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JP5768783B2 - 吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法 - Google Patents

吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法 Download PDF

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JP5768783B2 JP2012183232A JP2012183232A JP5768783B2 JP 5768783 B2 JP5768783 B2 JP 5768783B2 JP 2012183232 A JP2012183232 A JP 2012183232A JP 2012183232 A JP2012183232 A JP 2012183232A JP 5768783 B2 JP5768783 B2 JP 5768783B2
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Description

本発明は、吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法に関する。
吸着式ヒートポンプとして、特許文献1には、一対の吸着器と、凝縮器及び蒸発器を備えた構成が記載されている。
このような構成の吸着式ヒートポンプにおいて、吸着器における吸着時と脱着時の温度差が大きいと、顕熱ロス(実際のエネルギー交換に利用できない熱量)が大きくなる。実際の吸着式ヒートポンプでは、より効率的に冷熱を得ることが望まれる。
また、特許文献1に記載の吸着式ヒートポンプでは、吸着器における脱着工程の終了タイミングと吸着工程の終了タイミングとがそれぞれ別個に決定されるが、冷熱の生成をより連続的に行えるようにすることが望まれる。
特開2010−151386号公報
本発明は上記事実を考慮し、効率的で、且つ連続的な冷熱生成が可能な吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法を得ることを課題とする。
請求項1に記載の発明では、熱媒を蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器と接続され前記熱媒を吸着すると共に、前記熱媒を蒸発させるための再生温度以上の熱を受けることで再生される吸着器と、前記蒸発器と接続され、前記蒸発器からの前記熱媒と反応することで該熱媒の蒸発潜熱以上の反応熱を生じ、該反応熱を前記吸着器の再生温度以上で該吸着器に放熱可能な蓄熱反応器と、を有する
この吸着式ヒートポンプシステムでは、蒸発器を備えており、この蒸発器における熱媒の蒸発により冷熱が生成される。また、この吸着式ヒートポンプシステムでは、蒸発器と接続された吸着器を備えており、蒸発器の熱媒を吸着することで、蒸発器において冷熱が生成される。吸着器は、熱媒を蒸発させるための再生温度以上の熱を受けることで、少なくとも一部が再生される。吸着器は、再生により、再度、蒸発器の熱媒を吸着することが可能となる。
そして、蒸発器での冷熱生成を、2つのプロセスで行うことで、効率的で、かつ連続的な冷熱生成が可能となる。
この吸着式ヒートポンプシステムでは、前記蒸発器と接続され、前記蒸発器からの前記熱媒と反応することで該熱媒の蒸発潜熱以上の反応熱を生じ、該反応熱を前記吸着器の再生温度以上で該吸着器に放熱可能な蓄熱反応器、を有する。
熱反応器では蒸発器からの熱媒と反応することで、熱媒の蒸発潜熱以上の反応熱が生じ、蒸発器では熱媒の蒸発潜熱分の冷熱が生成される。
蓄熱反応器で生じた反応熱は蓄熱反応器に蓄熱される。そして、蓄熱反応器が、この反応熱を吸着器の再生温度以上で吸着器に放熱することで、吸着器に吸着された熱媒を脱着させ、吸着器を再生することができる。
吸着器が再生されると、吸着器が蒸発器から熱媒を吸着することで、蒸発器では冷熱が生成される。
このように、蓄熱反応器における熱媒との反応を利用することで、吸着器の効率的な再生が可能となる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記蓄熱反応器が複数備えられている。
したがって、一部の蓄熱反応器から、吸着器の再生に必要な分の熱を吸着器に作用させることができる。また、吸着器への放熱を行っていない蓄熱反応器では、その間に再生する等、複数の蓄熱反応器で異なる処理を並行して行うことが可能となる。
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、複数の前記蓄熱反応器の一部が吸熱しているときに他の一部が放熱可能とされている。
したがって、蓄熱反応器の一部において吸熱による再生を行いつつ、他の一部から吸着器等へ放熱することが可能である。
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記蓄熱反応器が、化学蓄熱材を備えている。
したがって、化学蓄熱材の化学反応で生じる反応熱を利用し、吸着器に放熱することで吸着材を再生することが可能となる。
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記蓄熱反応器が、前記吸着器の吸着材の脱着温度以上の吸着反応熱を生じる吸着材を備えている。
したがって、吸着材による熱媒の吸着で生じる吸着熱を利用し、吸着器に放熱することで吸着材を再生することが可能となる。
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記蓄熱反応器の熱媒と前記吸着器の熱媒とが同一である。
