以下本発明を実施の形態に係る工作機械を示す図面に基づいて詳述する。以下の説明では図において矢印で示す上下、左右及び前後を使用する。作業者は前方で工作機械を操作し、ワークの着脱を行う。図1は工作機械の斜視図であり、図2は工作機械の正面図であり、図3は工作機械の右側面図、図4は工具交換装置及びガイドレールを覆うカバー等を省略した斜視図である。図2は工作機械を前方から見た図である。
工作機械100は、基台20、Y方向移動装置22、X方向移動装置26、コラム28、Z方向移動装置30、主軸ヘッド32(加工部)、工具交換装置10(搬送部)等を備える。基台20は床面上に固定してある。基台20は、Y方向移動装置22、X方向移動装置26を介してコラム28をX方向(左右方向)及びY方向(前後方向)に移動可能に支持する。基台20は、加工対象であるワークを2軸まわりに駆動して保持するワーク保持装置120を支持する。コラム28は、Z方向移動装置30を介して主軸ヘッド32をZ方向(上下方向)に移動可能に支持する。工具交換装置10は、主軸ヘッド32に装着する工具を交換する。
Y方向移動装置22は、互いに平行な1対のガイドレール22a,22a、複数のブロック22b,22b,・・・,22b、Y方向移動台22c、及びY方向駆動モータ(図示略)を備える。ガイドレール22a,22aは、左右方向に適当な間隔を空けて基台20の上面に前後方向に延設してある。ブロック22b,22b,・・・,22bはガイドレール22a,22aの夫々に前後方向に移動可能に嵌合している。Y方向移動台22cはブロック22b,22b,・・・,22b上に固定してある。Y方向駆動モータの駆動によって、Y方向移動台22cは前後方向に移動する。
X方向移動装置26は、互いに平行な1対のガイドレール26a,26a、複数のブロック26b,26b,・・・,26b、コラム台26c、及びX方向駆動モータ(図示略)を備える。ガイドレール26a,26aは前後方向に適当な間隔を空けて、Y方向移動台22cの上面に左右方向に延設してある。ブロック26b,26b,・・・,26bはガイドレール26a,26aの夫々に左右方向に移動可能に嵌合している。コラム台26cはブロック26b,26b,・・・,26b上に固定してある。X方向駆動モータの駆動によって、コラム28は左右方向に移動する。
コラム28は、コラム台26c上に固定してある。コラム28は、Y方向移動装置22及びX方向移動装置26によってY方向及びX方向に移動する。
Z方向移動装置30は、互いに平行な1対のガイドレール30a,30a、複数のブロック30b,30b,・・・,30b、主軸ヘッド台30c及びZ方向駆動モータ(図示略)を備える。ガイドレール30a,30aは、左右方向に適当な間隔を空けてコラム28の前面に上下方向に延設してある。複数のブロック30b,30b,・・・,30bはガイドレール30a,30aの夫々に上下方向に移動可能に嵌合している。主軸ヘッド台30cはブロック30b,30b,・・・,30bの前面に固定してある。Z方向駆動モータの駆動によって、主軸ヘッド台30cは上下方向に移動する。
主軸ヘッド32は主軸ヘッド台30cに固定してある。X方向駆動モータ、Y方向駆動モータ、及びZ方向駆動モータを駆動制御することで、主軸ヘッド32は前後、左右及び上下に移動する。
図5は主軸ヘッド32を略示する部分断面図である。
図5に示すように、主軸ヘッド32は、前方側の内部にZ方向に延びる主軸34を回転可能に保持している。主軸34は、下端部に工具を装着した円筒状の工具ホルダ11を脱着可能に保持する。主軸34は、中空の筒形状をなし、下端部に下方に向かって内径が大きくなるテーパ穴34aが形成してある。工具ホルダ11の上部に形成したテーパ装着部12は、テーパ穴34aに嵌合させて装着する。
主軸34には、テーパ穴34aの上方にドローバー(不図示)が主軸34の軸方向に移動可能に挿入してある。ドローバーは、周囲にクランプバネ(不図示)を配設している。ドローバーは、クランプバネの弾性力によって上方に付勢されている。ドローバーの下端部には、コレットチャック(不図示)が設けられている。コレットチャックは、工具ホルダ11のテーパ装着部12を主軸34のテーパ穴34aに装着すると、テーパ装着部12から上方に突出するプルスタッド12aを挟持することができる。コレットチャックは、クランプバネの弾性力によるドローバーの上方への付勢によりプルスタッド12aを挟持した状態で保持する。
