JP5630489B2 - バルブタイミング調整装置 - Google Patents
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Description
ハウジングを樹脂複合材料で構成する場合、強度を得るためにハウジングの肉厚を厚くすると、樹脂内部にボイドができること、「引け」により寸法精度が低くなること、および、樹脂の使用量が多いため重量が重く材料コストが高くなることが問題となる。
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ハウジングの必要強度を小さくすることができるバルブタイミング調整装置を提供することである。
(1)縦断面形状は、湾曲部のみから構成されている。
(2)縦断面形状は、湾曲部、および、湾曲部のうち径方向の外側の端から軸方向へ延びる筒部から構成されている。
(3)縦断面形状は、湾曲部、および、湾曲部のうち径方向の内側の端から径内方向へ延びる板部から構成されている。
(4)縦断面形状は、湾曲部、湾曲部のうち径方向の外側の端から軸方向へ延びる筒部、および、湾曲部のうち径方向の内側の端から径内方向へ延びる板部から構成されている。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態によるバルブタイミング調整装置は、図1に示すバルブタイミング調整システムに適用されている。バルブタイミング調整システム5は、図2に示すエンジン90の吸気バルブ91の開閉タイミングを調整するためのものである。図2に示すように、エンジン90の駆動軸であるクランクシャフト93の回転は、スプロケット11、94、95に巻き掛けられているチェーン96を介してカムシャフト97、98に伝達される。カムシャフト97は吸気バルブ91を開閉駆動する従動軸であり、カムシャフト98は排気バルブ92を開閉駆動する従動軸である。
また、バルブタイミング調整システム5は、スプロケット11に対しカムシャフト97を回転方向とは反対方向に相対回動させることにより、吸気バルブ91の開閉タイミングを遅くする。このように吸気バルブ91の開閉タイミングが遅くなるようにカムシャフト97を相対回動させることを「遅角させる」という。
バルブタイミング調整システム5は、バルブタイミング調整装置10、オイルポンプ85、リニアソレノイド86および電子制御装置88から構成されている。
スプロケット11は、特許請求の範囲に記載の「回転伝達部材」に相当し、クランクシャフト93と一体に回転する。
ハウジング20は、スプロケット11に固定されている外郭部21と、外郭部21の内部を複数の油圧室に仕切るように外郭部21から径内方向へ延びている複数の仕切り部22と、を有している。
リニアソレノイド86は、スプール77を軸方向へ押圧可能な出力ロッド87を有している。出力ロッド87は、リニアソレノイド86内部のコイルが通電されることにより発生する磁界に応じて軸方向へ移動する。
電子制御装置88は、バルブタイミング調整装置10のハウジング20に対するベーンロータ40の回転位相が目標値に一致するように、リニアソレノイド86を駆動してスプール77の軸方向位置を制御する。
ハウジング20の外郭部21は、ドーム形状であり、ドーム部25およびリブ部30から構成されている。第1実施形態では、ドーム部25の縦断面形状は湾曲部のみから構成されている。ドーム部25の外縁部は、径外方向へ突き出す鍔部26を形成している。鍔部26は、ドーム部25の外縁部の強度を向上させる補強手段として機能している。鍔部26とスプロケット11との間にはシールプレート79が設けられており、鍔部26は、シールプレート79に面接触する環状の合わせ面27を有している。合わせ面27は、ハウジング20とスプロケット11との間をシールするシール手段として機能している。ドーム部25の中央部は、軸方向へ突き出す環状突部28を形成している。また、ドーム部25の中央部は、スリーブボルト70の頭部73が挿入されている中央孔29を有する。
ハウジング20は、外郭部21と仕切り部22との接続部分に埋め込まれているインサートナット31を備えている。インサートナット31は、仕切り部22の基端部の強度を向上させる補強手段としても機能している。
ベーンロータ40は、小径筒部52、第1リング61、リードバルブ62および第2リング63がセットされた金型内に溶融樹脂を流し込み固化させることにより成形される。
シール部材80とベーンロータ40のベーン部42との間には、付勢部材81が設けられている。付勢部材81は、シール部材80の一端部と中間部と他端部とをハウジング20のドーム部25に向けて付勢している。言い換えれば、付勢部材81は、シール部材80をハウジング20のドーム部25に向けて軸方向と径方向とに付勢している。
また、第1実施形態では、ハウジング20のドーム部25の外縁部は、鍔部26を形成している。鍔部26は、スプロケット11との間のシール性を向上させるとともに、ハウジング20の剛性を向上させている。
したがって、スリーブボルト70の締め付け面が樹脂である場合、クリープ現象によるスリーブボルト70の緩みが問題となるが、第1実施形態では締め付け座面51が金属であるので、スリーブボルト70の緩みが抑制される。また、油路を金属部材に形成する場合、複雑な加工が必要となるためコストアップが問題となるが、第1実施形態では油路を樹脂部材に形成するので、比較的容易に形成することができる。
