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JP5605949B2 - 医療用ガイドワイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、コアワイヤの遠位端側小径部の外周にコイルスプリングが装着されてなる医療用ガイドワイヤに関する。
カテーテルなどの医療器具を血管などの体腔内の所定位置へと案内するためのガイドワイヤには、遠位端部における可撓性が要求される。
このため、コアワイヤの遠位端部の外径を、近位端部の外径よりも小さくするとともに、コアワイヤの遠位端部(遠位端側小径部)の外周にコイルスプリングを装着して、遠位端部の可撓性の向上を企図したガイドワイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
コアワイヤの遠位端側小径部の外周にコイルスプリングを装着させるためには、通常、コイルスプリングの先端部および後端部の各々を、はんだにより、コアワイヤに固着する。
最近、患者への低侵襲性を企図して医療器具の小型化が望まれている。
これに伴い、ガイドワイヤの細径化の要請があり、本発明者らは、従来のもの(外径が0.014インチ)より細い外径(0.010インチ)を有するガイドワイヤを開発している。
0.010インチのガイドワイヤによれば、カテーテルなどの医療用具の小型化に大きく貢献することができる。
更に、このガイドワイヤによれば、例えば、CTO(慢性完全閉塞)病変におけるマイクロチャンネルにアクセスする際の操作性もある程度良好である。
しかしながら、細い径のガイドワイヤは、曲げ剛性(耐キンク性)が低く、押し込み性(Pushability)にも劣るものとなる。
このような事情から、本発明者は、コアワイヤの遠位端側小径部の外周にコイルスプリングが装着されてなるガイドワイヤであって、コイルスプリングの先端側のコイル外径が0.010インチであって、コイルスプリングの後端側のコイル外径およびコアワイヤの近位端部の外径が何れも0.014インチであるガイドワイヤを開発し、これを提案している(特許文献2参照)。
特開2003−299739号公報 特許第4354525号公報
CTO病変におけるマイクロチャンネルには、0.010インチより小さい孔径のものがあり、そのようなマイクロチャンネル内を挿通させるためには、ガイドワイヤ(コイルスプリングのコイル外径)の更なる小径化が必要となる。
他方、ガイドワイヤを構成するコイルスプリングにおいて、先端側と後端側とでコイル外径が異なる場合には、マイクロチャンネルなどの狭窄部位を挿通させる際に、コイル径が変化する部分に応力が集中して、その部分においてキンクしやすくなるという問題がある。また、コイル外径が大きく変化するコイルスプリングを有するガイドワイヤは、良好な押し込み性を有するものとならない。
また、ガイドワイヤには、良好なトルク伝達性(近位端側での回転トルクが遠位端側にまで良好に伝達されること)が要求される。トルク伝達性が十分でないと、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させることが困難となり、挿入作業性が損なわれる。
しかしながら、径の細いガイドワイヤやコイル外径が大きく変化するコイルスプリングを有するガイドワイヤはトルク伝達性に劣る傾向がある。
また、ガイドワイヤには、曲がりくねった血管内を通して屈曲させたときでも、永久変形を生じにくいこと(形状保持性)が要求される。手技中に永久変形が発生すると、手元操作による回転によりうねりが発生してしまうなど、その後の血管内での操作が困難となることがある。
本発明は以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の第1の目的は、従来のガイドワイヤでは挿通させることのできなかった孔径の小さな狭窄部位にも挿通させることができ、曲げ剛性(耐キンク性)が高く、押し込み性にも優れた医療用ガイドワイヤを提供することにある。
本発明の第2の目的は、良好なトルク伝達性を有し、曲がりくねった血管内を通すときにも永久変形を発生させにくい、形状保持性に優れた医療用ガイドワイヤを提供することにある。
(1)本発明の医療用ガイドワイヤは、引張強さが2600〜3000MPaのオーステナイト系ステンレス鋼からなり、近位端側大径部と前記近位端側大径部より外径の小さい遠位端側小径部とを有するコアワイヤと、
前記コアワイヤの遠位端側小径部の外周に軸方向に沿って装着され、少なくとも先端部および後端部において、前記コアワイヤに固着されているコイルスプリングとを備えてなり、
前記コイルスプリングは、
0.008インチ(0.203mm)以下のコイル外径を有する先端側小径部と、
前記先端側小径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する中径部と、
0.012インチ(0.305mm)以上であって前記中径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する後端側大径部と、
前記先端側小径部と前記中径部との間に位置する第1テーパ部と、
前記中径部と前記後端側大径部との間に位置する第2テーパ部とを有し、
前記コイルスプリングが固着されている前記コアワイヤの遠位端側小径部を直径3mmのロッドの外周に沿って1回巻き付けた状態で150gfの引張荷重を10秒間負荷したときに、巻き付けによる先端部分の反り角度が25°未満であることを特徴とする。
(2)本発明の医療用ガイドワイヤにおいては、引張強さが2600〜3000MPaのオーステナイト系ステンレス鋼からなり、外径が0.012インチ(0.305mm)以上である近位端側大径部と、前記近位端側大径部より外径の小さい遠位端側小径部とを有するコアワイヤと;
前記コアワイヤの遠位端側小径部の外周に軸方向に沿って装着され、コイル線径の1.1〜2.0倍のコイルピッチを有する密巻部分と、前記密巻部分に連続し、コイル線径の2.0倍を超えるコイルピッチを有する粗巻部分とからなるコイルスプリングとを備えてなり;
前記コイルスプリングは、
0.008インチ(0.203mm)以下のコイル外径を有する先端側小径部と、
前記先端側小径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する中径部と、
0.012インチ(0.305mm)以上であって前記中径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する後端側大径部と、
前記先端側小径部と前記中径部との間に位置する第1テーパ部と、
前記中径部と前記後端側大径部との間に位置する第2テーパ部とを有し、
前記先端側小径部と前記第1テーパ部と前記中径部と前記第2テーパ部とにより、長さ5.5〜110mmの前記密巻部分が構成されているとともに、前記後端側大径部により前記疎巻部分が構成され;
前記先端側小径部の先端部分、第2テーパ部の後端部分、および前記後端側大径部の後端部分は、はんだにより、前記コアワイヤの遠位端側小径部の外周に固着され、
前記コイルスプリングが固着されている前記コアワイヤの遠位端側小径部を直径3mmのロッドの外周に沿って1回巻き付けた状態で150gfの引張荷重を10秒間負荷したときに、巻き付けによる先端部分の反り角度(以下、「曲げ癖角度(θ)」ともいう)が25°未満であることが好ましい。
このような医療用ガイドワイヤによれば、これを構成するコイルスプリングが、コイル外径が0.008インチ以下の先端側小径部を有しているので、従来のガイドワイヤでは挿通させることのできない孔径の小さな狭窄部位にも挿通させることができ、従来のガイドワイヤを用いたのでは行うことのできなかった狭い領域(例えば、CTO病変における孔径250μm以下のマイクロチャンネル)の治療が可能になる。
また、このコイルスプリングは、コイル外径が0.012インチ以上の後端側大径部を有するとともに、先端側小径部、中径部、後端側大径部とコイル外径が段階的に変化しているので、このコイルスプリングを備えたガイドワイヤは、曲げ剛性が高く、押し込み性にも優れたものとなる。
また、先端側小径部の先端部分、第2テーパ部の後端部分、および後端側大径部の後端部分が、はんだにより、前記コアワイヤの遠位端側小径部の外周に固着されていることにより、コアワイヤの遠位端側小径部に対してコイルスプリングを確実に固着させることができるとともに、先端側小径部(先端部分を除く)、第1テーパ部、中径部および第2テーパ部(後端部分を除く)は、はんだにより、コアワイヤの遠位端側小径部の外周に固着されていないので、コイルスプリングの先端領域である密巻部分における柔軟性を十分に確保することができるとともに、当該領域においてシェイピングを行うことも可能となる。
また、先端側小径部、第1テーパ部、中径部および第2テーパ部により、コイルスプリングの密巻部分が構成されているので、コイルスプリングの先端領域である密巻部分において良好な造影性(視認性)を発現することができる。
また、コイルスプリングを狭窄部位へ挿入する際の抵抗は、コイル外径によって異なることから、コイルスプリングの狭窄部位への挿入長さを、コイル外径の段階的変化に伴う挿入抵抗の変化(感触)によって把握することができる。
また、引張強さが2600〜3000MPaである高強度のオーステナイト系ステンレス鋼からコアワイヤが構成されるとともに、ガイドワイヤとしての曲げ癖角度(θ)が25°未満であることにより、この医療用ガイドワイヤは、良好なトルク伝達性を有し、曲がりくねった血管内を通すときにも永久変形を発生させにくい、形状保持性(例えば、シェイピング形状の保持性)に優れたものとなる。
(3)本発明の医療用ガイドワイヤにおいては、前記コアワイヤの近位端側大径部の外径が0.014インチ(0.356mm)以上であり、前記コイルスプリングの先端側小径部のコイル外径が0.008インチ(0.203mm)以下、前記中径部のコイル外径が0.009〜0.011インチ(0.229〜0.279mm)、前記後端側大径部のコイル外径が0.014インチ(0.356mm)以上であることが好ましい。
(4)また、この医療用ガイドワイヤにおいては、前記中径部のコイル外径に対する前記先端側小径部のコイル外径の比が0.5〜0.9、前記第1テーパ部の長さが0.5〜10mmであり、前記中径部のコイル外径に対する前記後端側大径部のコイル外径の比が1.1〜2.3、前記第2テーパ部の長さが0.5〜10mmであることが好ましい。
(5)本発明の医療用ガイドワイヤにおいては、前記先端側小径部の先端部分は、金含有はんだにより、前記コアワイヤに固着され、金含有はんだによる先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmであることが好ましい。
ここに、「金含有はんだ」には、Au−Sn系はんだ、Au−Ge系はんだ、Au−Si系はんだ、Au−In系はんだ、Au−Sb系はんだなどのAu合金はんだおよびAuはんだが含まれる。
