[レーザレーダ装置の構成例]
図1は、本発明のレーザレーダ装置を搭載した車両の外観構成例を示す図である。図1の車両11は、フロントガラス21の内側(車内)であって、図示せぬルームミラーの裏側の位置に、レーザレーダ装置22を搭載している。レーザレーダ装置22は、車両11の前方の監視領域に対して光を投光し、監視領域内に存在する物体により反射されてくる反射光を受光する。そして、レーザレーダ装置22は、光を投光したタイミングと、反射光を受光したタイミングとから物体までの距離を測定する。尚、図1においては、レーザレーダ装置22は、フロントガラス21の内側であって図示せぬルームミラーの裏側の位置に搭載される例について示されているが、車内であって光が外部に投光受光可能なガラス面の内側であれば、フロントガラス21の内側に限らず、リアガラスやサイドガラスの内側に設置されるようにしてもよいものである。
図2乃至図8は、レーザレーダ装置22の構成例を示した図である。より詳細には、図2は、レーザレーダ装置22を前方上部から見た時の外観斜視図であり、図3は、図2のレーザレーダ装置22におけるカバー41を外したときの投光部51、受光部52、および雨滴センサ53の配置を示す斜視図である。また、図4は、図2のレーザレーダ装置22の図2に対して向かって左側面の断面図である。さらに、図5は、図3の雨滴センサ53を正面とした、雨滴センサ53の周辺の拡大図であり、図6は、図3の投光部51、受光部52、および雨滴センサ53の配置を示す上面図である。また、図7,図8は、それぞれ図3の投光部51、受光部52、および雨滴センサ53の配置を示す図の、図3の右側面からの拡大図、および左側面からの拡大図である。
レーザレーダ装置22の外観構成は、カバー41により投光部51、受光部52、および雨滴センサ53が覆われており、それぞれの投光部51の投光用の開口部、受光部52の受光用の開口部、および雨滴センサ53の雨滴検知用の開口部のみが開いた構成とされる。レーザレーダ装置22の監視領域は、図2の図中手前方向であり、このため、投光部51は、図中手前方向に対して光を発生して投光し、受光部52は、投光部51により投光された光のうち、図中手前方向に対して存在する物体により反射される反射光を受光する。また、図3で示されるように、投光部51、受光部52、および雨滴センサ53は、基板71を介して電気的に接続されている。さらに、投光部51、受光部52、および雨滴センサ53は、フレーム72により固定されており、車両の振動などにより、相互の位置関係が変化しない構成とされている。
また、雨滴センサ53は、例えば、赤外光を投光し、フロントガラス21より反射される反射光の受光に基づいて雨滴の量を検出する。より詳細には、赤外光は、フロントガラス21に当たる雨滴を透過することになるため、反射する光量が減少する傾向がある。そこで、雨滴センサ53は、投光した赤外光がフロントガラス21より反射された光の光量に基づいて雨滴量を検出する。検出された雨滴の量に基づいて、例えば、図示しないワイパの駆動頻度を制御することが可能となる。尚、この実施例では、投光部51と受光部52の間の空間に、雨滴センサ53を配置する構成としているが、雨滴センサ53の代わりに、カメラや日射センサなどを前記空間に備えた構成とすることもできる。
さらに、図2,図3,図5,図6で示されるように、投光部51、受光部52、および雨滴センサ53は、進行方向から見て水平方向に対して略一列に配置されているため、レーザレーダ装置22の縦方向の厚さを薄く構成することが可能となる。結果として、レーザレーダ装置22は、フロントガラス21において、ルームミラーとフロントガラス21との間に設置することが可能となり、ドライバの視界を妨げる領域を最小とすることができるので、視界を広く確保することが可能となる。
また、図2,図3,図6乃至図8で示されるように、雨滴センサ53が最も前方にせり出して設けられ、次いで投光部51が前方に設けられ、受光部52が最も後方に設けられている。このような構成により、投光部51により投光された光が、受光部52に直接受光し難くなるので、受光部52により投光部51で投光された光が直接受光されることで発生するノイズを低減させることが可能となる。また、雨滴センサ53の存在する位置が投光部51と受光部52との間仕切りとなり、投光部51により投光された光のうち、フロントガラス21により反射されて受光部52に直接受光される光を遮光することが可能となり、結果として、投光部51から投光された光が受光部52により直接受光されることで生じるノイズを低減させることが可能となる。
さらに、投光部51から監視領域を見た時の左側の端部に沿った左側面(図中の右側面)には、遮光壁42が設けられている。遮光壁42は、投光部51が投光した光の、投光部51から見た監視領域の左側の限界からなる側面(図中の右側面)よりも左方向(図中の右方向)に進もうとする散乱光、または何らかの影響によりフロントガラス21などに反射して、監視領域の左側の限界からなる側面よりも左側に進もうとする反射光を遮光、または反射する。
また、投光部51から監視領域を見た時の右側の端部に沿った右側面(図中の左側面)には、遮光壁44が設けられている。遮光壁44は、投光部51が投光した光の、投光部51から見た監視領域の右側の限界からなる側面(図中の左側面)よりも右方向(図中の左方向)に進もうとする散乱光、または何らかの影響によりフロントガラス21などに反射して、監視領域の右側の限界からなる側面よりも右側に進もうとする反射光を遮光、または反射する。
さらに、投光部51から監視領域を見た時の下側の端部の面に沿って、遮光底43が設けられている。遮光底43は、投光部51が投光した光の、投光部51から見た監視領域の下側の限界となる面に構成されており、投光部51から投光された光のうち、フロントガラス21により反射された光を監視領域の存在する方向に反射、または遮光する。すなわち、遮光底43は、図2の手前方向に対して下方向に傾斜した面から構成されているため、投光部51より投光された光のうち、フロントガラス21により反射されて、遮光底43に入射してくる光が存在しても、監視領域の存在する前方に反射するため、受光部52がフロントガラス21により反射された光を直接受光することを防止することができる。
受光部52から監視領域を見た時の左側の端部に沿った左側面(図中の右側面)には、遮光壁45が設けられている。遮光壁45は、受光部52が監視領域に存在する物体より反射される光の、受光部52から見た監視領域の左側の限界からなる側面(図中の右側面)よりも左から(図中の右から)受光される恐れのある散乱光、または何らかの影響によりフロントガラス21などに反射して、監視領域の左側面から受光される可能性のある反射光を遮光する。
また、受光部52から監視領域を見た時の右側の端部に沿った右側面(図中の左側面)には、遮光壁47が設けられている。遮光壁47は、受光部52が監視領域に存在する物体より反射される光の、受光部52から見た監視領域の右側の限界からなる側面(図中の左側面)よりも右から(図中の左から)受光される恐れのある散乱光、または何らかの影響によりフロントガラス21などに反射して、監視領域の右側面から受光される可能性のある反射光を遮光する。
さらに、受光部52から監視領域を見た時の下側の端部の面に沿って、遮光底46が設けられている。遮光底46は、受光部52から見た監視領域の下側の限界となる面に構成されており、監視領域の存在する方向から入射してくる反射光のみを受光部52に受光させる。すなわち、遮光底46は、図2の手前方向に対して下方向に傾斜した面から構成されているため、監視領域に存在する物体から反射されて、遮光底46に入射してくる光が存在しても、反射させることにより受光部52で受光させることが可能となる。
すなわち、投光部51より光を投光する開口部より前面部には、塵取り状に光を遮光、または反射する遮光壁42,44、および遮光底43が設けられることにより、投光部51より投光された光を、監視領域にのみ確実に投光させるようにすることが可能となる。
また、受光部52より光を受光する開口部より前面部には、塵取り状に光を遮光する遮光壁45,47、および遮光底46が設けられることにより、投光部51より投光された光のうち、監視領域に存在する物体によって反射された光のみを確実に受光させるようにすることが可能となる。
結果として、投光部51より投光された光が、直接受光部52に受光されてしまうことにより生じるノイズを低減させることが可能となる。
