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JP5601315B2 - 燃料電池とその製造方法 - Google Patents

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JP5601315B2
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Description

本発明は、プロトン伝導性を有する電解質膜の膜面に電極触媒層を接合した膜電極接合体を有する燃料電池とその製造方法に関する。
燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応によって発電する燃料電池がエネルギー源として注目されている。この燃料電池には、電解質膜として固体高分子膜を用いた固体高分子型燃料電池がある。こうした固体高分子型燃料電池では、プロトン伝導性を有する電解質膜の両面に電極触媒層を接合した膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を備え、このMEAをカーボンペーパー等のガス透過性を有する導電性のガス拡散部材で挟持する。こうした構成の燃料電池を提供するに当たり、種々の手法が提案されている(例えば、特許文献1)。
特開2004−47453号公報
この特許文献では、電極触媒層のみならず電解質膜にあっても溶液の塗布形成手法を採用し、バインダーとしてのアイオノマーと触媒担体とを含有の溶液(触媒インク)をカーボンペーパーといったガス拡散部材に塗布した上で、その乾燥前に電解質膜形成用の溶液の塗布を行う。そして、これら溶液の塗布後に乾燥・固化を図って、ガス拡散部材、電極触媒層、電解質膜を接合して積層形成する。こうすることで、燃料電池の構成部材同士の密着性の向上を図っている。
ところで、電極触媒層でのガス透過性とプロトン伝導性は、アイオノマーによる触媒担体の被覆状況の影響を受けることから、アイオノマーによる触媒担体の被覆を確保する必要がある。上記の特許文献では、ガス拡散部材に電極触媒層の形成用の触媒インクを塗布していることから、これに含まれるアイオノマーは、ガス拡散部材の細孔に入り込む。このため、インク乾燥後の電極触媒層では、ガス拡散部材の細孔に入り込んだ分だけアイオノマーが少なくなる。そして、ガス拡散部材の細孔に入り込んだアイオノマーが多くなるほど、ガス拡散部材と電極触媒層との密着強度は高まるものの、電極触媒層では、アイオノマーによる触媒担体被覆が阻害されることから、電極触媒層でのガス透過性とプロトン伝導性の低下が危惧される。上記した特許文献では、こうしたガス拡散部材へのアイオノマーの入り込みについての配慮がないことから、密着強度を確保した上で、電極触媒層におけるガス透過性とプロトン伝導性の低下を抑制する手法が要請されるに到った。なお、シート状の電解質膜に触媒ペーストを塗布して、この塗布済み触媒ペーストにガス拡散部材を接合する手法であっても、ガス拡散部材へのペーストの入り込みが起き得ることから、上記した問題が発生し得る。
本発明は、上記した課題を踏まえ、密着強度を確保した上で、電極触媒層におけるガス透過性とプロトン伝導性の低下を抑制することを目的とする。
上記した目的の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の適用例として実施することができる。
[適用例1:燃料電池]
プロトン伝導性を有する電解質膜の膜面に電極触媒層を接合した膜電極接合体と、細孔を有し該細孔によりガス透過性を呈する導電性のガス拡散部材とを備え、該ガス拡散部材にて前記膜電極接合体を挟持した燃料電池であって、
前記電極触媒層は、触媒を担持した導電性の触媒担体とプロトン伝導性を有するアイオノマーとを備え、
前記アイオノマーは、前記電極触媒層、および、前記電極触媒層と前記ガス拡散部材との界面の側の前記ガス拡散部材の前記細孔に入り込んで存在して、前記界面の側の前記ガス拡散部材にアイオノマー存在域を形成し、
該アイオノマー存在域の厚みをS0、前記電極触媒層の厚みをS1と表すと、前記アイオノマー存在域の厚みS0は、該厚みS0と前記電極触媒層の厚みS1との和の9〜37%とされている
ことを要旨とする。
この適用例1の燃料電池では、アイオノマーは、触媒インクにて形成された電極触媒層に存在することに加え、この電極触媒層と界面を経て接合したガス拡散部材の細孔にも入り込んで存在し、界面の側のガス拡散部材では、アイオノマー存在域を形成する。そして、このアイオノマー存在域の厚みS0を当該厚みS0と電極触媒層の厚みS1との和の9〜37%の範囲に収める。つまり、アイオノマー存在域の厚みS0を当該厚みS0と電極触媒層の厚みS1との和の9%以上とすることで、電極触媒層とガス拡散部材との密着強度を実用に耐える程度に確保できる。この反面、アイオノマー存在域の厚みS0が当該厚みS0と電極触媒層の厚みS1との和の9%を下回ると、密着強度が低下し、耐久性に欠けると懸念される。その上で、アイオノマー存在域の厚みS0を当該厚みS0と電極触媒層の厚みS1との和の37%以下とすることで、ガス拡散部材の細孔にアイオノマーが入り込み過ぎないようにして、電極触媒層における触媒担体のアイオノマーにより被覆を確保し、電極触媒層におけるガス透過性とプロトン伝導性の低下の抑制が可能となる。この反面、アイオノマー存在域の厚みS0が当該厚みS0と電極触媒層の厚みS1との和の37%を超えると、電極触媒層におけるアイオノマーによる触媒担体の被覆が損なわれ、ガス透過性やプロトン伝導性の低下が起きると懸念される。
この場合、アイオノマー存在域の厚みS0や、アイオノマー存在域の厚みS0および電極触媒層の厚みS1は、燃料電池のスペックから定まり、実用可能な範囲の厚みとできる。
