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JP5772088B2 - パワーモジュール用基板の製造方法及びパワーモジュール用基板 - Google Patents

パワーモジュール用基板の製造方法及びパワーモジュール用基板 Download PDF

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Description

本発明は、大電流、高電圧を制御する半導体装置に用いられるパワーモジュール用基板の製造方法及びパワーモジュール用基板に関する。
半導体素子の中でも電力供給のためのパワー素子は発熱量が比較的高いため、これを搭載する基板としては、例えば特許文献1に示すように、AlN(窒化アルミ)からなるセラミックス基板上に、回路層となるAl(アルミニウム)の金属板がAl−Si系のろう材を介して接合されたパワーモジュール用基板が広く用いられている。
また、例えば特許文献2〜4に示すように、セラミックス基板の上にアルミニウム合金部材を溶湯接合法によって接合して回路層を形成したパワーモジュール用基板が提案されている。
このようなパワーモジュール用基板においては、使用時に熱サイクルの負荷を受けると、セラミックス基板とアルミニウムとの熱膨張係数の差による応力がセラミックス基板と回路層との接合界面に作用し、接合信頼性が低下するおそれがある。そこで、従来は、純度が99.99%以上のアルミニウム等の比較的変形抵抗の小さなアルミニウムで回路層を構成して熱応力を回路層の変形によって吸収することで、接合信頼性の向上を図っている。
特開2005−328087号公報 特開2002−329814号公報 特開2005−252136号公報 特開2007−092150号公報
ところで、回路層を純度が99.99%以上等の比較的変形抵抗の小さなアルミニウムで構成した場合、熱サイクルの負荷を受けた際に、回路層の表面にうねりやシワが発生してしまうといった問題があった。このように回路層の表面にうねりやシワが発生すると、はんだ層にクラックが発生してしまうため、パワーモジュールの信頼性が低下することになる。
特に、最近では、パワーモジュールの小型化・薄肉化が進められるとともに、その使用環境も厳しくなってきており、半導体素子等の電子部品からの発熱量が大きくなっているため、熱サイクルの温度差が大きく、回路層の表面にうねりやシワが発生するおそれがある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、熱サイクル負荷を受けた際にも、回路層の表面にうねりやシワ等の塑性変形が発生することを抑制でき、かつ、セラミックス基板と回路層との接合界面に熱応力が作用することを抑制でき、その接合信頼性を向上させたパワーモジュール用基板の製造方法及びパワーモジュール用基板を提供する。
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法は、セラミックス基板の表面に回路層が接合されるとともに、前記セラミックス基板の裏面に純度99.0%以上の純アルミニウムからなる金属層が接合されてなり、前記金属層にヒートシンクが接合されるパワーモジュール用基板の製造方法であって、前記回路層として、電子部品搭載面を構成するアルミニウム純度が質量%で99.0%以上99.95%以下の第1層と、アルミニウム純度99.99%以上の第2層とを含む2以上の層を積層してなるクラッド材を用い、前記クラッド材の前記第2層を前記セラミックス基板に接合することを特徴とする。
パワーモジュール用基板におけるろう付け温度は例えば640〜650℃と高いので、回路層のアルミニウムとしては融点の高い純アルミニウムが用いられる。また、この回路層においては、セラミックス基板にろう付けされる第2層はアルミニウム純度が99.99%以上と極めて高純度であるため、ろう付け性が良く、セラミックス基板に強固に接合される。また、高純度のアルミニウムからなるので、変形抵抗が小さく、セラミックス基板との間の熱応力を変形によって吸収することができる。一方、電子部品搭載面を構成する第1層は、アルミニウム純度が比較的低いため、機械的強度、硬度が高く、電子部品搭載面の塑性変形を抑制して、電子部品とのはんだ接合部を健全に維持することができる。この第1層のアルミニウム純度が99.95質量%を超えると塑性変形抑制効果がなく、99.0質量%未満では、硬くなってクラッドすることが難しくなる。これら少なくとも2層のクラッド材によって回路層を形成したことにより、回路層の厚肉化に対応することが可能になる。