さらに、図2,図4で示されるように、遮光壁42,44,45,47のフロントガラス21との当接面42a,44a,45a,47a、および、遮光底43,46のフロントガラス21との当接面43a,46aは、いずれもフロントガラス21に対して略平行する面として構成されている。このため、レーザレーダ装置22の本体は、フロントガラス21に対して密着した状態で図示せぬルームミラーの裏側であって、フロントガラス21の内側に設置することが可能となる。
この結果、遮光壁42,44、および遮光底43は、確実に投光部51より投光された光を監視領域に対してのみ投光させることが可能となる。同様に、遮光壁45,47、および遮光底46は、投光部51より投光された光のうち、監視領域に存在する物体から反射される光のみを受光部52に受光させることが可能となる。そして、これらが組み合わされることにより、投光部51より投光される光が監視領域にのみ確実に投光され、かつ、受光部52により監視領域に存在する物体から反射される光のみを受光させることが可能となるので、受光部52において、投光部51より投光される光が直接受光されることにより生じてしまうノイズを低減させることが可能となり、適切に物体までの距離を測定することが可能となる。
図6で示されるように、投光部51には、レーザ光を発生するレーザダイオードLDからなる投光回路92、および投光回路92により発生されたレーザ光を、複数の方向毎の平行光に変換する投光光学系91が設けられている。
[投光光学系の構成例]
投光光学系91は、図9で示されるようなものであり、投光回路92より発生されるレーザ光の入射面91aが図9の左部で示されるように半円筒状に構成されており、水平方向に対してコリメータレンズとして機能する。また、投光光学系91の出射面91bは、水平方向に対してレンチキュラ、またはレンズアレイより構成されており、コリメータレンズとして機能する入射面91aにより生成された平行光を、複数の方向の平行光に変換して出射させる。
すなわち、従来の投光光学系においては、例えば、図10で示されるように、レーザダイオードからなる光源LD111により発生されたレーザ光を監視領域Z1に向けて拡散して照射させるため、投光光学系112により光源LD111からみて水平方向にX°、および垂直方向にY°だけ拡散して投光する構成とするのが一般的であった。
しかしながら、この場合、車内からフロントガラスを介して監視領域に投光することを考えると、図11の左部で示されるように、フロントガラス122に汚物などが付着することで遮光領域Bが発生するとき、光源LD111で発生されたレーザ光が、投光光学系112により拡散されて、フロントガラス122を透過すると、遮光領域Bより前方には投光部111からの光が投光されない状態となる。この結果、図11の右部で示されるように、横軸が拡散された光の強度を表し、縦軸が図11左部における縦方向の座標を表す強度分布W1をプロットすると、遮光領域に対応した強度分布がブラインドスポットBSとして発生する。この結果、遮光領域Bより前方に物体があっても、投光された光が物体に投光されない(極弱い光しか投光されない)ので、反射光も発生しないことになる(極弱い反射光となる)ので、物体の距離は当然のことながら、物体の存在そのものを検知することもできない(検知し難い)死角が発生してしまう。
これに対して、図9の投光光学系91の出射面91bで示されるように、水平方向に複数の曲面凸状のレンズ部位が設けられたレンチキュラ、またはレンズアレイとして構成することで、曲面凸状のレンズ部位のそれぞれが、拡散光を発生することにより、図12で示されるように、複数の方向に対して曲面凸状のレンズ部位d1乃至d9の数からなる平行光を発生させることが可能となる。尚、曲面凸状のレンズ部位d1乃至d9の数は、図12においては、9個である例について示されているが、これ以外の数であってもよい。
このため、フロントガラス21上に汚物などによる遮光領域Bが存在していても、平行光により遮光領域Bによるブラインドスポットの発生を抑制するように光が拡散されて監視領域に対して投光されることになるので、図11の右部で示されるものと同様の強度分布を求めた場合、図12の右部の強度分布W11で示されるように、ブラインドスポットBS’は発生するものの、その光強度の落ち込みが周辺の平行光によりカバーされるので、光強度の低下を低減させることが可能となる。
結果として、遮光領域Bよりも前方の監視領域に物体が存在しても、若干光強度が低減するものの、受光部52により受光することが可能な光強度の反射光を発生させることが可能となるので、適切に物体の存在の有無、および距離を検出させることが可能となる。また、監視領域の全体に光を投光させるために、可動部位を設けて監視領域内で、投光方向を変えながら投光する必要がないので、故障が発生し易く、装置構成が複雑になる可動部位のないレーザレーダ装置22を実現することが可能となる。また、監視領域の全範囲に対して同時に投光受光することが可能となるので、可動部位により投光範囲および受光範囲が変化することで、検出が遅れるといったことを防止することができる。さらに、レーザレーダ装置22を車内に設置することができるので、防水や防塵などの構成とする必要がないので、装置コストを低減することが可能となる。このような構成とすることで、騒音の元にもなる可動部位を設ける必要がなくなる。したがって、車内にレーザレーダを取り付けたときに、騒音による悪影響を与えることがなくなる。
[投光光学系の第1の変形例]
以上においては、投光光学系91の出射面91bのレンチキュラ、またはレンズアレイを構成する複数の曲面凸状のレンズ部位の曲率が同一である場合について説明してきたが、複数の曲面凸状のレンズ部位の曲率については、一部を変えるようにすることで、監視領域に変化を加えることが可能となる。
すなわち、例えば、図13の出射面91b’で示されるように、曲面凸状のレンズ部位d1乃至d7が設けられているような場合、レンズ部位d4の曲率を大きくして、その他をレンズ部位d4よりも小さな曲率に設定するとき、レンズ部位d4は、曲率が大きいので、拡散される範囲(角度)を狭く設定することが可能となる。このように、レンズ部位d4により拡散される範囲は、狭くなることから、この狭い範囲においては、光が広く拡散しないので、例えば、図13の右部で示されるような強度分布W21で示されるように、出射面91b’の中央部近傍においては、拡散範囲が狭いものの光の強度を、その狭い範囲については高くすることができる。
一方、図14の出射面91b’で示されるように、レンズ部位d1乃至d3、およびd5乃至d7は、曲率が小さいので、拡散される範囲(角度)を広く設定することが可能となる。このように、例えば、レンズ部位d1により拡散される範囲は、広くなることから、この広い範囲においては、光が広く拡散するので、例えば、レンズ部位d1乃至d3、およびd5乃至d7の全体でみた強度分布は、図14の右部で示されるような強度分布W31で示されるように、出射面91b’の中央部以外においては、光の強度が低くなるが、拡散範囲を広くすることが可能となる。
この結果、図15で示されるように、出射面91’により発生される、複数の平行光からなる光の分布は、レンズ部位d4により光が拡散される範囲は狭い代わりに、強い強度分布を示し、レンズ部位d1乃至d3,d5乃至d7により光が拡散される範囲は広い代わりに弱い強度分布を示す。尚、図15の右部においては、フロントガラス21上に汚物などからなる遮光領域B11が生じていない場合の光の水平方向の強度分布W41、および遮光領域B11が生じた場合の強度分布W41’を示しており、このようにレンズ部位の曲率を変化させて配置しても、遮光領域B11により生じるブラインドスポットによる強度分布の低下が小さいことが示されている。
図16は、図15で示されるような投光光学系91を用いた際の実測値に基づいた強度分布を示している。すなわち、図16においては、横軸が投光される光の水平方向の位置を示しており、縦軸が光の強度を示している。図16の水平方向における中心付近の範囲Z21の強度分布は、出射面91’における、曲率の大きなレンズ部位d4などの比較的拡散範囲が狭いが、光強度が高い光の分布となることを示している。また、図16の水平方向における中心付近以外の範囲Z22の強度分布は、出射面91’における、曲率の小さなレンズ部位d1乃至d3,d5乃至d7などで拡散される光が比較的強度が低いものの、拡散範囲が広い光の分布となることを示している。尚、範囲Z22において、水平方向の中央付近である範囲Z21については、レンズ部位d4などの狭い拡散範囲に拡散された、強度の高い光の分布と重複した領域となっているため、強度が高い範囲とされている。
