JP5760511B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
Siを含有し、かつ結晶方位が(110)[001]方位や(100)[001]方位に配向した方向性電磁鋼板は優れた軟磁気特性を有することから、商用周波数域での各種鉄芯材料として広く用いられている。その際、電磁鋼板に要求される特性としては、一般に50Hzの周波数で1.7Tに磁化させた場合の損失であるW17/50(W/kg)で表わされるところの鉄損が低いことが重要である。
本発明は上記知見に立脚するものである。
1.含珪素鋼熱延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、一回または中間焼鈍を含む二回以上の冷間もしくは温間圧延を施して最終板厚とし、ついで一次再結晶焼鈍を行った後、焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を行うことよりなる、B8で1.93T以上の高磁束密度を有する方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記一次再結晶焼鈍に先立ち、鋼板の表面に電子線を照射することにより、該鋼板の表面を算術平均粗さRaで0.15μm以下の平滑面とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
通常、方向性電磁鋼板の地鉄表面は、フォルステライト被膜と接しており、両者はアンカー効果で密着性を保っている。しかしながら、そのアンカーのサイズは極めて小さく、磁化回転を律する磁壁運動には直接関与しないと考えられている。従って、アンカーを除いて平均化した地鉄表面の平滑性が磁区の回転に対して重要であると考えられる。
さらに、バフ研磨や電解研磨による平滑化処理と比較して、電子ビームで焦点距離と鋼板位置との関係を種々に変更して鋼板表面に照射し、表面の清浄化と平滑化を鋼板全面にわたって行ったところ、変圧器鉄損のさらなる低減効果が得られることが明らかとなった。
電子線照射は、真空中でその処理を行うが、真空であるがゆえに、照射処理に際して表面酸化が起こらない。すなわち、真空中での電子線よる表面清浄化処理では鋼板表面の平滑化処理が行われるだけでなく、ほとんど酸化物を含まない表面を得ることができ、それが、その後の一次再結晶焼鈍時に形成されるSiO2を主体とする酸化物の形態等にも良い影響を与えていると推定される。これに対して、バフ研磨や電解研磨による平滑化処理では、同等の平滑表面が得られていても、わずかに酸化物等を巻き込んでしまっている可能性があり、この酸化物が悪影響を及ぼしていると考えられる。また、レーザー照射等で表面処理を行なうと、その照射熱で表面が酸化してしまうという問題がある。
また、上記表面粗さを達成するための具体的な電子線の照射条件としては、基本的に、鋼板のごく表面のみが加熱、溶融される状態が得られれば良く、連続照射でもパルス状照射でも構わない。また、酸化物が除去される理由は明らかではないが、適正条件で電子ビーム照射を行なうと酸化物のない平滑な鋼板表面を得ることができる。
なお、電子線照射は二次元的に電子ビームを照射させて平面状に処理を行うので、圧延方向および圧延直角方向の平均粗さは基本的に同じとなる。
上記、適正条件を実現する照射条件としては、電子線が最大照射エネルギー密度となる照射距離、いわゆるジャストフォーカスで行っても良いが、照射距離をジャストフォーカスよりも±15%短くまたは長くすることで効率的に表面を平滑化することができる。すなわち、ビームプロファイルを台形状として、広い範囲を一度に均一に処理することができる。
ただし、ジャストフォーカスから外す場合、ビーム電流等の入射エネルギーを増加させることとなるが、これにより単位時間当たりの入射エネルギー量が増加するため、鋼板温度が上昇し、鋼板の変形等の問題が生じる。そのため、ジャストフォーカスからのずれは±15%以内が好ましく、より好ましくは±5%以内がよい。
Si:1.5〜7.0%
この発明で使用される鋼板の成分としては、Siを、1.5〜7.0%の範囲で含有させることが望ましい。