また、「先端硬直部分」とは、コイル内部に浸透したはんだにより自由に曲げることができなくなったコイルスプリング(ガイドワイヤ)の先端部分をいい、はんだによって先端チップが形成されている場合には、当該先端チップも先端硬直部分の一部となる。
また、「先端硬直部分の長さ」とは、ガイドワイヤの先端から、コイル内部に浸透したはんだの後端までの、ガイドワイヤの軸方向の長さをいう。
先端側小径部の先端部分(コイルスプリングの先端部)をコアワイヤに固着するためのはんだとして金含有はんだを使用することにより、先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmと短い(はんだによる固着領域が狭い)にも関わらず、コアワイヤに対するコイルスプリングの固着強度を十分に高い(コアワイヤの遠位端側小径部の破断強度より高い)ものとすることができ、コイルスプリングに挿入されている状態のコアワイヤに引張力を作用しても、コアワイヤが引き抜かれるようなことはない。
そして、先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmと短いので、シェイピング長さ(先端の折り曲げ長さ)を短くする(0.7mm以下とする)ことができ、この結果、マイクロチャンネル内での操作時において摩擦抵抗を十分に低減させることができる。
(6)また、この医療用ガイドワイヤにおいては、前記コイルスプリングの先端側小径部において、金含有はんだが、先端から1〜4ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透していることが好ましい。
ここに、例えば、先端から3ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透しているとは、コイル内部に浸透したはんだの後端が、先端から3巻目のコイルに接触し、4巻目のコイルには接触していない位置にある場合をいう。
(7)本発明の医療用ガイドワイヤにおいては、前記コイルスプリングの内部に樹脂が充填されているとともに、前記コイルスプリングの外周に前記樹脂による樹脂層が形成され、前記樹脂層の表面に親水性樹脂層が積層形成され、前記コアワイヤの表面には撥水性樹脂層が形成されていることが好ましい。
コイルスプリングの内部に樹脂が充填されていることにより、コアワイヤとコイルスプリングとの一体性が格段に向上し、これにより、ガイドワイヤのトルク伝達性・操作性を更に向上させることができる。
また、コイルスプリングの内部に充填されているものと同じ樹脂による樹脂層を介して、コイルスプリングの外周に親水性樹脂層が積層形成されているので、親水性樹脂層が確実に固定され、親水性樹脂による潤滑性を安定的に発現させることができる。
また、コアワイヤの表面に撥水性樹脂層が形成されていることにより、コアワイヤを構成する金属に、患者の血液が接触してアレルギーを起こさせることを防止することができ、また、撥水性樹脂層により血液の付着などを確実に防止することができる。また、他の医療器具に対する潤滑性を発現することができる。
本発明の医療用ガイドワイヤによれば、従来のガイドワイヤでは挿通させることのできなかった孔径の小さな狭窄部位にも挿通させることができる。
本発明の医療用ガイドワイヤは、曲げ剛性(耐キンク性)が高く、押し込み性にも優れている。
本発明の医療用ガイドワイヤは、良好なトルク伝達性を有し、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させやすく挿入作業性に優れている。
本発明の医療用ガイドワイヤは、屈曲されても永久変形を生じにくく、形状保持性に優れている。
本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す一部を破断した側面図である。 本発明のガイドワイヤの第1実施形態を示す一部を破断した側面図(寸法を説明するための図)である。 図1の部分拡大図であり、(A)はA部詳細図、(B)はB部詳細図、(C)はC部詳細図、(D)はD部詳細図である。 ガイドワイヤの先端部をシェイピングした状態を示す側面図である。 ガイドワイヤの曲げ癖角度(θ)の測定方法の説明図である。 本発明のガイドワイヤの第2実施形態を示す部分破断側面図である。 本発明のガイドワイヤの第2実施形態を示す部分破断側面図(寸法を説明するための図)である。 図6の部分拡大図であり、(A)はA部詳細図、(B)はB部詳細図、(C)はC部詳細図である。 本発明のガイドワイヤの第3実施形態を示す部分破断側面図である。 本発明のガイドワイヤの第3実施形態を示す部分破断側面図(寸法を説明するための図)である。 図9の部分拡大図であり、(A)はA部詳細図、(B)はB部詳細図、(C)はC部詳細図である。 ガイドワイヤのトルク伝達性を試験するための模擬装置を示す説明図である。 ガイドワイヤのトルク伝達性を示すグラフである。
<第1実施形態>
図1〜図3に示す本実施形態の医療用ガイドワイヤは、引張強さが2600〜3000MPaのオーステナイト系ステンレス鋼からなり、外径が0.012インチ以上である近位端側大径部13と、近位端側大径部13より外径の小さい遠位端側小径部11と、近位端側大径部13と遠位端側小径部11の間に位置するテーパ部12とを有するコアワイヤ10と;コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に軸方向に沿って装着され、コイル線径の1.1〜2.0倍のコイルピッチを有する密巻部分201と、密巻部分201に連続し、コイル線径の2.0倍を超えるコイルピッチを有する粗巻部分202とからなるコイルスプリング20とを備えてなり;コイルスプリング20は、0.008インチ以下のコイル外径(D21)を有する先端側小径部21と、先端側小径部21のコイル外径(D21)より大きいコイル外径(D23)を有する中径部23と、0.012インチ以上であって中径部23のコイル外径(D23)より大きいコイル外径(D25)を有する後端側大径部25と、先端側小径部21と中径部23との間に位置する第1テーパ部22と、中径部23と後端側大径部25との間に位置する第2テーパ部24とを有し、先端側小径部21と第1テーパ部22と中径部23と第2テーパ部24とによって、長さ(L21+L22+L23+L24)が5.5〜110mmの密巻部分201が構成されているとともに、後端側大径部25によって疎巻部分202が構成され;先端側小径部21の先端部分、第2テーパ部24の後端部分、および後端側大径部25の後端部分は、それぞれ、Au−Sn系はんだ31、Au−Sn系はんだ32およびAg−Sn系はんだ33により、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に固着され、コイルスプリング20が固着されているコアワイヤ10の遠位端側小径部11を直径3mmのロッドの外周に沿って1回巻き付けた状態で150gfの引張荷重を10秒間負荷したときに、巻き付けによる先端部分の反り角度(永久変形である曲げ癖角度(θ))が25°未満である医療用ガイドワイヤである。
本実施形態のガイドワイヤは、コアワイヤ10とコイルスプリング20とを有する。
コアワイヤ10は、近位方向に拡径するようテーパ加工された遠位端側小径部11と、近位方向に拡径するテーパ部12と、近位端側大径部13とを有する。
遠位端側小径部11、テーパ部12および近位端側大径部13は、同一の線材(例えば、丸棒部材)により一体的に構成されている。
テーパ部12および近位端側大径部13の横断面は、略円形である。
遠位端側小径部11の近位端側における横断面は略円形であるが、遠位端側小径部11の遠位端側は、線材が圧縮されて板状となっていてもよく、その場合の横断面は略矩形となる。
コアワイヤ10は、引張強さが2600〜3000MPaである高強度のオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304、SUS316)から構成されている。
引張強さが2600〜3000MPaである高強度のオーステナイト系ステンレス鋼は、弾性限度も高いため、これをコアワイヤとする本実施形態のガイドワイヤにおいて、屈曲による永久変形を生じさせにくい。
コアワイヤ10は、オーステナイト系ステンレス鋼の線材に伸線加工を施して、所定の線径、強度を有する線材とし、次いで、真直矯正を施した後、所定の長さに切断してバー材とし、次に、温度300〜500℃、時間0.5〜4時間の処理条件で時効処理を施すことにより製造することができる。
ここに、「時効処理」は、遠位端側小径部11となる部分における残留応力を除去(低減)して遠位端側のうねりを防止することなどを目的として施される。
時効処理温度が300℃未満または500℃を超える場合には、2600MPa以上の引張強さを有するコアワイヤ10を得ること、および、25°未満の曲げ癖角度(θ)を有するガイドワイヤを得ることが困難となる。
また、時効処理時間が0.5時間未満では、残留応力を十分に除去することができない。他方、4時間を超えて処理しても、時間に見合う効果を得ることができない。
コアワイヤ10の外周面には、図示しない撥水性樹脂層が形成されている。
撥水性樹脂層を構成する樹脂としては、医療用として用いられる樹脂であって、撥水性を有するものをすべて用いることができ、好適な樹脂としてPTFEなどのフッ素系樹脂を挙げることができる。
図2に示すガイドワイヤの全長(L1 )は、例えば1500〜3000mmとされ、好適な一例を示せば1780mmである。
コアワイヤ10の近位端側大径部13の外径(D1 )は、0.012インチ(0.305mm)以上とされ、0.014インチ(0.356mm)以上であることが好ましく、好適な一例を示せば0.014インチである。
遠位端側小径部11の最大外径としては、コイルスプリング20の内径より小さければ特に限定されるものではないが、近位端側大径部13の外径(D1 )の1/5〜3/5程度であることが好ましい。
遠位端側小径部11は、先端側に向けて連続的に縮径されてもよく、段階的に縮径されていてもよい。
ガイドワイヤを構成するコイルスプリング20は、1本の線材から構成され、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に軸方向に沿って装着されている。
コイルスプリング20を構成する線材の外径(コイル線径)は、特に限定されないが、好ましくは30〜90μmとされ、好適な一例を示せば50μmである。
コイルスプリング20の材質としては、白金、白金合金(たとえばPt/W=92/8)、金、金−銅合金、タングステン、タンタルなどのX線に対する造影性が良好な材質(X線不透過物質)を挙げることができる。
コイルスプリング20は、先端側小径部21と、第1テーパ部22と、中径部23と、第2テーパ部24と、後端側大径部25とからなる。
先端側小径部21、第1テーパ部22、中径部23および第2テーパ部24は、コイルスプリング20の密巻部分201を構成している。コイルスプリング20の密巻部分201(先端側小径部21、第1テーパ部22、中径部23および第2テーパ部24)および後述する先端チップは、X線不透過領域となる。
後端側大径部25は、コイルスプリング20の疎巻部分202を構成している。
