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JP5789557B2 - ガラス系基材の研磨方法 - Google Patents

ガラス系基材の研磨方法 Download PDF

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Description

本発明は、ガラス系基材をケミカルメカニカル研磨により高精度に研磨する方法に関する。
従来から、高い平坦性を維持してガラス系基材を研磨する方法として、回転する研磨パッドにセリア粒子を含むスラリーを滴下しながらガラス系基材を押し当てて研磨するケミカルメカニカル研磨(CMP)が知られている。このようなCMPに用いられる研磨方法として、例えば、下記特許文献1や下記特許文献2は、研磨材粒子を含有させたポリウレタン成形体からなる研磨パッドと、セリア粒子を含有するスラリーとを用いて研磨する方法を開示する。
特開平6−114742号公報 特開2007−073796号公報
特許文献1や特許文献2に開示されたような、ポリウレタン成形体からなる研磨パッドと、セリア粒子を含むスラリーとを用いてガラス系基材をCMP研磨する場合、ポリウレタン成形体は剛性が高すぎてガラス系基材の表面に対する追随性がわるいために、セリア粒子を含むスラリーとガラス系基材の表面とのなじみがわるく、セリア粒子の表面とガラス系基材の表面との化学反応による研磨効果が充分に得られなかった。また、セリア粒子とガラス系基材との接触を高めるために、研磨パッドとガラス系基材との接触圧力を高めた場合、平坦度が低下したり、砥粒の凝集体に力が掛かることによりスクラッチが発生しやすくなるという問題があった。
本発明は、上述した問題、すなわち、セリア粒子を含むスラリーを滴下しながらガラス系基材の表面をCMP研磨する場合において、高い研磨レート及び平坦度を維持でき、スクラッチの発生も抑制された研磨を実現することを目的とする。
本発明の一局面は、研磨パッドにスラリーを供給しながらガラス系基材を押し当ててガラス系基材の表面を研磨する研磨方法であって、スラリーは、セリア粒子を含有し、研磨パッドは、平均繊度0.01〜0.9dtexの長繊維の極細繊維からなる繊維束の絡合体と絡合体に含浸一体化された高分子弾性体とを含有し、極細繊維は50℃における飽和吸水率が0.2〜2質量%であり、高分子弾性体は50℃における飽和吸水率が0.2〜5質量%であり、見掛け密度が0.6〜0.9g/cm3、D硬度が36〜65、その研磨面の凹凸の平均間隔(Sm)が29.5〜100μmである。
上記研磨方法に用いられる研磨パッドは、長繊維の極細繊維からなる繊維束の絡合体と高分子弾性体とを、55/45〜90/10の質量比で含有する。このような研磨パッドは、極細繊維を一本の太い繊維のように束ねた繊維束の絡合体を含むために剛性の高い研磨パッドになる。また、その表層に存在する繊維束は研磨時には分繊されて極細繊維の状態で存在する。その結果、研磨中のセリア粒子を含むスラリーが極細繊維に保持されやすくなる。さらに、研磨面の凹凸の平均間隔(Sm)が29.5〜100μmに調整されていることにより、研磨表面の硬度が適度になり、高い研磨効率や研磨安定性を維持できるとともに、スクラッチの発生を抑制できる。
本発明によれば、スクラッチの発生を抑制した平坦化度の高いガラス系基材のCMP研磨を実現することができる。
図1は、本実施形態のCMP研磨装置でガラス系基材を研磨している様子を説明する模式図である。 図2は、本実施形態の研磨方法で用いられるCMP研磨装置の研磨パッドの模式断面図である。
以下、本発明に係る一実施形態のガラス系基材を研磨する方法について説明する。
図1は、CMP研磨装置でガラス系基材を研磨している様子を説明する模式図であり、図1中、10は研磨パッド、11はガラス系基材、12はガラス系基材11を回転しながら支持するキャリア、13はターンテーブル、14はセリアを含有するスラリー、15はスラリー供給管、16はコンディショナである。研磨パッド10はターンテーブル13の表面に貼られている。
ターンテーブル13はCMP研磨装置に備えられた図略のモータにより高速回転される。CMPにおいては、高速回転するターンテーブル13に貼られた研磨パッド10にスラリー供給管15からスラリー14が少量ずつ供給される。そして、キャリア12には、図略の荷重手段により荷重が掛けられ、ガラス系基材11は高速回転する研磨パッド10に押し当てられてその表面が研磨される。また、研磨パッド10は、研磨の経時変化を抑制するために、コンディショナ16により定期的に表面の目立てが施される。コンディショナとしては、例えば、ナイロンブラシが用いられる。コンディショニングは研磨前に行っても、研磨中に行ってもよい。
ガラス系基材11の研磨に用いられるスラリー14は、セリア粒子(酸化セリウム粒子)と水系媒体を含有する。セリア粒子を含有するスラリーを用いることにより、セリアのガラス系基材の表面に対する化学反応により高い研磨レートが得られる。
セリア粒子の平均粒子径としては、0.1〜10μmが好ましい。セリア粒子の平均粒子径が大きすぎる場合には、スラリー中で沈降しやすくなったり、凝集しやすくなったり、研磨効率が低下したりする傾向があり、小さすぎる場合にも研磨効率が低下する傾向がある。
スラリー14中のセリア粒子の濃度は特に限定されないが、1〜40質量%、さらには1〜30質量%であることが好ましい。セリア粒子の濃度が低すぎる場合には研磨レートが低下する傾向があり、高すぎる場合にはコストが高くなる反面、研磨性のさらなる向上効果に乏しい傾向がある。
スラリーは、セリア粒子以外の砥粒やその他の添加剤を含んでもよい。セリア粒子以外の砥粒としては、シリカ粒子(酸化ケイ素粒子)、インジウム粒子、ジルコニア粒子(酸化ジルコニウム粒子)等が挙げられる。また、その他の添加剤としては、例えば、各種塩基性成分、各種酸性成分、界面活性剤等が挙げられる。
次に、ガラス系基材の研磨に用いられる研磨パッド10について詳しく説明する。
図2に示すように、研磨パッド10は、長繊維の極細繊維1aからなる繊維束1の絡合体と高分子弾性体2と空隙3とを含有する。
長繊維の極細繊維1aの平均繊度は、0.01〜0.9dtexであり、好ましくは0.05〜0.9dtexである。このような平均繊度の極細繊維の場合には、研磨中に研磨パッド10の表層の極細繊維束が充分に分繊し、それにより、スラリー14の保持力が向上して研磨効率や研磨均一性が向上する。極細繊維の平均繊度が0.01dtex未満の場合には繊維束が分繊しにくくなり、極細繊維の平均繊度が0.9dtexを超える場合には研磨パッドの表面が粗くなりすぎて研磨レートが低下したり、ガラス系基材11を研磨する際の表面に掛かる応力が高くなりすぎてスクラッチが発生したりしやすくなる。
また、長繊維の極細繊維1aの平均長さは、特に限定されないが、100mm以上、さらには、200mm以上であることが絡合体の繊維密度を高めやすい点および繊維の抜けを抑制する点から好ましい。極細繊維1aの長さが短すぎる場合には絡合体の繊維密度を高めにくくなる傾向があり、また、研磨中に繊維が抜けやすくなる傾向がある。上限は、特に限定されず、例えば、後述するスパンボンド法により製造された不織布に由来する繊維絡合体を含有する場合には、物理的に切れていない限り、数m、数百m、数kmあるいはそれ以上の長繊維が含まれてもよい。
極細繊維1aは50℃で吸水飽和させたときの吸水率(飽和吸水率)が0.2〜2質量%である。このような場合には、研磨パッドがスラリーを吸収し過ぎることが抑制されるために、剛性の経時的な低下が抑制され、その結果、平坦化性能の経時的な低下が抑制され、また、研磨レートや研磨均一性が変動しにくい研磨パッドが得られる。
極細繊維1aのガラス転移温度(Tg)は50〜200℃、さらには50〜150℃であることが好ましい。このような場合には、研磨中の経時的な硬さが変化しにくいことから研磨平坦性、研磨安定性が向上する。
