JP5760388B2 - 偏光素子とその製造方法、プロジェクター、液晶装置、電子機器 - Google Patents
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Description
特許文献1では、ワイヤーグリッド偏光素子の表面にアミノホスホネートを形成することで金属格子の保護を図っている。しかし、200℃以上に加熱される用途では有機分子であるアミノホスホネートが分解されてしまうため、十分な信頼性を確保することができなかった。
一方、特許文献2では、基板上の金属格子(金属細線)の表面を熱処理で酸化させることで耐環境性を向上させている。しかしながら、酸化処理のために基板を500℃以上に加熱する必要があり、基板の割れや変形が生じる場合があった。また金属格子自体が熱膨張により損傷を受け、光学特性を決定する金属格子の高さや幅などの寸法が変化してしまう場合があった。
この構成によれば、金属層と吸収材層との間で構成元素の相互拡散が生じるのを防止することができ、上記の拡散に起因する偏光分離特性の変動を抑えることができる。
この構成によれば、積層体の最上層に、他の誘電体層とは別の第4の誘電体層を形成するので、第4の誘電体層を任意の誘電体材料により形成できる。これにより、例えば、第4の誘電体層を光吸収性を有する材料や、光透過性を有する材料により形成することもできるため、偏光素子の光学特性の向上に寄与しうる構成となる。
この構成によれば、低反射率の反射型偏光素子を実現することができる。
この構成によれば、金属層の表面に、当該金属層を構成する金属の酸化物からなる誘電体層を容易に形成することができ、使用時の温度上昇による金属層の酸化を効果的に防止できる偏光素子となる。
この製造方法によれば、緻密な酸化膜からなる誘電体層を迅速に形成することができ、偏光素子の高温信頼性を高めることができる。
この製造方法によれば、オゾンの分解反応を促進させ、低温で酸化膜を形成することができる。また、形成される酸化膜の緻密性を高め、偏光素子の高温信頼性を向上させることができる。
この構成によれば、高温信頼性に優れた偏光素子を備え、高出力の光源に対応したプロジェクターを提供することができる。
この構成によれば、高温信頼性に優れた偏光素子を備えた液晶装置が提供される。
この構成によれば、高温信頼性に優れた表示部を具備した電子機器を提供することができる。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る偏光素子及び偏光素子の製造方法について説明する。
図1は本実施形態の偏光素子1Aの概略図であり、図1(a)は部分斜視図、図1(b)は偏光素子1AをYZ平面で切った部分断面図である。
中間誘電体層13の材料は、上記のバリア性を有する誘電体材料であれば特に限定されないが、シリコン、アルミニウム、クロム、チタン、ニッケル、タングステンなどの酸化物や窒化物、酸化窒化物により形成することができる。本実施形態の場合は、中間誘電体層13の材料としてシリコン酸化物を用いている。
金属層12の高さH1は、30nm以上200nm以下の範囲であり、金属層12のY軸方向の幅L1(線幅)は、20nm以上60nm以下の範囲である。
金属層12の表面に形成された第1の誘電体層12AのY軸方向の幅L2(金属層12の側面における厚さ)は、5nm以上30nm以下の範囲である。金属層12上における中間誘電体層13の高さH2(金属層12の頂面における厚さ)は、10nm以上100nm以下の範囲である。中間誘電体層13の幅は、30nm以上120nm以下の範囲である。
また、吸収材層14の高さH3(中間誘電体層13上における厚さ)は、5nm以上30nm以下の範囲であり、幅は20nm以上60nm以下の範囲である。吸収材層14の表面に形成された第2の誘電体層14Aの高さH4(吸収材層14の頂面における厚さ)、及びY軸方向の幅(吸収材層14の側面における厚さ)は、いずれも5nm以上30nm以下の範囲である。
また、隣り合って配置された2つの第1の誘電体層12A同士の間隔S(溝部15のY軸方向の幅)は、例えば70nmであり、周期P(ピッチ)は、例えば140nmである。
