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JP5786551B2 - ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 - Google Patents

ポリカーボネート樹脂組成物及び成形品 Download PDF

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JP5786551B2 JP2011178978A JP2011178978A JP5786551B2 JP 5786551 B2 JP5786551 B2 JP 5786551B2 JP 2011178978 A JP2011178978 A JP 2011178978A JP 2011178978 A JP2011178978 A JP 2011178978A JP 5786551 B2 JP5786551 B2 JP 5786551B2
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Description

本発明は、低光学歪み性、耐光性、色相、透明性、熱安定性、及び機械的強度に優れた樹脂組成品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、一般的にビスフェノール類をモノマー成分とし、透明性、耐熱性、機械的強度等の優位性を生かし、電気・電子部品、自動車用部品、医療用部品、建材、フィルム、シート、ボトル、光学記録媒体、レンズ等の分野でいわゆるエンジニアリングプラスチックスとして広く利用されている。
しかしながら、従来のポリカーボネート樹脂は、長時間紫外線や可視光に曝露される場所で使用すると、色相や透明性、機械的強度が悪化するため、屋外や照明装置の近傍での使用に制限があった。又、種々成形品として使用する場合、溶融成形時に離型性が悪く、透明材料や光学材料等に用いることが困難であるという問題があった。
このような問題を解決するために、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤やベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジン系紫外線吸収剤をポリカーボネート樹脂に添加する方法が広く知られている(例えば非特許文献1)。
ところが、このような紫外線吸収剤を添加した場合、紫外線照射後の色相などの改良は認められるものの、そもそもの樹脂の色相や耐熱性、透明性の悪化を招いたり、また成形時に揮発して金型を汚染する等の問題があった。
従来のポリカーボネート樹脂に使用されるビスフェノール化合物は、ベンゼン環構造を有するために紫外線吸収が大きく、このことがポリカーボネート樹脂の耐光性悪化を招くため、分子骨格中にベンゼン環構造を持たない脂肪族ジヒドロキシ化合物や脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物、イソソルビドのように分子内にエーテル結合を持つ環状ジヒドロキシ化合物モノマーユニットを使用すれば、原理的には耐光性が改良されることが期待される。中でも、バイオマス資源から得られるイソソルビドをモノマーとしたポリカーボネート樹脂は、耐熱性や機械的強度が優れていることから、近年数多くの検討がなされるようになってきた(例えば、特許文献1〜6)。
しかしながら、上記脂肪族ジヒドロキシ化合物や脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物、イソソルビドのように分子内にエーテル結合を持つ環状ジヒドロキシ化合物はフェノール性水酸基を有しないため、ビスフェノールAを原料とするポリカーボネート樹脂の製法として広く知られている界面法で重合させることは困難であり、通常、エステル交換法または溶融法と呼ばれる方法で製造される。この方法では、上記ジヒドロキシ化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸ジエステルとを塩基性触媒の存在下、200℃以上の高温でエステル交換させ、副生するフェノール等を系外に取り除くことにより重合を進行させ、ポリカーボネート樹脂を得る。ところが、上記のようなフェノール性水酸基を有しないモノマーを用いて得られるポリカーボネート樹脂は、ビスフェノールA等のフェノール性水酸基を有するモノマーを用いて得られたポリカーボネート樹脂に比べ熱安定性に劣っているために、高温にさらされる重合中や成形中に着色が起こり、結果的には紫外線や可視光を吸収して耐光性の悪化を招くという問題があった。中でも、イソソルビドのように分子内にエーテル結合を有するモノマーを用いた場合は色相悪化が著しく、大幅な改良が求められていた。更に、種々成形品として使用する場合には高温で溶融成形されるが、その時にも熱安定性がよく、成形性、離型性に優れた材料が求められていた。
また、特許文献7には薄肉・大画面化が図られた導光板等の成形体への加工が容易で、
光線透過率の高い光学シートおよびその製造方法、光学シートの表面に凹凸パターンを形成させてなる成形体および成形体の製造方法が提供されており、低光学歪みであるものの、芳香族ポリカーボネートだけを使用しているため加工温度が高く、しかも、押出成形であるため成形品の形状が限られてしまうという問題があった。
国際公開第04/111106号パンフレット 特開2006−232897号公報 特開2006−28441号公報 特開2008−24919号公報 特開2009−91404号公報 特開2009−91417号公報 特開2009−242752号公報
ポリカーボネート樹脂ハンドブック(1992年8月28日 日刊工業新聞社発行 本間精一編)
本発明の目的は、上記従来の問題点を解消し、低光学歪み性、耐光性、色相、透明性、熱安定性、成形性、及び機械的強度に優れたポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく、鋭意検討を重ねた結果、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とからなるポリカーボネート樹脂組成物(X)であって、該ポリカーボネート樹脂組成物(X)から成形された板状部を主体とする成形品であって、該成形品の板状部の厚みが0.5mm以上5mm以下であり、該成形品の板状部において位相差100nm以下の面積の割合が、該成形体の全面積に対して50%以上である成形品が、優れた低光学歪み性を有するだけでなく、優れた耐光性、色相、透明性、熱安定性、成形性、及び機械的強度を有することを見出し、本発明に到達した。
Figure 0005786551
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
即ち、本発明の要旨は下記[1]〜[8]に存する。
[1] 構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とからなるポリカーボネート樹脂組成物(X)から射出成形された板状部を主体とする成形品であって、該成形品の板状部の厚みが0.5mm以上5mm以下であり、該成形品の板状部において位相差が100nm以下の面積の割合が、該成形体の全面積に対して50%以上であることを特徴とする成形品。
Figure 0005786551
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
[2] 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、前記構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位とを含むことを特徴とする[1]に記載の成形品。
Figure 0005786551
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
[3] 前記ポリカーボネート樹脂(A)中に占める前記構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)が20mol%以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の成形品。
[4] 前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)が、前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)から成形された成形品(厚さ3mm)をブラックパネル温度63℃、相対湿度50%、1時間当たりの降雨スプレー時間12分の環境下にて、サンシャインカーボンアークを用い、放電電圧50V、放電電流60Aで、500時間照射処理した後に、全光線透過率が85%以上であるポリカーボネート樹脂組成物であることを特徴とする[1]から[3]のいずれかに記載の成形品。
[5] 前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)が、前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)から成形された成形品(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス(YI)値と、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%、1時間当たりの降雨スプレー時間12分の環境下にて、サンシャインカーボンアークを用い、放電電圧50V、放電電流60Aで、500時間照射処理した後に透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が10以下であることを特徴とする[1]から[4]のいずれかに記載の成形品。
[6] 前記構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物が、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする[1]から[5]のいずれかに記載の成形品。
Figure 0005786551
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