本発明のパワーモジュール用基板の製造方法において、前記第1層は100μm以上400μm以下の厚さを有するとよい。
この第1層の電子部品搭載面に生じる塑性変形は、深さ100μmの範囲内に蓄積されるので、第1層の厚さが100μm以上であれば、この塑性変形を抑制することができる。第1層の厚さが400μmを超えるのは電子部品搭載面の塑性変形を抑制する効果には無駄であり、回路層全体の厚肉化を招くので好ましくない。
前記第1層がJIS規格品の1000番台のアルミニウムであるとよい。
電子部品がはんだ付けにより搭載された後、そのはんだ接合面に、AlFeなどのAl−Fe系の析出物、Al−Si−Fe系析出物が析出し、これら析出物がはんだ接合面を硬くして、その変形抑制効果を高めることができる
そして、本発明のパワーモジュール用基板は、上記の製造方法によって製造されたものであり、パワーモジュールは、そのパワーモジュール用基板の回路層の前記第1層の回路搭載面に電子回路がはんだ付けにより接合されていることを特徴とする。
本発明によれば、クラッド材からなる回路層のうち、アルミニウム純度が99.99%以上と極めて高い第2層によりセラミックス基板とのろう付けによる接合性を高め、アルミニウム純度が99.0%以上99.95%以下の第1層により、電子回路面の塑性変形を抑制して、電子部品とのはんだ接合部の接合信頼性を高めており、回路層の厚肉化に対応可能で、高出力のパワーモジュールを得ることができる。
本発明の実施形態の製造方法が適用されるパワーモジュールの全体構成を示す縦断面図である。
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係るパワーモジュール用基板を用いたパワーモジュールを示している。この図1に示されるパワーモジュール1は、セラミックス等からなるセラミックス基板2を有するパワーモジュール用基板3と、パワーモジュール用基板3の表面に搭載された半導体チップ等の電子部品4と、パワーモジュール用基板3の裏面に接合されたヒートシンク5とから構成されている。
パワーモジュール用基板3は、セラミックス基板2の表面側に回路層7がろう付けにより積層されるとともに、裏面側に放熱のための熱伝達層となる金属層8がろう付けにより積層されており、セラミックス基板2と反対側の回路層7の表面が電子部品搭載面7aとされ、金属層8にヒートシンク5が取り付けられる構成である。
また、セラミックス基板2は、例えばAlN(窒化アルミニウム)、Si(窒化珪素)等の窒化物系セラミックス、若しくはAl(アルミナ)等の酸化物系セラミックスにより形成される。
回路層7は、アルミニウム純度の異なる第1層11と第2層12との2層のアルミニウムが予めクラッドされたクラッド材が用いられている。これら第1層11及び第2層12は、ろう付け前の組成で、第1層11がアルミニウム純度が質量%で99.0%以上99.95%以下とされ、第2層12がアルミニウム純度99.99%以上とされている。この場合、比較的アルミニウム純度の低い第1層11の不純物成分としては、質量%で、Siが0.01%〜1.0%、Feが0.01%〜1.0%、Cuが0.01%〜0.3%、Mnが0〜0.05%、Znが0〜0.1%、Tiが0〜0.05%の範囲で含まれる。これら不純物成分のうち、特に、Si、Fe及びCuを含有しているのが好ましい。
JIS規格品では、第1層11として1000番台のアルミニウム、第2層12としては1N99を用いることができる。
そして、この第1層11の表面が電子部品搭載面7aとされ、第2層12の表面(図の下面)がセラミックス基板3への接合面とされている。
一方、金属層8は、ろう付け前の組成でアルミニウム純度99.0%以上の純アルミニウムにより形成されている。
この場合、各層の厚さについて、個々の寸法は限定されるものではないが、セラミックス基板2の厚さは例えば635μm、金属層8の厚さは400μmとされ、回路層7の厚さが600μmとされる。この回路層7は、さらに第1層11が厚さ200μm、第2層12が厚さ400μmとされる。
