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JP5760560B2 - 摺動式トリポード型等速ジョイント - Google Patents

摺動式トリポード型等速ジョイント Download PDF

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Description

本発明は、摺動式トリポード型等速ジョイントに関するものである。
摺動式トリポード型等速ジョイントは、例えば特許文献1〜3に記載されたものがある。この摺動式トリポード型等速ジョイントは、3本の軌道溝が形成された筒状の外輪と、径方向に延びる3本のトリポード軸部を有するトリポードと、それぞれのトリポード軸部に軸支されるダブルローラタイプのローラユニットを備える。ダブルローラタイプのローラユニットは、外輪の軌道溝を転動可能な外ローラと、トリポード軸部の外周面に軸支される内ローラと、外ローラと内ローラとの間に転動可能に介在するニードルと、外ローラに固定され内ローラおよびニードルの軸方向移動を規制するスナップリングを有している。そして、トリポード軸部は、このローラユニットに対して首振り運動可能となるように構成されている。これにより、ジョイント角を付加した状態でトルク伝達を行うと、ローラユニットが軌道溝を転動しようとする方向と軌道溝の延びる方向とが一致することになる。よって、ローラユニットと軌道溝との間に発生する滑りを抑制し、誘起スラスト力の発生を低減することができる。
特開2004−125175号公報 特開2006−162056号公報 特開2006−266413号公報
ところで、等速ジョイントがトルク伝達を行う際に、トリポード軸部におけるボス部と連結される根元部には他の部位と比較して大きな荷重が加えられることがある。そのため、トリポード軸部の根元部は、外径をなるべく大きくするなど必要な強度を確保する必要がある。一方で、等速ジョイントがジョイント角を付加してトルク伝達を行うと、上述したように、ローラユニットに対してトリポード軸部が傾斜する。つまり、ローラユニットの内周面にトリポード軸部の根元部が接近することになる。そのため、トリポード軸部の根元部は、外径をなるべく小さくするなどローラユニットとの干渉を防止する必要がある。
このように、等速ジョイントは、トリポード軸部が必要な強度を確保しつつローラユニットと干渉しないように、トリポード軸部の形状を設定されることを要する。そこで、例えば特許文献3に記載の等速ジョイントは、トリポード軸部の根元部における断面形状を楕円形とする構成が記載されている。これにより、特許文献3の等速ジョイントは、楕円形の長径方向においてトルク伝達に必要とされる根元部の強度を確保し、楕円形の短径方向においてトリポード軸部とローラユニットの干渉の防止を図っている。このように、等速ジョイントには、耐久性の向上、または伝達可能な最大トルクや付加可能な最大ジョイント角の増大などの要請に伴い、トリポード軸部とローラユニットの干渉の確実な防止およびトリポード軸部の強度を向上することが求められている。
本発明は、このような事情を鑑みてなされたものであり、トリポード軸部とローラユニットの干渉を防止しつつ、トリポード軸部の強度を向上させることが可能な摺動式トリポード型等速ジョイントを提供することを目的とする。
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明によると、筒状に形成され、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、環状に形成され、それぞれの前記トリポード軸部の外周側に回転可能且つ首振り運動可能に軸支され、且つ、前記軌道溝に転動可能に配置されるローラと、を備える摺動式トリポード型等速ジョイントであって、
