以下、本発明に係る医療用マニピュレータについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係るマニピュレータ(医療用マニピュレータ)10は、連結シャフト18の先端に設けられた先端動作部12に生体の一部又は湾曲針等を把持して所定の処置を行うための医療用の器具であり、通常、把持鉗子やニードルドライバ(持針器)等とも呼ばれる。
以下の説明では、図1における幅方向をX方向、高さ方向をY方向、連結シャフト18の延在方向をZ方向と規定する。また、先端側から見て右方をX1方向、左方をX2方向、上方向をY1方向、下方向をY2方向、前方をZ1方向、後方をZ2方向と規定する。さらに、特に断りのない限り、これらの方向の記載はマニピュレータ10が中立姿勢である場合を基準として表すものとする。これらの方向は説明の便宜上のものであり、マニピュレータ10は任意の向きで(例えば、上下を反転させて)使用可能であることはもちろんである。
マニピュレータ10は、人手によって把持及び操作される操作部(基部)14と、該操作部14に対して着脱自在な作業部16とを備え、コネクタ520を介して操作部14に着脱自在なコントローラ514を有するマニピュレータシステムとして構成されている。操作部14には、作業部16側を電動的に駆動する駆動部(アクチュエータ部)30が設けられている。なお、分離した状態の操作部14は図2に、分離した状態の作業部16は図3に示されている。
コントローラ514は、マニピュレータ10を総合的に制御する制御部であって、グリップハンドル(ハンドル)26の下端部から延在するケーブル61と前記コネクタ520を介して接続される。コントローラ514の機能の一部又は全部は、例えば操作部14に一体的に搭載することもできる。
コントローラ514は、例えば、第1ポート515a、第2ポート515b及び第3ポート515cを備えており、マニピュレータ10を独立的に3台同時に制御することができる。図1中の参照符号516は、コントローラ514の電源スイッチである。
コントローラ514には、LAN等の通信手段を介して使用履歴管理手段であるホストコンピュータ502を接続することができる。ホストコンピュータ502は、内部の図示しない記録手段に使用履歴テーブルを記録しており、コントローラ514又は前記LANにより接続された複数台のコントローラに対して要求された個体番号に応じた使用履歴データを送受信し、管理する。ホストコンピュータ502は、コントローラ514から独立的な構成に限らず、コントローラ514内にその機能を設けてもよい。
このようなマニピュレータ10及びこれを含むシステムは、選択的に種々の構成を採用可能であり、例えば、作業部16は先端動作部12としてグリッパやはさみ等、各種のエンドエフェクタを適用し、所望の動作を行うことができる。
図1及び図2に示すように、操作部14は、Z1方向及びY2方向に延びた略L字状に構成されると共に、Z方向に略対称に分割された一対の上部カバー25a、25b(以下、まとめて「上部カバー25」ともいう)を筐体として、その内部に、駆動部30やカメラ224(図6参照)等が収納されると共に、基端側でY2方向に延びた部分が人手によって把持されるグリップハンドル26として構成されている。上部カバー25は、例えば樹脂性材料によって形成され、分割できない一体構成としてもよい。
グリップハンドル26は、人手によって把持されるのに適した長さであり、上部の傾斜面26aに複合入力部24を有する。グリップハンドル26は、上部カバー25の屈曲部に形成された傾斜面26aから略Y2方向に向かって延在しており、詳細には連結シャフト18の軸を基準として75°(度)程度の角度に延在している。このような角度にすることにより、マニピュレータ10の全体を動かす際の操作性が高まるとともに、複合入力部24の操作性が高まることが確かめられている。
図1に示すように、操作部14のY1方向頂部近傍には、上部カバー25から露出してマスタスイッチ(メインスイッチ)34が設けられ、マスタスイッチ34のZ1方向で視認し易い箇所にLED29が設けられている。
作業部16は、作業を行う先端動作部12と、該先端動作部12を先端に設けた長尺で中空の連結シャフト(シャフト)18と、該連結シャフト18の基端側が固定される下部ブラケット32と、下部ブラケット32のZ2方向端に軸支されたトリガレバー36とを有する。作業部16は、Z方向で略対称に分割された一対の下部カバー37a、37b(以下、まとめて「下部カバー37」ともいう)を筐体として、その内部に下部ブラケット32を収納している。下部カバー37は、例えば樹脂性材料によって形成され、分割できない一体構成としてもよい。
このような作業部16は、操作部14(駆動部30)に設けられた左右一対の着脱レバー400、400によって当該操作部14に固定されると共に、着脱レバー400の開放操作によって操作部14から分離可能であり、特別な器具を用いることなく、手術現場で容易に交換作業等を行うことができる。下部ブラケット32の上面(Y1面)には、該下部ブラケット32を再使用するために、その内部空間を洗浄する際に使用する洗浄液注入ポート39が設けられている。
図1に示すように、先端動作部12及び連結シャフト18は細径に構成されており、患者の腹部等に設けられた円筒形状のトラカール20から体腔22内に挿入可能であり、複合入力部(基部部側入力部)24及びトリガレバー(作業部側入力部)36の操作により体腔22内において患部切除、把持、縫合及び結紮等の様々な手技を行うことができる。
複合入力部24及びトリガレバー36の操作に基づいて動作する先端動作部12は、3軸の動作が可能である。すなわち、Y軸を基準に傾動するヨー軸動作、先端を指向する軸(中立姿勢時にはZ軸)を基準に回転するロール軸動作、及び、開閉可能なグリッパ軸動作である。本実施形態の場合、ヨー軸及びロール軸は、複合入力部24の操作に基づいて電気的に駆動され、グリッパ軸はトリガレバー36の操作に基づいて機械的に駆動される。ここで機械的とは、ワイヤ、チェーン、タイミングベルト、リンク、ロッド、ギア等を介して駆動する方式であり、主に、動力伝達方向に非弾性な固体の機械部品を介して駆動する方式である。ワイヤやチェーン等は、張力により不可避的な多少の伸びが発生する場合があるが、これらは非弾性な固体の機械部品とする。後述する荷重リミッタ212(図18参照)は、通常操作時にはほとんど弾性変形がなく、実質的に非弾性部品である。
以下、上記のような基本構成からなるマニピュレータ10の各部分について、順に説明する。
先ず、操作部14を構成する駆動部30について、上部カバー25等を外した(もしくは透視した)状態の図6〜図10を用いて説明する。
図6〜図10に示すように、駆動部30は、2つのモータ(アクチュエータ)100、102と、該モータ100、102を支持する上部ブラケット104と、モータ100、102の回転方向を変換して作業部16側に伝達するギア機構部106とを有する。モータ100、102及びギア機構部106は、一方の上部カバー25bの内面に2本のビス103、103(図6参照)で固定された前記上部ブラケット104によって支持されている。
図8に示すように、モータ100、102は、径:長さが1:4程度の円柱形状であり、Z1方向側に設けられた減速機100a、102aと、該減速機100a、102aによって減速される出力軸100b、102b(図9参照)と、Z2方向側に設けられた角度センサ100c、102cとを含む。モータ100、102は、例えばDCモータである。減速機100a、102aは、例えば遊星歯車式であり、減速比は1:100〜1:300程度である。角度センサ100c、102cとしては、例えばロータリエンコーダが用いられ、検出した角度信号はコントローラ514に供給される。モータ100とモータ102や、減速機100aと減速機102aは、同一である必要はなく、適宜選定すればよい。
図8に示すように、モータ100とモータ102は、X方向に対称位置で且つほとんど隙間なく配置されている。モータ100、102のZ2方向端は、グリップハンドル26のZ1方向端と略等しい位置である(図6参照)。図6に示すように、モータ100、102のケーブル100d、102d(角度センサ100c、102cの接続線を含む)は、それぞれZ2方向端側から延在し、グリップハンドル26の中へと引き込まれている。
上部ブラケット104は、モータ100、102が固定されるXY平面である第1プレート108と、第1プレート108の上下端からZ1方向に延びた第2プレート110及び第3プレート112と、第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112で囲まれた空間内をX1側及びX2側に仕切る第4プレート114とを有し、切削加工又は溶接加工成型等によって形成されている。第3プレート112のZ1側端には、Y1方向に突出したブロック状のセンサ支持部109が形成されている。平面視(図8参照)で上部ブラケット104の外形を構成する第1プレート108及び第3プレート112の外周面には、これを一周する溝部にOリング105が嵌合されている(図7参照)。
図9に示すように、第1プレート108は、モータ100、102の外径の1.5倍程度の高さとなっている。第1プレート108には、モータ100、102がそれぞれZ2方向に延在する向きで複数のビス111でX方向に平行して支持されており、その出力軸100b、102bが孔113を通ってZ1方向側へと突出している。
図7及び図9に示すように、第2プレート110は、第1プレート108の上端からZ1方向に向かって突出している。第3プレート112は、第2プレート110と平行且つZ1方向端の位置が多少突出しており、その突出部分に前記センサ支持部109が設けられている。第4プレート114は、三方が第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112に接続され、X方向に関する中央部分でYZ平面を形成している。この第4プレート114は補強板として作用し、第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112が安定する。第4プレート114のZ1方向且つY1方向の角部はZ1側に突出形成されており、ここに上部ブラケット104を上部カバー25bの内面に固定する前記ビス103の1つが配設される(図6及び図9参照)。
図10に示すように、センサ支持部109には、各モータ100、102の軸線の延長線上(Z方向)にある一対の孔部300、302と、これらの間にある孔部304とからなる合計3つのY方向の貫通孔がX方向に並んでいる。
孔部300、302には、それぞれカップリングセンサ306、308のセンサドグ(被検出部材)として機能する検出シャフト(検出軸)310、312が挿通配置されている。孔部304には、着脱センサ314のセンサドグとして機能する検出シャフト(検出軸)316が挿通配置されている。カップリングセンサ306、308及び着脱センサ314は、Y方向が開口した平面視(図8参照)で略U字状であり、U字の内側で検出シャフト310、312、316を検出可能である。カップリングセンサ306、308及び着脱センサ314は、センサ支持部109のZ1面にXY平面に沿って固定されたセンサ基板317に設けられている(図6、図8及び図9参照)。
図10に示すように、着脱センサ314の検出シャフト316は、Y方向に延びてY1側が細い段付きの棒状部材である。検出シャフト316は、高さ方向で略中央の細径部に外嵌されたコイルばね318によってY2方向(下方)に向かって付勢されると共に、Y1方向端近傍に嵌合されたEリング320によって孔部304に対して抜け止めされている。
コイルばね318は、孔部304のY1方向端に縮径形成されたフランジ304aに上部が着座し、検出シャフト316の略中央に形成されたフランジ316aに下部が着座して保持されている。フランジ316aは、Oリング320が嵌められる環状溝の一側壁を構成している。
同様に、カップリングセンサ306、308の検出シャフト310、312もY方向に延びてY1側が細い段付きの棒状部材である。検出シャフト310、312は、Y1側の細径部に外嵌されたコイルばね322、324によってY2方向(下方)に向かって付勢されている。検出シャフト310、312のY2方向端(下端)には、フランジ310b、312bが拡径形成されている。フランジ310b、312bは、モータ100、102の出力を受ける駆動シャフト115、116のY2方向端近傍に外嵌された係合凸部137、138に形成された環状溝部139、140に係合しており、これにより検出シャフト310、312が抜け止めされている。
コイルばね322、324は、孔部300、302のY1方向端に縮径形成されたフランジ300a、302aに上部が着座し、検出シャフト310、312の中央やや下方に形成されたフランジ310a、312aに下部が着座して保持されている。フランジ310a、312aは、Oリング326、328が嵌められる環状溝の一側壁を構成している。検出シャフト310、312のY1方向端(上端)には、カップリングセンサ306、308に対応する検出頭部310c、312cが設けられている。
図7、図9及び図10に示すように、ギア機構部106は、第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112で囲まれた空間で、第4プレート114を基準にしてX方向に対称構成として設けられている。ギア機構部106は、2本の駆動シャフト(駆動軸)115、116と、2つの駆動傘歯車117、118と、2つの従動傘歯車119、120とを有する。
図9に示すように、上部ブラケット104を構成する第2プレート110及び第3プレート112には、各駆動シャフト115、116にそれぞれ対応し、ベアリング122、124が配置される軸孔126、128が一対ずつ設けられている。ベアリング122、124は、外輪の一部が第2プレート110及び第3プレート112の端面に当接することにより位置決めされている。第2プレート110の上面には、ベアリング122の外輪を止める止板130が複数のビス129(図7及び図8参照)によって固定されている。止板130には、駆動シャフト115、116のY1方向端(上端)が挿通する一対の孔130a、130a(図8及び図9参照)が設けられている。
図9に示すように、モータ100(102)の出力軸100b(102b)は、孔113を貫通して駆動シャフト115(116)の近傍までZ方向に延在し、駆動傘歯車117(118)が押しねじ134によって固定されている。一方、駆動シャフト115(116)には、従動傘歯車119(120)が押しねじ136によって固定されている(図9参照)。駆動傘歯車117(118)と従動傘歯車119(120)とは互いに噛合し、出力軸100b(102b)の回転を90°変換して駆動シャフト115(116)に伝達することができる。
図7〜図10に示すように、駆動シャフト115(116)の上端側(Y1側)はベアリング122を貫通し、止板130の孔130aから所定量突出している。止板130から突出した駆動シャフト115(116)の先端には、平面視(図8参照)で略半円状の円板部を有する検出片333(334)が固定されている。検出片333(334)は、駆動シャフト115(116)と共に回転し、側面視(図9参照)で略U字状の原点検出センサ331(332)のセンサドグとして機能する。原点検出センサ331、332は、上部ブラケット104を構成する第2プレート110の上面に立設されたセンサ基板335のZ1側面に設けられている。
図9に示すように、駆動シャフト115(116)の下端側(Y2側)はベアリング124に軸支された部分より下部が段付き形状となっており、順に、Oリング131が外嵌されるフランジ115a(116a)と、該フランジ115a(116a)より大径でコイルばね121の上部が着座する短尺円筒状のフランジ座115b(116b)と、コイルばね121が外嵌され且つ係合凸部137(138)が進退可能に挿通される断面波形六角形状の波形部115c(116c)(図20A参照)とが設けられている。係合凸部137(138)は、コイルばね121によってY2方向に付勢されつつ、該係合凸部137(138)を貫通した駆動シャフト115(116)のY2方向端近傍に嵌合されたEリング123によって抜け止めされている。すなわち、係合凸部137(138)は、駆動シャフト115(116)の波形部115c(116c)に対し、回転不能に且つY方向(軸方向)に進退可能に弾性支持されている。コイルばね121の下端部は、係合凸部137(138)の上面側に図示しない環状凹部を形成し、該環状凹部内に挿入されるように配置されてもよい。
駆動シャフト115(116)は、中央部115d(116d)の上端がベアリング122の内輪に当接し、該中央部115d(116d)の下部に連続するフランジ115a(116b)の上端がベアリング124の内輪に当接することで位置決めされている。駆動シャフト115、116は、平面視(図8参照)で、モータ100、102の軸方向の延長線上(Z方向)に配置されている。
このような駆動傘歯車117、118、従動傘歯車119、120、及び、駆動シャフト115、116を含むギア機構部106によれば、モータ100、102が連結シャフト18と比較して大径であっても並列配置が可能になると共に、モータ配置の自由度が高まる。また、モータ100及びモータ102と、駆動シャフト115及び駆動シャフト116とは、連結シャフト18を基準としてY方向を基準とした対称位置に設けられており、バランスがよい。
ギア機構部106では、第2プレート110及び第3プレート112が従動傘歯車119、120を挟んで駆動シャフト115、116を軸支する軸支部材として作用し、第1プレート108がモータ100、102を固定するモータ板として作用すると共に、第2プレート110と第3プレート112とを接続しており、簡便でありながら高い剛性が得られ、モータ100、102及び駆動シャフト115、116を安定して保持することができる。また、駆動シャフト115、116間に、第1プレート108、第2プレート110及び第3プレート112を接続する第4プレート114を設けたことにより、一層高い剛性を得ることができる。