Figure 0005786551
本発明によれば、低光学歪み性、耐候性、色相、透明性、熱安定性、及び機械的強度に優れた成形品を提供することができ、電気・電子部品、自動車用部品等の射出成形用途、カメラレンズ、ファインダーレンズ、CCDやCMOS用レンズなどのレンズや、光ディスク、光学材料、光学部品などの光学用途などの、幅広い分野へ適用可能な成形品を提供することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する、尚、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形することができる。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明で使用するポリカーボネート樹脂(A)(以下、「本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)」と称することがある。)は、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(以下、単に「本発明に用いるジヒドロキシ化合物」と称することがある)に由来する構造単位(a)を含むものである。
Figure 0005786551
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
<ジヒドロキシ化合物>
本発明に用いるジヒドロキシ化合物としては、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記一般式(3)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられるが、中でも、入手のし易さ、ハンドリング
、重合時の反応性、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相、本発明の成形品の色相の観点から、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記一般式(3)で表される環状エーテル構造を有する化合物が好ましく、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール、下記一般式(3)で表される環状エーテル構造を有する化合物がより好ましい。
これらは得られるポリカーボネート樹脂(A)の要求性能に応じて、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
Figure 0005786551
上記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニド、イソイデットが挙げられ、これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのジヒドロキシ化合物のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物を用いることが本発明の成形品の耐光性の観点から好ましく、中でも植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルビドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、カーボンニュートラルの面から最も好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上記本発明に用いるジヒドロキシ化合物以外のジヒドロキシ化合物(以下「その他のジヒドロキシ化合物」と称す場合がある。)に由来する構造単位を含んでいてもよく、その他のジヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ヘプタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,6−デカリンジメタノール、1,5−デカリンジメタノール、2,3−デカリンジメタノール、2,3−ノルボルナンジメタノール、2,5−ノルボルナンジメタノール、1,3−アダマンタンジメタノール、等の脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物が挙げられる。
また、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン[=ビスフェノールA]、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4
−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−(3,5−ジフェニル)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジクロロジフェニルエーテル、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン等の芳香族ビスフェノール類を使用することもできる。
中でも、樹脂の耐光性の観点からは、分子構造内に芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物、即ち脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましく、脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールがより好ましく、1,6−ヘキサンジオールが更に好ましい。脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物としては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールがより好ましく、1,4−シクロヘキサンジメタノールが更に好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は全ジヒドロキシ化合物に対する、本発明に用いるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の割合の下限は好ましくは20モル%、より好ましくは25モル%、更に好ましくは30モル%である。又、上限は好ましくは90モル%、より好ましくは80モル%、更に好ましくは70モル%、特に好ましくは60モル%である。90モル%以下とすることによって、本発明の成形品の機械特性を十分に向上させることができる可能性がある。一方、20モル%以上とすることで芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との相溶性が良好となり、ポリカーボネート樹脂組成物(X)の透明性を向上させることができ、射出成形された板状部を主体とする成形品としたときに該成形品各所における位相差の斑が少なくなり、高い位相差値が生じる箇所が減少し、ポリカーボネート樹脂(A)に起因する大幅な耐熱性低下、軟質化を防止でき、幅広い用途で使用が可能となる。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物は、還元剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、制酸剤、pH安定剤、熱安定剤等の安定剤を含んでいても良く、特に酸性下で本発明に用いるジヒドロキシ化合物は変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。塩基性安定剤としては、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における1族または2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩、脂肪酸塩や、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メト
キシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウムまたはカリウムのリン酸塩、亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウム、亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
これら塩基性安定剤の本発明に用いるジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、少なすぎると本発明に用いるジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎると本発明に用いるジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、通常、本発明に用いるジヒドロキシ化合物に対して、0.0001重量%〜1重量%、好ましくは0.001重量%〜0.1重量%である。
また、これら塩基性安定剤を含有した本発明に用いるジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度や品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に成形品の耐光性を悪化させるため、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂や蒸留等で除去することが好ましい。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物がイソソルビド等、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や、製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱うことが肝要である。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。例えば、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の着色を招く可能性があり、又、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない場合もあり、好ましくない。