先端側の密巻部分201におけるコイルピッチは、コイル線径の1.1〜2.0倍とされ、好適な一例を示せば1.5倍である。
コイルピッチがコイル線径の1.1倍未満である場合には、当該領域の柔軟性が損なわれる。一方、コイルピッチがコイル線径の2.0倍を超える場合には、当該領域において良好な造影性を発現することができない。
後端側の疎巻部分202におけるコイルピッチは、コイル線径の2.0倍を超えており、好適な一例を示せば3.0倍である。
このように、先端側と後端側とにおいてコイルピッチを変化させることにより、先端領域である密巻部分201において良好な造影性(視認性)を発現させることができる。
コイルスプリング全域にわたり同一のピッチとする場合には、X線不透過領域が長くなるために視認性の低下を招く。
図2において、コイルスプリング20の長さ(L2 )は、例えば30〜800mmとされ、好ましくは100〜200mm、好適な一例を示せば165mmである。
先端側小径部21の長さ(L21)は、0.5〜100mmとされ、好ましくは3〜15mm、好適な一例を示せば8.5mmである。
第1テーパ部22の長さ(L22)は、0.5〜10mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.5mmである。
中径部23の長さ(L23)は、0.5〜150mmとされ、好ましくは10〜50mm、好適な一例を示せば28.5mmである。
第2テーパ部24の長さ(L24)は、0.5〜10mmであることが好ましく、好適な一例を示せば1.5mmである。
後端側大径部25の長さ(L25)は、例えば85〜154.5mmとされ、好適な一例を示せば125mmである。
コイルスプリング20の密巻部分201における長さ、すなわち、先端側小径部21の先端から第2テーパ部24の後端までの長さ(L21+L22+L23+L24)は、通常5.5〜110mmとされ、好ましくは10.5〜80mm、好適な一例を示せば40.0mm(8.5mm+1.5mm+28.5mm+1.5mm)である。
この長さ(L21+L22+L23+L24)が5.5mm以上であることにより、殆どのマイクロチャンネルに対して、先端側小径部21の先端から第2テーパ部24の後端に至る密巻部分201を挿通(貫通)させることができる。
また、この長さ(L21+L22+L23+L24)が110mm以下であることにより、曲げ剛性および押し込み性の向上に寄与する後端側大径部25の長さ(L25)を十分に確保することができる。
ガイドワイヤの先端からコイルスプリング20の後端までの長さ(L3 +L2 )は、例えば30〜800mmとされ、好適な一例を示せば165.2mm(0.2mm+165mm)である。
ガイドワイヤの先端から第2テーパ部24の後端までの長さ(L3 +L21+L22+L23+L24)は、例えば10〜50mmとされ、好適な一例を示せば40.2mm(0.2mm+8.5mm+1.5mm+28.5mm+1.5mm)である。
コイルスプリング20の先端側小径部21におけるコイル外径(D21)は、通常0.008インチ(0.203mm)以下とされ、好適な一例を示せば0.0078インチである。先端側小径部21のコイル外径(D21)が0.008インチ以下であることにより、従来のガイドワイヤでは挿通させることのできない孔径の小さな狭窄部位にも挿通させることができ、従来のガイドワイヤを用いたのでは行うことのできなかった狭い領域(例えば、CTO病変における孔径250μm以下のマイクロチャンネル)の治療が可能になる。
コイルスプリング20の中径部23におけるコイル外径(D23)は、先端側小径部21におけるコイル外径(D21)よりも大きく、好ましくは0.009〜0.011インチ(0.229〜0.279mm)とされ、好適な一例を示せば0.010インチ(0.254mm)である。
先端側小径部21と後端側大径部25の間に中径部23が存在することにより、先端側小径部21、中径部23、後端側大径部25とコイル外径が段階的に変化し、コイル外径が急激に変化する部分(キンクしやすい部分)は存在しない。
コイルスプリング20の後端側大径部25におけるコイル外径(D25)は、中径部23におけるコイル外径(D23)よりも大きく、通常0.012インチ以上とされ、0.014インチ(0.356mm)以上であることが好ましく、好適な一例を示せば0.014インチである。
後端側大径部25のコイル外径(D25)が0.012インチ以上であり、かつ、先端側小径部21、中径部23、後端側大径部25とコイル外径が段階的に変化していることにより、そのようなコイルスプリング20を備えた本実施形態のガイドワイヤは、曲げ剛性が高く、押し込み性にも優れたものとなる。
コイルスプリング20において、中径部23のコイル外径に対する先端側小径部21のコイル外径の比(D21/D23)が0.5〜0.9であって、第1テーパ部22の長さ(L22)が0.5〜10mmであることが好ましい。
コイル外径の比(D21/D23)が0.5未満である場合、および/または、第1テーパ部22の長さが0.5mm未満である場合には、ガイドワイヤの曲げ剛性が低下して第1テーパ部22の近傍でキンクしたり、押し込み性が損なわれたりするおそれがある。
一方、この比(D21/D23)が0.9を超える場合、および/または、第1テーパ部22の長さが10mmを超える場合には、先端側小径部21の小径化を十分に図ることができないおそれがある。
コイル外径の比(D21/D23)の好適な一例を示せば0.78(0.0078インチ/0.010インチ)である。
また、コイルスプリング20において、中径部23のコイル外径に対する後端側大径部25のコイル外径の比(D25/D23)が1.1〜2.3であって、第2テーパ部24の長さ(L24)の長さが0.5〜10mmであることが好ましい。
中径部23のコイル外径に対する後端側大径部25のコイル外径の比(D25/D23)が2.3を超える場合、および/または、第2テーパ部24の長さが0.5mm未満である場合には、ガイドワイヤの曲げ剛性が低下して第2テーパ部24の近傍でキンクしたり、押し込み性が損なわれたりするおそれがある。
一方、この比(D21/D23)が1.1未満である場合、および/または、第2テーパ部24の長さが10mmを超える場合には、中径部23および先端側小径部21の小径化を十分に図ることができないおそれがある。
コイル外径の比(D25/D23)の好適な一例を示せば1.4(0.014インチ/0.010インチ)である。
本実施形態のガイドワイヤは、コイルスプリング20の先端側小径部21の先端部分、第2テーパ部24の後端部分、および後端側大径部25の後端部分のそれぞれが、はんだにより、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に固着されている。
図1および図3(A)に示すように、コイルスプリング20の先端部である先端側小径部21の先端部分は、Au−Sn系はんだ31により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Au−Sn系はんだ31が、コイルスプリング20の先端部(先端側小径部21の先端部分)の内部に浸透し、コアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、コイルスプリング20の先端部がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
図3(A)に示すように、Au−Sn系はんだ31は、コイルスプリング20の3ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透している。
また、コイルスプリング20の先端部においてコイルスプリング20の内部に浸透しなかったAu−Sn系はんだ31によって、略半球状の先端チップが形成されている。
これにより、本実施形態のガイドワイヤの先端部には、Au−Sn系はんだ31による先端硬直部分〔コイル内部に浸透したAu−Sn系31はんだにより自由に曲げることができなくなったコイルスプリング20(先端側小径部21)の先端部分と、Au−Sn系はんだ31により形成された先端チップとによる硬直部分〕が形成される。
この先端硬直部分の長さ(ガイドワイヤの先端から、コイル内部に浸透したAu−Sn系はんだ31の後端まで長さ)(L4 )は0.1〜0.5mmとされ、好ましくは0.3〜0.4mmである。
先端硬直部分の長さが0.1mm以上であることにより、コイルスプリング20のコアワイヤ10に対する固着力を十分に確保することができる。
また、先端硬直部分の長さが0.5mm以下であることにより、シェイピング長さ(後述する外側長さ(L52))を0.7mm以下とすることができる。
本実施形態のガイドワイヤにおいて、先端硬直部分の長さを0.1〜0.5mmとするために、Au−Sn系はんだが、コイルスプリングの1〜4ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透していることが好ましい。
本実施形態のガイドワイヤで使用するAu−Sn系はんだは、例えば、Au75〜80質量%と、Sn25〜20質量%との合金からなる。
ステンレスと、白金(合金)とをAu−Sn系はんだを使用して固着することにより、通常使用されているAg−Sn系はんだによって固着する場合と比較して2.5倍程度の固着力(引張強度)が得られる。
このため、先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmと短い場合(はんだの浸透範囲がコイルピッチの1〜3倍である場合)であっても、コアワイヤ10に対するコイルスプリング20の固着強度を十分高くすることができ、具体的には、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の引張破断強度より高くすることができる。このため、コイルスプリング20と、コアワイヤ10との間に引張力を作用しても、コアワイヤ10が引き抜かれるようなことを防止することができる。
また、Au−Sn系はんだは、Ag−Sn系はんだよりも造影性に優れている。
更に、Au−Sn系はんだは、Ag−Sn系はんだよりも血液および体液に対する耐蝕性にも優れている。
なお、Au−Sn系はんだに代えて、他の金含有はんだを使用することによっても、Au−Sn系はんだを使用した場合と同様の効果を奏することができる。
Au−Sn系はんだ以外の金含有はんだとしては、Au−Ge系はんだ、Au−Si系はんだ、Au−In系はんだ、Au−Sb系はんだなどのAu合金はんだおよびAuはんだを挙げることができる。
図1および図3(B)に示すように、コイルスプリング20の第1テーパ部22と中径部23との境界部分は、はんだによってコアワイヤ10に固着されていない。
これにより、先端側小径部21(先端部分を除く)から第2テーパ部24(後端部分を除く)に至る領域(コイルスプリングの先端領域)には、はんだによる硬直部分が存在しないので、当該領域おけるガイドワイヤの柔軟性を十分に確保することができる。