ドローバーの上方には、ドローバーを下方に押圧する押圧機構(不図示)が設けられている。押圧機構は、ドローバーをクランプバネの弾性力に抗して下方に押し下げる。ドローバーを下方に押し下げることで、コレットチャックはプルスタッド12aの挟持を解除する。コレットチャックがプルスタッド12aの挟持を解除することで、工具ホルダ11は主軸34から外れる。
主軸34は、主軸ヘッド32の上端に設けた主軸モータ35に接続されている。主軸34は、主軸モータ35の駆動により軸心回りに回転する。主軸34は、下端に工具ホルダ11を装着した状態で軸心回りに回転することで、ワーク保持装置120に固定されたワークに対して回転加工を行うことができる。
図6はレール部を略示する斜視図、図7はレール部を移動する工具マガジンを略示する斜視図である。
工具交換装置10は、工具マガジン40及びマガジン駆動部50を備える(図6参照)。工具交換装置10は複数の工具ホルダ11を搬送し、主軸34の下端部に工具ホルダ11を着脱する。工具マガジン40は、レール部41及びチェーン部42を備える。レール部41は、支持梁41a,41a、レール台41b、及びレール41cを備える。支持梁41a,41aは、上側を斜辺として前方へ下方傾斜した三角形状をなす板状の構造部材であり、コラム28の左右に片持ちに固定してある。支持梁41a,41aは、コラム28の左右に固定した部分から主軸ヘッド32の両側部分まで前方へ下方傾斜して延設してある。
レール台41bは、下端部を切り欠いた長円形の環状部材であり、コラム28及び主軸ヘッド32を囲むように支持梁41a,41aに固定して設けてある。レール台41bは、支持梁41a,41aの上側端面に沿って、前面側下方から後面側上方へ延設してあり、水平面から略30度傾斜するように配してある(図3参照)。図6に示すように、レール台41bにおける後方の半円状の部分には、板状の取付台41eが該半円状の周縁から延設してある。取付台41eは、マガジン駆動部50を支持する。
レール41cは、略矩形状の断面を有し、レール台41b上に長円形で無端状の軌道をなすように形成してある。レール41の下端部において、レール41cからレール台41bの切り欠いた部分に張り出した位置決め板41gが設けてある。該位置決め板41gの上面には、後述する球体45dが嵌合する半球状の位置決め凹部41f(被係合部、凹部)が設けてある。レール41cの外側にはレール41cの全周に沿って外周縁部41hが設けてある。外周縁部41hの下端部上面には半球状の位置決め凹部41fが設けてある。両位置決め凹部41f、41fは、レール41cを挟んで互いに対向している。なおレール41の下端部は、工具を交換する交換位置に位置している。
図8は移動台を略示する斜視図、図9は下方から見た移動台を略示する斜視図、図10はプランジャ、内側ローラ及び把持アームを示す部分断面図、図11はレール部41の断面図、図12は交換位置における把持アームの位置決めを説明する説明図である。図11に示すように、レール41cは、長円形の軌道の内周側面及び外周側面に夫々、長円形をなす鍔状の嵌合部41d,41dを有する。該嵌合部41d,41dは、後述する内側ローラ47及び外側ローラ48のV溝に嵌合する。チェーン部42は、複数の移動台43,43,・・・、43、複数のリンク部材44,44,・・・、44(図7参照)、及び複数の把持アーム70,70,・・・、70を備える。複数の移動台43,43,・・・、43は、図6及び図7に示すように、夫々レール41cによって支持され、レール41cによる軌道上を移動可能としてある。
全移動台43,43,・・・、43において、隣接する一対の移動台43,43が連結部材49cによって連結されている。リンク部材44,44,・・・、44は、隣り合う移動台43の各対を連結する。移動台43,43,・・・及びリンク部材44,44,・・・は、無端状のチェーンを形成する。複数の把持アーム70,70,・・・、70は、夫々移動台43,43,・・・、43の下部に連結してあり、工具ホルダ11を把持する。工具マガジン40は、移動台43,43,・・・、43をレール41cの軌道に沿って循環し、把持アーム70が保持する工具ホルダ11を主軸34下方の交換位置に割り出す。レール台41bが水平面から略30度傾斜して配置してあるため、工具マガジン40の軸心方向は、鉛直線(図3参照)に対して主軸ヘッド32側に略30度傾斜している。