極細繊維1aを形成するための樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET、T77℃、50℃における飽和吸水率(以下同様)1質量%)、イソフタル酸変性PET(T67〜77℃、吸水率1質量%)、スルホイソフタル酸変性PET(T67〜77℃、吸水率1〜3質量%)、ポリブチレンナフタレート(T85℃、吸水率1質量%)、ポリエチレンナフタレート(T124℃、吸水率1質量%)等から形成される芳香族ポリエステル系繊維;テレフタル酸とノナンジオールとメチルオクタンジオール共重合ポリアミド(T125〜140℃、吸水率1〜3質量%)等から形成される半芳香族ポリアミド系繊維等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、PETおよびイソフタル酸変性PET等の変性PETは、後述する海島型繊維からなるウェブ絡合シートから極細繊維を形成する湿熱処理工程において大幅に捲縮するために、緻密で高密度の繊維絡合体を形成することができること、研磨シートの剛性を高めやすいこと、および、研磨の際に水分による経時変化を発生しにくいこと、等の点からも好ましい。
繊維束1は複数本の極細繊維1aが束ねられたような形態である。具体的には、例えば、5〜200本、さらには10〜50本、とくには10〜30本の極細繊維1aが束ねられたように存在していることが好ましい。このように極細繊維1aが繊維束1を形成して存在することにより、絡合体の見かけ密度を高めることができる。
繊維絡合体の見かけ密度は0.20g/cm3以上、さらには0.40〜0.80g/cm3であることが好ましい。研磨パッド10が見かけ密度の高い緻密な絡合体を含有する場合には、研磨中に高い剛性を維持することができ、そのために高い平坦度でガラス基材を研磨することができる。
次に、繊維束1の絡合体に含浸一体化される高分子弾性体2について説明する。高分子弾性体2は、50℃における飽和吸水率が0.2〜5質量%である。
高分子弾性体2は50℃で吸水飽和させたときの吸水率(飽和吸水率)が0.2〜5質量%であり、好ましくは0.5〜3質量%である。高分子弾性体の吸水率がこのような範囲であるために、研磨の際に研磨パッドに対するスラリーの高い濡れ性を維持できる。高分子弾性体2の50℃における飽和吸水率が0.2質量%未満の場合にはスラリーの濡れ性が不充分になり、研磨レートが低下する傾向があり、50℃における飽和吸水率が5質量%を超える場合には、研磨中に徐々に水分を吸収することにより剛性が低下していく傾向がある。高分子弾性体の吸水率は、高分子弾性体を構成する高分子の組成、架橋密度、親水性の官能基量等を調整することにより制御できる。なお、高分子弾性体の吸水率は、乾燥処理した高分子弾性体のフィルムを50℃の温水に浸漬して飽和膨潤させたときの吸水率である。また、2種以上の高分子弾性体を含有する場合には各高分子弾性体の飽和吸水率に質量分率を乗じた値の和として算出される。
また、高分子弾性体2のガラス転移温度(Tg)は−10℃以下であることが好ましい。このような場合には、繊維絡合体に対する結着性の低下を抑制出来ることから、研磨中の経時安定性が向上する。
また、高分子弾性体は、23℃および50℃における貯蔵弾性率が90〜900MPa、さらには、200〜800MPaであることが好ましい。23℃および50℃における貯蔵弾性率が90MPa以上である場合には、研磨中に研磨パッドの剛性が充分に維持されて高い平坦化性を維持することができ、また、研磨中にスラリーで膨潤しにくくなるために経時的安定性に優れる傾向がある。また、23℃および50℃における貯蔵弾性率が900MPa以下である場合には、高分子弾性体が研磨中に脱落しにくくなるためにスクラッチが発生しにくくなり、また、極細繊維の収束力が高くなって、研磨中の経時安定性に優れる傾向がある。
高分子弾性体2を形成するための樹脂は特に限定されないが、その具体例としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−スチレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−アクリロニトリル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−オレフィン系樹脂、(メタ)アクリル酸系エステル−(水添)イソプレン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、スチレン−水添イソプレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、および、ポリエステル系樹脂等からなる弾性体が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、高分子弾性体としては、性能や製造性等の調節のために、2種以上の高分子弾性体を含有しても良いが、その場合の高分子弾性体の物性値は、各高分子弾性体の貯蔵弾性率に質量分率を乗じた値の和として理論上算出する。
高分子弾性体2としては、極細繊維1aに対する結着性が高い点から、水素結合性の高分子弾性体が特に好ましい。水素結合性の高分子弾性体を形成する樹脂とは、例えば、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂のように、水素結合により結晶化あるいは凝集する高分子弾性体である。水素結合性の高分子弾性体は、接着性が高く、繊維絡合体の形態保持性に優れているために、繊維の抜けを抑制しやすい。
これらの中でもポリウレタン系樹脂が極細繊維に対する接着性に優れており、また、研磨パッドの硬度を高め、研磨中の経時的安定性に優れている点から好ましい。以下に、高分子弾性体2としてポリウレタン系樹脂を用いる場合について、代表例として詳しく説明する。
ポリウレタン系樹脂としては、平均分子量200〜6000の高分子ポリオールと有機ポリイソシアネ−トと、鎖伸長剤とを、所定のモル比で反応させることにより得られる各種のポリウレタン系樹脂が挙げられる。
高分子ポリオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレングリコール)などのポリエーテル系ポリオールおよびその共重合体;ポリブチレンアジペートジオール、ポリブチレンセバケートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンアジペート)ジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンセバケート)ジオール、イソフタル酸共重合ポリオール、テレフタル酸共重合ポリオール、シクロヘキサノール共重合ポリオール、ポリカプロラクトンジオールなどのポリエステル系ポリオールおよびその共重合体;ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレンカーボネート)ジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリ(メチル−1.8−オクタメチレンカーボネート)ジオール、ポリノナンメチレンカーボネートジオール、ポリシクロヘキサンカーボネートジオールなどのポリカーボネート系ポリオールおよびその共重合体;ポリエステルカーボネートポリオール等が挙げられる。また、必要に応じて、トリメチロールプロパン等の3官能アルコールやペンタエリスリトール等の4官能アルコールなどの多官能アルコール、又は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等の短鎖アルコールを併用してもよい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子ポリオールとしては、ポリカーボネート系ポリオール、とくに、融点が0℃以下の非晶性のポリカーボネート系ポリオールをポリオール成分全量の60〜100質量%含有することが、貯蔵弾性率が適度になり、研磨中の経時的な安定性にとくに優れる点から好ましい。また、炭素数5以下、特には炭素数3以下のポリアルキレングリコールを0.1〜10質量%程度用いた場合には、水に対する濡れ性がとくに良好になる点から好ましい。
