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JP5639471B2 - 感染症治療効果増強剤 - Google Patents

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Description

本発明は、感染症治療効果増強剤に関する。
細菌による感染症の予防や治療のためにβ−ラクタム系抗菌薬をはじめ数多くの抗菌薬が開発され、実用化されてきた。一方、臨床における抗菌薬の使用量の増加に伴い、これら抗菌薬に対する耐性菌の出現が顕著になり、感染症治療における重大な問題となっている(例えば、非特許文献1を参照)。
耐性菌による感染症の中で、特に難治性あるいは重症感染症例で問題となっている菌種の一つとして、多剤耐性緑膿菌(multidrug−resistant Pseudomonas aeruginosa、MDRP)を挙げることができる。多剤耐性緑膿菌に対しては、特効的に効果が期待できる薬剤が存在しないのが現状である。高齢化あるいは臓器移植、抗癌治療などの高度医療の普及に伴い、特に免疫力の低下した患者において頻発する感染症、いわゆる日和見感染症が医療現場では極めて大きな問題となってきており、上記耐性菌への対策は急務を要する状況である(例えば、非特許文献1を参照)。
メタロβ−ラクタマーゼは、多剤耐性緑膿菌の多くやセラチア菌などが産生する金属イオン含有ペプチダーゼの一種であり、その酵素活性に亜鉛などの2価の金属イオンを必要とする。メタロβ−ラクタマーゼの最大の特徴は、β−ラクタマーゼに極めて安定なカルバペネム系抗菌薬を含む、ほとんど全てのβ−ラクタム系抗菌薬を加水分解することである(例えば、非特許文献1を参照)。このため、メタロβ−ラクタマーゼ産生細菌に対するβ−ラクタム系抗菌薬の抗菌効果は非常に限定的である。
エチレンジアミン四酢酸は金属キレート剤の一種であり、EDTAあるいはエデト酸とも呼ばれる。特許文献1には、生体外でβ−ラクタマーゼを検出するための試薬組成物が開示されている。その中で、β−ラクタマーゼの阻害剤の一種としてEDTAが記載されている。
非特許文献2には、エデト酸の実験動物による毒性試験の結果が記載されている。それによれば、エデト酸を静脈内投与した場合、注入速度が速いと血清中のカルシウムが急速にキレート除去され、急激なカルシウムイオンの濃度の低下により、テタニー症状をきたし四肢遠位筋、咽頭筋、呼吸器筋などに拘縮が起こり死亡する場合がある。テタニーとは血液中のカルシウム濃度が低下することで筋肉の異常な収縮による硬直、痺れ、知覚障害などを生じる状態をいう。
細菌の産生するマトリックスメタロプロテアーゼなどのメタロプロテアーゼは、感染病巣において血管・組織などを障害し、病態を悪化させることが考えられる。
特開2004−166694号公報
International Journal of Antimicrobial Agents 29、306−310、2007 化学物質の初期リスク評価書 No.14 エチレンジアミン四酢酸、財団法人 化学物質評価研究機構 安全性評価技術研究所
上記のように、細菌による感染症において、抗菌薬に対する耐性菌の出現が顕著になり、感染症治療における深刻な問題となっている。そこで本発明は、抗菌薬に対する耐性菌の中でも、特に、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の治療において、治療効果を増強することが可能な薬剤を提供することを目的とする。
本発明は、エデト酸、エデト酸塩及びこの水和物からなる群より選ばれるエデト酸化合物からなる、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の治療における、治療効果増強剤を提供する。
このような治療効果増強剤を感染症患者に投与することにより、抗菌薬のみでは治療が困難な、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症を治療することが可能となる。
治療効果増強が顕著なことから、エデト酸化合物は、エデト酸のアルカリ金属塩、エデト酸のアルカリ土類金属塩又はこれらの水和物であることが好ましい。
上記の治療効果増強剤は経鼻投与用であってもよい。経鼻投与用であると、人工呼吸器を使用している患者にも容易に投与することができる。また、局所に高濃度の薬剤を持続的に留めることができるため、より高い効果が期待できる場合がある。
上記の治療効果増強剤は注射剤用であってもよい。注射剤の形態であると、患者への投与が比較的容易であるため使いやすい。