上記酸化分解物を含まない本発明に用いるジヒドロキシ化合物を得るために、また、前述の塩基性安定剤を除去するためには、蒸留精製を行うことが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素などの不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、250℃以下、好ましくは200℃以下、特には180℃以下の条件で行うことが好ましい。
このような蒸留精製で、本発明に用いるジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量を20重量ppm以下、好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下にすることにより、前記本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として使用した際に、重合反応性を損なうことなく色相や熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂(A)の製造が可能となる。蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーで行うことができる。
<炭酸ジエステル>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述した本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得ることができる。
用いられる炭酸ジエステルとしては、通常、下記一般式(4)で表されるものが挙げられる。 これらの炭酸ジエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用
いてもよい。
Figure 0005786551
(上記一般式(4)において、A及びAは、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜炭素数18の脂肪族基、または、置換若しくは無置換の芳香族基である。)
前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びジ−t−ブチルカーボネート等が例示されるが、好ましくはジフェニルカーボネート、置換ジフェニルカーボネートであり、特に好ましくはジフェニルカーボネートである。なお、炭酸ジエステルは、塩化物イオンなどの不純物を含む場合があり、重合反応を阻害したり、得られるポリカーボネート樹脂の色相を悪化させたりする場合があるため、必要に応じて、蒸留などにより精製したものを使用することが好ましい。
<エステル交換反応触媒>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述のように、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物と、その他のジヒドロキシ化合物と、前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得られる。より詳細には、エステル交換させ、副生するモノヒドロキシ化合物等を系外に除去することによって得られる。この場合、通常、エステル交換反応触媒存在下でエステル交換反応により重縮合を行う。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の製造時に使用し得るエステル交換反応触媒(以下、単に触媒、重合触媒と言うことがある)は、本発明の成形品の特に波長350nmにおける光線透過率や、イエローインデックス(YI)値に影響を与え得る。
用いられる触媒としては、製造されたポリカーボネート樹脂(A)の耐光性、透明性、色相、耐熱性、熱安定性、及び機械的強度のうち、とりわけて耐光性を満足させ得るものであれば、限定されないが、長周期型周期表における1族金属化合物(以下、「1族」と称することがある)、2族金属化合物(以下、「2族」と称することがある)、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物が挙げられる。好ましくは1族金属化合物、2族金属化合物である。
1族金属化合物及び/又は2族金属化合物と共に、補助的に、塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物等の塩基性化合物を併用することも可能であるが、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物のみを使用することが特に好ましい。
また、1族金属化合物及び/又は2族金属化合物の形態としては通常、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩又はフェノール塩等の塩の形態で用いられるが、入手のし易さ、取扱いの容易さから、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩が好ましく、色相と重合活性の観点からは酢酸塩がより好ましい。
1族金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸セシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸セシウム、水素化ホウ素ナトリウ
ム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素セシウム、フェニル化ホウ素ナトリウム、フェニル化ホウ素カリウム、フェニル化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ素セシウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、安息香酸セシウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、リン酸水素2セシウム、フェニルリン酸2ナトリウム、フェニルリン酸2カリウム、フェニルリン酸2リチウム、フェニルリン酸2セシウム、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムのアルコレート、フェノレート、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2リチウム塩、2セシウム塩等が挙げられ、中でもリチウム化合物が好ましい。
2族金属化合物としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ストロンチウム等が挙げられ、中でもマグネシウム化合物、カルシウム化合物、バリウム化合物が好ましく、重合活性と得られるポリカーボネート樹脂の色相の観点から、マグネシウム化合物及び/又はカルシウム化合物が更に好ましく、最も好ましくはカルシウム化合物である。
塩基性ホウ素化合物としては、例えば、テトラメチルホウ素、テトラエチルホウ素、テトラプロピルホウ素、テトラブチルホウ素、トリメチルエチルホウ素、トリメチルベンジルホウ素、トリメチルフェニルホウ素、トリエチルメチルホウ素、トリエチルベンジルホウ素、トリエチルフェニルホウ素、トリブチルベンジルホウ素、トリブチルフェニルホウ素、テトラフェニルホウ素、ベンジルトリフェニルホウ素、メチルトリフェニルホウ素、ブチルトリフェニルホウ素等のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、あるいはストロンチウム塩等が挙げられる。
塩基性リン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリ−n−プロピルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、あるいは四級ホスホニウム塩等が挙げられる。
塩基性アンモニウム化合物としては、例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
アミン系化合物としては、例えば、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール、アミノキノリン等が挙げられる。
上記重合触媒の使用量は、好ましくは、重合に使用した全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.1μmol〜300μmol、更に好ましくは0.5μmol〜100μmolであり、中でもリチウム及び長周期型周期表における2族からなる群より選ばれた少な
くとも1種の金属を含む化合物を用いる場合、特にはマグネシウム化合物及び/またはカルシウム化合物を用いる場合は、金属量として、前記全ジヒドロキシ化合物1mol当たり、好ましくは、0.1μmol以上、更に好ましくは0.5μmol以上、特に好ましくは0.7μmol以上である。また上限としては、好ましくは20μmol、更に好ましくは10μmol、特に好ましくは3μmol、最も好ましくは1.5μmol、中でも1.0μmolが好適である。
触媒量が少なすぎると、重合速度が遅くなるため結果的に所望の分子量のポリカーボネート樹脂(A)を得ようとすると、重合温度を高くせざるを得なくなり、得られたポリカーボネート樹脂(A)の色相や耐光性が悪化したり、未反応の原料が重合途中で揮発して本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記一般式(2)で表される炭酸ジエステルのモル比率が崩れ、所望の分子量に到達しない可能性がある。一方、重合触媒の使用量が多すぎると、得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相の悪化を招き、ポリカーボネート樹脂(A)の耐光性が悪化する可能性がある。