有機ポリイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族あるいは脂環族ジイソシアネート等の無黄変型ジイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートポリウレタン等の芳香族ジイソシアネート、等が挙げられる。また、必要に応じて、3官能イソシアネートや4官能イソシアネートなどの多官能イソシアネートを併用してもよい
。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートが、繊維に対する接着性が高く、また、硬度が高い研磨パッドが得られる点から好ましい。
鎖伸長剤の具体例としては、例えば、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;ジエチレントリアミンなどのトリアミン類;トリエチレンテトラミンなどのテトラミン類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオールなどのジオール類;トリメチロールプロパンなどのトリオール類;ペンタエリスリトールなどのペンタオール類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、ヒドラジン、ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミンおよびその誘導体、エチレントリアミンなどのトリアミンの中から2種以上組み合わせて用いることが、繊維への接着性が高く、また、硬度が高い研磨パッドが得られる点から好ましい。また、鎖伸長反応時に、鎖伸長剤とともに、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミンなどのモノアミン類;4−アミノブタン酸、6−アミノヘキサン酸などのカルボキシル基含有モノアミン化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのモノオール類を併用してもよい。
また、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)吉草酸などのカルボキシル基含有ジオール等を併用して、ポリウレタン系樹脂の骨格にカルボキシル基などのイオン性基を導入することにより、水に対する濡れ性をさらに向上させることができる。
また、ポリウレタン系樹脂の吸水率や貯蔵弾性率を制御するために、ポリウレタンを形成するモノマー単位が有する官能基と反応し得る官能基を分子内に2個以上含有する架橋剤や、ポリイソシアネート系化合物、多官能ブロックイソシアネート系化合物等の自己架橋性の化合物を添加することのより、架橋構造を形成させてもよい。
ポリウレタン系樹脂を形成するモノマー単位が有する官能基と架橋剤の官能基との組み合わせとしては、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とシクロカーボネート基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボニル基とヒドラジン誘導体又はヒドラジド誘導体などが挙げられる。これらの中では、カルボキシル基を有するモノマー単位とオキサゾリン基、カルボジイミド基またはエポキシ基を有する架橋剤との組み合わせ、水酸基またはアミノ基を有するモノマー単位とブロックイソシアネート基を有する架橋剤との組み合わせ、およびカルボニル基を有するモノマー単位とヒドラジン誘導体またはヒドラジド誘導体との組み合わせが、架橋形成が容易であり、得られる研磨パッドの剛性や耐磨耗性が優れる点から、特に好ましい。なお、架橋構造は、繊維の絡合体にポリウレタン系樹脂を付与した後の熱処理工程において形成することが、ポリウレタン系樹脂の水性液の安定性を維持する点から好ましい。これらの中でも、架橋性能や水性液のポットライフ性が優れ、また安全面でも問題のないカルボジイミド基および/またはオキサゾリン基が特に好ましい。カルボジイミド基を有する架橋剤としては、例えば日清紡績株式会社製「カルボジライトE−01」、「カルボジライトE−02」、「カルボジライトV−02」などの水分散カルボジイミド系化合物を挙げることができる。また、オキサゾリン基を有する架橋剤としては、例えば日本触媒株式会社製「エポクロスK−2010E」、「エポクロスK−2020E」、「エポクロスWS−500」などの水分散オキサゾリン系化合物を挙げることができる。架橋剤の配合量としては、ポリウレタン系樹脂に対して、架橋剤の有効成分が1〜20質量%であることが好ましく、1.5〜1質量%であることがより好ましく、2〜10質量%であることがさらに好ましい。
また、極細繊維との接着性を高め繊維束の剛性を高めることや、ガラス転移温度を−10℃以下にすること、50℃での飽和吸水率を0.2〜5質量%にすること、23℃及び50℃における貯蔵弾性率を適度に調整することができることから、ポリウレタン系樹脂中の高分子ポリオール成分の含有率としては、40〜65質量%、さらには、45〜60質量%であることが好ましい。
また、ポリウレタン系樹脂に、カルボキシル基、スルホン酸基および炭素数3以下のポリアルキレングリコール基からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性基を導入することにより、吸水率や親水性を調整することができる。これにより、研磨の際における、研磨パッドの砥粒スラリーに対する濡れ性を向上させることができる。このような親水性基はポリウレタン系樹脂を製造する際のモノマー成分として、親水性基を有するモノマー成分を共重合することにより、ポリウレタン系樹脂に導入することができる。このような親水性基を有するモノマー成分の共重合割合としては、0.1〜10質量%、更には、0.5〜5質量%であることが、吸水による膨潤軟化を最小限に抑えつつ、吸水率や濡れ性を高めることができる点から好ましい。
ポリウレタン系樹脂は非多孔質状であることが好ましい。なお、非多孔質状とは、多孔質状、または、スポンジ状(以下、単に、多孔質状とも言う)のポリウレタン系樹脂が有するような空隙(独立気泡)を実質的に有さない状態を意味する。具体的には、例えば、溶剤系ポリウレタンを凝固させて得られるような、微細な気泡を多数有するポリウレタン系樹脂ではないことを意味する。極細繊維を集束・拘束または極細繊維束同士を結着しているポリウレタン系樹脂を非多孔質状とすることが、極細繊維の拘束力が高まり、曲げ弾性率が向上する。また、研磨安定性が高くなり、また、研磨時のスラリー屑やパッド屑が空隙に堆積しにくくなるために、研磨パッドが摩耗し難いことから、高い研磨レートを長時間維持することができる。更に、極細繊維に対する接着強度が高くなるために、繊維の抜けに起因するスクラッチの発生を抑制することができる。さらに、より高い剛性が得られるために、平坦化性能に優れた研磨パッドが得られる。
ポリウレタン系樹脂は、浸透剤、消泡剤、滑剤、撥水剤、撥油剤、増粘剤、増量剤、硬化促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防黴剤、発泡剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子化合物、染料、顔料、無機微粒子などをさらに含有してもよい。