上記した適用例1の燃料電池は、次のような態様とすることができる。例えば、前記アイオノマーを、そのガラス転移温度が150℃以上のものとできる。一般に、アイオノマー自身のガス透過性(酸素透過性)が高まると、アイオノマーのガラス転移温度は高まる。また、アイオノマーのガス透過性の温度依存性は低いことから、燃料電池運転の際に想定される温度範囲の低温域において、ガス透過性は大きく低下しない。よって、ガラス転移温度が150℃以上のアイオノマーとすることで、低温時の電池性能の向上を図ることが可能となる。また、電極触媒層における触媒量を小さくしても、アイオノマーの高いガス透過性により、電池性能の低下を抑制できる。
[適用例2:燃料電池の製造方法]
燃料電池の製造方法であって、
プロトン伝導性を有する電解質膜と、触媒を担持した導電性の触媒担体とプロトン伝導性を有するアイオノマーとを含む触媒インクと、細孔を有し該細孔によりガス透過性を呈する導電性のガス拡散部材とを準備する第1工程と、
前記電解質膜の膜面に前記触媒インクを塗布する第2工程と、
塗布済みの前記触媒インクに前記ガス拡散部材を接合した上で、前記触媒インクの乾燥を図って前記電解質膜と前記ガス拡散部材との間に電極触媒層を形成する第3工程とを備え、
該第3工程では、
前記ガス拡散部材を接合する際の荷重を管理した上で、前記触媒インクに含まれる前記アイオノマーを前記塗布済みの前記触媒インクと前記ガス拡散部材との界面の側の前記ガス拡散部材の前記細孔にインク乾燥前に入り込ませて、前記アイオノマーが前記界面の側の前記ガス拡散部材に存在するアイオノマー存在域を形成すると共に、前記荷重の管理下で、前記アイオノマー存在域の厚みをS0と、前記電極触媒層の厚みをS1と表すと、前記アイオノマー存在域の厚みS0を該厚みS0と前記電極触媒層の厚みS1との和の9〜37%とする
ことを要旨とする。
上記した適用例2の燃料電池の製造方法によれば、電極触媒層とガス拡散部材との密着強度を確保した上で、電極触媒層におけるガス透過性とプロトン伝導性の低下の抑制が可能な燃料電池を製造できる。
本発明の一実施例としての燃料電池40を断面視にて概略的に示す説明図である。 燃料電池40の製造工程の概略を示す説明図である。 採択可能なアイオノマーの性状を説明するための説明図である。 触媒インクの塗工とこれに続くアノード側ガス拡散層54の接合およびインク乾燥を説明するための説明図である。 カソード側ガス拡散層55の押圧による触媒インク中のアイオノマーの挙動を模式的に示す説明図である。 電子顕微鏡写真を用いてアイオノマー存在域56とアイオノマー全領域58の存在の様子を示す説明図である。 実施例品と比較例品の剥離強度をカソード側ガス拡散層55の厚みS0と関係付けて示したグラフである。 実施例品と比較例品の酸素ガス拡散抵抗をカソード側ガス拡散層55の厚みS0と関係付けて示したグラフである。 実施例品と比較例品の発電性能を示す電圧・電流特性をプロットしたグラフである。
以下、本発明の実施の形態について、その実施例を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例としての燃料電池40を断面視にて概略的に示す説明図である。
図示するように、燃料電池40は、水素と酸素との電気化学反応によって発電する電池セルユニットとして構成され、当該ユニットを図示しない一対のエンドプレートの間に複数積層させたスタック構造とされている。この場合、電池セルユニット積層数は、燃料電池40に要求される出力に応じて任意に設定可能である。
燃料電池40は、発電単位となる電池セル50を対向するセパレーター41で挟持する。電池セル50は、図1に示すように、電解質膜51の両側にアノード52とカソード53の両電極(電極触媒層)を備える。電解質膜51は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す。アノード52およびカソード53は、例えば白金、あるいは白金合金等の触媒を担持した導電性粒子、例えばカーボン粒子(以下、触媒担持カーボン粒子と称する)を、プロトン伝導性を有するアイオノマーで被覆して構成された電極触媒層であり、電解質膜51の両膜面に接合され電解質膜51と共に膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を形成する。通常、アイオノマーは、電解質膜51と同質の固体高分子材料である高分子電解質樹脂(例えばフッ素系樹脂)であり、その有するイオン交換基によりプロトン伝導性を有する。
この他、電池セル50は、電極形成済みの電解質膜51をその両側からアノード側ガス拡散層54とカソード側ガス拡散層55にて挟持する。以下、電池セル50を単にMEGAとも称する。セパレーター41は、この両ガス拡散層の外側に位置し、ガス拡散層を含んで電池セル50を挟持する。アノード側ガス拡散層54とカソード側ガス拡散層55は、細孔を有することでガス透過性を呈する導電性部材、例えば、カーボンペーパーやカーボンクロスによって形成される。
本実施例の燃料電池40は、その詳細を後述するように、カソード53を形成する触媒インクの塗工後であってその乾燥前にカソード側ガス拡散層55を接合させ、その後、インク乾燥を図る。よって、図1において模式的に拡大して示すように、カソード53を形成する触媒インクに含まれていたアイオノマーは、カソード53に存在することに加え、このカソード53と界面を経て接合したカソード側ガス拡散層55の細孔にも入り込んで存在し、界面の側のカソード側ガス拡散層55に、アイオノマー存在域56を形成する。以下、カソード53とアイオノマー存在域56を含め、アイオノマーが存在する全ての領域をアイオノマー全領域58と称する。