蓄熱反応器の熱媒と吸着器の熱媒とを同一とすることで、異なる熱媒を用いた構成と比較して、簡易な構造となる。
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記吸着器と接続され前記熱媒を凝縮する凝縮器、を有する。
したがって、凝縮器を用いて、吸着材で脱着された熱媒を凝縮し、蒸発器に送ることが可能となる。
また、蓄熱反応器の顕熱を吸着器で回収し、さらに凝縮器において熱媒を凝縮させることで、温熱を生成することが可能となる。
請求項8に記載の発明では、請求項7に記載の発明において、前記凝縮器が前記蒸発器と接続されている。
したがって、蓄熱反応器を再生するために蓄熱反応器に加えられたエネルギーにより、凝縮器で熱媒を凝縮させて温熱を生成することが可能となる。
請求項9に記載の発明では、請求項7又は請求項8に記載の発明において、前記凝縮器が前記蓄熱反応器と接続されている。
したがって、蓄熱反応器から熱媒を凝縮器に送って、凝縮器で凝縮させることが可能となる。
請求項10に記載の発明では、蓄熱材による減圧作用による熱媒の蒸発により冷熱を生成する第1冷熱生成工程と、吸着材による減圧作用による熱媒の蒸発により冷熱を生成する第2冷熱生成工程と、前記蓄熱材に蓄熱された熱を前記吸着材に作用させて吸着された熱媒を脱着させ吸着材を再生する再生工程と、を有する。
この冷熱生成方法では、第1冷熱生成工程において、蓄熱材による減圧作用による冷媒の蒸発により冷熱が生成される。また、この冷熱生成方法では、第2冷熱生成方法において、吸着材による減圧作用による熱媒の蒸発により冷熱が生成される。再生工程では、蓄熱材に蓄熱された熱を吸着材に作用させることで、吸着材に吸着された熱媒を脱着させ吸着材を再生する。
このように、冷熱生成を第1冷熱生成工程及び第2冷熱生成工程の2つの工程を行うと共に、再生工程において吸着材を再生することで、効率的で、かつ連続的な冷熱生成が可能となる。特に、再生工程では、蓄熱材の熱を利用するので、安定的に吸着材を再生できる。
請求項11に記載の発明では、請求項10に記載の発明において、前記蓄熱材を前記熱媒と反応させることで該熱媒の蒸発潜熱以上の反応熱を生じさせ、該反応熱を前記吸着材の再生温度以上で前記吸着材に放熱する。
蓄熱材を熱媒と反応させることで生じた反応熱を、吸着材に放熱し、吸着材を再生できる。吸着材の再生により、吸着材で熱媒を再度吸着することが可能になる。
このように、蓄熱材と熱媒との反応を利用することで、吸着器の効率的な再生が可能となる。
本発明は上記構成としたので、効率的で、連続的な冷熱生成が可能な吸着式ヒートポンプシステム及び冷熱生成方法が得られる。
本発明の第1実施形態の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図である。 (A)〜(C)は、本発明の第1実施形態の吸着式ヒートポンプシステムにおいて冷熱を生成する場合の状態を示す説明図である。 (A)〜(B)は、本発明の第1実施形態の吸着式ヒートポンプシステムにおいて蓄熱回収する場合の状態を示す説明図である。 (A)は第1比較例の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図であり、(B)は第2比較例の蓄熱システムの構成を示す概略図である。 本発明の第2実施形態の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図である。 (A)〜(D)は、本発明の実施例において吸着式ヒートポンプシステムで冷熱を生成する場合の状態を示す説明図である。 (A)〜(D)は、本発明の実施例において吸着式ヒートポンプシステムで増熱して温熱を生成する場合の状態を示す説明図である。 本発明の第3実施形態の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図である。 本発明の第4実施形態の吸着式ヒートポンプシステムの構成を示す概略図である。
図1には、本発明の第1実施形態の吸着式ヒートポンプシステム(以下では「ヒートポンプ」と略記する)12が示されている。
ヒートポンプ12は、蒸発器14、吸着器16、蓄熱反応器18及び凝縮器20を備えている。これらは、相互に配管22で接続されている。配管22には図示しない弁が設けられており、開弁により、熱媒の移動が可能となる。以下において、2つの部材を単に「接続する」というときは、これら2つの部材の間の配管を開弁することで、熱媒の移動が可能になることを言う。
蒸発器14は、熱媒を蒸発させ、その際の気化熱により、外部からエネルギー(熱量)を吸収する動作(冷熱生成)を行うことが可能である。
吸着器16には、吸着材が収容されている。吸着材により媒質を吸着することで吸着熱を生じ、この吸着熱を外部に放出する動作(温熱生成)を行うことが可能である。また、外部から作用したエネルギーを吸収して(吸熱して)吸着された媒質を脱着することが可能である。このとき、吸着器16は再生され、あらためて吸着材で熱媒を吸着可能な状態になる。
蓄熱反応器18には蓄熱材が収容されている。本実施形態では、熱媒として水を用いているため、蓄熱材は、外部から加えられたエネルギーにより熱媒と化学反応し、反応熱を生じさせる(外部からのエネルギーの一部は顕熱となる)化学蓄熱材を用いている。特に、本発明では、熱媒の蒸発潜熱以上の反応熱が生じるように、熱媒との関係において、蓄熱材が決められている。
そして、蓄熱反応器18は、反応熱を蓄熱可能で、吸着器16の再生温度以上で吸着器16に放熱することが可能とされる。
凝縮器20は、蓄熱反応器18あるいは吸着器16から送られた熱媒を凝縮させ、凝縮熱を外部に放出する動作(温熱生成)を行うことが可能である。さらに、凝縮後の熱媒を蒸発器14に送ることも可能である。