研磨パッド10においては極細繊維1aの繊維束1の内部に高分子弾性体2が含浸し、高分子弾性体2により繊維束1を構成する極細繊維1aの一部或いは大部分が拘束されていることが好ましい。繊維束1が高分子弾性体2で拘束されることにより、繊維束1に剛性が付与されて高い平坦化性能が得られる。また、繊維の抜けを防ぎ、抜けた繊維による砥粒が凝集することを防止可能となり、それによりスクラッチが抑制できる。また、複数の繊維束1同士も繊維束1の外側に存在する高分子弾性体2により結着されていることが、研磨パッド2の形態安定性が向上して研磨安定性が向上する点から好ましい。
極細繊維1aの集束・拘束状態および繊維束1同士の結着状態は研磨パッド10の断面の電子顕微鏡写真により容易に確認することができる。
研磨パッド10の表面は、バフィング等によるパッド平坦化処理や、ダイヤモンド等のパッドドレッシングを用いた研磨前のシーズニング処理(コンディショニング処理)や、研磨時にドレッシィング処理やブラッシング処理を施すことにより、表面近傍に存在する繊維束1を分繊、又はフィブリル化することにより研磨パッド10の表面に極細繊維1aが形成されている。研磨パッド10の表面の極細繊維1aの繊維密度としては、600本/mm以上、さらには、1000本/mm以上、特には、2000本/mm以上であることが好ましい。繊維密度が低すぎる場合には、スラリー14の保持性が低下する傾向がある。繊維密度の上限は特に限定されないが、生産性の点から、1000000本/mm程度である。また、研磨パッド10の表面の極細繊維1aは立毛処理されていても、立毛処理されていなくても良い。極細繊維1aが立毛処理されている場合には、研磨パッド10の表面がよりソフトになるためにスクラッチの低減効果がより高くなる。一方、極細繊維1aの立毛の程度が低い場合には、ミクロ平坦性を重視する用途に有利となる。このように用途に応じて表面状態を適宜選択することが好ましい。
研磨パッド10中の、極細繊維1aの繊維束1の絡合体と高分子弾性体2との質量比(繊維束の絡合体/高分子弾性体)は、55/45〜90/10、さらには60/40〜85/15であることが研磨パッドの曲げ弾性率を適度な範囲に調整し易い点から好ましい。絡合体の割合が55質量%以上であるために、研磨中の経時的安定性が向上したり、研磨効率が向上する傾向がある。また、絡合体の質量割合が90%以下であるために、極細繊維1aが高分子弾性体2に充分に拘束されて平坦化性の向上および研磨中のパッド磨耗が低下し経時的安定性が向上しやすくなる。
また、研磨パッド10の研磨面の凹凸の平均間隔(Sm)は29.5〜100μmであり、好ましくは29.5〜80μmである。凹凸の平均間隔(Sm)が100μmを超える場合には、研磨レート及び研磨均一性は向上するが繊維が脱落してスクラッチが発生しやすくなる。また、Smが29.5未満の場合には、スラリー溜めとなる凹部(空隙)が不足し、研磨レートや経時的な研磨安定性が低下する傾向がある。なお、凹凸の平均間隔(Sm)は、JIS B0601−1994に準拠した表面粗さ測定に準じて測定される。研磨面の凹凸の平均間隔はバフィング等によるパッド平坦化処理した直後の表面粗さを意味する。
また、研磨パッド10の研磨面の凹凸の平均間隔(Sm)は15〜100μmであり、好ましくは15〜80μmである。凹凸の平均間隔(Sm)が100μmを超える場合には、研磨レート及び研磨均一性は向上するが繊維が脱落してスクラッチが発生しやすくなる。また、Smが15以下の場合には、スラリー溜めとなる凹部(空隙)が不足し、研磨レートや経時的な研磨安定性が低下する傾向がある。なお、凹凸の平均間隔(Sm)は、JIS B0601−1994に準拠した表面粗さ測定に準じて測定される。研磨面の凹凸の平均間隔はバフィング等によるパッド平坦化処理した直後の表面粗さを意味する。
また、研磨パッド10の見掛け密度は、0.6〜0.9g/cmであり、0.6〜0.85g/cmであることが好ましい。見掛け密度が、0.9/cmを超える場合にはスラリーの保液性が低下して研磨レートが低下したり、スクラッチが発生しやすくなったりする。また、見掛け密度が0.6/cm未満の場合には、剛性が低くなり、平坦化特性や経時的な研磨安定性が低下する傾向がある。
また、研磨パッド10は、50℃における飽和吸水率が10〜80質量%、さらには15〜70質量%であることが好ましい。50℃における飽和吸水率が10質量%以上である場合にはスラリーが保持し易く研磨レートが向上すると共に研磨均一性も向上する傾向がある。また、50℃における飽和吸水率が80質量%以下の場合には、研磨レートの向上が見られ、また、研磨中に硬度等の特性が変化し難くなるために、平坦化性能の経時的安定に優れる傾向がある。
[研磨パッドの製造方法]
次に、研磨パッド10の製造方法の一例について詳しく説明する。
研磨パッド10は、例えば、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸して得られる海島型繊維からなる長繊維ウェブを製造するウェブ製造工程と、長繊維ウェブを複数枚重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成するウェブ絡合工程と、ウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより、面積収縮率が40%以上になるように収縮させる湿熱収縮処理工程と、ウェブ絡合シート中の水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細繊維からなる繊維絡合体を形成する繊維絡合体形成工程と、繊維絡合体に高分子弾性体の水性液を含浸および乾燥凝固させる高分子弾性体充填工程、とを備えるような研磨パッドの製造方法により得ることができる。
このような製造方法においては、長繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させる工程を経ることにより、短繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させる場合に比べて、ウェブ絡合シートを大きく収縮させることができ、そのために、極細繊維の繊維密度が緻密になる。そして、ウェブ絡合シートの水溶性熱可塑性樹脂を溶解抽出することにより、極細繊維束からなる繊維絡合体が形成される。このとき、水溶性熱可塑性樹脂が溶解抽出された部分に空隙が形成される。そして、この空隙に高分子弾性体の水性液を含浸および乾燥凝固させることにより、極細繊維束を構成する極細繊維が集束されるとともに、極細繊維束同士も集束される。このようにして、繊維密度が高く、極細繊維が収束された剛性の高い研磨パッドが得られる。
以下に各工程について、詳しく説明する。
(1)ウェブ製造工程
本工程においては、はじめに、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸して得られる海島型繊維からなる長繊維ウェブを製造する。
海島型繊維は、水溶性熱可塑性樹脂と、水溶性熱可塑性樹脂と相溶性が低い非水溶性熱可塑性樹脂とをそれぞれ溶融紡糸した後、複合化させることにより得られる。そして、このような海島型繊維から水溶性熱可塑性樹脂を溶解除去または分解除去することにより、極細繊維が形成される。海島型繊維の太さは、工業性の観点から、0.5〜3デシテックスであることが好ましい。
なお、本実施形態においては、極細繊維を形成するための複合繊維として海島型繊維について詳しく説明するが、海島型繊維の代わりに多層積層型断面繊維等の公知の極細繊維発生型繊維を用いてもよい。
前記水溶性熱可塑性樹脂としては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等により、溶解除去または分解除去できる熱可塑性樹脂であって、溶融紡糸が可能な樹脂が好ましく用いられる。このような、水溶性熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール系樹脂(PVA系樹脂);ポリエチレングリコール及び/又はスルホン酸アルカリ金属塩を共重合成分として含有する変性ポリエステル;ポリエチレンオキシド等が挙げられる。これらの中では、特に、PVA系樹脂が以下の理由により、好ましく用いられる。