セパレーター41は、電池セル50ごとに反応ガス(水素ガスを含有する燃料ガス又は酸素を含有する酸化ガス)が流れるガス流路を形成する部材であって、水素透過性が低く導電性の良好な材料で形成される。例えば、樹脂に導電材料を混入して成形したプレート状の導電性複合材や金属鋼板などがセパレーター41の形成に用いられる。セパレーター41は、電池セル50の各電極へのガス給排を行うべく、その表裏面に、セル内水素ガス流路42とセル内エアー流路43とを備える。本実施例では、セル内水素ガス流路42とセル内エアー流路43とは、セル面内(電極面内)において直交配列された流路とされ、セル内水素ガス流路42は図において上下に延びる多列の直線状流路とされている。燃料電池40の電池セル50は、これらセル内流路を経てアノード52とカソード53に水素ガスと空気の供給を受け、水素と酸素の電気化学反応を起こして発電する。
次に、上記した燃料電池40の製造工程について説明する。図2は燃料電池40の製造工程の概略を示す説明図である。
図2に示すように、燃料電池40を製造するに当たり、本実施例では、MEGA(電池セル50)の製造を経て燃料電池40を得るようにした。MEGAの製造に際しては、まず、固体高分子電解質膜としての電解質膜51(図1参照、以下、同じ)の準備(ステップS100)、電極触媒層であるアノード52およびカソード53の形成用の触媒インクの調合(ステップS110)、および、アノード側ガス拡散層54とカソード側ガス拡散層55の両ガス拡散層の準備(ステップS120)を行う。これら各ステップは、上記した順に実行できるほか、同時並行的に進めることもできる。
ステップS100では、製膜生成済みの電解質膜51を購入したり、膜形成材料の高分子電解質樹脂から製膜生成することができる。本実施例では、この電解質膜51をプロトン伝導性を有するナフィオン膜とした(ナフィオンは登録商標、以下同じ)。
ステップS110では、白金合金を触媒とし、その触媒粒子を担持したカーボン粒子(触媒担持カーボン粒子/触媒担体)と、プロトン伝導性を有するアイオノマーと、これらの分散媒(純水、および、有機溶媒)とを、適宜な攪拌機器によって混合・攪拌することによって、触媒インクを調合する。カーボン粒子としては種々のものを選択可能であり、例えば、カーボンブラックやグラファイトの他、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノファイバー等を用いることができる。
触媒担持に際しては、通常採用されている手法、例えば、含浸法や共沈法、あるいはイオン交換法を行えばよい。また、触媒担持済みのカーボン粒子として流通しているものを入手することもできる。触媒担持カーボン粒子の分散に際しては、超音波ホモジナイザーを用いた。なお、上記の分散媒における純水と有機溶媒の混合比は、適宜決定できる。
アイオノマーとしては、通常採択される樹脂、例えば、プロトン伝導性を有するフッ素系アイオノマーとできるほか、そのガラス転移温度が150℃以上のポリアリーレンエーテルスルホン酸(BPSH)などの炭化水素系アイオノマーも用いることもできる。この他、150℃以上のガラス転移温度のアイオノマーを得るには、アイオノマーと同質の樹脂であって高ガラス転移温度を有する樹脂を配合することが簡便である。例えば、プロトン伝導性を有するフッ素系アイオノマーに、高ガラス転移温度を有するフッ素系樹脂を配合することで、高ガラス転移温度を有するアイオノマーを得ることができる。例えば、フッ素系アイオノマーは、デュポン社製の商品名DE2020CSのアイオノマーのように、その市販品から種々採択できるので、このアイオノマー(以下、第1アイオノマーと称する)に、高ガラス転移温度を有するフッ素系樹脂を配合することでガラス転移温度を高めたアイオノマー(以下、第2アイオノマーと称する)を得ることができる。配合するフッ素系樹脂としては、デュポン社製の商品名テフロンAF2400(テフロンは登録商標、以下同じ)があり、第1アイオノマー(DE2020CS)にテフロンAF2400(溶液)を、樹脂固形分比で2:1で配合することで、高ガラス転移温度を有する第2アイオノマーとできる。
図3は第1アイオノマーと高ガラス転移温度を有する樹脂を配合した第2アイオノマーの性状を説明するための説明図である。この図3では、第1アイオノマーと、第2アイオノマーとをそれぞれ薄膜化した試験用シートについて、動的粘弾性測定法(DMA法)にて測定した貯蔵弾性率と損失正接(tanδ)とが示されている。そして、図3に示すように、商品名DE2020CSの第1アイオノマーは、そのガラス転移温度が約117℃である。これに対し、商品名テフロンAF2400のフッ素系樹脂を配合した第2アイオノマーは、150℃であっても損失正接が測定されないので、そのガラス転移温度は150℃を超えていることになる。つまり、商品名テフロンAF2400のフッ素系樹脂のガラス転移温度は約240℃であることから、当該樹脂が配合された第2アイオノマーは、高いガラス転移温度となる。本実施例では、ガラス転移温度が150℃以上の上記した第2アイオノマーを採用した。プロトン伝導性を有するアイオノマーは、その原材料や分子鎖構造、樹脂性状、製造プロセス設定等により、種々のガラス転移温度を備えることになり、当該温度の上限は、製造し得るアイオノマー、例えば上記したように配合する樹脂の性状で定まる。
ステップS120では、アノード側ガス拡散層54とカソード側ガス拡散層55としてのカーボンペーパーやカーボンクロスを準備することになる。