治療効果増強剤は、エデト酸化合物を溶解又は分散させる溶媒を含有させた状態で用いてもよい。このような治療効果増強剤は液状であり投与が容易である。
上記の治療効果増強剤の1つの態様において、上記の治療は、β−ラクタム系抗菌薬の使用を含むものであり、上記の治療効果は、当該β−ラクタム系抗菌薬の抗菌効果である。β−ラクタム系抗菌薬としては、タゾバクタムとピペラシリンとの組み合わせ(以下、タゾバクタム/ピペラシリンという場合がある。)が例示できる。
金属イオン含有ペプチダーゼの一種であるメタロβ−ラクタマーゼは、β−ラクタム系抗菌薬を加水分解してしまう。このため、メタロβ−ラクタマーゼ産生細菌による感染症をβ−ラクタム系抗菌薬で治療することはほとんど不可能である。しかし、本発明の治療効果増強剤をβ−ラクタム系抗菌薬と併用することにより、β−ラクタム系抗菌薬の抗菌効果を増強し、このような感染症を治療することが可能となる。
よって、上記態様の治療効果増強剤は、β−ラクタム系抗菌薬とともに感染症治療用キットとして用いることができる。このキットは、治療効果増強剤とβ−ラクタム系抗菌薬がセットになっているため、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の効果的な治療に有効である。β−ラクタム系抗菌薬としては、タゾバクタム/ピペラシリンが例示できる。
上記の治療効果増強剤の別の態様において、上記の治療効果は、その細菌が産生する金属イオン含有ペプチダーゼの阻害効果である。
例えば、金属イオン含有ペプチダーゼの1種であるマトリックスメタロプロテアーゼは、血管や組織など生体細胞に傷害を与えると共に細菌の侵入性を増強することにより毒性を発揮する。マトリックスメタロプロテアーゼ産生細菌による感染症の治療において、本発明の治療効果増強剤は、細菌が産生するマトリックスメタロプロテアーゼの活性を阻害することにより上記の毒性を抑制するため、このような感染症の治療効果を増強することができる。
よって、上記態様の治療効果増強剤は、上記細菌用の抗菌薬とともに感染症治療用キットとして用いることができる。このキットは、治療効果増強剤と抗菌薬がセットになっているため、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の効果的な治療に有効である。
本発明はまた、上記の治療効果増強剤及び抗菌薬を含む、感染症治療キットを提供する。このキットは、治療効果増強剤と抗菌薬がセットになっているため、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の効果的な治療に用いることができる。抗菌薬としては、タゾバクタム/ピペラシリンが例示できる。
本発明の治療効果増強剤又は感染症治療キットによって、従来有効な治療手段が存在しなかった多剤耐性緑膿菌を含む、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の治療効果を増強することができる。
実施例1の結果を示す図である。 実施例2の結果を示す図である。 実施例3の結果を示す図である。 実施例4の結果を示す図である。 実施例5の結果を示す図である。 実施例6の結果を示す図である。 実施例7の結果を示す図である。 比較例1の結果を示す図である。 比較例2の結果を示す図である。 実施例8、比較例3及び比較例4の結果を示すグラフである。IPM:イミペネム。 実施例8、比較例3及び比較例4の結果を示すグラフである。IPM:イミペネム。 実施例9及び比較例5の結果を示すグラフである。IPM:イミペネム。 マウスの生存率を表すグラフである。IPM:イミペネム。 マウスの生存率を表すグラフである。
本発明の治療効果増強剤はエデト酸、エデト酸塩及びこの水和物からなる群より選ばれるエデト酸化合物からなるものであり、当該エデト酸化合物を溶解又は分散させる溶媒を更に含むものであってもよい。
治療効果増強の度合いと、人体に対する適合性の観点からは、エデト酸の1価若しくは2価金属塩又はこれらの水和物であることが好ましい。エデト酸と塩を形成する1価の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられ、2価の金属としては、バリウム、カルシウム、銅、鉄、マグネシウム、ニッケル、マンガン、亜鉛が挙げられる。なお、エデト酸の金属塩は、1分子中に複数種の金属を含有していてもよく、エデト酸一金属塩、エデト酸二金属塩、エデト酸三金属塩、エデト酸四金属塩のいずれでもよい。水和物における、水の付加数はそれぞれの塩において固有の数値が存在する。