なお、凝縮器20を省略してもよく、この場合は、熱媒を凝縮することなくヒートポンプ12の外部に放出すればよい。
次に、本実施形態のヒートポンプ12において、冷熱を生成する工程(冷熱生成モード)、及び温熱を生成する工程(温熱生成モード)について説明する。まず、冷熱生成モードを一般化して説明する。
[冷熱生成モード]
<冷熱生成操作1>
冷熱生成操作1では、まず、図2(A)に示すように、蓄熱反応器18と蒸発器14とを接続し、吸着器16と凝縮器20とを接続する。蓄熱反応器18の蓄熱材における減圧作用で、蒸発器14では熱媒が蒸発し、冷熱Q3が生成される。蓄熱反応器18では熱媒と蓄熱材とが反応し、反応熱Q5が生成される。
この反応熱Q5を吸着器16に作用させ、吸着材に吸着された熱媒を脱着させる(吸着材の一部又は全部の再生が可能である)。本実施形態では、凝縮器20を有しているので、脱着された熱媒を凝縮器20によって凝縮する。このとき、凝縮器20において生成された温熱Q8を利用してもよい。ただし、凝縮器20によって凝縮することなく、ヒートポンプ12の外部に熱媒を放出してもよく、この場合は凝縮器20は不要となる。凝縮された熱媒は蒸発器14に送られる。以上が冷熱生成操作1である。
<冷熱生成操作2>
上記の冷熱生成操作1により、吸着器16が完全に再生されると、図2(B)に示すように、吸着器16と蒸発器14とを接続する。吸着器16が熱媒を吸着し、減圧作用によって蒸発器14では熱媒が蒸発し、冷熱Q6が生成される。以上が冷熱生成操作2である。
このようにして、冷熱生成操作1と冷熱生成操作2とを交互に繰り返すことで、ヒートポンプ12からは、冷熱3と冷熱Q6とを交互に生成することができる。したがって、蓄熱反応器18を有しない構成のヒートポンプと比較して、冷熱を効率的に且つ連続的に生成することが可能である。
なお、冷熱生成操作1と冷熱生成操作2との繰り返しにおける所望のタイミングで、蓄熱反応器18(蓄熱材)の再生を行ってもよい。たとえば冷熱生成操作1と冷熱生成操作2とを複数回繰り返した後(冷熱生成操作2を終えた状態)で、図2(C)に示すように、蓄熱反応器18と凝縮器20を接続する。そして、蓄熱反応器18に再生のためのエネルギーQ1を作用させることで、蓄熱材を再生できる。このとき、このヒートポンプ12の外部に熱源が存在していれば、その熱源から供給された熱を利用すればよい。
また、蓄熱反応器18では、反応熱だけでなく、顕熱Q2も生じている。図2(C)に示したように、温度上昇した熱媒を吸着器16に移動させ、凝縮器20で凝縮させることで、温熱Q9を生成させることが可能である。
次に、ヒートポンプ12の成績係数(COP)について説明する。
蓄熱反応器18における熱媒1mol当りの反応熱をΔH1[kJ/mol]、総反応量をm1[mol]、顕熱をQ2[kJ]とすると、蓄熱反応器18に作用させるエネルギーQ1は、
Q1=m1・ΔH1+Q2[kJ]
となる。
また、熱媒の蒸発潜熱をΔH2[kJ]とすると、蒸発器14での冷熱生成量Q3[kJ]は、
Q3=m1・ΔH2[kJ]
となる。
上記の冷熱生成操作1を1回行った際に作動する熱媒量をm2[mol]、吸脱着熱をΔH3[kJ/mol]、吸着器16での顕熱をQ4[kJ]とすると、吸着器16の再生のために蓄熱反応器18から作用させる温熱のエネルギーQ5[kJ/回」は、
Q5=m2・Δ3+Q4[kJ]
となる。実際には、蓄熱反応器18の総エネルギーを何回かに分けて吸着器16に作用させるので、この回数をNとすると、吸着器16には、
Q6=N・m2・ΔH2[kJ]
のエネルギーが作用する。冷熱生成操作2では、このエネルギーが蒸発器14で生成される冷熱となる。
したがって、上記の工程全体での総冷熱生成量Q7は、
Q7=Q3+Q6=m1・ΔH2+N・m2・ΔH2[kJ]となる。
ヒートポンプ12に外部から作用させたエネルギーはQ1[kJ]なので、成績係数COPは、
COP=Q7/Q1
=(Q3+Q6)/Q1
=(m1・ΔH2+N・m2・ΔH2)/(m1・ΔH1+Q2)
となる。
蓄熱反応器18で生じた反応熱はm1・ΔH1[kJ]であり、これは、実質的に吸着器16の再生のために蓄熱反応器18から作用させる温熱のエネルギーQ5のN回分と等しい。すなわち、
m1・ΔH1=N・(m2・Δ3+Q4)[kJ]
である。これから、
m2=((m1・ΔH1)/N−Q4/ΔH3
となる。
したがって、成績係数COPは、
COP=((m1+((m1・ΔH1)/N−Q4/ΔH3・N))・ΔH2)/(m1・ΔH1+Q2)
=((ΔH3・m1+(m1・ΔH1)−N・Q4)・(ΔH2/ΔH3)/(m1・ΔH1+Q2)
となる。
一般的には、熱媒について吸着熱≒蒸発潜熱の関係が成り立つので、ΔH2=ΔH3とすると、
COP=((m1・ΔH3+ΔH1)−N・Q4)/(m1・ΔH1+Q2)
となる。
この式から分かるように、COPを大きくするためには、蓄熱反応器18において顕熱Q2が反応熱m1・ΔH1よりも十分に小さく(すなわちQ2<<m1・ΔH1)、且つ吸着器16におけるN回のプロセスでの顕熱N・Q4が、吸着器16での吸着熱m1・ΔH2よりも十分に小さい(すなわち、N・Q4<<m1・ΔH2=m1・ΔH3)という条件を満たせばよい。このとき、ヒートポンプ12を全体として考えたときの顕熱ロスが小さくなる。特に、N=1に近づくほど、COPは大きくなり、1に近づくことになる。実際に、Q2及びQ4が顕熱であることを考慮すると、蓄熱反応器18や吸着器16での反応熱と比較して小さいので、効率的な冷熱生成が可能なヒートポンプ12となっている。
本実施形態のヒートポンプ12は蓄熱反応器18を有しているため、蓄熱システムとしても動作している。以下では、ヒートポンプ12を蓄熱システムとみなした場合の成績係数(COP)について説明する。
<蓄熱回収操作1>