図1および図3(C)に示すように、コイルスプリング20の第2テーパ部24の後端部分は、Au−Sn系はんだ32により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Au−Sn系はんだ32が、第2テーパ部24の後端部分における内部に浸透し、コアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、第2テーパ部24の後端部分がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
図1および図3(D)に示すように、コイルスプリング20の後端部である後端側大径部25の後端部分は、Ag−Sn系はんだ33により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Ag−Sn系はんだ33が、コイルスプリング20の後端部(後端側大径部25の後端部分)の内部に浸透し、コアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、コイルスプリング20の後端部がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
コアワイヤ10の遠位端側小径部11において、コイルスプリング20の後端側大径部25が固着する部分の外径は、コイルスプリング20の先端側小径部21が固着する部分(遠位端)の外径より大きい(相対的に固着面積が大きい)ため、Au−Sn系はんだと比較して固着力の小さいAg−Sn系はんだを使用することができる。
図1〜図3に示すように、本実施形態のガイドワイヤは、コイルスプリング20の内部(はんだが浸透していない内部)に硬化樹脂40が充填されているとともに、この硬化樹脂40による樹脂層40Aにより、コイルスプリング20の外周および先端チップが被覆されている。
そして、この樹脂層40Aの表面には、親水性樹脂層50が積層形成されている。
コイルスプリング20の内部に硬化樹脂40が充填されていることにより、コアワイヤ10とコイルスプリング20との一体性(連動性)が格段に向上する。これにより、ガイドワイヤのトルク伝達性がさらに向上し、コアワイヤ10の近位端側大径部13から伝達される回転トルクが、遠位端側小径部11と一体化されたコイルスプリング20の遠位端まで確実に伝達される。
また、樹脂層40A(下塗層)を介して、コイルスプリング20の外周に親水性樹脂層50が形成されているので、この親水性樹脂層50は強固に固定され、親水性樹脂による潤滑性を安定的に発現させることができる。
ここに、コイルスプリング20の内部に充填されるとともに、コイルスプリング20の外周を被覆する樹脂層40Aを構成する硬化樹脂40としては、コイルスプリング20および親水性樹脂の両方に対して良好な接着性を有するものが好ましく、具体的には、ウレタンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂などの光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の硬化物などを例示することができる。
コイルスプリング20の外周および先端チップを被覆する樹脂層40Aの膜厚としては、例えば1〜100μmとされ、好ましくは3〜10μmとされる。
樹脂層40Aの表面に積層形成される親水性樹脂層50を構成する樹脂としては、医療用具分野で使用されているものをすべて使用することができる。
親水性樹脂層50の膜厚としては、例えば1〜30μmとされ、好ましくは3〜19μmとされる。
硬化樹脂40の充填および樹脂層40Aの形成方法、並びに親水性樹脂50の積層形成方法としては、例えば、コアワイヤ10に装着したコイルスプリング20を、硬化性樹脂に浸漬することにより、コイルスプリング20の内部に硬化性樹脂を充填するとともに、コイルスプリング20の表面に樹脂層を形成し、これを熱硬化または光硬化させることにより硬化樹脂40(樹脂層40A)とし、次いで、樹脂層40Aの表面に、適宜の手段により親水性樹脂を塗布する方法を挙げることができる。
本実施形態のガイドワイヤによれば、これを構成するコイルスプリング20が、コイル外径(D21)が0.008インチ以下である先端側小径部21を有しているので、従来のガイドワイヤでは挿通させることのできない孔径の小さな狭窄部位にも挿通させることができ、従来のガイドワイヤを用いたのでは行うことのできなかった狭い領域(例えば、CTO病変における孔径250μm以下のマイクロチャンネル)の治療が可能になる。
また、コイルスプリング20は、コイル外径(D25)が0.012インチ以上の後端側大径部を有するとともに、先端側小径部21、中径部23、後端側大径部25とコイル外径が段階的に変化している(コイル外径が急激に変化していない)ことにより、そのようなコイルスプリング20を備えた本実施形態のガイドワイヤは、曲げ剛性が高く、押し込み性およびトルク伝達性にも優れたものとなる。
また、コイルスプリング20において、中径部23のコイル外径に対する先端側小径部21のコイル外径の比(D21/D23)が0.5〜0.9であって、第1テーパ部22の長さ(L22)が0.5〜10mmであり、かつ、中径部23のコイル外径に対する後端側大径部25のコイル外径の比(D25/D23)が1.1〜2.3であって、第2テーパ部24の長さ(L24)の長さが0.5〜10mmであることにより、先端側小径部21の小径化(治療可能症例の拡大)と、曲げ剛性、押し込み性、トルク伝達性の向上効果とをバランスよく発現させることができる。
また、先端側小径部21、第1テーパ部22、中径部23および第2テーパ部24によって、コイルスプリング20の密巻部分201が構成されているので、コイルスプリング20の先端領域である密巻部分201において良好な造影性(視認性)を発現することができる。
また、ガイドワイヤの狭窄部位への挿入抵抗は、コイルスプリング20のコイル外径によって異なることから、オペレータは、本実施形態のガイドワイヤの狭窄部位への挿入長さを、コイル外径の変化に伴う挿入抵抗の変化(感触)に基づいて把握することができる。
また、コイルスプリング20の内部に硬化樹脂40が充填されているので、コアワイヤ10とコイルスプリング20との一体性(連動性)を向上させることができ、ガイドワイヤのトルク伝達性・操作性を更に向上させることができる。
また、硬化樹脂40による樹脂層40Aを介して、コイルスプリング20の外周に親水性樹脂層50が積層形成されているので、親水性樹脂による潤滑性を安定的に発現させることができる。
また、コイルスプリング20の先端部(先端側小径部21の先端部分)をコアワイヤ10に固着するためのはんだとしてAu−Sn系はんだが使用されているので、先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmと短いにも関わらず、コアワイヤ(遠位端側小径部11)に対するコイルスプリングの固着強度が十分に高く、コイルスプリング20とコアワイヤ10との間に引張力を作用しても、コアワイヤ10が引き抜かれるようなことはない。
そして、先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmと短いので、シェイピング長さを短くすることができ、この結果、マイクロチャンネル内での操作時において摩擦抵抗を十分に低減させることができる。また、従来のガイドワイヤを使用したのでは行うことのできなかった狭い領域における治療も可能になる。
図4(A)は、コイルスプリングの先端側小径部(コイル線径50μm、コイルピッチ75μm、コイル外径0.0078インチ)の2ピッチに相当する範囲にAu−Sn系はんだが浸透してなる本実施形態のガイドワイヤの先端部をシェイピングした状態を示している。このガイドワイヤの先端硬直部分の長さは0.25mmであり、シェイピング長さは、内側長さ(L51)が0.35mm、外側長さ(L52)が0.40mmである。
図4(B)は、コイルスプリングの先端部(コイル線径50μm、コイルピッチ75μm、コイル外径0.010インチ)の6ピッチに相当する範囲にAg−Sn系はんだが浸透してなるガイドワイヤの先端部をシェイピングした状態を示している。このガイドワイヤの先端硬直部分の長さは0.60mmであり、シェイピング長さは、内側長さ(L51)が0.70mm、外側長さ(L52)が0.75mmである。
本実施形態のガイドワイヤの曲げ癖角度(θ)は25°未満とされ、好ましくは10°未満とされる。
ここに、「曲げ癖角度(θ)」は下記のようにして測定される。すなわち、図5(1)に示すように、ガイドワイヤGの先端(具体的には先端チップを含む先端から2mm程度の部分)をチャックCで固定し、このガイドワイヤGの先端から約5mmの位置より、先端から14.5mmの位置まで(長さ≒9.5mm≒3.14×3mm)の部分を直径3mmのロッドRの外周に沿って1回巻き付けてから垂下し、その後端(下端)に150gのおもりWを装着して引張荷重を負荷する。10秒間経過後、おもりWを取外し、チャックCおよびロッドRから解放したガイドワイヤGについて、同図(2)に示すように、巻き付けによる先端部分の反り角度(巻き付け部位の前後の接線がなす角度)を曲げ癖角度(θ)とする。この曲げ癖角度(θ)が小さいほど永久変形が起こりにくいといえる。
曲げ癖角度(θ)が25°未満である本実施形態のガイドワイヤは、屈曲されても永久変形を生じにくく形状保持性に優れているので、冠状動脈系のような曲がりくねった血管内を通す際の操作性に優れている。
なお、このような優れた形状保持性(屈曲させたときの永久変形の起こりにくさ)は、コアワイヤ10の構成材料が有する高い引張強さ(2600〜3000MPa)が大きく寄与している。
本実施形態のガイドワイヤによれば、従来のガイドワイヤでは挿通させることのできなかった孔径の小さなマイクロチャンネルなどの狭窄部位にも挿通させることができる。
本実施形態のガイドワイヤは、曲げ剛性(耐キンク性)が高く、押し込み性にも優れ、良好なトルク伝達性を有している(手元の回転力が先端まで伝達されやすい)ので、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させやすく操作性に優れている。
また、本実施形態のガイドワイヤは、曲がりくねった血管内を通す際に屈曲されても、永久変形を生じにくく、形状保持性に優れている。
<第2実施形態>
図6に示すガイドワイヤは、コアワイヤ10とコイルスプリング20Bとを有する。
コアワイヤ10は、近位方向に拡径するようテーパ加工された遠位端側小径部11と、近位方向に拡径するテーパ部13と、近位端側大径部14とを有する。
遠位端側小径部11、テーパ部13および近位端側大径部14は、同一の線材(例えば、丸棒部材)により一体的に構成されている。
テーパ部13および近位端側大径部14の横断面は、略円形である。
遠位端側小径部11の近位端側における横断面は略円形であるが、遠位端側小径部11の遠位端側は、線材が圧縮されて板状となっていてもよく、その場合の横断面は略矩形となる。