次に、作業部16を構成する下部ブラケット32について説明する。
図6及び図11に示すように、下部ブラケット32は、Z方向に延びた側面視略矩形(図6参照)に形成されており、Z1側がボックス構造からなるプーリボックス32aを構成し、該プーリボックス32aのZ2側が平行した一対のプレート構造からなるトリガレバー取付部32bを構成している。この下部ブラケット32は、第1に、プーリボックス32aが駆動部30のギア機構部106に着脱可能に接続されることで、駆動シャフト115、116の回転を連結シャフト18から先端動作部12へと中継する機能を有し、第2に、トリガレバー取付部32bでトリガレバー36を軸支すると共に、トリガレバー36の操作を連結シャフト18から先端動作部12へと中継する機能を有し、第3に、連結シャフト18内の気密状態を維持する機能を有する。
先ず、プーリボックス32aについて説明する。
図11〜図13に示すように、プーリボックス32aは、X方向両側が開口した空洞部152と、空洞部152のZ1側のシャフト支持部154と、空洞部152のZ2側のロッド孔156a、156bと、空洞部152に収納されたプーリ(従動軸)158a、158b及びワイヤガイド部160a、160bとを有する。プーリボックス32aとトリガレバー取付部32bとの接続部近傍には、Z方向を基準として対称な一対のピン穴161、161が形成されている。各ピン穴161、161には、作業部16と操作部14との着脱時、上部ブラケット104からY1方向に突出した一対のガイドピン163、163が挿入される(図2及び図6参照)。
空洞部152は、プーリボックス32aのX方向両面を連通する孔であって、側面視(図12参照)で、プーリボックス32aのややZ2方向寄りに設けられ、Z方向両端が半円形状となっている。プーリボックス32aのX方向両面には、空洞部152を囲うOリング164、164が設けられており(図6及び図13参照)、その外面から装着される下部カバー37a、37bによってOリング164が適度に圧縮される。
シャフト支持部154は、空洞部152からプーリボックス32aのZ1方向端面に連通する孔であり、Z方向に延びる連結シャフト18の基端側を支持している。連結シャフト18のZ2方向端には、筒状のカプラ165が設けられており(図12及び図13参照)、シャフト支持部154はカプラ165を介して連結シャフト18を支持している。カプラ165と連結シャフト18との間には2つのOリング166、166が設けられ、カプラ165とシャフト支持部154との間にはOリング168が設けられている。連結シャフト18は、プーリボックス32aのZ1方向上端に形成された切欠部にクランプ部材170がY1側から締結されることによって固定されている(図11及び図12参照)。
図12及び図13に示すように、空洞部152には、Y方向に並んだ2対の同軸孔172a、172a(Y1側)及び172b、172b(Y2側)に、それぞれベアリング174a、174a及び174b、174bが設けられており、該ベアリング174a、174bによってプーリ158a、158bが軸支されている。
プーリ158a、158bは、駆動シャフト115、116に対して同軸である(図6及び図7参照)。前記同軸孔172aから上方に突出したプーリ158a、158bのY1方向端には、駆動シャフト115、116のY2方向端に設けられた係合凸部137、138(図9及び図10参照)と係合可能な係合凹部176a、176bが設けられている(図11及び図12参照)。このような係合凸部137、138と係合凹部176a、176bとは、後述する所定の位相(この場合には1箇所。但しプーリ158a、158bの許容回転範囲θによっては複数のn箇所)でのみ係合可能である(図20A及び図20B等参照)。これらが係合することにより、駆動軸である駆動シャフト115、116からの回転駆動力が、従動軸であるプーリ158a、158bへと伝達される。
プーリ158aとプーリ158bとの軸間距離は、駆動シャフト115と駆動シャフト116との軸間距離と等しく(図10参照)、プーリ158aとプーリ158bとの隙間は連結シャフト18の径よりも大きい(図13参照)。
図12に示すように、プーリ158a、158bは、同軸孔172aに対してOリング178aで回転可能に気密シールされ、同軸孔172bに対してOリング178bで回転可能にシールされている。プーリ158a、158bは、Y2方向端がEリング180によって抜け止めされている。また、プーリ158a、158bの中央部には、径調整部材182が介装されており、該径調整部材182を適宜選定することにより、後述するワイヤ1052、1054の巻き付け径を調整可能となっている(図12及び図13参照)。なお、プーリ158a、158bはそれぞれ径調整部材と一体のものとしてもよい。
プーリ158a、158bの上端に設けられた係合凹部176a、176bは、空洞部152に位置した部位よりも大径であって、プーリボックス32aの上面(Y1方向面)に面する下面には、その外周の所定角度分(例えば、270°)を縮径方向(中心方向)に切欠いた円弧切欠部177、177がそれぞれ形成されている(図12参照)。係合凹部176a、176bの各円弧切欠部177、177には、それぞれストッパ(規制部)179a、179aが挿入配置されている(図11及び12参照)。ストッパ179aは、ワイヤガイド部160a、160bのY1方向端の抜け止めをする止板179のZ2側に突出形成されたプレート状の突起である。
従って、図14A及び図14Bに示すように、プーリ158a、158bの回転範囲は、図14Aに示す状態でのZ1方向を原点として、円弧切欠部177の両終端の当接部(当接部材)177a、177bが、前記ストッパ179aの両側面に当接するまでの正転及び逆転の範囲に規制されている。すなわち、図14Aに示すように、一方のプーリ158aの回転範囲は、前記原点から時計回り(図14Aは下面図のため、反時計回り)の正転(180°未満)の範囲(図14Aに矢印+θで示し、例えば90°)と、反時計回り(図14Aは下面図のため、時計回り)の逆転(180°未満)の範囲(図14Aに矢印−θで示し、例えば90°)とに規制されている。同様に、他方のプーリ158bの回転範囲も、原点から時計回りの正転の範囲(図14Aに矢印+θで示し、例えば135°)と、反時計回りの逆転の範囲(図14Aに矢印−θで示し、例えば135°)とに規制されている。これにより、プーリ158a等が過剰に回転し、ワイヤ1052等によって駆動される先端動作部12が過度な動作を生じたり、ワイヤ1052等に過度の引張等の負荷が生じたりすることを確実に回避することができる。
図12及び図13に示すように、ワイヤガイド部160a(160b)は、挿入軸184と、該挿入軸184に隣接して軸支された2層の円筒アイドラ186、188と、これら円筒アイドラ186、188の位置決めをする位置決め筒190a、190bとを有する。
挿入軸184はY方向に延在し、プーリボックス32aに対してY1側の貫通孔194aを通り、Y2側の有底の穴194bに挿入されており、貫通孔194aのY1方向端が前記止板179によって閉塞されている。挿入軸184は、止板179の近傍がOリング193によってシールされている。挿入軸184は、空洞部152において、Y1側からY2側に向かって順に位置決め筒190a、円筒アイドラ186、円筒アイドラ188及び位置決め筒190bが設けられている。円筒アイドラ186、188は、独立に回転可能なプーリである。
図13に示すように、各ワイヤガイド部160a、160bを構成する2つの円筒アイドラ186、186間の隙間S1(円筒アイドラ188、188間の隙間も同様)は、連結シャフト18の内径よりも狭く、該内径の1/2程度に設定されている。円筒アイドラ186、188は、回転自在であって、その周面にはワイヤ1054(1052)が配置される溝186a、188aが設けられている。円筒アイドラ186、188は、適度な潤滑性が確保されていれば必ずしも回転可能な構成でなくてもよい。
このようなワイヤガイド部160a、160bを用いることにより、連結シャフト18は、モータ100、102の径やプーリ158aとプーリ158bとの軸間距離S2(図13参照)に依存することなく十分に細くでき、例えば、トラカール20に挿入するのに適した5mm〜10mm程度に設定することができる。また、ギア機構部106を介したモータ100、102の配置の自由度が高まる。ワイヤ1054(1052)の往路線及び復路線は逆方向に動くが、2層の円筒アイドラ186、188は、これに対応しており、各線が摩擦のない動作が可能である。
図12に示すように、プーリボックス32aを構成する空洞部152には、さらに、2本のロッド(伝達部材)192a、192bがY方向に並んで、Z方向に貫通している。ロッド192a、192bは、例えば、十分に強く且つ細いステンレスパイプ又は中実ロッドであり、Z1方向は空洞部152を貫通して連結シャフト18内へと延び、Z2方向はロッド孔156a、156bを貫通してトリガレバー取付部32bへと延びている。
ロッド孔156a、156bの開口側(Z2側)には、これらロッド孔156a、156bの周囲を囲繞する矩形プレート状のゴムシート194と、該ゴムシート191を密着支持する支持プレート196とが設けられている(図12参照)。ロッド192a、192bは、ゴムシート194及び支持プレート196に設けられた一対の貫通孔にそれぞれ挿通されると共に、ゴムシート194によりその貫通した摺接面がシールされている。すなわち、ゴムシート194は、ロッド192a、192bに対して隙間なく接触し、空洞部152及び連結シャフト18をZ方向に進退自在に気密シールする。
このように、プーリボックス32aを構成する空洞部152は、ロッド192a、192bに対してはゴムシート194でシールされ(図12参照)、プーリ158a、158bに対してはOリング178a、178bでシールされ(図12参照)、ワイヤガイド部160a、160b(挿入軸184)に対してはOリング193でシールされ(図12参照)、連結シャフト18に対してはOリング166、168でシールされ(図12参照)、下部カバー37a、37bに対してはOリング164によってシールされ(図6及び図13参照)、これにより気密に維持されている。一方、連結シャフト18の外周面はトラカール20(図1参照)によって気密に支持される。
従って、体腔22に供給された気体が連結シャフト18からプーリボックス32aを介して外部に漏出することがない。さらに、密封状態となった空気により、血液等の液体が先端動作部12の隙間から連結シャフト18及びプーリボックス32aへと浸入すること事態を可及的に抑制することができ、連結シャフト18やプーリボックス32a、さらには操作部14等の洗浄が容易となる。なお、連結シャフト18の内部に仕切り部等を設けて、気密状態を保つ構成としてもよい。
図11及び図12に示すように、プーリボックス32aのZ1方向上端のクランプ部材170には、Y1方向に立設された電極棒197が設けられている。電極棒197は、上部カバー25bに形成されたY方向の貫通孔198に挿通され、電極プラグ199(図1参照)が取り付けられることにより、当該マニピュレータ10を電気メスとして使用する際の高電圧が印加される。電極棒197は導電板195によって一方のワイヤガイド部160bに電気的に接続されており(図11参照)、これにより、ワイヤガイド部160bに接触するワイヤ1052を介して先端動作部12側へと高電圧を伝えることができる。
図15に示すように、シャフト支持部154では、カプラ165及び連結シャフト18の内側で、Y方向にロッド192a及び192bが並列し、ワイヤ1052及び1054の各往復線はY方向に近接して並び、ワイヤ1052とワイヤ1054はX方向に並列しており、バランスよく配列されている。
次に、下部ブラケット32を構成するトリガレバー取付部32bと、該トリガレバー取付部32bに軸支されるトリガレバー36とについて説明する。
図1、図6及び図18に示すように、トリガレバー取付部32bは、プーリボックス32aのZ2方向端面からZ2方向に平行に延びた一対の支持プレート201、201の間に渡ったトリガ軸35により、トリガレバー36を回動可能に軸支している。
先ず、トリガレバー36について説明する。
図16及び図18に示すように、トリガレバー36は、トリガ軸35に軸支されるアーム部200と、該アーム部200のY2側に設けられた指輪部202と、該指輪部202のY2側に設けられた略円弧状の指掛け突起204a、204bと、指輪部202から指掛け突起204a、204bに渡って形成された内部空間203に収納されたラチェット爪206と、該ラチェット爪206を揺動させるレバー208とを有する。指輪部202は、主に人差し指(又は中指)を挿入し、指掛け突起204a、204bは、主に中指(又は薬指)を掛けるのに適している。
ラチェット爪206は、Z1側が揺動軸207に軸支されると共に、Z2側には、凹部206bによって形成されて上方を指向した爪部206aが設けられ、揺動軸207よりZ1側の端部がコイルばね209によってY2方向へと付勢されている。これにより、爪部206aが上方に向けて付勢されると共に、凹部206bが内部空間203をX方向に渡るストッパピン(ストッパ部材)211に当接することで、それ以上の上方への揺動が規制されている。
そこで、トリガ軸35を支点としてトリガレバー36をZ2方向に大きく変位(回動)させると、ラチェット爪206の爪部206aは、グリップハンドル26からZ1方向に突出した平面視略U字状の係合リング(係合部)27に当接する(図2、図6及び図16参照)。次いで、爪部206aのZ2側傾斜面に係合リング27が摺接しつつ、爪部206aがコイルばね209の付勢力に抗して多少下方に揺動される。そして、係合リング27が爪部206aを完全に乗り越えると、ラチェット爪206は、コイルばね209の付勢力によってストッパピン211に当接する位置まで戻され、同時に、係合リング27が爪部206a(凹部206b)に係合する(図17A参照)。その結果、トリガレバー36の位置を保持することができ、エンドエフェクタ1300(図1参照)を閉状態にロックすることができる。係合リング27は、例えば多段に設けてもよく、そうするとトリガレバー36のロック位置又は把持力を把持対象に合わせて調整可能にすることもできる。
レバー208は、一部が内部空間203からZ1方向に露出した略L字状の部材である(図16参照)。レバー208は、内部空間203内の一端側が揺動軸213に軸支されており、通常、コイルばね209によってY2方向に付勢されたラチェット爪206のZ1方向端によって押圧され、図17Aに示すような初期姿勢で保持されている。
そこで、図17Bに示すように、レバー208の外部に露出した操作端208bをY2方向に押し下げると、該レバー208が揺動軸213を支点として揺動し、内部空間203内の一端側に形成された押圧面208aがラチェット爪206をコイルばね209の弾性力に抗して揺動させ、図17Bに示すように該ラチェット爪206を固定することができる。これにより、図17Bに示すように爪部206a(凹部206b)と係合リング27との係合が発生しない状態で使用することができる。また、爪部206aと係合リング27との係合を発生させながら使用した際に該係合を解除する場合、指輪部202の下部に部分的に突出しているラチェット爪206の中央凹部(解除部)206cを指で下側に押し下げることによって解除することができる(図17Aの一点鎖線で示すラチェット爪206参照)。
図16に示すように、トリガレバー36の内部空間203のZ2側上部には、上方に向けて傾斜した傾斜面203aが形成されると共に、他の部分よりも深く掘り下げられた凹部203bが形成されている。これにより、グリップハンドル26側の係合リング27を凹部203bから円滑にラチェット爪206に対して係合させることができる。
さらに、ラチェット爪206が係合リング27に係合した状態のまま、仮に操作部14と作業部16とを分離させた場合であっても、ストッパピン211によってラチェット爪206の上方への揺動が規制されており、しかも傾斜面203a及び凹部203bが係合リング27の逃げ部として作用するため、図17A中の破線矢印で示すように、係合リング27を傾斜面203aに沿って容易に抜くことができる。このため、係合リング27とラチェット爪206との係合状態が強固に維持されて、係合リング27やトリガレバー36に無理な力が生じることを有効に回避することができる。
なお、図示はしないが、係合リング27に相当する構造の係合リングを爪部206a及び凹部206bに代えてラチェット爪206側に設ける一方、爪部206a(及び凹部206b)に相当する構造の爪部をグリップハンドル26側に設けてもよい。この場合にも、ラチェット爪206側の前記係合リングに対し、グリップハンドル26側の前記爪部をY1側からY2側に向かって係合する構成とすることにより、上記と略同様な作用効果を得ることができる。
次に、トリガレバー取付部32bについて説明する。
図11及び図18に示すように、トリガレバー取付部32bは、プーリボックス32aのZ2方向端面から延び、そのZ2方向端近傍でトリガレバー36を軸支する一対の支持プレート201、201と、支持プレート201、201間に設けられた荷重リミッタ212及びトリガワイヤ214とを有する。支持プレート201、201間の中心は連結シャフト18と略同軸構成となっている。支持プレート201は平行な一対のプレート部材以外、例えば円筒形状等でもよく、トリガ軸35や荷重リミッタ212等を支持できる形状であればよい。
