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JP5685409B2 - ポリアミドイミド系皮膜用塗料 - Google Patents

ポリアミドイミド系皮膜用塗料 Download PDF

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JP5685409B2 JP2010205609A JP2010205609A JP5685409B2 JP 5685409 B2 JP5685409 B2 JP 5685409B2 JP 2010205609 A JP2010205609 A JP 2010205609A JP 2010205609 A JP2010205609 A JP 2010205609A JP 5685409 B2 JP5685409 B2 JP 5685409B2
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Description

本発明は、ポリアミドイミド系皮膜用塗料に関し、特には、規制物質又は規制が懸念される物質を含まないポリアミドイミド系皮膜用塗料に関する。
ポリアミドイミド樹脂(PAI)は、耐熱性、耐薬品性、高温下での優れた機械的適性、耐摩耗性及び摺動特性に優れるため、耐熱塗料、耐薬品性塗料、潤滑性塗料、耐熱絶縁塗料など各種塗料のバインダーとして広く使用されている。
ポリアミドイミド樹脂は、極性が強いため、ポリアミドイミド樹脂と親和性の高い溶剤は限られている。従来、ポリアミドイミド樹脂の溶解性に優れた溶剤として、主に、N‐メチルピロリドン(NMP)が用いられている(例えば、特許文献1を参照。)。
また、ポリアミドイミド樹脂をγ‐ブチロラクトン(GBL)とN‐メチルピロリドンとの混合溶媒中で合成して、ポリアミドイミド樹脂溶液を得る方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照。)。
特開平07−97517号公報 特開2008−133410号公報
しかし、N‐メチルピロリドンは、生体への影響が懸念される規制物質に認定され、その使用が制限される可能性がある。このため、代替物質の検討が行われ、候補として、例えば、N‐エチルピロリドン(NEP)が挙げられている。しかし、N‐エチルピロリドンは、N‐メチルピロリドンと分子構造が類似しているため、同様の生体への影響を有する危険性があり、今後の調査によって使用が規制される可能性がある。
また、γ‐ブチロラクトンは、ポリアミドイミド樹脂を溶解するが、沸点が204℃と高いため、溶媒としてγ‐ブチロラクトンだけを使用すると、乾燥性が悪く、レベリング性が低下して塗装性に劣るという問題もある。
そこで、本発明の目的は、N‐メチルピロリドン、N‐エチルピロリドンなどの規制が懸念される物質及び規制物質を含まず、N‐メチルピロリドンなどの溶媒を使用した従来の塗料との代替が可能なポリアミドイミド系皮膜用塗料を提供することである。
本発明に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、バインダーとしてポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解したポリアミドイミド系皮膜用塗料であって、前記溶剤は、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンを含有し、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が50体積%以上80体積%以下であり、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンの合計体積が、溶剤の全体積に対して、90体積%以上であることを特徴とする。γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対するγ‐ブチロラクトンの体積を80体積%以下とすることで、塗装性及び乾燥性に優れた塗料とすることができる。また、焼成温度を下げることができる。
本発明に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料では、さらに、固体潤滑剤を含有することが好ましい。摺動特性に優れた塗料とすることができる。
本発明に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料では、前記固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイトの少なくとも1種であることが好ましい。摺動特性が向上し、優れた塗料とすることができる。
本発明に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料では、さらに、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。耐摩耗性が向上し、優れた塗料とすることができる。
本発明は、N‐メチルピロリドン、N‐エチルピロリドンなどの規制が懸念される物質及び規制物質を含まず、N‐メチルピロリドンなどの溶媒を使用した従来の塗料との代替が可能なポリアミドイミド系皮膜用塗料を提供することができる。
γ‐ブチロラクトン、シクロペンタノン及びそれらの混合液の蒸留温度の変化を示したグラフである。
次に本発明について実施形態を示して詳細に説明するが本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、バインダーとしてポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解したポリアミドイミド系皮膜用塗料であって、前記溶剤は、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンを含有し、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が50体積%以上80体積%以下であり、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンの合計体積が、溶剤の全体積に対して、90体積%以上である
