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JP5689296B2 - 乗員検知システム - Google Patents

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Description

この発明は、乗員検知システムに関するものである。より詳しくは、自動車などの車両に設けられるエアバッグ装置の作動・不作動を決定するために用いられる乗員検知システムに関するものである。
自動車などの車両には、乗員が着座するための座席が設けられている。そして、この座席に対し、着座した乗員を保護可能なエアバッグ装置が設けられている。このようなエアバッグ装置は、エアバッグコントローラによって制御されている。
そして、上記したようなエアバッグシステムに対し、乗員に応じてエアバッグ装置を作動させるか否かを判断する乗員検知システムを付設することが既に検討されている(例えば、特許文献1参照)。
この乗員検知システムは、座席周辺に取付けた荷重センサと、この荷重センサからの荷重検知信号に基づいて着座判定を行いエアバッグ装置の作動・不作動を判断する乗員検知用コントローラとを備えている。この乗員検知用コントローラによる判断は、上記したエアバッグコントローラへ伝えられて、エアバッグコントローラの制御に利用される。
そして、このような乗員検知システムによれば、乗員検知用コントローラは、荷重センサからの荷重検知信号が、予め内部に設定した閾値よりも大きい場合には、着座と判定してエアバッグ装置を作動と判断し、上記閾値よりも小さい場合には、非着座と判定してエアバッグ装置を不作動と判断する。
これにより、エアバッグコントローラは、乗員が座席に着座している場合には、エアバッグ装置を作動させ、乗員が座席に着座していない場合には、エアバッグ装置を作動させないように制御することができるようになる。
特許第4339368号
しかしながら、上記乗員検知システムには、以下のような問題があった。
即ち、荷重センサからの荷重検知信号を予め設定された閾値と比べることによって着座判定を行い、エアバッグ装置の作動・不作動を判断するようにしていたので、例えば、走行中に、荷重センサの荷重検知信号が激しく変動して閾値を越えてしまったような場合などに、着座判定の結果に誤りを生じるおそれがあった。
また、走行中は、乗員が座席からみだりに移動しないことがほぼ高い確率で期待できるのにも拘らず、走行中も停車中も区別なく常時着座判定を行って作動・不作動の判断を行うようにしていたので、改善の余地があった。
そして、走行中、停止中を区別する判断を行う場合、外部から走行検知信号を取込んで使用することが考えられるが、走行検知信号を外部から取込むのは、外部とのインターフェースを設けたり、外部からの走行検知信号に対する規格合せを行ったりするなどの各種の困難が伴うため不利である。そこで、このような不利を回避するためには、乗員検知用コントロールの内部で、走行中、停止中を判断できるようにする必要があった。
更に、上記した荷重センサは高価なものであるが、上記特許文献1のものでは、この高価な荷重センサを車体に対する座席の支持点の全てに取付けていたので、コストが高くなっていた。
上記課題を解決するために、本発明は、座席周辺に取付けた乗員検知手段と、該乗員検知手段からの乗員検知信号に基づいてエアバッグ装置の作動・不作動を判断する乗員検知用コントローラとを備え、前記乗員検知手段が、座席に着座した乗員による荷重を検知可能な荷重検知手段であり、前記乗員検知用コントローラが、荷重検知手段からの荷重検知信号に基づき、乗員判定を行う乗員判定部と、該乗員判定部からの乗員判定信号に基づき、エアバッグ装置の作動・不作動を判断して作動判断信号を発生する作動判断部とを備えた乗員検知システムであって、更に、前記乗員検知用コントローラが、前記荷重検知手段からの荷重検知信号に基づき、走行中であるか否かを検知する走行検知部を備え、前記作動判断部が、前記走行検知部からの走行検知信号に基づいて、停車中である場合には前記乗員判定信号によるエアバッグ装置の作動・不作動の判断を行い、走行中である場合には前記乗員判定信号によるエアバッグ装置の作動・不作動の判断を行わずに前回の判断結果を保持するよう構成されると共に、前記乗員検知用コントローラが、荷重検知手段の荷重検知信号から走行中であることを示す走行波形を除去可能な走行波形除去部を備え、該走行波形除去部がローパスフィルタであり、前記乗員判定部が、荷重検知手段の荷重検知信号から、走行波形除去部によって走行波形を除去した後の走行波形除去信号に基づいて乗員判定信号を求め、前記走行検知部が、走行波形除去部によって走行波形を除去する前の、荷重検知手段の走行波形を含む荷重検知信号に基づいて走行検知信号を求めるよう構成されたことを特徴としている。