まず、図3(A)に示すように、蒸発器14と蓄熱反応器18とを接続し、吸着器16と凝縮器20とを接続した場合を考える。蒸発器14から蓄熱反応器18にm3[mol]の熱媒が移動したとすると、蓄熱反応器18では、m3・ΔH1[kJ]の熱量が生成される。この熱量を吸着器16に投入する。熱媒の移動量をm4[mol]、吸着器16の顕熱をQ7[kJ]とすると、
m3・ΔH1=m4・ΔH3+Q7
の関係が成り立つ。
吸着器16で脱着された熱媒は、凝縮器20で凝縮させる。熱媒の蒸発潜熱はΔH2なので、外気温よりも高いm2・ΔH2の熱が回収できることになる。
<蓄熱回収操作2>
次に、図3(B)に示すように、吸着器16と蒸発器14とを接続する。そして、蒸発器14から熱媒を蒸発させ、吸着器16で吸着させる。このときの熱媒の移動量をm4[mol]とすると、吸着器16での顕熱Q7も回収できる。すなわち、m4・ΔH2+Q7の熱を回収できる。
蓄熱回収操作1と蓄熱回収操作2とで得られた熱量を合計すると、2(m4・ΔH2)+Q7の熱を回収できる。ヒートポンプ12における発熱量はm3・ΔH1であったので、成績係数COPは、
COP=(2(m4・ΔH2)+Q7)/(m3・ΔH1)
=(2(m4・ΔH2)+Q7)/(m4・ΔH3+Q7)
となる。ここでも、ΔH2=ΔH3とすれば、
COP=(2(m4・ΔH3)+Q7)/(m4・ΔH3+Q7)
=1+(m4・ΔH3)/(m4・ΔH3+Q7)
となり、COPが1以上の蓄熱システムとして作動するヒートポンプ12が構成されていることが分かる。
ここで、図4(A)には、第1比較例として、蓄熱反応器18を有さず、2機の吸着器16A、16Bを有するヒートポンプ72が示されている。また、図4(B)には、第2比較例として、蒸発器14、蓄熱反応器18及び凝縮器20で構成された蓄熱システム82が示されている。なお、これらのヒートポンプ72及び蓄熱システム82において、上記実施形態と同様の作用を奏する部材については、便宜的に同一符号を付している。
第1比較例のヒートポンプ72では、吸着器16A、16Bにおいて吸着と脱着とを繰り返す際の温度変動(いわゆる温度スイング)が大きく、これが顕熱ロスとなってしまうため、成績係数COPを大きくすることは難しい。また、十分な量の冷熱あるいは温熱を得ようとすると、吸着器16の体積も大きくなる。
第2比較例の蓄熱システム82では、蓄熱反応器18に温熱を蓄積(貯蔵)することは可能であるが、蒸発器14における反応熱(蒸発潜熱)と、蓄熱反応器18に熱を供給する際の反応熱とが異なるため、温熱と比較して冷熱の取り出し量が相対的に小さくなってしまう。
これに対し、本実施形態のヒートポンプ12では、図1と図4(A)とを比較すれば分かるように、第1実施形態の吸着器16の1機(図示の例では吸着器16B)を蓄熱反応器18に置き換えた構成になっている。蓄熱反応器18は、温度スイングの温度が吸着器16の再生温度以上であるため、顕熱回収により、顕熱ロスが小さくなる。
また、上記実施形態のヒートポンプ12では、蓄熱反応器18で生じた反応熱を吸着器16での再生に用いることができるので、成績係数COPの向上に寄与できる。しかも、外部から吸着器16への熱供給を待つことなく、蓄熱反応器18から吸着器16へ熱を供給できるので、早期に冷熱あるいは温熱を生成でき、始動性が向上する。
さらに、図4(B)に示した第2比較例の蓄熱システム82と比較すると、本実施形態のヒートポンプ12では、蓄熱反応器18に蓄積された熱を用いて冷熱を生成できるので、実質的に、より大きな冷熱の貯蔵及び生成が可能である。
なお、第1比較例のヒートポンプ72における成績係数の向上及び始動性の向上という効果と、第2比較例の蓄熱システム82における大きな冷熱の貯蔵・生成という効果の双方を奏するためには、ヒートポンプ72と蓄熱システム82の構成を単に組み合わせることも考えられる。しかし、これらの単なる組み合わせでは、蒸発器14、吸着器16及び凝縮器20を2機ずつ有する構成になる。
これに対し、本実施形態のヒートポンプ12では、このような単純な組み合わせと比較して、蒸発器14や凝縮器20の数が少なくて済む(それぞれ1機ずつとなる)。さらには、これらを接続する配管やバルブも不要となる。これらにより、本実施形態のヒートポンプ12では、構造の簡素化を図ることが可能である。
上記実施形態では、蓄熱反応器18を1機のみ備えた構成を例示しているが、蓄熱反応器18を複数備えた構成であってもよい。図5には、2機の蓄熱反応器18A、18Bを備えた第2実施形態のヒートポンプ32が示されている。なお、図5では、2機の蓄熱反応器18A、18Bを並べて配置しているが、これらの蓄熱反応器18A、18Bは、蒸発器14、吸着器16及び凝縮器20に対し対等に(並列で)接続されており、それぞれ独立して作動させることが可能である。
第2実施形態のヒートポンプ32では、2機の蓄熱反応器18の再生を交互に行うことが可能である。この構成では、蓄熱反応器18の再生は、吸着器16が熱媒の吸着を行っている間に、外部熱源からの熱を受けて行うことが可能である。外部熱源としては、電気ヒータであってもよいし、エンジンやモータの廃熱であってもよい。そして、ヒートポンプ72は、車両が冷房あるいは暖房を必要としているときは、再生済みの蓄熱反応器18及び吸着器16と凝縮器20を用いて、図3及び図4に示した各操作を行い、冷熱あるいは温熱を生成すればよい。
このように、本実施形態では、蓄熱反応器18を複数備えることで、外部熱源からの熱供給を受けた蓄熱反応器18の再生と、ヒートポンプ12の駆動(冷熱あるいは温熱の生成)とを同時に行うことが可能である。
なお、本発明において、蓄熱反応器18における蓄熱量は、吸着器16の熱容量(再生に必要な熱量と顕熱との和)以上であればよい。特に、吸着器16の熱容量の2倍以上とすれば、吸着器16の再生タイミングの自由度が高くなるので、好ましい。