更に、前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとして、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等の置換ジフェニルカーボネートを用い、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)を製造する場合は、フェノール、置換フェノールが副生し、ポリカーボネート樹脂(A)中に残存することは避けられないが、フェノール、置換フェノールも芳香環を有することから紫外線を吸収し、耐光性の悪化要因になる場合があるだけでなく、成形時の臭気の原因となる場合がある。ポリカーボネート樹脂(A)中には、通常のバッチ反応後は1000重量ppm以上の副生フェノール等の芳香環を有する、芳香族モノヒドロキシ化合物が含まれているが、耐光性や臭気低減の観点からは、脱揮性能に優れた横型反応器や真空ベント付の押出機を用いて、好ましくは700重量ppm以下、更に好ましくは500重量ppm以下、特には300重量ppm以下にすることが好ましい。ただし、工業的に完全に除去することは困難であり、芳香族モノヒドロキシ化合物の含有量の下限は通常1重量ppmである。
尚、これら芳香族モノヒドロキシ化合物は、用いる原料により、当然置換基を有していてもよく、例えば、炭素数が5以下であるアルキル基などを有していてもよい。
また、1族金属、中でもリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウムは、特にはナトリウム、カリウム、セシウムは、ポリカーボネート樹脂(A)中に多く含まれると色相に悪影響を及ぼす可能性があり、該金属は使用する触媒からのみではなく、原料や反応装置から混入する場合があるため、ポリカーボネート樹脂(A)中のこれらの合計量は、金属量として、通常1重量ppm以下、好ましくは0.8重量ppm以下、より好ましくは0.7重量ppm以下である。
ポリカーボネート樹脂(A)中の金属量は、湿式灰化などの方法でポリカーボネート樹脂中の金属を回収した後、原子発光、原子吸光、Inductively Coupled Plasma(ICP)等の方法を使用して測定することが出来る。
<ポリカーボネート樹脂(A)製造方法>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述のように、本発明に用いるジヒドロキシ化合物と、その他のジヒドロキシ化合物と、前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルとを原料として、エステル交換反応により重縮合させて得られるが、該原料をエステル交換反応前に均一に混合することが好ましい。
混合の温度は通常80℃以上、好ましくは90℃以上であり、その上限は通常250℃以下、好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。中でも100℃以上120℃以下が好適である。混合の温度が低すぎると溶解速度が遅かったり、溶解度が不足する可能性があり、しばしば固化等の不具合を招く場合がある。混合の温度が高すぎ
るとジヒドロキシ化合物の熱劣化を招く場合があり、結果的に得られるポリカーボネート樹脂(A)の色相が悪化し、本発明の成形品の耐光性に悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の前記原料を混合する操作は、酸素濃度10vol%以下、更には0.0001vol%〜10vol%、中でも0.0001vol%〜5vol%、特には0.0001vol%〜1vol%の雰囲気下で行うことが、色相悪化防止の観点から好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)を得るためには、前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルは、反応に用いる本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物に対して、0.90〜1.20のモル比率で用いることが好ましく、さらに好ましくは、0.95〜1.10のモル比率である。
このモル比率が小さくなると、製造されたポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基が増加して、熱安定性が悪化し、成形時に着色を招いたり、エステル交換反応の速度が低下したり、所望する高分子量体が得られない可能性がある。
また、このモル比率が大きくなると、エステル交換反応の速度が低下したり、所望とする分子量のポリカーボネート樹脂(A)の製造が困難となる場合がある。エステル交換反応速度の低下は、重合反応時の熱履歴を増大させ、結果的に得られたポリカーボネート樹脂(A)の色相や耐光性を悪化させる可能性がある。
更には、得られるポリカーボネート樹脂(A)中の残存炭酸ジエステル量が増加し、これらが紫外線を吸収してポリカーボネート樹脂(A)の耐光性を悪化させる場合がある。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)に残存する炭酸ジエステルの濃度は、好ま
しくは200重量ppm以下、更に好ましくは100重量ppm以下、特に好ましくは60重量ppm以下、中でも30重量ppm以下が好適である。現実的にポリカーボネート樹脂(A)は未反応の炭酸ジエステルを含むことがあり、濃度の下限値は通常1重量ppmである。
本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを重縮合させる方法は、上述の触媒存在下、通常、複数の反応器を用いて多段階で実施される。反応の形式は、バッチ式、連続式、あるいはバッチ式と連続式の組み合わせのいずれの方法でもよい。
重合初期においては、相対的に低温、低真空でプレポリマーを得、重合後期においては相対的に高温、高真空で所定の値まで分子量を上昇させることが好ましいが、各分子量段階でのジャケット温度と内温、反応系内の圧力を適切に選択することが色相や耐光性の観点から重要である。例えば、重合反応が所定の値に到達する前に温度、圧力のどちらか一方でも早く変化させすぎると、未反応のモノマーが留出し、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルのモル比を狂わせ、重合速度の低下を招いたり、所定の分子量や末端基を持つポリマーが得られなかったりして結果的に本願発明の目的を達成することができない可能性がある。
更には、留出するモノマーの量を抑制するために、重合反応器に還流冷却器を用いることは有効であり、特に未反応モノマー成分が多い重合初期の反応器でその効果は大きい。還流冷却器に導入される冷媒の温度は使用するモノマーに応じて適宜選択することができるが、通常、還流冷却器に導入される冷媒の温度は該還流冷却器の入口において45℃〜180℃であり、好ましくは、80℃〜150℃、特に好ましくは100℃〜130℃である。還流冷却器に導入される冷媒の温度が高すぎると還流量が減り、その効果が低下し、低すぎると、本来留去すべきモノヒドロキシ化合物の留去効率が低下する傾向にある。冷媒としては、温水、蒸気、熱媒オイル等が用いられ、蒸気、熱媒オイルが好ましい。
重合速度を適切に維持し、モノマーの留出を抑制しながら、最終的なポリカーボネート樹脂(A)の色相や熱安定性、耐光性等を損なわないようにするためには、前述の触媒の種類と量の選定が重要である。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、触媒を用いて、複数の反応器を用いて多段階で重合させて製造することが好ましいが、重合を複数の反応器で実施する理由は、重合反応初期においては、反応液中に含まれるモノマーが多いために、必要な重合速度を維持しつつ、モノマーの揮散を抑制してやることが重要であり、重合反応後期においては、平衡を重合側にシフトさせるために、副生するモノヒドロキシ化合物を十分留去させることが重要になるためである。このように、異なった重合反応条件を設定するには、直列に配置された複数の重合反応器を用いることが、生産効率の観点から好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の製造において使用される反応器は、上述の通り、少なくとも2基以上であればよいが、生産効率などの観点からは、3基以上、好ましくは3基〜5基、特に好ましくは、4基である。
反応器が2基以上であれば、その反応器中で、更に条件の異なる反応段階を複数持たせる、連続的に温度・圧力を変えていくなどしてもよい。
重合触媒は原料調製槽、原料貯槽に添加することもできるし、重合槽に直接添加することもできるが、供給の安定性、重合の制御の観点からは、重合槽に供給される前の原料ラインの途中に触媒供給ラインを設置し、好ましくは水溶液で供給する。
重合反応の温度は、低すぎると生産性の低下や製品への熱履歴の増大を招き、高すぎるとモノマーの揮散を招くだけでなく、ポリカーボネート樹脂(A)の分解や着色を助長する可能性がある。
具体的には、第1段目の反応は、重合反応器の内温の最高温度として、140℃〜270℃、好ましくは180℃〜240℃、更に好ましくは200℃〜230℃で、110kPa〜1kPa、好ましくは70kPa〜5kPa、更に好ましくは30kPa〜10kPa(絶対圧力)の圧力下、0.1時間〜10時間、好ましくは0.5時間〜3時間、発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ留去しながら実施される。
第2段目以降は、反応系の圧力を第1段目の圧力から徐々に下げ、引き続き発生するモノヒドロキシ化合物を反応系外へ除きながら、最終的には反応系の圧力(絶対圧力)を200Pa以下にして、内温の最高温度210℃〜270℃、好ましくは220℃〜250℃で、通常0.1時間〜10時間、好ましくは、1時間〜6時間、特に好ましくは0.5時間〜3時間行う。
特にポリカーボネート樹脂(A)の着色や熱劣化を抑制し、色相や耐光性の良好なポリカーボネート樹脂(A)を得るには、全反応段階における内温の最高温度が250℃未満、特に225℃〜245℃であることが好ましい。 また、重合反応後半の重合速度の低
下を抑止し、熱履歴による劣化を最小限に抑えるためには、重合の最終段階でプラグフロー性と界面更新性に優れた横型反応器を使用することが好ましい。
所定の分子量のポリカーボネート樹脂(A)を得るために、重合温度を高く、重合時間を長くし過ぎると、紫外線透過率は下がり、イエローインデックス(YI)値は大きくなる傾向にある。