この強度分布は、例えば、図15の右部で示される強度分布W41で示されるようになる。ここでは、フロントガラス21上のレンズ部位d4に対応する位置に汚物が付着するなどして遮光領域B11が発生しても、周辺のレンズ部位d2,d3,d5,d6などで拡散された光からなる平行光により相互にカバーされるので、図15の右部における強度分布W41’のように強度が遮光領域B11の分だけ低下するが、監視領域における物体に対しては十分な強度の光を投光することができるため、物体の有無、および物体までの距離を測定することが可能となる。
また、投光光学系91を透過することにより、投光回路92により発生されたレーザ光は、図15の強度分布W41(またはW41’)で示されるような特性の光として投光部51より投光される。このような強度分布の光が投光されることにより、レーザレーダ装置22の監視領域を、図17で示されるように、監視領域Z31,Z32の2つの監視領域を組み合わせた領域とすることができる。すなわち、強度分布W41で示されるように、投光光学系91の正面方向の狭い範囲においては、光の強度が強いため、投光された光はより遠くまで照射されることになるため、車両11−1の正面方向を含む図中の角度Aで示される狭い範囲に対しては、遠い領域を含む監視領域Z31が設定されることになる。一方、強度分布W41で示されるように、投光光学系91の正面以外の図中の角度Bで示される広い範囲においては、光の強度が弱いため、投光された光は車両11−1に近い監視領域Z32が設定されることになる。尚、図17においては、車両11−1,11−2が、それぞれ図中右方向に走行している状態を示しており、車両11−1に搭載されている図示せぬレーザレーダ装置22が、先行している車両11−2との距離を測定する場合における監視領域の設定例を車両11−1,11−2の上方から俯瞰する図となっている。
結果として、車両11−1に設けられたレーザレーザ装置22の投光部51は、正面前方に走行中の車両11−2と接触すると重大な事故を発生する恐れがあるので、より遠くを監視領域に設定することで、重大な事故を誘発しないために前方の車両との距離をより遠い位置から車両11−2を検出することが可能となる。また、車両11−1に設けられたレーザレーザ装置22の投光部51は、車両の進行方向に対して側面方向から接近する恐れのある物体(飛び出してくる人物や隣の車線の車両)については、比較的車両に接近した距離であって、車両11−1の進行方向とのなす角が広い範囲で物体を検出することが可能となる。
尚、以上においては、進行方向を前方としたとき、車両11の中央前方付近の範囲を車両11から遠方までカバーするように設定すると共に、それ以外の範囲を車両11から近傍の範囲とするように監視領域を設定する例について説明してきたが、監視領域の設定範囲は、これに限るものではなく、中央前方を近傍までの範囲に設定し、それ以外を遠方の範囲となるように監視領域を設定してもよいし、左前方を遠方の範囲とするようにして、右前方を近傍の範囲とするように監視領域を設定するようにしてもよいし、左右の範囲を入れ替えて監視領域を設定するようにしてもよい。これらの配置の切り替えは、異なる曲率のレンズ部位の配置を、監視領域の設定に合わせて入れ替えることで実現することが可能となる。
[投光光学系の第2,第3の変形例]
以上においては、投光光学系91の入射面91aの構成として、水平方向に対してコリメータレンズとして機能する構成について説明してきたが、例えば、図18の左部で示されるように、凹シリンドリカルレンズを構成するようにしてもよい。凹シリンドリカルレンズは、一般に、ライン照明、一方光の画像圧縮、およびレーザ走査光学系の面倒れ補正などに用いられるものである。入射面91aで構成される凹シリンドリカルレンズは、投光回路92より投光されたレーザ光を垂直方向に対してのみ屈折させて、収束、または発散させ、直交する水平方向には屈折させない。
また、図18の右部の投光光学系91においては、レンズ部位d1乃至d7のそれぞれの境界付近を曲面で接続した出射面91b”とする例が示されている。図12で示されるレンズ部位d1乃至d7のそれぞれの接続部位は、レンズ部位を構成する曲面の曲率半径が小さいほど、相互の面が対向する方向に近い面となるため、レンズ部位間に生じる谷間付近で光が均等な強度で拡散し難くなることがある。このため、投光される光が水平方向に均一にならず、結果として受光される光強度に斑が生じる恐れがあった。これに対して、図18の出射面91b”で示されるように、レンズ部位d1乃至d7のそれぞれの境界付近をスムージングした曲面で接続することで、レンズ部位間の谷間付近でも均一な光強度で光を拡散させることが可能となり、水平方向に斑の少ない光を投光することが可能となる。
[レーザレーダ装置を含む車両システムの構成例]
次に、図19を参照して、レーザレーダ装置22を含めた車両11(を構成する車両システム)の構成例について説明する。尚、レーザレーダ装置22の構成については、図20を参照して詳細に後述するものとし、図19の説明においては、その説明は省略するものとする。
車両11は、レーザレーダ装置22、警報出力装置201、トランスミッション制御装置202、ブレーキ制御装置203、ステアリング制御装置204、ボディ制御装置205、パワートレイン制御装置206、シートベルト制御装置211、エアバッグ制御装置212、ドアロック制御装置213、およびパワーシード制御装置214を備えている。
警報出力装置201は、レーザレーダ装置22からの警報情報に基づいて、図示せぬディスプレイによる画像、図示せぬスピーカによる音声、または図示せぬ警告ランプの点灯などにより警報情報を出力する。すなわち、例えば、レーザレーダ装置22により、検視領域内で物体(先行車両、障害物、歩行者等を含む)が検出されて、衝突や接触などの危険が発生する可能性が予見されて、対応する警報情報が供給されると、警報情報に対応する警報を出力することにより、ドライバに危険の発生が予見されていることを図示せぬディスプレイによる画像、図示せぬスピーカによる音声、または図示せぬ警告ランプの点灯などによりドライバに警告する。このような処理により、ドライバは、車両走行時において、衝突などの危険が発生する可能性がある場合、事前に認識することが可能となるので、衝突回避行動や衝撃軽減措置を取ることが可能となる。
トランスミッション制御装置202は、ドライバが操作する図示せぬパドルシフトやギアシフトノブに基づいて、図示せぬトランスミッションを制御する。また、トランスミッション制御装置202は、レーザレーダ装置22より供給されてくる情報に基づいて、図示せぬトランスミッションを制御する。先行車に追従するように走行するクルーズコントロールなどが指示されているような場合、トランスミッション制御装置202は、例えば、レーザレーダ装置22により先行車が検出されて、検出された先行車と所定の距離を維持し、先行車との距離に応じた制御情報が供給されると、ブレーキ制御装置203、およびパワートレイン制御装置206と協働して、車両の速度を加速、または減速させるのに必要とされる状態にトランスミッションを制御する。
このような処理により、所定の距離を維持して先行車に追従するようなクルーズコントロールが指定されている場合、先行車との距離が設定された距離よりも離れたときには、加速に必要なギア比となるようにトランスミッションが制御される。逆に、先行車との距離が設定された距離よりも近づいたときには、ブレーキ制御装置203と協働して、減速するようにエンジンブレーキとして必要な状態にトランスミッションが制御される。結果として、先行車と適切な距離が状態を維持したまま走行することが可能となる。
ブレーキ制御装置203は、ドライバが操作する図示せぬブレーキペダルの動作に応じてブレーキの動作を制御する。また、ブレーキ制御装置203は、レーザレーダ装置22により供給されてくるブレーキ制御情報に基づいてブレーキの動作を制御する。すなわち、レーザレーダ装置22により検出された物体(先行車両、障害物、歩行者等を含む)までの距離の情報に基づいて、図示せぬブレーキを制御するブレーキ制御情報が供給されると、ブレーキ制御装置203は、ブレーキ制御情報に応じてブレーキの動作を制御する。例えば、ブレーキ制御装置203は、レーザレーダ装置22により物体までの距離の情報に基づいて、先行車との衝突の可能性が高いと判定されるとき、緊急停止をするのに必要なブレーキ制御情報が供給されてくると、図示せぬブレーキを制御して減速、または停止させる。このような処理により、ドライバが衝突に際してパニック状態になるようなことがあっても、衝突が発生する直前に衝撃を軽減、または防止することが可能となる。