上記各実施形態において、熱媒としては、たとえば、水やアンモニアを用いることが可能である。吸着器16における吸着材としては、熱媒の吸着及び脱着が可能であれば良く、たとえば、本実施形態ではシリカゲルを用いることが可能である。
蓄熱反応器18における蓄熱材としては、熱媒と化学反応する化学蓄熱材の他に、熱媒を細孔等により物理的に吸着する物理吸着材(蓄熱材)を用いたものであってもよい。
熱媒が水の場合の化学蓄熱材としては、蓄熱反応器18における蓄熱密度をより高める観点から、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物もしくは水酸化物、またはこれらの複合物がより好ましく、水酸化カルシウム(Ca(OH))のほか、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))及びその水和物(Ba(OH)・HO)などのアルカリ土類金属の無機水酸化物や、水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)などのアルカリ金属の無機水酸化物、酸化アルミニウム三水和物(Al・3HO)などの無機酸化物などを挙げることができる。中でも、脱水反応に伴なって吸熱し、水和反応に伴なって放熱する水和反応性蓄熱材が好ましく、特に水酸化カルシウム(Ca(OH))好ましい。また、化学蓄熱材は、上市された市販品を用いてもよい。
化学蓄熱材として用いられた水酸化カルシウム(Ca(OH))は、脱水に伴なって蓄熱(吸熱)し、水和(水酸化カルシウムへの復原)に伴なって放熱(発熱)する構成となる。すなわち、Ca(OH)は、以下に示す反応により蓄熱、放熱を可逆的に繰り返することができる。
Ca(OH) ⇔ CaO + H
熱媒がアンモニアである場合の化学蓄熱材としては、蓄熱反応器18における蓄熱密度をより高める観点から、金属塩化物が好ましく、例えば、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、又は遷移金属の塩化物もしくはこれらの複合物がより好ましく、塩化リチウム(LiCl)、塩化マグネシウム(MgCl)、塩化カルシウム(CaCl)、塩化ストロンチウム(SrCl)、塩化バリウム(BaCl)、塩化マンガン(II)(MnCl)、塩化コバルト(II)(CoCl)、又は塩化ニッケル(II)(NiCl)が特に好ましい。
上記した各種の化学蓄熱材は、一種単独で用いるほか、二種以上を併用してもよい。
物理吸着材の例としては、活性炭のほか、例えば、メソポーラスシリカ、ゼオライト、シリカゲル、粘土鉱物等が挙げられる。また、前記活性炭としては、BET法による比表面積が800m/g以上2500m/g以下(より好ましくは1800m/g以上2500m/g以下)の活性炭が好ましい。前記粘土鉱物としては、非架橋の粘土鉱物であっても、架橋された粘土鉱物(架橋粘土鉱物)であってもよい。粘土鉱物の例として、前記したセピオライト等が挙げられる。
本発明においては、熱媒の圧力や温度に合わせて、物理吸着材(好ましくは多孔体)の種類を適宜選定することができる。物理吸着による熱媒の固定化及び脱離の反応性をより向上させる観点からは、物理吸着材は、活性炭を少なくとも含む態様に構成されていることが好ましい。
物理吸着材を用いた場合には、熱媒の授受により吸発熱する蓄熱材を構成する。この場合、蓄熱材に占める物理吸着材の含有比率は、熱媒の固定化及び脱離の反応性をより高く維持する観点から、80体積%以上が好ましく、90体積%以上がより好ましい。
物理吸着材を用いた蓄熱材を成形体として利用する場合、蓄熱材は、物理吸着材に加えてバインダーを含有していることが好ましい。バインダーを含有することで、成形体の形状がより維持され易くなるので、物理吸着による熱媒の固定化及び脱離の反応性がより向上する。
また、蓄熱材は、必要に応じて、物理吸着材及び前記バインダー以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分の例として、カーボンファイバーや金属繊維等の熱伝導性無機材料等が挙げられる。
前記バインダーとしては、水溶性バインダーが好ましい。水溶性バインダーとしては、ポリビニルアルコール、トリメチルセルロース等が挙げられる。
物理吸着材及びバインダーを用いて蓄熱材を構成する場合、蓄熱材中におけるバインダーの含有比率は、成形体の形状をより効果的に維持する観点から、5体積%以上が好ましく、10体積%以上がより好ましい。
これに対し、吸着器16における吸着材としては、熱媒が水の場合は、ゼオライトを、熱媒がアンモニアの場合は活性炭を用いることが可能である。そして、吸着器16に用いられる吸着材の脱着反応温度との関係で、蓄熱反応器18における物理吸着材として好ましい材料を選択できる。たとえば、一般的なゼオライト(Y型)では、吸着反応熱として60℃より高い温度を達成可能である。したがって、吸着器16における吸着材としては、脱着温度が60℃以下の材料を使用すればよい。このような吸着材の一例としては、ALPO(三菱化学の商品名:AQSOA−Z01)を挙げることができる。
吸着材16で用いられる熱媒(水あるいはアンモニア)とは別に、化学蓄熱材において化学反応により発熱する反応材や、物理的に吸着されることで蓄熱する被吸着材を用いてもよい。これらの反応材や被吸着材は、吸着材16の熱媒と同一とすれば、ヒートポンプ112全体として、構成を簡素化できる。もちろん、反応材や被吸着材が、吸着材16の熱媒と異なる材料であってもよい。
また、本発明では、以下に示す第3実施形態及び第4実施形態の構成とすることも可能である。なお、以下において、第1実施形態又は第2実施形態と同一の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