これらステップS100〜120に続いては、調合済みの触媒インクを電解質膜51の膜面に塗工する(ステップS130)。次いで、その塗工した触媒インクが乾燥する前に、塗工済み触媒インクにアノード側ガス拡散層54(例えば、カーボンクロス)を押圧接合し、その際の荷重を管理した状況下で、触媒インクを乾燥させる(ステップS140)。このステップS140を経て触媒インクが乾燥すると、電解質膜51の膜面にカソード53が接合し、更にこのカソード53にカソード側ガス拡散層55が密着する。そして、ステップS130〜140の処置をアノード52の側においても行うことで、電池セル50(MEGA)が製造される。図4は触媒インクの塗工とこれに続くアノード側ガス拡散層54の接合およびインク乾燥を説明するための説明図である。
図4に示すように、塗工機器100を用いて触媒インクを電解質膜51に均一厚みで塗工する(ステップS130)。この塗工手法としては、膜状に塗布形成するアプリケータ塗工や、ダイ塗工、スプレー塗布等、適宜採用できる。こうして電解質膜51の膜面に塗工された触媒インクは、乾燥後に、カソード53となる。触媒インク塗工後には、図示しない搬送機器を用いて、触媒インク塗工済みの電解質膜51を押圧乾燥装置120に搬送する。
押圧乾燥装置120は、乾燥炉121を備え、その炉内に、セットテーブル122と、押圧プレート124と、昇降機器126とを備える。昇降機器126は、ボールネジやリニアレール等の進退機構を内蔵し、押圧プレート124をセットテーブル122に対して昇降させる。
押圧乾燥装置120に搬送された触媒インク塗工済みの電解質膜51は、セットテーブル122に載置してセットされる。その後、乾燥前の触媒インクにカソード側ガス拡散層55が重ねられ、当該インクにカソード側ガス拡散層55が接合する。この状態において、押圧乾燥装置120は、押圧プレート124をセットテーブル122に向けて降下させ、カソード側ガス拡散層55を未乾燥の触媒インクに押圧して接合する。押圧乾燥装置120の制御装置128は、CPUやROM、RAMを備えるマイクロコンピューターとして構成され、昇降機器126を制御して、押圧プレート124によるカソード側ガス拡散層55の接合荷重を管理する。そして、制御装置128は、この荷重管理下の状況において、乾燥炉121の図示しないヒーターをオンにして炉内温度をインク乾燥温度に制御し、触媒インクの乾燥を図る。この際の炉内温度は、触媒インクに含まれるアイオノマーのガラス転移温度より低温とでき、インク中の純水や溶媒を乾燥除去できる温度とされる。なお、室温より若干高めの炉内温度として、自然乾燥を図るようにすることもできる。
制御装置128は、荷重管理に必要な種々のパラメータを記憶している。例えば、ステップS110にて調合した触媒インクの粘性やその温度依存性の他、押圧プレート124にて加える荷重と、図1に示したアイオノマー存在域56やアイオノマー全領域58の厚み、およびカソード側ガス拡散層55に用いる材料(カーボンペーパーやカーボンクロス等)の気孔率や細孔径等との関係を記憶している。そして、制御装置128は、ステップS120においてカソード側ガス拡散層55を未乾燥の触媒インクに押圧する際の荷重を、アイオノマー存在域56の厚みが後述の範囲に収まるよう、管理しつつ、触媒インクの乾燥を図る(ステップS140)。こうした荷重管理下での触媒インクの乾燥については、その間のアイオノマーの挙動等を含めて後述する。
図2のステップSS140を経て電池セル50(MEGA)が製造されると、電池セル50の両側のガス拡散層にセパレーター41を接合させつつ(ステップS200)、これらを所定の順序で(図1のセルが繰り返し形成されるように)所定数積層してスタック構造を組み立て、積層方向に所定の押圧力を加えて全体構造を保持する(ステップS300)。これにより、燃料電池40が完成する。
次に、ステップS140で行われる荷重管理下での触媒インクの乾燥について説明する。図5はカソード側ガス拡散層55の押圧による触媒インク中のアイオノマーの挙動を模式的に示す説明図である。
図5では、下向きの図中の白抜き矢印にて荷重の大きさが模式的に区別して示しており、上段の図から下段側に推移するほど、押圧プレート124によりカソード側ガス拡散層55を押圧する際の荷重が大きくなっている。既述したように、細孔を有する故にガス透過性を呈するカソード側ガス拡散層55は、未乾燥の状態の触媒インクに重なるよう接合されるので、このカソード側ガス拡散層55が押圧プレート124による荷重を受けると、未乾燥の触媒インクに含まれるアイオノマーは、触媒インクと界面を経て接合したカソード側ガス拡散層55の細孔に入り込む。これにより、カソード側ガス拡散層55には、この界面の側にアイオノマー存在域56が形成される。カソード側ガス拡散層55の側へのアイオノマーの入り込みは、押圧プレート124による荷重の大きさに依存するので、アイオノマー存在域56の厚みは、図5に示すように、制御装置128による昇降機器126の制御を経て管理された荷重(接合荷重)が大きくなるほど増すことになる。
押圧乾燥装置120(図4参照)は、こうした荷重管理下で乾燥炉121の炉内で触媒インクを加熱乾燥されるので、その乾燥の際の純水や溶媒の蒸発除去を経て、電極触媒層であるカソード53では、触媒粒子を担持したカーボン粒子(触媒担体S)は、アイオノマーで被覆され、空隙Kも形成される。触媒インクに含まれるアイオノマーは、カソード側ガス拡散層55に入り込んでアイオノマー存在域56を形成することから、触媒担体Sを被覆してカソード53に残るアイオノマーは、カソード側ガス拡散層55への入り込みの分だけ、少なくなる。よって、図5(C)に示す大きな荷重でカソード側ガス拡散層55を未乾燥の触媒インクに接合した場合には、カソード側ガス拡散層55へのアイオノマーの入り込みが増えて、アイオノマーによる触媒担体Sの被覆が損なわれ、アイオノマー未被覆の触媒担体Sが残ったり、こうした触媒担体Sが集まると想定される。その一方、図5(A)に示すように小さな荷重でカソード側ガス拡散層55を未乾燥の触媒インクに接合した場合には、カソード側ガス拡散層55へのアイオノマーの入り込みが減ることから、アイオノマーによる触媒担体Sの被覆が損なわれないようになるとはいえ、アイオノマー存在域56の厚みが小さくなる。なお、アイオノマー存在域56は、カソード側ガス拡散層55の細孔へのアイオノマーの入り込みにより形成されるとはいえ、触媒インク乾燥の際の純水や溶媒の蒸発除去が起きるので、細孔が閉塞されてしまうことはなく、カソード側ガス拡散層55のガス透過性は損なわれない。