移動台43は、基板46、内側ローラ47,47、外側ローラ48,48、及び複数のピン49,49,・・・、49を備える。基板46は、略矩形状である。図9に示すように、基板46の下面に内側ローラ47,47及び外側ローラ48,48は夫々下面法線方向の軸まわりに回転可能に軸支されている。内側ローラ47,47は、レール部41の内側に配置されており、レール部41の軌道に沿って並設されている。外側ローラ48,48は、レール部41の外側に配置されており、レール部41の軌道に沿って並設されている。内側ローラ47,47の間及び外側ローラ48,48の間には、レール部41に向けて突出しており、位置決め凹部41fに嵌合するプランジャ45、45(位置決め部)が夫々設けてある。
図10に示すように、プランジャ45は基板46から下方(レール41c側)に突出した収容円筒45a(筒体)を備える。該収容円筒45aは、下端部を開口とした有底円筒形をなし、付勢ばね45b(弾性部)、球体保持筒45c及び球体45d(転動体)を収容している。付勢ばね45bは上下方向に平行な圧縮コイルばねであり、収容円筒45aの内奥(上端部)に設けてある。球体保持筒45cは、上下方向に平行な有底円筒部450aと、該有底円筒部450aの底部から有底円筒部450aの開口と反対側に突出しており、付勢ばね45bに挿入される挿入部450bとを有する。挿入部450bは有底円筒部450aに同軸的に配置された円柱形をなす。挿入部450bの直径は、付勢ばね45bの内径と同じか又はそれよりも小さい。挿入部450bの軸方向寸法(上下寸法)は、付勢ばね45bの軸方向寸法(上下寸法)の半分以下である。
収容円筒45aの開口部分の内側に、球体保持筒45cの上下方向への移動を円滑にする滑りガイド筒45eが嵌合している。滑りガイド筒45eは円筒形であり、有底円筒部450aの外径は滑りガイド筒45eの内径と略同じである。球体保持筒45cは、挿入部450bが付勢ばね45bの一端部に挿入されるように、滑りガイド筒45e内に収容してある。有底円筒部450aの開口は下方に向く。
付勢ばね45bは、その一端部を挿入部450bの外周面に周設してあり、有底円筒部450aの底面と収容円筒45aの底面との間に挟まれている。有底円筒部450aの開口部分は、上下方向において収容円筒45aの開口部分と略同じ位置にある。有底円筒部450a内には球体45dが転動可能に収容されており、球体45dの略半分が有底円筒部450a内に位置する。球体45dの残余部分は収容円筒45aの開口から突出しており、レール台41b、位置決め板41g及び外周縁部41hに接触している。付勢ばね45bが圧縮した場合、球体45d及び球体保持筒45cは収容円筒45aの内奥側(上側)に移動する。付勢ばね45dが伸張した場合、球体45d及び球体保持筒45cは収容円筒45aの開口側(下側)に移動する。なお付勢ばね45bが最も圧縮された場合でも、挿入部450bが収容円筒45aの底面に接触しないように、挿入部450b及び付勢ばね45bを設計してある。
図12Aの矢印にて示すように、把持アーム70を交換位置(レール台41bにおける前方下端部)に搬送している場合、球体45d、45dはレール台41b、位置決め板41g及び外周縁部41hの上面に転動接触し、搬送台43は交換位置(位置決め凹部41f)に向けて移動する。図12Bに示すように、搬送台43が交換位置に至った場合、球体45d、45dは位置決め凹部41f、41fに嵌合し、上下、左右及び前後方向において把持アーム70は位置決めされる。
前記内側ローラ47,47及び外側ローラ48,48は、円板形をなし、外周にV溝を有する。図11に示すように、内側ローラ47,47は、レール41cの内周側面に設けた嵌合部41dにV溝により嵌合し、外側ローラ48,48は、レール41cの外周側面に設けた嵌合部41dにV溝により嵌合する。3個のピン49,49,49が、基板46の上面に立設している。一対の移動台43、43上の6個のピン49,49,・・・、49は、レール41cの軌道における半円状の部分に移動台43が位置するときに、該半円と同心の円周上に並ぶように配置してある。複数のピン49,49,・・・、49は後述のギア51に噛合する。