前記トリポード軸部は、部分球面状に形成された外周面により前記ローラを軸支する先端部と、当該先端部と前記ボス部との間に位置し且つトルク伝達時に前記ローラと非接触となる根元部を有し、前記根元部の横断の形状は、前記トリポードにおける円周方向の第一幅よりも軸線方向の第二幅の方が小さくなるように、且つ当該横断面の形状の一部に前記第一幅を長径とし前記第二幅を短径とする仮想楕円の内側に位置する凹所を有するように、形成され、前記凹所のうち前記仮想楕円の中心に最も接近する部位は、前記仮想楕円の短軸と一致する位相から前記仮想楕円の長軸側にずれた位相であって、且つ前記根元部の横断面の周方向において前記仮想楕円の長軸よりも短軸に近い位相に位置する

請求項2に係る発明によると、請求項1において、前記凹所には、前記仮想楕円の中心までの距離が前記第二幅の半分の距離よりも小さい部位が形成されている。
請求項3に係る発明によると、請求項1または2において、前記トリポード軸部の前記先端部は、前記横断面の形状を円形に形成され、前記トリポード軸部の前記根元部は、前記先端部と連結される前記トリポード軸部の軸方向位置から前記第二幅が最小となる前記トリポード軸部の軸方向位置に向かって、前記横断面の形状が漸次変形した形状に形成されている。
請求項1に係る発明によれば、トリポード軸部は、外周面を部分球面状に形成された先端部と、先端部とボス部の間に位置する根元部を有する。摺動式トリポード型等速ジョイントは、ジョイント角を付加してトルク伝達を可能とするために、トリポード軸に対するローラの首振り運動および軸方向への摺動を許容している。トリポード軸部は、このようなローラの首振り運動を可能とするために、円柱状または楕円柱状に形成されローラを軸支するタイプと、部分球面状に形成された先端部をローラの内周面に接触させて軸支するタイプとが知られている。本発明の摺動式トリポード型等速ジョイントは、後者のタイプのトリポード軸部を有するものであり、そのため先端部とボス部の間に位置する根元部の外径は、先端部の外径よりも小さくなっている。
そして、根元部の横断面の形状は、その断面の一部に仮想楕円の内側に位置する凹所を形成される構成としている。ここで、トリポード軸部における「横断面」とは、トリポード軸部の軸線に直交する平面での断面をいう。また、この「仮想楕円」とは、トリポードにおける円周方向の第一幅を長径とし、トリポードの軸方向(ボス部が連結されるシャフトの軸線方向)の第二幅を短径とする楕円である。等速ジョイントは、ジョイント角を付加してトルク伝達を行うと、ローラの内周面がトリポード軸部の根元部に対して複雑に接近と離間を繰り返す。これにより、トリポード軸部の根元部の横断面形状を楕円形とすると、トルク伝達時にトリポード軸部の根元部に最も接近するローラの最接近部は、楕円の短軸と一致する位相に位置する部位ではなく、ここから長軸側にずれた位相に位置する部位となることが見出された。よって、この最接近部で干渉が生じないように楕円形の短径を設定すると、短軸と一致する位相に位置する部位ではトリポード軸部の根元部とローラの間に隙間が生じることになる。
そこで、本発明では、上記のような構成とすることにより、トリポード軸部の根元部における横断面の形状が、少なくとも最接近部に対応する位相に凹所を有することから、トリポード軸部とローラの干渉を確実に防止することができる。さらに、従来と比較して、トリポード軸部の根元部におけるシャフトの軸方向幅(仮想楕円の短径方向の幅)を大きくすることができるので、全体として根元部の断面積を増加させることができる。結果として、トリポード軸部の強度を向上させることができる。
請求項2に係る発明によれば、凹所には、仮想楕円の中心までの距離が第二幅の半分の距離よりも小さい部位が形成されている。従来のようにトリポード軸部の根元部の横断面形状を楕円形とした場合に、各位相における楕円中心までの距離は、短軸と一致する位相で最小となり、長軸側に向かって増加し、長軸と一致する位相で最大となる。本発明では、凹所は、仮想楕円の中心までの距離が、仮想楕円の短軸と一致する位相に位置する部位と中心までの距離(第二幅の半分)よりも小さい部位を形成される。これにより、最接近部においてローラの内周面から退避させることができるので、最接近部における干渉を確実に防止することができる。