副生したモノヒドロキシ化合物は、資源有効活用の観点から、必要に応じ精製を行った後、炭酸ジフェニルやビスフェノールA等の原料として再利用することが好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は、上述の通り重縮合後、通常、冷却固化させ、回転式カッター等でペレット化される。
ペレット化の方法は限定されるものではないが、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させてペレット化させる方法、最終重合反応器から溶融状態で一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法、又は、最終重合反応器から溶融状態で抜き出し、ストランドの形態で冷却固化させて一旦ペレット化させた後に、再度一軸または二軸の押出機に樹脂を供給し、溶融押出しした後、冷却固化させてペレット化させる方法等が挙げられる。
その際、押出機中で、残存揮発分の減圧脱揮や、通常知られている、熱安定剤、中和剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤、潤滑剤、可塑剤、相溶化剤、難燃剤等を添加、混練することも出来る。
押出機中の、溶融混練温度は、ポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度や分子量に依存するが、通常150℃〜300℃、好ましくは200℃〜270℃、更に好ましくは230℃〜260℃である。溶融混練温度が150℃より低いと、ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度が高く、押出機への負荷が大きくなり、生産性が低下する場合がある。300℃より高いと、ポリカーボネートの熱劣化が激しくなり、本発明の成形品の機械的強度の低下や着色、ガスの発生を招く場合がある。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、異物の混入を防止するため、フィルターを設置することが望ましい。フィルターの設置位置は押出機の下流側が好ましく、フィルターの異物除去の大きさ(目開き)は、99%除去の濾過精度として100μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の押出は、押出後の異物混入を防止するために、好ましくはJISB 9920(2002年)に定義されるクラス7、更に好ましくはクラス6より清浄度の高いクリーンルーム中で実施することが望ましい。
また、押出されたポリカーボネート樹脂(A)を冷却しチップ化する際は、空冷、水冷等の冷却方法を使用するのが好ましい。空冷の際に使用する空気は、ヘパフィルター等で空気中の異物を事前に取り除いた空気を使用し、空気中の異物の再付着を防ぐのが望ましい。水冷を使用する際は、イオン交換樹脂等で水中の金属分を取り除き、さらにフィルターにて、水中の異物を取り除いた水を使用することが望ましい。用いるフィルターの目開きは、99%除去の濾過精度として10μm〜0.45μmであることが好ましい。
このようにして得られた本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、還元粘度で表すことができ、還元粘度は、通常0.30dL/g以上であり、0.35dL/g以上が好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性や成形性を低下させる傾向がある。
尚、還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
更に本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)中の下記一般式(5)で表される末端基の濃度の下限量は、通常20μeq/g、好ましくは40μeq/g、特に好ましくは50μeq/gであり、上限は通常160μeq/g、好ましくは140μeq/g、特に好ましくは100μeq/gである。
下記一般式(5)で表される末端基の濃度が、高すぎると成形時の成形品の色相が良くても、紫外線曝露後の成形品の色相の悪化を招く可能性があり、逆に該末端基の濃度が低
すぎると熱安定性が低下する恐れがある。
下記一般式(5)で表される末端基の濃度を制御するには、原料である本発明に用いるジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と前記一般式(4)で表される炭酸ジエステルのモル比率を制御する方法、エステル交換反応時の触媒の種類や量、重合圧力や重合温度を制御する方法等が挙げられる。
Figure 0005786551
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)中の芳香環に結合した水素原子(H)の当量数を(C)、芳香環以外に結合した水素原子(H)の当量数を(D)とした場合、芳香環に結合した水素原子(H)の当量数の全水素原子(H)の当量数に対する比率は、C/(C+D)で表されるが、耐光性には上述のように、紫外線吸収能を有する芳香族環が影響を及ぼす可能性があるため、C/(C+D)は0.1以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.02以下、好適には0.01以下である。C/(C+D)は、H−NMRで定量することができる。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)のガラス転移温度は75℃以上、105℃以下であることが好ましく、80℃以上、105℃以下であることがより好ましく、85℃以上、105℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度がかかる範囲内のポリカーボネート樹脂(A)を用いることで、優れた耐熱性を有する成形品を提供することができる。
<芳香族ポリカーボネート樹脂(B)>
本発明で使用する芳香族ポリカーボネート樹脂(B)(以下、「本発明に用いるポリカーボネート樹脂(B)」と称することがある。)とは、2価フェノールに由来する構造単位からなるポリカーボネート樹脂であり、全構造単位の内、二つ以上の芳香環を有する2価フェノールに由来する構造単位の割合が、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上である。又、前記ポリカーボネート樹脂(A)および芳香族ポリカーボネート(B)の両方に該当するものについては、前記ポリカーボネート樹脂(A)に含めるものとする。
本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、単独重合体及び共重合体のいずれであってもよい。また、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は、分岐構造を有していてもよい。 本発明に用いる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の製造方法は、ホスゲン法、エステル交換法、ピリジン法等、公知のいずれの方法を用いてもかまわない。以下一例として、エステル交換法による芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法を説明する。
エステル交換法は、2価フェノールと炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、溶融エステル交換縮重合を行う製造方法である。2価フェノールの代表例としては、ビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが好ましく用いられる。また、ビスフェノールAの一部又は全部を他の2価フェノールで置き換えてもよい。他の2価フェノールとしては、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンや1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シク
ロヘキサンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル) スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒ
ドロキシフェニル)スルフォキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどの化合物、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのアルキル化ビスフェノール類、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのハロゲン化ビスフェノール類を挙げることができる。
炭酸ジエステルの代表例としては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
本発明に用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の粘度平均分子量は、力学特性と成形加工性のバランスから、通常、8,000以上、30,000以下、好ましくは10,000以上、25,000以下の範囲である。又、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.60g/dlに精密に調整し、温度20.0℃±0.1℃で測定され、通常、0.23dl/g以上0.72dl/g以下で、好ましくは0.27dl/g以上0.61dl/g以下の範囲内である。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)は1種のみを単独、又は2種以上を混合して使用してもよい。
<ポリカーボネート樹脂組成物(X)>
本発明で使用するポリカーボネート樹脂組成物(X)は、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含む。
Figure 0005786551
(但し、上記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