リンク部材44,44,・・・、44は、隣り合う対の移動台43、43を連結している。図に示すように、一対の移動台43、43に並べた6個のピン49,49,・・・、49の両端から2番目のピン上(移動台43における中央のピン上)に連結軸体49b,49bを設けてある。リンク部材44,44,・・・は、連結軸体49b,49bを介して対の移動台43、43を連結している。把持アーム70,70,・・・、70は、移動台43,43,・・・43の下部に1台ずつ取り付けてある。後述するように、把持アーム70は工具ホルダ11を把持する下部先端が揺動することにより工具を交換する。把持アーム70,70,・・・、70の詳細については後述する。
図7に示すように、マガジン駆動部50は、ギア51及びマガジン駆動モータ52を備え、コラム28の後方に位置する取付台41eに設けてある。ギア51は、例えばトロコイド形状の歯面を有する外歯車であり、取付台41eの上面に回転可能に設けてある。ギア51は取付台41eの上面と略平行である。ギア51は、レール41cの軌道における半円状の部分で、レール41c上を周回する移動台43上のピン49,49,・・・、49に噛合する。ギア51は、ギア径をレール41cの軌道における半円部分の直径より小さく(例えば半分程度と)してある。ギア51は、ギア径を小さくすることにより、工具マガジン40の後方へのオーバーハングを抑え、かつコラム28に機械的に干渉しないようにしている。
マガジン駆動モータ52は、モータ回転軸がギア51の軸に連結してあり、ギア51を回転駆動する。ギア51は、回転することにより移動台43上のピン49,49,・・・、49をレール41cの円周接線方向に押す。移動台43は、ギア51の回転によりレール41c上を周回する。マガジン駆動モータ52は、ギア51を回転させることにより、移動台43を搬送する。工具を交換する場合、工具マガジン40によって所定の把持アーム70が主軸34の下方の交換位置(レール台41bにおける前方下端部)に搬送される。
把持アーム70は後述するカム機構60によって揺動し、工具ホルダ11を交換するようにしてある。工具ホルダ11には工具が取り付けてある。図13は、カム機構60、把持アーム70及び位置決め機構を略示する斜視図、図14は、カム機構60を略示する拡大斜視図である。図13及び図14の図面中に矢印で示す前後、左右及び上下は図1に対応している。
図13に示すように、主軸ヘッド32の前側面にカム機構60が設けてある。図14に示すように、カム機構60は接近カム61及び離反カム62を備える。接近カム61及び離反カム62は、主軸34の前面から突出した上下方向に長い板状をなし、接近カム61離反カム62の順に左から右に並設されている。接近カム61は、下端よりもやや上側の位置を頂点61aとして上方に向かうに従って突出幅(前後幅)が縮幅する。接近カム61の頂点よりも下側は、下方に向かうに従って突出幅(前後幅)が縮幅する。接近カム61は、上端から下方に向けてテーパ状に高さを増し、頂点61aに連なるカム面61bを有する。
離反カム62は、上下方向中央部よりも若干上側の部分を平坦な頂部62aとして、下方に向かうに従って突出幅(前後幅)が縮幅する。離反カム62の頂部62aよりも上側は、上方に向かうに従って突出幅が縮幅する。離反カム62は、下端から上方に向けてテーパ状に高さを増し、平坦な頂部62aに連なるカム面62bを有する。
接近カム61の上端部は離反カム62よりも上方に位置し、離反カム62の下端部は接近カム61の下端部よりも下方に位置する。離反カム62の平坦な頂部62aと接近カム61の頂点61aとは上下方向に離隔しており、両者の前後位置は略同じである。上下方向に対するカム面61bの傾斜角とカム面62bの傾斜角とは略同じであり、互いに逆向きである。接近カム61及び離反カム62は、後述する第1カムフォロワ71及び第2カムフォロワ72に当接する。
図15は、把持アーム70を略示する斜視図である。
図15に示すように、把持アーム70は、前述した移動台43に取り付ける取付板73を備える。取付板73には支持杆74が設けてあり、該支持杆74は取付板73から下方に突出している。