また、金属層12は、アルミニウム酸化物等の可視域で光透過率の高い材料により形成された第1の誘電体層12Aにより表面を被覆され、吸収材層14は、シリコン酸化物、ゲルマニウム酸化物等の材料により形成された第2の誘電体層14Aにより表面を被覆されている。
かかる構成を備えた本実施形態の偏光素子1Aによれば、以下の作用効果を得ることができる。
より詳しくは、基板11の吸収材層14側から入射したTE波22は、主に吸収材層14の光吸収作用によって減衰され、また場合によっては第2の誘電体層14Aにより減衰される。一部のTE波22は、吸収材層14と第2の誘電体層14Aによって吸収されることなく中間誘電体層13に入射するが、中間誘電体層13を通過する際に位相差を付与される。中間誘電体層13を通過したTE波22は金属層12(ワイヤーグリッドとして機能)で反射される。この反射したTE波22は、中間誘電体層13を通過する際に位相差を付与され、干渉効果により減衰されるともに、残りが吸収材層14で再吸収される。以上のようなTE波22の減衰効果により、吸収型の所望の偏光分離特性を得ることができる。
次に、本実施形態の偏光素子1Aの製造方法について説明する。図2は、実施形態における偏光素子の製造方法を示す工程図である。
本実施形態の偏光素子の製造方法は、基板11の一面側に、平面視ストライプ状を成して基板11の厚さ方向に積層された金属層12と中間誘電体層13と吸収材層14とを形成し、その後、酸素含有雰囲気中で金属層12及び吸収材層14の表面を酸化させることで、金属層12の表面に第1の誘電体層12Aを形成するとともに吸収材層14の表面に第2の誘電体層14Aを形成する製造方法である。
まず、図2(a)に示すように、基板11上に、金属層12を形成するための金属膜であるアルミニウム膜112と、中間誘電体層13を形成するための誘電体膜であるシリコン酸化膜113と、吸収材層14を形成するための無機膜であるシリコン膜114とを、この順に積層形成する。各層の薄膜の形成方法としては、スパッタ法やCVD法などの公知の成膜法を用いることができる。
具体的には、オゾンガスが50Paから100Paの範囲で制御された石英等の真空容器内に、金属層12、中間誘電体層13、及び吸収材層14からなる積層体が形成された基板11を配置する。次いで、Deep−UVランプ等を用いて、基板11の面11cに紫外光(波長<310nm)を照射する。このときの紫外光強度は、例えば120mW/cm2である。オゾンガスは、波長220nmから300nmの範囲で高い吸収係数を有するため、光吸収反応の結果、効率よく高いエネルギーをもつ励起状態の酸素原子を生成できる。
次に、本実施形態の偏光素子の変形例について図3を参照しつつ説明する。
図3(a)〜(c)は、第1〜第3変形例に係る偏光素子の部分断面図である。
図3(a)に示す第1変形例の偏光素子1Bは、隣り合う金属層12の間の領域に、基板11よりも屈折率の低い領域16を有している。領域16以外の構成は図1に示した偏光素子1Aと共通である。
領域16は、本変形例の場合、基板11上で隣り合って配置された金属層12の間に露出する基板11の表面をドライエッチング等により部分的に除去することで形成される。あるいは、予めストライプ状に溝が形成された基板11を用いてもよい。基板11の表面を掘り下げる深さH5は、例えば、30nm以上200nm以下の範囲である。
次に、図3(b)に示す第2変形例の偏光素子1Cは、基板11上に、側面に第1の誘電体層12Aが形成された金属層12と、中間誘電体層13(第3の誘電体層)と、側面に第2の誘電体層14Aが形成された吸収材層14とからなる積層体上に、第4の誘電体層17が形成された構成を備えている。
なお、図3(b)では隣り合う金属層12の間に低屈折率の領域16が形成されているが、図1に示したように、溝部15を有する構成であってもよい。
次に、図3(c)に示す第3変形例の偏光素子1Dは、基板11上に、側面に第1の誘電体層12Aが形成された金属層12と、側面及び頂面に第2の誘電体層14Aが形成された吸収材層14とからなる積層体が形成された構成を備えている。すなわち、第3変形例の偏光素子1Dは、図1に示した偏光素子1Aにおいて、中間誘電体層13を省略したものである。