上記ポリカーボネート樹脂(A)は、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むものである。
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)は全ジヒドロキシ化合物に対する、本発明に用いるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の割合は20モル%以上、55モル%以下であることが好ましい。該構造単位(a)の割合の上限としては、より好ましくは50モル%であり、さらに好ましくは45モル%である。55モル%以下とすることによって芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との相溶性が良好となり、ポリカーボネート樹脂組成物(X)の透明性、機械特性を十分に向上させることができ、射出成形された板状部を主体とする成形品としたときに該成形品各所における位相差の斑が少なくなり、高い位相差値が生じる箇所が減少する場合がある。一方、該構造単位(a)の割合の下限とし
ては、より好ましくは25モル%、さらに好ましくは30モル%である。20モル%以上とすることでポリカーボネート樹脂(A)に起因する耐熱性低下、軟質化を防止でき、幅広い用途で使用が可能となる。
ポリカーボネート樹脂(A)中に占める脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物(b)の割合が、小さすぎると、ポリカーボネート樹脂組成物(X)の全光線透過率が小さくなり、初期のイエローインデックス(YI)値も大きくなる傾向にある。また、ポリカーボネート樹脂組成物(X)中に占めるポリカーボネート樹脂(A)の割合が、小さすぎると、後述するサンシャインウェザオメーター照射試験後のイエローインデックス(YI)値が大きくなる傾向にある。
上記ポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物(X)中に占める芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の割合は、通常、30重量%以上であり、好ましくは35重量%以上、更に好ましくは45重量%以上、特に好ましくは55重量%以上である。一方、好ましくは90重量%以下、更に好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の割合が30重量%未満では、成形品の耐熱性が十分で無い可能性がある。又、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の割合が90重量%を超えると、板状部を主体とした成形品としたときに位相差の絶対値が大きくなる場合があり、該成形品各所における位相差の斑が大きくなり、光学的に均質な成形体が得られない場合がある。
本発明で使用するポリカーボネート樹脂組成物(X)は、成形品の透明性を保つ観点から、ガラス転移温度が単一であることが好ましい。
また、ポリカーボネート樹脂組成物(X)を構成するポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とは、別種のものでありさえすればよい。
<ポリカーボネート樹脂以外の樹脂>
本発明で使用するポリカーボネート樹脂組成物(X)は前記ポリカーボネート樹脂(A)及び前記芳香族ポリカーボネート樹脂(B)を含むが、その他の樹脂及び/又は添加剤を配合することも出来る。
その他の樹脂の具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂やコア−シェル型、グラフト型又は線状のランダム及びブロック共重合体のようなゴム状改質剤などが挙げられる。その他の樹脂の配合量としては、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100重量部に対して、1重量部以上、30重量部以下の割合で配合することが好ましく、3重量部以上、20重量部以下の割合で配合することがより好ましく、5重量部以上、10重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。尚、その他の樹脂は配合しても成形品としたときに透明性を損なわない樹脂を選択することが肝要である。
添加剤としては熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等があげられる。
<熱安定剤>
本発明の成形品には、成形時における分子量の低下や色相の悪化を防止するために熱安定剤を配合することができる。かかる熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホス
ファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル) ペンタエリスリトールジ
ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル) オク
チルホスファイト、ビス(ノニルフェニル) ペンタエリスリトールジホスファイト、ビ
ス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。なかでも、トリスノニルフェニルホスファイト、トリメチルホスフェート、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、およびベンゼンホスホン酸ジメチルが好ましく使用される。
これらの熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記熱安定剤の配合量は、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で配合することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で配合することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。かかる範囲で熱安定剤を配合することにより、添加剤のブリード等を生じることなく樹脂の分子量低下や変色を防止することができる。
<酸化防止剤>
本発明の成形品には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を配合することができる。かかる酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート) 、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネ
ート)、グリセロール−3−ステアリルチオプロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン等の1種又は2種以上が挙げられる。前記酸化防止剤の配合量は、本発明の成形品をポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で配合することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で配合することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。かかる範囲で酸化防止剤を配合することにより、成形体表面への酸化防止剤のブリード、成形品の機械特性低下を生じることなく、樹脂の酸化劣化を防止することができる。
<離型剤>
本発明の成形品の金型からの離型性をより向上させるために、更に離型剤を含有していることが好ましい。離型剤としては、高級脂肪酸、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステル、蜜蝋等の天然動物系ワックス、カルナバワックス等の天然植物系ワックス、パラフィンワックス等の天然石油系ワックス、モンタンワックス等の天然石炭系ワックス、オレフィン系ワックス、シリコーンオイル、オルガノポリシロキサン等が挙げられ、高級脂肪酸、一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルが特に好ましい。
高級脂肪酸エステルとしては、置換又は無置換の炭素数1〜炭素数20の一価又は多価アルコールと置換又は無置換の炭素数10〜炭素数30の飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルが好ましい。かかる一価又は多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステル又は全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸モノグリセリド、ベヘニン酸ベヘニル、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、ビフェニルビフェネ−ト、ソルビタンモノステアレート、2−エチルヘキシルステアレート等が挙げられる。なかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ベヘニン酸ベヘニルが好ましく用いられる。
高級脂肪酸としては、置換又は無置換の炭素数10〜炭素数30の飽和脂肪酸が好ましい。このような飽和脂肪酸としては、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等が挙げられる。これらの離型剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。かかる離型剤の含有量は、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100重量部に対して、好ましくは0.0001重量部以上、更に好ましくは0.01重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上、一方、好ましくは2重量部以下、更に好ましくは1重量部以下、特に好ましくは0.5重量部以下である。
<紫外線吸収剤>
本発明の成形品の耐候性をさらに向上する目的で、紫外線吸収剤を配合することができる。かかる紫外線吸収剤としては、例えば2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2