支持杆74の下端部にはブロック74bが設けてある。該ブロック74bの両側面に、後述するアーム部76の揺動を案内する案内板75、75が夫々固定してある。案内板75、75は互いに対向している。側面視において、案内板75は、上端部を要として下方に広がる扇状をなす。案内板75の上端部には、後述するアーム枢軸77を挿入するアーム軸孔75aが設けてある。なお前記位置決めピン74aは、アーム軸孔75aの軸方向及び上下方向に対して直交する方向に沿って支持杆74を貫通し、支持杆74から突出している。
把持アーム70は両案内板75、75の間に、上下に延びており、下側に突出するように湾曲した円弧状のアーム部76が設けてある。アーム部76の上端部にはアーム枢軸77が設けてあり、該アーム枢軸77の両端部は、アーム部76の上端部両側から突出している。アーム枢軸77の両端部には周方向に沿ってテーパ77a、77aが形成してある。アーム枢軸77の両端部は、各案内板75、75のアーム軸孔75a、75aに揺動可能に挿入してある。アーム部76の下端部は二股に分かれている。二股に分かれた下端部の各先端部に把持ピンユニット79、79を保持する保持円筒78、78が形成してある。保持円筒78は、前記アーム枢軸77と同方向を軸方向としている。なお把持アーム70は、アーム枢軸77がレール41cの軌道に沿うように、移動台43に取り付けてある。
図8及び図15に示すように、把持ピンユニット79は、有底円筒形のホルダ79aと、該ホルダ79aに収容されたピン79bとを有する。ピン79bの先端部はホルダ79aから突出しており、ホルダ79a内のばね(不図示)によって突出方向に付勢されている。ピン79bの先端面は、外向きに突出した曲面状をなす。両ピン79b、79bの先端面が互いに対向するように、把持ピンユニット79、79は夫々保持円筒78、78に嵌合している。両ピン79b、79bは工具ホルダ11(工具)を脱着するようにしてある。円筒状をなす工具ホルダ11のテーパ装着部12の下側に溝11aが全周に形成してある。両ピン79b、79bの間に工具ホルダ11を挿入した場合、両ピン79b、79bは溝11aに嵌合し、工具ホルダ11を保持する。
アーム枢軸77の上側に前記接近カム61に当接する第1カムフォロワ71が設けてある。第1カムフォロワ71は上方に突出している。第1カムフォロワ71は円形のローラであり、アーム枢軸77と平行な軸回りに回転する。前記アーム部76の中途部に、前記離反カム62に当接する第2カムフォロワ72が設けてある。第2カムフォロワ72は円形のローラであり、アーム枢軸77と平行な軸回りに回転する。
図16は交換位置に位置しており、工具ホルダ11を把持した把持アーム70を略示する右側面図、図17は工具ホルダ11を把持した把持アーム70を略示する背面図、図18は図16におけるXVIII−XVIII線にて切断した案内板75の断面図、図19は図16におけるXIX−XIX線にて切断したアーム部76の断面図、図20は交換位置に位置しており、工具ホルダ11を把持していない把持アーム70を略示する右側面図である。なお図17は後方から把持アーム70を見た図である。
図16及び図18に示すように、案内板75におけるアーム部76側の面(図16において紙面裏側から視認される面)の下部に、第1凹部751及び第2凹部752が前後に離隔して設けてある。第1凹部751は案内板75の後端部に位置し、第2凹部752は案内板75の前端部に位置する。アーム枢軸77及び第1凹部751間の距離とアーム枢軸77及び第2凹部752間の距離は等しい。案内板75において、第1凹部751及び第2凹部752の間には両者に連なる平滑な平坦面753が形成されている。該平坦面753は、アーム枢軸77及び第1凹部751間の距離を曲率半径とした円弧に沿って形成されている。第1凹部751、第2凹部752及び平坦面753は、アーム枢軸77を曲率中心とした同一円弧上に位置する。
図18に示すように、第1凹部751は半球状をなし、第2凹部752よりも深く形成されている。第1凹部751の曲率は、後述する球体763の曲率と同じである。第2凹部752は、小径の曲率半径にて形成された半球状をなす球面部752aと、該球面部752aの縁部分に連なり、該縁部分に沿って形成された曲面部752bとを有する。球面部752aは球体763の曲率と同じである。曲面部752bは外向き(前後方向)に突出するように湾曲しており、球面部752aよりも大径の曲率半径を有する。