請求項3に係る発明によれば、トリポード軸部におけるローラを軸支する先端部は、当該トリポード軸部の軸線に直交する横断面の形状を円形に形成される。そして、トリポード軸部の根元部は、先端部と連結されるトリポード軸部の軸方向位置から第二幅が最小となるトリポード軸部の軸方向位置に向かって、横断面の形状が漸次変形した形状に形成されている。ここで、本発明のトリポード軸部は、ローラの首振り運動およびトリポード軸部の軸方向への摺動を好適に許容するために、ローラを軸支する先端部の横断面の形状を円形としている。また、トリポード軸部の根元部は、ローラとの干渉を防止するために、シャフトの軸線方向の幅(第二幅であり、仮想楕円の短径)を縮小されることがある。そうすると、トリポード軸部の先端部と根元部では、それぞれの横断面におけるシャフトの軸線方向の幅の差が大きくなる。
ここで、トリポード軸部が鍛造により成形される場合には、鍛造型におけるトリポード軸部の先端部と根元部をそれぞれ成形する部位の寸法に差がある。つまり、トリポード軸部を製造する際に、鍛造型にはトリポード軸部の先端部に対応する部位と根元部に対応する部位とでは付加される圧力差が生じることになる。これに対して、本発明では、従来と比較して、トリポード軸部の根元部におけるシャフトの軸方向の幅を大きくすることができるので、トリポード軸部の先端部の横断面を円形に形成した場合に、トリポード軸部の先端部と根元部における横断面の第二幅の差を小さくすることができる。これにより、鍛造型におけるトリポード軸部の先端部に対応する部位と、根元部に対応する部位とで付加される圧力差を小さくすることができる。よって、トリポード軸部を鍛造により成形する場合においても、鍛造型の負担を軽減することができる。さらに、それぞれの間の横断面の形状を漸次変形させることにより、鍛造型の一部に応力が集中することを防止できる。
摺動式トリポード型等速ジョイント1の径方向部分断面図であって、3本の軌道溝のうち1本の軌道溝の部分を示す。 図1のA−A断面図である。 図1のB−B断面図である。 図3の一部を拡大したトリポード軸部の断面図である。
以下、本発明の摺動式トリポード型等速ジョイントを具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。ここで、実施形態の摺動式トリポード型等速ジョイント(単に、「等速ジョイント」とも称する)は、車両の動力伝達シャフトの連結に用いる場合を例に挙げて説明する。例えば、自動車のドライブシャフトのインボードジョイントとして好適に使用されるものである。すなわち、この場合には、当該等速ジョイントは、ディファレンシャルギヤに連結された軸部とドライブシャフトシャフトの中間シャフトとの連結部位に用いる場合である。
<実施形態>
(等速ジョイント1の全体構成)
実施形態の等速ジョイント1について、図1を参照して説明する。本実施形態における等速ジョイント1は、ディファレンシャルギヤ側の軸部(図示せず)に連結される外輪10と、他方側の中間シャフトに連結されるトリポード20と、外輪10とトリポード20との間に介在するローラユニット30とを備えて構成される。
外輪10は、筒状(例えば、有底筒状)に形成されており、一端側に一体的に形成された連結軸部がディファレンシャルギヤに連結されている。そして、外輪10の筒状部分の内周面には、外輪回転軸Ao方向(図1の前後方向)に延びる軌道溝11が、外輪軸の周方向に等間隔に3本形成されている。なお、図1においては、1本の軌道溝11のみを示している。各軌道溝11の溝延伸方向に直交する断面形状は、外輪10の回転中心である外輪回転軸Aoに向かって開口するコの字形状をなしている。つまり、各軌道溝11は、ほぼ平面状に形成され溝底面と、相互に対向し深さ方向中央部における対向距離が最も大きくなるように円弧凹状に形成される両側の溝側面とから構成される。