図6は電子顕微鏡写真を用いてアイオノマー存在域56とアイオノマー全領域58の存在の様子を示す説明図である。この図6は、図4の押圧乾燥装置120を用い図2のステップS140を経て得られた試験片を厚み方向に切断して、その切断面を撮像した2次電子像と反射電子像を、上記試験片の模式構成と対比して示している。この場合、上記の試験片は、電解質膜51の膜面に触媒インクを用いてカソード53を形成し、このカソード53にカソード側ガス拡散層55を接合した試験片となる。そして、この試験片を厚み方向に切断した切断面では、アイオノマーが存在する領域と存在しない領域が隣り合う状況と、元素の分布状況とが反映していることになる。
図6の左側に示す2次電子像は、試験片の切断面の表面凹凸像を映し出す。表面凹凸は、切断面の物理的状況であり、アイオノマーが存在する領域と存在しない領域とで相違する。そして、試験片切断面では、アイオノマーが存在する領域と存在しない領域とが隣り合うことから、2次電子像により、アイオノマー全領域58の電解質膜51の側の境界と、アイオノマー全領域58のカソード側ガス拡散層55の側の境界が判明する。その一方、図6の右側に示す反射電子像は、試験片の切断面における元素の分布状況を映し出し、質量の大きい元素ほど、その原子の存在を白い画像として映し出す。この切断面では、触媒としての高質量の白金を担持した触媒担体Sを含むカソード53と触媒担体Sを含まないカソード側ガス拡散層55が隣り合うことから、反射電子像により、カソード53とカソード側ガス拡散層55の境界が判明する。これにより、図6に示すように、アイオノマー存在域56の厚みと、アイオノマー全領域58の厚みとを規定できる。本実施例では、この両者の厚みを既述した荷重管理の際の荷重と対応させて、その関係を予め把握し、その結果を例えばマップ状のメモリーデータとして制御装置128に記憶する。このため、ステップS120では、押圧プレート124の押圧の際の荷重管理を図った上で触媒インクを乾燥させることで、アイオノマー存在域56とアイオノマー全領域58とを、その厚みにおいて所望の関係とできる。この点について、以下、説明する。
図5を用いて説明したように、アイオノマー存在域56の厚み(以下、この厚みをS0と表す)は、カソード側ガス拡散層55へのアイオノマーの入り込みの状況が反映し、アイオノマーによる触媒担体Sの被覆状況に影響を及ぼす。また、アイオノマー存在域56は、カソード53とカソード側ガス拡散層55の界面に存在し、アイオノマーは、このアイオノマー存在域56からカソード53に亘って存在することから、触媒インク乾燥後に形成されるカソード53とカソード側ガス拡散層55との密着強度にも影響を及ぼす。この密着強度は、アイオノマー存在域56の厚みS0が小さいほど低下し、この厚みS0が大きくなれば高まる。その一方、カソード53におけるアイオノマーによる触媒担体Sの被覆が損なわれてアイオノマー未被覆の触媒担体Sが残ったりすると(図5(C)参照)、カソード53にアイオノマーが触媒担体Sを被覆して存在するが故に確保されるガス透過性やプロトン伝導性が損なわれて、発電性能の低下を来す。ガス透過性やプロトン伝導性に依存する発電性能は、アイオノマー存在域56の厚みS0が大きいほど低下し、この厚みS0が小さくなればその低下は抑制される。
ところで、アイオノマー存在域56は、カソード53を含むアイオノマー全領域58の一部領域であり、この両者の厚みはMEGA製造過程で常時一律とすることは困難である。このため、アイオノマー存在域56の厚みS0は、アイオノマー全領域58の厚み(以下、この厚みをSAと称する)との関係を考慮することで、カソード53とカソード側ガス拡散層55との密着強度や、カソード53におけるガス透過性とプロトン伝導性とを規定する指標となり得る。そして、アイオノマー全領域58の厚みSAを考慮した上でのアイオノマー存在域56の厚みS0の下限値は、カソード53とカソード側ガス拡散層55との密着強度を規定し、この厚みS0の上限値は、カソード53におけるガス透過性とプロトン伝導性とを規定する。こうした知見に基づき、次のようにアイオノマー存在域56の厚みS0を定めた。この場合、アイオノマー全領域58は、カソード53とアイオノマー存在域56とを含むことから、アイオノマー全領域58の厚みSAは、アイオノマー存在域56の厚みS0とカソード53の厚みの和となる。
まず、アイオノマー全領域58の厚みSAを考慮した上でのアイオノマー存在域56の厚みS0の下限値と、カソード53とカソード側ガス拡散層55との密着強度の関係について説明する。用いる試験片は、図2のステップS140を経て得られたMEGAであり、このMEGA試験片を10mm幅にカットした上で、常温・常湿の環境下において、90°剥離試験に供した。MEGA試験片については、ステップS140における荷重管理値が異なるものを複数種類用意した。また、既存のMEGAについても、その対比のため、剥離試験に供した。表1に剥離試験に供した試験片一覧を示す。