図17に示すように、アーム部76の中途部の左右側面は案内板75、75に夫々対向している。該左右側面は、案内板75,75に向けて突出した突出部76aを有する。突出部76a及びアーム枢軸77間の距離は、アーム枢軸77及び第1凹部751間の距離に等しい。
図19に示すように、突出部76aには、アーム枢軸77の軸方向と平行な方向(左右方向)に窪んだ収容凹部760が形成されている。収容凹部760は、付勢ばね761、球体保持筒762及び球体763を収容する。
付勢ばね761は左右方向に平行な圧縮コイルばねであり、収容凹部760の内奥に設けてある。球体保持筒762は、左右方向に平行な有底円筒部762aと、該有底円筒部762aの底部から有底円筒部762aの開口と反対側に突出しており、付勢ばね761に挿入される挿入部762bとを有する。挿入部762bは、有底円筒部762aと同軸的に配置された円柱形をなす。挿入部762bの直径は、付勢ばね761の内径と同じか又はそれよりも小さい。挿入部762bの軸方向寸法(左右寸法)は、付勢ばね761の軸方向寸法(左右寸法)の半分以下である。
収容凹部760の開口部分の内側に、球体保持筒762の左右方向への移動を円滑にする滑りガイド筒764が嵌合している。滑りガイド筒764は円筒形であり、有底円筒部762aの外径は滑りガイド筒764の内径と略同じである。球体保持筒762は、挿入部762bが付勢ばね761の一端部に挿入されるように、滑りガイド筒764内に収容してある。
付勢ばね761は、その一端部を挿入部762bの外周面に周設してあり、有底円筒部762aの底面と収容凹部760の底面との間に挟まれている。有底円筒部762aの開口部分は、左右方向において収容凹部760の開口部分と略同じ位置にある。有底円筒部762a内には球体763が転動可能に収容されており、球体763の略半分が有底円筒部762a内に位置する。球体763の残余部分は収容凹部760の開口(突出部76a)から突出しており、案内板75に接触している。付勢ばね761が圧縮した場合、球体763及び球体保持筒762は収容凹部760の内奥側に移動する。付勢ばね761が伸張した場合、球体763及び球体保持筒762は収容凹部760の開口側に移動する。なお付勢ばね761が最も圧縮された場合でも、挿入部762bが収容凹部760の底面に接触しないように、挿入部762b及び付勢ばね761を設計してある。球体763に代えて他の転動体(例えばローラ)を使用してもよい。
前述したように、案内板75はブロック74bに固定してあり、取付板73を介して移動台43に固定されている。アーム部76は案内板75、75の間をアーム枢軸77を中心にして揺動する。また突出部76a(収容凹部760)及びアーム枢軸77間の距離は、アーム枢軸77及び第1凹部751間の距離に等しく、第1凹部751、第2凹部752及び平坦面753は、アーム枢軸77を曲率中心とした同一円弧上に位置する。そのためアーム部76がアーム枢軸77を揺動中心にして軸回りに揺動した場合、球体763は第1凹部751、第2凹部752又は平坦面753に対向接触し、転動する。付勢ばね761によって、球体763は第1凹部751、第2凹部752及び平坦面753に常時押圧されており、アーム部76の揺動途中に収容凹部760から脱落することはない。
図16、図18及び図19に示すように、把持アーム70が工具ホルダ11を把持している場合、各球体763、763は第1凹部751、751に嵌合している。球体763が第1凹部751に嵌合している場合、工具マガジン40の回転によって把持アーム70が移動しても、球体763は第1凹部751から外れず、把持アーム70は姿勢を維持することができる。
図18及び図20に示すように、把持アーム70が工具ホルダ11を把持しておらず、交換位置にて待機している場合、各球体763、763は第2凹部752、752に嵌合している。把持アーム70は交換位置にて姿勢を維持することができる。
後述するように、図20に示した姿勢において、把持アーム70の第1カムフォロワ71に、接近カム61のカム面が当接した場合、該カム面から接近カム61に作用する力によって、アーム枢軸77を揺動中心にして反時計回りに揺動し、球体763は第2凹部752から容易に抜け出る。第2凹部752から抜け出た球体763は平坦面753上を転動し、第1凹部751側に移動する。図18に示すように、第2凹部752は第1凹部751よりも浅く、また曲面部752bは球面部752aよりも傾斜が緩いので、第1凹部751に比べて、球体763は第2凹部752から容易に抜け出すことができる。なお図20に示した把持アーム70は後述する図21に示す把持アーム70に対応する。