荷重リミッタ212は円筒形状であって、外筒212aと、内ロッド212bと、コイルばね212cとを有し、Z1方向端の内ロッド212bがロッド192aの端部に軸支され、Z2方向端の外筒212aがアーム部200における軸200aに軸支されている。内ロッド212bとロッド192aを枢動可能に接続する軸205は、支持プレート201に設けられた長丸穴215にスライド自在な状態で支持されている(図19参照)。これにより、ロッド192aと内ロッド212bの角度に係わらず、ロッド192aをZ方向へ真っ直ぐに動かすことができる。コイルばね212cは適度に硬く、プリロードをかけた状態で外筒212aと内ロッド212bとの間に介在している。従って、荷重リミッタ212は、通常は、実質的な剛体としてロッド192aとトリガレバー36とを接続しているが、過度に大きい荷重がかかったとき、すなわち、エンドエフェクタ1300が何かを挟持する等してプリロード以上の荷重がかかったときには、コイルばね212cがさらに圧縮されて内ロッド212bが延出する。これにより、トリガレバー36を過度に強く引いても、その力は荷重リミッタ212によって制限されることになり、エンドエフェクタ1300(図1参照)及びその駆動機構あるいは把持対象物を保護することができる。
なお、荷重リミッタ212の最大荷重は、エンドエフェクタ1300が最大に開いたときにトリガレバー36を最も手前に引いた場合であっても、トリガワイヤ214等の駆動機構が許容強度以下となるように設定されることが望ましい。
図18に示すように、トリガワイヤ214は、Z1方向端がロッド192bの端部に接続(例えば、圧着)され、Z2方向端がピン214aを介してアーム部200における軸200bに軸支されている。トリガワイヤ214は、プーリ216に案内されており、該プーリ216よりもZ1側の部分は、ロッド192bと略同軸状となっている。
軸200aはトリガ軸35よりもY2側、軸200bはトリガ軸35よりもY1側に配置されており、軸200a、200bは、トリガ軸35から略等距離にある。従って、トリガレバー36を操作することにより、軸200aと軸200bは反対方向に略等距離変位し、これに伴って、ロッド192aとロッド192bが反対方向(Z1方向とZ2方向)に略等距離変位する。このように、トリガ軸35、ロッド192a、192b、軸200a、200b、荷重リミッタ212及びトリガワイヤ214等は、トリガレバー36への入力操作を先端動作部12へと機械的に伝達する操作伝達部を構成している。勿論、該操作伝達部は、他の構成要素を含み又はいずれかの構成要素を省略してもよく、要は、トリガレバー36への入力操作によってロッド192a、192b等の伝達部材を進退できる構成であればよい。
図3、図11及び図20Bに示すように、トリガレバー取付部32bを構成する一対の支持プレート201、201の上面(Y1方向面)において、プーリボックス32a寄りの位置には、両支持プレート201、201に渡ってバーコードプレート220が固定され、その表面にバーコード222が設けられている。
バーコード222は、例えば略正方形のマトリックス形状であり、桝目に従って白及び黒が印刷された二次元バーコードであり、操作部14側に設けられたカメラ224により、ミラー226及び撮影窓227を介して撮像される(図6及び図19参照)。
そこで、次に、バーコード222及びそれを撮像するカメラ224について説明する。
図3、図11及び図20Bに示すように、バーコード222は、XZ平面を構成するバーコードプレート220の上面(Y1方向面)に貼り付けられ、下部カバー37a、37bの合わせ面に形成される切欠230によって上部に露出している。バーコード222には、作業部16の個体情報、仕様、タイムスタンプ(製造日等)やシリアルナンバー、使用量(使用回数)上限等の情報が含まれている。バーコード222が保持している個体情報は、作業部毎に識別が可能なように異なる値が付与されている。また、バーコード222はミラー226を介して撮影されるため、鏡像となっている。
バーコード222は1枚に限らず、複数枚からなる構成であってもよい。バーコード222が2枚からなる場合、一枚は個体情報、製造日、シリアルナンバー等の個体特有の情報を示し、もう一枚は仕様、使用量上限等の型式毎に共通的な情報を示すようにしてもよい。バーコード222は二次元データに限らず、一次元形状であってもよい。バーコード222における枡目の色は白及び黒に限らず、赤外線吸収色及び赤外線反射色であってもよく、又は3色以上の色の区別により情報を示すようにしてもよい。
図6及び図19に示すように、カメラ224は、操作部14を構成するモータ100、102の下部に配置され、一方の上部カバー25bの内面に固定されている。カメラ224のX方向両側部には、一対のLED224a、224aが設けられている(図7も参照)。カメラ224は、例えばCCD形式又はCMOS形式からなり、バーコード222を撮像するためのカメラである。
図19に示すように、カメラ224は、撮像方向が反射鏡であるミラー226で屈曲されてバーコード222を撮像可能な向き(略Z1方向)に設定されており、つまり、屈曲方向(直交方向)に位置した被写体であるバーコード222をミラー226を介して撮像可能である。同様に、LED224aは、光軸がミラー226で屈曲されてバーコード222を照明する向き(略Z1方向)に設定されている。LED224aにより、カメラ224はバーコード222を一層確実に認識することができる。LED224aは、カメラ224を挟んで左右対称位置に設けられており、バーコード222をバランスよく照明することができる。LED224aは、カメラ224を挟んで上下に設けられていてもよく、等間隔に3以上設けられていてもよい。LED224aが十分な光量を有する場合には1つでもよい。
ミラー226のY2方向には、上部カバー25を透過させる撮影窓227が設けられており(図19参照)、すなわち、操作部14において、カメラ224、LED224a及びミラー226は、上部カバー25内に収納されている(図2及び図6参照)。さらに、操作部14に作業部16が装着された状態では、上部カバー25及び下部カバー37によってバーコード222も略閉空間内に配置されるため、当該マニピュレータ10の使用時に、バーコード222及びカメラ224が血液等で汚れることを防止可能であると共に、不要な外乱光を遮蔽してLED224aによる安定した撮像が可能となる。また、バーコード222とカメラ224との相対的な位置及び向きが固定的であることから、カメラ224側では、バーコード222の位置及び向きを特定する必要がなく、これらを特定するためのコードが不要か又は少量で足り、その分、バーコード222における記録可能な情報量が多くなる、あるいは省スペースでの配置が可能となる。
このようなバーコード222を作業部16に設けたことにより、操作部14及びコントローラ514では、カメラ224を用いて作業部16の個体情報を認識することができ、マニピュレータ10を構成するモータ100、102等を当該作業部16の種類(例えば、グリッパやはさみ、電気メス)に対応するように適切に且つ正確に駆動制御することができる。
ここで、作業部16が操作部14に装着されたことは、着脱センサ314及び検出シャフト316(図7等参照)によって迅速に検出することができる。そこで、コントローラ514では、着脱センサ314による作業部16の装着の検出を、カメラ224及びLED224aを起動制御してバーコード222から個体信号を取得するためのトリガ信号とすることもできる。
すなわち、コントローラ514は、作業部16が操作部14に装着されたと略同時に、カメラ224及びLED224aを駆動制御してバーコード222から個体信号を取得する。コントローラ514では、少なくとも作業部16が操作部14に装着されたときに個体信号を取得すれば足り、それ以外のときにはカメラ224及びLED224aの動作を停止しておくことができ、処理負荷が低減すると共に省電力化を図ることができる。さらに、バーコード222は直接的な通電の必要がなく操作部14及び作業部16には電気的接点が存在せず、しかもバッテリ等の蓄電体もないため一層省電力であると共に、操作部14から取り外した作業部16の洗浄や滅菌等を一層容易に行うことができる。
次に、操作部14側のマスタスイッチ34及び複合入力部24について説明する。
マスタスイッチ34(図1及び図6参照)は、マニピュレータ10の動作状態の有効又は無効を設定するための入力手段であり、その操作は入力検出部(トグルスイッチ又はタクトスイッチ等)350によって検出され、検出された信号がコントローラ514に供給される。LED29は、マニピュレータ10の制御状態を示すインジケータであり、操作者が容易に認識可能な大きさであり、且つ操作に支障がない程度に十分に小型軽量である。LED29は、上部カバー25の頂面(Y1方向面)における略中央部で、視認性のよい位置に設けられており、マスタスイッチ34と並んで配置されている。LED29は、例えば、マスタスイッチ34によるON操作に同期して点灯等をするため、操作者はマスタスイッチ34の操作をしながらその入力状態をLED29により確実に認識することができる。LED29は、例えば、緑色及び赤色をそれぞれ発光可能であり、さらに各色につき点灯及び点滅が可能である。
図6及び図7に示すように、マスタスイッチ34は、一方の上部カバー25bの内面に支持部材352を介して固定された基板354上に配置され、上部カバー25内の部分がスイッチカバー356によって外部から密封されている。
コントローラ514(図1参照)では、マスタスイッチ34の入力状態を読み込み、オンされた際に後述する原点サーチ動作を行ってマニピュレータ10を所定の使用可能状態に駆動制御する。これにより、操作部14の操作指令が有効となり、先端動作部12に所望の動作を付与することが可能となる。
図4及び図5に示すように、複合入力部24は、Z軸(Y軸)を中心としてX1方向及びX2方向に対称な構造であり、先端動作部12に対してロール方向(軸回転方向)及びヨー方向(左右方向)の回転指令を与える複合的な入力部である。グリップハンドル26の上面は、Z1方向に向けてY1方向に上がる傾斜面26aとなっており、複合入力部24はこの傾斜面26aに設けられている。傾斜面26aの傾斜角は、グリップハンドル26を人手で把持したときに複合入力部24が親指又は人差し指で操作し易い角度であり、Z方向を基準として20°〜35°程度が好適である。
複合入力部24は、傾斜面26aに配置されたセンサホルダ52によって支持されており、傾斜面26aのZ1側(Y1側)の回転操作部54と、そのZ2側(Y2側)に設けられた傾動操作部56と、傾動操作部56の下部側面にそれぞれ配設された3つのスイッチ操作子58a、58b、58cとを有する。
図5に示すように、センサホルダ52内には、スイッチ基板62が設けられ、該スイッチ基板62には、回転操作部54への入力操作を検出する入力検出部(タクトスイッチ)66aと、傾動操作部56への入力操作を検出する入力検出部(タクトスイッチ)66bと、スイッチ操作子58a〜58cへの入力操作を検出する入力検出部(タクトスイッチ)66c〜66eとが設けられる。このような複合入力部24により、モータ100、102、駆動シャフト115、116及びプーリ158a、158bが駆動され、可撓性部材であるワイヤ1052、1054を介して先端動作部12をロール方向及びヨー方向に動作させることができる。
スイッチ操作子58bは、回転操作部54及び傾動操作部56の有効及び無効の切換や、ヨー軸機構(ピボット軸機構)を所定の初期姿勢に戻す(一度押すと初期姿勢まで自動的に移動し、停止する)、又は初期姿勢方向に移動させる(押しているときだけ初期姿勢方向に移動し、初期姿勢になったら自動的に停止する)ためのスイッチとして用いるとよい。
スイッチ操作子58a及び58cは、ロール回転機構を所定の初期姿勢に戻す、又は初期姿勢方向に移動させるためのスイッチとして用いるとよい。スイッチ操作子58a及び58cは、全く同一の機能を有するスイッチとして左右に配置することで、操作者が操作部14を右手で把持した場合でも左手で把持した場合でも問題なく、同様の操作をすることができる。具体的には、右手操作の場合及び左手操作のいずれの場合にも、例えば親指による同様の操作が可能である。また、現在のロール回転機構の位置(正領域か負領域か)を意識せずにロール回転機構を所定の初期姿勢まで戻し、又は初期姿勢方向に移動させることができる。
図5に示すように、回転操作部54は、YZ方向に沿う軸(図示せず)を中心として回動可能な構成であり、X1方向及びX2方向にそれぞれ伸びたレバー72aと、両レバー72a、72aの間でX、Y、Z方向に適度に膨出して3方に切欠72bを設けた操作子72cとを有する。レバー72aの左右両端は、表面に滑り止め用の多数の筋が設けられた半円形状となっている。操作子72cは、初期位置の状態で上部カバー25a、25bと連続的な面(平面又は曲面)を構成しており(図4参照)、無駄な突起や段差等がなく、外観上で好適であるとともに、操作もし易い形状とされている。
回転操作部54は、操作子72cの切欠72bを指で周方向に向かう回動操作がなされ、ロール回動機構を動作させる機能を有する。このように外周面に指掛け部が設けられている回転操作部54によれば、前記YZ方向に沿う軸を中心とした回動操作がなされ、ロール回動機構についての直感的な操作性が得られる。また、指掛け部が傾動操作部56の端部よりも外径側に設けられていることにより、該傾動操作部56との使い分けが容易である。
図5に示すように、傾動操作部56は、YZ方向に沿う軸74を中心として傾動可能な傾動板76を設けた構成である。軸74はX方向に関して複合入力部24の中心となっている。傾動操作部56は、傾動板76を指で押し込むことによる傾動操作がなされ、ヨー軸機構(ピボット軸機構)を動作させる機能を有する。
このように、複合入力部24において、回転操作部54は周方向に向かう回動操作がなされ、傾動操作部56は押し込むことによる傾動操作がなされ、このような操作方法の違いにより、ロール回動機構とヨー(ピボット)軸機構との対応付けが容易に理解され、より直感的な操作が可能となる。
また、センサホルダ52は、上部カバー25と密着して当該複合入力部24の周囲をシールする機能も有し、複合入力部24の周辺から液体等が上部カバー25内に浸入することを防止している。勿論、センサホルダ52と別体のシール部材を配設してもよい。
以上より、操作部14において上部カバー25内は、複合入力部24の周辺がセンサホルダ52によりシールされ(図4及び図6参照)、マスタスイッチ34の周辺がスイッチカバー356によりシールされ(図6参照)、カメラ224及びミラー226とバーコード222との間が撮影窓227によりシールされ(図6及び図19参照)、上部ブラケット104の底面周辺がOリング105、131、320、326、328によりシールされ(図6、図9及び図10参照)、これにより密封されている。従って、血液や洗浄液等が上部カバー25内に浸入することを防止でき、作業部16と分離した状態であっても操作部14の洗浄や滅菌等が容易となる。
次に、操作部14(駆動部30)と作業部16との着脱の構成について説明する。
図2及び図6に示すように、駆動部30は上部カバー25内に収納されており、操作部14及び作業部16が分離された状態において、上部カバー25の下面側(Y2方向)からギア機構部106等を支持する上部ブラケット104の底面が露呈する。
図2及び図20Aに示すように、上部カバー25から露出している上部ブラケット104の底面からは、駆動シャフト115、116と、各駆動シャフト115、116に対応する係合凸部137、138と、各係合凸部137、138に対応するカップリングセンサ306、308の検出シャフト310、312と、着脱センサ314の検出シャフト316とがY2方向に突出している。さらに、上部ブラケット104の底面からは、一対のガイドピン163、163がY2方向に突出している。各ガイドピン163近傍の上部カバー25aのX1方向面及び上部カバー25bのX2方向面に形成された凹部399、399内には、下端側が上部カバー25からY2方向に突出した着脱レバー400、400がそれぞれ設けられている。
2本のガイドピン163、163は、下部ブラケット32の2つのピン穴161、161に対向する位置で、上部ブラケット104の底面Z2方向端のX方向両端にそれぞれ設けられている(図6、図20A及び図20B参照)。
図1及び図2に示すように、2つの着脱レバー400、400は、駆動部30を覆う上部カバー25の左右側面(X1及びX2側面)に対称に設けられており、Z方向に沿った回動軸400aの上部(Y1側)に設けられた一対の弾性部材400b、400bにより、Y2方向端の内側に形成された爪部400cが上部カバー25の内側に向かう方向で弾性的に付勢されている。着脱レバー400の上部表面(Y1側)はやや窪んでおり、弾性部材400bの付勢力に抗して当該着脱レバー400を開放させるために指で押圧する操作面400dを構成している。
このような着脱レバー400によれば、操作部14が作業部16に装着される際には、爪部400cが、下部カバー37のX方向両側面に形成された凹部401内に固定された係止部401aに係合する。これにより、操作部14と作業部16とを確実に連結し固定することができる。一方、操作部14及び作業部16が装着された状態で、2つの操作面400d、400dを略同時に内側へと押圧することにより、爪部400cと係止部401aとの係合状態が解除され、操作部14と作業部16とを分離させることができる。
操作部14及び作業部16の装着時には、2本並列して設けられたガイドピン163が作業部16側の2つのピン穴161に嵌挿されるため、駆動部30(操作部14)は作業部16に対して確実に位置決めされ、安定して保持される。勿論、ガイドピンは3本以上としてもよい。ガイドピン163は、X−Z平面内に作用するモーメントを受けることができ、係合部やプーリ、駆動シャフト等に加わる力を低減することができる。
さらに、図2、図3及び図6に示すように、このような装着時には、上部カバー25の底面側(Y2側)でグリップハンドル26の根元近傍に形成された位置決め凹部406に対し、下部カバー37のZ2方向端に形成された位置決め凸部408が係合する。これにより、操作部14と作業部16とを一層確実に位置決めすることができ、しかも装着後における操作部14と作業部16との間でのねじり方向等での剛性を高めることができる。