ポリアミドイミド樹脂は、分子中にアミド結合とイミド結合とを有する重合体であり、アミド結合由来の加工性及び強靭性と、イミド結合由来の耐熱性及び機械的強度とを兼ね備えている。ポリアミドイミド樹脂は、通常用いられる方法で製造できる。その方法は、例えば、イソシアネート法、酸クロリド法又は直接重合法である。本実施形態は、ポリアミドイミド樹脂の製造方法に限定されない。各重合方法は、いずれもアミド結合をしながら重合し、高分子量化していくが、この高分子量化と同時に又は後からアミド酸部分の分子内などでイミド化が行われ、目的のポリアミドイミドとなって、溶媒中に溶解して得られる。このうち、重合性やコスト、環境負荷の点でイソシアネート法が好ましい。なお、ポリアミドイミド樹脂には、全てのアミド酸部分がイミド化したポリアミドイミド樹脂(以降、反応完了型ポリアミドイミド樹脂という。)と未イミド化のアミド酸部分を含有するポリアミドイミド樹脂(以降、反応未完了型ポリアミドイミド樹脂という。)とがあるが、本実施形態では、ポリアミドイミド樹脂が、反応完了型ポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。反応型ポリアミドイミド樹脂とすることで、塗膜の摩擦係数をより低くすることができる。
ポリアミドイミド樹脂は、ポリアミドイミド樹脂の重合溶液から分離した粉末状若しくはペレット状の形態で使用するか、又はポリアミドイミド樹脂の重合溶液をそのまま若しくは希釈したワニス状の形態で使用することができる。粉末状若しくはペレット状又はワニス状のポリアミドイミド樹脂は、いずれも市販のものを使用できる。ワニス状のポリアミドイミド樹脂を使用する場合は、重合用溶媒として、N‐メチルピロリドン、N‐エチルピロリドンなどの規制が懸念される物質及び規制物質以外の溶媒を使用したワニスを使用することが好ましい。より好ましくは、溶媒としてγ‐ブチロラクトンを使用したワニスを使用する。溶媒としてγ‐ブチロラクトンを使用したワニスは、例えば、日立化成社製の商品名HPC5030として、市販されている。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料では、ポリアミドイミド樹脂の含有量が、塗料の全固形分100質量部に対して、40〜85質量部であることが好ましい。より好ましくは、50〜70質量部である。40質量部未満では、耐摩耗性が不十分になる場合がある。85質量部を超えると、摩擦係数が劣る場合がある。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、溶剤としてγ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとを含有する。前述のとおり、γ‐ブチロラクトンは、ポリアミドイミド樹脂を溶解するが、γ‐ブチロラクトンの沸点は、204℃であり、溶媒としてγ‐ブチロラクトンを単独で使用すると、乾燥性に時間がかかる傾向を示し、塗装性も劣る。また、焼成温度を従来のN‐メチルピロリドンなどを使用した塗料(以降、従来塗料という。)よりも高く設定する必要があり、工法の変更を要する場合があり、代替品として適さない。
図1は、γ‐ブチロラクトン、シクロペンタノン及びそれらの混合液の蒸留温度の変化を示したグラフである。本発明者らは、γ‐ブチロラクトンと沸点が130℃であるシクロペンタノンとを任意の割合で混合し、その混合液の蒸留特性を評価したところ、γ‐ブチロラクトンの配合割合が少なくなるほど(シクロペンタノンの配合割合が多くなるほど)、初留点が低くなる傾向にあることを見出した。γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積100体積%に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が70体積%以下では、混合液の初留点が、シクロペンタノン単独での初留点に近いことを確認した。したがって、塗料の溶剤として、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとを用いることで、効率的に乾燥でき、残留溶剤量を減らすことができる。初留点が低下する機構は、共沸によるものと考えられる。したがって、塗料の溶剤として、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとを用いることで、溶剤が急激に乾燥除去されることなく、より均一な塗膜を形成することができる。
前述のとおり、γ‐ブチロラクトンは、ポリアミドイミド樹脂を主に溶解する役割をもち、シクロペンタノンは、粘度調整や固体潤滑剤の分散を容易にし、乾燥性を向上する役割をもつ。γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が50体積%以上とする。より好ましくは、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が60体積%以上とし、特に好ましくは、70体積%以上とする。γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が50体積%未満では、ポリアミドイミド樹脂の溶解性が劣る。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が95体積%以下であることが好ましい。より好ましくは、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が90体積%以下であり、特に好ましくは、80体積%以下である。γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が95体積%を超えると、乾燥性及び塗装性に劣る場合がある。また、焼成に必要な温度が、従来塗料よりも高くなる場合がある。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノン以外のその他の溶剤を含有することができる。その他の溶剤は、例えば、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、エタノール、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノンである。ただし、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンの合計体積が、溶剤の全体積に対して、90体積%以上とすることが好ましい。より好ましくは、95体積%以上である。特に好ましくは、100体積%、すなわち、溶剤として、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンだけを含有する形態である。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料では、さらに、固体潤滑剤を含有することが好ましい。