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JP5638357B2 - 電気・電子部品用銅合金およびその製造方法 - Google Patents

電気・電子部品用銅合金およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、電気・電子部品用銅合金およびその製造方法に係り、特にリードフレーム、端子、コネクタ等の電気・電子部品に好適な強度や導電性に優れる電気・電子部品用銅合金およびその製造方法に関するものである。
電子機器に用いられる半導体製品は大容量、小型化、高機能化にともない、これに使用されるリードフレームも多ピン化、薄肉化が進み、一層の強度、導電性が要求されてきている。このような要求に対し、これらの特性を比較的良好に満足する材料としてCu−2.2重量%Fe−0.03重量%P−0.12重量%Znを標準化学組成とする銅合金(CDA Alloy 194)が挙げられる(例えば、特許文献1参照)。
しかし、リードフレームの多ピン化、薄肉化に伴い、素材からリードフレームへの打ち抜き加工の際に生じる歪が大きくなってきている。その歪を除去するために焼鈍を必要とされる状況において、上記銅合金では耐熱性が不十分であり、リードフレームにおける歪取りのための焼鈍による強度低下が問題である。端子、コネクタなど他の電気・電子部品においても、電子機器の小型化によって素材の加工による歪蓄積が大きくなり、同様の問題がある。
そこで、この銅合金の耐熱性を改善するために、例えば、40nm以下のFe粒子を、体積率0.2%以上で分散させてピン止め粒として作用させ、回復・再結晶を遅延させる手法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
特公昭52−20404号公報 特開平11−80862号公報
しかし、より耐熱性が要求される状況においては、特許文献2のピン止め効果による回復・再結晶の遅延だけでは、なお不十分である。
そこで、本発明の目的は、高強度、高導電性を有すると共に、耐熱性に優れた電気・電子部品用銅合金およびその製造方法を提供することにある。
本発明の第一の様態によれば、Feを2.0重量%以上2.6重量%以下、Pを0.01重量%以上0.2重量%以下、Znを0.01重量%以上1.0重量%以下含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる電気・電子部品用銅合金において、
銅母相中に分散するFeを含有する粒子の中で、直径が50nmより大きい粒子の数密度Nと、直径が50nm以下である粒子の数密度Nとの比N/Nが5以上であり、
直径が20nm以上50nm以下の粒子における平均粒子間隔が50nm以上300nm以下である電気・電子部品用銅合金が提供される。
本発明の第二の様態によれば、Feを2.0重量%以上2.6重量%以下、Pを0.0
1重量%以上0.2重量%以下、Znを0.01重量%以上1重量%以下含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる鋳塊を、圧延工程と熱処理工程とを組み合わせて所望の板厚まで加工する電気・電子部品用銅合金の製造方法において、
前記熱処理工程では、500℃以上550℃以下の温度で、30分以上6時間以下の時間で熱処理をし、
その後、更に400℃以上480℃以下の温度で、1時間以上8時間以下の時間で熱処理をする電気・電子部品用銅合金の製造方法が提供される。
本発明によれば、高強度、高導電性を有すると共に、耐熱性に優れた電気・電子部品用銅合金およびその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係る銅合金の製造工程フローの説明図である。 本発明の一実施の形態に係る平均粒子間隔の算出モデルである。
以下に本発明の一実施の形態に係る電気・電子部品用銅合金およびその製造方法について述べる。
電気・電子部品用銅合金
本実施の形態の銅合金は、Cu−Fe−P合金(CDA Alloy 194)である。このCu−Fe−P合金において、優れた耐熱性とは、ある温度、時間で焼鈍した場合に低下する強度が小さいことを表している。素材的にみれば、焼鈍過程の強度低下は回復・再結晶といわれる現象に起因すると考えられる。ここで、回復も再結晶も銅母相の歪解消現象であり、加熱等で発生する現象である。回復と再結晶の違いは、前者が歪の原因である転位(ナノレベルの材料欠陥の1つ)自身が動いて再配列することで歪を小さくするのに対し、後者は銅母相の粒界が転位を吸収することで歪を小さくすることである。なお、再結晶は結晶粒界移動現象(駆動力が転位等による歪エネルギー)のため、銅母相の結晶粒は粗大になっていく。