図2及び図20Aに示すように、駆動シャフト115(116)の先端(Y2方向端)に設けられた係合凸部137(138)には、軸中心から放射状に延びた円弧状の複数(5つ)の凸部として、1つの大凸部402aと、4つの小凸部402bとが設けられている。図20Aから諒解されるように、大凸部402aは、均等に配置された6つの小凸部のうちの2つを連結した形状となっている。
一方、図3及び図20Bに示すように、プーリ158a(158b)の先端(Y1方向端)に設けられた係合凹部176a(176b)には、前記係合凸部137(138)の形状に対応し、軸中心から放射状に延びた円弧状の複数(5つ)の凹部として、1つの大凹部404aと、4つの小凹部404bとが設けられている。図20Bから諒解されるように、大凹部404aは、均等に配置された6つの小凹部のうちの2つを連結した形状となっている。さらに、これら大凹部404a及び小凹部404bを設けた溝部の中心には、Y2方向にさらに深い中央凹部404cが設けられている。中央凹部404cは、係合凸部137、138の中心からY2方向に突出した駆動シャフト115、116先端の逃げ部であり(図23B参照)、同軸となるように位置決めするためのガイドの機能も有する。
図20A及び図20Bから諒解されるように、係合凸部137、138と係合凹部176a、176bとは、互いに所定の係合位相にある状態で係合可能である。すなわち、大凸部402aと大凹部404aとが係合し、且つ、全ての小凸部402bと小凹部404bとが係合し、これにより、操作部14と作業部16とが装着された状態で、モータ100、102の回転駆動力を、駆動シャフト115、116からプーリ158a、158bへと確実に伝達することができる。
この際、係合凸部137(138)は、駆動シャフト115(116)の波形部115c(116c)に対して挿通されているため、該駆動シャフト115(116)と共に回転する。さらに、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)とは、周方向に複数配置された大凸部402a及び小凸部402bと大凹部404a及び小凹部404bとが互いに噛合っているため、駆動シャフト115(116)の回転駆動力を一層確実にプーリ158a(158b)へと伝達することができる。なお、駆動シャフト115(116)側に係合凹部を設け、プーリ158a(158b)側に係合凸部を設けるようにしてもよい。
以上のように、駆動部30側の係合凸部137、138は、駆動シャフト115、116を回転軸として回転可能である(図20A参照)。同様に、作業部16側の係合凹部176a、176bは、プーリ158a、158bを回転軸として回転可能であるが(図20B参照)、その回転範囲は、ストッパ179aと当接部177a、177bとの当接による規制作用により、所定の正転範囲(図14A中の矢印+θ参照)及び逆転範囲(図14A中の矢印−θ参照)に規制されている。
なお、プーリ158a、158bの回転範囲は、他の構造によって規制してもよく、例えば、図21に示すように、プーリ158a、158b(係合凹部176a、176b)に、その外径方向に突出した当接部(当接部材)177cを設け、下部ブラケット32の上面(Y1方向面)に、前記当接部177cが所定の正転及び逆転を行った際に当接し、それ以上の回転を規制するストッパ179bを設けてもよい。これらの当接部177c及びストッパ179bは、上記の当接部177a、177b及びストッパ179aの構造のように、係合凹部176a、176bの下部に形成した円弧切欠部177(図12及び図14A参照)内に配置されるように構成してもよい。
また、係合凸部137、138及び係合凹部176a、176bは、それぞれ中心から放射状に延びた凸部及び凹部のうち、他より大きな1つの大凸部402a及び大凹部404aを持ち、回転中心に対して非対称な形状とされている(図20A及び図20B参照)。
従って、一方の係合凸部137及び係合凹部176aと、他方の係合凸部138及び係合凹部176bとは、それぞれ図22Bに示すように、互いの大凸部402aと大凹部404aとが一致した場合、つまり単一の回転角度(位相)でのみ係合可能であり、図22Aに示すように、それ以外の回転角度(位相)では構造的に係合不能となっている。すなわち、操作部14と作業部16との装着時、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)とが互いに係合不能な回転位相である場合には、係合可能な回転位相に駆動制御する係合動作(カップリング動作)が必要である。さらに、係合動作の終了後には、コントローラ514が先端動作部12を正確に且つ精度よく駆動制御するため、先端動作部12を所定の原点姿勢(図1、図49及び図51参照)とし、モータ100、102を所定の原点位相とすべく、ワイヤ1052、1054を往復駆動するプーリ158a、158b及び駆動シャフト115、116と、モータ100、102の回転位相を原点に復帰させる原点サーチ動作を実施する必要がある。
なお、係合凸部137、138と係合凹部176a、176bとは、上記のように、単一の位相でのみ互いに係合可能に構成する以外にも、複数の位相で係合可能に構成することも可能であるが、詳細は後述する。また、大凸部402aと大凹部404aとを一致させる係合構造以外にも、小凸部402bと小凹部404bとを一致させる係合構造等、各種の構造でもよく、要は、所定の位相で係合凸部と係合凹部とが互いに係合し、回転力を伝達可能なものであればよい。また、係合凸部137や係合凹部176a等の形状は、他の形状であっても当然よく、要は、駆動シャフト115、116からの回転駆動力を従動軸であるプーリ158a、158bに確実に伝達可能且つ着脱可能な形状であればよい。
次に、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)との係合動作(カップリング動作)及びこの係合動作と共に実施される原点サーチ動作について説明する。なお、一方の係合凸部137及び係合凹部176aの係合動作及び原点サーチ動作と、他方の係合凸部138及び係合凹部176bの係合動作及び原点サーチ動作とは略同様である。このため、以下では一方の係合凸部137及び係合凹部176aの係合動作及び原点サーチ動作について代表的に説明する。
先ず、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)との間での係合動作について説明する。
図22A及び図23Aは、操作部14と作業部16とが装着される際、係合凸部137(138)及び係合凹部176a(176b)の回転位相が略90°ずれている場合、すなわち、大凸部402a及び大凹部404aが略90°ずれており、小凸部402b及び小凹部404bもずれており、係合凸部137と係合凹部176aとが互いに係合不能である状態の一例である。本実施形態に係るマニピュレータ10では、このような状態であっても、操作部14と作業部16とを外観上では装着可能である。
すなわち、図23A及び図23Bから諒解されるように、操作部14及び作業部16の装着時において、係合凸部137が係合凹部176aと係合できない場合(図23A参照)、操作部14が作業部16へと押し下げられるのに伴い、係合凸部137の先端下面(Y2方向端面)は係合凹部176aの先端上面(Y1方向端面)に当接し、コイルばね121の付勢力に抗して駆動シャフト115の波形部115cに沿ってY1方向に退動する。
その結果、係合凸部137及び係合凹部176aが係合しないままであっても(図23A参照)、着脱レバー400の爪部400cが係止部401aに係合し(図1〜図3参照)、操作部14と作業部16との装着が完了する。この装着完了は、検出シャフト316が止板179に着座したことが着脱センサ314に検出されることによりコントローラ514でも認識される。
この際、図23Aに示すように、カップリングセンサ306用の検出シャフト310は、その下端のフランジ310bが係合凸部137の環状溝部139に係合していることから、係合凸部137のY1方向への退動に伴ってY1方向に退動する。従って、カップリングセンサ306は、係合凸部137と係合凹部176aとの係合動作の完了を検出できず、つまり、コントローラ514は、操作部14と作業部16の装着が完了したことを認識すると同時に、係合凸部137と係合凹部176aの係合が完了していないことを認識する。
そこで、コントローラ514では、例えばマスタスイッチ34(図1参照)がオン操作されることにより、前記原点サーチ動作の一動作として、係合凸部137と係合凹部176aとを係合させる係合動作(カップリング動作)を実施する。
図22A及び図23Aに示すように、先ず、係合凸部137の先端下面が係合凹部176aの先端上面に当接して着座している状態でモータ100が駆動される。これにより、ギア機構部106を介して駆動シャフト115が回転される一方、プーリ158aは回転されず、図22A中の破線矢印に示すように、係合凸部137が係合凹部176a上を摺接しながら回転する。
図22Bに示すように、回転する大凸部402aが大凹部404aに一致すると、係合凸部137及び係合凹部176aが係合可能な位相となるため、図23Bに示すように、係合凸部137はコイルばね121の付勢力によってY2方向に進動され、係合凸部137及び係合凹部176aが互いに係合する。これにより、検出シャフト310も係合凸部137と共にY2方向に進動するため、カップリングセンサ306は、係合凸部137と係合凹部176aとの係合動作の完了を検出することができる。そして、駆動シャフト115とプーリ158aとが回転駆動力を伝達可能に連結されるため、係合凹部176aの回転位相、つまりプーリ158a及びワイヤ1054を介在した先端動作部12の動作姿勢についても、モータ100の回転駆動力によって制御可能な状態となる。
なお、コイルばね121によって弾性支持する対象を係合凹部176a(176b)側としても略同様の作用を得ることができるが、カップリングセンサ306は操作部14側に設けた方がコントローラ514との接続等にとって都合がよく、このため、検出シャフト310が連結される係合凸部137(138)側がコイルばね121によって弾性支持されて進退可能に構成されている方が望ましい。
次に、上記の係合動作と共に実施される原点サーチ動作について説明する。本実施形態では、コントローラ514の制御下に該原点サーチ動作が駆動制御され、つまりコントローラ514が原点サーチ部としての機能を有する。
図24A〜図24Dは、操作部14及び作業部16が外観上装着された状態での、係合凸部137(破線で示す)と係合凹部176a(実線で示す)の互いの初期位相(カップリングポジション)の各パターンを例示した説明図である。
図24A〜図24Dにおいて、一点鎖線で示す直線M0はモータ原点M0、つまりモータ100、駆動シャフト115及びプーリ158aの原点位相を示すと共に、先端動作部12が原点姿勢となる位相を示している。モータ原点M0は、図7及び図8に示す検出片333(334)の半円状の円板部の2つの端部333a、333a(334a、334a)が原点検出センサ331(332)を通過することにより、該原点検出センサ331(332)の出力が切り替わる点として、コントローラ514により検出される。検出片333には検出される端部333aが180°位相となっている。上記したように、プーリ158aの回転範囲は、正転及び逆転の範囲が共に180°未満となっているため(図14A等参照)、検出片333を180°位相とすることにより、原点に対して正領域であるか、あるいは負領域であるかを判断できる。
なお、図24A〜図24Dでは、理解の容易のため、駆動シャフト115側の係合凸部137を破線大円形状に示すと共に、大凸部402aを破線小円形状に示す一方、プーリ158a側の係合凹部176aを実線大円形状に示すと共に、大凹部404aを実線小円形状に示している。また、係合凹部176a(プーリ158a)の回転範囲を明確にするため、係合凹部176a側の当接部177a(177b)を外径方向に突出した当接部材として図示すると共に、その回転を規制するストッパ(プーリ動作限)179aをハッチングを付与した直線で図示しており、換言すれば、図21の変形例に示す当接部177cとストッパ179bとの当接による回転範囲の規制に類似した構造として図示しており、図25A以降についても同様である。さらに、このような係合凸部137及び係合凹部176aの係合のケースとしては、プーリ158aの初期位相によって8種類のケースが存在し得、原点サーチのために各ケース毎に8つの動作パターンで動作するようにプログラムされている。なお、基本的には、8つの動作パターンであるが、この動作パターンはモータ原点M0を中心とした対称系であることから、本実施形態では、コントローラ514の制御下に実施される図24A〜図24Dに示す4つの代表的な動作パターンについて説明する。
図24Aは、係合凸部137(大凸部402a)の位相を基準とした場合に、モータ原点M0と逆方向(逆転方向)に係合凹部176a(大凹部404a)の位相がある状態を例示したものであり、このカップリングポジションからの係合動作及び原点サーチ動作を、以下、動作パターン(1)と呼ぶ。図24Bは、係合凸部137(大凸部402a)及び係合凹部176a(大凹部404a)の位相が最初から(つまり、駆動部30及び作業部16が装着された瞬間から)一致している状態を例示したものであり、以下、動作パターン(2)と呼ぶ。図24Cは、係合凸部137(大凸部402a)の位相を基準とした場合に、該係合凸部137(大凸部402a)とモータ原点M0との間に、係合凹部176a(大凹部404a)の位相がある状態を例示したものであり、以下、動作パターン(3)と呼ぶ。図24Dは、係合凸部137(大凸部402a)の位相を基準とした場合に、モータ原点M0の正方向(正転方向)に係合凹部176a(大凹部404a)の位相がある状態を例示したものであり、以下、動作パターン(4)と呼ぶ。
基本的なプログラム・シーケンスは、モータ原点M0の検出動作と係合動作から構成される。先ず、モータ原点M0の検出を行う。モータ原点M0の検出動作では、原点検出センサ331からスタート時の正負領域を判断し、駆動シャフト115をモータ原点M0方向へ動作させる。モータ原点M0の検出後、正負いずれかの動作限からいずれかの動作限へ連続的に動作させる。
モータ原点M0検出時以降に、係合凸部137と係合凹部176aの係合が係合センサであるカップリングセンサ306により確認されれば、動作限から動作限へ連続的に動作させるシーケンスを終了し、モータ原点M0へ移動させ、原点サーチ動作は完了する。
上記の係合凸部137と係合凹部176aのそれぞれの位相関係により、係合凸部137と係合凹部176aの係合のタイミングや位置は異なるため、結果として動作パターンは複数考えられ、基本的には4ケースが考えられる。それぞれのケースにおける動作パターンを説明する。
動作パターン(1)について、図25A〜図25Dを参照して説明する。動作パターン(1)では初期状態において、係合凸部137(大凸部402a)の位相に対し、モータ原点M0と逆方向(逆転方向)に係合凹部176a(大凹部404a)の位相がある(図24A及び図25A参照)。
先ず、駆動シャフト115は原点検出センサ331により負領域であることが分かるため、モータ100を駆動制御して駆動シャフト115を正方向(図25Aで時計回り)に回転させ、図25A中の破線矢印で示すように、係合凸部137(大凸部402a)をモータ原点M0方向に回転させる。そうすると、係合凸部137(大凸部402a)はモータ原点M0に一致した位相となり(図25B参照)、原点検出センサ331により検出片333の端部333aが検出され(図8参照)、この位相をコントローラ514はモータ100の原点として認識する。
続けて、図25C中の破線矢印で示すように、係合凸部137(大凸部402a)をさらに正転方向に回転させることにより、係合凸部137(大凸部402a)の位相が係合凹部176a(大凹部404a)の位相に一致して、互いに係合する(図25C参照)。係合凸部137と係合凹部176aとの係合動作は、図22A〜図23Bを参照して上記した通りであり、この係合は、カップリングセンサ306を介してコントローラ514によって検出される。
そこで、図28C中の実線矢印に示すように、係合凹部176aと係合した係合凸部137をモータ原点M0へと回転させることにより、係合凹部176aも一緒にモータ原点M0に回転し、図25D等に示す場合と同様に、駆動シャフト115及びプーリ158aが所定の原点位相に設定され、先端動作部12も所定の原点姿勢となる。
動作パターン(2)について、図26A〜図26Dを参照して説明する。動作パターン(2)では初期状態において、係合凸部137(大凸部402a)及び係合凹部176a(大凹部404a)の位相が最初から一致しており(図24B及び図26A参照)、この係合は、カップリングセンサ306を介してコントローラ514によって検出されている。
先ず、図26A中の矢印に示すように、係合凹部176aに係合した係合凸部137をモータ原点M0へと回転させることにより、係合凹部176aも一緒にモータ原点M0に回転する。そうすると、係合凸部137及び係合凹部176aはモータ原点M0に一致した位相となり(図26B参照)、原点検出センサ331により検出片333の端部333aが検出され(図8参照)、この位相をコントローラ514はモータ100の原点として認識する。このため、モータ100の回転が停止されるが、図26Aから図26Bに示すようにして原点が検出された際には、検出と略同時にモータ100を停止させたとしても、モータ100は原点位置から多少のオーバーランをしている(図26C参照)。
そこで、図26Dに示すように、モータ原点M0まで逆転方向にモータ100を回転させることにより、係合凸部137及び係合凹部176aがモータ原点M0に戻されて停止され、これにより、駆動シャフト115及びプーリ158aが所定の原点位相に設定され、先端動作部12も所定の原点姿勢となる。
動作パターン(3)について、図27A〜図27Cを参照して説明する。動作パターン(3)では初期状態において、係合凸部137(大凸部402a)の位相を基準とした場合に、該係合凸部137(大凸部402a)とモータ原点M0との間に、係合凹部176a(大凹部404a)の位相がある(図24C及び図27A参照)。
