JP5758061B2 - 細胞クラスターの生成法 - Google Patents
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Description
本発明は、三次元細胞クラスターを形成するための細胞誘発法に関する。さらに、本発明は、当該クラスターのサイズおよび均一性を制御する方法にも関する。
生体内の哺乳類組織において、細胞は、複雑な三次元(3-D)環境に存在し、そこで、中心細胞または細胞群の周囲に三次元で均一、または、不均一に細胞が増殖する。細胞は、隣接する細胞と密着し、当該細胞に支持体を提供する細胞外マトリックス(ECM)網にも連結される。細胞の運命の決定は、周辺細胞からの細胞−自律シグナルおよび刺激によって提供される複雑な相互作用(interplay)に支配される。インテグリンを介したECMとの細胞接触は、増殖、分化、遊走、アポトーシスおよび細胞形状などの多くの細胞機能に影響を与えることが広く認められている。先行する膵臓機能研究を簡単にまとめると、例えば、米国特許第6703017は、血糖値の変化への迅速な、しかも微細に制御された応答に対して理想的なランゲルハンス島の注目すべき構造および細胞構成を報告している。
本発明は、とりわけ、細胞クラスターの制御形成法を含む。本発明のクラスターは、単細胞、細胞クラスター、またはそれらの組み合わせから形成することができる。クラスターを構成する細胞は、単独型または数種類の型であってよい。細胞は、幹細胞、あるいは未分化細胞もしくは部分的分化から完全分化までの細胞および/または遺伝子操作細胞である初代または拡大(expanded)細胞とすることができる。本発明の細胞は、単層または浮遊液中でクラスター化開始を誘発されることができる。
a)細胞を入手する段階と、
b)液体培地中で細胞浮遊液を形成する段階と、
c)表面によって境界を示された容積測定空間で細胞を含む培地を培養する段階と、
d)当該表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む。
本発明は、細胞のクラスター化を誘発する方法を含む。細胞クラスターは、1個以上の細胞の三次元凝塊であり、その場合、当該細胞は単層で形成されないと考えられることができる。クラスターは、例えば回転楕円体、楕円、立方体など、どんな形状であってもよい。さらに、それらは、中心細胞または小さな細胞中心群の周囲に三次元で生じる不均一、非非対称(non-asymmetrical)な凝塊であってもよい。
膵臓由来細胞の調製
膵臓の調製−臨床移植に適さないヒトの膵臓は、研究使用への適切な同意を得た後、ザ・ナショナル・ディジーズ・リサーチ・インターチェンジ(The National Disease Research Interchange)(ペンシルベニア州フィラデルフィア)から入手された。膵臓は、臓器保存液とともに、氷上ステンレススチール容器に移され、すべての余分な組織を切り取られた。膵管は、18-ゲージカテーテルを挿入され、膵臓は、ダルベッコ(Dulbecco)リン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に溶解しているリベラーゼHI(LIBERASE HI)(登録商標)酵素(ロシュ社(Roche)−0.5 mg/mL)およびDNase I(0.2 mg/mL)を含有する酵素溶液を注入された。
膵臓細胞のクラスター化
実施例1に従って単離された膵臓細胞は、低付着6‐穴平板(コーニング・ライフ・サイエンス(Corning Life Science))の浮遊液中で培養された。使用された培地は、0、2または10%FBS補充DMEM-低グルコースを含んだ。各穴は、細胞0.25 x 106、0.5 x 106または1.0 x 106個を含有した。細胞は、2日間浮遊液中で培養された。クラスターサイズ、生存可能性、均一性および数に基づいてクラスター化効率が評価された。
生存可能性試験
実施例1に従って、2%FBS補充のDMEM-LG含有培地中で穴1個当り細胞0.5 x 106個によってクラスターが形成された。3日目、穴からクラスターを取り出し、50 mL試験管(ファルコン社(Falcon))中にピペット注入された。次に、当該穴がPBSで洗浄され、試験管内容物でプールされ、全クラスターが確実に収集された。その後、クラスターは、200 rpmで2分間遠心分離され、上清が除去され、5 mLのトリプル(TRYPLE)(登録商標)エクスプレス(カリフォルニア州インビトロジェン社(Invitrogen))に替えられた後、10分間インキュベートされた。数回のピペット操作は、当該クラスターの分離を進めるのに役立った。次に、細胞浮遊液が顕微鏡下で評価され、単細胞浮遊液の調製が確認された。グァバ(Guava)PCA-96細胞分析装置およびビアカウント(VIACOUNT)(登録商標)試薬(カリフォルニア州グァバ社(Guava))を使って細胞の生存可能性が評価された。得られた細胞数は、3回の個別試技の平均値であった。総細胞生存率が測定されると、76%であり、クラスターを構成する過半数の細胞が生存可能な細胞であることを実証した。