本発明の第2実施形態によるバルブタイミング調整装置を図5〜図11に基づき説明する。バルブタイミング調整装置100は、スプロケット101、ハウジング102およびベーンロータ103を備えている。
ハウジング102の外郭部104はドーム形状である。外郭部104のドーム部105の縦断面形状は、湾曲部、および、湾曲部の径外端および径内端から延びている円筒部および円板部から構成されている。ドーム部105の外縁部は、径外方向へ突き出す鍔部106を形成している。
ハウジング102は、外郭部104と仕切り部109との接続部分に埋め込まれているインサートナット31を備え、また繊維強化プラスチックから構成されている。ハウジング102の仕切り部109とベーンロータ103のボス部110との隙間は、L字形のシール部材111により封止されている。
ベーンロータ103の樹脂製のベーン部125の受圧面123は、中心角が90度の扇形であり、径外方向へ向かうに従って受圧面積が小さくなるように形成されている。ベーンロータ103は、積層体116がセットされた金型内に溶融樹脂を流し込み固化させることにより成形される。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏し、さらに、ベーンロータ103の両端部が金属リング117およびスプロケット101により支持されることにより、ハウジング102の仕切り部109とベーンロータ103のボス部110との摩耗を抑制するという効果を得ることができる。
本発明の第3実施形態によるバルブタイミング調整装置を図12〜図15に基づき説明する。バルブタイミング調整装置130は、スプロケット131、ハウジング132およびベーンロータ133を備えている。
スプロケット131は、樹脂製の環状基部134と、環状基部134の内側および外側に固定されている内輪部135および外輪部136とを有している。内輪部135は、周方向へ延びる周方向孔137を有している。
ハウジング132は、外郭部138と仕切り部155との接続部分に埋め込まれているインサートナット31を備え、また繊維強化プラスチックから構成されている。ハウジング132の仕切り部155とベーンロータ133のボス部144との隙間は、シール部材111により封止されている。
ベーンロータ133の樹脂製のベーン部156の受圧面152は、中心角が90度の扇形であり、径外方向へ向かうに従って受圧面積が小さくなるように形成されている。ベーンロータ133は、積層体149がセットされた金型内に溶融樹脂を流し込み固化させることにより成形される。
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏し、さらに、ベーンロータ133に固定された軸受ピン153がスプロケット131の周方向孔137およびハウジング132の周方向穴141により支持されることにより、ハウジング132の仕切り部155とベーンロータ133のボス部144との摩耗を抑制するという効果を得ることができる。
本発明の第4実施形態によるバルブタイミング調整装置を図16に基づき説明する。バルブタイミング調整装置160のベーンロータ161は、金属製のボス部162と、樹脂製のベーン部163とを有している。ボス部162が有する供給油路164、進角油路165および遅角油路166は、例えば機械加工により形成されている。
第4実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
本発明の他の実施形態では、ハウジングは、繊維強化プラスチック以外の樹脂複合材料、または、樹脂から構成されてもよい。
本発明の他の実施形態では、ハウジング内の油圧室の数は、4つ以下であってもよいし、7つ以上であってもよい。
本発明の他の実施形態では、ハウジングの外郭部のリブ部の延びる方向は、径方向に一致しなくてもよい。リブ部は、例えば、ハウジングの中央部から、回転軸心に対する同心円の接線方向へ延びるように形成されると、強度が向上する。また、リブ部は、必ずしもハウジングの内縁から外縁まで延びている必要はない。
本発明の他の実施形態では、ハウジングの外郭部は、必ずしもリブ部を形成する必要はない。
本発明の他の実施形態では、ハウジングの外郭部のリブ部の厚みは、ドーム部の厚み以下であってもよい。
本発明の他の実施形態では、ハウジングは、外郭部と仕切り部との接続部分にインサートナットを備えていなくてもよい。
本発明の他の実施形態では、スプロケットは、樹脂のみ、または、金属のみで構成されてもよい。
本発明の他の実施形態では、ベーンロータとカムシャフトとの間には、第1リングおよび第2リングが設けられなくてもよい。つまり、ベーンロータが有する油路とカムシャフトが有する油路とが直接接続していてもよい。
本発明の他の実施形態では、スリーブボルトとスプールとが構成する油路切換弁は、供給油路上のどこに設けられてもよく、必ずしもベーンロータの内側に設けられる必要はない。
本発明の他の実施形態では、エンジンのクランクシャフトの回転は、チェーンに限らず、他の動力伝達部材によりハウジングに伝達されてもよい。
本発明の他の実施形態では、スプロケット以外の回転伝達部材が用いられてもよい。
本発明の他の実施形態では、バルブタイミング調整装置は、エンジンの排気バルブの開閉タイミングを調整してもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。
11、101、131・・・スプロケット(回転伝達部材)
20、102、132・・・ハウジング
21、104、138・・・外郭部
22、109、155・・・仕切り部
23・・・・・・・・・・・進角室