図8には、本発明の第3実施形態のヒートポンプ112が示されている。このヒートポンプ112では、第1実施形態の蓄熱反応器18(図1参照)に代えて、蓄熱器114が設けられている。蓄熱器114は、外部から熱量Q11を受け、これを内部に蓄熱することが可能とされている。
また、第3実施形態では、蓄熱器114と吸着器16とは配管22で接続されており、蓄熱器114は、吸着器16(吸着材)の蒸発潜熱以上の熱を、吸着器16(吸着材)の再生温度以上で、吸着器16に放熱可能である。なお、第3実施形態では、蓄熱器114と蒸発器14とは、配管で接続されている必要はない。
上記以外は、第3実施形態のヒートポンプ112は、第1実施形態のヒートポンプ12と同一の構成とされている。したがって、第3実施形態においても、第1実施形態と同様に、冷熱生成操作1を行い、蒸発器14における熱媒の蒸発により、冷熱を生成できる。なお、蒸発した熱媒は、たとえば凝縮器20を用いて凝縮してもよいし、気体として外部に放出してもよい。
第3実施形態において、吸着器16(吸着材)の再生を行う場合は、蓄熱器114に蓄熱された熱を吸着器16に作用させればよい。そして、このように吸着器16を再生し、冷熱生成操作2によって冷熱を生成することも可能である。
第3実施形態において、蓄熱器114に用いられる蓄熱材としては、上記した化学蓄熱材や物理吸着材を適用可能である。この場合、吸着材16で用いられる熱媒(水あるいはアンモニア)とは別に、化学蓄熱材において化学反応により発熱する反応材や、物理的に吸着されることで蓄熱する被吸着材を用いてもよい。これらの反応材や被吸着材は、吸着材16の熱媒と同一とすれば、ヒートポンプ112全体として、構成を簡素化できる。もちろん、反応材や被吸着材が、吸着材16の熱媒と異なる材料であってもよい。
なお、第3実施形態のヒートポンプ112において、第2実施形態のヒートポンプ32のように、2機(複数)の蓄熱器114を設けてもよい。
図9には、本発明の第4実施形態のヒートポンプ122が示されている。このヒートポンプ122では、第1実施形態の蓄熱反応器18は、第3実施形態の蓄熱器114は設けられていない。そして、吸着器18が、外部から吸着器16(吸着材)の再生温度以上の熱量Q12を受け、この熱によって、吸着材を再生することが可能とされている。
上記以外は、第4実施形態のヒートポンプ122は、第1実施形態のヒートポンプ12あるいは第3実施形態のヒートポンプ112と同一の構成とされている。したがって、第4実施形態においても、第1実施形態と同様に、冷熱生成操作1を行い、蒸発器14における熱媒の蒸発により、冷熱を生成できる。蒸発した熱媒は、凝縮器20を用いた凝縮や、外部への放出が可能である。
第4実施形態において、吸着器16(吸着材)の再生を行う場合は、外部の熱源からの熱を吸着器16に作用させればよい。そして、このように吸着器16を再生し、冷熱生成操作2によって冷熱を生成することも可能である。
第3実施形態及び第4実施形態において、吸着器16で用いられる吸着材としては、蓄熱反応器18で用いた化学蓄熱材や物理蓄熱材と同種の材料を適用可能である。特に、環境温度低下時の熱媒の凍結を抑制する観点から、熱媒としてアンモニアを用いた場合がある。この場合には、吸着器16の吸着材として、金属塩化物が好ましく、例えば、アルカリ金属の塩化物、アルカリ土類金属の塩化物、又は遷移金属の塩化物もしくはこれらの複合物がより好ましい。
第3実施形態及び第4実施形態における外部の熱源としては、たとえば、自動車のエンジン及びその周辺において高温となる部材等を挙げることができる。
以下において、本発明のヒートポンプを実施例により、さらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例の具体的構成に限定されるものではない。
本実施例では、第1実施形態のヒートポンプと同一の全体構成とし、熱媒として水、蓄熱反応器18での蓄熱材として酸化カルシウム(CaO)、吸着器16での吸着材としてシリカゲルを用いた。この場合、蓄熱反応器18では以下の反応が生じ、水酸化カルシウムが生成される。
CaO+HO→Ca(OH)
まず、このヒートポンプ12から冷熱を生成する冷熱生成モードについて説明する。
[冷熱生成モード]
冷熱生成時は、以下の各操作を行う。
<冷熱生成操作1>
図6(A)に示すように、蒸発器14と蓄熱反応器18とを接続し、酸化カルシウムと水とを反応させる。ここでは、簡単のため、1[mol]の水が反応したとする。酸化カルシウムの反応熱ΔH1を113[kJ/mol]、水の蒸発潜熱を45[kJ/mol]とすると、蒸発器14及び蓄熱反応器18では、以下の熱(冷熱Q3及び温熱Q5)が生成される。
蒸発器(冷熱) : 45[kJ]
蓄熱反応器(温熱):113[kJ]
このとき、蓄熱反応器18における水の温度は100[℃]近くまで上昇するため、この水による熱交換として、95[℃]での取り出しを想定する。また、蒸発器14での冷熱の温度を15[℃]とする。
ここで、凝縮器20と吸着器16とを接続すると共に、蓄熱反応器18で生成された温熱113[kJ]、温度80[℃]の水を吸着器16に投入する。環境温度を30[℃]と想定すると、吸着器16は、30[℃]から80[℃]に昇温される。凝縮器20では、環境温度30[℃]で冷却され、発熱する。
吸着器16には、吸着熱として113[kJ]の温熱Q5が作用する。吸着器16での熱容量を0.5[kJ]とすると、吸着器16での吸着熱に対し、(80−30)×0.5=25[kJ]は顕熱Q4になるので、この分だけ小さい熱量が凝縮器20に作用する。その結果、吸着器16及び凝縮器20での熱量のやりとりは、
吸着器(脱着熱+顕熱): 113[kJ]
凝縮器(凝縮熱) : 88[kJ]