Siは、製品の電気抵抗を高め、鉄損を低減するのに有効な成分であるが、7.0%を超えると、鋼板の硬度が高くなり、製造や加工が困難になる。一方、1.5%に満たないと、最終仕上げ焼鈍中に組織変態を生じ、安定した2次再結晶組織が得られない。従って、Siは1.5〜7.0%の範囲が望ましい。
C:0.08%以下
Cは、最終的には、磁気時効劣化を防ぐために、脱炭処理後の到達値で30ppm以下にする必要がある。また、良好な二次再結晶方位を得るため、圧延前後あるいは一次再結晶焼鈍前後の組織制御などの観点から、それぞれのプロセスに適した添加量は存在するが、製造工程全体を通しての脱炭負荷を考慮すると、溶製時には、0.08%程度までに抑えるのが望ましい。
Mnは、熱間加工性を良好にする上で必要な元素であるが、含有量が0.005%未満ではその添加効果に乏しく、一方1.0%を超えると製品板の磁束密度が低下する。従って、Mn量は0.005〜1.0%の範囲とすることが好ましい。
なお、上記成分以外の残部は、製造工程において混入する不可避的不純物およびFeである。
所定の成分に調整された鋼片は、通常のスラブ加熱に供された後、熱間圧延により熱延コイルとされるが、このスラブの加熱温度については1300℃以上の高温度とする場合と1250℃以下の低温度とする場合のいずれでも良い。また近年、スラブ加熱を行わず連続鋳造後、直接熱間圧延を行う方法が開発されているが、この方法で熱間圧延しても良い。
なお、本発明における算術平均粗さRaは、JIS B 0601(1994)に準拠している。
ここに、大気中で行うレーザ照射等でも、鋼板の表面の平滑化処理は可能であるが、表面酸化が避けられず、表面酸化が起きると、その後に行う一次再結晶焼鈍時のSiO2主体の酸化物形成に大きな影響を及ぼすため、本発明ほどの鉄損低減効果がないものと推定される。
特に、張力付与効果を有するコーティングは、低鉄損化のために表面を平滑化した方向性電磁鋼板との組合せで、鉄損低減に極めて有効に作用する。張力付与効果を有するコーティングの種類としては、熱膨張係数を低下させるシリカを含むコーティングが有効で、従来からフォルステライト被膜を有する方向性電磁鋼板に用いられているリン酸塩-コロイダルシリカ-クロム酸系のコーティング等が、その効果およびコスト、均一処理性などの点から好適である。
なお、上記のコーティングの厚みとしては、張力付与効果や占積率、被膜密着性等の点から0.3μm以上10μm以下程度の範囲が好ましい。
電子線照射の最大照射エネルギー密度となる照射距離が540mmであるのに対し、試験No.6は照射距離を550mm、試験No.7は照射距離を540mmとする条件で照射した。
比較として、電子線照射処理を行わない素材や塩酸酸洗処理で表面酸化物を除去した素材を作製した。それぞれの素材について、圧延方向および圧延直角方向の算術平均粗さRaを測定した。
かようにして得られた製品の圧延方向の磁束密度(B8)および鉄損(W17/50)を測定した。
また、素材を斜角剪断し、70枚積層500mm角の三相モデルトランスをVノッチ、ステップラップ積み(5層)で作成し、変圧器の鉄損(W17/50)を評価し、その結果を表1にそれぞれ記載する。
Claims (2)
- 含珪素鋼熱延板に、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、一回または中間焼鈍を含む二回以上の冷間もしくは温間圧延を施して最終板厚とし、ついで一次再結晶焼鈍を行った後、焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶焼鈍を行うことよりなる、B8で1.93T以上の高磁束密度を有する方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記一次再結晶焼鈍に先立ち、鋼板の表面に電子線を照射することにより、該鋼板の表面を算術平均粗さRaで0.15μm以下の平滑面とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 - 前記鋼板の表面に対する電子線の照射距離を、該鋼板の表面で該電子線が最大照射エネルギー密度となる照射距離に対して、0〜15%短くまたは長くすることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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