固体潤滑剤は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂などのフッ素樹脂、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、グラファイト、カーボンブラック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ワックス、グリスである。本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料では、固体潤滑剤は、二硫化モリブデン(MoS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、グラファイトの少なくとも1種であることが好ましく、固体潤滑剤として、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン及びグラファイトのいずれも含む形態がより好ましい。これらの固体潤滑剤を配合することで、耐摩耗性、摩擦係数低減などの摺動特性に優れた塗料とすることができる。摺動部は、例えば、斜板式圧縮機のピストン、シュー又はシューポケット、内燃機関のシリンダボア又はピストンスカートである。なお、本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、溶剤としてγ‐ブチロラクトン及びシクロヘキサノンを含有するため、固体潤滑剤を均一に分散し、かつ、分散状態を維持することができる。固体潤滑剤の合計含有量は、本実施形態では特に限定されないが、塗料の全固形分100質量部に対して、15〜45質量部とすることが好ましい。より好ましくは、25〜35質量部である。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料では、さらに、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。エポキシ樹脂は、硬化剤としての役割をもち、ポリアミドイミド樹脂を架橋、硬化させて、塗膜の耐摩耗性を向上させる。また、金属基材への塗膜の密着性を向上することができる。なお、本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、溶剤としてγ‐ブチロラクトン及びシクロヘキサノンを含有するため、エポキシ樹脂との親和性に優れ、高い溶解性を有する。したがって、沈殿又は白濁することなく、ポリアミドイミド樹脂とエポキシ樹脂との硬化反応を阻害しない。また、経時によって沈殿物又はゲル化物が発生することなく、貯蔵安定性に優れる。エポキシ樹脂の種類は、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、脂環族型エポキシ樹脂である。
エポキシ樹脂の合計含有量は、本実施形態では特に限定されないが、ポリアミドイミド樹脂100質量%に対して、1〜50質量%とすることが好ましい。より好ましくは、10〜35質量%である。1質量%未満では、エポキシ樹脂を配合する効果が発揮されない場合がある。50質量%を超えると、塗膜が脆くなり、耐摩耗性、密着性、耐熱性が低下する場合がある。
塗料には、本発明の効果を損なわない限り、更に、界面活性剤、沈降防止剤などの各種助剤を配合することができる。例えば、界面活性剤として、フッ素系界面活性剤を配合することで、固体潤滑剤として配合したポリテトラフルオロエチレンを塗料中に均一に分散し、かつ、分散状態を維持することができる。フッ素系界面活性剤は、使用が規制されるペルフルオロオクタン酸などの過フッ素化界面活性剤以外のフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。なお、本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、溶剤としてγ‐ブチロラクトン及びシクロヘキサノンを含有するため、フッ素系界面活性剤との親和性に優れる。
本実施形態に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、従来塗料と同様の粘性特性を有するため、従来塗料と同様の工法で、皮膜を形成することができる。従来塗料と同様の工法とは、例えば、塗装に適した固形分濃度に調製し、80〜100℃に予熱したポリアミドイミド系皮膜用塗料を、基材上にスプレー塗装し、塗装面を80〜100℃で10分以上乾燥させた後、170〜240℃で15〜90分焼成する方法である。なお、従来塗料と同様の工法は、これに限られない。
ポリアミドイミド系皮膜用塗料の固形分濃度は、塗装方法に応じた粘度になるように適宜調製することができる。
次に、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、添加部数は、固形分換算の値である。
(実施例1)
バインダーとしてのポリアミドイミド樹脂をγ‐ブチロラクトンに溶解したポリアミドイミドワニス(商品名HPC5030、日立化成社製)(固形分濃度32質量%)を、ポリアミドイミド樹脂換算で50質量部と、エポキシ樹脂15質量部と、固体潤滑剤として二硫化モリブデン15質量部、ポリテトラフルオロエチレン10質量部及びグラファイト10質量部と、を配合して混合した。この混合物を固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンを用いて希釈し、フッ素系界面活性剤と沈降防止剤とを配合してポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。ここで、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比は、70:30とした。
(実施例2)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、50:50とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
参考例3)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、95:5とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
参考例4)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、90:10とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