先ず、モータ100を駆動制御して、図27A中の破線矢印で示すように、係合凸部137(大凸部402a)をモータ原点M0方向に回転させる。そうすると、図27Bに示すように、係合凸部137(大凸部402a)の位相が係合凹部176a(大凹部404a)の位相に一致して互いに係合し、この係合は、カップリングセンサ306を介してコントローラ514によって検出される。
そこで、図27B中の矢印に示すように、係合凹部176aに係合した係合凸部137をモータ原点M0へと回転させることにより、係合凹部176aも一緒にモータ原点M0に回転されて、係合凸部137及び係合凹部176aはモータ原点M0に一致した位相となり(図27C参照)、原点検出センサ331により検出片333の端部333aが検出され(図8参照)、この位相をコントローラ514はモータ100の原点として認識する。続いて、図26B〜図26Dに示す動作と略同様、図27Cの往復矢印で示すように、モータ100はモータ原点M0を多少オーバーランして停止された後、逆転方向に回転されることにより、係合凸部137及び係合凹部176aがモータ原点M0に戻されて停止され、これにより、駆動シャフト115及びプーリ158aが所定の原点位相に設定され、先端動作部12も所定の原点姿勢となる。
動作パターン(4)について、図28A〜図28Cを参照して説明する。動作パターン(4)では初期状態において、係合凸部137(大凸部402a)の位相を基準とした場合に、モータ原点M0の正方向(正転方向)に係合凹部176a(大凹部404a)の位相がある(図24D及び図28A参照)。
先ず、モータ100を駆動制御して、図28A中の破線矢印で示すように、係合凸部137(大凸部402a)をモータ原点M0方向に回転させる。そうすると、図28Bに示すように、係合凸部137(大凸部402a)はモータ原点M0に一致した位相となり、原点検出センサ331により検出片333の端部333aが検出され(図8参照)、この位相をコントローラ514はモータ100の原点として認識する。
続けて、図28B中の破線矢印で示すように、係合凸部137(大凸部402a)をさらに正転方向に回転させることにより、係合凸部137(大凸部402a)の位相が係合凹部176a(大凹部404a)の位相に一致して、互いに係合し(図28C参照)、この係合は、カップリングセンサ306を介してコントローラ514によって検出される。
そこで、図25Dに示す場合と略同様に、係合凹部176aに係合した係合凸部137をモータ原点M0へと戻すことにより、係合凹部176aも一緒にモータ原点M0に回転し、駆動シャフト115及びプーリ158aが所定の原点位相に設定され、先端動作部12も所定の原点姿勢となる。
ところで、場合によっては、係合凸部137と係合凹部176aとの摩擦や引っ掛かり等により、両者が係合(嵌合)していない状態であっても、プーリ158aは、駆動シャフト115と共に連れ回りされ回転することも考えられる。そのような場合、動作パターン(1)では、図25Cの位置では係合せず、最悪の場合、ストッパ179a(+動作限)の位置で係合することになる。動作パターン(3)、(4)の場合も同様に、ストッパ179a(+動作限)の位置で係合することになる。つまり、プーリ158aが駆動シャフト115と連れ回った場合でも、少なくとも正負の動作限から動作限へ連続的に動作するシーケンスが含まれていたら、動作限近傍で係合させることは可能である。なお、動作限方向へ動作しているときに、動作限近傍で係合した場合でも、シーケンス的には、既にモータ原点M0の検出は完了しているため、動作限の位置はわかっており、動作限近傍では、減速、停止等の処置は可能であり、ストッパ179aに機械的に高速状態で衝突して、駆動系に機械的ダメージや破損・破壊を与えることなく、高速に原点サーチ動作を行うことが可能である。
また、動作パターン(1)の場合、図25Bから図25Cの状態へ動作する方法として、同一方向へ回転させた場合について説明したが、図25Bの動作後、動作限であるストッパ179aの位置で一旦停止し、逆方向回転させてもよい。この場合も、シーケンス的には、既にモータ原点M0の検出は完了しているため、一旦停止し反転させることは容易である。θの角度が小さい場合には、一旦停止させた方が、移動距離が短くなり、原点サーチ動作を短縮させることが可能である。
同一方向へ回転させるか、反転させるか、どちらのシーケンス・プラグラムをコントローラ514に組み込むかは、動作範囲である許容回転範囲θ、原点サーチ最大許容時間、係合部の位相状態の頻度等を考慮して決定すればよい。
原点サーチ動作は、操作ボタン(マスタスイッチ34)を押したらスタートし自動的に完了する、もしくは、スイッチ(マスタスイッチ34)を押しているときだけ、サーチ動作を行い、離したら停止、再度押すと再スタート等のようにしてもよい。後者の場合、マニュアル的な操作となり、異常を感じたときや、途中停止したいときに、原点サーチ動作をすぐに停止させることができる。
ところで、上記したように、駆動シャフト115(116)とプーリ158a(158b)との係合(カップリング)は、上記例示した単一の位相でのみ係合可能に構成する以外にも、2以上の位相で係合可能に構成することもできる。
次に、駆動シャフト115(116)及びプーリ158a(158b)の係合凸部137(138)及び係合凹部176a(176b)の係合位相の構成例について説明する。
駆動シャフト115(116)とプーリ158a(158b)とのカップリングにおける係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)との係合位相は、例えば、先端動作部12の構成の違い等によりプーリ158a(158b)に設定される動作領域(許容回転範囲)に応じて設定されるとよく、単一の位相以外にも、2以上の位相での係合を可能に構成することができる。
先端動作部12を直接的に動作させる従動軸であるプーリ158a(158b)の動作領域である許容回転範囲をθ(°)とし、360(°)/θ(°)の商の整数部分をnとすると、上記した原点サーチ動作等を考慮して、最大n箇所での係合が可能、つまりn箇所以下の位相でのみ係合可能に構成される。
そこで、許容回転範囲θと係合箇所(n箇所)との関係は、次の(1)〜(5)に例示するように設定できる。なお、前記許容回転範囲θは、図14Aに示すプーリ158aの場合、矢印+θが例えば90°であり、矢印−θが例えば90°であるとすると許容回転範囲θが180°となり、プーリ158bの場合、矢印+θが例えば135°であり、矢印−θが例えば135°であるとすると許容回転範囲θが270°となる。
(1)θが180°(度)以上360°(度)未満の場合には1箇所であり、係合凸部及び係合凹部は単一位相の形状で係合可能に構成する必要がある。(2)θが120°以上180°未満の場合には2箇所以下であり、係合凸部及び係合凹部は180°位相形状で係合可能に構成することができる。(3)θが90°以上120°未満の場合には3箇所以下であり、係合凸部及び係合凹部は120°位相の形状で係合可能に構成することができる。(4)θが72°以上90°未満の場合には4箇所以下であり、係合凸部及び係合凹部は90°位相の形状で係合可能に構成することができる。(5)θが60°以上72°未満の場合には5箇所以下であり、係合凸部及び係合凹部は72°位相の形状で係合可能に構成することができ、それ以降の動作領域についても同様である。
例えば、図14Aでは、プーリ158a、158bの許容回転範囲θ(矢印+θと矢印−θとが示す範囲の合計)が、それぞれ180°、270°に設定されている。このため、上記(1)に示すように、係合可能箇所は1箇所とする必要があり、係合凸部137、138と係合凹部176a、176bの係合位相も単一の位相でのみ係合するように構成している。
一方、図29A及び図29Bに示すように、プーリ158a(158b)の許容回転範囲θ(矢印+θと矢印−θとが示す範囲の合計)が、120°以上180°未満に設定されている場合(120°≦θ<180°)には、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)とは、互いに2つの大凸部402a及び大凹部404aを有する180°位相の形状に構成し、2箇所(1箇所でも当然よい)で係合可能に構成することができる。なお、図30A及び図30Bは、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)とを180°位相の形状に構成した場合、つまり、120°≦θ<180°での他の形状例であり、勿論これ以外の形状としてもよい。
図31A及び図31Bに示すように、プーリ158a(158b)の許容回転範囲θが、90°以上120°未満に設定されている場合(90°≦θ<120°)には、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)とは、互いに3つの大凸部402a及び大凹部404aを有する120°位相の形状に構成し、3箇所(1又は2箇所でも当然よい)で係合可能に構成することができる。なお、図32A及び図32Bは、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)とを120°位相の形状に構成した場合、つまり、90°≦θ<120°での他の形状例であり、勿論これ以外の形状としてもよい。
このように、互いにカップリングして回転駆動力を伝達する係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)とは、プーリ158a(158b)の回転許容範囲θに応じて、n箇所以下で係合可能に構成することができる。特に、上記(2)や(3)等に示すように複数箇所での係合が可能な場合には、それぞれ最大の係合箇所、例えば上記(2)では2箇所、上記(3)では3箇所で係合可能な形状に構成すれば、カップリング形状の対称化を図ることができ、原点サーチ動作に要する時間を可及的に短縮することが可能となる。なお、上記(2)〜(5)等に示す2箇所以上での係合を可能にした形状とした場合であっても、原点サーチ動作は、図24A〜図28Cに示されるような単一位相形状の場合の動作と略同様に実施可能である。
同様に、原点検出センサ331(332)のセンサドグである検出片333(334)についても上記カップリングの係合箇所(n箇所)に伴って形状を変更することができ、n箇所の係合位相に設定された場合にはn・2箇所で切り替えて原点検出センサ331(332)で検出可能に構成すればよい。例えば、上記したように、単一の係合位相の場合には、正転及び逆転がそれぞれ180°未満となるため、検出片333(334)が180°位相の形状(2軸)で構成されており、これによりモータ原点を一層迅速に検出可能となっている。
より具体的には、検出片333の形状について、例えば、180°≦許容回転範囲θ<360°の場合には、図7及び図8に示すように半円の180°位相の形状とするとよく、120°≦θ<180°の場合には、図33に示すように1/4円が2箇所にある90°位相の形状とするとよく、90°≦θ<120°の場合には、図34に示すように1/6円が3箇所にある60°位相の形状とするとよい。このように、許容回転範囲θやカップリングの係合形状(n箇所カップリング形状)に応じて、原点検出センサ331のセンサドグである検出片333の位相形状を最適に構成することにより、モータ原点M0を一層迅速に検出することが可能となる。
なお、係合凸部137(138)及び係合凹部176a(176b)の係合位相について、例えば、2箇所で係合可能な180°位相形状の場合には(図29A〜図30B参照)、カップリング形状が対称化される。このため、原点サーチ動作に要する時間を可及的に短縮することができ、また、部品形状の簡素化及びこれによる低コスト化も可能となる。さらに、カップリング形状の対称化によるバランス効果により、未カップリング状態では常に対称の位置が接触することになり、ガタによる傾き等を防止でき、原点サーチ動作を一層安定して行うことも可能となる。
ところが、2箇所で係合可能な180°位相の対称形状の場合には、係合可能な2箇所のうち、どちらの向きで係合したかをコントローラ514側で認識可能とするためには、図29A〜図30Bに示すように、プーリ158a(158b)の動作領域である許容回転範囲θを180°未満に構成し、動作領域外では作動不能にすることで反対側に係合されたことを認識させる方法がある。しかしながら、プーリ158a(158b)の動作領域は、製品仕様や先端動作部12の構造等によっては、180°位相の対称形状の場合であっても、180°以上の十分な動作領域が得られることが好ましい。
例えば、図35A〜図35Cは、操作部14側の係合凸部137(138)と作業部16側の係合凹部176a(176b)とが、互いに2つの大凸部402a及び大凹部404aを有する180°位相の形状(図30A及び図30Bの構成と同様)において、プーリ158a(158b)の許容回転範囲θを180°以上に設定した構成例である。
図35A〜図35C中に丸印で示す点Pは、駆動シャフト115(116)側の係合凸部137(138)のモータ原点M0に対する基準となる向きである。すなわち、この構成例での原点サーチ動作は、点Pをモータ原点M0に一致させる動作であり、従って、プーリ158a(158b)側の係合凹部176a(176b)は、当接部177aが点Pに一致した向きでカップリングされる必要がある。
例えば、操作部14及び作業部16が外観上装着された状態で、係合凸部137と係合凹部176aの互いの初期位相が図35Aに示す状態にある場合において、係合動作及び原点サーチ動作を行う場合について説明する。
この場合、図35B中の破線矢印で示す方向に係合凸部137を回転させてカップリングした場合には、係合凸部137の点Pと、係合凹部176aの当接部177aの位相が一致するため、その後、問題なく原点サーチ動作を行うことができる。一方、図35C中の破線矢印で示す方向に係合凸部137を回転させてカップリングした場合には、係合凸部137の点Pと、係合凹部176aの当接部177aの位相が反対位相となる。このため、続けて原点サーチ動作を行ってしまうと、当接部177aが動作限であるストッパ179aに当接するため、正常な原点サーチを行うことが困難となる。
そこで、次に、180°位相の対称形状の場合であっても、180°以上の動作領域を確保することができる係合動作及び原点サーチ動作の動作パターンを説明する。この場合にも、基本的な制御アルゴリズムは、上記した図25A〜図28Cに示す360°位相形状のカップリングでの動作パターン(1)〜(4)と同様である。
先ず、モータ原点M0の検出を行う。すなわち、原点検出センサ331による検出位相(正領域、負領域)によって、最初に原点サーチする方向、つまり係合凸部137の点Pを回転させる方向を決定する。係合凸部137と係合凹部176aの初期位相が正領域なら逆方向に、負領域なら正方向に係合凸部137を回転させてモータ原点M0を検出する。なお、初期位相での正領域及び負領域の判定は、図25A〜図28Cの場合と同様でよく、原点検出センサ331(332)のセンサドグとして、2箇所で検出可能な形状(例えば、図8に示す半月形状)の検出片333(334)により、その検出信号の立ち上がり又は立下り位置を検出すればよい。
この際、図36に示すように、この構成例におけるプーリ158a(158b)の回転許容範囲θとして、図36中に実線矢印で示す+Aから−A(90°≦A<180°)までの角度範囲を設定する。
先ず、図24A(図25A〜図25D)及び図24D(図28A〜図28C)に示す動作パターン(1)、(4)の場合と同様に、モータ100を駆動制御して駆動シャフト115を回転させることにより、係合凸部137と係合凹部176aとが係合する前にモータ原点M0が検出された場合について説明する。
この場合には、モータ原点M0を検出した後、引き続き、動作パターン(1)、(4)の場合と同様のアルゴリズムで、原点サーチ動作を行えばよい。但し、係合凸部137と係合凹部176aの係合位相は、図35Bに示すように点Pと当接部177aが一致した正常位相と、図35Cに示すように点Pと当接部177aが一致しない反転した反転位相の2通りの可能性がある。
そこで、図36中に一点鎖線の矢印で示す各領域R0、R1、R2のいずれの領域で係合凸部137と係合凹部176aが係合したかを判定することで、前記の正常位相及び反転位相でのカップリング状態を判別する。
先ず、図36に示すように、カップリングセンサ306により、係合凸部137と係合凹部176aが領域R0で示す範囲、つまり(−180+A)°〜(180−A)°の範囲でカップリングしたことが検出された場合には、前記正常位相(点Pと当接部177aが一致した0°位相)でカップリングが完了したと判断することができる。領域R0は、プーリ158aが動作しない領域(動作限であるストッパ179a、179a間)の反対領域であり、この領域R0に係合凹部176aが向いている場合には、該領域R0に必ず当接部177aが配置されているためである。そこで、この場合には、カップリング後にそのまま原点サーチ動作を行えばよい。
一方、係合凸部137と係合凹部176aが、図37Aに示すように領域R1で示す範囲、つまり−A°〜(−180+A)°の範囲、又は、図38Aに示すように領域R2で示す範囲、つまり(180−A)°〜A°の範囲でカップリングしたことが検出された場合には、前記の正常位相及び反転位相のいずれかの可能性がある。
先ず、係合凸部137と係合凹部176aが正常位相(0°位相)でカップリングした場合について説明する。例えば、図37Aに示すように、カップリング時の位相が、正領域(領域R1)にある+B°(図37A中の破線矢印+Bは係合凸部137の位相を示し、実線矢印+Bは係合凹部176aの位相を示す)の場合には、図37B中の破線及び実線の矢印で示すように、モータ原点M0方向にモータ100を回転させることで原点サーチ動作が完了する。