ステアリング制御装置204は、レーザレーダ装置22より供給されてくるステアリング制御情報に基づいて、図示せぬステアリングの舵角を制御する。ステアリング制御装置204は、レーザレーダ装置22からの物体までの距離の情報に基づいて、例えば、先行車との衝突の可能性が高いと判定され、緊急ブレーキを動作させるようなブレーキ制御情報が供給されるとき、車両11の図示せぬステアリングの舵角を読み取り、緊急ブレーキを動作させた際、今現在の車両11の速度、(図示せぬ加速度センサによる)車体の移動方向などからスピンの可能性を判定し、スピンを防止するようにステアリングの舵角を制御する。このような処理により、緊急ブレーキを動作させても、車両11のスピンを防止して、安全に停止させることが可能となる。
ボディ制御装置205は、図示せぬイグニッションボタンの動作、または、イグニッションキーの操作などに基づいて、車両11が動作状態であるか否かを判定し、動作状態が検出されたとき、動作開始信号をレーザレーダ装置22に供給する。また、ボディ制御装置205は、レーザレーダ装置22より供給されるボディ制御情報に基づいて、図示せぬシートベルトの巻き取りを制御するシートベルト制御装置211、図示せぬエアバッグの動作を制御するエアバッグ制御装置212、図示せぬドアロックを制御するドアロック制御装置213、および図示せぬパワーシートを制御するパワーシート制御装置214を制御する。ボディ制御装置205は、レーザレーダ装置22からの物体までの距離の情報に基づいて、例えば、先行車との衝突の可能性が高いと判定され、対応するボディ制御情報が供給されてくる場合、ボディ制御情報に基づいて、シートベルト制御装置21を制御して、図示せぬシートベルトを巻き取るように制御させると共に、エアバッグ制御装置212を制御して、衝突時の適切なタイミングで、図示せぬエアバッグを動作させる。また、このとき、ボディ制御装置205は、ドアロック制御装置213を制御して、衝突時の適切なタイミングで、車両11の図示せぬドアロックを施錠すると共に、その後、今現在の車両11の速度に基づいて、(図示せぬ加速度センサによる)車体の移動がなく、かつ、図示せぬエンジンの停止を検出したとき、ドアロックを開錠させる。さらに、ボディ制御装置205は、パワーシート制御装置214を制御して、衝突時の適切なタイミングで、図示せぬパワーシートを動作させて、図示せぬエアバッグが動作した際に搭乗者に掛かる衝撃が適切に軽減される位置に動作させると共に、図示せぬエンジンの停止を検出したとき、パワーシートを動作させて、搭乗者が安全に車両11から避難できるようにする。
このような処理により、衝突が発生しても、図示せぬシートベルト、エアバッグ、およびパワーシートの動作により搭乗者に加えられる負荷を軽減させることが可能になる。また、衝突事故が発生したタイミングにおいては、施錠されることでドアの解放を防止することができるので、ドライバを含めた搭乗者が車両11のドアが解放されて飛び出されるといったことを防止することが可能になる。さらに、車両11が停止した後には、開錠されることでドアを解放することができるので、速やかな避難、または救助が可能となる。
パワートレイン制御装置206は、レーザレーダ装置22からのパワートレイン制御情報に基づいて、図示せぬエンジン、またはモータなどのパワートレインの回転速度を制御する。パワートレイン制御装置206は、レーザレーダ装置22からの物体までの距離の情報に基づいて、例えば、先行車との衝突の可能性が高いと判定されて、対応するパワートレイン制御情報が供給された場合、パワートレインの回転速度を減速させて衝突の衝撃を軽減させる。このような処理により、ドライバが衝突に際してパニック状態になるようなことがあっても、衝撃を軽減することが可能となる。
[レーザレーダ装置の構成例]
次に、図20を参照して、レーザレーダ装置22の構成例について説明する。
レーザレーダ装置22は、投光部51、受光部52、制御部231、物体検出部232、周囲状態判定部233、外部通知判定部234、および結果出力部235を備えている。
制御部231は、図示せぬ速度計測装置より供給される自車速度、イグニッションボタン、またはイグニッションキーの動作状態に応じた動作開始信号、および図示せぬモーションセンサなどにより検出される車両の動作状態に基づいて走行中であるか否かを示す走行中信号に基づいて投光部51、および物体検出部232の動作を制御する。
また、制御部231は、投光部51に対して投光に必要な電力を充電させることを指示する充電制御信号を発生することにより投光部51に対して電力の充電を指示し、発光させるタイミングを、発光制御信号を発生することにより制御する。
さらに、制御部231は、物体検出部232に対して、物体検出の開始を指示する受光測定開始信号、距離インデックスカウントの開始タイミングを示す距離インデックススタート信号、および距離インデックスカウントを供給し、物体検出部232の動作を制御する。
物体検出部232は、制御部231からの受光測定開始信号、距離インデックススタート信号、および距離インデックスカウントに基づいて、受光部52より供給されてくる受光信号の方向毎の物体の距離を示すピーク情報を生成し、周囲状態判定部233に供給する。
周囲状態判定部233は、グループ化部233a、ピークグループリストメモリ233b、追跡部233c、および高さ検出部233dを備えている。周囲状態判定部233は、グループ化部233aを制御して、方向毎の物体の距離を示すピーク情報を方向と距離に基づいてグループ化し、ピークグループリストを生成して、ピークグループリストメモリ233bに記憶させる。このピークグループリストは、今回と前回のリストから構成されており、周囲状態判定部233は、追跡部233c、および高さ検出部233dを制御して、前回のピークグループリストに基づいて、今回のピークグループリストを完成させる。尚、ピークグループリストについては、図32を参照して詳細を後述する。
外部通知判定部234は、周囲状態判定部233におけるピークグループリストメモリ233bに記憶されているピークグループリストを取得して、警報出力装置201、トランスミッション制御装置202、ブレーキ制御装置203、ステアリング制御装置204、ボディ制御装置205、およびパワートレイン制御装置206といった外部装置への通知が必要であるか否かを判定し、判定結果に基づいて結果出力部235に対して通知を指示する。
結果出力部235は、外部通知判定部234からの判定結果に基づいて各種の外部装置に対して各種の通知を出力する。
[投光部の構成例]
次に、図21を参照して、投光部51の構成例について説明する。
投光部51は、投光するレーザ光を発生する投光回路92、およびレーザ光を複数方向の平行光に拡散する投光光学系91を備えている。また、投光回路92は、直流電源271、スイッチ272、コンデンサ273、レーザダイオード274、およびドライブ回路275を備えている。
直流電源271は、コンデンサ273に供給する直流電源を発生する。スイッチ272は、充電制御信号に基づいて、充電を指示するオンの信号であるとき、直流電源271とコンデンサ273とを接続状態にしてコンデンサ273を充電する。また、スイッチ272は、充電制御信号に基づいて、充電の停止を指示するオフの信号であるとき、直流電源271とコンデンサ273とを非接続状態にしてコンデンサ273の充電を停止する。
コンデンサ273は、直流電源271により充電されると、ドライブ回路275により制御されて、必要に応じてレーザダイオード274に対して電力を供給する。レーザダイオード274は、コンデンサ273から電力が供給されるとき、レーザ光を発生し、投光光学系91、およびフロントガラス21を介して監視領域である車両11の前方に光を投光する。
ドライブ回路275は、発光制御信号に基づいて、レーザダイオード274の動作を制御し、投光を指示するオンの信号である場合、コンデンサ273に充電された電力をレーザダイオード274に印加させてレーザ光を発光させる。また、ドライブ回路275は、発光制御信号が、投光の停止を指示するオフの信号である場合、コンデンサ273に充電された電力をレーザダイオード274に印加させず、レーザ光の発光を停止させる。
[受光部の構成例]
次に、図22を参照して、受光部52の構成例について説明する。
受光部52は、受光光学系281、受光回路282、および直流電源283より構成されている。
受光光学系281は、投光部51により投光された光の反射光の入射を受け付けて、入射方向毎に、受光回路282に設けられた受光素子291−1乃至291−12に振り分けるように変換して受光させる。
