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JP5613160B2 - ゲノムdna中の標的配列の検出又は解析方法 - Google Patents

ゲノムdna中の標的配列の検出又は解析方法 Download PDF

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Description

本発明は、ゲノムDNA中の標的配列の検出又は解析方法に関する。本願は、2009年7月9日に出願した米国仮出願US61/213,739に基づく優先権を主張する出願であって、参照によりその内容の全てが本願に組み込まれる。
細菌などの微生物による食品や動物の感染への対処においては、微生物の同定を確実にかつ迅速に行うことが求められる。微生物の増殖スピードや除菌や治療の措置を速やかに開始する必要があるからである。こうした観点から、被験試料から微生物を同定する方法として、PCRなどの遺伝子増幅技術やハイブリダイゼーションとを組み合わせた方法が提案されている。例えば、検出対象となる細菌の16SリボソームRNA遺伝子の特定領域を標的核酸として利用して特定細菌の検出・同定を行うためのDNAマイクロアレイが開示されている(特許文献1)。また、口腔疾患に関連する口腔微生物種の検出・同定が行われており、その検出・同定にDNAマイクロアレイが用いることも開示されている(非特許文献1)。すなわち、これらの文献には、図5に示すように、検試料中の細菌の核酸を調製し、この核酸を鋳型として、そのアレイプローブ配列(標的配列)に対する標識プローブを調製し、この標識プローブを検出対象とする細菌が属する種または属に特異的な配列に基づくオリゴヌクレオチドと上記標識プローブとのハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイゼーションの成立の有無を判定することにより、細菌等の同定及び検出を行うことが開示されている。
また、DNAマイクロアレイを用いたSNP(一塩基多型)判別の検出方法も知られている(非特許文献2)。図6に示すように、非特許文献2には、抽出したゲノムDNAをマルチプレックスPCRによりSNP部位を含む断片のみを増幅し、その後、PCR産物の配列に合わせて設計された5’及び3’−クエリプローブをDNA断片に対してアニーリングさせた後、DNAリガーゼを用いてのライゲーション反応を行うことが記載されている。このライゲーション産物は、用いたクエリプローブに由来して、マイクロアレイに固定化された特定オリゴヌクレオチドと相補的な特定配列が含まれている。そして、2種類の蛍光標識されたプライマーを用いてPCRを行うことで前記SNP部位に相補的な配列を含むライゲーション産物を標識し、この標識サンプルを、ミスハイブリダイゼーションのない人工的なオリゴヌクレオチドが固定化されたマイクロアレイと反応させ、洗浄後、蛍光スキャナーで測定、数値化および解析するものである。
上記特許文献1及び非特許文献1に開示される方法では、ハイブリダイゼーションを、通常の温度(37℃〜65℃)よりも低い温度で実施している。すなわち、特許文献1及び非特許文献1に記載の方法では、ハイブリダイゼーションを、37℃〜50℃の温度とし、2時間程度としている。非特許文献2では、ハイブリダイゼーションを37℃で30分程度としている。
特許4189002号公報
厚生労働科学研究費補助金 食品の安心・安全確保推進事業いわゆる健康食品の有効性の評価に関する研究(平成18年度 総括・分担研究報告書) Analytical Biochemistry 364(2007)78-85大野ら、Polym. Prep. Jpn., 55(1), 2090, 2006
特許文献1及び非特許文献1においてハイブリダイゼーションを低い温度で実施するのは、ハイブリダイゼーションによって標識プローブと特定配列のオリゴヌクレオチドとハイブリッドの形成量を増大させるためであるが、反面ミスハイブリダイゼーションを招く可能性もある。したがって、同定精度が低下するおそれがある。さらに、より高温でのハイブリダイゼーションを検討する場合には、そのためのプローブ設計やハイブリダイゼーション条件をさらに検討する必要が生じる。
また、非特許文献2に開示される方法は、SNPをミスハイブリダイゼーションなく高精度に検出する方法である。しかしながら、他種類のプローブを準備する必要があるため、微生物汚染を迅速にかつ簡易に行うには不都合であった。
そこで、本明細書の開示は、迅速かつ精度のよい標的核酸の検査方法及びそれに用いる装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、非特許文献2に開示されている方法を改良して、標的核酸の検出のためのハイブリダイゼーション時間の短縮及びミスハイブリダイゼーションの低減を試みた。その結果、標的核酸中の特定領域(標的配列)において、当該プローブ配列に相補的な識別配列を含むプライマーと、予め選択された人工配列に相補的なタグ配列を含むプライマーとを準備し、これらのプライマーをアニーリング後に、DNAリガーゼによりライゲーションし、こうした取得したDNA断片(キメラDNA)を利用することで、他種類のプライマーを用いることなくハイブリダイゼーション工程を迅速化できるという知見を得た。本明細書の開示によれば、以下の手段が提供される。