コアワイヤ10は、引張強さが2600〜3000MPaである高強度のオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304、SUS316)から構成されている。
引張強さが2600〜3000MPaである高強度のオーステナイト系ステンレス鋼は、弾性限度も高いため、これをコアワイヤとする本実施形態のガイドワイヤにおいて、屈曲による永久変形を生じさせにくい。
また、コアワイヤ10の外周面には、撥水性樹脂層が形成されている。
撥水性樹脂層を構成する樹脂としては、医療用として用いられる樹脂であって、撥水性を有するものをすべて用いることができ、好適な樹脂としてPTFEなどのフッ素系樹脂を挙げることができる。
図7に示すように、ガイドワイヤ1の全長(L1 )は、例えば1500〜3000mmとされ、好適な一例を示せば1780mmである。
また、近位端側大径部14の外径(D1 )は、通常0.012インチ(0.305mm)以下とされ、好ましくは0.010インチ(0.254mm)以下、更に好ましくは0.006〜0.010インチとされ、好適な一例を示せば0.010インチである。
近位端側大径部14の外径(D1 )が0.012インチ以下であることにより、本発明のガイドワイヤとともに使用するカテーテルなどの医療器具の小型化、延いては、低侵襲化に寄与することができる。
遠位端側小径部11の最大外径としては、コイルスプリング20Bの内径より小さければ特に限定されるものではないが、近位端側大径部14の外径(D1 )の1/5〜3/5程度とされる。
ガイドワイヤ1を構成するコイルスプリング20Bは、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に軸方向に沿って装着されている。
コイルスプリング20Bは、1本の線材から構成され、コイルピッチがコイル線径の1.0〜1.8倍である先端側密巻部21Bと、コイルピッチがコイル線径の1.8倍を超える後端側疎巻部22Bとからなり、先端側密巻部21Bおよび後述する先端チップにより、X線不透過領域が構成されている。
先端側密巻部21Bにおけるコイルピッチは、コイル線径の1.0〜1.8倍とされ、好適な一例を示せば1.0倍である。
後端側疎巻部22Bにおけるコイルピッチは、コイル線径の1.8〜2.5倍とされ、好適な一例を示せば2.0倍である。
このように、先端側と後端側とにおいてコイルピッチを変化させることにより、先端側密巻部21Bにおいて良好な造影性(視認性)を発現させることができる。
コイルスプリング全域にわたり同一のピッチとする場合には、X線不透過領域が長くなるために視認性の低下を招く。
図7において、コイルスプリング20Bの長さ(L2 )は、例えば30〜800mmとされ、好適な一例を示せば115mmである。
先端側密巻部21Bの長さ(L21)は、例えば10〜50mmとされ、好適な一例を示せば30mmである。
後端側疎巻部22Bの長さ(L22)は、例えば20〜750mmとされ、好適な一例を示せば85mmである。
ガイドワイヤ1の先端からコイルスプリング20Bの後端までの長さ(L3 +L2 )は、例えば30〜800mmとされ、好適な一例を示せば115.2mmである。
ガイドワイヤ1の先端から先端側密巻部21Bの後端までの長さ(L3 +L21)は、例えば10〜50mmとされ、好適な一例を示せば30.2mmである。
コイルスプリング20Bのコイル外径(D2 )は、通常0.012インチ(0.305mm)以下とされ、好ましくは0.010インチ(0.254mm)以下、更に好ましくは0.006〜0.010インチとされ、好適な一例を示せば0.010インチである。
コアワイヤ10の近位端側大径部14の外径(D1 )が0.012インチ以下であるとともに、コイルスプリング20Bのコイル外径(D2 )も0.012インチ以下であることにより、マイクロチャンネルにアクセスする際の操作性(例えば、マイクロチャンネルでの潤滑性)に優れたものとなる。
コイルスプリング20Bを構成する線材の外径は、特に限定されないが、好ましくは30〜90μm、好適な一例を示せば60μmである。
コイルスプリング20Bの材質としては、白金、白金合金(たとえばPt/W=92/8)、金、金−銅合金、タングステン、タンタルなどのX線に対する造影性が良好な材質(X線不透過物質)を挙げることができる。
本実施形態のガイドワイヤは、コイルスプリング20Bの先端部、後端部および中間部(先端側密巻部21Bと後端側疎巻部22Bとの境界部分)のそれぞれが、はんだにより、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に固着されている。
図6および図8(A)に示すように、コイルスプリング20Bの先端部は、Au−Sn系はんだ31により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Au−Sn系はんだ31がコイルスプリング20Bの内部に浸透し、このAu−Sn系はんだ31がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、コイルスプリング20Bの先端部がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
図8(A)に示すように、Au−Sn系はんだ31は、コイルスプリング20Bの2ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透している。
また、コイルスプリング20Bの先端部においてコイルスプリング20Bの内部に浸透しなかったAu−Sn系はんだ31によって、略半球状の先端チップが形成されている。
これにより、本実施形態のガイドワイヤ1の先端部には、Au−Sn系はんだ31による先端硬直部分(コイル内部に浸透したAu−Sn系31はんだにより自由に曲げることができなくなったコイルスプリング20Bの先端部分と、Au−Sn系はんだ31により形成された先端チップとによる硬直部分)が形成される。
この先端硬直部分の長さ(ガイドワイヤ1の先端から、コイル内部に浸透したAu−Sn系はんだ31の後端まで長さ)(L4 )は、0.3〜0.4mm程度である。
本発明のガイドワイヤにおいて、先端硬直部分の長さは0.1〜0.5mmとされる。 先端硬直部分の長さが0.1mm未満である場合には、コアワイヤに対するコイルスプリングの固着力を十分に確保することができない。
一方、先端硬直部分の長さが0.5mmを超える場合にはシェイピング長さ(後述する外側長さ(L52))を0.7mm以下とすることができない。
本発明のガイドワイヤにおいて、先端硬直部分の長さを0.1〜0.5mmとするために、コイルスプリングの先端部におけるコイルピッチが、コイル線径の1.0〜1.8倍であり、かつ、Au−Sn系はんだが、コイルスプリングの1〜3ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透していることが好ましい。
本発明の医療用ガイドワイヤは、コイルスプリングの先端部をコアワイヤに固着させるためのはんだとして、Au−Sn系はんだを使用している点に特徴を有する。
本発明で使用するAu−Sn系はんだは、例えば、Au75〜80質量%と、Sn25〜20質量%との合金からなる。
ステンレスと、白金(合金)とをAu−Sn系はんだを使用して固着することにより、Ag−Sn系はんだによって固着する場合と比較して2.5倍程度の固着力(引張強度)が得られる。
このため、先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmと短い場合(はんだの浸透範囲がコイルピッチの1〜3倍である場合)であっても、コアワイヤ10に対するコイルスプリング20Bの固着強度を十分高くすることができ、具体的には、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の引張破断強度より高くすることができる。このため、コイルスプリング20Bと、コアワイヤ10との間に引張力を作用しても、コアワイヤ10が引き抜かれるようなことを防止することができる。
また、Au−Sn系はんだは、Ag−Sn系はんだよりも造影性に優れている。
更に、Au−Sn系はんだは、Ag−Sn系はんだよりも血液および体液に対する耐蝕性にも優れている。
図6および図8(B)に示すように、コイルスプリング20Bの先端側密巻部21Bと後端側疎巻部22Bとの境界領域を含む中間部は、Au−Sn系はんだ32により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Au−Sn系はんだ32が、コイルスプリング20Bの内部に浸透され、このAu−Sn系はんだ32がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、コイルスプリング20Bの中間部がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
先端側密巻部21Bと後端側疎巻部22Bとの境界領域は応力集中が起こりやすく、この境界領域を含む中間部を、固着力の大きいAu−Sn系はんだにより固着することにより、コイルスプリング20Bの固着強度を更に向上させることができる。
図6および図8(C)に示すように、コイルスプリング20Bの後端部は、Ag−Sn系はんだ33により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Ag−Sn系はんだ33が、コイルスプリング20Bの内部に浸透され、このAg−Sn系はんだ33がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、コイルスプリング20Bの後端部がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
コアワイヤ10の遠位端側小径部11において、コイルスプリング20Bの後端部が固着する部分の外径は、コイルスプリング20Bの先端部が固着する部分(遠位端)の外径より大きい(相対的に固着面積が大きい)ため、Au−Sn系はんだと比較して固着力の小さいAg−Sn系はんだを使用することができる。
図6〜図8に示すように、本実施形態のガイドワイヤ1は、コイルスプリング20Bの内部に硬化樹脂40が充填されているとともに、この硬化樹脂40による樹脂層40Aにより、コイルスプリング20Bの外周および先端チップが被覆されている。
そして、この樹脂層40Aの表面には、親水性樹脂層50が積層形成されている。
コイルスプリング20Bの内部に硬化樹脂40が充填されていることにより、コアワイヤ10とコイルスプリング20Bとが一体化され、ガイドワイヤのトルク伝達性が格段に向上し、コアワイヤ10の近位端側大径部14から伝達される回転トルクが、遠位端側小径部11と一体化されたコイルスプリング20Bの遠位端まで確実に伝達される。
また、樹脂層40A(下塗層)を介して、コイルスプリング20Bの外周に親水性樹脂層50が形成されているので、この親水性樹脂層50は強固に固定され、親水性樹脂による潤滑性を安定的に発現させることができる。