受光回路282は、複数の受光素子291−1乃至291−12、および複数の増幅回路292−1乃至292−12より構成されており、直流電源283より供給される電力により動作し、受光光学系281を介して入射される監視領域からの反射光を受光して受光信号を生成し、物体検出部232に供給する。尚、以降において、受光素子291−1乃至291−12、および増幅回路292−1乃至292−12のそれぞれについて特に区別する必要がない場合、単に、受光素子291、および増幅回路292と称するものとし、その他の構成についても同様に称するものとする。また、図22の受光回路282においては、受光素子291および増幅回路292のそれぞれが12個ずつ設けられる例について説明しているが、その他の数であっても良い。
すなわち、受光素子291−1乃至291−12は、反射光の入射方向毎に設けられており、それぞれの受光信号が、それぞれ監視領域における入射方向を示す信号とされ、増幅回路292に供給される。増幅回路292は、受光素子291より供給されてくる受光信号を増幅して、方向毎の受光信号として物体検出部232に出力する。
ところで、受光素子291の形状の一例としては、縦方向に長い矩形状にすることが考えられる。この矩形状の受光素子においては、縦方向に長いほど、図10で示した監視領域Z1における垂直方向Y°を大きくすることができる。また、この矩形状の受光素子が横方向に並べられたとき、その横方向の長さ合計が長いほど、前記監視領域Z1における水平方向X°を大きくすることができる。
付け加えると、この矩形状の受光素子を、すべて同じ大きさにすることもできる。また、横方向に矩形状の受光素子を並べるにあたり、その端部に配置された受光素子291−1および291−12についてのみ、他の受光素子よりも横方向に長い受光素子を使うこともできる。この場合、監視領域の左端あるいは右端において、近距離にいる歩行者を検知することが容易になる。
[制御部の構成例]
次に、図23を参照して、制御部231の構成例について説明する。
制御部231は、タイミング制御回路311、走行判定部312、および距離インデックスカウンタ313を備えている。
タイミング制御回路311は、動作開始信号、走行中信号、および走行判定部312からの車速判定結果に基づいて、投光部51に対して充電制御信号、および発光制御信号を供給すると共に、物体検出部232に対して、受光測定開始信号、および距離インデックススタート信号を供給する。また、タイミング制御回路311は、距離インデックススタート信号および受光測定開始信号を距離インデックスカウンタ313に供給し、距離インデックスカウントを示す信号を物体検出部232に供給させる。
走行判定部312は、図示せぬ速度計測装置より自車速度の情報を取得して、自車速度がほぼ0であるか否か、すなわち、ほぼ停止、または停止しているか否かを判定して、判定結果をタイミング制御回路311に供給する。
[物体検出部の構成例]
次に、図24を参照して、物体検出部232の構成例について説明する。
物体検出部232は、AD(アナログデジタル)変換部331−1乃至331−12、ピーク検出部332−1乃至332−12、およびピーク記憶部333−1乃至333−12を備えている。
AD変換部331−1乃至331−12は、受光測定開始信号に基づいて動作し、受光部52より供給されてくる、受光方向毎のアナログ信号の受光信号をデジタル信号に変換して受光値としてピーク検出部332−1に供給する。
ピーク検出部332−1乃至332−12は、AD変換部331より供給されてくる、デジタル信号に変換された受光値に基づいて、反射光が受光される方向それぞれの物体の検出距離を示す、受光強度がピークとなる距離インデックスカウントを検出し、それぞれ検出結果をピーク記憶部333−1乃至333−12に供給する。尚、ピーク検出部332の詳細な構成については、図25を参照して詳細を後述する。
ピーク記憶部333−1乃至333−12は、それぞれ監視領域における反射光が受光された方向のそれぞれの物体の距離を示すピーク情報を記憶し、記憶したピーク情報を周囲状態判定部233に供給する。尚、ピーク情報については、図30を参照して詳細を後述する。
[ピーク検出部の構成例]
次に、図25を参照して、ピーク検出部332の構成例について説明する。
ピーク検出部332は、閾値判定部351、ピーク検出制御部352、最大値検出部353、最大値記憶部354、ピークカウンタ355、およびピーク識別部356を備えている。
閾値判定部351は、受光信号がデジタル化されている受光値が、ノイズレベルであるものとみなされる所定の閾値以下の信号であるか否かを判定し、所定の閾値よりも高く物体からの反射光であるものとみなすとき、受光値をピーク検出制御部352に供給する。
ピーク検出制御部352は、制御部231からの受光測定開始信号、および距離インデックススタート信号に基づいて、閾値判定部351より供給されてくる受光値を取得し、このとき供給されてくる距離インデックスカウントに対応付けて記憶する。このとき、ピーク検出制御部352は、最大値検出部353に対して、距離インデックスカウントに基づいて、反射光が検出された受光値の最大値を順次検出させて、検出した最大値を最大値記憶部354に記憶させる。また、ピーク検出制御部352は、所定の閾値よりも小さいとみなされて、閾値判定部351からの受光値の供給がなくなったとき、最大値記憶部354に記憶されている最大値をピーク情報として、ピーク記憶部333に記憶させた後、リセットさせる。
ピーク検出制御部352は、閾値判定部351より受光値が供給されると、このときの距離インデックスカウントをピークカウンタ355に供給する。ピークカウンタ355は、距離インデックスカウントが供給されるとき、ピーク幅をカウントするためのピークカウントをカウントアップする。また、ピーク検出制御部352は、閾値判定部351より受光値の供給が停止したとき、受光値が所定の閾値以下となったものとみなして、ピークカウンタ355においてカウントされているピークカウントをピーク識別部356に供給させると共にリセットさせる。
さらに、ピーク検出制御部352は、閾値判定部351より受光値の供給が停止したとき、ピーク識別部356に対してピークカウンタ355より供給されてくるピークカウントに基づいてピーク幅を算出させて、ピーク記憶部333にピーク情報として登録させる。このような処理により、ピーク記憶部333には、受光値のピークが検出されるとピークとなる受光値の最大値、ピークとなる受光値が供給されたタイミングを示す距離インデックスカウント、並びに、ピーク値を取ったときの受光値のパルス幅からなるピーク情報が、ピーク記憶部333に記憶されることになる。
[レーザレーダ装置による物体検知動作処理]
次に、図26のフローチャートを参照して、レーザレーダ装置22による物体検知動作処理について説明する。
ステップS11において、制御部231のタイミング制御回路311は、動作開始信号に基づいてイグニッションがオンにされて車両11が走行可能な状態になったか否かを判定し、オンになったとみなされるまで、同様の処理を繰り返す。ステップS11において、例えば、図27の最上段における時刻t0乃至t3で示されるように、動作開始信号がオンであることを示すHiの信号となった場合、タイミング制御回路311は、イグニッションがオンにされたものとみなし、処理は、ステップS12に進む。
尚、図27においては、上から動作開始信号(IG:イグニッション信号)、走行中信号、充電制御信号、発光制御信号、距離インデックススタート信号、受光測定開始信号、距離インデックスカウント、物体検出部232における動作タイミング、周囲状態判定部233における動作タイミング、外部通知判定部による動作タイミング、および結果出力部235における動作タイミングを、それぞれ示す波形、または、動作タイミング期間が示されている。
ステップS12において、タイミング制御回路311は、充電制御信号を投光部51に供給し、投光部51における投光回路92のスイッチ272をオンの状態にさせる。この処理により、直流電源271から電力がコンデンサ273に供給されて、コンデンサ273が充電される。尚、この処理は最初の処理において特になされる充電処理であり、図27の最上段における時刻t0で示されるように、動作開始信号がHiになった以降のタイミングにおいて、時刻t21乃至t22の波形からなる充電制御信号が発生される。