本明細書の開示によれば、固相担体に固定化されたキャプチャープローブを用いてゲノムDNA中の標的配列の検出又は解析方法であって、前記標的配列の一部又はその近傍に相補的な配列を有する第1のクエリプローブと、前記標的配列の他の一部又はその近傍に相補的な配列を有し前記キャプチャープローブの一部に相補的な識別配列とを備える第2のクエリプローブとを、前記標的核酸に接触させる工程と、前記標的核酸にハイブリダイズした前記第1のクエリプローブと前記第2のクエリプローブとを連結させて連結分子を取得する工程と、前記連結分子と前記固相担体上のキャプチャープローブとを接触させ、前記連結分子を、前記キャプチャープローブと前記連結分子中の前記識別配列とのハイブリダイズによって前記固相担体に捕捉する工程と、捕捉された前記連結分子を検出する工程と、を備える、方法が提供される。
前記接触工程は、複数の第1のクエリプローブと複数の第2のクエリプローブとを用いて、複数の標的核酸とこれらとを同時に接触させる工程とすることができる。また、前記方法は、前記複数の標的配列に基づいて1種又は2種以上のゲノムDNAの起源生物を検出又は同定するものであってもよい。
さらに、前記検出工程に先だって、前記第1のクエリプローブ、前記第2のクエリプローブ及び連結分子からなる群から選択されるいずれかを標識する工程を備え、前記検出工程は、前記標識に基づくシグナルを検出する工程としてもよい。前記標識工程は、前記連結分子を増幅しつつ標識する工程であってもよい。
前記連結分子取得工程は、前記第1のクエリプローブと前記第2のクエリプローブとをリガーゼで連結する工程としてもよい。また、前記接触工程に先だって、前記DNAの増幅工程を備えていてもよい。
前記ゲノムDNAは、食品衛生及び疾患の診断・検査の対象となるウイルス及び微生物から選択されるいずれかに由来し、前記検出工程は、前記ウイルス及び前記微生物を検出又は同定するものであってもよい。
また、本明細書の開示によれば、上記方法に用いるマイクロアレイであって、前記マイクロアレイ上に固定化された前記キャプチャープローブが、配列番号1〜100に記載された塩基配列及び当該塩基配列に相補的な塩基配列から選択されるいずれかの塩基配列を有する1以上の前記キャプチャープローブによって構成されていることを特徴とする、マイクロアレイが提供される。
本明細書に開示される検出方法の概要を示す図である。 本明細書に開示される検出方法に用いる固相体の概要及びキャプチャープローブの例について示す図である。 実施例において得られたハイブリダイズ産物の検出結果を示す図である。 比較例において得られたハイブリダイズ産物の検出結果を示す図である。 特許文献1及び非特許文献1に開示される検出方法の概要を示す図である。 非特許文献2に開示される検出方法の概要を示す図である。
本明細書の開示は、固相担体に固定化されたキャプチャープローブを用いてゲノムDNA中の標的配列の検出又は解析方法及びそのためのアレイに関している。本明細書の開示によれば、特定ゲノム中の核酸の検出および配列の決定のためのハイブリダイゼーション工程に要する時間を短縮し、かつ特定ゲノム中の標識された核酸のDNAマイクロアレイへの非特異的結合を低減することができる。
なお、以下の説明において、第2のクエリプローブが有する、キャプチャープローブの一部と相補的な識別配列を、識別配列(−)として記載し、キャプチャープローブが有する一部の配列(識別配列(−)と相補的である)を、識別配列(+)として記載することとする。
本明細書の開示の方法によれば、標的配列の検出は実質的に、標的配列に対する第1のクエリプローブ及び第2のクエリプローブの接触工程及び連結工程においてなされる。すなわち、第1及び第2のクエリプローブの標的核酸への接触後に連結して得た連結分子を、キャプチャープローブとハイブリダイゼーションさせることで、ハイブリダイゼーションにおけるミスハイブリダイゼーションを迅速化及び高精度化することができる。この方法によれば、ハイブリダイゼーションに用いるキャプチャープローブは、標的配列に固有のものでなくともよい。したがって、用いるキャプチャープローブに固有の識別配列が、一定条件下で相互にミスハイブリダイゼーションが一定条件下で有効に低減されているのであれば、ミスハイブリダイゼーションを効果的に低減できる。また、同様に、低温でのハイブリダイゼーションに好適化されているのであれば、ハイブリダイゼーションを迅速化することができる。
本明細書の開示の概要を図1に示す。なお、図1は、本明細書の開示の一例であって、本明細書の開示を限定するものではない。図1に示すように、抽出したゲノムDNAの核酸配列のうち、プローブ配列領域が含まれるようにポリメラーゼを用いて核酸を増幅(100bp〜1kbp程度)する。次いで、予め固相担体上に準備されている、特定の識別配列をそれぞれ有するキャプチャープローブの当該識別配列、及び被験試料中の標的配列を参考に、被検試料中の核酸中の標的配列領域で5‘及び3’クエリプローブ(第1のクエリプローブ及び第2のクエリプローブ)を設計し、ライゲーション用プローブとして準備する。その後、PCR増幅産物に対してこれらのクエリプローブをアニーリングさせた後、DNAリガーゼを用いてライゲーションして連結分子を取得する。Cy、Alexa等の蛍光色素または、ビオチン等で標識されたプライマーを用いてPCRを行い、連結分子を標識する。標識した連結分子を、固相担体上のキャプチャープローブと接触させて、ハイブリダイゼーションを検出する。
なお、本明細書において「核酸」とは、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hnRNAおよび合成RNAを含む全てのDNAおよびRNA、並びにペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフォスフォネート核酸およびS−オリゴ核酸などの人工合成核酸を含む。また、1本鎖であっても2本鎖であってもよい。また、本明細書において「標的核酸」とは、任意の配列を有する任意の核酸である。典型的には、体質、遺伝病、癌などの特定疾患についての発症、疾患診断、治療予後、薬剤や治療の選択などのヒトや非ヒト動物における遺伝子上の指標となる塩基配列を有する可能性のある核酸が挙げられる。指標としては、SNPなどの多型や先天的又は後天的変異が挙げられる。また、病原菌やウイルスなどの微生物由来の核酸なども標的核酸に含まれる。