PVA系樹脂を水溶性熱可塑性樹脂成分とする海島型繊維を用いた場合、PVA系樹脂を溶解することにより形成される極細繊維が大きく捲縮する。このことにより繊維密度が高い繊維絡合体が得られる。また、PVA系樹脂を水溶性熱可塑性樹脂成分とする海島型繊維を用いた場合、PVA系樹脂を溶解させるときに、形成される極細繊維や高分子弾性体は実質的に分解または溶解されないので、極細繊維や高分子弾性体の物性低下が起こりにくい。さらに、環境負荷も小さい。また、微量残存しても、研磨性能への悪影響は小さく、逆に、研磨パッドの濡れ性を高める傾向がある。研磨パッドに残存するPVA系樹脂の好ましい割合としては、0.01〜0.2質量%、さらには、0.02〜0.1質量%程度である。
非水溶性熱可塑性樹脂としては、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等により、溶解除去または分解除去されない熱可塑性樹脂であって、溶融紡糸が可能な樹脂が好ましく用いられる。
非水溶性熱可塑性樹脂の具体例としては、上述した、研磨パッドを構成する極細繊維を形成するために用いられる、各種熱可塑性樹脂が用いられうる。
非水溶性熱可塑性樹脂は各種添加剤を含有してもよい。添加材の具体例としては、例えば、触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、滑剤、防汚剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤、光沢改良剤、制電剤、芳香剤、消臭剤、抗菌剤、防ダニ剤、無機微粒子等が挙げられる。
次に、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸して海島型繊維を形成し、得られた海島型繊維から長繊維ウェブを形成する方法について、詳しく説明する。
長繊維ウェブは、例えば、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸することにより複合化した後、スパンボンド法により、延伸後、堆積させることにより得られる。このように、スパンボンド法によりウェブを形成することにより、繊維の抜けが少なく、繊維密度が高く、形態安定性が良好な海島型繊維からなる長繊維ウェブが得られる。なお、長繊維とは、短繊維を製造するときのような切断工程を経ずに製造された繊維である。
海島型繊維の製造においては、水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とがそれぞれ溶融紡糸され、複合化される。水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂との質量比としては、5/95〜50/50、さらには、10/90〜40/60の範囲であることが好ましい。水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂との質量比がこのような範囲である場合には、高密度の繊維絡合体が得られ、また、極細繊維の形成性にも優れる。
水溶性熱可塑性樹脂と非水溶性熱可塑性樹脂とを溶融紡糸により複合化した後、スパンボンド法により、長繊維ウェブを形成する方法について、以下に詳しく説明する。
はじめに、水溶性熱可塑性樹脂および非水溶性熱可塑性樹脂をそれぞれ別々の押出機により溶融混練し、それぞれ異なる紡糸口金から溶融樹脂のストランドを同時に吐出させる。そして、吐出されたストランドを複合ノズルで複合させた後、紡糸ヘッドのノズル孔から吐出させることにより海島型繊維を形成する。溶融複合紡糸においては、海島型繊維における島数は4〜4000島/繊維、さらには10〜1000島/繊維にすることが、単繊維繊度が小さく、繊維密度の高い繊維束が得られる点から好ましい。
海島型繊維は冷却装置で冷却された後、エアジェット・ノズルなどの吸引装置を用いて目的の繊度となるように1000〜6000m/分の引き取り速度に相当する速度の高速気流により延伸される。その後、延伸された複合繊維を移動式の捕集面の上に堆積することにより長繊維ウェブが形成される。なお、このとき、必要に応じて堆積された長繊維ウェブを、部分的に圧着してもよい。繊維ウェブの目付量は、20〜500g/mの範囲であることが均一な繊維絡合体が得られ、また、工業性の点から好ましい。
(2)ウェブ絡合工程
次に、得られた長繊維ウェブを複数枚重ねて絡合させることによりウェブ絡合シートを形成するウェブ絡合工程について説明する。
ウェブ絡合シートは、ニードルパンチや高圧水流処理等の公知の不織布製造方法を用いて長繊維ウェブに絡合処理を行うことにより形成される。以下に、代表例として、ニードルパンチによる絡合処理について詳しく説明する。
はじめに、長繊維ウェブに針折れ防止油剤、帯電防止油剤、絡合向上油剤などのシリコーン系油剤または鉱物油系油剤を付与する。なお、目付ムラを低減させるために、2枚以上の繊維ウェブを、クロスラッパーにより重ね合わせ、油剤を付与してもよい。
その後、例えば、ニードルパンチにより三次元的に繊維を絡合させる絡合処理を行う。ニードルパンチ処理を行うことにより、繊維密度が高く、繊維の抜けを起こしにくいウェブ絡合シートが得られる。なお、ウェブ絡合シートの目付量は、目的とする研磨パッドの厚さ等に応じて適宜選択されるが、具体的には、例えば、100〜1500g/mの範囲であることが取扱い性に優れる点から好ましい。
油剤の種類や量およびニードルパンチにおけるニードル形状、ニードル深度、パンチ数などのニードル条件は、ウェブ絡合シートの層間剥離力が高くなるような条件が適宜選択される。バーブ数は針折れが生じない範囲で多いほうが好ましく、具体的には、例えば、1〜9バーブの中から選ばれる。ニードル深度は重ね合わせたウェブ表面までバーブが貫通するような条件、かつ、ウェブ表面にニードルパンチ後の模様が強く出ない範囲で設定することが好ましい。また、ニードルパンチ数はニードル形状、油剤の種類と使用量等により調整されるが、具体的には、500〜5000パンチ/cmが好ましい。また、絡
合処理後の目付量が、絡合処理前の目付量の質量比で1.2倍以上、さらには、1.5倍以上となるように絡合処理することが、繊維密度が高い繊維絡合体が得られ、また、繊維の抜けを低減できる点から好ましい。上限は特に限定されないが、処理速度の低下による製造コストの増大を避ける点で4倍以下であることが好ましい。
ウェブ絡合シートの層間剥離力は、2kg/2.5cm以上、さらには、4kg/2.5cm以上であることが、形態保持性が良好で、且つ、繊維の抜けが少なく、繊維密度が高い繊維絡合体が得られる点から好ましい。なお、層間剥離力は、三次元絡合の度合いの目安になる。層間剥離力が小さすぎる場合には、繊維絡合体の繊維密度が充分に高くない。また、絡合不織布の層間剥離力の上限は特に限定されないが、絡合処理効率の点から30kg/2.5cm以下であることが好ましい。
(3)湿熱収縮処理工程
次に、ウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより、ウェブ絡合シートの繊維密度および絡合度合を高めるための湿熱収縮処理工程について説明する。なお、本工程においては、長繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させることにより、短繊維を含有するウェブ絡合シートを湿熱収縮させる場合に比べて、ウェブ絡合シートを大きく収縮させることができ、そのために、極細繊維の繊維密度が特に高くなる。湿熱収縮処理は、スチーム加熱により行うことが好ましい。スチーム加熱条件としては、雰囲気温度が60〜130℃の範囲で、相対湿度80%以上、さらには相対湿度90%以上で、60〜600秒間加熱処理することが好ましい。研磨パッド10の研磨面の凹凸の平均間隔(Sm)を15〜100μmに調整するためには、スチーム加熱条件によってウェブ絡合シートを高収縮させることが好ましい。なお、相対湿度が低すぎる場合には、繊維に接触した水分が速やかに乾燥することにより、収縮が不充分になる傾向がある。