トリポード20は、外輪10の筒状部分の内側に配置されている。このトリポード20は、ボス部21と、3本のトリポード軸部22とを備える。ボス部21は、円環状に形成されており、ボス部21の内周側には内歯スプライン21aが形成されている。この内歯スプライン21aは、中間シャフト(図示せず)の端部に形成された外歯スプライン(図示せず)に連結される。それぞれのトリポード軸部22は、ボス部21の外周面からそれぞれのボス部21の径方向外方に向かって延びるように立設されている。これらのトリポード軸部22は、ボス部21の周方向に等間隔(120°間隔)に形成されている。
このトリポード軸部22は、全体としては円柱状に近似した形状に形成されている。そして、トリポード軸部22は、外周面が部分球面状をなす先端部22aと、この先端部22aとボス部21との間に位置する根元部22bとから構成される。本実施形態の型等速ジョイント1は、外周面が部分球面状に形成された先端部をローラユニット30の内周面に接触させて軸支するタイプである。そのため、根元部22bの外径は、図1に示すように、先端部の外径よりも小さくなっている。つまり、トリポード軸部22は、外径の大きい先端部22aと、外径が小さくくびれた根元部22bとによって構成されている。
それぞれのトリポード軸部22の少なくとも先端部22aは、外輪10のそれぞれの軌道溝11内に挿入されている。この先端部22aは、横断面(トリポード軸部22の軸線Atに直交する断面)の形状を円形に形成されている。一方、トリポード軸部22の根元部22bは、先端部22a側からボス部21側に向かって、横断面の形状が漸次変形した形状に形成されている。また、このトリポード軸部22の根元部22bは、先端部22aに軸支されるローラユニット30との干渉を防止しつつ、トリポード軸部22の強度を向上させることを目的として、横断面の形状が設定されている。トリポード軸部22の根元部22bの詳細形状については後述する。
ローラユニット30は、全体としては、円環状となるように構成されている。ローラユニット30は、トリポード軸部22の外周側に、トリポード軸部22の軸線At回りに回転可能に、且つ、トリポード軸部22の軸線At方向に摺動可能に軸支されている。さらに、ローラユニット30は、トリポード軸部22に対して首振り運動可能である。そして、ローラユニット30は、外輪10に対して軌道溝11の溝側面に沿って転動可能に配置されている。このローラユニット30は、外ローラ31と、内ローラ32と、ニードルローラ33と、スナップリング34,35とから構成される。
外ローラ31は、円環状に形成されている。外ローラ31の外周面の軸方向断面形状は、大凡、軌道溝11の溝側面に対応する形状、即ち軌道溝11の溝側面を反転した形状に形成されている。詳細には、外ローラ31の外周面の軸方向断面形状は、単一の曲率半径により表される凸円弧形状に形成されている。そして、外ローラ31は、その中心軸が外輪回転軸Aoに直交する姿勢で、軌道溝11に転動可能に嵌挿されている。また、外ローラ31の内周面は、円筒内周面形状、即ち外ローラ31の軸方向に亘ってほぼ同径に形成されている。ただし、外ローラ31の内周面のうち両開口側には、全周に亘ってリング溝31a,31bが形成されている。
内ローラ32の軸方向長さ(ローラ回転軸Ar方向の幅)は、図1に示すように、外ローラ31に形成された両側のリング溝31a,31b間の離間距離に相当する。この内ローラ32の外径は、外ローラ31の内径より小さく形成されている。そして、内ローラ32は、外ローラ31の径方向内方に離隔して配置されている。この内ローラ32と外ローラ31との径方向隙間には、全周に亘って、複数のニードルローラ33が配置されている。そして、このニードルローラ33を介することで、外ローラ31は、内ローラ32に対して相対回転可能とされている。さらに、内ローラ32は、外ローラ31に対して、径方向内方に同軸上に配置されている。この内ローラ32は、トリポード軸部22に対して回転且つ首振り運動可能に、且つ、トリポード軸部22のトリポード軸部の軸線At方向に摺動可能となるように、トリポード軸部22の先端部22aに軸支されている。