標的核酸は、後述する被験試料又はその核酸画分をそのまま用いることもできるが、好ましくは、PCRによる増幅反応、より好ましくはマルチプレックスPCRによる増幅反応により、複数の標的核酸の全てが増幅された増幅産物を用いることが好ましい。
本明細書において「標的配列」とは、検出対象の標的核酸に特徴的な1又は2以上の塩基からなる配列をいう。例えば、標的核酸同士のホモロジーの低い部分配列であってもよいし、試料に含まれる可能性のある他の核酸に相補性もしくは相同性の低い配列であってもよい。標的配列は、標的核酸に特徴的な配列であってもよい。また、微生物などの生物の属や種に固有の配列であってもよい。こうした標的配列は、人工的に配列を変更したものであってもよい。
本明細書において「被験試料」とは、標的核酸を含む可能性のある試料をいう。試料としては、細胞、組織、血液、尿、唾液等が含まれ、核酸を含む任意の試料を用いることができる。こうした各種の試料からの核酸を含む画分は当業者であれば適宜従来技術を参照して取得することができる。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明のこれらの実施形態について詳細に説明する。図2には、本明細書に開示される検出又は解析方法に用いる固相体及びキャプチャープローブが備える得る識別配列を示す。
(ゲノムDNA中の標的配列の検出又は解析方法)
本明細書に開示される、標的配列の検出又は解析方法は、前記標的配列の一部又はその近傍に相補的な配列を有する第1のクエリプローブと、前記標的配列の他の一部又はその近傍に相補的な配列を有し前記キャプチャープローブが有する識別配列(+)に相補的な識別配列(−)とを備える第2のクエリプローブとを、前記標的核酸に接触させる工程(接触工程)と、前記標的核酸にハイブリダイズした前記第1のクエリプローブと前記第2のクエリプローブとを連結させて連結分子を取得する工程(連結工程)と、前記連結分子と前記固相担体上のキャプチャープローブとを接触させ、前記連結分子を、前記キャプチャープローブと前記連結分子中の前記識別配列(−)とのハイブリダイズによって前記固相担体に捕捉する工程(ハイブリダイズ工程)と、捕捉された前記連結分子を検出する工程(検出工程)と、を備えることができる。
本明細書に開示される検出又は解析方法(以下、単に本方法という。)においては、特定の識別配列(+)を含むキャプチャープローブが固定化された固相体を用いている。したがって、まず、以下に固相担体の準備について説明し、その後、本方法の各工程について説明する。
(固相担体の準備)
本方法で表される用いる固相体100は、本方法の実施に先立って予め準備していてもよいし、商業的に入手してもよいし、検出方法の実施毎に調製してもよい。
固相体100は、それぞれ異なる固有の塩基配列である識別配列(+)を含む複数のキャプチャープローブ104を固相担体102上に備えることができる。このような固相体100を準備することで、プローブの設計、合成、アレイの作製、ハイブリダイゼーション条件についての検討を回避することができる。
キャプチャープローブ104は、それぞれプロービングのための固有の塩基配列である識別配列(+)を有している。このような識別配列(+)は、標的核酸10に特徴的な配列すなわち標的配列12と、無関係に設定することができる。標的配列12と無関係に設定することで、キャプチャープローブ104の識別配列(+)を、複数のキャプチャープローブ104間での非特異的結合を抑制又は回避できるように、かつ、ハイブリダイゼーションに好適な温度及び時間等のハイブリダイゼーション条件を考慮して設定することができる。また、標的核酸10の種類にかかわらず、いつも同じキャプチャープローブ104を用いることができるようになる。
こうしたキャプチャープローブ104の識別配列(+)としては、例えば、図2及び表1に示す各塩基配列(配列番号1〜100)及びこれに相補的な塩基配列から適宜選択することができる。これらの塩基配列は全て同一塩基長であり、融解温度(Tm)が40℃以上80℃以下、好ましくは50℃以上70℃以下であって、同一条件でのハイブリダイズにおいて均質なハイブリダイズ結果が得ることができる。
キャプチャープローブ104の識別配列(+)は、このような候補となる塩基配列から適宜選択して用いることができる。使用する2種類以上のキャプチャープローブ104の融解温度は、できるだけ近いことが好ましい。
なお、融解温度は、GC%法、Wallace法、Current Protocols in Molecular Biologyに準拠した方法(秀潤社刊バイオ実験イラストレイテッド3 本当に増えるPCRp.25に記載)等により算出したものを採用できるが、本発明における融解温度の範囲および塩基配列濃度の影響を加味できるNearest-Neighbor法によって算出されることが好ましい。Nearest-Neighbor法による融解温度は、例えば、Visual OMP(トミーデジタルバイオロジー株式会社製)とのソフトウエアや日本遺伝子研究所(http://www.ngrl.co.jp/)が提供するソフトウエア(OligoCalculator;http://www.ngrl.co.jp/tool/ngrl_tool.html)により容易に取得できる。