このように強度低下は回復・再結晶に起因するため、耐熱性を改善するためには回復・再結晶を遅延させればよいといえる。本ターゲットであるCu−Fe−P合金を透過電子顕微鏡で観察した結果、回復・再結晶の起点は50nmより大きい粒子に接した場所であり、またそのサイズは粗大で300nmより大きい。
このため、再結晶による強度低下については、銅母相中に分散する50nmより大きい粒子を極力少なくすることが重要となる。さらに、再結晶の起点とならない粒子の平均間隔を300nm以下にすることで、再結晶核が生成された場合でも、ピン止めによって再結晶の成長を抑制することも重要となる。ここで、ピン止めとは析出物などを銅母相中に分散させることで銅母相中の結晶粒界の移動を抑制できる効果であり、再結晶が発生してもその粒界移動を抑え、再結晶粒の粗大化抑制を期待できるものである。
また、回復による強度低下については、Fe析出物の整合性を維持することでその発生を抑制することが重要となる。Fe粒子は加工を加えると整合という状態から非整合という状態に変化する。また、非整合のFe粒子は転位を引きつける特性があると報告されている(整合粒子の場合転位との間に斥力が働く)。このことから、非整合のFe粒子はこれと銅母相の界面にて他の場所よりも転位が増加しやすいと考えられる。転位の増加は回復・再結晶の駆動力を大きくするので、加熱時に回復・再結晶を促進し、軟化しやすくなる起点になると考えられる。このため、Fe析出物の整合性を維持することが必要となる
本実施の形態の銅合金は、後述する第三冷間圧延による加工硬化(結晶微細化と転位強化)が合金強度を得る手段の一つであるため、回復・再結晶が発生してしまうと強度が低下する。回復・再結晶は上記のとおり加熱で発生する現象であるので、これが容易に発生すると、例えば顧客先のリードフレーム製造工程に含まれる歪取り焼鈍を加えることにより強度が低下してしまう。このリードフレーム製造工程での強度低下はリードフレームのピンなどの剛性不足などの不具合の原因となるので、これを防ぐ必要がある。
この対策として、本実施の形態では、整合のFe析出物を分散させるという合金制御を行うことで、回復・再結晶を抑制し、ピン止め効果による回復・再結晶の遅延だけでは不十分であった加熱(耐熱試験)による強度低下を防ぎ、耐熱性を高めている。
次に、このような耐熱性を高めている銅合金の成分および銅合金の金属組織について説明する。
1.銅合金の成分
本実施の形態において、銅合金を構成する成分について添加の理由と限定理由を以下に説明する。
(1)Fe
本実施の形態におけるFeの含有量は、2.0重量%以上2.6重量%以下、好ましくは2.1重量%以上2.3重量%以下である。Feは銅母相中に固溶若しくは析出させることによって、強度と耐熱性を向上させるために含有させる。2.1重量%未満であると、第三の冷間圧延後の最終材において、Feの固溶量や析出量が不足して強度および耐熱性が低下する。固溶量や析出量不足による耐熱牲の低下は、固溶量の場合粘性抵抗の減少、析出の場合ピン止め効果の減少が主因であると考えられる(一般的に、再結晶抑制効果は、(ピン止め効果)>(粘性抵抗)と言われているので、耐熱性の確保はピン止め効果の方が大きいと考えられる。)。
一方、2.6重量%を越えるとFe固溶による導電率の低下が大きいと共に、鋳造時に粗大なFeの晶出物が生成し、これが製品に残存すると打ち抜き加工時の割れやめっき不良の原因になりうる。
(2)P
本実施の形態におけるPの含有量は0.01重量%以上0.2重量%以下、好ましくは0.01重量%以上0.1重量%以下である。Pは溶解鋳造中に溶湯に混入する酸素を脱酸する作用があるが、0.01重量%未満であるとその効果を得るには十分でない。0.1重量%を超えると脱酸効果に飽和傾向がみられるものの、Feと化合して析出物を形成し、この析出物も強度や耐熱性の向上に寄与する。一方、0.2%を越えると脱酸効果や強度への寄与も飽和状態となるばかりか、結晶粒界等に析出したPとFeの化合物が鋳造時の芯割れの原因となったり、熱間圧延時の粒界割れの原因となったりして悪影響が生じる。