代替クラスター化技術
低付着ヒドロゲルコーティングを除去するために、滅菌メスを使って、10 cm低付着平板の表面に縁が作られた。このプロセスにより、下部のポリスチレン表面が露出された。次に、PBS中10μg/mLコラーゲンIV型(BDバイオサイエンス社(BD Bioscience))の5 mL溶液がピペットで平板に注入され、1時間インキュベートされた。コラーゲンは、低付着ヒドロゲルが除去されている縁(edge)だけに沿って結合した。その後、当該コラーゲン溶液は、吸引、除去され、2%FBS補充DMEM-LG中細胞1.0 x 106個の単細胞浮遊液が、ピペットで当該平板に注入された。細胞は、5%CO2を含有する37℃の雰囲気中で一晩インキュベートされた。次に、非付着細胞が取り出され、新鮮培地が添加された。隔日で全部の培地の交換が実施された。10日目、露出した縁に付着クラスターが出現し、結局、非付着クラスターになった(図7)。
羊水由来細胞
本発明の細胞の単離に使用される羊水は、通常の胎児核型判定用に妊娠17〜22週目に実施された日常的な操作手順の羊水穿刺で得られた検体から入手された。当該羊水は、400-x gで7分間遠心分離され、上清が除去された。得られた細胞ペレットは、アムニオマックス(Amniomax)(登録商標)増殖培地(米国メリーランド州ギブコ社(Gibco))中に再浮遊された。当該細胞は、フィブロネクチン(10μg/ml) (米国カリフォルニア州BDバイオサイエンス社(BD Biosciences))で被覆された平板上で培養された。当該培養物は、低酸素条件(3%O2)下で、少なくとも5〜10日間そのまま放置され、その後、当該培養物は、同一増殖培地を供給され、ほぼ70〜80%の集密度を達成するまで培養された。この段階の細胞は、「P0」と称された。本発明の目的に使用される羊水由来(AF)細胞は、拡大継代(expansion passage)10であった。図2は、典型的羊水由来細胞形態を示す。
羊水由来細胞のクラスター化
この実験には、2種類のAF細胞系が使用された。当該細胞系は、上記実施例で指示されたとおりに定められた。クラスター化は、実施例2で上記された方法を使って誘発された。細胞は、2%FBS補充DMEM-LG中、低付着6−穴平板で培養された。クラスターは、48時間目に評価された。当該2種類の系の一方(A系)がクラスターを形成した。第2の細胞系(B系)は、培養時間が1週間まで延長されても、クラスター誘発法に応答しなかった。
クラスター形成誘発法としての共存培養(Co-culturing)
この実験は、2種類の細胞型を使って実施された:膵臓由来細胞と上記実施例で得られたとおりのAF細胞B系であった。クラスター化は、実施例2に概説された方法を使って誘発された。2%FBS補充DMEM-LG中、低付着6−穴平板で細胞が培養された。クラスターは、48時間目に評価された。各穴は、膵臓由来細胞単独かAFのB系細胞単独か、2種類の細胞型の1:1比混合物の細胞0.5 x 106個の出発密度で構成された。予想通り、単独培養された膵臓由来細胞は、48時間以内にクラスターを形成した。AFのB系細胞は、培養を1週間まで延長しても、クラスターをまったく形成しなかった。対照的に、当該2種類の細胞型の組み合わせは、48時間以内にクラスターを形成した。クラスターが両細胞型を含んだことを保証するために、各細胞型は、鮮やかな多色細胞標識キット(米国オレゴン州モレキュラー・プローブス社(Molecular Probes))を使って、様々な蛍光マーカーでタグを付けられた。クラスター誘発後、当該クラスターは、蛍光顕微鏡下で分析された。図8は、両細胞型を含むクラスターを示す。
クラスター化誘発法としての極小細胞群(Micro-islands)
実施例2に概説された方法によって膵臓由来細胞が得られた。細胞は、10%FBS補充DMEM-LG培地中で培養、維持された。PBS中20μg/mLの濃度で、コラーゲンIV (ヴェンダー社(Vendor)??)溶液が調製された。この実験には、ヒドロゲルで被覆した(直径=10 cm)(ニューヨーク州コーニング(Corning))低付着平板が使用された。当該コラーゲンIV溶液の0.2μL小滴が、平板表面に沈着され、当該平板は、室温で1時間インキュベートされた。10%FBS補充DMEM-LG培地中膵臓由来細胞の10 mL細胞浮遊液がピペットで当該平板表面上にゆっくりと注入された。当該平板は、5%CO2雰囲気下、37℃で3時間インキュベートされた。翌日、培地の完全交換が実施され、浮遊液に残る全細胞が除去された。前記コラーゲンIV被覆表面に付着した細胞は、細胞群パターン(pattern of islands)を形成した(図9)。24時間目、細胞は広がり、細胞群の間に介在する空間を埋めた(図10)。48時間目、細胞は、集合し、クラスターとなり(図11)、結局、前記平板表面から剥離された。