エデト酸の1価若しくは2価金属塩又はこれらの塩としては、C1012NaBa、C1012NaBa・4HO、C1012NaCa、C1012NaCa・2HO、C1012NaCu、C1012NaCu・4HO、〔−CHN(CHCOOH)(CHCOOLi)〕、〔−CHN(CHCOOH)(CHCOOLi)〕・HO、〔−CHN(CHCOOH)(CHCOOK)〕、〔−CHN(CHCOOH)(CHCOOK)〕・2HO、〔−CHN(CHCOOH)(CHCOONa)〕、〔−CHN(CHCOOH)(CHCOONa)〕・2HO、C1012NaFe、C1012NaFe・3HO、C1012NaMg、C1012NaMg・4HO、C1012NaMn、C1012NaMn・3HO、C1012NaNi、C1012NaNi・2HO、〔−CHN(CHCOONa)、〔−CHN(CHCOONa)・4HO、C1012NaZn、C1012NaZn・4HO等が挙げられる。中でも、ヒトに投与した場合の副作用が低い点から、エデト酸カルシウム二ナトリウム塩[C1012NaCa]又はその水和物[例えば、C1012NaCa・2HO]が好ましい。
治療効果増強剤に添加可能な、エデト酸化合物を溶解又は分散させる溶媒としては、例えば、生理食塩水、5%ブドウ糖注射液が挙げられる。溶媒を含有する場合において、エデト酸化合物からなる治療効果増強剤の含有量としては、総容積5mLに対して、0.1〜10g、好ましくは0.1〜5g、更には0.1〜2g、特には0.5〜1.5gが好ましい。
本発明において、用語「ペプチダーゼ」は、ペプチドやタンパク質のペプチド結合を加水分解する酵素を意味するものとする。一般的に、用語「ペプチド」は、約100残基未満のアミノ酸がペプチド結合によって鎖状に連結した比較的低分子量の分子を指し、用語「タンパク質」は、約100残基以上のアミノ酸がペプチド結合によって鎖状に連結した比較的高分子量の分子を指す。
金属イオン含有ペプチダーゼとは、その酵素活性に亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ニッケル、コバルト、銅、鉄などの金属イオンを必要とするペプチダーゼであり、メタロβ−ラクタマーゼ、エラスターゼを含むマトリックスメタロプロテアーゼ、ゼラチナーゼなどが例示できる。メタロβ−ラクタマーゼは、クラスBβ−ラクタマーゼ、亜鉛β−ラクタマーゼ、カルバペネマーゼなどとも呼ばれる場合がある。
1つの態様において、エデト酸塩を含む治療効果増強剤は、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症を、β−ラクタム系抗菌薬の使用を含む治療によって治療する場合に使用することができる。この場合、患者に、エデト酸塩を含む治療効果増強剤と共にβ−ラクタム系抗菌薬を投与するか、あるいは、患者にエデト酸塩を含む治療効果増強剤を投与したのち1〜2時間後にβ−ラクタム系抗菌薬を投与することが好ましい。エデト酸塩を含む治療効果増強剤とβ−ラクタム系抗菌薬の投与は4〜12時間おきに継続的に行ってもよい。投与するエデト酸塩は成人・小児ともに30mg/kg程度まで投与することができる。なお、マウスによる動物実験の結果から、経鼻投与では5mg/kgから有効性が認められている。エデト酸塩の毒性は、経鼻投与では300mg/kg、静脈内投与では200mg/kgまでマウスでは認められていない。β−ラクタム系抗菌薬は患者の体重に対して10(カルバペネム系薬の通常1日投与量)〜300(タゾバクタム/ピペラシリンの1日投与量上限)mg/kg投与するとよい。この場合にエデト酸塩を含む治療効果増強剤によって増強される治療効果は、β−ラクタム系抗菌薬の抗菌効果である。ここで抗菌効果とは、感染症の原因菌の増殖が抑制される効果を意味する。
β−ラクタム系抗菌薬としては、イミペネム/シラスタチン(imipenem/cilastation:IPM/CS)、メロペネム(meropenem:MEPM)、ビアペネム(biapenem:BIPM)、パニペネム/ベタミプロン(panipenem/betamipron:PAPM/BP)、ドリペネム(doripenem:DRPM)などのカルバペネム系抗菌薬、ファロペネム(faropenem:FRPM)などのペネム系抗菌薬、アズトレオネム(aztreonam:AZT)などのモノバクタム系抗菌薬、セフタジジム(ceftazidime:CAZ)、セフェピム(cefepime:CFPM)、セフピロム(cefpirome:CPR)、セフトリアキソン(ceftriaxone:CTRX)、セフォゾプラン(cefozopran:CZOP)、スルバクタム/セフォペラゾン(sulbactam/cefoperazone)などのセフェム系抗菌薬、アンピシリン(ampicillin:ABPC)、ピペラシリン(piperacillin:PIPC)などのペニシリン系抗菌薬、タゾバクタム/ピペラシリン(tazobactam/piperacillin:TAZ/PIPC)などβ−ラクタマーゼ阻害剤との合剤などが例示でき、そのいずれを使用してもよい。