湿熱収縮処理は、ウェブ絡合シートを面積収縮率が40%以上、さらには、43%以上になるように収縮させることが好ましい。このように高い収縮率で収縮させることにより、高い繊維密度が得られる。面積収縮率の上限は特に限定されないが、収縮の限度や処理効率の点から80%以下程度であることが好ましい。
なお、面積収縮率(%)は、下記式(1):
(収縮処理前のシート面の面積−収縮処理後のシート面の面積)/収縮処理前のシート面の面積×100・・・(1)、により計算される。前記面積は、シートの表面の面積と裏面の面積の平均面積を意味する。
このように湿熱収縮処理されたウェブ絡合シートは、海島型繊維の熱変形温度以上の温度で加熱ロールや加熱プレスすることにより、さらに、繊維密度が高められてもよい。湿熱収縮処理前後におけるウェブ絡合シートの目付量の変化としては、収縮処理後の目付量が、収縮処理前の目付量に比べて、1.2倍(質量比)以上、さらには、1.5倍以上で、4倍以下、さらには3倍以下であることが好ましい。
(4)繊維束結着工程
ウェブ絡合シートの極細繊維化処理を行う前に、ウェブ絡合シートの形態安定性を高める目的や、得られる研磨パッドの空隙率を低減させることを目的として、必要に応じて、収縮処理されたウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸および乾燥凝固させることにより、予め、繊維束を結着させておいてもよい。
本工程においては、収縮処理されたウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸させ、乾燥凝固させることにより、ウェブ絡合シートに高分子弾性体を充填する。水性液の状態で高分子弾性体を含浸させ、乾燥凝固させることにより、高分子弾性体を形成することができる。高分子弾性体の水性液は、高濃度で粘度が低く、含浸浸透性にも優れているために、高充填しやすい。また、繊維に対する接着性にも優れている。従って、本工程により充填された高分子弾性体は、長繊維の海島型繊維を強固に拘束する。
高分子弾性体の水性液とは、高分子弾性体を形成する成分を水系媒体に溶解した水性溶液、又は、高分子弾性体を形成する成分を水系媒体に分散させた水性分散液である。なお、水性分散液には、懸濁分散液及び乳化分散液が含まれる。特に、耐水性に優れている点から、水性分散液を用いることがより好ましい。水性分散液の粒子径としては平均粒径0.01〜0.2μmであることが、耐水性が向上して研磨中の経時的安定性が向上しやすい点や、繊維束の拘束性が向上して、研磨パッドの剛性が適度になる点から好ましい。
例えば、ポリウレタン系樹脂を水性溶液または水性分散液にする方法は、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基などの親水性基を有するモノマー単位を含有させることにより、水性媒体に対する分散性をポリウレタン樹脂に付与する方法、または、ポリウレタン樹脂に界面活性剤を添加して、乳化又は懸濁させる方法が挙げられる。また、このような水性の高分子弾性体は水に対する濡れ性に優れていることにより、砥粒を均一且つ多量に保持する特性に優れている。
乳化又は懸濁に用いられる界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体などのノニオン性界面活性剤などが挙げられる。また、反応性を有する、いわゆる反応性界面活性剤を用いてもよい。また、界面活性剤の曇点を適宜選ぶことにより、ポリウレタン樹脂に感熱ゲル化性を付与することもできる。ただし、多量に界面活性剤を用いた場合には、研磨性能やその経時安定性へ悪影響を与える場合も有る為、必要最小限とするのが好ましい。
本工程においては、高分子弾性体を形成するために、従来一般的に用いられている高分子弾性体の有機溶媒溶液を用いる代わりに、高分子弾性体の水性液を用いることが好ましい。このように高分子弾性体の水性液を用いることにより、より高い濃度で高分子弾性体を含有する樹脂液を含浸させることができる。
前記ウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸させる方法としては、例えば、ナイフコーター、バーコーター、又はロールコーターを用いる方法、または、ディッピングする方法等が挙げられる。
そして、高分子弾性体の水性液が含浸されたウェブ絡合シートを乾燥することにより、高分子弾性体を凝固させることができる。乾燥方法としては、50〜200℃の乾燥装置中で熱処理する方法や、赤外線加熱の後に乾燥機中で熱処理する方法等が挙げられる。
なお、前記ウェブ絡合シートに高分子弾性体の水性液を含浸させた後、乾燥する場合、該水性液がウェブ絡合シートの表層に移行(マイグレーション)することにより、均一な充填状態が得られないことがある。このような場合には、水性液の高分子弾性体の粒径を調整すること;高分子弾性体のイオン性基の種類や量を調整すること、あるいは、pH等によってその安定性を調整すること;1価または2価のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、ノニオン系乳化剤、会合型水溶性増粘剤、水溶性シリコーン系化合物などの会合型感熱ゲル化剤、水溶性ポリウレタン系化合物、または熱によってpHを変化させる有機物や無機物などを併用すること等により、40〜100℃程度における水分散安定性を低下させること;等によりマイグレーションを抑制することができる。なお、必要に応じて、高分子弾性体が表面に偏在するようにマイグレーションさせてもよい。
(5)極細繊維形成工程
次に、水溶性熱可塑性樹脂を熱水中で溶解することにより、極細繊維を形成する工程である、極細繊維形成工程について説明する。
本工程は、水溶性熱可塑性樹脂を除去することにより極細繊維を形成する工程である。このとき、ウェブ絡合シートの水溶性熱可塑性樹脂が溶解抽出された部分に空隙が形成される。そして、この空隙に、後述の高分子弾性体充填工程において、高分子弾性体を充填することにより、極細繊維が拘束される。
極細繊維化処理は、ウェブ絡合シート又は、ウェブ絡合シートと高分子弾性体との複合体を、水、アルカリ性水溶液、酸性水溶液等で熱水加熱処理することにより、水溶性熱可塑性樹脂を溶解除去、または、分解除去する処理である。
熱水加熱処理条件の具体例としては、例えば、第1段階として、65〜90℃の熱水中に5〜300秒間浸漬した後、さらに、第2段階として、85〜100℃の熱水中で100〜600秒間処理することが好ましい。また、溶解効率を高めるために、必要に応じて、ロールでのニップ処理、高圧水流処理、超音波処理、シャワー処理、攪拌処理、揉み処理等を行ってもよい。
本工程においては、海島型繊維から水溶性熱可塑性樹脂を溶解して極細繊維を形成する際に、極細繊維が大きく捲縮される。この捲縮により繊維密度が緻密になるために、高密度の繊維絡合体が得られる。
(6)高分子弾性体充填工程
次に、極細繊維から形成される極細繊維束内部に高分子弾性体を充填することにより、極細繊維を拘束するとともに、極細繊維束を拘束し、かつ極細繊維束同士を結着する工程について説明する。
極細繊維形成工程(5)において、海島型繊維に極細繊維化処理を施すことにより、水溶性熱可塑性樹脂が除去されて極細繊維束の内部に空隙が形成される。本工程においては、このような空隙に高分子弾性体を充填することにより、極細繊維束同士を結着することで、研磨パッドの空隙率を低下させ、曲げ弾性率が向上する。なお、極細繊維が繊維束を形成している場合には、毛細管現象により高分子弾性体の水性液が含浸されやすいので極細繊維はより集束されて拘束されやすい。
本工程に用いられる高分子弾性体の水性液は、繊維束結着工程(4)で説明した高分子弾性体の水性液と同様のものが用いられうる。