この表1において、比較例品1は、既存MEGAであり、シート状の電解質膜51に触媒インクにてアノード52とカソード53とを接合形成済みのMEAを、アノード側ガス拡散層54とカソード側ガス拡散層55で挟持して、これらを130℃x1.2MPaの加圧条件でホットプレスして得たMEGAである。この比較例品1での、カソード53とカソード側ガス拡散層55の密着は、130℃のホットプレス手法に依存する。この際のプレス温度(130℃)は、触媒インクに含まれるアイオノマー、例えば、既述した商品名DE2020CSのアイオノマーのガラス転移温度より高い温度であり、こうすることで、アノードの軟化を経て、カソード53へのカソード側ガス拡散層55の密着が可能となる。
実施例品1〜3は、既述した図2の製造手順を経て得られたMEGAであり、カソード側ガス拡散層55を荷重管理して未乾燥触媒インクに常温にて接合し、その際の荷重が表のように相違する。比較例品2は、上記の実施例品と同一手順で得たMEGAではあるものの、未乾燥触媒インクにカソード側ガス拡散層55を接合する際の荷重を過多としたものである。実施例品1〜3と比較例品2のMEGAを得る際の触媒インク乾燥温度は、用いたアイオノマーのガラス転移温度より低いものとした。触媒インクの乾燥温度については、インク中の純水と溶媒を蒸発除去できる温度とした。この実施例品1〜3と比較例品2における触媒インクは、既述した第2アイオノマーを用いた触媒インクである。
図7は実施例品と比較例品の剥離強度をカソード側ガス拡散層55の厚みS0と関係付けて示したグラフである。この図7のグラフは、縦軸を剥離強度とし、横軸をカソード側ガス拡散層55の厚みS0をアイオノマー全領域58の厚みSAで除算した割合(%)としてプロットされている。この剥離強度は、表1の実施例品と比較例品のそれぞれのシートから幅10mmの試験片を作成し、その試験片を常温、常湿にて90℃剥離試験に供して測定した。以下、説明の便宜上、カソード側ガス拡散層55の厚みS0をアイオノマー全領域58の厚みSAで除算した割合を、アイオノマー界面比S0/SAと称する。実施例品・比較例品のアイオノマー界面比S0/SAの値(%)は、図6で説明した手法にて、実施例品および比較例品それぞれのカソード側ガス拡散層55の厚みS0とアイオノマー全領域58の厚みSAとを求めて算出した。
MEGAとしては、カソード53とアノード側ガス拡散層54の剥離強度は高いほど望ましく、図7に示すように、45N/m程度の強度を有することが、電池セル50、延いては燃料電池40としての耐久性や実用上から要請される。比較例品1は、触媒インクの乾燥を経て形成されたカソード53にカソード側ガス拡散層55をホットプレス手法にて接合していることから、その接合強度は低く、上記した強度要請に応えられない。その一方、カソード側ガス拡散層55の接合荷重を0.85Paに管理した実施例品1は、アイオノマー界面比S0/SAが9%であるものの、上記した強度要請に応えることができる。これを超える荷重に管理した実施例品2〜3と比較例品2も同様である。この場合、荷重管理下での触媒インク乾燥を図った実施例品1〜3と比較例品2とにおいて、管理荷重とアイオノマー界面比S0/SAとは単純な比例関係にはないものの、管理荷重が高まれば、図5にて説明したようにカソード側ガス拡散層55の厚みS0が大きくなってアイオノマー界面比S0/SAも大きくなることが判る。本実施例では、こうした荷重とアイオノマー界面比S0/SAとの関係を、押圧乾燥装置120の制御装置128にて、既述したように予め実験等により把握した上で、荷重管理に必要な種々のパラメータを記憶している。これにより、例えば、剥離強度が45N/m程度もしくはこれ以上となるように、管理荷重を経てアイオノマー界面比S0/SAの値、即ちアイオノマー存在域56の厚みS0やアイオノマー全領域58の厚みSAを規定できる。この場合、カソード側ガス拡散層55の厚みやカソード53の厚みは、上記したアイオノマー界面比S0/SAに影響するが、これら厚みは電池セル50として通常採択される実用可能な範囲の厚みであればよい。
次に、アイオノマー全領域58の厚みSAを考慮した上でのアイオノマー存在域56の厚みS0の上限値と、MEGAに求められるガス透過性との関係について説明する。MEGAには、高いガス透過性が求められ、このガス透過性は、カソード53にアイオノマーが存在するが故にプロトン伝導性と共に得られ、発電性能に影響を及ぼす。よって、上記の表1に示した実施例品1〜3と比較例品1〜2とについて、酸素ガス拡散抵抗評価に処した。このガス拡散抵抗評価は、実施例品1〜3および比較例品1〜2それぞれのMEGAの発電運転させた場合の限界電流値より算出できる。図8は実施例品と比較例品の酸素ガス拡散抵抗をカソード側ガス拡散層55の厚みS0と関係付けて示したグラフである。この図8のグラフは、次のように得た。まず、実施例品1〜3および比較例品1〜2それぞれのMEGAを試験セルとし、セル温度を50℃に、アノード・カソードの両極ともに加湿バブラー温度60℃の過加湿状態とした。その上で、それぞれの試験セルのカソード53に低濃度酸素ガス(2%)を供給し、アノード52には水素ガスを供給して発電させ、その際の限界電流値を求め、当該限界電流値から所定の換算式を用いて酸素ガス拡散抵抗を求めた。そして、この求めた酸素ガス拡散抵抗値を、実施例品1〜3および比較例品1〜2それぞれのアイオノマー界面比S0/SAの値に対応付けてプロットした。
MEGAとしては、ガス透過性は高いほど望ましいことから、上記したように求められる酸素ガス拡散抵抗値は、図8に示すように、120sec/m程度まで低抵抗値であることが、電池セル50、延いては燃料電池40としての発電能力確保の上から要請される。この120sec/mの酸素ガス拡散抵抗値は、シート状の電解質膜51に触媒インクにてアノード52とカソード53とを接合形成済みのMEAを、アノード側ガス拡散層54とカソード側ガス拡散層55で挟持して、これらをホットプレスして得た既存のMEGA(比較例品1)で得られた抵抗値と同程度である。