本発明によれば、上記構成によって、乗員検知用コントローラ自身の内部で、走行中、停止中の正確な判断ができるようになると共に、走行中には、乗員判定信号によるエアバッグ装置の作動・不作動の判断を行わないようにすることができる。以て、走行の影響を含む荷重検知信号によって、乗員判定部が誤った乗員判定を出してしまうような状況下においても、作動判断部は正しい作動判断の結果を得ることができるようになる。
走行波形除去部によって、荷重検知手段で検知した荷重検知信号から走行波形を除去した走行波形除去信号を得ることができる。そして、この走行波形除去信号を用いることにより、乗員判定部は、走行波形に影響されない正確な乗員判定を行うことができる。反対に、走行検知部は、走行波形除去信号を用いずに、走行波形を除去する前の、荷重検知手段の走行波形を含む荷重検知信号を用いることにより、正確な走行判断を行うことができる。
本発明の実施例における、自動車などの車両の概略平面図である。 図1の乗員検知システムおよびエアバッグコントローラのブロック図である。 図1または図2の荷重検知手段からの荷重検知信号を示すグラフである。 図1の座席に対する荷重検知手段の取付状況を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。 荷重検知手段の設置個数の違いによる荷重検知信号の違いを示すグラフである。 図2の乗員検知用コントローラの動作を示すフローチャートである。
本発明は、主に、走行の影響を除去することにより正しい作動判断結果が得られるようにすると共に、コストを削減し得る構成としている。
以下、本発明を具体化した実施例を、図面を用いて詳細に説明する。
<構成>以下、構成について説明する。
先ず、図1は、自動車などの車両1の概略平面図である。この車両1には、乗員が着座するための座席2が設けられている。そして、この座席2に対し、着座した乗員を保護可能なエアバッグ装置3が設けられる。このエアバッグ装置3は、エアバッグコントローラ4によって制御されるようになっている。
この場合、エアバッグ装置3は、インストルメントパネル5の助手席2a側の部分に設けられている。但し、上記したようなエアバッグシステム6は、助手席2a以外の座席2に対して設けても良い。なお、図の車両1は左ハンドル車であるため、助手席2aは右側となっている。
そして、このようなエアバッグシステム6に対し、乗員に応じてエアバッグ装置3を作動させるか否かを判断する乗員検知システム7が付設される。
この乗員検知システム7は、座席2(この場合には助手席2aとなっている。以下同様)の周辺に取付けた乗員検知手段8と、この乗員検知手段8からの乗員検知信号に基づいてエアバッグ装置3の作動・不作動を判断する乗員検知用コントローラ9とを備えている。この乗員検知手段8は、例えば、座席2に着座した乗員による荷重を検知可能な荷重検知手段8Aとされる。
次に、図2は、上記した乗員検知システム7およびエアバッグコントローラ4のブロック図である。上記した乗員検知システム7は、以下のような構成を備えている。
(構成1)乗員検知システム7の主要部の構成
上記した乗員検知用コントローラ9は、その内部に主要部として、荷重検知手段8A(図中における荷重センサ)からの荷重検知信号に基づき、乗員判定ロジックを用いて乗員判定を行う乗員判定部11と、この乗員判定部11からの乗員判定信号に基づき、作動判断ロジックを用いてエアバッグ装置3の作動・不作動を判断し作動判断信号を発生する作動判断部12とを備えている。