図4は、プロジェクターの一実施形態を示す図である。
図4に示すプロジェクター800は、光源810、ダイクロイックミラー813、814、反射ミラー815、816、817、入射レンズ818、リレーレンズ819、射出レンズ820、光変調部822、823、824、クロスダイクロイックプリズム825、投射レンズ826、を有している。
図5は、本発明に係る偏光素子を備えた液晶装置300の一例を示した断面模式図である。本実施形態の液晶装置300は、素子基板310,対向基板320の間に液晶層350が挟持され構成されている。
次に、本発明の電子機器に係る他の実施形態について説明する。図6は、図5に示した液晶装置を用いた電子機器の一例を示す斜視図である。図6に示す携帯電話(電子機器)1300は、本発明の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。これにより、信頼性に優れ、高品質な表示が可能な表示部を具備した携帯電話1300を提供することができる。
次に、実施形態に係る偏光素子のシミュレーション解析結果について説明する。
Claims (11)
- 基板と、
前記基板上に平面視ストライプ状に形成され、前記基板の厚さ方向に積層された金属層及び吸収材層と、
前記金属層の表面に形成され、前記金属層を構成する金属の酸化物からなる第1の誘電体層と、
前記吸収材層の表面に形成され、前記吸収材層を形成する材料の酸化物からなる第2の誘電体層と、
を有し、
前記基板は、前記金属層の互いに隣り合う間に露出する前記基板の表面を掘り下げた領域である溝が形成され、
前記溝は、前記基板よりも屈折率が低いことを特徴とする偏光素子。 - 前記金属層と前記吸収材層との間に、第3の誘電体層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏光素子。
- 前記金属層と前記吸収材層とを含む積層体の上層に、第4の誘電体層が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の偏光素子。
- 前記吸収材層が、シリコン、ゲルマニウム、クロムからなる群より選ばれる1種又は2種以上からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偏光素子。
- 前記金属層が、アルミニウム、銀、銅、クロム、チタン、ニッケル、タングステン、鉄からなる群より選ばれる1種又は2種以上の金属からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の偏光素子。
- 基板の一面側に、平面視ストライプ状を成して前記基板の厚さ方向に積層された金属層及び吸収材層を形成する工程と、
酸素含有雰囲気中で前記金属層及び前記吸収材層の表面を酸化させることで、前記金属層の表面に第1の誘電体層を形成するとともに前記吸収材層の表面に第2の誘電体層を形成する工程と、
前記金属層の互いに隣り合う間に露出する前記基板の表面を掘り下げることによって、前記基板よりも屈折率の低い領域を形成する工程と、
を有することを特徴とする偏光素子の製造方法。 - 前記酸素含有雰囲気がオゾンガス雰囲気であることを特徴とする請求項6に記載の偏光素子の製造方法。
- 前記第1及び第2の誘電体層を形成する工程において、前記基板に紫外光を照射することを特徴とする請求項6又は7に記載の偏光素子の製造方法。
- 光を射出する照明光学系と、前記光を変調する液晶ライトバルブと、前記液晶ライトバルブで変調された光を被投射面に投射する投射光学系と、を備え、
前記液晶ライトバルブと前記照明光学系との間、及び前記液晶ライトバルブと前記投射光学系との間のうち少なくとも一方に、請求項1から5のいずれか1項に記載の偏光素子が設けられていることを特徴とするプロジェクター。 - 一対の基板間に液晶層を挟持してなり、少なくとも一方の前記基板の前記液晶層側に、請求項1から5のいずれか1項に記載の偏光素子が形成されていることを特徴とする液晶装置。
- 請求項10に記載の液晶装置を備えたことを特徴とする電子機器。
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