比較例品2は、実施例品1〜3と同じ手法で得られたMEGAではあるものの、カソード側ガス拡散層55の接合荷重の管理荷重が大きいため、図5(C)に示したようにアイオノマー存在域56の厚みS0が大きい状態と想定される。よって、図5(C)のような比較例品2では、既述したようにカソード53におけるアイオノマーの量が少なくなって、ガス透過性が低下し、このことは、比較例品2の酸素ガス拡散抵抗値が220sec/mと大きくなっている図8の結果と符合している。つまり、接合荷重を管理したとはいえ、その荷重が過大であれば、比較例品2のように大きな酸素ガス拡散抵抗値となるため、上記したガス透過性確保の要請に応えられない。その一方、カソード側ガス拡散層55の接合荷重を0.85〜13.1Paと比較例品2より小さい荷重に管理した実施例品1〜3は、それぞれのアイオノマー界面比S0/SAが相違するものの、これら実施例品のアイオノマー界面比S0/SAは、実施例品3の当該界面比の37%以下である。そして、この37%以下のアイオノマー界面比S0/SAである実施例品1〜3のそれぞれにおいて、上記したガス透過性確保の要請に応えることができる。この場合、荷重管理下での触媒インク乾燥を図った実施例品1〜3と比較例品2とにおいて、既述したように管理荷重とアイオノマー界面比S0/SAとは単純な比例関係にはないものの、管理荷重を小さくすればアイオノマー界面比S0/SAを小さくできる。本実施例では、こうした荷重とアイオノマー界面比S0/SAとの関係を、押圧乾燥装置120の制御装置128にて、既述したように予め実験等により把握した上で、荷重管理に必要な種々のパラメータを記憶している。これにより、例えば、酸素ガス拡散抵抗値が120sec/m程度の範囲に収まるように、管理荷重を経てアイオノマー界面比S0/SAの値、即ちアイオノマー存在域56の厚みS0やアイオノマー全領域58の厚みSAを規定できる。
以上説明したように、本実施例では、電解質膜51に塗工した触媒インクが未乾燥の内にアノード側ガス拡散層54を接合して、その際の接合荷重を管理し、その管理下で触媒インクを乾燥させ、MEGAを製造する。しかも、接合荷重管理下での触媒インクの乾燥を経て得られたMEGAにおいては、アイオノマー存在域56の厚みS0とアイオノマー全領域58の厚みSAとの割合であるアイオノマー界面比S0/SAを9〜37%とすることで、55とカソード53との密着強度を確保した上で、カソード53におけるガス透過性やプロトン伝導性の低下の抑制を図ることができる。こうしたことは、アノード52とアノード側ガス拡散層54とについても同様である。
本実施例では、上記したようにカソード側ガス拡散層55の厚みS0を測定できることから、アイオノマー存在域56の厚みS0を0.8〜3.3μmとできる。こうすれば、アイオノマー全領域58の厚みSA、延いてはカソード53の厚みについても、これを大きくしないで済むので、燃料電池40の薄葉化、延いては小型化を図ることができる。
次に、上記の表1に示した実施例品1〜3と比較例品1〜2の性能評価について説明する。図9は実施例品と比較例品の発電性能を示す電圧・電流特性をプロットしたグラフである。図9の電圧・電流特性は、実施例品1〜3と比較例品1〜2それぞれのMEGAを試験セルとし、セル温度や両極の相対湿度および両極へのガス供給を燃料電池40の定常運転時の状況下において、発電させてプロットした。
この図9に示すように、アノード側ガス拡散層54の接合荷重をアイオノマー界面比S0/SAが9〜37%となるように管理した実施例品1〜3のMEGAの試験セルでは、ほぼ同程度の発電性能を得られた。そして、これら実施例品1〜3のMEGAの試験セルでは、上記管理荷重をアイオノマー界面比S0/SAが37%を超える47%となるように管理した比較例品2のMEGAの試験セルより、大きな発電性能の向上が見られた。これは、既述したように酸素ガス拡散抵抗値の大小の差と相まって、次のように考察できる。
図5で説明したように、アイオノマー存在域56の厚みS0が大きくなると(図5(C)参照)、酸素ガス拡散抵抗値が大きくなるほか(図8)、既述したように、カソード53にアイオノマーが触媒担体Sを被覆して存在するが故に確保されるプロトン伝導性が損なわれる。つまり、アイオノマーがカソード側ガス拡散層55の側に多く入り込んだことで、カソード53に含まれる触媒担体Sを被覆するアイオノマーが減少して、触媒担体Sがアイオノマーで被覆されて生じるいわゆる三相界面も少なくなる。また、カソード側ガス拡散層55の側へのアイオノマーの入り込みが多いために、カソード側ガス拡散層55での空隙が減少して、排水性が悪化したとも想定される。こうした要因が重なって、実施例品1〜3と比較例品2とで、電池性能に大きな差が生じると想定される。
また、図9に示すように、アノード側ガス拡散層54の接合荷重をアイオノマー界面比S0/SAが9〜37%となるように管理した実施例品1〜3のMEGAの試験セルと、触媒インクの乾燥を経て形成済みのカソード53にカソード側ガス拡散層55をホットプレス手法にて接合した既存のMEGAである比較例品1の試験セルとは、酸素ガス拡散抵抗値がほぼ同程度でありながら、実施例品1〜3のMEGAの試験セルは、比較例品1より、高い発電性能の向上が見られた。このことから、アノード側ガス拡散層54の接合荷重を管理しつつ触媒インクの乾燥を図る本実施例の製造手法によれば、ホットプレス手法を採用した既存の燃料電池に勝る燃料電池40を製造できることになる。また、本実施例の製造手法で得られた燃料電池40は、ホットプレス手法を採用した既存の燃料電池に代用し得る燃料電池となる。なお、本実施例の実施例品1〜3のMEGAの試験セルとホットプレス手法を採用した既存のMEGAである比較例品1とで上記したような発電性能に差が生じたのは、未乾燥の触媒インクに含まれるアイオノマーがアノード側ガス拡散層54の細孔に入り込むことで、触媒担体Sの被覆が過剰とならないほか、空隙Kについてもカソード53において好適に形成されるからだと考察される。これに加え、本実施例(実施例品1〜3)では、カソード側ガス拡散層55へのアイオノマーの入り込みによりカソード53とカソード側ガス拡散層55の隙間が無くなったため、排水性が良好になったためとも想定される。