次に、係合凸部137と係合凹部176aが反転位相(180°位相)でカップリングした場合について説明する。例えば、図38Aに示すように、カップリング時の位相について、係合凸部137の点Pが正領域(領域R1)の+B°にあり、係合凹部176aの当接部177aが負領域(領域R2)の(B−180)°にあるとする。
この場合、図38B中の破線矢印で示すようにモータ100をモータ原点M0方向に回転させるが、そうすると、係合凹部176aは図38中の実線矢印で示す方向に回転するため、当接部177aがストッパ179aに衝突する。そこで、この衝突を検出した場合には、コントローラ514では、係合凸部137の角度(位相)を180°補正、つまり、B°=(180−A)°を 180°補正してB=−A°、とすることで、実質的に正常位相でのカップリングとして制御することが可能となる。従って、図38BCの破線及び実線の矢印で示すように、モータ原点M0方向にモータ100を回転させることで原点サーチ動作が完了する。
なお、モータ100側、つまり係合凸部137の角度が、B°=(180−A)°の場合、プーリ158a側、つまり係合凹部176aの角度は、(180−A−180)°=A°となるため、当接部177aがストッパ179aに衝突することが予測できる。従って、この領域近傍では、衝突の衝撃を緩和して機構系のダメージを最小限にするために、モータ100の回転速度を低下させる等の対応を行なうことができる。また、衝突の判定領域を限定することで、誤判定等を防止することができる。
次に、図24B(図26A〜図26D)及び図24C(図27A〜図27C)に示す動作パターン(2)、(3)の場合と同様に、初期状態において係合凸部137と係合凹部176aとが係合している場合や、モータ100を駆動制御して駆動シャフト115を回転させることにより、モータ原点M0が検出される前に係合凸部137と係合凹部176aとが係合した場合について説明する。
この場合には、動作パターン(2)、(3)の場合と同様のアルゴリズムで、原点サーチ動作を行えばよいが、カップリング時の動作角度が不明なため、動作範囲の予測ができず、当接部177aがストッパ179aに衝突する領域の予測を行なうことができない。そこで、当接部177aがストッパ179aに衝突した場合、例えば、後述するような図45A〜図45Dに記載された、速度閾値、電流閾値を用いた衝突検知のアルゴリズムを適用することで、衝突を検出し、その角度が動作限であることを認識し、現在の角度を推測する。次に、衝突方向とは反対方向に回転させることで、原点検出センサ331の原点位置(モータ原点M0)を検出することができる。
係合凸部137と係合凹部176aが、正常位相(0°位相)でカップリングしている場合は、容易に原点検出センサ331の原点位置(モータ原点M0)を検出することができる。一方、反転位相(180°位相)でカップリングしている場合は、180°位相で検出することができるが、コントローラ514で係合凸部137の角度(位相)を180°補正することで、 180°位相でカップリングしていることを修正することが可能である。
次に、基本的には以上のように構成されるマニピュレータ10における起動動作(使用準備動作)及び該起動動作に関連した操作部14及び作業部16の装着動作について、図39のフローチャートを参照して説明する。以下では、単一位相で係合する係合凸部137(138)及び係合凹部176a(176b)を用いた構成を例示して説明するが、上記した2以上の位相で係合する構成のもの(図29A等参照)であっても略同様に制御及び動作可能である。
図39のステップS1において、マニピュレータ10を含むシステムを起動するために、先ず、操作者はコントローラ514の電源スイッチ516(図1参照)をオンし、コントローラ514及び周辺システム等を起動する(ステップS2)。
次に、ステップS3において、操作部14をコントローラ514に対して装着する。例えば、操作部14のグリップハンドル26下端から延びたケーブル61先端のコネクタ520をコントローラ514の第1ポート515aに接続する(図1参照)。
ステップS4では、コントローラ514に接続された操作部14に対し、所定の先端動作部12を備えた作業部16を装着する。この装着動作は、上記したように、操作部14から突出している2本のガイドピン163、163がそれぞれ作業部16のピン穴161、161に嵌合するように、且つ、操作部14の位置決め凹部406が作業部16の位置決め凸部408に係合するように位置合わせを行いつつ、操作部14と作業部16とを互いに押圧して密着させる(図6、図20A及び図20B参照)。これにより、着脱レバー400の爪部400cが係止部401aに係合し(図1〜図3参照)、操作部14と作業部16との装着が完了する。操作部14と作業部16との装着が完了したことは、検出シャフト316が止板179に着座したことが着脱センサ314に検出されることにより(図7、図23A及び図23B参照)、コントローラ514に認識される。
そこで、ステップS5において、コントローラ514は、ステップS4での着脱センサ314の検出をトリガとして、又は他の図示しないスイッチ入力等に基づき、カメラ224及びLED224aを駆動制御してバーコード222を撮像し(図19参照)、バーコード222から作業部16の個体情報として、仕様(先端動作部12の種類)、使用回数及び使用量制限(上限)等を取得する。また、コントローラ514では、作業部16の個体情報を取得し、該個体情報に応じて作業部16の種類に応じてモータ100、102等を適切に制御することができる。
上記したように、操作部14と作業部16とが外見上装着完了した状態であっても、実質的な装着として駆動シャフト115(116)とプーリ158a(158b)とを係合させる係合動作と、この係合動作と共に実施して、モータ100(102)や先端動作部12を所定の原点位置や原点姿勢に設定する原点サーチ動作を行う必要がある。
そこで、ステップS6において、操作部14と作業部16とが装着されたマニピュレータ10のマスタスイッチ34(図1参照)をオンすることにより、ステップS7において、コントローラ514の制御下に、又は操作部14に内蔵される図示しない制御部の制御下に、図24A〜図28Cに例示される上記した原点サーチ動作が実施される。これにより、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)が係合されると共に(図23B及び図25C等参照)、駆動シャフト115及びプーリ158aが所定の原点位相に設定され(図25D等参照)、先端動作部12も所定の原点姿勢に設定されて、マニピュレータ10の使用準備が完了する(ステップS8)。このように、原点サーチ動作が実行されることにより、原点位置の検出を容易に行うことができる共に、操作部14と作業部16の装着後の動作開始を一層円滑に実行することができる。
上記ステップS7による原点サーチ動作中には、マスタスイッチ34と並設されたLED29(図1参照)を、例えば緑色で点滅させるように制御する。そうすると、操作者は原点サーチ動作が実施されていることを容易に認識することができる。また、ステップS8により使用準備が完了した後は、LED29を、例えば緑色で点灯させるように制御することにより、マニピュレータ10が正常に起動されて所定の使用可能状態にあることを操作者に明示することができる。なお、LED29は、上記ステップS1〜S6までは消灯されているが、その処理状態に応じた点灯や点滅等をするように制御してもよいことは勿論である。
ステップS8により使用準備が完了された後、つまりマニピュレータ10が使用可能状態となった後、操作者は、グリップハンドル26を把持すると共に、複合入力部24及びトリガレバー36を操作して、マニピュレータ10を所定の手技に対応して動作させることができる。
この状態で、例えば手技の一時中断等により、マスタスイッチ34がオフされた場合には(ステップS9)、LED29が消灯されてマニピュレータ10の使用可能状態が停止される。その後、作業部16を取り外す等することなく、続けて手技を行う場合には、再びマスタスイッチ34をオンすることにより(ステップS10)、ステップS8へと戻り、マニピュレータ10は再び使用可能状態となり、操作者は所定の手技を開始し又は継続することができる。この際、ステップS9からステップS10までの間、つまりマスタスイッチ34がオフされた後、オンされるまでの間に、作業部16の操作部14からの取り外し等が行われない限りは、ステップS7で設定されたモータ100、102や先端動作部12の原点位置がずれることはなく、ステップS10の後は迅速にステップS8に移行することができる。
一方、ステップS8の後、例えば他の手技に対応して作業部16を変更するために、作業部16と操作部14とを取り外した場合には(ステップS11及びステップS12)、それぞれステップS4及びステップS3へと戻り、その後は上記した制御フローが実施される。
ところで、上記ステップS5に示すバーコード222の読取動作では、例えば、図39中にE1〜E3で示すようなエラーを生じることがある。マニピュレータ10で発生するエラーは、次のエラーE1〜E3及びエラーE4以外の状態に係るものも当然発生する可能性があるが、以下ではエラーE1〜E4を例示して説明する。
エラーE1(バーコード読取異常)は、ステップS5におけるバーコード222の読取動作によって、バーコード222の読取異常が生じた場合、例えばカメラ224でバーコード222を正確に撮像できない場合やバーコード222がコントローラ514の制御対象の作業部16等以外のものの場合等である。この場合には、ステップS13において、LED29を、例えば赤色で点滅させるように制御する作業部取り外し要請が実施される。該作業部取り外し要請は、LED29の表示以外にも、コントローラ514の表示部(ディスプレイ)517(図1参照)にエラーE1の表示を行い、また図示しないスピーカ等により警告音等を発生するようにしてもよい。この作業部取り外し要請に応じて、操作者が作業部16を操作部14から取り外した場合には、LED29による前記赤色の点滅が消灯され、上記ステップS4に戻る。そこで、操作者は作業部16の再確認やバーコード222の汚れ等の確認等を行うことになる。
エラーE2(使用量制限オーバー)は、ステップS5におけるバーコード222の読取動作によって、装着された作業部16が使用量制限オーバーとなっている場合である。これは、例えば所定の作業部16の使用回数制限が10回であるところ、既に10回の使用がなされているにもかかわらず当該作業部16が装着された場合や、累積使用時間制限が300時間であるところ、既に300時間を越える使用がなされているにもかかわらず当該作業部16が装着された場合や、又はマニピュレータ先端部の屈曲動作や回転動作が累積使用角度制限を越えて使用された場合等に報知されるエラーである。この場合には、上記エラーE1の場合と略同様に、ステップS13において、LED29を、例えば赤色で点滅させるように制御する作業部取り外し要請が実施される。勿論、この場合の作業部取り外し要請についても、コントローラ514の表示部517にエラーE2の表示を行い、また前記警告音等を発生するようにしてもよい。この作業部取り外し要請に応じて、操作者が作業部16を操作部14から取り外した場合には、LED29による前記赤色の点滅が消灯され、上記ステップS4に戻る。そこで、操作者は作業部16を新たな作業部16に交換する等の作業を行うことになる。
エラーE3(撮影モジュール系異常)は、ステップS5におけるバーコード222の読取動作において、カメラ224が正常に機能しなかった場合等である。この場合には、ステップS14において、LED29を、例えば赤色で点滅させるように制御する操作部取り外し要請が実施される。この場合にも、コントローラ514の表示部517にエラーE3の表示を行い、また前記警告音等を発生するようにしてもよい。この操作部取り外し要請に応じて、操作者が操作部14を作業部16から取り外した場合には、LED29による前記赤色の点滅が消灯され、上記ステップS3に戻る。そこで、操作者は操作部14の確認や交換等の作業を行うことになる。
同様に、上記ステップS7に示す原点サーチ動作では、例えば、図39中にE4で示すようなエラーを生じることがある。エラーE4(操作部系異常)は、ステップS7における原点サーチ動作中に異常が生じた場合、例えばコントローラ514によりモータ100、102の異常が検知された場合や原点サーチが所定時間内に完了しない場合(カップリングセンサ306等の検出ができない場合)等である。この場合には、上記エラーE3の場合と略同様に、ステップS14において、LED29を、例えば赤色で点滅させるように制御する操作部取り外し要請が実施される。この場合にも、コントローラ514の表示部517にエラーE3の表示を行い、また前記警告音等を発生するようにしてもよい。この操作部取り外し要請に応じて、操作者が操作部14を作業部16から取り外した場合には、LED29による前記赤色の点滅が消灯され、上記ステップS3に戻る。そこで、操作者は操作部14の確認や交換等の作業を行うことになる。
なお、各ステップS1〜S14を含む各状態において、例えば、コントローラ514の電源スイッチ516や図示しない別の主電源スイッチ等がオフされた場合や、コントローラ514に接続された図示しない電源プラグ等からの電源コードが抜ける等した場合、さらにはコントローラ514で各種の故障や異常等が発生した場合には、マニピュレータ10では所定の終了処理(LED29は、例えば赤色の点滅に制御される)の後、操作終了となる。
以上のように、本実施形態に係るマニピュレータ10によれば、駆動部30を含む操作部14と作業部16とが互いに着脱可能であり、従動軸であるプーリ158a、158bの許容回転範囲θに基づいて設定された1以上(n箇所)の位相で駆動シャフト115、116側の係合凸部137、138とプーリ158a、158b側の係合凹部176a、176bとが互いに係合可能に構成されている。このため、プーリ158a、158bの回転によって動作される先端動作部12の動作領域を考慮した最大数(n箇所)の係合位相で係合凸部137、138と係合凹部176a、176bとの係合を可能に構成することができ、カップリング形状の対称化を図ることができ、原点サーチ動作に要する時間を可及的に短縮することが可能となる。
この場合、係合凸部137(138)がコイルばね121によって弾性支持されているため、操作部14と作業部16とを装着した際、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)の係合位相が一致していない状態であっても、これら係合凸部137等が破損することがない。さらに、弾性支持された係合凸部137(138)にカップリングセンサ306(308)の検出部である検出シャフト310、312が連結されていることにより、カップリングの検出が容易且つ確実であり、しかもカップリングセンサ306(308)は操作部14側にあるため、コントローラ514等への接続も容易である。しかも、上記したように、n箇所以下の位相でのみ係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)が係合可能に構成することにより、原点サーチ動作での原点誤検出等の不良の発生を有効に抑えることができる。
また、着脱センサ314及びカップリングセンサ306(308)を設けたことにより、操作部14(駆動部30)と作業部16との装着、及び係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)との係合を確実に検出することができ、装着不良や係合不良を防止することができる。
マニピュレータ10では、先端動作部12を機械的に駆動する機構部であるトリガレバー36、トリガレバー取付部32b及び棒状又は線状の伝達部材であるロッド192a、192b等が全て作業部16側に設けられている。一方、先端動作部12を電気的に駆動する機構部である駆動部30等と、プーリ158a、158b及びワイヤ1052、1054等とは互いに操作部14側と作業部16側に分離するように設けられている。つまり、電気的な駆動部を構成するモータ100、102の回転駆動力は、係合凸部137(138)と係合凹部176a(176b)との間のカップリング構造によって比較的容易に分離可能な構造に構成することができるが、トリガレバー36の操作をロッド192a等によって直接的に伝達する機械的な駆動部は分離構造を構成すると、その構造がやや複雑になり易い。そこで、マニピュレータ10では、機械的な駆動部を構成するトリガレバー36やロッド192a等を作業部16側にまとめて配置したことにより、操作部14と作業部16との着脱構造が一層簡便に構成されている。特に、ロッド192a、192bはZ方向での進退動作によってトリガレバー36への入力を伝達する構造、つまり棒状又は線状の伝達部材として構成されていることから、これらを分離しない構造としたことにより、前記着脱構造が一層簡素化されている。
この場合、トリガレバー36のラッチ機構を構成する爪部206aと係合リング27とが、それぞれ作業部16側(又は操作部14側でもよい)と操作部14側(又は作業部16側でもよい)に設けられている。これにより、トリガレバー36にその位置を固定するラッチ機構を搭載した場合であっても、操作部14と作業部16とを容易に着脱可能な構成にすることができる。
このようなトリガレバー36及びそのラッチ構造は、例えば、図40及び図43にそれぞれ示すような構造とすることもできる。すなわち、上記の通り、前記のトリガレバー36は、グリップハンドル26の方向に引ききった状態を維持させるラッチ機構が作業部16側のラチェット爪206と操作部14側の係合リング27によって構成されており、作業部16を操作部14から取り外した状態ではラッチされない。ところが、手技の種類によっては、作業部16を操作部14から取り外した単体でトリガレバー36をラッチさせておくと便利な場合もある。例えば、作業部16が単体の状態でその連結シャフト18をトラカール20から出し入れする場合であり、このような場合には先端動作部12のエンドエフェクタ(グリッパ)1300を閉状態に維持させるためにトリガレバー36を引ききった状態に維持させておくことが好ましい。以下、作業部16が単体の状態でもトリガレバー36を引いた状態に維持する自己ラッチ機構900a、900bについて説明する。