となる。
また、凝縮器20における水の吸着熱を45[kJ/mol]とすると、吸着器16で脱着した水の量は88[kJ]/45[kJ/mol]=1.95[mol]となる。
<冷熱生成操作2>
次に、図6(B)に示すように、蒸発器14と吸着器16とを接続し、吸着器16を環境温度30[℃]で冷却する。蒸発器14では、冷熱Q6が生成される。具体的には、
蒸発器(冷熱) :88[kJ]
が生成される。これに対し、吸着器16では、吸着熱Q6に加えて、45[kJ]の顕熱Q4が生じることになる。したがって、蒸発器14では、
吸着器(吸着熱+顕熱):113[kJ]
が生じる。
上記の冷熱生成操作1及び冷熱生成操作2をN1回ずつ行った場合の消費エネルギー及び生成冷熱は、
消費エネルギー:113×N1[kJ]
生成冷熱 :133×N1[kJ]
となり、高効率で冷熱を生成できることが分かる。
次に、冷熱生成モード中に、ヒートポンプ12において蓄熱反応器18の再生及び顕熱回収を行う再生・顕熱回収モードについて説明する。
<再生操作>
図6(C)に示すように、蓄熱反応器18と凝縮器20とを接続する。蓄熱反応器18は、再生のために450[℃]程度まで昇温される必要がある。このときの蓄熱反応器18及び凝縮器20における熱量のやり取りは、蓄熱反応器18の顕熱Q2[kJ]を用いて、
蓄熱反応器: 113×N1+Q2[kJ]
凝縮器 : 113×N1[kJ]
となる。
<顕熱回収操作>
まず、図6(D)に示すように、凝縮器20と吸着器16とを接続する。次いで、蓄熱反応器18の顕熱Q2[kJ]を用いて水を温度80[℃]に昇温させ、この温水を吸着器16に投入する。吸着器16は、環境温度である30[℃]から80[℃]に昇温される。凝縮器20では、環境温度30[℃]で冷却する。
吸着器16での熱容量は0.5[kJ]なので、吸着器16での吸着熱に対し、(80−30)×0.5=25[kJ]だけ小さい熱量が凝縮器20に作用する。その結果、吸着器16及び凝縮器20での熱量のやりとりは、
吸着器(脱着熱): 113[kJ]
凝縮器(凝縮熱): 88[kJ]
となる。
また、凝縮器20における水の吸着熱は45[kJ/mol]なので、吸着器16で脱着した水の量は88[kJ]/45[kJ/mol]=1.95[mol]となる。
次に、図6(B)に示すように、蒸発器14と吸着器16とを接続し、吸着器16を環境温度30[℃]で冷却する。このとき、蒸発器14では、
蒸発器(冷熱) :88[kJ]
が生成されるのに対し、吸着器16では、吸着熱に加えて、顕熱が生じる。したがって、蒸発器14では、
吸着器(吸着熱+顕熱):113[kJ]
が生じる。
顕熱回収操作をN2回行った状態で顕熱回収が完了したとすると、
回収熱量:113×N2[kJ]
生成冷熱:88×N2[kJ]
となる。
上記した冷熱生成モード全体での熱量の収支を総計すると、
投入熱量:113×(N1+N2)[kJ]
生成冷熱:133×N1+88×N2[kJ]
となる。
成績係数COPは、
COP=(133×N1+88×N2)/(113×(N1+N2))
であるので、113×(N1+N2)<133×N1+88×N2、すなわち、
N2<0.8×N1
の条件を満たせば、COPが1以上での冷熱生成が可能である。
次に、このヒートポンプ12から増熱により温熱を生成する温熱生成モードについて説明する。
[増熱生成モード]
温熱生成時は、以下の各操作を行うことで増熱し、温熱を生成することができる。
<温熱生成操作1>
図7(A)に示すように、蒸発器14と蓄熱反応器18とを接続し、酸化カルシウムと水とを反応させる。簡単のため、1[mol]の水が反応したとする。酸化カルシウムの反応熱ΔH1を113[kJ/mol]、水の蒸発潜熱を45[kJ/mol]とすると、蒸発器14及び蓄熱反応器18では、以下の熱(冷熱Q3及び温熱Q5)が生成される。
蒸発器(冷熱) : 45[kJ]
蓄熱反応器(温熱):113[kJ]
このとき、蓄熱反応器18における水の温度は100[℃]近くまで上昇するため、この水による熱交換として、95[℃]での取り出しを想定する。また、蒸発器14での冷熱の温度を15[℃]とする。
ここで、凝縮器20と吸着器16とを接続すると共に、蓄熱反応器18で生成された温熱113[kJ]、温度80[℃]の水を吸着器16に投入する。環境温度を30[℃]と想定すると、吸着器16は、30[℃]から80[℃]に昇温される。凝縮器20では、環境温度30[℃]で冷却され、発熱する。
吸着器16には、吸着熱として113[kJ]の温熱Q5が作用する。吸着器16での熱容量を0.5[kJ]とすると、吸着器16での吸着熱に対し、(80−30)×0.5=25[kJ]は顕熱Q4になるので、この分だけ小さい熱量が凝縮器20に作用する。その結果、吸着器16及び凝縮器20での熱量のやりとりは、
吸着器(脱着熱+顕熱): 113[kJ]
凝縮器(凝縮熱) : 88[kJ]
となる。
また、凝縮器20における水の吸着熱を45[kJ/mol]とすると、吸着器16で脱着した水の量は88[kJ]/45[kJ/mol]=1.95[mol]となる。
<温熱生成操作2>
次に、図7(B)に示すように、蒸発器14と吸着器16とを接続し、吸着器16を環境温度30[℃]で冷却する。蒸発器14では、冷熱Q6が生成される。具体的には、
蒸発器(冷熱) :88[kJ]
が生成される。これに対し、吸着器16では、吸着熱Q6に加えて、45[kJ]の顕熱Q4が生じることになる。したがって、蒸発器14では、
吸着器(吸着熱+顕熱):113[kJ]
が生じる。
上記の温熱生成操作1及び温熱生成操作2をN1回ずつ行った場合の消費エネルギー及び生成冷熱は、
消費エネルギー:113×N1[kJ]
生成温熱 :201×N1[kJ]
となり、高効率で冷熱を生成できることが分かる。