更に、乗員検知用コントローラ9は、荷重検知手段8Aからの荷重検知信号に基づき、走行検知ロジックを用いて走行中であるか否かを検知する走行検知部13を、その内部に備えるようにしている。そして、この走行検知部13を設けたことに伴い、上記した作動判断部12を、走行検知部13からの走行検知信号に基づいて、停車中である場合には乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行い、走行中である場合には乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行わずに前回の判断結果を保持するように構成する。
ここで、上記したエアバッグコントローラ4(図中におけるエアバッグECU)には、例えば、内部に演算処理装置(CPU)などを有するワンチップマイコンなどを使用することができる。
また、上記したエアバッグコントローラ4には、上記した乗員検知用コントローラ9からの作動判断信号に基づき、例えば、乗員の状態を、例えば、乗員なし、大人、チャイルドシートなどを示す図形で表示するようにした乗員表示ランプ14や、エアバッグ装置3の故障を検知して警告を行うワーニングランプ15などが接続されている。これらの乗員表示ランプ14やワーニングランプ15は、上記したインストルメントパネル5の計器表示部などに設置される。
また、上記した乗員検知システム7の乗員検知用コントローラ9(図中における乗員検知用ECU)には、例えば、内部に演算処理装置(CPU)などを有するワンチップマイコンなどを使用することができる。そして、上記した乗員判定部11や作動判断部12や走行検知部13などは、内部の演算処理装置(CPU)の処理機能によって実現されるようになっている。
なお、上記した乗員判定には、少なくとも、座席2に乗員が着座しているかどうかを判定する着座判定と、座席2に着座している乗員の体格が大きいかどうか(例えば、大人であるか子供であるか)を判定する体格判定とがある。この場合には、少なくともどちらか一方の意味で用いられる。なお、着座判定と体格判定とは、それぞれで使用する閾値を異なる値とすることによって実施することができる。
(構成2)乗員検知用コントローラ9に、荷重検知手段8Aの荷重検知信号から走行中であることを示す走行波形を除去可能な走行波形除去部16を設けるようにする。そして、上記した乗員判定部11が、荷重検知手段8Aの荷重検知信号から、走行波形除去部16によって走行波形を除去した後の走行波形除去信号に基づいて乗員判定信号を求めるように構成される。また、上記した走行検知部13が、走行波形除去部16によって走行波形を除去する前の、荷重検知手段8Aの走行波形を含む荷重検知信号に基づいて走行検知信号を求めるよう構成される。
即ち、走行波形除去部16の段に乗員判定部11が直列に接続され、走行波形除去部16および乗員判定部11と並列に走行検知部13が接続されるようにする。
ここで、走行波形は、例えば、上下方向の高周波振動成分(走行振動)などである。走行波形除去部16には、例えば、高周波振動成分などの走行波形を除去可能なローパスフィルタなどを使用することができる(図中におけるLP)。また、乗員検知用コントローラ9には、走行波形除去部16および走行検知部13の前段に、荷重検知手段8Aの荷重検知信号をアナログ/デジタル変換するA/D変換器などの信号変換部17が設けられている(図中におけるA/D)。
なお、信号変換部17および走行波形除去部16は、各荷重検知手段8Aごとに、それぞれ独立した系統とされている。そして、これらの各系統は、上記した乗員判定部11および、走行検知部13にて統合されるようなっている。
そして、図3は、上記した荷重検知手段8Aからの荷重検知信号を示すグラフである。図中、区間aは停車中、区間bは走行中を示している。また、線cはこの実施例における(後述するように、荷重検知手段8Aの設置個数を減らした場合の合計の)荷重検知信号(重量情報)、線c0は従来例における(荷重検知手段8Aの設置個数を減らしていない場合、即ち、後述する全ての支持点24a〜24dに対して荷重検知手段8Aを4個全部設置した場合の合計の)荷重検知信号(重量情報)である。また、線dは従来例における荷重変動量を示している。
