JP5783536B2 - ホウ素の回収方法 - Google Patents
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現在、主に用いられているホウ素回収法は、クチレングリコール,イソオクチルアルコール,2−エチルヘキサノール,4−t−ブチルカテコール等を抽出溶媒として用いる溶媒抽出法、硫酸バンドやPACなどの凝集剤を用いて不溶性沈殿物としてホウ素を回収する凝集沈殿法、ホウ素を選択的に吸着可能な吸着剤を用いる吸着法などがある(特許文献1〜3、非特許文献1〜2)。
しかしながら、溶媒抽出法は、対象溶液の酸性側へのpH調整や対象溶液の容量に対して1〜3倍量の溶媒が必要となるなど薬剤の使用量が多い。また、凝集沈殿法は、凝集剤の添加により対象溶液に新たな金属イオンの混入が生じるとともに、凝集反応で生じた大量の不溶性沈殿物の処理が必要となる。吸着法は、吸着操作および脱着操作においてpH制御のための薬剤使用量が多く、また、対象溶液中のホウ素濃度が高くなると吸着剤の必要量が膨大となる。
本発明は、ホウ素含有水に溶存したマグネシウムを用いて効率的にホウ素及びマグネシウムを回収する方法であり、また、ホウ素含有水に含まれるホウ素を回収するためのマグネシウム量が少ない場合(ないかほとんどない場合も含まれる)に少なくとも初回は新鮮なマグネシウムを添加する必要があるが、2回目以降は該共沈物を固液分離して得られる水酸化マグネシウムからのマグネシウムをホウ素含有水への添加としてリサイクルして該共沈物を繰り返し形成させる方法を見出したものである。
「ホウ素含有水」とは、少なくともホウ素を含有する水を意味し、マグネシウムは含有されていてもよいし、含有されてなくともよい。
「ホウ素」とは、ホウ素原子自体、又は少なくともホウ素原子を含むイオンを意味する。
「マグネシウム」とは、マグネシウム原子自体、又はマグネシウムイオンを意味する。
本発明の回収方法は、ホウ素含有水にアルカリを添加することにより、水酸化マグネシウムとホウ素の共沈物を形成させる工程を有する。
ホウ素含有水にマグネシウムが含まれない場合には、ホウ素含有水にマグネシウムが添加される。また、ホウ素含有水にマグネシウムが含まれている場合にも、共沈反応を最適化する等の該反応の調整のために、ホウ素含有水にマグネシウムを添加してもよい。
本発明は、ホウ素とマグネシウムがともにイオンとして共存している水にアルカリを添加し、水酸化マグネシウムを形成させ、この形成した水酸化マグネシウムとホウ素を共沈させる。前記反応後、共沈物からホウ素と水酸化マグネシウムを分離することで、ホウ素およびマグネシウムを回収することができる。
本発明は、前記共沈物を固液分離により分離する工程、及び該共沈物をアルカリ洗浄することによりホウ素と水酸化マグネシウムを分離回収する工程を有することが好ましい。前者の工程は、共沈反応後のホウ素含有水と共沈物を分離する工程であり、デカンテーション、遠心等、常套手段が適用される。後者の工程は、共沈されたホウ素を再びイオン化するものであり、この間、水酸化マグネシウムは沈殿物として残留され、イオン化されたホウ素は、アルカリとともに回収される。この回収されたホウ素は、そのまま用いるか、または更なる常套手段により、適宜、塩等の所望の形態にして用いることができる。また、使用済みのアルカリは、本発明の共沈反応に回すこともできる。
本発明により、ホウ素含有水からホウ素は90%以上回収することができる。さらに、前記共沈反応後の共沈物を除去したホウ素含有水に吸着法等を組み合わせるとよりホウ素の回収率を上げることが可能となる。
アルカリ洗浄された水酸化マグネシウムは、そのまま用いるか、適宜、構造を変更させて利用することができるし、上述のように共沈反応にリサイクルしてもよい。水酸化マグネシウムをリサイクルする場合、添加されるホウ素含有水のpHが低い場合等、水酸化マグネシウムのイオン化が可能な場合には、水酸化マグネシウムのままの状態でも可能であるが、通常、後述するようにマグネシウムをイオン化してからリサイクルされる。
水酸化マグネシウムの溶解に必要な酸の量は、水酸化マグネシウムの水酸基と等モル以上であればよい。
実施例1
ホウ素含有水として表1に示す組成のモデル溶液1〜4を作成した。同表中、「ホウ素」は、ホウ酸水溶液の濃度[g(ホウ素原子換算質量)/kg(水溶液)]であり、「マグネシウム」は、塩化マグネシウム水溶液の濃度[g(マグネシウム原子換算質量)/kg(水溶液)]である。
図1から、少なくともpH9以上10以下では、共沈したホウ素量は反応に供したマグネシウム量と比例関係にあり、マグネシウム1gあたり約0.26gのホウ素が共沈したことが分かる。また、pH11では共沈したホウ素量と反応したマグネシウム量とには比例関係がなく、pH11以上ではホウ素の回収効率が低下することが分かる。
上記共沈したホウ素量は、高周波誘導結合プラズマ発光分析法(ICP発光法)により測定した。
これより、本発明は、ホウ素含有水に溶存するマグネシウムを利用することで、効率的にホウ素を回収することができ、また、ホウ素含有水に溶存するマグネシウムをリサイクルできることが分かる。
Claims (4)
- 塩湖かん水から得られる5g(ホウ素原子換算質量)/kg(水溶液)以上のホウ素を含有するホウ素含有水に、アルカリ、及びホウ素質量(ホウ素原子基準)の1〜20倍のマグネシウムを含有させることにより、水酸化マグネシウムとホウ素の共沈物をpH10以下で形成させる工程を有する、ホウ素の回収方法。
- 前記マグネシウムは、前記ホウ素含有水に含有されているか、該ホウ素含有水に添加されるものである、請求項1記載の回収方法。
- 前記共沈物を固液分離により分離する工程、及び該共沈物をpH10.5以上でアルカリ洗浄することによりホウ素と水酸化マグネシウムを分離回収する工程を有する、請求項1又は2に記載の回収方法。
- 前記分離回収された水酸化マグネシウムを酸溶液により溶解させたものを、前記共沈物を形成させる工程に回す工程を有し、前記回す工程が繰り返される、請求項3記載の回収方法。
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