次に、温熱生成モード中に、ヒートポンプ12において蓄熱反応器18の再生及び顕熱回収を行う再生・顕熱回収モードについて説明する。
<再生操作>
図7(C)に示すように、蓄熱反応器18と凝縮器20とを接続する。蓄熱反応器18は、再生のために450[℃]程度まで昇温される必要がある。このときの蓄熱反応器18及び凝縮器20における熱量のやり取りは、蓄熱反応器18の顕熱Q2[kJ]を用いて、
蓄熱反応器: 113×N1+Q2[kJ]
凝縮器 : 113×N1[kJ]
となる。
<顕熱回収操作>
まず、図7(D)に示すように、凝縮器20と吸着器16とを接続する。次いで、蓄熱反応器18の顕熱Q2[kJ]を用いて水を温度80[℃]に昇温させ、この温水を吸着器16に投入する。吸着器16は、環境温度である30[℃]から80[℃]に昇温される。凝縮器20では、環境温度30[℃]で冷却する。
吸着器16での熱容量は0.5[kJ]なので、吸着器16での吸着熱に対し、(80−30)×0.5=25[kJ]だけ小さい熱量が凝縮器20に作用する。その結果、吸着器16及び凝縮器20での熱量のやりとりは、
吸着器(脱着熱): 113[kJ]
凝縮器(凝縮熱): 88[kJ]
となる。
また、凝縮器20における水の吸着熱は45[kJ/mol]なので、吸着器16で脱着した水の量は88[kJ]/45[kJ/mol]=1.95[mol]となる。
次に、図7(B)に示すように、蒸発器14と吸着器16とを接続し、吸着器16を環境温度30[℃]で冷却する。このとき、蒸発器14では、
蒸発器(冷熱) :88[kJ]
が生成されるのに対し、吸着器16では、吸着熱に加えて、顕熱が生じる。したがって、蒸発器14では、
吸着器(吸着熱+顕熱):113[kJ]
が生じる。
顕熱回収操作をN2回行った状態で顕熱回収が完了したとすると、
回収熱量:113×N2[kJ]
生成温熱:45×N1+201×N2[kJ]
となる。
上記した温熱生成モード全体での熱量の収支を総計すると、
投入熱量:113×(N1+N2)[kJ]
生成温熱:246×N1+201×N2[kJ]
となる。
成績係数COPは、
COP=(246×N1+201×N2)/(113×(N1+N2))
であるので、113×(N1+N2)<246×N1+201×N2)
すなわち、
N2<<N1
の条件を満たせば、2倍以上の効率で温熱を生成することが可能となる。
なお、上記説明から分かるように、蓄熱反応器18には450℃の熱を加えると共に、水(熱媒)の温度が100℃程度になっている。これに対し、実際に温熱をヒートポンプ12から取り出すときには、吸着器16及び凝縮器20の2箇所から、暖房等に使用するには十分な30℃程度の温熱を分けて取り出していることになる。蓄熱反応器18の熱容量を小さくしても、効率的に温熱を生成できる。そして、蓄熱反応器18の熱容量を小さくすることで、蓄熱反応器18を所望の温度に昇温させるために必要な熱量も少なくて済むようになる。
12 ヒートポンプ(吸着式ヒートポンプシステム)
14 蒸発器
16 吸着器
18 蓄熱反応器
20 凝縮器
32 ヒートポンプ(吸着式ヒートポンプシステム)

Claims (11)

  1. 熱媒を蒸発させる蒸発器と、
    前記蒸発器と接続され前記熱媒を吸着すると共に、前記熱媒を蒸発させるための再生温度以上の熱を受けることで再生される吸着器と、
    前記蒸発器と接続され、前記蒸発器からの前記熱媒と反応することで該熱媒の蒸発潜熱以上の反応熱を生じ、該反応熱を前記吸着器の再生温度以上で該吸着器に放熱可能な蓄熱反応器と、
    を有する吸着式ヒートポンプシステム。
  2. 前記蓄熱反応器が複数備えられている請求項1に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  3. 複数の前記蓄熱反応器の一部が吸熱しているときに他の一部が放熱可能とされている請求項2に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  4. 前記蓄熱反応器が、化学蓄熱材を備えている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  5. 前記蓄熱反応器が、前記吸着器の吸着材の脱着温度以上の吸着反応熱を生じる吸着材を備えている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  6. 前記蓄熱反応器の熱媒と前記吸着器の熱媒とが同一である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  7. 前記吸着器と接続され前記熱媒を凝縮する凝縮器、を有する請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  8. 前記凝縮器が前記蒸発器と接続されている請求項7に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  9. 前記凝縮器が前記蓄熱反応器と接続されている請求項7又は請求項8に記載の吸着式ヒートポンプシステム。
  10. 蓄熱材による減圧作用による熱媒の蒸発により冷熱を生成する第1冷熱生成工程と、
    吸着材による減圧作用による熱媒の蒸発により冷熱を生成する第2冷熱生成工程と、
    前記蓄熱材に蓄熱された熱を前記吸着材に作用させて吸着された熱媒を脱着させ吸着材を再生する再生工程と、
    を有する冷熱生成方法。
  11. 前記蓄熱材を前記熱媒と反応させることで該熱媒の蒸発潜熱以上の反応熱を生じさせ、該反応熱を前記吸着材の再生温度以上で前記吸着材に放熱する請求項10に記載の冷熱生成方法。
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