この場合、上記したように走行波形は、上下方向の走行振動(高周波振動成分)などが主なものである。例えば、従来の荷重変動量(線d)の場合、停車中の波形はd1であり、走行中における、走行波形を含む波形はd2であり、走行波形を除去された走行波形除去信号の波形はd3である。そして、停車中の波形d1と走行中の走行波形を含んだ波形d2との差は比較的大きなものとなって走行検知を行うのに都合が良いのに対し、停車中の波形d1と走行波形除去信号の波形d3との差は比較的小さなものとなって乗員検知を行うのには都合の悪いものとなる。
そして、この実施例の荷重検知信号(線c)の場合、停車中の波形はc1であり、走行中の波形はc2であり、共に、荷重検知手段8Aの設置個数を減らした分だけ上記した従来の場合の線c0よりも小さくなって不利なものになる。
図4は、上記した座席2に対する荷重検知手段8Aの取付状況を示す図である。ここで、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
座席2は、車体21に対し、左右一対のスライドレール22,23を介して、各スライドレール22,23に沿い車両前後方向24へスライド可能(位置調整可能)に取付けられている。そして、座席2は、左右一対のスライドレール22,23に対し、それぞれ、前後の支持点24a〜24dを介して合計4箇所で支持されている。
(構成3)上記したように、車体21に対し、座席2が複数の支持点24a〜24dにて支持されている場合に、荷重検知手段8Aが、少なくとも1つの支持点24a〜24dを除く少なくとも1つ以上の支持点24a〜24dに対してそれぞれ取付けられるようにする。
言い換えれば、上記した支持点24a〜24dのいずれかに、荷重検知手段8Aを設置しない、荷重検知手段非設置部を設けるようにする。
例えば、この場合には、車体21の内側のスライドレール22に対する前後2箇所の支持点24a,24bのみに対して合計2個の荷重検知手段8Aを設けるようにしている。
図5は、荷重検知手段8Aの設置個数の違いによる荷重検知信号の違いを示すグラフである。図中、線eは、この実施例における、前後2箇所の支持点24a,24bに対して荷重検知手段8Aを2個設置した場合、線fは、従来例における、全ての支持点24a〜24dに対して荷重検知手段8Aを4個全部設置した場合を示している。
荷重検知手段8Aを片側2個設置した線eの場合には、荷重検知信号の大きさが、全てに設置した線fの場合のほぼ半分になっていると共に、カーブでは、直進路に対して荷重検知信号が大きく減少している。これは、荷重検知手段8Aを設けた側とは反対の側に遠心力が作用したことにより荷重が軽減されたものと考えられる。これに対し、荷重検知手段8Aを4個全部設置した線fの場合には、荷重検知信号の大きさが線eのほぼ倍になっていると共に、カーブでも、直進路と同様に荷重検知信号の大きさが安定している。これは、遠心力が作用した場合であっても、全部の荷重検知手段8Aでバランスを取ることができるからであると考えられる。
なお、荷重検知手段8Aを2箇所に設置する場合、上記した以外に、車体21の外側のスライドレール23に対する前後の支持点24c,24dに設けるようにしても、前側の支持点24a,24cまたは後側の支持点24b,24dに対して設けるようにしても、対角位置にある支持点24a,24dまたは支持点24c,24bに対して設けるようにしても良い。或いは、前後の支持点24a〜24dのいずれか1箇所を除く3箇所に設けるようにしても良い。或いは、前後の支持点24a〜24dのいずれか1箇所のみに設けることも構造的には可能である。但し、上記したように、荷重検知手段8Aの設置個数を減らすに従い、荷重検知信号の大きさや安定度が不利になって行くので、1箇所とするよりは、2箇所または3箇所とするのが好ましい。
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
先ず、エアバッグシステム6を含む全体的な作動について説明する。座席2の周辺に取付けた乗員検知手段8は、座席2に着座した乗員を検知する。そして、乗員検知用コントローラ9は、乗員検知手段8からの乗員検知信号に基づいてエアバッグ装置3の作動・不作動を判断する。この作動判断が上記したエアバッグコントローラ4へ送られ、エアバッグコントローラ4により、緊急時にエアバッグ装置3が作動されるか否かが決定される。この乗員検知手段8には、座席2に着座した乗員による荷重を検知可能な荷重検知手段8Aが用いられる。即ち、乗員の荷重によって乗員を検知するようにしている。