−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃ 以上の紫外線吸収剤を
使用すると、成形品表面のガスによる曇りが減少し改善される。具体的には、2−(2'
−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メ
チルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テト
ラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール
系紫外線吸収剤が使用され、これらのうちでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−
テトラメチルブチル) −6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノールが好ま
しい。これらの紫外線吸収剤、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤の配合量は、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポ
リカーボネート樹脂(B)との合計量100重量部に対して、0.0001重量部以上、1重量部以下の割合で配合することが好ましく、0.0005重量部以上、0.5重量部以下の割合で配合することがより好ましく、0.001重量部以上、0.2重量部以下の割合で配合することがさらに好ましい。かかる範囲で紫外線吸収剤成形品表面への紫外線吸収剤のブリード、各種成形品の機械特性低下を生じることなく、成形品の耐候性を向上することができる。
<ヒンダードアミン系光安定剤>
また、本発明の成形品の耐光性をさらに向上する目的で、ヒンダードアミン系光安定剤を配合することができる。かかるヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチ
ルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン
−2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアミノ)−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6)−テトラメチル−4−ピペリジル−1、6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物等が挙げられる。なかでもビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートが好ましい。
前記ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)と芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100重量部に対して、0.001重量部以上、1重量部以下の割合で配合することが好ましく、0.005重量部以上、0.5重量部以下の割合で配合することが更に好ましく、0.01重量部以上、0.2重量部以下の割合で配合することが特に好ましい。かかる範囲でヒンダードアミン系光安定剤を配合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物表面へのヒンダードアミン系光安定剤のブリード、各種成形品の機械特性低下を生じることなく、本発明の成形品の耐候性を向上することができる。
<成形>
本発明の成形品の製造は射出成形法によって行う。特に、成形品の光学歪みを低くするという観点から射出プレス成形によって行うことが好ましい。射出成形の場合、成形品の形状に応じた金型を使用することにより、複雑な形状の樹脂成形品を製造することができる。
射出成形は射出成形機によって行われ、使用する樹脂組成物および製品形状に応じて適宜好適な成形条件が設定される。成形条件としては、シリンダー温度、金型温度、射出圧、保圧、スクリュー回転数、クッション量、射出速度、射出時間、保圧時間、冷却時間などが挙げられる。
本発明の成形品の射出成型法による製造においては、シリンダー温度は、好ましくは200℃〜300℃、更に好ましくは210℃〜280℃、特に好ましくは220℃〜270℃、最も好ましくは230℃〜260℃である。シリンダー温度が高すぎると樹脂組成物が熱分解し、樹脂成形品が着色する傾向にあり、一方低すぎると、樹脂組成物の溶融粘度が高くなり、成形不良を生じたり、光学歪みが大きくなったりする傾向にある。
金型温度は、好ましくは40℃〜120℃、更に好ましくは50℃〜100℃、特に好ましくは60℃〜80℃である。金型温度が高すぎると、成形品の生産性が低下する傾向にあり、一方、低すぎると、光学歪みが大きくなる傾向にある。
本発明の成形品、すなわち、ポリカーボネート樹脂組成物(X)から射出成形された板状部を主体とする成形品であって、該成形品の板状部の厚みが0.5mm以上5mm以下であり、該成形品の板状部において位相差が100nm以下の面積の割合が該成形品の板状部の全面積に対して50%以上である成形品を得る手段としては、前述したように本発明に用いるポリカーボネート樹脂(A)中の全ジヒドロキシ化合物に対する本発明に用いるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)の割合を特定範囲とすること、本発明に用いるポリカーボネート樹脂組成物(X)中に占める芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の割合を特定範囲にすることの他に、シリンダー温度および金型温度を上記の特定範囲とすることが挙げられる。
本発明の成形品は、これらの手段を単独で、あるいは適宜組み合わせることにより製造することができる。
<低光学歪み>
本発明の成形品の板状部の厚みが0.5mm以上5mm以下であり、該成形品の板状部において位相差が100nm以下の面積の割合が、該成形品の板状部の全面積に対して、50%以上であり、好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上である。一方、好ましくは100%以下、更に好ましくは99%以下、特に好ましくは98%以下である。この割合が小さすぎると成形品の光学歪みが高い面積の割合が大きくなり、光学用途に使用し難い傾向になる。すなわち、この割合は大きいことが好ましい。
本発明におけるサンシャインカーボンアークを用いた照射処理は、後述するが、特定の装置で、特定のフィルターなどを用い、主として300nm以上、1100nm以下の波長の光を、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%、1時間当たりの降雨スプレー時間12分の環境下にて、サンシャインカーボンアークを用い、放電電圧50V、放電電流60Aで、試料に500時間照射することをいう。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物(X)から成形された成形体(厚さ3mm)を、前記サンシャインカーボンアークを用いて500時間照射処理した後の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、一方、上限は99%以下であり、かつ該照射処理前後におけるイエローインデックス(YI)値の差が、好ましくは10以下であり、更に好ましくは8以下、特に好ましくは6以下である。
本発明によれば、低光学歪み性、耐光性、色相、透明性、熱安定性、及び機械的強度に優れた成形品を提供することができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
以下において、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂組成物、成形品等の物性ないし特性の評価は次の方法により行った。
(1)還元粘度の測定
ポリカーボネート樹脂のサンプルを、溶媒として塩化メチレンを用いて溶解し、0.6g/dLの濃度のポリカーボネート溶液を調製した。森友理化工業社製ウベローデ型粘度管を用いて、温度20.0℃±0.1℃で測定を行い、溶媒の通過時間tと溶液の通過時間tから次式より相対粘度ηrelを求め、
ηrel=t/t
相対粘度から次式より比粘度ηspを求めた。
ηsp=(η−η)/η=ηrel −1
比粘度を濃度c(g/dL)で割って、還元粘度ηsp/cを求めた。この値が高いほど分子量が大きい。
(2)色相測定
JIS K7105に準拠し、分光色差計(日本電色工業株式会社製SE2000)を使用し、C光源透過法にて射出成形片(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)のイエローインデックス(YI)値を測定した。YI値が小さい程、黄色味がなく品質が優れることを示す。
(3)全光線透過率測定
JIS K7105に準拠し、ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製NDH2000)を使用し、D65光源にて射出成形片の全光線透過率を測定した。
(4)成形品の位相差の測定と成形品の位相差が100nm以下の面積の割合
150mm×100mm×3mmの射出成形板にて、王子計測機器株式会社製の位相差測定装置「KOBRA WRXY2020」により、波長590nmに対する位相差を測定した。測定は10mm×10mmのメッシュに分割して行い、100nm以下の位相差を示したメッシュの全メッシュに対する割合を成形品の位相差が100nm以下の面積の全面積に対する割合とした。
(5)サンシャインウェザオメーター照射試験
JIS B7753に準拠してスガ試験機株式会社製サンシャインウェザオメーターS80を用いて、サンシャインカーボンアーク(ウルトラロングライフカーボン4対)光源で放電電圧50V、放電電流60Aに設定し、照射及び表面スプレ(降雨)にてブラックパネル温度63℃、相対湿度50%の条件下、射出成形片の平板(幅60mm×長さ60mm×厚さ3mm)の正方形の面に対して、500時間照射処理を行った。表面スプレー(降雨)時間は、12分/1時間とした。ガラスフィルターはAタイプを用いた。照射処理後のYIと全光線透過率を測定し、さらに500時間処理後のYIと処理前のYIとの差を求めた。