また、図9に示したような電池性能の向上に加え、本実施例では、触媒インクに含ませるアイオノマーを、ガラス転移温度が150℃以上の既述した第2アイオノマー(図3参照)とした。このため、本実施例の製造手法で得られた燃料電池40は、高いガラス転移温度と高いガス透過性を備え、ガス透過性の温度依存性は低くなる。よって、燃料電池40の運転の際に想定される温度範囲の低温域において、本実施例の燃料電池40では、ガス透過性は大きく低下しなくなり、低温時の電池性能の向上を図ることができる。しかも、カソード53における触媒担体Sの配合量を小さくしても、アイオノマーの高いガス透過性により、電池性能の低下を抑制できる。
ホットプレス手法を採用した既存のMEGAでは、用いるアイオノマーのガラス転移温度より高い温度でホットプレスする。このため、上記した150℃以上のガラス転移温度のアイオノマーを用いる場合には、この温度より高温でのホットプレスが必要となるので、高いガス透過性を備えた高ガラス転移温度のアイオノマーを用いることができず、汎用性が低かった。ところが、本実施例では、そもそもホットプレスを必要とせず、アノード側ガス拡散層54の接合荷重の管理下での触媒インク乾燥を図ればよいことから、アイオノマーの採用の幅が広がり、汎用性が高まる。また、ホットプレス機といった設備機器も必要としないので、低コスト化も可能となる。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこのような実施の形態になんら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様での実施が可能である。例えば、上記の実施例では、アノード52とカソード53の両電極触媒層において、接合荷重の管理下での触媒インク乾燥を図ったが、いずれか一方の電極触媒層についてガス透過性向上処置を行うようにすることもできる。また、用いるアイオノマーについても、従来採用されていた比較的、ガラス転移温度の低いアイオノマーを用いることもできる。
また、アノード側ガス拡散層54とカソード側ガス拡散層55の両ガス拡散層、或いは少なくともカソード側ガス拡散層55においては、これらが接合する電極触媒層の側に、撥水層(MPL:Micro Porous Layer)を有するようにすることもできる。この場合、撥水層については、本願発明におけるガス拡散部材は、この撥水層を含むものとすることもできる。
40…燃料電池
41…セパレーター
42…セル内水素ガス流路
43…セル内エアー流路
50…電池セル
51…電解質膜
52…アノード
53…カソード
54…アノード側ガス拡散層
55…カソード側ガス拡散層
56…アイオノマー存在域
58…アイオノマー全領域
100…塗工機器
120…押圧乾燥装置
121…乾燥炉
122…セットテーブル
124…押圧プレート
126…昇降機器
128…制御装置
S…触媒担体
K…空隙

Claims (4)

  1. プロトン伝導性を有する電解質膜の膜面に電極触媒層を接合した膜電極接合体と、細孔を有し該細孔によりガス透過性を呈する導電性のガス拡散部材とを備え、該ガス拡散部材にて前記膜電極接合体を挟持した燃料電池であって、
    前記電極触媒層は、触媒を担持した導電性の触媒担体とプロトン伝導性を有するアイオノマーとを備え、
    前記アイオノマーは、前記電極触媒層、および、前記電極触媒層と前記ガス拡散部材との界面の側の前記ガス拡散部材の前記細孔に入り込んで存在して、前記界面の側の前記ガス拡散部材にアイオノマー存在域を形成し、
    該アイオノマー存在域の厚みをS0、前記電極触媒層の厚みをS1と表すと、前記アイオノマー存在域の厚みS0は、該厚みS0と前記電極触媒層の厚みS1との和の9〜37%とされている
    燃料電池。
  2. 前記アイオノマーは、そのガラス転移温度が150℃以上とされている請求項1に記載の燃料電池。
  3. 燃料電池の製造方法であって、
    プロトン伝導性を有する電解質膜と、触媒を担持した導電性の触媒担体とプロトン伝導性を有するアイオノマーとを含む触媒インクと、細孔を有し該細孔によりガス透過性を呈する導電性のガス拡散部材とを準備する第1工程と、
    前記電解質膜の膜面に前記触媒インクを塗布する第2工程と、
    塗布済みの前記触媒インクに前記ガス拡散部材を接合した上で、前記触媒インクの乾燥を図って前記電解質膜と前記ガス拡散部材との間に電極触媒層を形成する第3工程とを備え、
    該第3工程では、
    前記ガス拡散部材を接合する際の荷重を管理した上で、前記触媒インクに含まれる前記アイオノマーを前記塗布済みの前記触媒インクと前記ガス拡散部材との界面の側の前記ガス拡散部材の前記細孔にインク乾燥前に入り込ませて、前記アイオノマーが前記界面の側の前記ガス拡散部材に存在するアイオノマー存在域を形成すると共に、前記荷重の管理下で、前記アイオノマー存在域の厚みをS0と、前記電極触媒層の厚みをS1と表すと、前記アイオノマー存在域の厚みS0を該厚みS0と前記電極触媒層の厚みS1との和の9〜37%とする
    燃料電池の製造方法。
  4. 前記第1工程では、ガラス転移温度が150℃以上のアイオノマーを含む前記触媒インクを準備する請求項3に記載の燃料電池の製造方法。
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