図16に示した姿勢において、把持アーム70の第2カムフォロワ72に、離反カム62のカム面が当接した場合、該カム面から離反カム62に作用する力によって、アーム枢軸77を揺動中心にして時計回りに揺動し、球体763は第1凹部751から抜け出る。第1凹部751から抜け出た球体763は平坦面753上を転動し、第2凹部752側に移動する。なお図16に示した把持アーム70は後述する図24に示す把持アーム70に対応する。
図21、図22、図23及び図24は、主軸ヘッド32が上昇している場合におけるカム機構60、把持アーム70を略示する右側面図、図25〜図27は、主軸ヘッド32が下降している場合におけるカム機構60、把持アーム70を略示する右側面図である。
図21に示すように、ワークの加工を終了した時点で、主軸34には工具ホルダ11が装着してある。工具ホルダ11には工具が取り付けてある。このとき一の把持アーム70が交換位置にて待機している。図12Bに示すように、待機している把持アーム70の球体45d、45dは位置決め凹部41f、41fに嵌合し、上下、左右及び前後方向において該把持アーム70は位置決めされている。把持アーム70は、工具ホルダ11を把持していない。アーム部76は、保持円筒78、78を下方に向けてアーム枢軸77を支点にしてぶら下がっている。アーム部76は、アーム枢軸77を揺動中心にして前後方向に揺動可能である。
第1カムフォロワ71及び第2カムフォロワ72は、接近カム61及び離反カム62に当接していない。第1カムフォロワ71は、カム面61bに対向するように、アーム枢軸77から後方斜め上方向に突出している。第2カムフォロワ72後端の前後位置は平坦な頂部62aと略同じである。
なお前述したように、各球体763、763は第2凹部752、752に嵌合しており(図18参照)、把持アーム70は、保持円筒78、78を下方に向けてアーム枢軸77を支点にしてぶら下がった姿勢を交換位置にて維持する。
図21の矢印にて示すように、加工を終了した主軸ヘッド32は加工位置から交換位置に向けて上昇する。図22に示すように、第1カムフォロワ71は接近カム61のカム面61b上に位置する。第2カムフォロワ72は離反カム62のカム面62b上に位置する。
図22及び図23の矢印にて示すように、工具ホルダ11(工具)を装着した主軸ヘッド32が更に上昇し、第1カムフォロワ71は接近カム61のカム面61b上を下方に移動する。カム面61bは上端から下方に向けてテーパ状に高さを増すので、接近カム61から第1カムフォロワ71に前方への力が作用し、アーム枢軸77を揺動中心にして把持アーム70が反時計回りに揺動する。このとき前述したように各球体763、763は第2凹部752、752から抜け出て、平坦面753上を転動し、第1凹部751側に移動する。把持ピンユニット79が工具ホルダ11に接近する。把持ピンユニット79のピン79bは工具ホルダ11の溝に嵌合する。把持アーム70は工具ホルダ11を把持する。前述したように、球体45d、45dは位置決め凹部41f、41fに嵌合し、上下、左右及び前後方向において該把持アーム70は位置決めされているので、把持アーム70と工具ホルダ11との位置は整合し、把持アーム70は工具ホルダ11を確実に把持することができる。第2カムフォロワ72はカム面62b上を移動する。カム面62bは下方に向けてテーパ状に低くなるので、離反カム62から第2カムフォロワ72に前方への力は作用しない。
図24の矢印にて示すように、把持アーム70が工具ホルダ11を把持した後、主軸ヘッド32は更に上昇し、工具ホルダ11は主軸34から離脱する。第1カムフォロワ71及び第2カムフォロワ72は接近カム61及び離反カム62から離れる。前述したように各球体763、763は第1凹部751、751に嵌合する(図16及び図18参照)。工具マガジン40が回転し、他の工具ホルダ11を把持した把持アーム70が交換位置に搬送される。図12Aの矢印にて示すように、球体45d、45dはレール台41b、位置決め板41g及び外周縁部41hの上面に転動接触し、搬送台43は交換位置(位置決め凹部41f)に向けて移動する。図12Bに示すように、球体45d、45dは位置決め凹部41f、41fに嵌合し、上下、左右及び前後方向において把持アーム70は位置決めされる。なお工具マガジン40の回転によって把持アーム70が移動しても、球体763は第1凹部751から外れず、把持アーム70は姿勢を維持することができる。