(実施例5)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、80:20とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
(実施例6)
実施例1において、エポキシ樹脂を配合しない以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
(比較例1)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン及びメチルエチルケトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンと、メチルイソブチルケトンと、メチルエチルケトンとの体積比は、60:20:20とした。
(比較例2)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン、メチルイソブチルケトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとメチルイソブチルケトンとの体積比は、70:30とした。
(比較例3)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びメチルエチルケトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとメチルエチルケトンとの体積比は、70:30とした。
(比較例4)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びアセトンとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとアセトンとの体積比は、70:30とした。
(比較例5)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びエタノールとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとエタノールとの体積比は、70:30とした。
(比較例6)
実施例1において、希釈に使用する溶剤をγ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンに替えて、γ‐ブチロラクトン及びジアセトンアルコールとした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。γ‐ブチロラクトンとジアセトンアルコールとの体積比は、70:30とした。
(比較例7)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、35:65とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
(比較例8)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、30:70とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
(比較例9)
実施例1において、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のγ‐ブチロラクトン及び希釈に使用したγ‐ブチロラクトンの合計体積とシクロペンタノンの体積との比を、100:0とした以外は、実施例1に準じてポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。
(比較例10)
バインダーとしてのポリアミドイミド樹脂をN‐メチルピロリドンに溶解したポリアミドイミド樹脂ワニス(商品名HPC6000‐26、日立化成社製)(固形分濃度26質量%)を、ポリアミドイミド換算で55質量部と、エポキシ樹脂10質量部と、固体潤滑剤として二硫化モリブデン15質量部、ポリテトラフルオロエチレン10質量部及びグラファイト10質量部と、を配合して混合した。この混合物を固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてN‐メチルピロリドン、o‐キシレン、N,N‐ジメチルアセトアミド及び1,4‐ジオキサンを用いて希釈してポリアミドイミド系皮膜用塗料を調製した。ここで、ポリアミドイミド樹脂ワニス中のN‐メチルピロリドン及び希釈に使用したN‐メチルピロリドンの合計体積と、o‐キシレンの体積と、N,N‐ジメチルアセトアミドの体積と、1,4‐ジオキサンの体積との比は、20:10:20:50とした。
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料について、次の方法で評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 0005685409
(塗料性)
実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料の配合及び分散工程において、固体潤滑剤の分散状態及びポリアミドイミド樹脂の溶解性を、目視にて観察し、塗料性を確認した。ポリアミドイミド樹脂の溶解性は、塗料を目視で観察し、ポリアミドイミド樹脂の凝集の有無を確認した。評価基準は次のとおりである。
○:分散工程中及び完成塗料中に凝集物がなく、ポリアミドイミド樹脂が溶解し均一である(実用レベル)。
△:途中分散工程で均一分散していないが、最終工程までには、塗料中に凝集物がなく、ポリアミドイミド樹脂が溶解し均一である(実用下限レベル)。
×:溶解性低下からポリアミドイミド樹脂が凝集によりゲル化を引き起こす(実用不適)。
(塗装性)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料を90℃に予熱し、銅合金円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmとなるように塗装条件を固定してスプレー塗装した。この時の塗装面の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。
○:塗装面が均一で良好である(実用レベル)。
×:塗装面が不均一で、うねり及びムラがある(実用不適)。
(乾燥性)
塗装性評価で得られた塗装面を90℃で10分間乾燥し、更に190℃で1時間焼成して塗膜を形成した。JIS K5600‐3‐3「塗料一般試験方法−第3部:塗膜の形成機能−第3節:硬化乾燥性」に従って試験を行った。評価基準は次のとおりである。
○:表面に傷又は跡がない(実用レベル)。