スナップリング34,35は、縮径可能となるように、切り込み部分を有するC字型形状に形成されている止め輪である。これらのスナップリング34,35は、外ローラ31のリング溝31a,31bにそれぞれ嵌め込まれる。そして、スナップリング34,35は、内ローラ32およびニードルローラ33に対して、ローラユニット30の軸方向に引っ掛かるようにされている。つまり、スナップリング34,35は、内ローラ32およびニードルローラ33が、外ローラ31に対して、軸方向に相対的に移動することを規制している。
(トリポード軸部22の根元部22bの詳細形状)
次に、上述したトリポード軸部22の根元部22bの詳細形状について、図1〜図4を参照して説明する。ここで、トリポード軸部22は、先端部22aにおいてローラユニット30を首振り運動および軸方向への摺動を許容するために、内ローラ32の円筒内面と当接する先端部22aの外周面を部分球面状に形成している。そのため、根元部22bは、先端部22aと連結されるトリポード軸部22の軸方向位置における上端部の横断面Saの形状が、図2に示すように、円形に形成されている。
また、トリポード軸部22は、等速ジョイント1がジョイント角を付加してトルク伝達を行うと、ローラユニット30に対してトリポード軸部22が傾斜する。そうすると、ローラユニット30の内周面にトリポード軸部22の根元部22bが接近することになる。つまり、トリポード軸部22の根元部22bは、所定のジョイント角を付加してトルク伝達を行った際に、ローラユニット30と干渉しない形状とする必要がある。そのため、トリポード軸部22の根元部22bは、くびれた形状をなしている。この根元部22bのうち、トリポード20の回転軸As方向の幅が最小となる部位の横断面Sbの形状は、図3に示すように、全体形状として菱形状に形成されている。
このように、トリポード軸部22の根元部22bは、先端部22a側の上端部における横断面Saと、ボス部21側の部位における横断面Sbの形状が異なっている。そこで、本実施形態では、トリポード軸部22の根元部22bは、上述したように、先端部22a側からボス部21側に向かって、各軸方向位置における横断面の形状が横断面Saから横断面Sbに漸次変形した形状に形成されている。
根元部22bの横断面Sbは、トリポード20の回転軸Asおよびトリポード軸部22の軸線Atに直交する方向から見て、根元部22bのうち最もくびれた部位の断面である。そして、この横断面Sbは、図3に示すように、トリポード20における円周方向(図3の左右方向)の周方向幅Waよりもトリポード20の回転軸As方向(図3の上下方向)の軸方向幅Wbが小さくなるように形成されている。この周方向幅Waは本発明の「第一幅」に相当し、軸方向幅Wbは本発明の「第二幅」に相当する。さらに、根元部22bの横断面Sbの形状は、図4に示すように、仮想楕円Esの内側に位置する凹所Raを有するように形成されている。ここで、仮想楕円Esとは、横断面Sbの周方向幅Waを長径とし、横断面Sbの軸方向幅Wbを短径とするものである。また、本実施形態において、横断面Sbの凹所Raは、ほぼ直線状をなしている。また、横断面Sbの外形のうち凹所Raを除いた部分は、仮想楕円Esと一致している。
ここで、等速ジョイント1がジョイント角を付加してトルク伝達を行うと、トリポード20は、連結されたシャフトの回転軸線(トリポード20の回転軸As)の回りに自転しながら、外輪回転軸Aoに対して相対的に偏心回転する。この偏心回転は、外輪回転軸Ao方向から見た場合に、隣り合うトリポード軸部22同士がなす角度がシャフトの位相によって変化することから、各トリポード軸部22が外輪10の軌道溝11にそれぞれ収まるために等速ジョイントの構造上、一般的に生じるものである。そのため、トリポード軸部22に軸支されるローラユニット30は、トルク伝達時において、トリポード軸部22の軸線At方向への摺動に加えて首振り運動するために、その内周面がトリポード軸部22の根元部22bに対して複雑に接近と離間を繰り返すことになる。