ステップS13において、タイミング制御回路311は、走行中信号が走行中であることを示し、かつ、走行判定部312により、図示せぬ車速検出装置より供給される自車速度の情報に基づいて、今現在の自車速度が0ではないと判定されているか否かを判定する。例えば、図27の上から2段目で示されるように、時刻t13乃至t14で示されるように、走行中信号がLowであって、走行中ではないことが示されている場合、または、時刻t12乃至t13で示されるように、走行中信号がHiであり、走行中であることが示されていても、自車速度が0である(自車速度が所定値よりも小さくほぼ0である)と見なされた場合、処理は、ステップS11に戻る。すなわち、この場合、ステップS11乃至S13の処理が繰り返される。
一方、ステップS13において、例えば、図27の上から2段目の時刻t11乃至t12で示されるように、走行中信号がHiであり走行中であることが示され、かつ、自車速度が0ではない場合、処理は、ステップS14に進む。
ステップS14において、タイミング制御信号311は、発光制御信号を投光部51におけるドライブ回路275に供給し、投光部51のレーザダイオード274を発光させる。すなわち、例えば、図27の上から4段目における時刻t51で示されるようなパルス信号からなる発光制御信号が発生されることにより、ドライブ回路275が動作して、コンデンサ273に充電されていた電力がレーザダイオード274に流れることによりレーザダイオード274が発光し、コンデンサ273の充電された電力が全て放電されるまでの期間においてレーザダイオード274が発光する。このようにレーザダイオード274が発光することにより発生する光が投光光学系91により複数の方向に対する平行光に変換されて、フロントガラス21を介して、車両11の進行方向前方の監視領域に対して投光されることになる。従って、この状態において、監視領域内に物体(例えば、人物、車両などを含む)が存在すると、投光した光が反射される。
ステップS15において、タイミング制御回路311は、発光制御信号が発生してから所定の時間T1が経過したか否かを判定する。ステップS15において、例えば、図27の上から5段目の時刻t51で示されるパルス波形からなる発光制御信号が発生されてから、投光部51の光出力がピークとなる時間T1が経過するまで同様の処理が繰り返される。そして、ステップS15において、時間T1が経過したと見なされた場合、処理は、ステップS16に進む。
ステップS16において、タイミング制御回路311は、例えば、図27の上から5段目の、時刻t51の発光制御信号が発生してから所定の時間T1が経過した、時刻t81で示されるようなパルス波形からなる距離インデックススタート信号を発生し、物体検出部232、および距離インデックスカウンタ313に供給する。
ステップS17において、物体検出部232は、距離インデックススタート信号が供給されてくると、投光受光処理を実行して投光部51により投光された光が物体により反射されることにより発生する反射光を受光部52が受光することにより発生する受光信号に基づいて、方向毎に物体の存在する位置(距離)を示すピーク情報を生成して周囲状態判定部233に供給する。尚、投光受光処理については、図28のフローチャートを参照して後述するものとする。
ステップS18において、周囲状態判定部233は、方向毎の物体の存在する位置を示すピーク情報に基づいて、周囲状態判定処理を実行し、類似したピーク情報をグループ化したリストからなるピークグループリストを生成して外部通知判定部234に供給する。尚、周囲状態判定処理については、図29のフローチャートを参照して詳細を後述する。
ステップS19において、タイミング制御回路311は、発光制御信号が発生してから所定の時間T2(T2は、T1より長く、数分乃至数十秒程度)が経過したか否かを判定し、所定の時間T2が経過したとみなされるまで、同様の処理が繰り返される。
そして、ステップS19において、発光制御信号が発生してから所定の時間T2が経過した場合、処理は、ステップS12に戻る。すなわち、図27の上から4段目の時刻t51から所定の時間T2が経過したタイミングが、時刻t52で示される次の発光制御信号が発生されるタイミングである場合、図27の上から5段目の時刻t52から所定の時間T1が経過した時刻t82で示されるタイミングにおいて、次の距離インデックススタート信号が発生される。すなわち、発光制御信号が発生してから所定の時間T2が経過するまでは、発光制御信号における所定の時間T2の間隔で、発光制御信号が発生してから所定の時間T1の時間の経過後に距離インデックススタート信号が繰り返し発生されて、投光受光処理、および周囲状態判定処理が繰り返し実行される。従って、次のタイミングは、図27の上から5段目の時刻t83で示されるタイミングとなり、以降、同様に、発光制御信号の発生間隔である所定の時間T2の間隔で繰り返し距離インデックススタート信号が繰り返し発生される。
すなわち、図27の上から3段目の場合、時刻t23乃至t24のパルス波形で示される充電制御信号が、ステップS12の処理により発生されて、投光回路92のコンデンサ273が充電される。さらに、時刻t52のパルス波形で示される発光制御信号が、ステップS14の処理により発生されて、ドライブ回路275によりコンデンサ273に充電された電力が放電されることで、レーザダイオード274が発光する。以降においては、所定の時間T2の時間間隔でステップS12乃至S19の処理が繰り返されることにより、充電制御信号および発光制御信号が、それぞれ順次時刻t25乃至t26、および時刻t53で示されるパルス波形の信号として繰り返し発生されることになる。
この処理により順次所定の間隔で投光受光処理および周囲状態判定処理が繰り返し実行されて、後述する物体検出部232による投光受光処理、および周囲状態判定部233による周囲状態判定処理によりピークグループリストを所定の時間間隔で更新しながら生成することが可能となる。
[投光受光処理]
次に、図28のフローチャートを参照して、投光受光処理について説明する。
ステップS31において、ピーク検出制御部352は、最大値記憶部354、およびピークカウンタ355のそれぞれに記憶されている最大値、およびピークカウンタ値をリセットして初期化し、0に設定する。
ステップS32において、タイミング制御回路311は、距離インデックススタート信号を発生してから所定の時間T11(投光部51から投光された光が車両11のボンネット上の距離を通過するまでの時間(例えば、ボンネットの長さを50cm程度とした場合、3.3nsec程度))を経過したか否かを判定し、経過するまでステップS31の処理を繰り返す。すなわち、この間に反射光として受光される光により発生される受光信号に基づいた受光値はノイズであると考えられるため、時間T11は、このような受光信号を無視するために処理が実行されない状態とする時間である。尚、この時間T11は、レーザレーダ装置22の車両11における設置位置と車両の先端の長さにより設定される値であり、車両の形状などにより様々に設定される値である。また、時間T11については、上述した所定の時間T1=0とすることで、T11をT1+T11とし、発光制御信号が距離インデックススタート信号を兼ねるようにしてもよい。
ステップS32において、所定の時間が経過したとみなされた場合、処理は、ステップS33に進む。
ステップS33において、タイミング制御回路311は、受光測定開始信号を発生して物体検出部232に供給する。すなわち、図27の上から6段目における時刻t101に対応する時刻t83のタイミングで距離インデックススタート信号が発生された後、所定の時間が経過した時刻t102において、パルス波形で示されるような受光測定開始信号が発生される。
ステップS34において、物体検出部232は、受光部52により監視領域より反射光として受光される受光信号を取得する。すなわち、受光部52において、受光光学系281を介して入射される反射光を受光回路282の受光素子291が受光により発生する信号を出力して増幅回路292に供給し、増幅回路292により増幅される信号が、受光信号として出力される。尚、この受光信号が、物体検出部232のAD変換部331によりデジタル信号からなる受光値に変換されてピーク検出部332に供給される。また、これらの一連の処理は、受光部52に入射される反射光の入射方向毎に同様の処理がなされるものであり、図22の受光部52の構成例においては、12方向のそれぞれについて受光値が生成される。
ステップS35において、ピーク検出部332の閾値判定部351は、受光値が所定の閾値Haよりも大きいか否かを判定する。例えば、ステップS35において、受光値が所定の閾値Haよりも大きい場合、処理は、ステップS36に進む。