このようなキャプチャープローブ104における識別配列は、正規直交化配列ともいい、たとえば乱数から得られた所定塩基長のDNA配列に対して連続一致長、Nearest-Neighbor法による融解温度予測、ハミング距離、二次構造予測の計算を行うことにより設計される。正規直交化配列は、核酸の塩基配列であって、その融解温度が均一であるもの、即ち融解温度が一定範囲内に揃うように設計された配列であって、核酸自身が分子内(intramolecular)で構造化して、相補的な配列とのハイブリッド形成を阻害することのない配列であり、尚且つこれに相補的な塩基配列以外とは安定したハイブリッドを形成しない塩基配列を意味する。1つの正規直交化配列群に含まれる配列は、所望の組み合わせ以外の配列間および自己配列内において反応が生じ難いか、または反応が生じない。また、正規直交化配列は、PCRにおいて増幅させると、たとえば上述のクロスハイブリダイズのような問題に影響されずに、当該正規直交化配列を有する核酸の初期量に応じた量の核酸が定量的に増幅される性質を有している。上記のような正規直交化配列は、H.Yshida and A.Suyama,“Solution to 3-SAT by breadth first search”,DIMACS Vl.54, 9-20(2000)および特願2003−108126に詳細が記載されている。これらの文献に記載の方法を使用して正規直交化配列を設計することができる。
キャプチャープローブ104は、担体102に固定化されている。こうした担体102としては、固相担体を用いることができる。例えば、担体102はプラスチックであってもよいし、ガラスであってもよく、材質は特に限定されない。なお、担体102の形状は図1に示すように平板状であってもよいが、ビーズ状であってもよく、形状は特に限定されない。固相体100は、好ましくは、担体102が固相平板状であり、複数のキャプチャープローブ104が一定の配列で固定されたアレイ(特にマイクロアレイ)である。アレイは、多数個のキャプチャープローブ104を固定でき、同時に網羅的に各種の標的核酸10を検出するのに都合がよい。また、固相体100は、担体102上に複数個の区画されたアレイ領域を備えていてもよい。これらの複数のアレイ領域は、それぞれ同一の組み合わせからなるキャプチャープローブ104のセットが固定化されていてもよいし、それぞれ別の組み合わせからなるキャプチャープローブ104のセットが固定化されていてもよい。複数のアレイ領域に異なる組み合わせのキャプチャープローブ104のセットが固定化されていれば、個々のアレイ領域を、異なる遺伝子における標的核酸10の検出のために割り当てることができる。
また、好ましい固相体100は、2種類以上のキャプチャープローブ104がその融解温度に基づく順序で配列された配列状態を備えることができる。例えば、このような固相体100を用いて、キャプチャープローブ104の順序に沿って、ある遺伝子のある部位に関して存在しうる2種類以上の標的配列12に対応する2種類以上の標的核酸10に対応する2種類以上のキャプチャープローブ104を割り当てることで、キャプチャープローブ104の識別配列の融解温度の差やキャプチャープローブ104の固定化位置に由来するハイブリダイズのバラツキを抑制して、精度よく試料中の標的核酸10を検出することができる。
キャプチャープローブ104の固定化形態は特に限定されない。共有結合性であってもよいし非共有結合性であってもよい。キャプチャープローブ104は、従来公知の各種の方法で担体102の表面に固定化することができる。また、担体102の表面に対しては適当なリンカー配列を備えていてもよい。リンカー配列は、好ましくはキャプチャープローブ104間において同一塩基長で同一配列とする。
(標的核酸の増幅工程)
本方法においては、接触工程に先立って、被験試料中の標的核酸の増幅工程を備えることができる。増幅工程を実施することで、接触工程及び連結工程を迅速化ないし効率化できる。増幅工程にあたっては、被験試料中における1又は2以上の標的核酸を増幅可能に行う。したがって、増幅しようとするないし検出しようとする標的核酸の種類(数)に応じたプライマーセットを適宜準備し、PCRなどにより増幅工程を実施することができる。
(接触工程)
接触工程は、標的核酸中の標的配列の一部又はその近傍に相補的な配列を有する第1のクエリプローブと、前記標的配列の他の一部又はその近傍に相補的な配列を有し前記キャプチャープローブの一部に相補的な識別配列(−)とを備える第2のクエリプローブとを、前記標的核酸に接触させる工程である。接触工程において、第1のクエリプローブと第2のクエリプローブとによって、被験試料中に標的核酸が存在するとき、当該標的核酸中の標的配列を検出できる。標的核酸、すなわち、標的配列毎に第1のクエリプローブと第2のクエリプローブが準備される。接触工程は、複数の第1のクエリプローブと複数の第2のクエリプローブとを用いて、複数の標的核酸とこれらとを同時に接触させる工程であってもよい。
図1に示すように、第1のクエリプローブは、標的配列に相補的な配列を含んでいる。標的配列は、標的核酸を検出し、検出対象を検出し同定できるような配列が選択される。標的配列の長さは特に限定しないが、数塩基〜10塩基程度の長さとすることができる。第1のクエリプローブは、こうした標的配列の一部を含んでいてもよいし、その全てを含んでいてもよい。好ましくは、全ての標的配列の全てを含むように設定する。第1のクエリプローブは、ハイブリダイズの特異性を確保できる範囲で標的配列の近傍の配列を含んでいてもよい。標的配列に相補的な配列は、第1のクエリプローブの3’末端を構成するように配置されることが好ましい。