本発明の別の態様において、エデト酸塩を含む治療効果増強剤は、患者に対する毒性を発揮する金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による、感染症の治療に用いることができる。この場合、エデト酸塩を含む治療効果増強剤は、細菌が産生する金属イオン含有ペプチダーゼの活性を阻害する効果を増強する。
このような金属イオン含有ペプチダーゼとしては、エラスターゼを含むマトリックスメタロプロテアーゼが例示できる。
これらの金属イオン含有ペプチダーゼを産生する細菌による感染症を治療する場合、患者に、エデト酸塩を含む治療効果増強剤のみを投与してもよいし、エデト酸塩を含む治療効果増強剤と共に抗菌薬を投与してもよい。前者の場合には、患者自身の免疫系の作用により金属イオン含有ペプチダーゼを産生する細菌が体内から除去され、感染症が治癒する。後者の場合には、抗菌薬の抗菌効果により、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌の増殖の抑制がより促進される。この場合の抗菌薬としては、上記のβ−ラクタム系抗菌薬の他にも、ゲンタミシン(gentamicin:GM)、トブラマイシン(tobramycin:TOB)、アミカシン(amikacin:AMK)、アルベカシン(arbekacin:ABK)などのアミノグリコシド系抗菌薬、エリスロマイシン(erythromycin:EM)、クラリスロマイシン(clarithromycin:CAM)、アジスロマイシン(azithromycin:AZM)などのマクロライド系抗菌薬、ミノサイクリン(minocycline:MINO)、ドキシサイクリン(doxycycline:DOXY)などのテトラサイクリン系抗菌薬、シプロフロキサシン(ciprofloxacin:CPFX)、レボフロキサシン(levofloxacin:LVFX)、スパルフロキサシン(sparfloxacin:SPFX)、トスフロキサシン(tosufloxacin:TFLX)、パズフロキサシン(pazufloxacin:PZFX)、モキシフロキサシン(moxifloxacin:MFLX)、ガチフロキサシン(gatifloxacin:GFLX)、ガレノフロキサシン(garenoxacin:GRNX)、シタフロキサシン(sitafloxacin:STFX)などのフルオロキノロン系抗菌薬などが好適に使用できる。
1つの態様において、エデト酸塩を含む治療効果増強剤は経鼻投与用であってよい。この場合、投与剤形としては、粉末あるいは液体のいずれであってもよい。投与回数はβ−ラクタム系抗菌薬の投与回数を参考に決められる。β−ラクタム系抗菌薬は通常1日2〜4回投与で使用されることが多い。投与量はエデト酸塩の毒性が出現しない範囲で最大限に使用されるべきである。
エデト酸塩を含む治療効果増強剤は、抗菌薬と組み合わせてキットとして供給することができる。メタロβ−ラクタマーゼ産生細菌による感染症を治療するための感染症治療キットは、エデト酸塩を含む治療効果増強剤と、抗菌薬としてβ−ラクタム系抗菌薬とを含むとよい。また、毒性を発揮する、金属イオン含有ペプチダーゼの阻害が有効であると判断される場合の感染症治療キットは、エデト酸塩を含む治療効果増強剤と、β−ラクタム系抗菌薬に限らず上記の様々な抗菌薬のいずれかを含むことができる。
以下、本発明の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲での種々の変更が可能である。
(β−ラクタム系抗菌薬に対するエデト酸塩の感染症治療効果増強作用の検討−チェッカーボード法による検討)
エデト酸塩としてブライアン(商品名、エデト酸カルシウム二ナトリウム製剤、日新製薬株式会社)を用い、β−ラクタム系抗菌薬としてイミペネム(萬有製薬株式会社)を用いたチェッカーボード法により、エデト酸塩の感染症治療効果増強作用を検討した。