24・・・・・・・・・・・遅角室
40、103、133、161・・・ベーンロータ
41、110、144、162・・・ボス部
42、125、156、163・・・ベーン部
Claims (13)
- エンジン(90)の駆動軸(93)と従動軸(97)との回転位相を変化させることにより、前記従動軸が駆動する吸気バルブ(91)または排気バルブ(92)の開閉タイミングを調整可能なバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)であって、
前記駆動軸および前記従動軸の一方と一体に回転可能な回転伝達部材(11、101、131)と、
前記回転伝達部材に固定されている外郭部(21、104、138)、および、前記外郭部の内部を複数の油圧室に仕切るように前記外郭部から径内方向へ延びている複数の仕切り部(22、109、155)を有するハウジング(20、102、132)と、
前記ハウジング内で前記駆動軸および前記従動軸の他方と一体に回転可能なボス部(41、110、144、162)、および、前記油圧室を進角室(23)と遅角室(24)とに仕切るように前記ボス部から放射状へ延びている複数のベーン部(42、125、156、163)を有し、前記進角室および前記遅角室の作動油の圧力に応じて前記ハウジングに対し進角側または遅角側に相対回動するベーンロータ(40、103、133、161)と、
を備え、
前記ハウジングの前記外郭部はドーム形状であることを特徴とするバルブタイミング調整装置。 - 前記ハウジングは、樹脂、または、少なくとも樹脂を含む樹脂複合材料から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記ハウジングは、補強材を含む樹脂複合材料から構成されていることを特徴とする請求項2に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記ハウジングの前記外郭部は、ドーム部(25、105、139)、および、前記ドーム部の中央部から外縁部まで延びているリブ部(30、107、108、142、143)を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記ハウジングの前記リブ部の厚みは、前記ドーム部の厚みよりも大きいことを特徴とする請求項4に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記ハウジングの前記外郭部と前記仕切り部との接続部分に埋め込まれ、前記仕切り部を補強しているインサートナット(31)、をさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記ハウジングの前記外郭部の外縁部は、鍔部(26、106、140)を形成していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記ベーンロータの前記ベーン部の受圧面(54、123、152)は、中心角が90度の扇形であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記ベーンロータの前記ベーン部と前記ハウジングの前記外郭部との間に設けられている弓形のシール部材(80、124、154、167)、をさらに備えることを特徴とする請求項8に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
- 前記シール部材と前記ベーンロータの前記ベーン部との間に設けられ、前記シール部材を前記ハウジングの前記外郭部に向けて軸方向と径方向とに付勢している付勢部材(81、168)、をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載のバルブタイミング調整装置(10、160)。
- 前記ベーンロータの前記ボス部に挿通され、前記ボス部を前記従動軸に固定可能であり、径方向へ貫通している複数のオイルポート(74、75、76)を有するスリーブボルト(70)と、
前記スリーブボルト内で軸方向へ摺動可能であり、前記スリーブボルト内を軸方向へ移動することにより各前記オイルポート同士の連通と遮断とを切り替えるスプール(77)と、
をさらに備え、
前記ベーンロータの前記ボス部は、前記スリーブボルトの締め付け座面(51)を有する金属製の筒部(52)と、前記オイルポートに連通している複数の油路(43、44、45、46、47、48)を有する樹脂製の油路形成部(53)と、を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置(10)。 - 前記回転伝達部材は、樹脂製の環状基部(12、134)と、前記環状基部の内側に固定され、前記従動軸に嵌合可能な金属製の内輪部(13、135)と、前記環状基部の外側に固定され、外歯(15)を形成している金属製の外輪部(14、136)と、から構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のバルブタイミング調整装置(10、130、160)。
- 前記回転伝達部材の前記外輪部は、軸方向へ貫通している通孔(16)を有し、
前記通孔に挿通され、前記回転伝達部材を前記ハウジングに固定しているボルト(83)、をさらに備えることを特徴とする請求項12に記載のバルブタイミング調整装置(10、100、130、160)。
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