次に、乗員検知用コントローラ9の作動について説明する。乗員検知用コントローラ9の内部では、乗員判定部11が、荷重検知手段8Aからの荷重検知信号に基づき、乗員判定を行う。乗員判定には、着座判定と、体格判定とがあり、その少なくともいずれかが行われる。そして、作動判断部12が、乗員判定部11からの乗員判定信号に基づき、エアバッグ装置3の作動・不作動を判断して作動判断信号を発生する。
更に、乗員検知用コントローラ9では、走行検知部13が、荷重検知手段8Aからの荷重検知信号に基づき、走行中であるか否かを検知する。そして、作動判断部12は、走行検知部13からの走行検知信号に基づいて、停車中である場合には乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行って判断結果を更新し、走行中である場合には乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行わずに前回の判断結果をそのまま保持するようになっている。即ち、走行中は、乗員が座席2から移動したり入れ替わったりするおそれが少ないので、停止時の乗員判定の結果を変更しないように固定している。
図6は、乗員検知用コントローラ9のより詳しい作動を示すフローチャートである。
このフローチャートによれば、先ず、ステップ1の読取工程で、信号変換部17は、各荷重検知手段8Aからの荷重検知信号を読取る。この場合、信号変換部17は、更に、各荷重検知手段8Aからの荷重検知信号をアナログ/デジタル変換する。なお、この読取工程は、各系統ごとに行われる。
次に、ステップ2の走行波形除去工程で、走行波形除去部16は、各荷重検知手段8Aの荷重検知信号から走行中であることを示す走行波形を除去して走行波形除去信号を求める。なお、この走行波形除去工程も、各系統ごとに行われる。
次いで、ステップ3の加算工程で、乗員判定部11は、各走行波形除去信号を加算して走行波形除去信号の総和を求める。
更に、ステップ4の乗員判定工程で、乗員判定部11は、乗員判定として、先ず、走行波形除去信号の総和と、閾値とを比較して座席2に乗員が着座しているかどうかを判定する(着座判定)。そして、当該閾値よりも総和が大きい場合には着座、当該閾値よりも総和が小さい場合には非着座と判定する。なお、この場合の閾値(第一の閾値)は、座席2に乗員による荷重が作用しているかどうかが確実に識別できる程度の比較的低い値となる。この閾値には、トライアンドエラーなどによって、適正な判断結果が出るように設定されたものを用いる。
乗員判定部11は、乗員判定として、次に、走行波形除去信号の総和と、上記とは別の閾値(第二の閾値)とを比較して座席2に着座している乗員が大人であるか子供であるかどうかを判定する(体格判定)。そして、当該閾値よりも総和が大きい場合には大人、当該閾値よりも総和が小さい場合には子供と判定する。なお、当該閾値は、大人と子供とを確実に区別できるようにするため、上記よりは高い値となる。
より具体的な例で言うと、仮に大人を小柄な女性(体重45Kgに想定)とし、子供をチャイルドシート(重量10Kgと想定)を介して座席2に着座した1歳児(体重10Kgと想定)とした場合、45Kgと20Kg(=10Kg+10Kg)との中間の値を、支持点24a〜24dの総数である4(荷重検知手段8Aの最大設置可能数)で割って、更に、荷重検知手段8Aの実際の設置個数を掛けた値を基準とし、これに、必要な補正を行って上記閾値を求めるようにする。なお、上記した補正は、例えば、荷重検知手段8Aの設置位置による補正値(例えば、シートベルトを締めた時に生じる、各支持点24a〜24dに作用する荷重のバラ付きなど)や、座席2に対する乗員の着座位置のズレ量などに対する補正値(浅く腰掛けた場合や、深く腰掛けた場合や、左右に片寄って腰掛けた場合などに生じる、各支持点24a〜24dに作用する荷重のバラ付きなど)などを、適宜用いることなどが考えられる。なお、この閾値は、荷重検知手段8Aの設置個数が少なくなるに従って、よりシビアな値となるため、トライアンドエラーなどによって、適正な判断結果が出るように設定されたものを使用する。また、この実施例の場合には、乗員判定部11で着座判定と体格判定との少なくともどちらかを行うようにしているが、例えば、乗員判定部11で着座判定を行い、後段の作動判断部12で体格判定を行うというように、異なる構成部位で着座判定と体格判定とをそれぞれ別々に行うようにする(言い換えると、作動判断部12に乗員判定の一部を委譲する)ことも可能である。