チェッカーボード法は、感染症治療薬の併用効果を試験管内で判定するために一般的に用いられている方法である。具体的には、まず、96ウェルマイクロプレートに、濃度を変えたイミペネム及びブライアンを含むMueller Hinton brothを調製した。次に、緑膿菌を約5×10CFU/ウェルずつ接種し、35℃にて静置培養した。16〜20時間の培養後、培地の濁度あるいは沈殿の目視によって、緑膿菌の増殖を確認し、イミペネムの緑膿菌に対する感染症治療効果を、ブライアンがどの程度増強させるかを判定した。この場合の感染症治療効果は抗菌効果である。緑膿菌としては、臨床分離された、緑膿菌No.6株(実施例1)、No.7株(実施例2)、No.10株(実施例3)、No.13株(実施例4)、No.25株(実施例5)、No.28株(実施例6)、No.34株(実施例7)、No.14株(比較例1)及び緑膿菌の実験株として一般的なPAO1株(比較例2)を使用した。緑膿菌No.6株、No.7株、No.10株、No.13株、No.25株、No.28株、No.34株、No.14株は、いずれも臨床材料から分離された菌株で以下の手順で分離した。患者由来検体を5%ヒツジ血液加寒天培地あるいはBTB寒天培地上に塗沫し、出現した有意なコロニーを選択し、グラム染色に供した。グラム染色でグラム陰性菌と確認されたコロニーは、次にオキシダーゼ試験を実施し、陽性反応が認められたコロニーはさらに純粋培養を実施した。純粋培養された菌株は、自動菌種同定装置(商品名:バイテック2、ビオメリュー株式会社)を用いて緑膿菌と同定した。緑膿菌No.6株(実施例1)、No.7株(実施例2)、No.10株(実施例3)、No.13株(実施例4)、No.25株(実施例5)、No.28株(実施例6)、No.34株(実施例7)はメタロβ−ラクタマーゼ産生株であり、緑膿菌No.14株(比較例1)及びPAO1株(比較例2)はメタロβ−ラクタマーゼ非産生株である。
図1〜9に上記9株の緑膿菌におけるチェッカーボード法の結果を示す。緑膿菌の増殖は、培地の濁度あるいは沈殿の目視によって確認した。緑膿菌の増殖が見られ、抗菌効果が認められなかったマイクロプレートのウェルに対応する位置を斜線の網掛けで示し、緑膿菌の増殖が抑制され、抗菌効果が認められた(培地が澄明であった)マイクロプレートのウェルの位置を空白で示す。
図1は、緑膿菌No.6株(実施例1)の結果を示す。最上段(A段)に見られるように、ブライアンを含まない条件(対照)において、イミペネムは128μg/mLの濃度で緑膿菌No.6株の増殖を抑制した。これに対し、ブライアンの濃度が高まるに従い、イミペネムの感染症治療効果が増強した。すなわち、ブライアン濃度2μg/mL(C段)ではイミペネム濃度64μg/mL、ブライアン濃度8μg/mL(E段)ではイミペネム濃度16μg/mL、ブライアン濃度32μg/mL以上(G〜AH段)ではイミペネム濃度8μg/mLで緑膿菌No.6株の増殖が抑制された。これらの結果から、ブライアンは32μg/mLの濃度でイミペネムの緑膿菌No.6株に対する感染症治療効果を16倍(128μg/mLから8μg/mL)にまで増強したと考えられる。
ブライアンによるイミペネムの感染症治療効果増強作用が、図2、図3、図4、図5、図6、図7でそれぞれ示す、緑膿菌No.7株(実施例2)、No.10株(実施例3)、No.13株(実施例4)、No.25株(実施例5)、No.28株(実施例6)、No.34株(実施例7)においても、緑膿菌No.6株(実施例1)と同様に観察された。一方、図8及び図9でそれぞれ示す、緑膿菌No.14株(比較例1)及びPAO1株(比較例2)においては、ブライアンによるイミペネムの感染症治療効果増強作用が観察されなかった。
以上の結果から、ブライアンはメタロβ−ラクタマーゼを産生する緑膿菌に対する、β−ラクタム系抗菌薬の抗菌活性を強力に増強する作用を有するものと考えられた。
血圧を下げる降圧薬として知られるカプトプリルは、亜鉛キレート作用を持つことが知られている。また、ペニシリンの加水分解によって得られる薬剤であるD−ペニシラミンは、メルカプト基を持つため、銅、水銀、亜鉛、鉛などの重金属とキレート錯体を形成する作用を持つことが知られている。
そこで、カプトプリル及びD−ペニシラミンを用い、β−ラクタム系抗菌薬としてイミペネムを用いたチェッカーボード法により、カプトプリル及びD−ペニシラミンの感染症治療効果増強作用を検討した。しかしながら、これらの薬剤では、感染症治療効果増強作用は認められなかった。したがって、キレート作用を持つ薬剤であっても金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌の治療効果増強作用を持つとは限らない。