第1のクエリプローブの5’末端側には、後段で標識を付与するために用いる配列を備えていてもよい。例えば、色素の種類に応じて、一定の配列が設定されていてもよい。
第2のクエリプローブは、標的配列の他の一部又はその近傍に相補的な配列を有している。図1に示すように、第2のクエリプローブは、第1のクエリプローブが標的配列の全てに対して相補的配列を備える場合には、当該標的配列に連続する近傍の配列に相補的な配列を有している。また、第1のクエリプローブが標的配列の一部に対してのみ相補的な配列を備える場合には、第2のクエリプローブは、標的配列の残余の配列に対して相補的な配列を有している。かかる相補的な配列は、第2のクエリプローブの5’末端に配置されている。なお、当該5’末端は、後段のDNAリガーゼによる連結工程のために、リン酸化されていることが好ましい。
第2のクエリプローブは、キャプチャープローブ104の一部(識別配列(+))に相補的な識別配列(−)を備えている。この識別配列(−)は、予め、固相担体102に固定した特定のキャプチャープローブ104の識別配列(+)に関連付けられている。識別配列(−)は、第2のクエリプローブの3’末端に配置されている。
接触工程の条件は特に限定しない。通常のハイブリダイズ媒体を用いることができる。標的配列に第1のクエリプローブと第2のクエリプローブとをアニールさせるには、一旦、被験試料から取得した標的核酸(通常は二重鎖となっている。)を、加熱して融解させる必要させる必要がある。したがって、接触工程は、かかる融解を達成する加熱を伴っていてもよい。そして、その後、適度な温度に低温化することで、標的配列に対するこれらのクエリプローブのアニールが実現される。なお、接触工程は、独立した工程として実施されなくともよく、連結工程の一部であってもよい。すなわち、接触工程と同時に連結工程が実施されてもよい。
(連結工程)
連結工程は、標的核酸の標的配列にハイブリダイズした第1のクエリプローブと第2のクエリプローブとを連結させて連結分子を取得する工程である。この工程においては、標的配列にハイブリダイズした状態の第1のクエリプローブと第2のクエリプローブとを連結する工程である。通常には、DNAリガーゼを、作用させて第1のクエリプローブの3’末端と第2のクエリプローブの5’末端を連結する。連結工程は、クエリプローブの標的配列に対するアニール状態を確保した状態でかつ使用するリガーゼが機能する条件で行うことができる。したがって、アニール温度及びライゲーション反応温度を考慮することで、接触工程及び連結工程を一つの工程として実施できるようになる。耐熱性リガーゼを用いる場合には、容易にこれらを一工程として実施できる。
(標識工程)
本方法においては、後述する検出工程に先だって、第1のクエリプローブ、第2のクエリプローブ及び連結分子からなる群から選択されるいずれかを標識する工程を備えることができる。いずれかが標識されていれば、連結分子は、標識を備えることとなり、検出工程において特定のキャプチャープローブに対する標識の検出により、ハイブリダイズを検出できる。
第1のクエリプローブ及び第2のクエリプローブに対して、標識を予め付与しておいてもよいが、より効率よく標識を用いるには、連結分子に対して標識を付与する。標識を付与するにあたっては、PCRによる増幅工程を用いることができる。例えば、図1に示すように、5’末端に標識物質を有し、第1のクエリプローブの5’末端側の配列と同一配列を含むプライマーと、第2のクエリプローブの識別配列(+)に相補的な識別配列(−)を有するプローブを用いて、非対照PCRを実施すればよい。こうした標識工程によれば、連結分子を増幅しつつ標識できるため、効率的である。
標識としては従来公知のものを適宜選択して用いることができる。それ自体励起されると蛍光シグナルを発する蛍光物質などの各種色素であってもよいし、さらに酵素反応や抗原抗体反応により第2成分と組み合わせて各種シグナルを発する物質であってもよい。典型的には、Cy3、Alexa555、Cy5、Alexa647等の蛍光標識物質を用いることができる。また、ビオチンとストレプトアビイジンHPRとを組み合わせて基質による処理等による発色による検出を用いてもよい。
(ハイブリダイズ工程)
ハイブリダイズ工程は、連結分子と固相担体上のキャプチャープローブ104とを接触させ、連結分子を、キャプチャープローブ104の識別配列(+)と連結分子中の識別配列(−)とのハイブリダイズによって固相担体に捕捉する工程である。この工程により、連結分子は、特定のキャプチャープローブ104に、識別配列(+)(−)の対合により特異的にハイブリダイズして二重鎖を形成する。この結果、予め特定のキャプチャープローブ104に関連付けられた標的配列の検出が可能となる。
本方法によれば、被験試料中に標的核酸が存在する場合にのみ、当該標的核酸に予め関連付けられたキャプチャープローブ104の識別配列(−)を有する連結分子が合成され、標的核酸が存在しない場合には、連結分子が合成されない。また、キャプチャープローブ104は相互にミスハイブリダイズが高度に抑制された人工的配列である。したがって、本方法のハイブリダイズ工程で、キャプチャープローブ104と連結分子とのミスハイブリダイズが発生することは著しく抑制されている。なお、ハイブリダイズ工程後において、適宜洗浄工程をさらに含んでいてもよい。
(検出工程)
検出工程は、キャプチャープローブ102に捕捉された連結分子を検出する工程である。検出工程におけるハイブリダイズ産物の検出方法は特に限定されない。連結分子が標識を有する場合には、その標識を検出すればよい。また、電気的な検出方法などにより、二重鎖を検出してもよい。