ここで、トリポード軸部22の根元部22bの横断面形状を楕円形とすると、トルク伝達時にトリポード軸部22の根元部22bに最も接近するローラユニット30の最接近部Paは、楕円の短軸と一致する位相に位置する部位ではなく、ここから長軸側にずれた位相に位置する部位となることが見出された。そのため、この最接近部Paで干渉が生じないように最接近部Paを通る楕円形を設定すると、図4の点線で示すような楕円形の断面となる。しかし、この楕円形の短軸と一致する位相に位置する部位は、ジョイント角を付加してトルク伝達した際に、楕円の短軸方向でトリポード軸部22の根元部22bにローラユニット30が実際に最も接近する位置(仮想楕円の短軸側端部Pb)よりも中心側となる。このように、トリポード軸部22は、最接近部Paにおいてローラユニット30と干渉が発生しないように根元部22bの横断面形状の楕円形を設定すると、短軸方向でローラユニット30との間に隙間が生じることになる。
これに対して、本実施形態の等速ジョイント1は、トリポード軸部22において根元部22bの横断面Sbの形状を上述したように設定している。即ち、根元部22bの横断面Sbは、その外形が仮想楕円Esの一部と凹所Raからなることにより、最接近部Paおよび短軸側端部Pbを通るように形成されている。これにより、トルク伝達時において、トリポード軸部22とローラユニット30の干渉を確実に防止することができる。さらに、従来と比較して、トリポード軸部22の根元部22bにおけるシャフトの軸方向幅Wbを大きくすることができるので、全体として根元部22bの横断面Sbの面積を増加させることができる。結果として、トリポード軸部22の強度を向上させることができる。
また、トリポード軸部22とローラユニット30の最接近部Paは、図4に示すように、仮想楕円Esの短径を直径とする仮想円Csの内周側に位置している。そのため、凹所Raには、仮想楕円Esの中心までの距離Lが軸方向幅Wbの半分の距離よりも小さい部位を有している。例えば、トリポード軸部22の根元部22bの横断面形状を楕円形とした場合に、各位相における楕円中心までの距離は、短軸と一致する位相で最小となり、長軸側に向かって増加し、長軸と一致する位相で最大となる。これに対して、横断面Sbの凹所Raは、仮想楕円Esの中心までの距離Lが、軸方向幅Wbの半分よりも小さい部位を形成される。これにより、最接近部Paにおいてローラユニット30の内周面から退避させることができるので、最接近部Paにおける干渉を確実に防止することができる。
ここで、トリポード軸部22が鍛造により成形される場合には、鍛造型におけるトリポード軸部22の先端部22aと根元部22bをそれぞれ成形する部位の寸法に差がある。つまり、トリポード軸部22を製造する際に、鍛造型にはトリポード軸部22の先端部22aに対応する部位と根元部22bに対応する部位とでは付加される圧力差が生じることになる。これに対して、本実施形態の等速ジョイント1では、従来と比較して、トリポード軸部22の根元部22bにおける軸方向幅Wbを大きくすることができるので、トリポード軸部22の先端部22aの横断面を円形に形成した場合に、トリポード軸部22の先端部22aにおける横断面の軸方向幅と根元部22bにおける横断面の軸方向幅Wbの差を小さくすることができる。これにより、鍛造型におけるトリポード軸部22の先端部に対応する部位と、根元部22bに対応する部位とで付加される圧力差を小さくすることができる。よって、トリポード軸部22を鍛造により成形する場合においても、鍛造型の負担を軽減することができる。さらに、それぞれの間の横断面の形状を漸次変形させることにより、鍛造型の一部に応力が集中することを防止できる。
<実施形態の変形態様>