(6)ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比の測定
ポリカーボネート樹脂中の各ジヒドロキシ化合物構造単位比は、ポリカーボネート樹脂30mgを秤取し、重クロロホルム約0.7mLに溶解し、溶液とし、これを内径5mmのNMR用チューブに入れ、日本電子株式会社製JNM−AL400(共鳴周波数400MHz)を用いて常温でH NMRスペクトルを測定した。各ジヒドロキシ化合物に由
来する構造単位に基づくシグナル強度比より各ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位比を求めた。
<ポリカーボネート樹脂(A)>
PC1:
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、イソソルビド(以下「ISB」と称す場合がある。)と1,4−シクロヘキサンジメタノール(以下「CHDM」と称す場合がある。)と、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたジフェニルカーボネート(以下「DPC」と称す場合がある。)、および酢酸カルシウム1水和物を、モル比でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.40/0.60/1.00/1.00×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005〜0.001vol%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温を開始後40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この
圧力を保持するようにしながら、さらに30分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の凝縮器に導いて回収した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、50分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。得られたポリカーボネート樹脂は分析の結果、イソソルビドに由来する構造単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=40/60モル%、還元粘度 0.63dl/g
PC2:
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した重合反応装置に、ISBとCHDM、蒸留精製して塩化物イオン濃度を10ppb以下にしたDPCおよび酢酸カルシウム1水和物を、モル比率でISB/CHDM/DPC/酢酸カルシウム1水和物=0.70/0.30/1.00/1.3×10−6になるように仕込み、十分に窒素置換した(酸素濃度0.0005vol%〜0.001vol%)。続いて熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始し、内温が100℃になるように制御しながら内容物を融解させ均一にした。その後、昇温を開始し、40分で内温を210℃にし、内温が210℃に到達した時点でこの温度を保持するように制御すると同時に、減圧を開始し、210℃に到達してから90分で13.3kPa(絶対圧力、以下同様)にして、この圧力を保持するようにしながら、さらに60分間保持した。重合反応とともに副生するフェノール蒸気は、還流冷却器への入口温度として100℃に制御された蒸気を冷媒として用いた還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を重合反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は続いて45℃の温水を冷媒として用いた凝縮器に導いて回収した。
このようにしてオリゴマー化させた内容物を、一旦大気圧にまで復圧させた後、撹拌翼および上記と同様に制御された還流冷却器を具備した別の重合反応装置に移し、昇温および減圧を開始して、60分で内温220℃、圧力200Paにした。その後、20分かけて内温230℃、圧力133Pa以下にして、所定撹拌動力になった時点で復圧し、内容物をストランドの形態で抜出し、回転式カッターでペレットにした。
得られたポリカーボネート樹脂は分析の結果、イソソルビドに由来する構造単位/1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70/30モル%、還元粘度 0.51dl/gであった。
<芳香族ポリカーボネート樹脂(B)>
PC3:
三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製ノバレックス7022J(2,2−ビス
−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンに由来する構造のみを有する芳香族ポリカーボネート樹脂,粘度平均分子量22,000)
(実施例1)
PC1、及び、PC3を重量比60:40の割合でドライブレンドした後、株式会社日本製鋼所社製2軸押出機(TEX30HSS−32)を用いて、樹脂温度250℃で押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化した。ペレットを、窒素雰囲気下、80℃で10時間乾燥した後に、射出成形機(株式会社日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、シリンダー温度250℃、金型温度60℃、成形サイクル40秒間の条
件で、射出成形板(幅150mm×長さ100mm×厚さ3mm)を成形した。得られたサンプルについて、全光線透過率、YI、ノッチ付シャルピー衝撃強度の測定を行なった結果を表1に示す。
(実施例2)
PC1、及び、PC3を混合重量比40:60の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例1)
PC3のみを、窒素雰囲気下、120℃で6時間乾燥した後に、射出成形機(株式会社日本製鋼所社製J75EII型)に供給し、シリンダー温度280℃、金型温度を80℃、成形サイクル40秒間の条件で、射出成形板(幅150mm×長さ100mm×厚さ3mm)を成形した以外は実施例1と同様の評価を行なった。結果を表1に示す。
(比較例2)
PC2、及び、PC3を混合重量比80:20の割合で混合した以外は実施例1と同様の方法でサンプルの作製、評価を行なった。結果を表1に示す。
Figure 0005786551

Claims (5)

  1. 下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)を含むポリカーボネート樹脂(A)と、芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とを含むポリカーボネート樹脂組成物(X)から射出成形された板状部を主体とする成形品であって、該成形品の板状部の厚みが0.5mm以上5mm以下であり、該成形品の板状部において位相差が100nm以下の面積の割合が、該成形体の板状部の全面積に対して50%以上であり、前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)のペレットを射出成型機に供給し、シリンダー温度250℃、金型温度60℃、成形サイクル40秒間の条件で成形した、射出成形板(幅150mm×長さ100mm×厚さ3mm)の全光線透過率が90.0%以上であることを特徴とする成形品。
    Figure 0005786551
  2. 前記ポリカーボネート樹脂(A)が、下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)と、脂肪族ジヒドロキシ化合物及び脂環式炭化水素のジヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物に由来する構造単位とを含むことを特徴とする請求項1に記載の成形品。
    Figure 0005786551
  3. 前記ポリカーボネート樹脂(A)中に占める下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位(a)が20mol%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の成形品。
  4. 前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)が、前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)から成形された成形品(厚さ3mm)をブラックパネル温度63℃、相対湿度50%、1時間当たりの降雨スプレー時間12分の環境下にて、サンシャインカーボンアークを用い、
    放電電圧50V、放電電流60Aで、500時間照射処理した後に、全光線透過率が85%以上であるポリカーボネート樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の成形品。
  5. 前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)が、前記ポリカーボネート樹脂組成物(X)から成形された成形品(厚さ3mm)の初期のイエローインデックス(YI)値と、ブラックパネル温度63℃、相対湿度50%、1時間当たりの降雨スプレー時間12分の環境下にて、サンシャインカーボンアークを用い、放電電圧50V、放電電流60Aで、500時間照射処理した後に透過光で測定したASTM D1925−70に準拠したイエローインデックス(YI)値との差の絶対値が10以下であるポリカーボネート樹脂組成物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の成形品。
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