図40に示すように、第1例に係る自己ラッチ機構900aは、トリガレバー取付部32bの下面に設けられたZ方向に延在する長孔902と、指輪部202の斜め上方部の軸904に軸支されたラッチアーム906とを有する。ラッチアーム906における軸904の周辺部は内部空間203内にある。
長孔902のZ2方向端部には、斜め上方に折れ曲がった短いラッチ溝902aが設けられている。ラッチアーム906は、軸904よりも前方(Z1側)で先端のローラ908が長孔902に挿入されてガイドされるガイドバー910と、軸904よりも後方(Z2側)で円弧形状をなすバランスバー912とを有する。バランスバー912は、指輪部202の円弧と同形状であり、中央部で下向きの指押突起912aと、端部の錘912bとを有する。
バランスバー912は、円弧形状であることから適度な長さが確保されるとともに端部に錘912bを有することからガイドバー910よりもやや重く、ラッチアーム906は図40における時計方向の回転力を受けている。この回転力は小さく、トリガレバー36の操作に支障はない。バランスバー912は適度な長さが確保されているが、円弧形状であることからZ2方向に過度に突出することはなくグリップハンドル26に干渉することはない。図40から明らかなように、トリガレバー36を先端方向(Z1方向)に押し出しているときにはバランスバー912のほぼ全部は内部空間203よりも外に出ている。ここで、時計方向への回転力は、ばねの力を用いてもよい。
図41に示すように、トリガレバー36をZ2方向に引ききると、ローラ908は、長孔902におけるZ方向直線部における端部に達し、このときグリッパであるエンドエフェクタ1300は閉状態となる。ラッチアーム906は、バランスバー912による回転力を受けていることから、ここでトリガレバー36から指を離すと時計方向にやや回転し、図42に示すようにローラ908はラッチ溝902aに嵌り込む。これによって、トリガレバー36はその位置に保持され、ラッチされることになる。
図42に示すように、バランスバー912は指輪部202の周辺部に沿って内部空間203に入り込むことから、外方に無駄な突起がなく扱い易い。指押突起912aは指輪部202内にやや突出しており、該指押突起912aを押し込むことによってラッチ状態は簡便に解除される。
次に、図43に示すように、第2例に係る自己ラッチ機構900bは、トリガレバー取付部32bの軸920に軸支されたガイドアーム922と、トリガレバー36に設けられた長孔924と、指輪部202の斜め下方部の軸926に軸支されたラッチアーム928と、該ラッチアーム928の端部を上方に向かって付勢するばね930とを有する。ガイドアーム922の下端部とラッチアーム928のほぼ全部は内部空間203内にある。
長孔924は、指輪部202の前方(Z1側)において、アーム部200と略平行に延在しており、ガイドアーム922の下端に設けられたローラ932が挿入されている。長孔924のZ2側には低いガイド壁924aが設けられている。
ラッチアーム928は、軸926の部分で屈曲した幅広V字形状であって、軸926よりも前方(Z1側)の前方アーム934と、軸926よりも後方(Z2側)の後方アーム936とを有する。
前方アーム934は、先端の切欠部934aと、該切欠部934aよりもやや根元側で側方に突出したストッパ934bとを有する。ストッパ934bはガイド壁924aに当接しており、ラッチアーム928の図43における反時計方向への回転を制限している。
後方アーム936は、中央部上面に設けられた指押部936aを有する。後方アーム936のZ2方向端部は、ばね930によって上方に向かって付勢されており、ラッチアーム928は図43における反時計方向の回転力を受けており、前記のストッパ934b及びばね930の反対側に突設されたストッパピン937によって所定角度で止まり、切欠部934aは長孔924の上端部近傍に配置されている。
トリガレバー36をZ2方向に引くと、ローラ932は長孔924によって上方へ案内され、ガイドアーム922は軸920を中心として反時計方向に回転する。やがてローラ932は切欠部934aの手前側に形成された三角形状部934cに当接して、ばね930の付勢力に抗して該三角形状部934cを乗り越える。ばね930は適度に軽く、乗り越え操作に支障はない。ローラ932が三角形状部934cを乗り越えるときに適度なクリック感が得られ、操作者はラッチ状態を確認できる。
図44に示すように、ローラ932は切欠部934aに嵌り込む。後方アーム936はばね930によって反時計方向に付勢され続けていることから、ストッパ934bがガイド壁924aに当接(又は略当接)する位置まで戻され、同時にストッパピン937から後方アーム936が一瞬離れた後当接し、結局ローラ932は切欠部934aと長孔924の上端部で形成される隙間に保持されることになる。これにより、トリガレバー36はその位置に保持され、ラッチされることになる。指押部936aは指輪部202内にやや突出しており、該指押部936aを押し込むことによってラッチ状態は簡便に解除される。
これらの自己ラッチ機構900a、900bは、操作部14とは独立的に構成されていることから、該操作部14が無くてもラッチ状態が維持される。従って、トリガレバー36がラッチ状態に固定されたままの状態であっても、容易に操作部14と作業部16とを着脱することができる。しかも、作業部16を操作部14との装着状態に係わらず常にラッチ状態に維持しておくことができるため、先端動作部12のエンドエフェクタ1300を常に閉状態に維持しておくことができ、作業部16の取り扱い性が向上する。
次に、上記した原点サーチ動作の他の方法について説明する。上記では、原点サーチ動作として、原点検出センサ331(332)による検出片333(334)の検出に基づき、原点サーチを行う場合を例示したが、他の方法で原点サーチを行うことも勿論可能である。
図45A〜図45Dは、原点サーチ動作の他の方法の説明図であり、初期状態において、係合凸部137(大凸部402a)及び係合凹部176a(大凹部404a)の位相が最初から一致している状態から、原点サーチ動作を行う場合であり、図26A〜図26Dに示した動作パターン(2)の変形例である。勿論、他の動作パターンについても、略同様な変形例を適用可能である。
先ず、図45A中の矢印に示すように、係合凹部176aに係合した係合凸部137を正転方向へと回転させることにより、原点サーチ動作が開始される。この際、モータ100(102)について、モータ回転速度は所定の設定速度(速度閾値)より大きく、モータ電流値は所定の電流値(電流閾値)より小さいものとする。
当該原点サーチ動作が開始されると、係合凸部137及び係合凹部176aはモータ原点M0を通過すると共にさらに正転方向に回転され、正転側動作端となる一方のストッパ179aに当接部177aが当接し(図45B参照)、前記モータ回転速度が速度閾値より小さくなり、モータ電流値が電流閾値より大きくなる。すなわち、コントローラ514により、モータ100の電流値と回転速度とを検知しておくことで、先ず、係合凸部137及び係合凹部176aの正転側領域(正領域)での動作限を検出することができ、現在位相も検出することができる。
従って、当該機構は対称系であることから、逆転側領域(負領域)についても演算可能であり、モータ100を原点位置へと戻すことができるが、本例では、より正確に且つより確実に原点サーチを行うため、逆転方向での検出も行うものとする。
すなわち、図45C中の矢印に示すように、今度は逆転方向にモータ100を回転させ(この回転時には、前記モータ回転速度が速度閾値より大きく、モータ電流値が電流閾値より小さくなる)、最終的に逆転側動作端となる他方のストッパ(動作限)179aに当接部177aが当接し(図45C参照)、前記モータ回転速度が速度閾値より小さくなり、モータ電流値が電流閾値より大きくなる。
従って、コントローラ514では、モータ100の逆転側領域(負領域)での動作限を検出することができ、検出した正領域での動作限と負領域での動作限との平均値を得ることにより原点サーチが完了し、図45Dに示すように、係合凸部137及び係合凹部176aをモータ原点M0に戻して停止させ、これにより、駆動シャフト115及びプーリ158aが所定の原点位相に設定され、先端動作部12も所定の原点姿勢となる。
上記では、係合状態からの原点サーチ動作について示したが、係合していない状態からの原点サーチ動作も可能である。例えば、正方向へ回転させることにより、原点サーチ動作が開始され、係合を認識するまで、正方向へ回転させることにより、係合状態とすることができる。係合状態となれば、その後は、基本的には、上記の原点サーチと同様の動作パターンとなる。プーリ158aが連れ回り回転する場合でも、正方向へ回転させた場合には、少なくともプーリ158aは、+動作限であるストッパ179aにて動作が規制され、この+動作限にて係合する。係合すると共に、モータ回転速度は速度閾値より小さくなり、モータ電流値は電流閾値より大きくなり、係合凸部137及び係合凹部176aの正転側領域での動作限を検出することができる。その後は、基本的には、上記の原点サーチと同様の動作パターンとなる。
このような原点サーチ動作によれば、原点検出センサ331(332)や検出片333(334)等を省略することが可能となるため、マニピュレータ10の構成を一層簡素化することができる。
次に、以上のように構成されるマニピュレータ10に適用される先端動作部12の具体的な構成について、グリッパであるエンドエフェクタ1300を採用した構造を例示して説明する。先端動作部12としては、グリッパ以外の構造、例えばはさみや電気メス等も勿論適用可能であり、該先端動作部12を含む作業部16として構成することにより、操作部14に対して容易に着脱し交換することができる。
図46に示すように、先端動作部12には、ロッド192a、受動ワイヤ1252a、アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a、受動プーリ1156aを含む第1エンドエフェクタ駆動機構1320aと、これに対応した第2エンドエフェクタ駆動機構1320bが設けられている。第1エンドエフェクタ駆動機構1320a及び第2エンドエフェクタ駆動機構1320bは、エンドエフェクタ(グリッパ)1300を開閉させる基本的な構成である。
第1エンドエフェクタ駆動機構1320aにおける構成要素には符号にaを付し、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bにおける構成要素には符号にbを付して区別する。第1エンドエフェクタ駆動機構1320aにおける構成要素と第2エンドエフェクタ駆動機構1320bにおける構成要素で同じ機能のものについては、煩雑とならないよう、代表的に第1エンドエフェクタ駆動機構1320aについてのみ説明する場合がある。
図46、図47においては、理解が容易となるように、第1エンドエフェクタ駆動機構1320aと第2エンドエフェクタ駆動機構1320bを紙面上で並列して示すが、実際のマニピュレータ10に適用する場合には、図48に示すように、各プーリの軸方向(つまりY方向)に並列させ、アイドルプーリ(円柱部材、伝達部材)1140a及び1140bと、ガイドプーリ(円柱部材、伝達部材)1142a及び1142bの回転軸は、それぞれ同軸上に配置するとよい。つまり、アイドルプーリ1140a及び1140bは軸1110(図48参照)に共通的に軸支することができ、ガイドプーリ1142aと1142bは軸1112に共通的に軸支することができる。ガイドプーリ1142aとガイドプーリ1142bを同軸構成とすることにより、ヨー軸動作機構が簡便になる。
図49〜図52に示すように、先端動作部12は、ワイヤ受動部1100と、複合機構部1102と、エンドエフェクタ1300とを有し、Y方向の第1回転軸Oyを中心にして、それよりも先の部分がヨー方向に回動する第1自由度と、第2回転軸Orを中心にしてロール方向に回転する第2自由度と、第3回転軸Ogを中心として先端のエンドエフェクタ1300を開閉させる第3自由度とを有する合計3自由度の機構となっている。
第1自由度の機構である第1回転軸Oyは、連結シャフト18の基端側から先端側に延在する軸線と非平行に回動可能に設定するとよい。第2自由度の機構である第2回転軸Orは先端動作部12における先端部(つまりエンドエフェクタ1300)の延在方向の軸線を中心として回転可能な機構とし、先端部をロール回転可能に設定するとよい。
第1自由度の機構(ヨー方向)は、例えば±90°又はそれ以上の稼動範囲を有する傾動機構(又は屈曲機構)である。第2自由度の機構(ロール方向)は、例えば±180°又はそれ以上の稼動範囲を有する回転機構である。第3自由度の機構(エンドエフェクタ1300)は、例えば40°又はそれ以上開くことのできる開閉機構である。
エンドエフェクタ1300は、手術において実際の作業を行う部分であり、第1回転軸Oy及び第2回転軸Orは、作業を行い易いようにエンドエフェクタ1300の姿勢を変えるための姿勢変更機構を構成する姿勢軸である。一般に、エンドエフェクタ1300を開閉させる第3自由度に係る機構部はグリッパ(又はグリッパ軸)とも呼ばれ、ヨー方向に回動する第1自由度に係る機構部はヨー軸とも呼ばれ、ロール方向に回転する第2自由度に係る機構部はロール軸とも呼ばれる。
ワイヤ受動部1100は、一対の舌片部1058の間に設けられており、ワイヤ1052、ワイヤ1054のそれぞれの往復動作を回転動作に変換して複合機構部1102に伝達する部分である。ワイヤ受動部1100は、軸孔1060a、1060aに挿入される軸1110と、軸孔1060b、1060bに挿入される軸1112とを有する。軸1110、1112は、軸孔1060a、1060bに対して、例えば圧入もしくは溶接により固定される。軸1112は第1回転軸Oyの軸上に配置される(図49及び図52参照)。
軸1112のY方向両端には、Y方向に対称形状の歯車体1126及びプーリ1130が設けられている。歯車体1126は、筒体1132と、該筒体1132の上部に同心状に設けられた歯車1134とを有する。プーリ1130は、筒体1132と略同径且つ略同形状である。歯車1134は、後述するギア体1146のフェイスギア1165に噛合する。
筒体1132及びプーリ1130には、ワイヤ1052及び1054が所定の固定手段によって一部が固定されて巻き掛けられている。ワイヤ1052及び1054の巻き掛けられる角度は、例えば1.5回転(540°)である。プーリ1130は、主軸部材1144の基端部側に一体的に設けられており、この主軸部材1144は、軸1112により第1回転軸Oy(ヨー軸)を中心に回動(傾動)自在に支持されている。
ワイヤ1054を回転動作させることにより、プーリ1130と一体的に設けられた主軸部材1144が第1回転軸Oyを中心に回動し、ヨー方向動作が行われる。ワイヤ1052(図49参照)を回転動作させることにより、歯車体1126が軸1112に対して回転し、ギア体1146が第2回転軸Orを基準として回転し、ロール回転動作が行われる。歯車体1126とプーリ1130をそれぞれ回転させると、ヨー方向動作とロール回転動作の複合動作が行われる。先端動作部12の機構は、このように、ワイヤ1052が歯車1134を介してフェイスギア1165を駆動するのに対してワイヤ1054は主軸部材1144を直接的に回転駆動する形式に限らず、例えば、特開2008−253463号公報における図23に示される構成に相当するような差動機構であってもよい。
軸1110の略中央部にはアイドルプーリ(円柱部材、伝達部材)1140aが回転自在に軸支されており、軸1112の略中央部にはガイドプーリ(円柱部材、伝達部材)1142aが回転自在に軸支されている。アイドルプーリ1140aは、ガイドプーリ1142aに巻きかける受動ワイヤ(可撓性部材、伝達部材)1252aの巻き掛け角度を常に一定(両側あわせて約180°)に保つためにある。アイドルプーリ1140aの代わりに、ガイドプーリ1142aに受動ワイヤ1252aを1巻き以上してもよい。アイドルプーリ1140a及びガイドプーリ1142aは、受動ワイヤ1252a(図54参照)に対する滑り、及び摩擦による摩耗を低減するために、表面を滑らかにし、又は摩擦の少ない材質を用いるとよい。ガイドプーリ1142aは、姿勢変更機構におけるヨー軸Oyに設けられている。
軸1112における、歯車体1126とガイドプーリ1142aとの間にはプーリ1130を有する主軸部材1144が回転自在に軸支されている。主軸部材1144は、複合機構部1102に向けて突出する筒部を有する。主軸部材1144の軸心部には方形の孔1144aが設けられている。主軸部材1144のZ2方向端部には、ガイドプーリ1142aのY方向上面及びガイドプーリ1142bのY方向下面を保持するとともに、軸1112が挿通する孔を有する2枚の補助板1144bが設けられている。補助板1144bはZ1方向に向かって幅広となる山形であって、糸等の異物の侵入を防止する。
複合機構部1102は、エンドエフェクタ1300の開閉動作機構と、該エンドエフェクタ1300の姿勢を変化させる姿勢変更機構とを含む複合的な機構部である。
複合機構部1102は、主軸部材1144の筒部周面に対して回転自在に嵌挿されたギア体1146と主軸部材1144の先端に設けられたナット体1148と、Z2方向端部が孔1144aに挿入される断面四角の伝達部材1152と、該伝達部材1152のZ2方向端部に対してピン1154により回転自在に軸支される受動プーリ(円柱部材、伝達部材)1156aと、受動板(伝達部材)1158と、円筒状のカバー1160とを有する。
主軸部材1144におけるギア体1146と当接する部分には、樹脂製のスラスト軸受部材1144cが設けられている。ナット体1148におけるギア体1146と当接する部分には、樹脂製のスラスト軸受部材1148aが設けられている。スラスト軸受部材1144c及び1148aは低摩擦材であって、当接部分の摩擦及びトルクを低減するとともに、フェイスギア1165に負荷が直接的にかかることを防止する。スラスト軸受部材1144c及び1148aは、いわゆる滑り軸受であるが、転がり軸受を設けてもよい。これにより、エンドエフェクタ1300を強く閉じた場合や開いた場合、すなわちギア体1146が主軸部材1144に強く当接する場合でも、ロール軸動作をスムーズに行うことができる。