本工程において極細繊維から形成される極細繊維束内部に高分子弾性体を充填する方法は、繊維束結着工程(4)で用いられる方法と同様の方法が適用できる。このようにして、研磨パッドが形成される。
[研磨パッドの後加工]
得られた研磨パッドは、必要に応じて、成形処理、平坦化処理、起毛処理、表面処理、洗浄処理等の後加工処理が施されてもよい。
成形処理、および平坦化処理は、得られた研磨パッドを研削により所定の厚みに熱プレス成形したり、所定の外形に切断したりする加工である。研磨パッドとしては、厚み0.5〜3mm程度に研削加工されたものであることが好ましい。
起毛処理とは、サンドペーパー、針布、ダイヤモンド等により研磨パッド表面に機械的な摩擦力や研磨力を与えて、集束された極細繊維を分繊する処理である。このような起毛処理により、研磨パッド表層部に存在する繊維束がフィブリル化され、表面に多数の極細繊維が形成される。
表面処理は、砥粒スラリーの保持性や排出性を調整するために研磨パッド表面に、格子状、同心円状、渦巻き状等の溝や孔を形成する処理である。
洗浄処理は、得られた研磨パッドに付着しているパーティクルや金属イオン等の不純物を、冷水或いは温水で洗浄したり、或いは、界面活性剤等の洗浄作用を有する添加剤を含んだ水溶液或いは溶剤で洗浄処理したりする加工である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
[評価方法]
はじめに、本実施例における評価方法をまとめて説明する。
(1)極細繊維の平均繊度、および、繊維束内部の極細繊維の集束状態の確認
得られた研磨パッドをカッター刃を用いて厚み方向に切断することにより、厚み方向の切断面を形成した。そして、得られた切断面を酸化オスミウムで染色した。そして、前記切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で500〜1000倍で観察し、その画像を撮影した。そして、得られた画像から切断面に存在する極細繊維の断面積を求めた。ランダムに選択した100個の断面積を平均した値を平均断面積とし、繊維を形成する樹脂の密度から平均繊度を算出した。
(2)高分子弾性体の23℃および50℃における貯蔵弾性率
研磨パッドを構成する高分子弾性体の縦4cm×横0.5cm×厚み400μm±100μmのフィルムサンプルを作成した。そして、サンプル厚みをマイクロメーターで測定後、動的粘弾性測定装置(DVEレオスペクトラー、(株)レオロジー社製)を用いて、周波数11Hz、昇温速度3℃/分での条件で23℃および50℃における動的粘弾性率を測定し、貯蔵弾性率を算出した。なお、2種の高分子弾性体を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを作成し測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性体の弾性率の値とした。
(3)高分子弾性体のガラス転移温度
研磨パッドを構成する高分子弾性体を縦4cm×横0.5cm×厚み400μm±100μmのフィルムを作成した。そして、サンプル厚みをマイクロメーターで測定後、動的粘弾性測定装置(DVEレオスペクトラー、(株)レオロジー社製)を用いて、周波数11Hz、昇温速度3℃/分での条件で動的粘弾性の測定を行い、損失弾性率の主分散ピーク温度をガラス転移温度とした。なお、2種の高分子弾性体を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを作成し測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性体のガラス転移温度の値とした。
(4)高分子弾性体の吸水率
高分子弾性体を50℃で乾燥して得られた厚さ200μmのフィルムを、130℃で30分間熱処理した後、20℃、65%RHの条件下に3日間放置したものを乾燥サンプルとし、50℃の水に乾燥サンプルを2日間浸漬した。その後、50℃の水から取り出した直後のフィルムの最表面の余分な水滴等をJKワイパー150−S(株式会社クレシア製)にて拭き取った後のものを水膨潤サンプルとした。乾燥サンプルと水膨潤サンプルの質量を測定し、下記式に従って吸水率を求めた。なお、2種の高分子弾性体を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを作成し測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性体の吸水
率の値とした。
吸水率(%)=[(水膨潤サンプルの質量−乾燥サンプルの質量)/乾燥サンプルの質量]×100
(5)水性ポリウレタンの平均粒径
大塚化学株式会社製「ELS−800」を使用して動的光散乱法により測定し、キュムラント法(東京化学同人社発行「コロイド化学第IV巻コロイド化学実験法に記載」により解析して、水分散高分子弾性体の平均粒子径を測定した。なお、2種の高分子弾性体を用いる場合は、それぞれ別々にサンプルを測定し、質量比率に乗じた和を、高分子弾性体の平均粒径の値とした。
(6)研磨パッドの表面粗さ(凹凸の平均間隔;Sm)
KEYENCE社製の形状測定レーザマイクロスコープ「VK−X200」を使用して研磨パッドの表面粗さ(凹凸の平均間隔;Sm)を測定した。測定箇所は、ランダムに選択した5箇所とし、得られた画像から前述の表面粗さを解析した。
(7)研磨パッドの研磨性能評価
円形状研磨パッドの裏面に粘着テープを貼り付けた後、CMP研磨装置(株式会社野村製作所製「PP0−60S」)に装着した。次に、プラテン回転数70回転/分、ヘッド回転数69回転/分、研磨圧力40g/cm2の条件において、昭和電工社製研磨スラリー「SHOROX A−31」を100ml/分の速度で供給しながら、直径4インチの合成石英を30分間研磨した。そして、研磨後の合成石英の面内の任意の25点の厚みを測定し、各点における研磨された厚みを研磨時間で除することにより研磨レート(nm/分)を求めた。そして、25点の研磨レートの平均値を研磨レート(R)とし、また、その標準偏差(σ)を求めた。
そして、下式により研磨面の不均一性を算出した。なお、不均一性の値が小さいほど、研磨面が均一に研磨されており、より高精度な研磨加工が実現できていることを示す。
不均一性(%)=(σ/R)×100
そして、研磨を30分毎に研磨レート、不均一性を求め、累積600分までの各研磨レート(R)、及び不均一性を求め、その最大値(Rmax)、最小値(Rmin)及び平均値(Ravg)から、下記式により研磨レート安定性(%)求めた。
研磨レート安定性(%)=(研磨レート最大値(Rmax)−研磨レート最小値(Rmin))/研磨レート平均値(Ravg)×100
また、KEYENCE社製の形状測定レーザマイクロスコープ「VK−X200」で20倍で観察し、その画像から研磨後の合成石英のスクラッチの個数を求めた。スクラッチ数は、合成石英の中心、中間、端部を各々5箇所について、675μm×506μmサイズで観察し、10μm以上の長さのスクラッチの個数を平均化した。
[実施例1]
水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂という)と、変性度6モル%のイソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレ−ト(50℃で吸水飽和させたときの吸水率1質量%、ガラス転移温度77℃)(以下、変性PETという)とを20:80(質量比)の割合で溶融複合紡糸用口金から吐出することにより、海島型繊維を形成した。なお、溶融複合紡糸用口金は、島数が64島/繊維で、口金温度は260℃であった。そして、エジェクター圧力を紡糸速度3700m/minとなるように調整して、平均繊度2.0dtexの長繊維をネット上に捕集することにより、目付量40g/mのスパンボンドシート(長繊維ウェブ)が得られた。