また、これらセラミックス基板2、回路層7、金属層8の相互間は、Al−Si系、Al−Ge系、Al−Cu系、Al−Mg系またはAl−Mn系等のろう材によって接合されている。金属層8とヒートシンク5との間はSn−Ag−Cu系、Zn−Al系若しくはPb−Sn系等のはんだ材やAl−Si−Mg系、Al−Si系等のろう材によって接合され、あるいは、シリコングリースによって密着させた状態でねじによって機械的に固定される。図でははんだ付けした例を示しており、符号13ははんだ接合層を示す。
ヒートシンク6は、その形状等は特に限定されないが、アルミニウム合金の押し出し成形によって形成され、パワーモジュール用基板3に接合される筒体15と、筒体15の内部を複数の流路16に区画する縦壁17とが一体に形成された構成とされている。筒体15の天板部15aは、パワーモジュール用基板3の金属層8より大きい四角形状の平面形状を有しており、各縦壁17は、筒体15の幅方向に等間隔で相互に平行に並べられ、筒体15の長さ方向に沿って設けられている。
そして、回路層7の第1層11の電子部品搭載面7a上に、Sn−Ag−Cu系、Zn−Al系若しくはPb−Sn系等のはんだ材によって電子部品4が接合される。図中符号18がそのはんだ接合層を示す。また、電子部品4と回路層7の端子部との間は、アルミニウムからなるボンディングワイヤ(図示略)により接続される。
そして、このような構成のパワーモジュール用基板3を製造するには、セラミックス基板2の各面にろう材箔を介して回路層7及び金属層8を積層し、これら積層体を不活性ガス雰囲気、還元ガス雰囲気又は真空雰囲気において積層方向に加圧した状態で加熱し、ろう材箔を溶融させることによって回路層7及び金属層8をそれぞれセラミックス基板2に接合する。このうち、回路層7は、アルミニウム純度の異なる第1層11と第2層12とを予めクラッド圧延によって積層状態に形成したものが用いられる。また、これら回路層7及び金属層8は、プレス加工により所望の外形に打ち抜いたものをセラミックス基板2に接合するか、あるいは、平板状のものをセラミックス基板2に接合した後に、エッチング加工により所望の外形に形成するか、いずれの方法も採用することができる。
なお、これら回路層7及び金属層8とセラミックス基板2とのろう付け時には、640〜650℃、あるいはそれ以上の温度になるが、回路層7及び金属層8とも融点の高い純アルミニウム或いは高純度アルミニウムを使用しているので、高温での接合により、強固なパワーモジュール用基板3を得ることができる。
このようにして製造したパワーモジュール用基板3に、その金属層8にヒートシンク5がはんだ付けされるとともに、回路層7の上に電子部品4がはんだ付けされる。これらのはんだ付け作業は窒素と水素を混合した還元ガス雰囲気中で行われる。また、冷却後に、大気中で電子部品4と回路層7との間でワイヤボンディングされる。
この一連の工程によってパワーモジュール1が完成する。
このように構成されるパワーモジュール1においては、回路層7が比較的厚肉に形成されているので、電子部品4からの熱が速やかに回路層7に伝達して速やかに放熱することができ、電子部品4の高出力化に対応することが可能である。その場合に、回路層7とセラミックス基板2との間のろう付け接合部においては、回路層7のろう付け接合面がアルミニウム純度の極めて高い第2層12によって形成されているので、ろう付け性が良く、セラミックス基板2に強固に接合される。
この場合、ろう付け時に、回路層7の第2層12にろう材中に含まれるSi等の成分が拡散するが、その拡散層は200μmの深さの範囲に形成されるため、第2層12の厚さとしては少なくとも200μmあるとよい。200μmより薄いと、ろう材が回路層7の側面にしみ出すおそれがある。
また、セラミックス基板2と接合される第2層12が高純度(99.99%)のアルミニウムからなるので、変形抵抗が小さく、セラミックス基板との間の熱応力を変形によって吸収することができる。
一方、回路層7と電子部品4とのはんだ接合部においては、回路層7の電子部品搭載面7aがアルミニウム純度の比較的低い第1層11によって形成されており、その機械的強度、硬度が高いので、熱サイクル負荷が作用した際でもうねりやしわ等の塑性変形が生じにくく、電子部品搭載面7aの平坦性を長期的に安定して維持することができ、接合信頼性を大幅に高めることができる。この塑性変形抑制の効果を有効に発揮するために、第1層11のアルミニウム純度は99.90〜99.95質量%が好ましく、99.95質量%を超えると塑性変形抑制効果がなく、99.0質量%未満では、硬くなってクラッドすることが難しくなる。