図25の矢印にて示すように、他の工具ホルダ11を把持した把持アーム70が交換位置に搬送された後、主軸ヘッド32は下降を開始する。
図26に示すように、第1カムフォロワ71は頂点61aに当接し、把持アーム70に把持された工具ホルダ11は主軸34に装着される。前述したように、球体45d、45dは位置決め凹部41f、41fに嵌合し、上下、左右及び前後方向において該把持アーム70は位置決めされているので、工具ホルダ11と主軸34との位置は整合し、主軸34に工具ホルダ11を確実に装着することができる。第2カムフォロワ72が離反カム62の下端部に当接する。
図27に示すように、主軸ヘッド32は更に下降し、第1カムフォロワ71はカム面61bに当接する。第2カムフォロワ72は、主軸ヘッド32の下降に伴い、離反カム62のカム面62b上を上方に移動する。カム面62bは、下端から上方に向けてテーパ状に高さを増す。そのため離反カム62から第2カムフォロワ72に前方への力が作用する。図27の矢印にて示すように、アーム枢軸77を揺動中心にして把持アーム70が時計回りに揺動する。把持ピンユニット79は工具ホルダ11から離脱する。このとき前述したように各球体763、763は第1凹部751、751から抜け出て、平坦面753上を転動し、第2凹部752側に移動する。
第1カムフォロワ71はカム面61b上を上方に移動する。カム面61bは上方に向けてテーパ状に低くなるので、接近カム61から第1カムフォロワ71に前方への力は作用しない。
主軸ヘッド32は工具ホルダ11を装着した状態で更に下降し、加工位置に向けて移動する。把持アーム70は更に時計回りに揺動し、主軸ヘッド32から離反するので、主軸ヘッド32に干渉しない。第1カムフォロワ71及び第2カムフォロワ72は、接近カム61及び離反カム62から離れる。各球体763、763は第2凹部752、752に嵌合し、把持アーム70の姿勢は図21に示す姿勢となる。
実施の形態に係る工作機械100は、工具を把持する把持アーム70の上端部にレール41cに向けて突出したプランジャ45を設け、工具を交換する交換位置において位置決め板41g及び外周縁部41hにプランジャ45が係合する位置決め凹部41fを設けている。そのため所望の工具を把持する把持アームを交換位置に搬送した場合、プランジャ45は位置決め凹部41fに係合し、把持アーム70(工具)の位置決めがなされる。搬送終了時に位置決めがなされており、主軸34への工具装着前に位置決めは終了しているので、工具は主軸34に確実に装着され、主軸34から脱落することを防止することができる。またワークの加工中に工具又は主軸34が破損することを防止することができる。また付勢ばね45bによって付勢された球体45dがレール41cに沿って、レール台41b、位置決め板41g及び外周縁部41h上を転動して移動し、交換位置にて位置決め凹部41fに嵌合するので、把持アーム70の移動及び位置決めを円滑に実現することができる。
なおプランジャ45をレール41cの側面又は下面に対向するように設け、位置決め凹部41fをこれに対応するように形成してもよい。また移動台43、43の対を一体化し、単一の移動体43に二つの把持アーム70、70を固定してもよい。この場合、単一の移動体43に、各把持アーム70、70に対応するように、プランジャ45、45が夫々設けられる。プランジャ45は球体45dを備えるが、球体45dに代えて摺動可能なピンを備えてもよい。この場合、ピンはレール台41b、位置決め板41g及び外周縁部41h上を摺動して移動し、交換位置にて位置決め凹部41fに嵌合する。また球体45dに代えて他の転動体(例えばローラ)を使用してもよい。
以上説明した実施の形態は本発明の例示であり、本発明は特許請求の範囲に記載された事項及び特許請求の範囲の記載に基づいて定められる範囲内において種々変更した形態で実施することができる。