単層およびクラスター中の膵臓由来細胞のPCR分析
実施例1に従って単離された膵臓由来細胞は、単層で培養されるか、実施例2に記述される方法に従ってクラスターを誘発された。
(1) 細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中に細胞浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に細胞を含有する前記培地をインキュベーションする段階と、
d.前記表面への細胞付着を制限する段階と、
を含む、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
前記方法が、生体外で実施される、
方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
(4) 実施態様1に記載の方法において、
培養条件の操作が、さらなるクラスター凝集を防止するための因子の添加を含む、
方法。
(5) 実施態様4に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
(6) 実施態様5に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
(7) 実施態様6に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
(8) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面への細胞付着を制限する前記段階が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値まで前記細胞への前記表面の結合親和性を低下させる段階を含む、
方法。
(9) 実施態様1に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、その後、浮遊液中で停止する、
方法。
(10) 実施態様1に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
(11) 実施態様1に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
(12) 実施態様1に記載の方法において、
前記表面の領域に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
(13) 細胞クラスターを形成する方法において、
a.クラスター化される細胞群を選択する段階と、
b.液体培地中で前記細胞の小群の浮遊液を形成する段階と、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞小群を含有する前記培地を導入する段階と、
d.前記細胞小群を前記表面に付着させる段階と、
e.前記表面に付着しなかった前記細胞小群の前記細胞を除去する段階と、
f.前記細胞の残りの細胞を導入する段階と、
g.前記表面に付着している前記細胞に前記残りの細胞を付着させる段階と、
を含む、方法。
(14) 実施態様13に記載の方法において、
前記表面が、表面積を有し、
前記細胞小群を前記表面に付着させる前記段階が、細胞付着に利用できる前記表面積を制限する段階を含む、
方法。
(15) 実施態様14に記載の方法において、
前記表面積を制限する前記段階が、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングする段階を含む、
方法。
(16) 実施態様14に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。
(17) 実施態様15に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。
(18) 実施態様13に記載の方法において、
細胞付着が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値までの前記細胞への前記表面の結合親和性の低下によって制限される、
方法。
(19) 実施態様13に記載の方法において、
前記クラスターが、初めに前記表面上に生じ、次に、浮遊液中で停止する、
方法。
(20) 実施態様13に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。
(21) 実施態様13に記載の方法において、
クラスター化される前記細胞群が、2種類以上の細胞型を含む、
方法。
(22) 実施態様13に記載の方法において、
追加因子が培養物に添加され、さらなるクラスター凝集を防止する段階、
をさらに含む、方法。
(23) 実施態様13に記載の方法において、