検出工程で標識等を検出することにより、被験試中の標的核酸の有無や比率を検出することができる。本方法によれば、複数の標的核酸を同時に検出する場合であっても、確実に検出対象たる標的配列を検出することができる。
キャプチャープローブ104に補足された連結分子を検出するにあたっては、適宜、光学的検出手段や電気的検出手段等公知の検出手段を用いることができる。こうした検出手段によって得られるシグナル強度情報を標的核酸10の有無や比率を検知することができる。
本方法によれば、検査対象由来の標的核酸に固有の標的配列に相補的な配列を有する第1のクエリプローブと、当該標的配列の一部又はその近傍に相補的な配列と、予め高い選択性を有する識別配列(+)に関連付けられた識別配列(−)とを含む第2のクエリプローブとを用いて、標的配列を含むDNA断片(連結分子)を取得する。その後、この連結分子と、識別配列(+)を含むキャプチャープローブとを接触させて、ハイブリダイズ産物を形成させ、検出する。本方法においては、接触工程及び連結工程において、標的配列に対して選択的に連結分子が取得されており、ハイブリダイズ工程では、連結分子に関し、効率的かつ選択性の高い識別配列(+)(−)間のハイブリダイズの形成を確認するだけでよい。このため、本方法によれば、従来、ボトルネックであったハイブリダイズ工程の時間や精度を改善することができる。また、ハイブリダイズ工程に関し、諸条件を検討する手間を省くことができる。
以上説明した、本方法によれば、検査対象となるDNAなどの核酸から、当該DNAの起源生物を同定できる。したがって、本方法は、検査対象となりうる各種生物の存否を確認する検査方法として有用である。特に、食品衛生、安全の検査対象及び疾患の診断・検査対象となるウイルス及び微生物などの検査方法として有用である。
(プローブセット)
本明細書の開示によれば、既に説明した第1のクエリプローブと第2のクエリプローブを備えるプローブセットが提供される。このプローブセットは、キャプチャープローブ104が固定化された固相体100と組み合わされて使用されるものであり、既に説明した連結分子を取得するのに好適なプローブセットである。第1のクエリプローブは、たとえば、同一の遺伝子等に関して個体内に存在する変異や種や属において存在する相違を検出可能な標的配列に相補的な配列とキャプチャープローブ104に関連付けられた識別配列(−))を有しており、第2のクエリプローブは、標的配列の他の一部又はその近傍に相補的な配列を有し予め関連付けられたキャプチャープローブが有する識別配列(+)に相補的な識別配列(−)とを有している。プローブセットは、こうした第1のクエリプローブと第2のクエリプローブとを、少なくとも一つ含んでいればよく、2種類以上の標的核酸を検出するために2種類以上のプローブセットを含んでいてもよい。
以下、本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、特定ゲノム中の標的配列の検出及び同定を行った。
(1)DNAマイクロアレイの作製
東洋鋼鈑社製geneslideガラス基板に、3’末端をアミノ基で修飾した合成オリゴDNA(株式会社日本遺伝子研究所製)を溶かした水溶液をキャプチャープローブとし、日本ガイシ株式会社にてGENESHOT(登録商標)スポッターを用いてスポットした。使用した合成オリゴDNA配列は、文献(Analytical Biochemistry 364(2007)78-85)のSupplementary Table1記載のD1_1からD1_100(配列番号1〜100)の100種とした。(表1)。
これら各種の合成オリゴヌクレオチドを基板に対してスポットの後、80℃、1時間のベークを行った。さらに、以下に記載した手順で、合成オリゴDNAの固定化及び洗浄を行った。すなわち、べーク後、2×SSC/0.2%SDS洗浄を15分間行い、さらに、95℃で2×SSC/0.2%SDSで洗浄を5分行った。次いで、滅菌水洗浄(10回上下振とう)を計3回行い、遠心(1000rpm×3分)により液切りをした。
(2)標的核酸の増幅
口腔内に存在する微生物種のうち、Enterococcus faecalis及びPseudoramibacter alactolyticusを検出対象微生物とした。また、上記各微生物に由来する標的核酸を増幅するために以下のプライマーを用いた。これらのプライマーは、これらの微生物の16S rRNA遺伝子領域の特定部分を増幅するために設計されている。
F−プライマー:5’-AGGTTAAAACTCAAAGGAATTGACG-3'(配列番号101)
R−プライマー:5’-ATGGTGTGACGGGCGGTGTGT-3' (配列番号102)
上記微生物から抽出したDNAに対して、以下の条件で、PCRを実施し、増幅産物としてEnterococcus faecalisに由来する試料1とPseudoramibacter alactolyticusに由来する試料2とを取得した。これらの試料について、QIAGEN社のMinElute PCR Purification Kitにて精製を行った後、狙いとする長さで増幅していることを確認した。
(3)増幅産物へのアニール及びライゲーション反応
次に、増幅産物である試料1及び2に対して、クエリプローブをアニールさせ、ライゲーション反応を行った。ライゲーション反応にはNew England Biolabs社のTaq DNA Ligase(Catalog # M0208S)を使用した。加熱にはサーマルサイクラーとして、Applied Biosystems社のGeneAmp PCR System 9700を使用した。用いた第1のクエリプローブと第2のクエリプローブを以下に示す。なお、第2のクエリプローブについてはそれぞれ5’Phosphorylationしたものを使用した。クエリ1−1及びクエリ2−1は、試料1の標的核酸を増幅するためのプローブセットであり、クエリ2−1及びクエリ2−2は、試料2の標的核酸を増幅するためのプローブセットである。第1及び第2のクエリプローブ中のイタリック文字が、標的配列に相補的な配列である。また、第2のクエリプローブ中の、下線部がそれぞれ予め関連付けられたキャプチャープローブの識別配列(−)である。