(β−ラクタム系抗菌薬に対するエデト酸塩の感染症治療効果増強作用の検討−緑膿菌肺炎モデルによる検討)
エデト酸塩としてブライアンを用い、β−ラクタム系抗菌薬としてイミペネムを用いて、マウス緑膿菌肺炎モデルにおけるマウスの生存率及び肺内緑膿菌生菌数を指標として、エデト酸塩の感染症治療効果増強作用を検討した。
この実施例では、病院内でしばしば見られる人工呼吸器装着中の緑膿菌肺炎を想定し、緑膿菌をマウスに感染させたのち、マウスを一定期間(72時間)高酸素状態で飼育した。
(マウス緑膿菌肺炎モデルにおけるマウスの生存率の検討)
Balb/cマウス(6週齢、雌)及び緑膿菌No.10株を使用した。マウスへの緑膿菌の感染は、ケタミン麻酔を行ったマウスに緑膿菌の培養液30μL(6.7×10 CFU/mL)を経鼻的に接種することにより行った。感染2時間後から12時間間隔で感染50時間後までの間、マウスへのブライアン及びイミペネムの投与を行った。ブライアンは300mg/kgを経鼻投与により、イミペネムは25mg/kgを皮下投与により投与した。イミペネムとしては、イミペネム/シラスタチン(IPM/CS、萬有製薬株式会社)を使用した。イミペネムは優れた抗菌力を示すにもかかわらず、動物の腎臓に存在する酵素であるデヒドロペプチダーゼ−Iにより代謝を受け、不活性化されることが知られている。そこで、この不活性化を抑制するためにシラスタチンナトリウムが配合されたものが製剤化されている。シラスタチンナトリウムは、デヒドロペプチダーゼ−Iによるイミペネムの代謝及び不活性化を抑制する。また、イミペネムは副作用として腎毒性をもつことが知られているが、シラスタチンナトリウムは、イミペネムの腎毒性をも抑制することが知られている。さらに、シラスタチンナトリウムには抗菌活性が認められず、イミペネムの抗菌活性にも影響を与えないことが知られている。
薬剤非投与群(対照)、ブライアン投与群(比較例3)、イミペネム投与群(比較例4)、イミペネム+ブライアン投与群(実施例8)でそれぞれ1群11匹のマウスを使用し、感染後5日後までのマウスの生存率を比較検討した。図10に生存率(%)の結果を示す。図11は、図10と同一の実験結果を生存マウスの数(匹)で示したものである。
図10に示すように、薬剤非投与群(対照)のマウスは感染後84時間までに全て死亡した。また、ブライアン投与群(比較例3)においても感染72時間までに全てのマウスが死亡しており、薬剤非投与群との差は見られなかった。一方、イミペネム投与群(比較例4)では感染5日の時点で11匹中3匹のマウスが生存しており、イミペネムの緑膿菌肺炎に対する感染症治療効果が観察された。さらに、イミペネム+ブライアン投与群(実施例8)においては、感染5日の時点で感染させた全てのマウスが生存していた。これらの結果は、イミペネムの感染症治療効果をブライアンが顕著に増強したことを示す。
(マウス緑膿菌肺炎モデルにおけるマウスの肺内緑膿菌生菌数の検討) エデト酸塩としてブライアンを用い、β−ラクタム系抗菌薬としてイミペネムを用いて、マウス緑膿菌肺炎モデルにおけるマウスの肺内緑膿菌数を指標として、エデト酸塩の感染症治療効果増強作用を検討した。
Balb/cマウス(6週齢、雌)及び緑膿菌No.10株を使用した。マウスへの緑膿菌の感染は、ケタミン麻酔を行ったマウスに緑膿菌の培養液30μL(6.7×10 CFU/mL)を経鼻的に接種することにより行った。感染2時間後に、マウスへのブライアン及びイミペネムの投与を行った。ブライアンは300mg/kgを経鼻投与により、イミペネムは25mg/kgを皮下投与により投与した。イミペネムとしては、イミペネム/シラスタチン(IPM/CS、萬有製薬株式会社)を使用した。薬剤非投与群(対照)、イミペネム投与群(比較例5)、イミペネム+ブライアン投与群(実施例9)でそれぞれ1群4匹のマウスを使用し、感染4時間後に炭酸ガスを用いてマウスを安楽死させて肺を摘出し、肺内緑膿菌生菌数を測定した。すなわち、摘出したマウス肺に1mLの生理食塩水を添加し、ホモジナイザーを用いてマウス肺組織を破砕した。この溶液の10倍希釈系列を作成し、10μLを緑膿菌の選択培地(商品名:NAC寒天培地、栄研化学株式会社)上に滴下し、35℃で16〜20時間培養した後に出現したコロニーを計数した。計数されたコロニー数を基に1mL当たりの緑膿菌数を算出した。
図12にマウスの肺内緑膿菌生菌数の測定結果を示す。薬剤非投与群(対照)では5.8×10 CFU/mLの緑膿菌生菌が存在していた。一方、イミペネム投与群(比較例5)では、2.5×10 CFU/mLの緑膿菌生菌が検出され、薬剤非投与群の約半分に低下していた。さらにイミペネム+ブライアン投与群(実施例9)では、3.6×10 CFU/mLの緑膿菌生菌が検出され、顕著な生菌数の低下が観察された。この実験から、マウス緑膿菌肺炎モデルにおけるブライアンの生存率増強効果は、肺内の緑膿菌生菌数の減少によりもたらされているものと考えられた。