実施形態では、根元部22bの横断面Sbにおける凹所Raは、ほぼ直線状をなすものとした。これに対して、凹所Raは、仮想楕円Esの内側に位置すればよく、凹弧状または凸弧状としてもよい。このような構成においても同様の効果を奏する。ここで、例えば、トリポード軸部22の根元部22bの断面形状を楕円形とした場合に、各位相の曲率半径は、短軸と一致する位相で最大となり、長軸側に向かって漸減し、長軸と一致する位相で最小となる。これに対して、本実施形態のトリポード軸部22の根元部22bは、横断面Sbにおける凹所Raをほぼ直線状としていることから、凹所Raの曲率半径が最大となっている。このように、トリポード軸部22は、横断面Sbにおける凹所Raの曲率半径を仮想楕円Esの短軸と一致する位相の曲率半径(短軸側端部Pbの曲率半径)よりも大きく設定するか、曲率中心を仮想楕円の外側に位置するように設定(即ち、凹弧状とする)することによって、より確実にローラユニット30との干渉を防止できる。
また、根元部22bの横断面Sbにおける凹所Raには、仮想楕円Esの中心までの距離Lが軸方向幅Wbの半分の距離よりも小さい部位を有するものとした。本実施形態では、等速ジョイント1が付加するジョイント角やトリポード軸部22の強度の向上の観点から、横断面Sbの形状の基準となる仮想楕円Esを設定している。そのため、例えば、仮想楕円Esの短径を例示したものよりも小さく設定する場合には、この短径を直径とする仮想円Csの内周側に最接近部Paが位置しない場合もある。但し、トリポード軸部22とローラユニット30の干渉を防止しつつ、トリポード軸部22の強度を向上させるという観点からは、本実施形態で例示した態様が好適である。
1:等速ジョイント
10:外輪、 11:軌道溝
20:トリポード、 21:ボス部、 21a:内歯スプライン
22:トリポード軸部、 22a:先端部、 22b:根元部
30:ローラユニット(ローラ)、 31:外ローラ、 31a,31b:リング溝
32:内ローラ、 33:ニードルローラ、 34,35:スナップリング
Ao:外輪回転軸、 As:トリポードの回転軸
At:トリポード軸の軸線、 Ar:ローラ回転軸
Sa,Sb:横断面、 Wa:周方向幅(第一幅)、 Wb:軸方向幅(第二幅)
Es:仮想楕円、 Cs:仮想円
Ra:凹所、 Pa:最接近部、 Pb:短軸側端部

Claims (3)

  1. 筒状に形成され、内周面に外輪回転軸方向に延びる3本の軌道溝が形成された外輪と、
    シャフトに連結されるボス部、および、前記ボス部の外周面からそれぞれ前記ボス部の径方向外方に延びるように立設されそれぞれの前記軌道溝に挿入される3本のトリポード軸部を備えるトリポードと、
    環状に形成され、それぞれの前記トリポード軸部の外周側に回転可能且つ首振り運動可能に軸支され、且つ、前記軌道溝に転動可能に配置されるローラと、
    を備える摺動式トリポード型等速ジョイントであって、
    前記トリポード軸部は、部分球面状に形成された外周面により前記ローラを軸支する先端部と、当該先端部と前記ボス部との間に位置し且つトルク伝達時に前記ローラと非接触となる根元部を有し、
    前記根元部の横断面の形状は、前記トリポードにおける円周方向の第一幅よりも軸線方向の第二幅の方が小さくなるように、且つ当該横断面の形状の一部に前記第一幅を長径とし前記第二幅を短径とする仮想楕円の内側に位置する凹所を有するように、形成され、
    前記凹所のうち前記仮想楕円の中心に最も接近する部位は、前記仮想楕円の短軸と一致する位相から前記仮想楕円の長軸側にずれた位相であって、且つ前記根元部の横断面の周方向において前記仮想楕円の長軸よりも短軸に近い位相に位置する摺動式トリポード型等速ジョイント。
  2. 請求項1において、
    前記凹所には、前記仮想楕円の中心までの距離が前記第二幅の半分の距離よりも小さい部位が形成されている摺動式トリポード型等速ジョイント。
  3. 請求項1または2において、
    前記トリポード軸部の前記先端部は、前記横断面の形状を円形に形成され、
    前記トリポード軸部の前記根元部は、前記先端部と連結される前記トリポード軸部の軸方向位置から前記第二幅が最小となる前記トリポード軸部の軸方向位置に向かって、前記横断面の形状が漸次変形した形状に形成されている摺動式トリポード型等速ジョイント。
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