(3)Zn
本実施の形態におけるZnの含有量は0.01重量%以上1.0重量%以下、好ましくは0.05重量%以上0.15重量%以下である。Znは半田濡れ性を向上させるとともに、脱酸、脱ガス作用やCuのマイグレーションの抑制作用があるが、0.01重量%未満であるとその効果を得るには十分でない。一方、1.0重量%を越えると導電率の低下をもたらす。
(4)他の元素成分
本実施の形態における銅合金は、基本的にはCuを主成分とし、かつ特定量のFe、P、Znを含有するものである。しかし、不純物として、他の元素が混入することが避けられない場合があり、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Mn、Zr、およびSn等を含有することがある。しかし、0.1重量%未満であれば耐熱性等に悪影響を与えるものではなく、不可避的不純物として許容してよい範囲である。なお、上述した組成および下記に記載する金属組成が有機的に関連し合うことで、本実施の形態は形成される。
2.銅合金の金属組織
本実施の形態における銅合金を構成する金属組織因子について制御理由と限定理由を以下に説明する。
(1)N2/N1比
本実施の形態において、銅母相中に分散するFeを含有する粒子の中で、直径が50nmより大きい粒子の数密度Nと直径が50nm以下である粒子の数密度Nとの比N/Nが5以上、好ましくは10未満である。N/N比が5より小さいと、耐熱性が低下する。これは、直径50nm以上の粒子に接した場所から再結晶を開始するためであり、このサイズ以上の粒子が多いと再結晶の促進、即ち、軟化を促進する原因となり、強度が低下する。Fe粒子の整合から非整合への変化は粗大な粒子から進み、第三の冷間加工の加工度85%では50nm程度のFe粒子が変化を始めると報告されている。なお、再結晶を開始する工程は、例えば、第三冷間圧延後(最終材形成後)に行われる加熱(例えばリードフレーム形成のためのプレス加工の後になされる歪取り焼鈍)の工程である。これは顧客先の工程である。実際には最終材を形成後これを模擬して耐熱試験を実施する。この際に回復・再結晶して強度が低下するとリードフレームのピンの剛性不足などの問題が生じる。
本実施の形態の第三冷間加工における加工度では非整合粒子へ変化させないためには直径が50nmよりも小さいFe粒子を析出分散させる必要がある。なお、Fe析出物は溶解工程や熱間圧延工程でも形成される。このサイズは数百ナノメートルからマイクロメートルサイズである。このサイズは最終材では非整合状態であり、回復・再結晶を促進してしまうが、これを回避することは困難である。この悪影響を抑えるため、本実施の形態においてN/N比を規定したものであり、この規定によりFe析出物の大多数を整合状態で分散させている。
(2)平均粒子間隔
本実施の形態において、銅母相中に分散するFeを含有する直径20nm以上50nm以下の粒子における平均粒子間隔は50nm以上300nm以下、好ましくは50nm以上200nm以下である。平均粒子間隔が50nmより小さい場合、強度が低下する。これは平均粒子間隔を50nmより小さく制御する場合、分散させる粒子のサイズは10nmよりも小さく制御する必要がある。しかし、10nmより小さい粒子は転位にせん断されてしまい強度への寄与を期待できないと考えられるためである。一方、平均粒子間隔を300nm以上でFe粒子を分散させる場合、その間隔が広すぎるため、再結晶粒(銅母相の結晶粒径)が粗大になり、回復及び再結晶粒の成長を抑制する効果が低下し、熱処理による軟化を遅延させることができない。即ち耐熱性が低下する原因となる。
さらに説明する。上記のとおり非整合に変化したFe粒子周辺から回復・再結晶が進むと考えられる。再結晶が促進すると強度が低下するため、再結晶現象が生じても極力早い段階でその進行を止めることが重要になる。整合のFeを含有する直径20nm以上50nm以下の粒子(整合のFe粒子)には、この粒子を銅母相に分散させておくことで、ピ