(様々な抗菌薬に対するエデト酸塩の感染症治療効果増強作用の検討)
エデト酸塩として、エデト酸カルシウム二ナトリウムを用いた。抗菌薬として、ピペラシリン(富山化学工業)、タゾバクタム(大鵬薬品工業)とピペラシリンとの組み合わせ、及び、段階希釈された様々な抗菌薬を含む培地が100μLずつ分注されたマイクロプレート(商品名「フローズンプレート」(登録商標)、BT25、栄研化学株式会社)に含まれる抗菌薬を使用した。フローズンプレート(登録商標)には、抗菌薬として、イミペネム、メロペネム、スルバクタム/セフォペラゾン、セフタジジム、セフピロム、セフォゾプラン、セフェピム、アズトレオネム、ゲンタマイシン(gentamicin)、アミカシン(amikacin)、シプロフロキサシン(ciprofloxacin)が含まれていた。これらの抗菌薬を用いて、エデト酸塩の感染症治療効果増強作用を検討した。タゾバクタム/ピペラシリンを用いた検討において、タゾバクタムの濃度は4μg/mLであった。
マイクロプレートに、濃度を変えた各抗菌薬を含むMueller Hinton broth、又は濃度を変えた各抗菌薬及び32μg/mLのエデト酸カルシウム二ナトリウムを含むMueller Hinton brothを添加した。「フローズンプレート」(登録商標)にエデト酸カルシウム二ナトリウムを添加する場合には、エデト酸カルシウム二ナトリウム溶液を1/100容量(1μL)添加し、エデト酸カルシウム二ナトリウムの終濃度が32μg/mLとなるように調製した。エデト酸カルシウム二ナトリウムの濃度は上述のチェッカーボード法の結果に基づいて決定した。次に、緑膿菌を約5×10CFU/ウェルずつ接種し、35℃にて静置培養した。16〜20時間の培養後、培地の濁度あるいは沈殿の目視によって、緑膿菌の増殖を確認し、各抗菌薬の緑膿菌に対する最小発育阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration;MIC)を求めた。緑膿菌としては、上述のメタロβ−ラクタマーゼ産生株である、緑膿菌No.6株、No.7株、No.10株、No.13株、No.25株、No.28株及びNo.34株、並びにメタロβ−ラクタマーゼ非産生株である、No.14株及びPAO1株を使用した。
表1に結果を示す。表には、緑膿菌の増殖が抑制され、抗菌効果が認められた(培地が澄明であった)各抗菌薬の最低濃度をMIC値(μg/mL)として示した。様々な抗菌薬において、エデト酸塩による感染症治療効果増強作用が観察された。例えば、タゾバクタム/ピペラシリンのみでは、緑膿菌No.6株、No.7株、No.10株、No.13株、No.28株、No.34株に対するMIC値がそれぞれ128、16、64、32、>128、32(μg/mL)であったのに対し、タゾバクタム/ピペラシリンとエデト酸塩を併用すると、MIC値がそれぞれ32、8、16、16、128、16(μg/mL)に減少し、エデト酸塩による感染症治療効果の増強が認められた。この場合の感染症治療効果は、抗菌薬による抗菌効果である。
Figure 0005639471
(メタロβ−ラクタマーゼに対するエデト酸塩のIC50の測定)
メタロβ−ラクタマーゼの阻害剤として、エデト酸カルシウム二ナトリウム塩、エデト酸二ナトリウム塩、及びクラブラン酸(対照)を使用した。メタロβ−ラクタマーゼとして、IMP−1(7.2mg/mL)の酵素標品を使用した。このIMP−1を、終濃度50μMのZnCl及び20μg/mLの牛血清アルブミンを添加した20mM HEPES 緩衝液(pH7.0)で500倍希釈して、活性測定用酵素液とした。
この活性測定用酵素液5μLに、0〜1000mMの各濃度に調製した阻害剤を50μLずつ添加し、30℃で5分間反応させた。続いて、これらの溶液に、20mM HEPES 緩衝液(pH7.0)に溶解した100μMイミペネムを500μLずつ添加した。ここで、イミペネムはメタロβ−ラクタマーゼの酵素活性により分解される。各反応溶液の278nmの紫外吸収を測定することにより、各反応溶液中の未分解のイミペネムの濃度を経時的に測定した。測定は、30℃にて反応開始から2分間行った。これにより、各反応溶液中のイミペネムの分解初速度を算出した。