×:表面に傷又は跡がある(実用不適)。
(貯蔵安定性)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料100mlを試料ビンに密封し、雰囲気温度25℃及び雰囲気湿度50%で30日間放置した後、目視で塗料の状態を確認した。評価基準は次のとおりである。
◎:ゲル化物及び沈殿物がなく、均一な状態で、粘度も変化無し(実用レベル)。
○:沈殿物が見られるが、再度分散させると均一な状態にもどり、粘度も変化無し(実用レベル)。
×:ゲル化物及び沈殿物が見られ、再度分散させても均一な状態にならない。(実用不適)。
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
(摺動特性‐耐摩耗性)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料を、90℃に予熱した銅合金円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmとなるようにスプレー塗装した。その後、90℃で10分間乾燥し、更に190℃で1時間焼成して塗膜を形成した。この塗膜試験片をSUJ2ボールを相手材として往復動摩耗試験を行った。摺動試験条件は、15mm/sで100サイクルとした。摺動試験後、塗膜の摩耗深さを測定した。評価基準は次のとおりである。
◎:最も摩耗している部分の摩耗深さが3μm以下である(実用レベル)。
○:最も摩耗している部分の摩耗深さが3μmを超え5μm未満である(実用レベル)。
△:最も摩耗している部分の摩耗深さが5μmを超え7μm未満である(実用下限レベル)。
×:最も摩耗している部分の摩耗深さが7μm以上である(実用不適)。
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
(摺動特性‐摩擦係数)
得られた実施例及び比較例のポリアミドイミド系皮膜用塗料を、90℃に予熱した銅合金円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に塗膜の厚さが10μmとなるようにスプレー塗装した。その後、90℃で10分間乾燥し、更に190℃で1時間焼成して塗膜を形成した。この塗膜試験片をSUJ2ボールを相手材として往復動摩耗試験を行った。摺動試験条件は、15mm/sで100サイクルとし、各サイクル毎に摩擦係数を測定した。比較例10の平均摩擦係数(A)を算出し、実施例及びその他の比較例の塗膜の平均摩擦係数(B)の値との差(B−A)を算出した。評価基準は次のとおりである。
◎:B−Aが ±0.003以下である(実用レベル)。
○:B−Aが0.003超え0.005未満である(実用レベル)。
△:B−Aが0.005超え0.01未満である(実用下限レベル)。
×:B−Aが0.01以上である(実用不適)。
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
(密着性)
JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に従って、1mm×1mmの碁盤目状の切込みを100個入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準についても同規格に準じて評価を行った。
0:(実用レベル)
1〜5:(実用不適)
−:ポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解していないため、試験を行わなかった。
実施例1〜実施例6のポリアミドイミド系皮膜用塗料は、いずれもN‐メチルピロリドン、N‐エチルピロリドンなどの規制が懸念される物質及び規制物質を含まず、ポリアミドイミド樹脂の溶解性が良好で、塗料性に優れており、従来塗料と同様の工法で塗膜を形成することができた。さらに、得られた塗膜は、塗装性、乾燥性、貯蔵安定性、摺動特性及び密着性に優れていた。実施例1と実施例6とについて耐摩耗性を比較すると、実施例1のほうが優れており、エポキシ樹脂を配合することで、耐摩耗性を向上できることが確認できた。比較例10は、従来塗料であるが、実施例1〜実施例5のポリアミドイミド系皮膜用塗料で形成した塗膜は、比較例10の塗料で形成した塗膜と比較して同等以上の特性を示した。
比較例1〜比較例6は、溶媒としてシクロペンタノンに替えてその他の有機溶媒とγ‐ブチロラクトンとを使用したため、ポリアミドイミド樹脂が凝集してゲル化を引き起こし、塗料性及び塗装性に劣った。また、シクロペンタノンを含有しなかったため、乾燥性に劣った。比較例7及び比較例8は、γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が50体積%未満であったため、ポリアミドイミド樹脂の溶解性が劣り、塗料性に劣った。比較例9は、シクロペンタノンを含有せず、γ‐ブチロラクトンだけを使用したため、塗料性及び塗装性に劣った。
本発明に係るポリアミドイミド系皮膜用塗料は、従来塗料と同様の工法で使用でき、かつ、同等以上の特性を示すため、従来塗料との代替が可能である。例えば、自動車、車両機械、産業機械、OA機器又は家電機器の分野において、初期なじみ、耐摩耗性、フリクション低減、永久潤滑を目的とするポリアミドイミド系皮膜用塗料に好適である。

Claims (4)

  1. バインダーとしてポリアミドイミド樹脂が溶剤に溶解したポリアミドイミド系皮膜用塗料であって、前記溶剤は、γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンを含有し、
    γ‐ブチロラクトンとシクロペンタノンとの合計体積に対して、γ‐ブチロラクトンの体積が50体積%以上80体積%以下であり、
    γ‐ブチロラクトン及びシクロペンタノンの合計体積が、溶剤の全体積に対して、90体積%以上であることを特徴とするポリアミドイミド系皮膜用塗料。
  2. さらに、固体潤滑剤を含有することを特徴とする請求項に記載のポリアミドイミド系皮膜用塗料。
  3. 前記固体潤滑剤が、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイトの少なくとも1種であることを特徴とする請求項に記載のポリアミドイミド系皮膜用塗料。
  4. さらに、エポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一つに記載のポリアミドイミド系皮膜用塗料。
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