ン止め効果を生じさせる役目を持たせられると考えられる。ピン止め効果は分散している粒子のサイズとその間隔で効力がかわり、粒子サイズが小さいほど、間隔が狭いほど効力が大きくなる。また、Fe粒子の銅母相に対する体積率(粒子のサイズと数密度から算出できる。また析出物の平均間隔もこれに依存する)の最大は添加したFe成分で決まるので、本実施の形態の合金成分の場合、50nm間隔に分散させるためには10nm以下という極めて微細なサイズで分散させる必要となる。ところが、直径が20nm以下のFe粒子は粒界にせん断・吸収され再固溶されるため、ピン止め効果が期待できなくなる(再結晶を抑制できず、強度低下の原因となる)と考えられる。尚、銅母相の結晶粒界に吸収されるFe析出物の厳密なサイズがわからないため、残存が確認できた最低サイズ20nmを本実施の形態では析出物径の下限としている。
(電気・電子部品用銅合金に係る実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、N/Nを5以上としたので、銅母相中に分散する50nmより大きい粒子を極力少なくすることができる。また、再結晶の起点とならない粒子の平均間隔を300nm以下にすることで、再結晶核が生成された場合でもピン止めによって再結晶の成長を抑制することができる。このように再結晶の成長を抑制することができるため耐熱性を向上できる。したがって、歪取り焼鈍による強度の低下が比較的少ない、即ち耐熱性に優れたリードフレーム等に用いられるCu−Fe系(CDA Alloy 194に規格される)素材を提供することができる。
(電気・電子部品用銅合金の製造方法)
図1に本実施の形態に係る銅合金の製造工程フローの一例を示す。本実施の形態は、前述した銅合金組成を有する鋳塊を、圧延工程と熱処理工程とを組み合わせて所望の板厚まで加工する電気・電子部品用銅合金の製造方法において、前記熱処理工程では、次のように規定範囲内に設定された熱処理条件で熱処理をする。500℃以上550℃以下の温度で、30分以上6時間以下の時間で熱処理し、その後、更に400℃以上480℃以下の温度で、1時間以上10時間以下の熱処理をする。
以下、図1を用いて、銅合金の製造工程を工程ごとに詳述する。
(1)熱間圧延、第一の冷間圧延(ステップ102、103)
本実施の形態では前記銅合金を所定の温度によって熱間圧延する。熱間圧延は所定温度の炉にて800℃以上1050℃以下の温度に前記銅合金を保温した後、室温で圧延する。圧延の際中、若しくは圧延後常温に放置して室温まで冷却する。800℃未満であるとFeの析出量が多く、熱間圧延時に割れが起こりやすい。次に、第一の冷間圧延をする。第一の冷間圧延では加工熱が加わるが、外部からの加熱、冷却はなく、室温で圧延加工され、加工後は常温中にて保管される(後述する第二、第三の冷間圧延も同じ)。第一の冷間圧延に続く溶体化処理時において素材全体に均等に効率よく熱を伝えるためには、板厚を3mm以下になるように減面率を設定することが好ましい。
(2)溶体化処理(ステップ104)
前記熱間圧延、冷間圧延後、900℃以上の温度で急激に加熱し30秒以上保持した後、直ちに500℃まで毎分100℃以上の冷却速度で冷却し、更に常温で室温まで自然冷却する。溶体化処理は熱間圧延時に析出した析出物を再固溶させるために行うものである。溶体化でFeを固溶(原子レベル(サブナノオーダー)の混合)状態から時効工程で析出(ナノオーダー)させる。しかし、数ナノオーダーのFe析出物は加工される(Cu母相の結晶粒界が通過する)と吸収されて再び固溶状態になる。これが再固溶状態である。固溶状態は析出状態よりも回復・再結晶抑制効果が小さく好ましくないと考えられる。この溶本化処理工程を省略すると目標とする強度および耐熱性が得られない。
(3)第二の冷間圧延(ステップ105)
前記溶体化処理後、冷間圧延を行う。冷間圧延は減面率が50%以上となるように行うことが好ましい。これにより次に述べる時効での析出をスムーズにすることができる。
(4)第一の時効処理(ステップ106)
本実施の形態では時効を2回に分けて行う。1回の時効のみでは耐熱性が不十分となる。1回目の時効は500℃以上550℃以下の温度で、30分以上6時間以下の時間、好ましくは500℃以上530℃以下の温度で、2時間以上6時間以下の時間で熱処理を行う。熱処理後は徐々に冷却する。冷却は常温における冷却よりもゆっくりである(第二の時効も同じ)。時効温度は500℃未満ではFeを含有する粒子を十分に析出させることができず、目標とする強度および耐熱性を得られない。一方、550℃を越えるとコイル状に巻きつけている素材同士が粘着するという問題が生じる。また、時効時間が30分未満でも6時間を越えても、前記と同様の理由から目標とする耐熱性及び強度を得られない。