ここに、コイルスプリング20Bの内部に充填されるとともに、コイルスプリング20Bの外周を被覆する樹脂層40Aを構成する硬化樹脂40としては、コイルスプリング20Bおよび親水性樹脂の両方に対して良好な接着性を有するものが好ましく、具体的には、ウレタンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂などの光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の硬化物などを例示することができる。
コイルスプリング20Bの外周および先端チップを被覆する樹脂層40Aの膜厚としては、例えば1〜100μmとされ、好ましくは3〜10μmとされる。
樹脂層40Aの表面に積層形成される親水性樹脂層を構成する樹脂としては、医療用具分野で使用されているものをすべて使用することができる。
親水性樹脂層50の膜厚としては、例えば1〜30μmとされ、好ましくは3〜19μmとされる。
硬化樹脂40の充填および樹脂層40Aの形成方法、並びに親水性樹脂50の積層形成方法としては、例えば、コアワイヤ10に装着したコイルスプリング20Bを、硬化性樹脂に浸漬することにより、コイルスプリング20Bの内部に硬化性樹脂を充填するとともに、コイルスプリング20Bの表面に樹脂層を形成し、これを熱硬化または光硬化させることにより硬化樹脂40(樹脂層40A)とし、次いで、樹脂層40Aの表面に、適宜の手段により親水性樹脂を塗布する方法を挙げることができる。
本実施形態のガイドワイヤ1によれば、コイルスプリング20Bの先端部をコアワイヤ10に固着するためのはんだとしてAu−Sn系はんだが使用されているので、コアワイヤ10の近位端側大径部14の外径が0.012インチ以下と細くて、先端硬直部分の長さが0.3〜0.4mmと短いにも関わらず、コアワイヤ(遠位端側小径部11)に対するコイルスプリングの固着強度が十分に高く、コイルスプリング20Bとコアワイヤ10との間に引張力を作用しても、コアワイヤ10が引き抜かれるようなことはない。
そして、先端硬直部分の長さが0.3〜0.4mmと短いので、シェイピング長さを短くすることができ、この結果、マイクロチャンネル内での操作時において摩擦抵抗を十分に低減させることができる。また、従来のガイドワイヤを使用したのでは行うことのできなかった狭い領域における治療も可能になる。
また、コイルスプリング20Bの内部に硬化樹脂40が充填されているので、コアワイヤ10とコイルスプリング20Bとを一体化させることができ、ガイドワイヤ1のトルク伝達性・操作性を格段に向上させることができる。
また、硬化樹脂40による樹脂層40Aを介して、コイルスプリング20Bの外周に親水性樹脂層50が積層形成されているので、親水性樹脂による潤滑性を安定的に発現させることができる。
また、コイルスプリング20Bが先端側密巻部21Bと後端側疎巻部22Bとからなるので、先端側密巻部21Bにおいて良好な造影性(視認性)を発現させることができる。
本実施形態のガイドワイヤの曲げ癖角度(θ)は25°未満とされ、好ましくは10°未満とされる。
曲げ癖角度(θ)が25°未満である本実施形態のガイドワイヤは、屈曲されても永久変形を生じにくく形状保持性に優れているので、冠状動脈系のような曲がりくねった血管内を通す際の操作性に優れている。
本実施形態のガイドワイヤは、曲げ剛性(耐キンク性)が高く、押し込み性にも優れ、良好なトルク伝達性を有しているので、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させやすく操作性に優れている。また、本実施形態のガイドワイヤは、曲がりくねった血管内を通す際に屈曲されても、永久変形を生じにくく、形状保持性に優れている。
<第3実施形態>
図9に示すガイドワイヤは、コアワイヤ10とコイルスプリング20Cとを有する。
コアワイヤ10は、近位方向に拡径するようテーパ加工された遠位端側小径部11と、近位方向に拡径するテーパ部13と、近位端側大径部14とを有する。
遠位端側小径部11、テーパ部13および近位端側大径部14は、同一の線材(例えば、丸棒部材)により一体的に構成されている。
テーパ部13および近位端側大径部14の横断面は、略円形である。
遠位端側小径部11の近位端側における横断面は略円形であるが、遠位端側小径部11の遠位端側は、線材が圧縮されて板状となっていてもよく、その場合の横断面は略矩形となる。
コアワイヤ10は、引張強さが2600〜3000MPaである高強度のオーステナイト系ステンレス鋼(例えばSUS304、SUS316)から構成されている。
引張強さが2600〜3000MPaである高強度のオーステナイト系ステンレス鋼は、弾性限度も高いため、これをコアワイヤとする本実施形態のガイドワイヤにおいて、屈曲による永久変形を生じさせにくい。
また、コアワイヤ10の外周面には、図示しない撥水性樹脂層が形成されている。
撥水性樹脂層を構成する樹脂としては、医療用として用いられる樹脂であって、撥水性を有するものをすべて用いることができ、好適な樹脂としてPTFEなどのフッ素系樹脂を挙げることができる。
図10に示すように、ガイドワイヤの全長(L1 )は、例えば1500〜3000mmとされ、好適な一例を示せば1780mmである。
コアワイヤ10の近位端側大径部14の外径(D1 )は、0.014インチ(0.356mm)以上であることが好ましく、好適な一例を示せば0.014インチである。
遠位端側小径部11の最大外径としては、コイルスプリング20Cの内径より小さければ特に限定されるものではないが、近位端側大径部14の外径(D1 )の1/5〜3/5程度であることが好ましい。
ガイドワイヤを構成するコイルスプリング20Cは、1本の線材から構成され、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に軸方向に沿って装着されている。
コイルスプリング20Cは、先端側小径部21Cと、テーパ部22Cと、後端側大径部23Cとからなる。
本実施形態において、先端側小径部21Cおよびテーパ部22Cは、先端側密巻部分201から形成され、後端側大径部23Cは後端側疎巻部分202から形成されている。そして、先端側密巻部分201(先端側小径部21Cおよびテーパ部22C)および後述する先端チップにより、X線不透過領域が構成されている。
先端側密巻部分201におけるコイルピッチは、コイル線径の1.0〜1.8倍とされ、好適な一例を示せば1.3倍である。
後端側疎巻部分202におけるコイルピッチは、コイル線径の1.8〜3.0倍とされ、好適な一例を示せば3.0倍である。
このように、先端側と後端側とにおいてコイルピッチを変化させることにより、先端側密巻部分201において良好な造影性(視認性)を発現させることができる。
コイルスプリング全域にわたり同一のピッチとする場合には、X線不透過領域が長くなるために視認性の低下を招く。
図10において、コイルスプリング20Cの長さ(L2 )は、例えば30〜800mmとされ、好ましくは100〜200mm、好適な一例を示せば165mmである。
先端側小径部21Cの長さ(L21)は5〜100mmとされ、好ましくは10〜70mm、好適な一例を示せば38.5mmである。
先端側小径部21Cの長さ(L21)が5mm以上であることにより、殆どのマイクロチャンネルに対して、先端側小径部21Cを挿通させることができる。
先端側小径部21Cの長さ(L21)が100mm以下であることにより、曲げ剛性やトルク伝達性の向上に寄与する後端側大径部23Cの長さを十分に確保することができる。
テーパ部22Cの長さ(L22)は、例えば0.5〜10mmとされ、好適な一例を示せば1.5mmである。
後端側大径部23Cの長さ(L23)は、例えば85〜154.5mmとされ、好適な一例を示せば125mmである。
ガイドワイヤの先端からコイルスプリング20Cの後端までの長さ(L3 +L2 )は、例えば30〜800mmとされ、好適な一例を示せば165.2mmである。
ガイドワイヤの先端からテーパ部22Cの後端までの長さ(L3 +L21+L22)は、例えば10〜50mmとされ、好適な一例を示せば40.2mmである。
コイルスプリング20Cの先端側小径部21Cにおけるコイル外径(D21)は、通常0.012インチ(0.305mm)以下とされ、好ましくは0.010インチ(0.254mm)以下、更に好ましくは0.006〜0.010インチとされ、好適な一例を示せば0.010インチである。
先端側小径部21Cのコイル外径(D21)が0.012インチ以下であることにより、マイクロチャンネルにアクセスする際の操作性(例えば、マイクロチャンネルでの潤滑性)に優れたものとなる。
コイルスプリング20Cの後端側大径部23Cにおけるコイル外径(D23)は、0.014インチ(0.356mm)以上であることが好ましく、好適な一例を示せば0.014インチである。
後端側大径部23Cのコイル外径(D23)が0.014インチ以上であることにより、ガイドワイヤに十分な曲げ剛性(挿入時の押込伝達性・挿入後におけるデバイスのデリバリー性能)が付与され、また、このガイドワイヤ(本実施形態のガイドワイヤ)はトルク伝達性にも優れたものとなる。
後端側大径部23Cと先端側小径部21Cとのコイル外径の比率(D23/D21)としては、1.1〜2.3であることが好ましく、好適な一例を示せば1.4である。
コイルスプリング20Cを構成する線材の外径は、特に限定されないが、好ましくは30〜90μm、好適な一例を示せば60μmである。
コイルスプリング20Cの材質としては、白金、白金合金(たとえばPt/W=92/8)、金、金−銅合金、タングステン、タンタルなどのX線に対する造影性が良好な材質(X線不透過物質)を挙げることができる。
本実施形態のガイドワイヤは、コイルスプリング20Cの先端側小径部21C、テーパ部22Cおよび後端側大径部23Cのそれぞれが、はんだにより、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の外周に固着されている。
図9および図11(A)に示すように、コイルスプリング20Cの先端部である先端側小径部21Cの先端部分は、Au−Sn系はんだ31により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Au−Sn系はんだ31が、コイルスプリング20Cの先端部(先端側小径部21Cの先端部分)の内部に浸透し、コアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、コイルスプリング20Cの先端部がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
図11(A)に示すように、Au−Sn系はんだ31は、コイルスプリング20Cのほぼ2ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透している。
また、コイルスプリング20Cの先端部においてコイルスプリング20Cの内部に浸透しなかったAu−Sn系はんだ31によって、略半球状の先端チップが形成されている。