測定された反応初速度と、各阻害剤の濃度をプロットした。得られたプロットから、阻害剤無添加時の反応初速度が、50%低下するのに必要な阻害剤濃度を求めてIC50とした。表2に結果を示す。
Figure 0005639471
(マウス緑膿菌肺炎モデルにおけるマウスの生存率の検討)
エデト酸塩としてエデト酸カルシウム二ナトリウムを用いた。Balb/cマウスに緑膿菌No.10株(1〜2×10CFU/マウス)を接種し、48時間高酸素状態(90%)で飼育した。マウスを16群に分け、感染2時間後から感染48時間後までの間、12時間間隔で各群のマウスに経鼻投与、又は注射による皮下投与により、生理食塩水(対照)、エデト酸塩(50又は100mg/kg)、イミペネム(25mg/kg)、並びにイミペネム(25mg/kg)及びエデト酸塩(50又は100mg/kg)を投与した。イミペネムとしてはイミペネム/シラスタチン(IPM/CS、萬有製薬株式会社)を使用した。感染5日後までのマウスの生存率を測定した。図13(a)にエデト酸塩を100mg/kg投与した群の経鼻投与の結果を示し、図13(b)にエデト酸塩を100mg/kg投与した群の注射による皮下投与の結果を示す。図中のアスタリスク(*)はイミペネムを単独投与した結果と比較した場合にP<0.01であったことを示す。
(エデト酸塩による金属イオン含有ペプチダーゼの阻害効果)
エデト酸塩としてエデト酸カルシウム二ナトリウムを用いた。Balb/cマウスを3群に分けた。第1群のマウスには、フィルター滅菌した緑膿菌PAO1株の培養上清30μLを経鼻的に投与し、続いて生理食塩水(n=20)を1日2回、2日間、経鼻的に投与した。第2群のマウスには、フィルター滅菌した緑膿菌PAO1株の培養上清30μLを経鼻的に投与し、続いてエデト酸塩(100mg/kg、n=20)を1日2回、2日間、経鼻的に投与した。第3群のマウスには、緑膿菌を接種していない培地のみ30μLを経鼻的に投与した。感染5日後までの各群のマウスの生存率を測定した。図14に結果を示す。第3群のマウスの死亡は観察されなかった。生理食塩水を投与した群(第1群)のマウスと比較して、エデト酸塩を投与した群(第2群)のマウスは有意に高い生存率を示した。図中のアスタリスク(*)は生理食塩水を投与した群(第1群)のマウスの結果と比較した場合にP<0.05であったことを示す。本実験では、マウスにフィルター滅菌した緑膿菌PAO1株の培養上清を投与したので、マウスの死亡は緑膿菌の増殖によるものではなく、培養上清中に含まれていた毒素によるものである。本実験において、エデト酸塩の投与による治療効果は、緑膿菌が産生する金属イオン含有ペプチダーゼの阻害効果によるものであると考えられる。
本発明の治療効果増強剤又は感染症治療キットによって、従来有効な治療手段が存在しなかった多剤耐性緑膿菌を含む、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の治療効果を増強することができる。

Claims (10)

  1. エデト酸カルシウム二ナトリウム及びこの水和物からなる群より選ばれるエデト酸化合物からなり、1回当たり5〜300mg/kg体重のエデト酸化合物が投与されるように用いられることを特徴とする、金属イオン含有ペプチダーゼ産生細菌による感染症の治療における、治療効果増強剤であって、前記治療は、β−ラクタム系抗菌薬の使用を含むものである、前記治療効果増強剤
  2. 経鼻投与用又は注射剤用である、請求項に記載の治療効果増強剤。
  3. 請求項1又は2に記載の治療効果増強剤と、前記エデト酸化合物を溶解又は分散させる溶媒とを含有する、治療効果増強剤。
  4. 前記エデト酸化合物の含有量は、総容積5mLに対して0.1〜10gである、請求項に記載の治療効果増強剤。
  5. 記治療効果は、当該β−ラクタム系抗菌薬の抗菌効果である、請求項1〜のいずれか一項に記載の治療効果増強剤。
  6. 前記β−ラクタム系抗菌薬は、タゾバクタムとピペラシリンとの組み合わせである、請求項に記載の治療効果増強剤。
  7. 前記治療効果は、前記細菌が産生する金属イオン含有ペプチダーゼの阻害効果である、請求項1〜のいずれか一項に記載の治療効果増強剤。
  8. 請求項記載の治療効果増強剤と、β−ラクタム系抗菌薬とを含む、感染症治療用キット。
  9. 請求項記載の治療効果増強剤と、前記細菌用の抗菌薬とを含む、感染症治療用キット。
  10. 前記抗菌薬は、タゾバクタムとピペラシリンとの組み合わせである、請求項8又は9に記載の感染症治療用キット。
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