上述した素材同士の粘着とは、Feを速やかに析出させるために温度を高くし過ぎると、コイル状に巻かれた素材同士が意図せず拡散接合することである。ここでは、素材同士が粘着しないように条件を設定している点が重要である。素材同士の粘着は素材をコイル状に巻いて熱処理をする工程において問題となる点であり、この間題は高温になるほど顕著になる。そのため、粘着が生じない範囲内の時効温度から耐熱性を維持するために必要な第一の形態の銅合金を得られる条件としている。
(5)第二の時効処理(ステップ107)
2回目の時効を400℃以上480℃以下の温度で、1時間以上8時間以下の時間、好ましくは400℃以上450℃以下の温度で、2時間以上6時間以下の時間で熱処理を行う。400℃よりも低い温度では析出に長時間を要し、480℃より高い温度では目標とする耐熱性が得られない。なお、第一の時効と第二の時効は連続して行うので、温度履歴は第一の時効温度まで昇温、第一の時効温度で保持、第二の時効温度まで降温、第二の時効温度で保持、常温まで冷却としている。
(6)第三の冷間圧延(ステップ108)
前記時効後、仕上圧延を加工度70%以上85%以下で冷間にて行う。これにより目標の強度を得ることができる。なお、更にこの後に、伸びの向上や歪除去のために低温焼鈍を行っても良い。
(電気・電子部品用銅合金の製造方法の実施の形態に係る効果)
第一の実施の形態の鋳塊を、圧延工程と熱処理工程とを組み合わせて所望の板厚まで加工する電気・電子部品用銅合金の製造方法において、前記熱処理工程では、500℃以上550℃以下の温度で、30分以上6時間以下の時間で熱処理をし、その後、更に400℃以上480℃以下の温度で、1時間以上8時間以下の時間で熱処理をすることにより、銅母相中に分散するFeを含有する粒子の中で、直径が50nmより大きい粒子の数密度Nと、直径が50nm以下である粒子の数密度Nとの比N/Nが5以上であり、直径が20nm以上50nm以下の粒子における平均粒子間隔が50nm以上300nm以下である銅合金を実現できる。特に、時効温度を550℃以下としたので、素材をコイル状に巻いて熱処理をする工程において問題となる素材同士の粘着を生じないようにすることができる。したがって、素材同士の粘着を生じることなく、耐熱性に優れた電気・電子部品用銅合金を製造できる。
なお、時効処理回数は2回に限定されるものではなく3回以上行ってもよい。その場合、各事項条件は回数に合わせて適切に設定される。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
重量%にして2.2%のFe、0.03%のP、0.0l%のZnを含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金を高周波誘導型坩堝で溶解後、銅製鋳型で半連続鋳造し、横断面200mm×450mm、長さ4000mmの直方体の鋳塊を作製した。
この鋳塊の表面をそれぞれ5mm面削し、950℃で2時間保持後熱間圧延を行い、板厚12mmとした。更に表面および裏面をそれぞれ1mm面削した後、第一冷間圧延により板厚2.5mmとした。
次に、材料の最高温度が最大925℃になるように制御しながら、連続焼鈍炉の加熱帯中に材料を走行させた。加熱帯に続いて、冷却帯および水冷プールを通過させて急冷させて溶体化処理とした。
更に表面及び裏面を研磨した後、第二冷間圧延により板厚0.7mmとした。
次に電気炉を用いて窒素ガス雰囲気中で550℃の温度で4時間焼鈍し、冷却速度5℃/分で450℃まで降温した。450℃まで到達後2時間焼鈍し、冷却速度毎分5℃/分の冷却速度で室温に下げた。
次に、第三冷間圧延により板厚0.25mmとした。
このときのFeを含有する粒子および特性を評価した。
Fe粒子を含有する粒子の析出物のサイズ分布、体積率はX線小角散乱法を用いて評価した。X線小角散乱法による測定結果の解析には球状のFe粒子を散乱体モデルとして評価した。なお、散乱体モデルをFeの球状粒子と仮定したのは、透過電子顕微鏡を用いて分散相を、2次元で観察した結果、大多数はFeを多量に含有する円状粒子であったためである。すなわち、断面の方向によらず、円状であったため、3次元では、球状粒子であると考えられるためである。