ステップS36において、閾値判定部351は、受光値の情報をピーク検出制御部352に出力する。ピーク検出制御部352は、閾値判定部351より出力された受光値、および、このタイミングにおける距離インデックスカウントの値を記憶する。すなわち、距離インデックスカウンタの値は、図27の上から7段目で示されるように、タイミング制御回路311の距離インデックスカウンタ313において、タイミング制御回路311より受光測定開始信号が供給されると発生される。距離インデックスカウントの値は、光が進む距離に応じたパルス幅のパルス信号として出力され、例えば、図7の場合、0.6nsec程度のパルス幅のパルス信号として出力される。この結果、所定の時間間隔で発生される距離インデックススタート信号と、その距離インデックススタート信号に基づいて発生される距離インデックスカウントとから、直前の発光制御信号が発生したタイミングと、反射光が受光されたタイミングとの差分時間を求めることが可能となり、さらに、差分時間と光速の関係から投光部51により投光された光が物体に反射して反射光として受光されるまでの光路距離が求められるので、測定位置から物体までの距離を求めることが可能となる。
ステップS37において、ピーク検出部352は、最大値検出部353を制御して、供給されてきた受光値と、最大値記憶部354に記憶されている最大値とを比較させ、受光値が最大値記憶部354に記憶されている最大値よりも大きいか否かにより、最大値であるのか否かを判定させる。ステップS37において、受光値が最大値であるとみなされた場合、ステップS38において、最大値検出部353は、最大値記憶部354に記憶されている最大値を、受光値により上書き更新して記憶させる。一方、ステップS37において、最大値ではないと見なされた場合、ステップS38の処理はスキップされる。
ステップS39において、ピーク検出制御部352は、ピークカウンタ355を制御してカウントアップさせ、ピークカウントをピーク識別部356に出力して記憶させる。
ステップS40において、タイミング制御回路311は、距離インデックスカウンタ313の値が所定カウントであるか否かを判定し、所定カウントではない場合、処理は、ステップS41に進む。
ステップS41において、タイミング制御回路311は、所定の時間T12(>T11)が経過したか否かを判定し、所定の時間T12が経過するまで同様の処理を繰り返す。そして、ステップS43において、所定の時間が経過した場合、処理は、ステップS33に戻る。すなわち、距離インデックスカウンタ313より出力される値が、所定カウントに達するまで、ステップS33乃至S41の処理が繰り返される。
すなわち、距離インデックスカウンタ313が発生する値は、監視領域として設定される距離に応じた値が上限として設定される。例えば、監視領域がレーザレーダ装置22から30mまでの範囲である場合、光が10cmの距離を往復する時間間隔で受光測定開始信号が発生されるとき、300回分繰り返されることになる。従って、この場合、タイミング制御回路311は、図27の上から6段目で示されるように、0.66nsec(=所定時間T12)間隔で、時刻t102,t103・・・t111,t112で示されるように、受光測定開始信号を発生する。このとき、距離インデックスカウンタ313は、この受光測定開始信号に基づいて、同様の時間間隔で図27の上から7段目の時刻t131乃至t132、t133乃至t134・・・t141乃至t142、t143乃至t144で示されるように、0乃至299までカウントアップする。従って、この場合、距離インデックスカウンタ313の上限値、すなわち、所定の閾値が299に設定されることになる。また、受光値が所定の閾値Haよりも全て大きいと仮定すると、300サンプルの受光値が距離インデックスカウンタと共に記憶され、これらの情報に基づいて、ピークが検出されることになる。従って、所定の時間T12は、受光測定開始信号の発生間隔を定義する時間であるといえる。
一方、ステップS35において、受光値が所定の閾値よりも大きくないと見なされた場合、処理は、ステップS42に進む。
ステップS42において、閾値判定部351は、入力された受光値の情報を出力しない。このとき、ピーク検出制御部352には、距離インデックスカウンタ313からのカウントは供給されるが、受光値の情報が供給されない。このようなとき、ピーク検出制御部352は、受光値が所定の閾値よりも小さいことから、今現在のタイミングが、ピークが検出される期間外であることを認識することができる。そこで、ピーク検出制御部352は、記憶している受光値と距離インデックスカウントとに基づいて、最大値が検出されることにより、ピークを検出したか否かを判定する。
すなわち、ピーク識別部356は、リフレクタからの反射光以外の、例えば路面からの反射光を識別して、除外する処理をおこなうようにしてもよい。路面からの反射とリフレクタからの反射光は、受光値のピークの高さとピーク幅の比が相違しており、路面からの反射の場合にはピーク波形がなだらかになる。ピークとなる受光値の高さとピーク幅の比に関する所定の閾値を用いることによって、路面からの反射光とリフレクタからの反射光とを識別することができる。
ピークの検出はここで記載した方法に限定されない。受光値が最大値付近となったときの距離インデックスカウンタの値、ピークの最大値付近である値、およびピーク付近の波形の幅が記憶されるような他の方法で検出してもよい。
ピーク幅についても、固定の閾値ではなく可変閾値を用いるなどして、ノイズの影響を減らすようにすることもできる。
ところで、ピークは、一般に、図29で示されるような波形により定義されるものである。ここで、図29の右部においては、縦軸を受光値とし、横軸を距離インデックスカウントとしており、棒状のグラフが、各距離インデックスカウントで特定されるタイミングにおける受光値である。また、図29の左部の波形Cは、図29の右部の棒状のブラフをスプライン処理した波形である。この波形Cにおける、一般的に定義されるピークは、最大値である受光値Hxであり、このときの距離インデックスカウンタがDpとなるタイミングである。
また、受光値は、ステップS35,S36の処理により、閾値判定部351において所定の閾値Haより大きな場合にのみピーク検出制御部352に出力されて処理されるので、実質的にピーク検出に利用される受光値は、図29の左部における距離インデックスカウントD1乃至D2の期間のみのものとなる。さらに、後述する処理により、この距離インデックスカウントD1乃至D2の期間において、受光値が出力される度にピークカウンタ355がカウントアップされることにより、ピーク認識部356は、ピークカウンタ355のピークカウントに基づいて、ピーク幅Lxを求めることができる。すなわち、ステップS35において、受光値が所定の閾値Haよりも小さいということは、ピーク幅となる距離インデックスカウントD1乃至D2の期間から外れることとなるため、ピーク検出制御部352は、ピークが検出される期間外であることを認識することができる。
ステップS42において、ピークが検出されたと判定された場合、ステップS43において、ピーク検出制御部352は、ピークが検出されたタイミングの距離インデックスカウントの値をピーク記憶部333に記憶させると共に、最大値記憶部354を制御して記憶されている最大値をピーク記憶部333に記憶させる。
ステップS44において、ピーク識別部356は、記憶しているピークカウンタの値に基づいてピーク幅を算出してピーク記憶部333に記憶させる。
ステップS45において、ピーク検出制御部352は、ピークカウンタ355を制御して、ピークカウントを0にリセットする。
ステップS46において最大値記憶部354に記憶されている最大値を0にリセットする。
このような処理により、ピーク記憶部333は、例えば、図30で示されるような構成でピーク情報を記憶する。ピーク記憶部333−1乃至333−12には、それぞれ複数のピーク情報P1乃至Px(xは任意)が記憶されており、それぞれが割り振られている方向を特定する方向情報DR1乃至DR12に対応付けて記憶されている。また、ピーク情報Pxには、距離インデックスカウント、ピーク値となる最大値、およびピーク幅の情報が含まれている。
ステップS47において、ピーク記憶部333は、記憶しているピーク情報を周囲状態判定部233に出力して処理を終了する。
以上の処理により、方向毎に、距離インデックスカウントに対応付けられてピークのピーク値(最大値)とピーク幅の情報がピーク情報としてピーク記憶部333に記憶され、さらに、記憶されたピーク情報が周囲状態判定部233に供給される。
