高め、密着性を高める意味では、前記下地処理層(β)にポリエステル樹脂を含有することが特に好ましい。
前記下地処理層(β)に含まれるポリフェノール化合物はベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物、またはその縮合物のことを指す。前記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、没食子酸、ピロガロール、カテコール等を挙げることができる。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては特に限定されず、例えば、通常タンニン酸と呼ばれる植物界に広く分布するポリフェノール化合物等を挙げることができる。
タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。前記タンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。前記タンニン酸としては特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。前記タンニン酸としては、市販のもの、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。
前記ポリフェノール化合物は1種で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
前記下地処理層(β)に含まれるシランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種の含有量は特に限定されないが、下地処理層100質量%中に10質量%以上含有することが好ましい。10質量%未満の場合、含有量が少なく密着性や耐食性の向上効果が得られない場合がある。
前記下地処理層(β)の付着量は特に限定されるものではないが、10〜1000mg/m2の範囲にあることが好ましい。10mg/m2以下では十分な下地処理層(β)の効果が得られず、1000mg/m2を超えると下地処理層(β)が凝集破壊しやすくなり密着性が低下する場合がある。安定した効果と経済性から、より好ましい付着量範囲は50〜500mg/m2である。
前記下地処理層(β)の形成方法に特に制限はないが、下地処理層(β)を形成するためのコーティング剤を金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成される。前記コーティング剤の塗布方法に特に制限はないが、公知のロールコート、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。焼付乾燥方法に特に制限はなく、あらかじめ金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。焼付乾燥温度については、到達温度で60℃〜150℃であることが好ましく、70℃〜130℃であることが更に好ましい。到達温度が60℃未満であると、乾燥が不十分で、基材との密着性や耐食性が低下する場合があり、150℃超であると、基材との密着性が低下する場合がある。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)Zn系合金めっき鋼板
原板は、板厚0.5mmの冷延鋼板を用いた。表1に示すめっき浴組成、めっき条件で電気めっきを行った。得られた各々のZn系合金めっき層中のCoまたは/及びNiの含有率(質量%)も表1に示す。
(2)下地処理層
下地処理層を形成するためのコーティング剤は、有機樹脂(表2)、シランカップリング剤(表3)、ポリフェノール化合物(表4)を表5に示す配合量で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。上記(1)で準備したZn系合金めっき鋼板の表面に該コーティング剤を100mg/m2の付着量になるようにロールコーターで塗装し、到達板温度70℃の条件で乾燥させることで、必要に応じて下地処理層(E1〜E9)を形成させた。
(3)塗膜
塗膜を形成するための塗料組成物は、有機樹脂(A)の水分散体(下記製造例1〜5および表6)、硬化剤(C)(表7)、着色顔料(E)(表8)、シリカ粒子(B)(表9)、樹脂粒子(E)(表10)、ポリエチレン樹脂粒子(F)(表11)を表12に示す配合量で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調製した。製造例中、単に部とあるのは質量部を示し、単に%とあるのは質量%を示す。(2)で形成した下地処理層(下地処理層がない場合は金属板)の上層に、上記塗料組成物を所定の膜厚になるようにロールコーターで塗装し、所定の到達板温度になるように加熱乾燥し、塗膜を形成させた。
<有機樹脂製造例1>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(F1)を得た。
<有機樹脂製造例2>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール250部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物62部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(F2)を得た。
<有機樹脂製造例3>
テトラメチレングリコールおよびエチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエーテルポリオール230部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸15部をN−メチル2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート100部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン5部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%のポリウレタン樹脂水分散体(F3)を得た。
<有機樹脂製造例4>
テトラメチレングリコールおよびエチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエーテルポリオール80部、平均分子量700のビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物120部、および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸12部をN−メチル2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート100部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン5部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%のポリウレタン樹脂水分散体(F4)を得た。
(4)塗装めっき鋼板
上記(1)〜(3)で作製した塗装めっき鋼板の塗膜構成および塗膜の膜厚、到達板温度を表12に示す。
(5)評価試験
上記(4)で得られた塗装めっき鋼板(試験板)について、加工性、耐食性、耐傷付き性を下記に示す評価方法および評価基準にて評価した。その評価結果を表13に示す。
(加工性)
試験板に180°折り曲げ加工を施し、折り曲げ部外側の外観を下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、1.0mmのスペーサーを間に挟んで実施した(一般に2T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に亀裂等の不具合がなく、均一な外観である。塗膜が着色されている場合、均一な着色外観であり、色落ちも認められない。
4:塗膜に極僅かの亀裂が認められるが、ほぼ均一な外観である。塗膜が着色されている場合、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である。(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:塗膜に僅かの亀裂が認められため、やや不均一な外観である。塗膜が着色されている場合、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である。(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:塗膜に亀裂が認められ、不均一な外観である。塗膜が着色されている場合、色落ちが認められる(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:塗膜に亀裂が認められ、不均一な外観である。塗膜が着色されている場合、色落ちが著しい(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
(耐食性)
試験板の端面をテープシールした後、JIS Z 2371に準拠した塩水噴霧試験(SST)を120時間行い、錆発生状況を観察し、下記の評価基準で評価した。
5:錆発生なし。
4:錆発生面積が1%未満。
3:錆発生面積が1%以上、2.5%未満。
2:錆発生面積が2.5%以上、5%未満。
1:錆発生面積が5%以上。
(耐傷付き性)
JIS K 5600−5−4に準拠して、試験板表面の塗膜に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、消しゴムで線を消した後に、2回以上傷が入らない鉛筆硬度を測定した。鉛筆硬度がH以上を、傷が目立たず、すなわち耐傷付き性が良好であると評価した。鉛筆は三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃、4.903N(500gf)の荷重条件にて試験を行った。
本発明の実施例はいずれの評価試験においても評点3点以上の優れた加工性、耐食性、及び鉛筆硬度H以上の優れた耐傷付き性を示した。なお、実施例39、44、119、124で用いた塗料組成物に沈降物が発生していた。すなわち、シリカ粒子(B)に粒子径6.8μmの比較的大きい球状シリカ粒子を用いたもの、及び樹脂粒子(D)に粒子径8μmの比較的大きい樹脂粒子を用いたものは、シリカ粒子や樹脂粒子の沈降が生じ、これらの分散安定性が他の塗料組成物に比べてやや劣っていた。とは言え、実施例39、44、119、124の塗膜の加工性、耐食性、耐傷付き性はいずれも良好であった。
一方、Co、Niいずれの合金元素も含まないZnめっき鋼板を下地とした比較例1、8は耐食性、耐傷付き性が劣っていた。Co、Niのいずれかを1.0質量%を超えて含有するZn系合金めっき鋼板を下地とした比較例2〜4、9〜11は加工性が劣っていた。塗膜にシリカ粒子(B)を含有しない比較例5、12は耐食性、耐傷付き性が劣っていた。塗膜の造膜成分にスルホン酸基を含有するポリエステル樹脂を含まない比較例6、7、13、14は、加工性、耐食性、耐傷付き性の1項目以上が劣っていた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想定し得ることは明らかであり、それらについても当然に発明の技術的範囲に属するものと了解される。