アニール及びライゲーションは以下のようにして行った。すなわち、以下の組成の試薬を調製後、95℃ 5分 、50℃ 1分 、次いで58℃ 60分で加熱し、その後10℃に下げることによって行った。得られた15サンプルを各サンプルに対する連結分子とした。なお、増幅産物試料は、試料1 3μl+滅菌水3μl、試料2 3μl+滅菌水3μl、試料1 3μl+試料2 3μlの3通りで組み合わせた。
(4)連結分子の蛍光等標識
連結分子の蛍光等による標識は、ラベル化したプライマーを用いるPCRを行うことで実施した。標識には、TaKaRa Bio社のTaKaRa Ex Taq(R)(Catalog# RR001B)を使用した。サーマルサイクラーとして、Applied Biosystems社のGeneAmp PCR System 9700を使用した。なお、ラベル化プライマーの標識試薬はCy3、5、Alexa555、647等スキャナーの仕様に合わせることが可能である。
まず、以下の表に示すラベル化プライマーと非ラベル化プライマーとを準備した。ラベル化プライマーは、連結分子の第1のクエリプローブの5’末端側と同一配列を有しており、非ラベル化プライマーは、連結分子の第2のクエリプローブの識別配列(−)に相補的な配列を有している。
ラベル化反応は、以下に示す試薬を調製後、当該試薬を用いてサーマルサイクル反応(95℃ 1分後、95℃ 30秒→55℃ 6分→72℃ 30秒を30サイクル、その後10℃に下げる)によって行った。
(5)DNAマイクロアレイを用いたハイブリダイズ
ラベル化済み試料を用いたDNAマイクロアレイへの反応及びその検出手順は以下の通りとした。すなわち、まず、以下の組成の標識サンプル溶液を調製し、調製した標識サンプル溶液を、Applied Biosystems社のGeneAmp PCR System 9700を使用し、90℃で1分加熱した後、ヒートブロック(TAITEC社DTU-N)を使用し80℃で1分加熱した。さらに、処理後の標識サンプル溶液を各9μlずつ、DNAマイクロアレイのスポットエリアにかけ、乾燥防止のためコンフォート/プラス用サーモブロックSlide(eppendorf社)を使用し、37℃で60分間静置することによりハイブリダイズ反応を行った。
次いで、以下の組成の洗浄液を調製し、洗浄を実施した。すなわち、まず、洗浄液をガラス染色バットに移し、ハイブリダイズ反応終了後のガラス基板を浸漬し、5分間上下振とうした。さらに、滅菌水を入れたガラス染色バットにガラス基板を移し、1分間上下振とうした。次いで、2000rpmで1分間遠心乾燥し、ガラス基板表面に残った水分を除去した。
(6)スキャナーによる蛍光検出
Appleied Precision社ArrayWoRxを使用して適宜、露光時間を調節し、蛍光画像を取得した。さらにGenePix Proを使用し、得られた画像の蛍光シグナルの数値化を行った。結果を図3に示す。
(7)データ解析
図3に示すように、試料1と試料2とを混合して反応した場合、両者とも反応による蛍光シグナルが得られており、サンプルを検出することが可能と思われた。また、サンプルを混合せずに個々に反応した場合、既存の方法での結果と比べ狙いとしないプローブでは蛍光シグナルが得られておらず(1%以下)、サンプルの非特異的反応を大幅に低減できる(検出性能が向上している)ことがわかった。
以上の実施例においては、ハイブリダイズ工程は、60分であるのにかかわらず、非特異的なハイブリダイズが抑制されており、本方法は、精度及び迅速性に優れることがわかった。なお、表1に示すキャプチャープローブを用いたとき、ハイブリダイズ工程は、30分程度でも可能であることがわかっているが、確認的に30分で実施したところ、60分で実施したときと同様の結果を得ることができた。
また、従来の方法では、望ましい結果が得られるまで、ハイブリダイゼーション条件の至適化、アレイ用プローブ配列の再設計・アレイ作製が必要となることもあったのに対し、本発明により、アレイ用プローブ配列の再設計、アレイ再作製は必要とせず、常に同一仕様のアレイで評価することができる。
(比較例)
既存の方法(先行技術文献2参考)にて行った評価手順と結果を以下に示す。なお、検出対象微生物は、実施例と同様、口腔内に存在する微生物種のうち、Enterococcus faecalis及びPseudoramibacter alactolyticusとした。
(1) DNAマイクロアレイの作製
東洋鋼鈑社製geneslideガラス基板に、3’末端をアミノ基で修飾した合成オリゴDNA(株式会社日本遺伝子研究所製)を溶かした水溶液をキャプチャープローブとし、日本ガイシ株式会社にてGENESHOT(登録商標)スポッターを用いてスポットした。スポットの後、80℃、1時間のベークを行った。さらに、実施例と同様の手順で合成オリゴDNAの固定化を行った。上記各微生物を検出するためのキャプチャープローブに用いた配列は以下の通りであった。
Enterococcus faecalis検出用プローブ :5'-ACCACTCTAGAGATA-3'(配列番号108)
Pseudoramibacter alactolyticus検出用プローブ :5'-AGCGCAATAGAGATA-3'(配列番号109)