平均粒子間隔は、小角散乱法による粒子の解析結果を用いて、図2に示す平均粒子間隔の算出モデルを参照しつつ、以下のように導出した。f、dはX線小角散乱法にて測定・解析したFeを含有する直径20nm以上50nm以下の粒子1における(母相に対する)体積率および粒子直径の最大値である。
体積率fは、
f={(4/3)・π・(d/2)}/x ・・・(1)
xは、
x=l+d ・・・(2)
式(1)及び式(2)より、平均粒子間隔lを求めると次のようになる。
l={(π/6f)1/3−1}・d ・・・(3)
引張強さは引張強さ、0.2%耐力、伸びはJIS Z2241に準拠した引張試験で測定し、導電率はシグマテスタ(渦電流を利用したIACS%測定器)を用いて評価した。また、耐熱性の評価として、熱処理前後のビッカース硬さを以下の方法で評価した。すなわち、仕上圧延後のビッカース硬さとリードフレームに加工した後に処理される歪除去の熱処理を模擬した450℃×5分の熱処理後のビッカース硬さの差(変化)で評価した
。20Hv以下が許容される範囲である。
評価結果を表1に示す。表1は、本発明の実施例及び比較例における時効条件、N/NI比、平均粒子間隔、引張強さ、導電率、熱処理前後のビッカー硬さの変化を示したものある。
Figure 0005638357
表1に示したとおり、実施例1は、N/N比8、平均粒子間隔254nm、引張強さ542MPa、導電率69%IACS、熱処理前後のビッカース硬さの変化18Hvと良好な特性であった。
(実施例2〜3〉
実施例2〜3は表1に示した時効処理条件を除いて実施例1と同様に製造した。時効処理条件を規定範囲内に設定した実施例2〜3では、実施例1と同様に良好な特性が得られた。
(比較例1〜4)
比較例1〜4も表1に示した時効処理条件を除いて実施例1と同様に製造した。第一の時効時間を8時間と規定範囲外に設定した比較例1、第一の時効温度を480℃、第一の時効時間を10時間と2つの条件をともに規定範囲外に設定した比較例2、及び第二の時効温度を380℃、第二の時効時間を10時間と2つの条件をともに規定範囲外に設定した比較例3では、N/N比または/および平均粒子間隔が規定範囲からはずれ、熱処理後のビッカース硬さの低下が規定範囲を超えた。また、第一の時効温度を600℃と規定範囲外に設定した比較例4では、N/N比、平均粒子間隔、引張強さ、導電率、熱処理前後のビッカース硬さの変化はいずれも良好な特性が得られたものの、コイル状に巻かれた素材同士に粘着が生じていた。
1 Feを含有する粒子

Claims (4)

  1. Feを2.0重量%以上2.6重量%以下、Pを0.01重量%以上0.2重量%以下、Znを0.01重量%以上1.0重量%以下含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる電気・電子部品用銅合金において、
    銅母相中に分散するFeを含有する粒子の中で、直径が50nmより大きい粒子の数密度Nと、直径が50nm以下である粒子の数密度Nとの比N/Nが5以上8以下であり、
    X線小角散乱法にて測定・解析したFeを含有する直径20nm以上50nm以下の粒子における、母相に対する体積率fおよび粒子直径の最大値dを用いて式(3)で求められる、直径が20nm以上50nm以下の粒子における平均粒子間隔が50nm以上300nm以下である電気・電子部品用銅合金。
    l=[{π/(6f)} 1/3 −1]・d 式(3)
  2. 前記平均粒子間隔が50nm以上200nm以下である請求項1に記載の電気・電子部品用銅合金。
  3. Feを2.0重量%以上2.6重量%以下、Pを0.01重量%以上0.2重量%以下、Znを0.01重量%以上1重量%以下含有し、残部がCuと不可避的不純物からなる鋳塊を、熱間圧延と、第一の冷間圧延と、900℃以上、30秒以上保持の溶体化処理と、第二の冷間圧延と、500〜550℃、30分〜6時間の第一の時効処理と、400〜480℃、1〜8時間の第二の時効処理と、第三の冷間圧延とを順次行って所望の板厚まで加工する、請求項1または2に記載の電気・電子部品用銅合金の製造方法。
  4. 前記第一の時効処理では、500℃以上530℃以下の温度で、2時間以上6時間以下の時間で熱処理をし、
    前記第二の時効処理では、400℃以上450℃以下の温度で、2時間以上6時間以下の時間で熱処理をする請求項3に記載の電気・電子部品用銅合金の製造方法。
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