そして、上記ステップ2〜ステップ4と並行して、ステップ5の走行検知工程で、走行検知部13は、走行波形除去部16で走行波形を除去される前の荷重検知手段8Aからの荷重検知信号に基づき、走行中であるかどうかを検知する。より具体的には、走行検知部13は、各荷重検知信号の変動量の絶対値(振動変化量)を走行波形として、この変動量の絶対値の総和Δsumを算出する。なお、絶対値を使用するのは、各系統の走行波形が互いに相殺されてしまわないようにするため、および、走行波形をより強調するためである。
ステップ6の走行判断工程で、作動判断部12は、上記した変動量の絶対値の総和Δsumから走行中であるか、停車中であるかの走行判断を行う。なお、この走行判断は、上記した走行検知部13によって行うことも可能である。
より具体的には、作動判断部12は、この変動量の絶対値の総和Δsumと、上記のいずれとも異なる閾値α(第三の閾値)とを比較して、走行中であるか、停車中であるかを判断する。そして、当該閾値αよりも総和Δsumが大きい場合には走行中と判断し、当該閾値αよりも総和が小さい場合には停車中と判断する。なお、この場合の閾値αは、走行中か停車中かを確実に識別できるような値とする。この閾値αは、荷重検知手段8Aの設置個数が少なくなるに従って、よりシビアな値となるため、トライアンドエラーなどによって、適正な判断結果が出るよう厳密に設定されたものを使用する。
そして、閾値αよりも総和Δsumが小さい場合には、停車中であるため、ステップ7の停車時判断工程で、作動判断部12は、乗員判定部11からの乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行い、判断結果を保持する。
反対に、閾値αよりも総和Δsumが大きい場合には、走行中であるため、ステップ8の走行時判断工程で、作動判断部12は、乗員判定部11からの乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行わずに、前回の判断結果をそのまま保持する。
最後に、ステップ9の出力工程で、作動判断部12は、上記したエアバッグコントローラ4へステップ7またはステップ8の判断結果を出力する。その後は、再びステップ1へ戻ってループする。なお、乗員判定で着座判定のみを行った場合には、着座か非着座かによって、作動か非作動かが判断されることになる。また、乗員判定で着座判定と体格判定との両方を行った場合、または、体格判定のみを行った場合には、大人か子供(または非着座)かによって、作動か非作動かが判断されることになる。更に、ステップ9では、判断結果が一定時間同じとなって安定したことが確認された後で、エアバッグコントローラ4へ乗員判定信号を出力する信号安定化ロジックを備えるようにしても良い。
<効果>次に、この実施例の効果について説明する。
(効果1)上記構成1の走行検知部13などにより、乗員検知用コントローラ9自身の内部で、走行中、停止中の正確な判断ができるようになると共に、走行中には、乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行わないようにすることができる。以て、走行の影響を含む荷重検知信号(例えば、図5の線eにおけるカーブの部分参照)によって、乗員判定部11が誤った乗員判定を出してしまうような状況下においても、作動判断部12は正しい作動判断の結果を得ることができるようになる。
(効果2)上記構成2の走行波形除去部16によって、荷重検知手段8Aで検知した荷重検知信号から走行波形を除去した走行波形除去信号を得ることができる。そして、この走行波形除去信号を用いることにより、乗員判定部11は、走行波形に影響されない正確な乗員判定を行うことができる。反対に、走行検知部13は、走行波形を除去する前の、荷重検知手段8Aの走行波形を含む荷重検知信号を用いることにより、正確な走行判断を行うことができる。