(2)標的核酸の増幅及び標識
上記各微生物に由来する標的核酸を増幅するため、実施例と同様の配列で、かつ、5’側末端にCy3を有する標的核酸増幅用プライマーを用いた。
F−プライマー:5’-Cy3-AGGTTAAAACTCAAAGGAATTGACG-3'(配列番号101)
R−プライマー:5’-Cy3-ATGGTGTGACGGGCGGTGTGT-3' (配列番号102)
上記微生物から抽出したDNAに対して、以下の条件で、PCRを実施し、それぞれ比較試料1、2とした。増幅したサンプル遺伝子はQIAGEN社のMinElute PCR Purification Kitにて精製を行った後、狙いとする長さで増幅していることを確認した。
(3)DNAマイクロアレイを用いたハイブリダイズ
ラベル化済み比較試料1、2を用いたDNAマイクロアレイへの反応・洗浄の手順は以下の通りとした。洗浄は、洗浄液をガラス染色バットに移し、ハイブリダイズ反応終了後のガラス基板を浸漬し、5分間上下振とうした。さらに、滅菌水を入れたガラス染色バットにガラス基板を移し、1分間上下振とうした。次いで、2000rpmで1分間遠心乾燥し、ガラス基板表面に残った水分を除去した。
(4)スキャナーによる蛍光検出
Appleied Precision社ArrayWoRxを使用して適宜、露光時間を調節し、蛍光画像を取得した。
(5)データ解析
画像の数値化ソフトウエアとしてGenePix Proを使用し、得られた画像の蛍光シグナルの数値化を行った。結果を図4に示す。
図4に示すように、比較試料1、2を混合してハイブリダイズ反応した場合、両者とも反応による蛍光シグナルが得られており、サンプルを検出することが可能と思われた。一方、比較試料1、2を混合せずに個々にハイブリダイズ反応した場合、狙いとしないプローブで弱いながらも蛍光シグナル(10%程度)が得られており、サンプルの非特異的反応が起こっていることがわかった。
以上の比較例では、ハイブリダイズに要する時間は2時間程度であった。また、標識サンプルのDNAマイクロアレイ上の狙いとしない(配列が完全一致でない)プローブへの非特異的反応(蛍光強度で10%程度)が見られた。一方、実施例においてはハイブリダイズに必要な時間は30分程度と短縮でき、標識サンプルのDNAマイクロアレイ上の狙いとしない(配列が完全一致でない)プローブへの非特異的反応を大幅に低減(蛍光強度で1%未満)することが可能となった。
それゆえ、本発明によりハイブリダイゼーション温度は常に一定(37℃程度)でかつ時間は30分程度で行える(従来の1/4)ことができ、さらに特定ゲノム中の核酸検出及び配列の決定を従来よりも正確に行うことができる。
配列番号1〜100、103、104、105、106、108、109:プローブ
配列番号101、102、107:プライマー

Claims (5)

  1. 固相担体に固定化されたキャプチャープローブを用いて複数の標的核酸中において複数の標的配列の検出又は解析方法であって、
    前記標的配列は、2以上の塩基からなる配列であって、
    前記複数の標的配列のそれぞれについて準備された、前記標的配列の一部に相補的な配列と、前記複数の標的配列に共通する標識を付与するための標識用配列とを有する第1のクエリプローブと、前記標的配列の他の一部に相補的な配列と、前記標的配列に固有に関連付けられた前記キャプチャープローブの少なくとも一部と相補的な配列である識別配列とを有する第2のクエリプローブとのセットを前記標的核酸に接触させる工程と、
    前記標的核酸にハイブリダイズした前記第1のクエリプローブと前記第2のクエリプローブとを連結させて連結分子を取得する工程と、
    前記連結分子を前記標識用配列を介して増幅しつつ共通の標識により標識する工程と
    前記連結分子と前記固相担体上の前記キャプチャープローブとを接触させ、前記連結分子を、前記キャプチャープローブと前記連結分子中の前記識別配列とのハイブリダイズによって前記固相担体にそれぞれ捕捉する工程と、
    捕捉された前記連結分子を前記標識に基づいて検出する工程と、
    を備える、方法。
  2. 前記標的配列は、生物の属又は種に固有の配列である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記標的配列は、特定の起源生物を検出又は同定可能な配列であり、特定の起源生物を検出又は同定する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記標的配列は、食品衛生及び疾患の診断・検査の対象となるウイルス及び微生物から選択されるいずれかに由来し、前記検出工程は、前記ウイルス及び前記微生物を検出又は同定する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、
    マイクロアレイであって、前記マイクロアレイ上に固定化された前記キャプチャープローブが、配列番号1〜100に記載された塩基配列及び当該塩基配列に相補的な塩基配列から選択されるいずれかの塩基配列を有する1以上の前記キャプチャープローブによって構成されていることを特徴とする、マイクロアレイと、
    前記標的配列の一部に相補的な配列と、前記複数の標的配列に共通する標識を付与するための標識用配列とを有する第1のクエリプローブと、
    前記標的配列の他の一部に相補的な配列と、前記標的配列に固有に関連付けられた前記キャプチャープローブの少なくとも一部と相補的な配列である識別配列とを有する第2のクエリプローブと、
    を備える、キット。
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