また特に、第1層11を構成するアルミニウムの不純物成分として、SiやFeを含有している場合、Al−Fe系、あるいはAl−Si−Fe系の析出物が電子部品搭載面7aに析出し、これらの析出物によって電子部品搭載面7aが硬くなり(析出硬化)、その変形抑制効果をより高めることができる。Si及びFeの含有量は、0.01質量%未満では変形抑制効果がなく、1.0質量%を超えると硬くなってクラッドすることが難しくなる。
この第1層11の厚さとしては、電子部品搭載面7aの変形抑制効果を発揮させるために100μm以上とするのが望ましい。
前述したように、回路層7について、その第1層11は100μm以上、第2層12は200μm以上あればよいが、回路層7全体としては、その上に搭載される電子部品4からの熱を速やかに吸収して放熱する目的のものであり、その目的のためには、アルミニウムとしてはできるだけ高純度の方がよい。したがって、この回路層7を厚肉化する場合、第1層11として少なくとも100μm確保し、残りの厚さ分をアルミニウム純度の高い第2層12とするのが好ましい。回路層7の厚さを600μmにする場合、第1層11と第2層12との厚さ比率を第1層:第2層=1:5〜1:2にするとよい。
また、第1層11としては、アルミニウム純度99.0%以上99.95%以下とされるが、導電層としては、なるべくアルミニウム純度が高いもの(例えば99.90%以上)が好ましい。
本発明の製造方法による効果確認のために、回路層として、アルミニウム純度が99.0%の第1層とアルミニウム純度が99.99%の第2層とのクラッド材を用いたものと、アルミニウム純度が99.99%の単体層によるものとをセラミックス基板にそれぞれろう付けにより接合して、実施例のパワーモジュール用基板と比較例のパワーモジュール用基板とを作製した。回路層としては、実施例のものは第1層が100μm、第2層が500μmとし、比較例のものは600μmとした。これらパワーモジュール用基板の回路層における電子部品搭載面に電子部品として半導体チップをはんだ付けにより接合した後、熱サイクル試験を実施した。熱サイクル試験としては、−40℃から125℃の温度範囲で昇温と冷却とを3000サイクル繰り返した。
試験後、電子部品との接合部を断面観察した結果、実施例のものには特に異常は認められず、平坦な回路層(第1層)により均一にはんだ接合部が形成されていたが、比較例のものは、回路層の電子部品搭載面の一部に皺が認められたものがあった。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
1 パワーモジュール
2 セラミックス基板
3 パワーモジュール用基板
4 電子部品
5 ヒートシンク
7 回路層
7a 電子部品搭載面
8 放熱層
11 第1層
12 第2層
13 はんだ接合層
15 筒体
16 流路
17 縦壁
18 はんだ接合層

Claims (5)

  1. セラミックス基板の表面に回路層が接合されるとともに、前記セラミックス基板の裏面に純度99.0%以上の純アルミニウムからなる金属層が接合されてなり、前記金属層にヒートシンクが接合されるパワーモジュール用基板の製造方法であって、前記回路層として、電子部品搭載面を構成するアルミニウム純度が質量%で99.0%以上99.95%以下の第1層と、アルミニウム純度99.99%以上の第2層とを含む2以上の層を積層してなるクラッド材を用い、前記クラッド材の前記第2層を前記セラミックス基板に接合することを特徴とするパワーモジュール用基板の製造方法。
  2. 前記第1層は100μm以上400μm以下の厚さを有することを特徴とする請求項1記載のパワーモジュール基板の製造方法。
  3. 前記第1層がJIS規格品の1000番台のアルミニウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載のパワーモジュール用基板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のパワーモジュール用基板の製造方法によって製造されたパワーモジュール用基板。
  5. 請求項4記載のパワーモジュール用基板の前記回路層の第1層における前記電子部品搭載面に電子部品がはんだ付けにより接合されていることを特徴とするパワーモジュール。
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