前記表面の制限された領域上に細胞外マトリックスタンパクを沈着させる段階、
をさらに含む、方法。
Claims (16)
- 細胞クラスターを形成する生体外の方法において、
a.2種類以上の細胞型を含む細胞の混合物を広げることと、
b.約2%〜約10%の濃度で血清を含む液体培地中の前記細胞の浮遊液を形成することと、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中で前記細胞を含有する前記培地をインキュベーションすることと、
d.前記表面への細胞付着を制限することと、
を含み、
前記制限することは、前記インキュベーションすることの前に実施され、
前記表面は、表面積を有し、前記表面への細胞付着を制限することは、細胞付着に利用できる前記表面積を制限することを含み、
前記方法は、取得された羊水由来細胞を、約2%〜約10%の濃度で血清を含む液体培地中に当該細胞型を単独で含有する浮遊液を前記容積空間中でインキュベーションすることによりクラスター化が誘発されるA系と前記クラスター化が誘発されないB系とに区別することをさらに含み、
前記2種類以上の細胞型のうち少なくとも1つの細胞型は、羊水由来細胞B系であり、前記2種類以上の細胞型のうち他の少なくとも1つの細胞型は、膵臓由来細胞である、方法。 - 請求項1に記載の方法において、
前記表面は、前記表面の選択された場所だけに細胞付着が可能になるように改質されたものである、方法。 - 請求項1に記載の方法において、
前記表面積を制限することが、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングすることを含む、
方法。 - 請求項3に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。 - 請求項4に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。 - 請求項1に記載の方法において、
前記表面への細胞付着を制限することが、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値まで前記細胞への前記表面の結合親和性を低下させることを含む、
方法。 - 請求項1に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。 - 請求項1に記載の方法において、
前記表面の領域に細胞外マトリックスタンパクを沈着させること、
をさらに含む、方法。 - 細胞クラスターを形成する生体外の方法において、
a.2種類以上の細胞型を含む細胞の混合物を広げることと、
b.約2%〜約10%の濃度で血清を含む液体培地中で前記細胞の小群の浮遊液を形成することと、
c.表面によって境界を画される容積測定空間中に前記細胞小群を含有する前記培地を導入することと、
d.前記細胞小群を前記表面に付着させることと、
e.前記表面に付着しなかった前記細胞小群の前記細胞を除去することと、
f.前記細胞の残りの細胞を導入することと、
g.前記表面に付着している前記細胞に前記残りの細胞を付着させることと、
を含み、
前記表面が、表面積を有し、前記細胞小群を前記表面に付着させることが、細胞付着に利用できる前記表面積を制限することを含み、
前記制限することは、前記培地を導入することの前に実施され、
前記方法は、取得された羊水由来細胞を、約2%〜約10%の濃度で血清を含む液体培地中に当該細胞型を単独で含有する浮遊液を前記容積空間中でインキュベーションすることによりクラスター化が誘発されるA系と前記クラスター化が誘発されないB系とに区別することをさらに含み、
前記2種類以上の細胞型のうち少なくとも1つの細胞型は、羊水由来細胞B系であり、前記2種類以上の細胞型のうち他の少なくとも1つの細胞型は、膵臓由来細胞である、方法。 - 請求項9に記載の方法において、
前記表面積を制限することが、細胞付着を抑制する材料で前記表面をコーティングすることを含む、
方法。 - 請求項9に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料が、細胞付着を防止する、
方法。 - 請求項10に記載の方法において、
細胞付着を抑制する前記材料の一部が除去される、
方法。 - 請求項9に記載の方法において、
細胞付着が、細胞自体への前記細胞の結合親和性よりも低い数値まで前記細胞への前記表面の結合親和性を低下させることによって制限される、
方法。 - 請求項10に記載の方法において、
前記クラスターが、前記表面上に生じる、
方法。 - 請求項9に記載の方法において、
前記表面の制限された領域上に細胞外マトリックスタンパクを沈着させること、
をさらに含む、方法。 - 請求項1または9に記載の方法において、
前記液体培地が、約2%の濃度で血清を含む、方法。
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