これにより、乗員検知用コントローラ9は、それ自身の内部で、正確な走行検知信号を得ることができるようになる。以て、外部から走行検知信号またはこれと同等の信号を取込む必要をなくすことができる。ここで、走行検知信号等を外部から取込む場合には、外部とのインターフェースを設けたり、外部からの走行検知信号等に対する規格合せを行ったりするなどの各種の困難を伴うことになって不利であるが、乗員検知用コントローラ9の内部で走行検知信号を得ることができれば、このような困難を回避することができる。なお、上記困難を解消できるのであれば、外部から走行検知信号またはこれと同等の信号を取込む構成にすることも可能である。
(効果3)車体21に対し、座席2が複数の支持点24a〜24dにて支持されている場合に、荷重検知手段8Aが、少なくとも1つの支持点24a〜24dを除く少なくとも1つ以上の支持点24a〜24dに対してそれぞれ取付けられるようにしたことにより、高価な荷重検知手段8Aの数を支持点24a〜24dの総数以下に減らして、コスト削減を図ることができる。
但し、荷重検知手段8Aの設置個数を、座席2の支持点24a〜24dの総数以下とした場合、荷重検知信号の総和が乗員による荷重よりも小さくなり、また、走行状態(例えば、右カーブや左カーブなど)による影響を受け易くなって不利が生じるものの、上記したように、走行中には、乗員判定信号によるエアバッグ装置3の作動・不作動の判断を行わないようにしているので、荷重検知手段8Aの設置個数を減らしても、正しい作動判断の結果を得ることが可能となる。
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
2 座席
3 エアバッグ装置
7 乗員検知システム
8 乗員検知手段
8A 荷重検知手段
9 乗員検知用コントローラ
11 乗員判定部11
12 作動判断部
13 走行検知部
16 走行波形除去部
21 車体
24a〜24d 支持点

Claims (2)

  1. 座席周辺に取付けた乗員検知手段と、該乗員検知手段からの乗員検知信号に基づいてエアバッグ装置の作動・不作動を判断する乗員検知用コントローラとを備え、
    前記乗員検知手段が、座席に着座した乗員による荷重を検知可能な荷重検知手段であり、
    前記乗員検知用コントローラが、前記荷重検知手段からの荷重検知信号に基づき、乗員判定を行う乗員判定部と、該乗員判定部からの乗員判定信号に基づき、エアバッグ装置の作動・不作動を判断して作動判断信号を発生する作動判断部とを備えた乗員検知システムであって、
    更に、乗員検知用コントローラが、前記荷重検知手段からの荷重検知信号に基づき、走行中であるか否かを検知する走行検知部を備え、
    前記作動判断部が、前記走行検知部からの走行検知信号に基づいて、停車中である場合には前記乗員判定信号によるエアバッグ装置の作動・不作動の判断を行い、走行中である場合には前記乗員判定信号によるエアバッグ装置の作動・不作動の判断を行わずに前回の判断結果を保持するよう構成されると共に、
    前記乗員検知用コントローラが、荷重検知手段の荷重検知信号から走行中であることを示す走行波形を除去可能な走行波形除去部を備え、該走行波形除去部がローパスフィルタであり、
    前記乗員判定部が、荷重検知手段の荷重検知信号から、走行波形除去部によって走行波形を除去した後の走行波形除去信号に基づいて乗員判定信号を求め、
    前記走行検知部が、走行波形除去部によって走行波形を除去する前の、荷重検知手段の走行波形を含む荷重検知信号に基づいて走行検知信号を求めるよう構成されたことを特徴とする乗員検知システム。
  2. 車体に対し、座席が複数の支持点にて支持されている場合に、
    前記荷重検知手段が、少なくとも1つ支持点を除く少なくとも1つ以上の支持点に対してそれぞれ取付けられたことを特徴とする請求項記載の乗員検知システム。
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