ギア体1146は、段付き筒形状であって、Z2方向の大径部1162と、Z1方向の小径部1164と、大径部1162のZ2方向端面に設けられたフェイスギア1165とを有する。フェイスギア1165は、歯車1134に噛合する。ギア体1146は、ナット体1148が主軸部材1144に対して抜けることを防止する。大径部1162の外周には、ねじが設けてある。
受動板1158は、Z2方向の凹部1166と、該凹部1166の底面に設けられた係合部1168と、Y方向両面にそれぞれ設けられた軸方向のリブ1170と、リンク孔1172とを有する。係合部1168は、伝達部材1152の先端に設けられたきのこ状の突起1174に係合する形状である。この係合により、受動板1158と伝達部材1152は、相対的なロール軸の回転が可能になる。受動板1158の幅はカバー1160の内径に略等しい。
カバー1160は、複合機構部1102の略全体を覆う大きさであり、複合機構部1102及びエンドエフェクタ1300に異物(生体組織、薬剤、糸等)が入り込むことが防止される。カバー1160の内面には、受動板1158の2つのリブ1170が嵌る軸方向の2本の溝1175が対向する向きに設けられている。溝1175にリブ1170が嵌ることにより受動板1158が軸方向にガイドされる。受動板1158の係合部1168には突起1174が係合することから、受動プーリ1156aは孔1144a内において、受動板1158及び伝達部材1152とともに軸方向に進退可能であるとともに、伝達部材1152を基準としてロール回転が可能である。カバー1160は、ギア体1146の大径部1162に対して螺入、圧入等の手段により固定されている。
カバー1160は、ギア体1146と基部側で結合(螺合、圧入、溶接等)されており、ギア体1146の回転とともにカバー1160及びエンドエフェクタ1300はロール軸動作を行う。
レバー部1310と受動板1158は、グリッパリンク1220により連接されている。つまり、各グリッパリンク1220の一端の孔1220aは、孔1218とともにピン1222が挿入され、他端の孔1220bは、受動板1158のリンク孔1172とともにピン1224が挿入されて連接されている。
図53に示すように、アイドルプーリ1140aは、同軸上の第1層アイドルプーリ(第1層アイドル円柱体)1232と第2層アイドルプーリ(第2層アイドル円柱体)1234の2枚が並列して構成されており、ガイドプーリ1142aは、同軸上の第1層ガイドプーリ(第1層ガイド円柱体)1236と第2層ガイドプーリ(第2層ガイド円柱体)1238の2枚が並列して構成されている。
図54に示すように、ロッド192aのZ1方向端部は、ワイヤ係合部1250aによって受動ワイヤ(可撓性部材)1252aの両端部に接続されている。
図55及び図56に示すように、ワイヤ係合部1250aは、ロッド192aの先端部1414にローラ1416が設けられ、該ローラ1416に受動ワイヤ1252aが巻き掛けられている。ローラ1416はピン1418に軸支されており回転自在である。これにより、受動ワイヤ1252aはローラ1416に巻きかけられながら適度に進退し、ロッド192aをZ2方向に引くときに、特にヨー軸が屈曲しないような状態でも、受動ワイヤ1252aをX方向のバランスよく引くことができる。先端部1414は、ロッド192aに螺設されている。この実施例では、受動ワイヤ1252aのY方向一対の張力が均一となり、長寿命化を図ることができるとともに、上下両方のY方向一対の平行化を図ることができる。
図53及び図54に戻り、受動ワイヤ1252aは、一部がワイヤ係合部1250aに接続された環状の可撓性部材であり、ワイヤ以外にもロープ、樹脂線、ピアノ線及びチェーン等を用いることができる。ここで、環状とは広義であり、必ずしも全長にわたって可撓性部材が適用されている必要はなく、少なくとも各プーリに巻き掛けられる箇所が可撓性部材であればよく、直線部は剛体で接続されていてもよいことはもちろんである。
受動ワイヤ1252aは、駆動部材のロッド192aから、アイドルプーリ1140aのX1方向(第1の側方)を通り、X2方向(第2の側方)に向かい、ガイドプーリ1142aのX2方向の面を通り受動プーリ1156aのX2方向面に至る。受動ワイヤ1252aは、さらに、受動プーリ1156aのZ1方向面に半周巻き掛けられてX1方向面に至り、ガイドプーリ1142aのX1方向の面を通り、X2方向に向かいアイドルプーリ1140aのX2方向を通りワイヤ係合部1250aに至る経路で配設されている。
つまり、受動ワイヤ1252aは、ワイヤ係合部1250aを基点及び終点とする一巡の経路を構成し、アイドルプーリ1140aの両側方を通り、受動プーリ1156aに巻き掛けられ、アイドルプーリ1140aとガイドプーリ1142aとの間で交差して、略8字形状をなす。これにより、ワイヤ係合部1250a及び受動ワイヤ1252aは、ロッド192aを介してトリガレバー36に対して機械的に接続されていることになる。
アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a及び受動プーリ1156aは略同径であり、受動ワイヤ1252aがあまり屈曲しないように、レイアウト上の可能な範囲で適度に大径にしている。ワイヤ係合部1250aは、受動ワイヤ1252aが過度に屈曲しないように、アイドルプーリ1140aよりも適度に離れた位置に設けられており、受動ワイヤ1252aの両端部はワイヤ係合部1250aを頂部として鋭角を形成している。アイドルプーリ1140aとガイドプーリ1142aとの間は狭く、例えば、受動ワイヤ1252aの幅と略等しい隙間が形成されている。
アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a及び受動プーリ1156aには、受動ワイヤ1252aの抜け止めのために、上面及び下面に小さいフランジを設け、又は側面を凹形状にしてもよい。
図54から明らかなように、第1エンドエフェクタ駆動機構1320aでは、基端側から先端側に向かって、受動ワイヤ1252a、アイドルプーリ1140a、ガイドプーリ1142a及び受動プーリ1156aが中心線に沿って配置されている。エンドエフェクタ1300は、伝達部材1152等を介して受動プーリ1156aに連結されている。
このように構成される第1エンドエフェクタ駆動機構1320aでは、ロッド192a(図54参照)をZ2方向に引き寄せると、平面視で、第1層アイドルプーリ1232及び第2層ガイドプーリ1238は反時計方向に回転し、第2層アイドルプーリ1234及び第1層ガイドプーリ1236は時計方向に回転する。このように、アイドルプーリ1140a及びガイドプーリ1142aは、それぞれ同軸上で2枚のプーリが並列する構成であることから、当接する受動ワイヤ1252aの動きに従って逆方向に回転可能であり、動作がスムーズである。
図49〜図52に示すように、エンドエフェクタ1300は、一対のグリッパ1302が動作をするいわゆる両開き型である。エンドエフェクタ1300は、カバー1160に対して一体構成のグリッパベース1304と、該グリッパベース1304に設けられたピン1196を基準にして動作する一対のエンドエフェクタ部材1308と、一対のグリッパリンク1220とを有する。
各エンドエフェクタ部材1308は、L字形状であって、Z1方向に延在するグリッパ1302と、該グリッパ1302に対して略35°に曲がって延在するレバー部1310とを有する。L字形状の屈曲部には、孔1216が設けられ、レバー部1310の端部近傍には孔1218が設けられている。孔1216にピン1196が挿入されることにより一対のエンドエフェクタ部材1308は第3回転軸Ogを中心として揺動自在となる。
各エンドエフェクタ部材1308は側方の1つのグリッパリンク1220によって、受動板1158のピン1224に連接されている。エンドエフェクタ1300の受動板1158ではリンク孔1172が図50のY方向に対称位置に2つ設けられており、一対のグリッパリンク1220は側面視で交差する配置である。
図48〜図52に示すように、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bは、第1エンドエフェクタ駆動機構1320a(図54参照)に対して、基本的には、折り返しプーリ(円柱部材、伝達部材)1350が付加された構成である。受動プーリ1156a及び受動プーリ1156bは同軸構成となっている。
主軸部材1144には、ピン1352が挿入及び固定される径方向の軸孔1354が設けられている。軸孔1354は、孔1144aを経由して主軸部材1144の筒部を貫通している。
伝達部材1152には、ピン1352が挿通可能な幅で軸方向に延在する長孔1356が設けられている。伝達部材1152は、作業部16の軸心よりY1方向にややオフセットした位置に設けられるが、先端の突起1174だけは軸心に配置させるとよい(図54参照)。もちろん、伝達部材1152は中心に配置してもよい。
ピン1154は、伝達部材1152を通り抜けてY2方向に突出し受動プーリ1156bを軸支する。受動プーリ1156bは、受動ワイヤ1252bが2巻き可能な幅を有する。主軸部材1144の孔1144aは、受動プーリ1156a、1156b及び伝達部材1152が挿入可能な高さを有する(図49及び図52参照)。受動プーリ1156a及び1156bは、孔1144a内でピン1154によって同軸に軸支されており、独立的に回転自在である。
図48及び図49に示すように、ピン1352は、孔1144a内でY1方向からY2方向に向かって、長孔1356及び折り返しプーリ1350の中心孔に挿入されて、伝達部材1152と受動プーリ1156a及び1156bが軸方向に進退可能である。折り返しプーリ1350はピン1352に軸支されて回転自在であり、位置は固定である。折り返しプーリ1350は受動ワイヤ1252bが2巻き可能な幅を有する。また、折り返しプーリ1350を2層化することにより、開閉動作のときに反対方向に回転できる構成となり、受動ワイヤ1252bとプーリの摩擦を低減させることができる。
図57、図58及び図59に示すように、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bにおいては、受動プーリ1156bよりも先端側に折り返しプーリ1350が設けられ、受動ワイヤ1252bは、受動プーリ1156bと折り返しプーリ1350とにわたって巻き掛けられている。つまり、受動ワイヤ1252bは、駆動部材のロッド192bのワイヤ係合部1250b(図46〜図48参照)から、アイドルプーリ1140bのX1方向を通り、X2方向に向かい、ガイドプーリ1142bのX2方向を通り受動プーリ1156bのX2方向面に至る。受動ワイヤ1252bはそのままZ1方向に向かって延在し、折り返しプーリ1350のX2方向の面に達し、該折り返しプーリ1350のZ1方向の面に半回転巻き付けられてZ2方向に折り返す。
受動ワイヤ1252bは受動プーリ1156bのZ2方向の面に半回転巻き付けられてX2側を通って再度折り返しプーリ1350に至り、再び該折り返しプーリ1350のZ1方向の面に半回転巻き付けられてZ2方向に折り返す。この後、受動ワイヤ1252bはガイドプーリ1142bのX1方向からアイドルプーリ1140bのX2方向に至り、ロッド192bのワイヤ係合部1250bに接続される。ワイヤ係合部1250a及び受動ワイヤ1252bは、ロッド192bを介してトリガレバー36に対して機械的に接続されていることになる。
先端動作部12の構造について理解を容易にするために、その模式図を図48に示す。
このように構成される先端動作部12では、図46に示すように、人手によりトリガレバー36を十分に引くと、ロッド192aは受動ワイヤ1252aを引き寄せ、受動プーリ1156a、伝達部材1152をZ2方向に移動させることからエンドエフェクタ1300を閉じさせることができる。つまり、ロッド192aや受動ワイヤ1252a、受動プーリ1156a等の伝達部材が牽引されることによりエンドエフェクタ1300が閉じられる。
この場合、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bについては、ロッド192bは、押し出されるように配置されているため、伝達部材1152の動作を阻害しない。
また、図47に示すように、人手によりトリガレバー36を十分に押し出すと、伝達部材1152及び受動プーリ1156aは先端側にZ1方向に移動してエンドエフェクタ1300を開くことができる。
エンドエフェクタ1300には、トリガレバー36を人手によって押し出す力が第2エンドエフェクタ駆動機構1320bによって機械的に直接伝えられることから、弾性体のような所定の力ではなく任意の強い力で開くことができる。したがって、エンドエフェクタ1300の外側面を用いて生体組織を剥離させ、又は孔部を拡開させるような手技に対して好適に用いることができる。
また、エンドエフェクタ1300の外側面に対象物が接触した場合には、受動ワイヤ1252b、ロッド192b及びトリガレバー36もそれ以上Z1方向に動かなくなり、操作者はエンドエフェクタ1300の外側面が対象物に接触したこと、及び該対象物の硬さ等を指先で知覚することができる。
先端動作部12は、ヨー軸動作及びロール軸動作が可能である。図示を省略するが、先端動作部12では、ヨー軸動作をする場合、ガイドプーリ1142a及びガイドプーリ1142bの軸1112(図48参照)を中心にして、それよりも先端の複合機構部1102及びエンドエフェクタ1300がヨー方向に揺動する。先端動作部12は、非干渉機構であることから、ヨー軸動作をしてもエンドエフェクタ1300の開度が変化することはなく、逆にエンドエフェクタ1300の開度を変化させてもヨー軸が動作することはない。エンドエフェクタ1300とロール軸の関係についても同様である。
次に、先端動作部12の変形例としての先端動作部12aを図60に示す。
図60に示すように、先端動作部12aは、前記の先端動作部12(図47参照)と比較して第1エンドエフェクタ駆動機構1320aを有している点で共通するが、第2エンドエフェクタ駆動機構1320bが省略された構成となっている。先端動作部12aについて、先端動作部12と同一の構成要素については同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
先端動作部12aは、前記の両開き型のエンドエフェクタ1300に代えて片開き式のエンドエフェクタ1300aが設けられている。エンドエフェクタ1300aは、固定のグリッパ1202とピン1196を中心として軸開閉動作をするグリッパ1212と、伝達部材1152をZ1方向に弾性付勢するスプリング1305とを有している。グリッパ1212は、伝達部材1152が進退することにともなってグリッパリンク1220を介して開閉駆動される。すなわち、トリガレバー36をZ2方向に引くと第1エンドエフェクタ駆動機構1320aによって伝達部材1152もZ2方向に変位し、グリッパ1212は図60における反時計方向に回動してエンドエフェクタ1300が閉動作をする。一方、トリガレバー36を開放すると、伝達部材1152はスプリング1305の付勢によってZ1方向に変位し、エンドエフェクタ1300は開状態に復帰する。また、トリガレバー36はZ1方向に復帰する。
本発明は、例えば図61に示すような手術用ロボットシステム700に適用してもよい。
手術用ロボットシステム700は、多関節型のロボットアーム702と、コンソール704とを有し、ロボットアーム702の先端には前記のマニピュレータ10と同じ機構が設けられている。ロボットアーム702の先端部708には、操作部14に代えて、内部に駆動部30を収納した基部14aが固定され、該基部14aに対して作業部16が着脱可能に取り付けられる。ロボットアーム702は、作業部16を移動させる手段であればよく、据置型に限らず、例えば自律移動型でもよい。コンソール704は、テーブル型、制御盤型等の構成を採り得る。
ロボットアーム702は、独立的な6以上の関節(回転軸やスライド軸等)を有すると、作業部16の位置及び向きを任意に設定できて好適である。先端のマニピュレータ10を構成する基部14aは、ロボットアーム702の先端部708と一体化している。マニピュレータ10は、前記のトリガレバー36による機械的な動作機構の代わりに図示しないモータ(人手によって操作する入力部に連動するアクチュエータ)による電気的な動作機構を有し、該モータが2本のロッド192a及び192bを駆動する。
ロボットアーム702は、コンソール704の作用下に動作し、プログラムによる自動動作や、コンソール704に設けられたジョイスティック706に倣った操作、及びこれらの複合的な動作をする構成にしてもよい。コンソール704は、前記のコントローラの機能を含んでいる。作業部16には、前記の先端動作部12が設けられている。
コンソール704には、操作指令部としての2つのジョイスティック706と、モニタ710が設けられている。図示を省略するが、2つのジョイスティック706により、2台のロボットアーム702を個別に操作が可能である。2つのジョイスティック706は、両手で操作し易い位置に設けられている。モニタ710には、軟性鏡による画像等の情報が表示される。
ジョイスティック706は、上下動作、左右動作、捻り動作、及び傾動動作が可能であり、これらの動作に応じてロボットアーム702を動かすことができる。ジョイスティック706はマスターアームであってもよい。ロボットアーム702とコンソール704との間の通信手段は、有線、無線、ネットワーク又はこれらの組合せでよい。
ジョイスティック706には、トリガレバー36が設けられており、該トリガレバー36を操作することにより前記モータを駆動可能である。
本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。