得られたスパンボンドシートをクロスラッピングにより12枚重ねて、総目付が480g/mの重ね合わせウェブを作製した。そして、得られた重ね合わせウェブに、針折れ防止油剤をスプレーした。次に、バーブ数1個でニードル番手42番のニードル針およびバーブ数6個でニードル番手42番のニードル針を用いて、重ね合わせウェブを2000パンチ/cmでニードルパンチ処理して絡合させることにより、ウェブ絡合シートを得た。得られたウェブ絡合シートの目付量は760g/mであった。また、ニードルパンチ処理による面積収縮率は38%であった。
次に、得られたウェブ絡合シートを70℃、90%RHの条件で90秒間スチーム処理した。このときの面積収縮率は47%であった。そして、120℃のオーブン中で乾燥させた後、120℃で熱プレスすることにより、目付量1315g/m、見掛け密度0.63g/cm、厚み2.1mmのウェブ絡合シートを得た。
次に、熱プレスされたウェブ絡合シートに、第1のポリウレタン弾性体として、ポリウレタン弾性体Aの水性分散液(固形分濃度20質量%)を含浸させた。なお、ポリウレタン弾性体Aは、非晶性ポリカーボネート系ポリオールと、炭素数2〜3のポリアルキレングリコールを、99.7:0.3(モル比)し、カルボキシル基含有モノマーを重量比で1.5wt%含有した非晶性ポリカーボネート系無黄変型ポリウレタン樹脂である。ポリウレタン弾性体Aの50℃における飽和吸水率は3質量%、23℃における貯蔵弾性率は300MPa、50℃における貯蔵弾性率は150MPa、ガラス転移温度は−20℃、水分散液の平均粒径は0.03μmである。このとき水性分散液の固形分付着量はウェブ絡合シートの質量に対して、13質量%であった。そして、水性分散液が含浸されたウェブ絡合シートを90℃、50%RH雰囲気下で乾燥凝固処理し、さらに、140℃で乾燥処理し、目付量1500g/m、見掛け密度0.83g/cm、厚み1.8mmのシートを得た。
次に、ポリウレタン弾性体Aが充填されたウェブ絡合シートを95℃の熱水中に浸漬しながらニップ処理を10分間連続的に行うことによりPVA系樹脂を溶解除去し、さらに、乾燥することにより、極細繊維の平均繊度が0.04dtex、目付量1200g/m、見掛け密度0.63g/cm、厚み1.9mmである、ポリウレタン弾性体Aと繊維絡合体との複合体を得た。
そして、前記複合体に、第2のポリウレタン弾性体として、ポリウレタン弾性体B(固形分濃度20質量%)の水性分散液を含浸させた。なお、ポリウレタン弾性体Bは非晶性ポリカーボネート系ポリオールをポリオール成分とし、カルボキシル基含有モノマーを1.7質量%含有する組成物から得られた無黄変型ポリウレタン樹脂100質量部にカルボジイミド系架橋剤3質量部を添加して、熱処理することにより架橋構造を形成させたポリウレタン樹脂である。ポリウレタン弾性体Bの50℃における飽和吸水率は2質量%、23℃における貯蔵弾性率は480MPa、50℃における貯蔵弾性率は330MPa、ガラス転移温度は−25℃、水分散液の平均粒径は0.05μmであった。このとき水性分散液の固形分付着量は前記複合体の質量に対して、13質量%であった。次に、水性分散液が含浸されたウェブ絡合シートを90℃、50%RH雰囲気下で凝固処理し、さらに、140℃で乾燥処理した。そして、それを150℃で熱プレスすることにより、研磨パッド前駆体が得られた。得られた研磨パッド前駆体は、目付量1390g/m、見掛け密度0.82g/cm、厚さ1.7mであった。なお、繊維絡合体とポリウレタン弾性体との質量比率は77/23であり、高分子弾性体Aと高分子弾性体Bの比率は51:49であった。
得られた研磨パッド前駆体を、表面平坦化のための研削加工を行って、目付量1150g/m、見掛け密度0.82g/cm、厚さ1.4mmとし、さらに、直径51cmの円形状に切断され、表面に幅2.0mm、深さ1.0mmの溝を格子状に15.0mm間隔で形成することにより、円形状の研磨パッドが得られた。そして、前述の方法により研磨評価を実施した。得られた断面の顕微鏡画像を観察したところ、繊維束の外周を構成する極細繊維のみならず、内部の極細繊維同士が高分子弾性体によって接着一体化されている状態が観察された。なお、研磨におけるスラリーとしては、セリア20質量%を含有する、昭和電工(株)製研磨スラリー「SHOROX A−31」を用いた。結果を表1に示す。
[実施例2]
実施例1のウェブ絡合シートの湿熱収縮処理を後述の方法で処理した以外は、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作成し、研磨評価を実施した。結果を表1に示す。ウェブ絡合シートの湿熱収縮処理条件は、相対湿度を80%で90秒間スチーム処理した。このときの面積収縮率は40%であった。そして、120℃のオーブン中で乾燥させた後、120℃で熱プレスすることにより、目付量1270g/m、見掛け密度0.60g/cm、厚み2.1mmのウェブ絡合シートを得た。
[比較例1]
スラリーとして、セリアを含有する、昭和電工(株)製研磨スラリー「SHOROX A−31」を用いる代わりに、セリアを含有せず、シリカを15質量%含有するスラリーを用いた以外は同様にして、研磨パッドの研磨性能評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
ウェブ絡合シートの湿熱収縮処理を後術の方法で処理した以外は、実施例1と同様の方法で研磨パッドを作成し、研磨評価を実施した。結果を表1に示す。ウェブ絡合シートの湿熱収縮処理条件は、60℃、70%RHの条件で90秒間スチーム処理した。このときの面積収縮率は30%であった。そして、120℃のオーブン中で乾燥させた後、120℃で熱プレスすることにより、目付量1190g/m、見掛け密度0.54g/cm、厚み2.2mmのウェブ絡合シートを得た。
[比較例3]
ポリウレタン系成形体からなる研磨パッドに変更した以外は、実施例1と同様に研磨パッドの研磨性能評価を行った。結果を表1に示す。
結果を表1に示す。
本発明に係る研磨パッドは、平坦化や鏡面化が行われるガラス系基板、具体的には、液晶・表示部材、ガラス製品などのようなガラス系基板を研磨するための研磨パッドとして用いることができる。また、研磨においては、一次研磨、二次研磨(調整研磨)、仕上げ研磨等何れの研磨にも用いることができる。
1 繊維束
1a 極細繊維
2 高分子弾性体
3 空隙
10 研磨パッド
11 ガラス系基材
12 キャリア
13 ターンテーブル
14 スラリー
15 スラリー供給管
16 コンディショナ

Claims (4)

  1. 研磨パッドにスラリーを供給しながらガラス系基材を押し当てて該ガラス系基材の表面を研磨する研磨方法であって、
    前記スラリーは、セリア粒子を含有し、
    前記研磨パッドは、
    平均繊度0.01〜0.9dtexの長繊維の極細繊維からなる繊維束の絡合体と前記絡合体に含浸一体化された高分子弾性体とを含有し、
    前記極細繊維は50℃における飽和吸水率が0.2〜2質量%であり、
    前記高分子弾性体は50℃における飽和吸水率が0.2〜5質量%であり、
    見掛け密度が0.6〜0.9g/cm3、D硬度が36〜65、その研磨面の凹凸の平均間隔(Sm)が29.5〜100μmであることを特徴とする研磨方法。
  2. 前記繊維束の絡合体と前記高分子弾性体との質量比が55/45〜90/10であり、前記高分子弾性体の23℃および50℃における貯蔵弾性率が90〜900MPaである請求項1に記載の研磨方法。
  3. 前記高分子弾性体はガラス転移温度が−10℃以下である、ポリオール,ポリアミンおよびポリイソシアネートに由来する単位を構成単位として含有するポリウレタン系樹脂であり、ポリオール成分の60〜100%が非晶性ポリカーボネート系ジオールである請求項1または2に記載の研磨方法。
  4. 前記極細繊維はポリエステル系繊維である請求項1〜3の何れか1項に記載の研磨方法。
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