これにより、本実施形態のガイドワイヤの先端部には、Au−Sn系はんだ31による先端硬直部分〔コイル内部に浸透したAu−Sn系31はんだにより自由に曲げることができなくなったコイルスプリング20C(先端側小径部21C)の先端部分と、Au−Sn系はんだ31により形成された先端チップとによる硬直部分〕が形成される。
この先端硬直部分の長さ(ガイドワイヤの先端から、コイル内部に浸透したAu−Sn系はんだ31の後端まで長さ)(L4 )は、0.3〜0.4mm程度である。
本発明のガイドワイヤにおいて、先端硬直部分の長さは0.1〜0.5mmとされる。 先端硬直部分の長さが0.1mm未満である場合には、コアワイヤに対するコイルスプリングの固着力を十分に確保することができない。
一方、先端硬直部分の長さが0.5mmを超える場合にはシェイピング長さ(後述する外側長さ(L52))を0.7mm以下とすることができない。
本発明のガイドワイヤにおいて、先端硬直部分の長さを0.1〜0.5mmとするために、コイルスプリングの先端側小径部21Cにおけるコイルピッチが、コイル線径の1.0〜1.8倍であり、かつ、Au−Sn系はんだが、コイルスプリングの1〜3ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透していることが好ましい。
本発明の医療用ガイドワイヤは、コイルスプリングの先端側小径部をコアワイヤに固着させるためのはんだとして、Au−Sn系はんだを使用している点に特徴を有する。
本発明で使用するAu−Sn系はんだは、例えば、Au75〜80質量%と、Sn25〜20質量%との合金からなる。
ステンレスと、白金(合金)とをAu−Sn系はんだを使用して固着することにより、Ag−Sn系はんだによって固着する場合と比較して2.5倍程度の固着力(引張強度)が得られる。
このため、先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmと短い場合(はんだの浸透範囲がコイルピッチの1〜3倍である場合)であっても、コアワイヤ10に対するコイルスプリング20Cの固着強度を十分高くすることができ、具体的には、コアワイヤ10の遠位端側小径部11の引張破断強度より高くすることができる。このため、コイルスプリング20Cと、コアワイヤ10との間に引張力を作用しても、コアワイヤ10が引き抜かれるようなことを防止することができる。
また、Au−Sn系はんだは、Ag−Sn系はんだよりも造影性に優れている。
更に、Au−Sn系はんだは、Ag−Sn系はんだよりも血液および体液に対する耐蝕性にも優れている。
図9および図11(B)に示すように、コイルスプリング20Cのテーパ部22Cの後端部分は、Au−Sn系はんだ32により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Au−Sn系はんだ32が、テーパ部22Cの後端部分における内部に浸透し、コアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、テーパ部22Cの後端部分がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
図9および図11(C)に示すように、コイルスプリング20Cの後端部である後端側大径部23Cの後端部分は、Ag−Sn系はんだ33により、コアワイヤ10に固着されている。
すなわち、Ag−Sn系はんだ33が、コイルスプリング20Cの後端部(後端側大径部23Cの後端部分)の内部に浸透し、コアワイヤ10(遠位端側小径部11)の外周と接触することにより、コイルスプリング20Cの後端部がコアワイヤ10(遠位端側小径部11)に固着されている。
コアワイヤ10の遠位端側小径部11において、コイルスプリング20Cの後端側大径部23Cが固着する部分の外径は、コイルスプリング20Cの先端側小径部21Cが固着する部分(遠位端)の外径より大きい(相対的に固着面積が大きい)ため、Au−Sn系はんだと比較して固着力の小さいAg−Sn系はんだを使用することができる。
図9〜図11に示すように、本実施形態のガイドワイヤは、コイルスプリング20Cの内部(はんだが浸透していない内部)に硬化樹脂40が充填されているとともに、この硬化樹脂40による樹脂層40Aにより、コイルスプリング20Cの外周および先端チップが被覆されている。
そして、この樹脂層40Aの表面には、親水性樹脂層50が積層形成されている。
コイルスプリング20Cの内部に硬化樹脂40が充填されていることにより、コアワイヤ10とコイルスプリング20Cとの一体性(連動性)が格段に向上する。これにより、ガイドワイヤのトルク伝達性がさらに向上し、コアワイヤ10の近位端側大径部14から伝達される回転トルクが、遠位端側小径部11と一体化されたコイルスプリング20Cの遠位端まで確実に伝達される。
また、樹脂層40A(下塗層)を介して、コイルスプリング20Cの外周に親水性樹脂層50が形成されているので、この親水性樹脂層50は強固に固定され、親水性樹脂による潤滑性を安定的に発現させることができる。
ここに、コイルスプリング20Cの内部に充填されるとともに、コイルスプリング20Cの外周を被覆する樹脂層40Aを構成する硬化樹脂40としては、コイルスプリング20Cおよび親水性樹脂の両方に対して良好な接着性を有するものが好ましく、具体的には、ウレタンアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂などの光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂の硬化物などを例示することができる。
コイルスプリング20Cの外周および先端チップを被覆する樹脂層40Aの膜厚としては、例えば1〜100μmとされ、好ましくは3〜10μmとされる。
樹脂層40Aの表面に積層形成される親水性樹脂層50を構成する樹脂としては、医療用具分野で使用されているものをすべて使用することができる。
親水性樹脂層50の膜厚としては、例えば1〜30μmとされ、好ましくは3〜19μmとされる。
硬化樹脂40の充填および樹脂層40Aの形成方法、並びに親水性樹脂50の積層形成方法としては、例えば、コアワイヤ10に装着したコイルスプリング20Cを、硬化性樹脂に浸漬することにより、コイルスプリング20Cの内部に硬化性樹脂を充填するとともに、コイルスプリング20Cの表面に樹脂層を形成し、これを熱硬化または光硬化させることにより硬化樹脂40(樹脂層40A)とし、次いで、樹脂層40Aの表面に、適宜の手段により親水性樹脂を塗布する方法を挙げることができる。
コイルスプリング20Cのテーパ部22Cの外周が樹脂(樹脂層40Aおよび親水性樹脂層50)で被覆されることにより、ガイドワイヤの形状としてのテーパが形成される。
ここに、このテーパの始点は、テーパ部22Cの先端よりも遠位端側(図10のT1 で示す位置)にあり、そのテーパの終点は、テーパ部22Cの後端よりも近位端側(図10のT2 で示す位置)にある。すなわち、ガイドワイヤの形状としてのテーパは、そのテーパ角度が、テーパ部22Cのテーパ角度よりも小さく、そのテーパ長さ(L5 )が、テーパ部22Cの長さ(L22)よりも長くなっている。
このように、テーパ部22Cを樹脂で被覆することで、ガイドワイヤとしてのテーパ形状を、テーパ部22Cのテーパよりもなだらかにすることにより、ガイドワイヤの挿入操作を更にスムーズに行うことができる。
図10において、テーパ部22Cの長さ(L22)が、例えば1.5mm程度である場合に、ガイドワイヤのテーパの長さ(L5 )を5〜6mm程度にすることが好ましい。
本実施形態のガイドワイヤによれば、コイルスプリング20Cの先端部(先端側小径部21Cの先端部分)をコアワイヤ10に固着するためのはんだとしてAu−Sn系はんだが使用されているので、先端硬直部分の長さが0.3〜0.4mmと短いにも関わらず、コアワイヤ(遠位端側小径部11)に対するコイルスプリングの固着強度が十分に高く、コイルスプリング20Cとコアワイヤ10との間に引張力を作用しても、コアワイヤ10が引き抜かれるようなことはない。
そして、先端硬直部分の長さが0.3〜0.4mmと短いので、シェイピング長さを短くすることができ、この結果、マイクロチャンネル内での操作時において摩擦抵抗を十分に低減させることができる。また、従来のガイドワイヤを使用したのでは行うことのできなかった狭い領域における治療も可能になる。
また、コイルスプリング20Cの先端側小径部21Cのコイル外径(D21)が0.012インチ以下と細径であることにより、マイクロチャンネルにアクセスする際の操作性(例えば、マイクロチャンネルでの潤滑性)に優れたものとなる。
しかも、コアワイヤ10の近位端側大径部14の外径(D1 )および後端側大径部23Cのコイル外径(D23)が、何れも0.014インチ以上であることにより、ガイドワイヤに十分な曲げ剛性(挿入時の押込伝達性・挿入後におけるデバイスのデリバリー性能)が付与され、このガイドワイヤ(本実施形態のガイドワイヤ)はトルク伝達性にも優れたものとなる。
また、コイルスプリング20Cの内部に硬化樹脂40が充填されているので、コアワイヤ10とコイルスプリング20Cとの一体性(連動性)を向上させることができ、ガイドワイヤのトルク伝達性・操作性を更に向上させることができる。
また、硬化樹脂40による樹脂層40Aを介して、コイルスプリング20Cの外周に親水性樹脂層50が積層形成されているので、親水性樹脂による潤滑性を安定的に発現させることができる。
また、コイルスプリング20Cが、先端側小径部21Cおよびテーパ部22Cを構成する先端側密巻部分201と、後端側大径部23Cを構成する後端側疎巻部分202とからなるので、先端側密巻部分201により構成される先端側小径部21Cおよびテーパ部22Cにおいて良好な造影性(視認性)を発現させることができる。
本実施形態のガイドワイヤの曲げ癖角度(θ)は25°未満とされ、好ましくは10°未満とされる。
曲げ癖角度(θ)が25°未満である本実施形態のガイドワイヤは、屈曲されても永久変形を生じにくく形状保持性に優れているので、冠状動脈系のような曲がりくねった血管内を通す際の操作性に優れている。
本実施形態のガイドワイヤは、曲げ剛性(耐キンク性)が高く、押し込み性にも優れ、良好なトルク伝達性を有しているので、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させやすく操作性に優れている。また、本実施形態のガイドワイヤは、曲がりくねった血管内を通す際に屈曲されても、永久変形を生じにくく、形状保持性に優れている。
<実施例1>
300〜500℃で0.5〜4時間の時効処理が施されて2800MPaの引張強さを有するオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)から構成され、下記の形状(寸法)を有するコアワイヤ10(PTFEで被覆したコアワイヤ)の遠位端側小径部11にコイルスプリング20を装着して、図1〜図3に示したような構造の本発明のガイドワイヤを6個作製した。
(1)近位端側大径部14:
・外径:0.014インチ(0.356mm)
・長さ:1665mm
(2)テーパ部13:
・最大外径:0.014インチ
・最小外径:0.008インチ
・長さ:70mm
(3)遠位端側小径部11:
・連続的なテーパ形状
・最大外径:0.008インチ
・最小外径:0.0017インチ
・長さ:165mm
ここに、コイルスプリング20として、外径(コイル線径)が50μmの白金線材から構成され、先端側小径部21のコイル外径(D21)が0.0078インチ、長さ(L21)が8.5mm、第1テーパ部22の長さ(L22)が1.5mm、中径部23のコイル外径(D23)が0.010インチ、長さ(L23)が28.5mm、第2テーパ部24の長さ(L24)が1.5mm、後端側大径部25のコイル外径(D25)が0.014インチ、長さ(L25)が125mmであって、先端側小径部21と第1テーパ部22と中径部23と第2テーパ部24とにより構成される密巻部分201のコイルピッチが75μm(コイル線径の1.5倍、コイルの離間距離は25μm)、後端側大径部25により構成される粗巻部分202のコイルピッチが150μm(コイル線径の3倍、コイルの離間距離は100μm)のものを使用した。
なお、コイルスプリング20の先端側小径部21の先端部分および第2テーパ部の後端部分は、Au−Sn系はんだを使用してコアワイヤ10に固着し、後端側大径部25の後端部分は、Ag−Sn系はんだ使用してコアワイヤ10に固着した。
6個のガイドワイヤの各々において、コイル内部にはんだが浸透した領域(長さ)に相当するコイルのピッチ数(表1では「ピッチ数」と略記する。)は1〜4の何れかになるようにした。これによる先端硬直部分の長さは表1に示すとおりである。
また、コイルスプリングをコアワイヤに装着後、コイルスプリングの内部に硬化樹脂(ウレタンアクリレート樹脂)を充填するとともに、コイルスプリングの外周に硬化樹脂による樹脂層を形成し、この樹脂層の表面にポリエチレンオキサイドからなる親水性樹脂層を積層形成した。
<比較例1>
コイルスプリングとして、外径が50μmの白金線材から構成され、コイル外径が0.0078インチ、長さが38.5mmの先端側小径部と、この先端側小径部に連続する長さ1.5mmのテーパ部と、このテーパ部に連続する、コイル外径が0.014インチ、長さが125mmの後端側大径部とからなり、先端側小径部とテーパ部とにより構成される密巻部分におけるコイルピッチが75μm、後端側大径部により構成される粗巻部分におけるコイルピッチが150μmのものを使用し、このコイルスプリングの先端側小径部の先端部分およびテーパ部の後端部分をAu−Sn系はんだを使用してコアワイヤに固着し、後端側大径部の後端部分をAg−Sn系はんだ使用してコアワイヤに固着したこと以外は実施例1と同様にして、先端側小径部とテーパ部と後端側大径部とからなるコイルスプリングがコアワイヤの遠位端側小径部に装着されてなる比較用のガイドワイヤを6個作製した。
<比較例2>
コアワイヤとして、2400MPaの引張強さを有するオーステナイト系のステンレス鋼(SUS304)から構成されたものを使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較用のガイドワイヤを6個作製した。
(2)ガイドワイヤの先端荷重:
実施例1および比較例1により得られたガイドワイヤの各々について、先端チップを電子天秤に当接させた状態で、先端から10mmの部分を撓ませたとき(撓み量:0.5mm)の最大荷重を測定した。この最大荷重(表1では「先端荷重」と記載する)が0.5〜1.0gfの範囲にあれば、ガイドワイヤの先端部分が良好な曲げ剛性と柔軟性とを兼ね備えたものであるといえる。結果を下記表1に示す。
(3)ガイドワイヤの最小シェイピング長さおよび固着性:
実施例1および比較例1により得られたガイドワイヤの各々について最小シェイピング長さ(折り曲げ可能な最小長さ)を測定した。
最小シェイピング長さの測定は、図4に示したような内側長さ(L51)および外側長さ(L52)について行った。
また、コイルスプリングとコアワイヤとの間に引張力を作用させ、破断部位を観察して固着性を評価した。評価基準は、コアワイヤの遠位端側小径部に破断が生じた場合を「○」、コイルスプリングまたは遠位端側小径部とはんだとの間で剥離が生じた場合を「×」とした。1つでも「×」がある場合には、製品とすることができない。結果を下記表1に併せて示す。

Figure 0005605949
(4)曲げ癖角度(θ):
実施例1および比較例2により得られたガイドワイヤの各々について、上述の方法により曲げ癖角度(θ)を測定したところ、比較例2に係るガイドワイヤ(6個)の曲げ癖角度(θ)は26〜30°であるのに対して、実施例1に係るガイドワイヤ(6個)の曲げ癖角度(θ)は7〜10°と何れも小さく、永久変形を生じにくい形状保持性の優れたものであった。
(5)トルク伝達性:
実施例1および比較例2により得られたガイドワイヤの各々を、図12に示す人の冠状動脈を模擬した治具の内部に挿入し、ガイドワイヤの近位端(手元側)を、モータにより所定の手元側角度720度で捻り回転させ、そのガイドワイヤの遠位端(先端)における先端回転角度(捻れ角)を調べた。結果を図13に示す。図13に示す理論直線に近いほど、トルク伝達性が良好であり、操作性に優れている。トルク伝達性が良いと、手元側の回転力が先端まで伝わりやすく、血管分岐選択で、目的とする血管に前進させやすくなり、挿入作業性が向上する。
10 コアワイヤ
11 遠位端側小径部
12 テーパ部
13 近位端側大径部
20 コイルスプリング
21 先端側小径部
22 第1テーパ部
23 中径部
24 第2テーパ部
25 後端側大径部
201 密巻部分
202 疎巻部分
31 Au−Sn系はんだ
32 Au−Sn系はんだ
33 Ag−Sn系はんだ
40 硬化樹脂
40A 樹脂層
50 親水性樹脂層

Claims (7)

  1. 引張強さが2600〜3000MPaのオーステナイト系ステンレス鋼からなり、近位端側大径部と前記近位端側大径部より外径の小さい遠位端側小径部とを有するコアワイヤと、
    前記コアワイヤの遠位端側小径部の外周に軸方向に沿って装着され、少なくとも先端部および後端部において、前記コアワイヤに固着されているコイルスプリングとを備えてなり、
    前記コイルスプリングは、
    0.008インチ(0.203mm)以下のコイル外径を有する先端側小径部と、
    前記先端側小径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する中径部と、
    0.012インチ(0.305mm)以上であって前記中径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する後端側大径部と、
    前記先端側小径部と前記中径部との間に位置する第1テーパ部と、
    前記中径部と前記後端側大径部との間に位置する第2テーパ部とを有し、
    前記コイルスプリングが固着されている前記コアワイヤの遠位端側小径部を直径3mmのロッドの外周に沿って1回巻き付けた状態で150gfの引張荷重を10秒間負荷したときに、巻き付けによる先端部分の反り角度が25°未満であることを特徴とする医療用ガイドワイヤ。
  2. 引張強さが2600〜3000MPaのオーステナイト系ステンレス鋼からなり、外径が0.012インチ(0.305mm)以上である近位端側大径部と、前記近位端側大径部より外径の小さい遠位端側小径部とを有するコアワイヤと;
    前記コアワイヤの遠位端側小径部の外周に軸方向に沿って装着され、コイル線径の1.1〜2.0倍のコイルピッチを有する密巻部分と、前記密巻部分に連続し、コイル線径の2.0倍を超えるコイルピッチを有する粗巻部分とからなるコイルスプリングとを備えてなり;
    前記コイルスプリングは、
    0.008インチ(0.203mm)以下のコイル外径を有する先端側小径部と、
    前記先端側小径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する中径部と、
    0.012インチ(0.305mm)以上であって前記中径部のコイル外径より大きいコイル外径を有する後端側大径部と、
    前記先端側小径部と前記中径部との間に位置する第1テーパ部と、
    前記中径部と前記後端側大径部との間に位置する第2テーパ部とを有し、
    前記先端側小径部と前記第1テーパ部と前記中径部と前記第2テーパ部とにより、長さ5.5〜110mmの前記密巻部分が構成されているとともに、前記後端側大径部により前記疎巻部分が構成され;
    前記先端側小径部の先端部分、第2テーパ部の後端部分、および前記後端側大径部の後端部分は、はんだにより、前記コアワイヤの遠位端側小径部の外周に固着され、
    前記コイルスプリングが固着されている前記コアワイヤの遠位端側小径部を直径3mmのロッドの外周に沿って1回巻き付けた状態で150gfの引張荷重を10秒間負荷したときに、巻き付けによる先端部分の反り角度が25°未満であることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤ。
  3. 前記コアワイヤの近位端側大径部の外径が0.014インチ(0.356mm)以上であり、
    前記コイルスプリングの先端側小径部のコイル外径が0.008インチ(0.203mm)以下、
    前記中径部のコイル外径が0.009〜0.011インチ(0.229〜0.279mm)
    前記後端側大径部のコイル外径が0.014インチ(0.356mm)以上であることを特徴とする請求項2に記載の医療用ガイドワイヤ。
  4. 前記中径部のコイル外径に対する前記先端側小径部のコイル外径の比が0.5〜0.9、前記第1テーパ部の長さが0.5〜10mmであり、
    前記中径部のコイル外径に対する前記後端側大径部のコイル外径の比が1.1〜2.3、前記第2テーパ部の長さが0.5〜10mmであることを特徴とする請求項3に記載の医療用ガイドワイヤ。
  5. 前記先端側小径部の先端部分は、金含有はんだにより、前記コアワイヤに固着され、
    金含有はんだによる先端硬直部分の長さが0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の医療用ガイドワイヤ。
  6. 前記コイルスプリングの先端側小径部において、金含有はんだが、先端から1〜4ピッチに相当する範囲においてコイル内部に浸透していることを特徴とする請求項5に記載の医療用ガイドワイヤ。
  7. 前記コイルスプリングの内部に樹脂が充填されているとともに、前記コイルスプリングの外周に前記樹脂による樹脂層が形成され、前記樹脂層の表面に親水性樹脂層が積層形成され、
    前記コアワイヤの表面には撥水性樹脂層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の医療用ガイドワイヤ。
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