[周囲状態判定処理]
次に、図31のフローチャートを参照して、周囲状態判定処理について説明する。
ステップS61において、周囲状態判定部233は、物体検出部232の出力結果であるピーク情報に基づいて、ピークが検出されているか否かを判定し、少なくともいずれかの方向について、ピーク情報が1個だけでも存在すれば、ピークが検出されているものとみなし、処理は、ステップS62に進む。
ステップS62において、周囲状態判定部233は、ピーク情報のいずれかを処理対象ピーク情報に設定する。
ステップS63において、周囲状態判定部233は、グループ化部233aを制御して、グループ化処理を実行させ、処理対象ピーク情報と、方向が近く、かつ、距離インデックスカウントが近似する(物体が検出された距離が近似する)ピーク情報をグループ化し、これらのグループ化されたピーク情報のリストであるピークグループリストを作成させ、ピークグループリストメモリ233bに記憶させる。尚、以降においては、特定のピーク情報と、他のピーク情報とが、それぞれ方向が近く、かつ、距離インデックスカウントが近似するとき、一方のピーク情報が他方のピーク情報に類似する称し、他方のピーク情報は、一方のピーク情報の類似ピーク情報であると称するものとする。
[ピークグループリスト]
ここで、図32を参照して、ピークグループリストについて説明する。ピークグループリストは、方向が近く、かつ、距離インデックスカウントが近似するピーク情報をグループ化したリストである。ピークグループリストは、距離インデックススタート信号が発生される毎に更新されるものであり、今回情報GCである、最新の距離インデックススタート信号が発生した際に取得されたピーク情報に基づいて生成されたピークグループリストと、前回情報GPと示された直前の距離インデックススタート信号が発生した際に取得されたピーク情報に基づいて生成されたピークグループリストとから構成され、新たに距離インデックススタート信号が発生されるときには、前回情報GPの記憶領域に、今回情報GCが上書きされて、今回情報GCの記憶領域に記憶されている情報が前回情報GPに更新される。
さらに、ピークグループリストは、複数の類似ピーク情報がグループ化されたものであり、具体的には、図32の中央部で示されるように、複数のピークグループG1乃至Gx(xは任意)からなり、それぞれが識別番号情報、ピークリスト情報、静止物体/移動物体情報、相対移動速度情報、識別結果情報、危険度判定対象情報、および高さ情報の情報を備えている。識別番号情報は、ピークグループを識別するための情報である。ピークリスト情報は、図32の右部のピーク情報P11乃至P14で示される、具体的なグループを構成する複数のピーク情報の個々の情報が記録されたリストであり、それぞれピーク情報におけるピーク検出方向、ピーク検出位置の距離インデックスカウント、受光値の最大値、およびピーク幅の情報を含む。すなわち、ここでいうピーク情報は、実質的に、図30を参照して説明したピーク情報に方向情報が付されたものである。
静止物体/移動物体情報は、グループ化されたピーク情報により特定される物体が静止物体であるか、または移動物体であるかを示す情報である。相対移動速度情報は、グループ化されたピーク情報により検出された物体と、レーザレーダ装置22が設置されている車両11との相対的な移動速度を示した情報であり、車両11の進行方向に対して前後方向の速度、および左右方向の速度の情報を含む。識別結果情報は、グループ化されたピーク情報の数、および相対移動速度などの情報に基づいて、検出された物体がどのようなものであるのかを識別する情報である。危険度判定対象情報は、グループ化されたピーク情報により特定される物体が危険度を判定すべき対象であるか否かを示す情報である。すなわち、例えば、グループ化されたピーク情報により特定される物体が車両11に対して高速で接近している、または、所定の距離内であって、接近し続けている物体などであり、危険度を判定する対象とするべきであるとき、危険度判定対象であることを示す情報が登録され、それ以外のとき、危険度判定対象ではないことを示す情報が登録される。高さ情報は、グループ化されたピーク情報により特定される物体のうち、至近距離の物体について高さの情報が明確であるか否かを示す情報である。
[グループ化処理]
ここで、図31のフローチャートにおけるステップS63の処理であるグループ処理について、図33のフローチャートを参照して説明する。
ステップS71において、グループ化部233aは、ピーク記憶部333−1乃至333−12に記憶されているピーク情報のうち、処理対象ピーク情報と類似する類似ピーク情報を検索し、類似ピーク情報が存在するか否かを判定する。ステップS71において、処理対象ピーク情報と類似する類似ピーク情報が存在すると判定された場合、処理は、ステップS72に進む。
ステップS72において、グループ化部233aは、類似ピーク情報として検索されたピーク情報をピークリストに登録すると共に、類似ピーク情報の数をカウントする。
ステップS73において、グループ化部233aは、類似ピーク情報が2個であったか否かを判定し、2個であると見なされた場合、処理は、ステップS74に進む。
ステップS74において、グループ化部233aは、処理対象ピーク情報と類似する2個の類似ピーク情報の受光値の最大値が略同一であるか否かを判定する。ステップS74において、処理対象ピーク情報と類似する類似ピーク情報と類似する2個のピーク情報の受光値の最大値が略同一である場合、処理は、ステップS75に進む。
ステップS75において、グループ化部233aは、処理対象ピーク情報と類似する類似ピーク情報を同一のピークグループにグループ化して、ピークグループリストメモリ233bに記憶されているピークグループリストに登録する。このとき、グループ化部233aは、グループ化されたピーク情報により特定される物体が、監視領域内で検出された先行する車両のリフレクタの反射光であるものと見なし、識別結果情報としてリフレクタペアを登録する。車両は、車体後方に、水平方向に対称な位置にリフレクタが、例えば、リアバンパの左右の端部に設置されている(特に、日本の法規では保安基準を満たすために必須とされている)。このため、監視領域内に先行する車両が存在するような場合、投光部51により投光された光は、リフレクタの反射光であることが多く、また、乗用車などの場合、リアバンパの両端などに2カ所設置されていることが多い。そこで、このように、近い方向で、かつ、近い距離でピーク情報が2カ所存在するような場合、このリフレクタの反射光を受光したものとみなし、検出物体が実質的にリフレクタを2個備えた車両であることを示すリフレクタペアであるものと見なして識別情報に登録される。
一方、ステップS74において、受光値の最大値が略同一ではない場合、ステップS75において、グループ化部233aは、類似する2個のピーク情報は同一のグループに含められないものとみなし、処理対象ピーク情報と類似する類似ピーク情報とをそれぞれ単独のグループとしてピークグループリストに登録する。すなわち、このように2個のピーク情報の受光値の最大値が異なる場合、それぞれが異なる物体を検出したものである可能性が高いので、それぞれを別の物体として見なし、例えば、バイクなどのように、リフレクタが1個だけ設けられたものが併走しているように扱ものとし、識別結果として、例えば、単独物体などと記録される。
また、ステップS73において、ピーク情報が2個ではない場合、ステップS77において、グループ化部233aは、3個以上のピーク情報が存在するものとみなし、処理対象ピーク情報と類似する類似ピーク情報とを同一のピークグループとしてピークグループリストに登録する。このとき、識別結果は、マルチピークとして記録される。例えば、トラックなどの大型車両の場合、リフレクタが3個以上設置されるような場合がある。そこで、グループ化部233aは、このような大型の車両であるものとして、識別結果には、マルチピークと登録する。
さらに、ステップS71において、類似ピーク情報が存在しないと判定された場合、ステップS78において、グループ化部233aは、処理対象ピーク情報を、単独のピークグループとしてピークグループリストに登録する。このとき、識別結果の情報は、バイクなどのリフレクタであることを示す単独物体を示す情報が登録される。
以上の処理により、処理対象ピーク情報と類似ピーク情報とが検索されて、同一の対象物体を特定するものであるとみなされたとき、同一のピークグループとしてピークグループリストに登録させることが可能となり、それぞれのピークグループのピーク情報により特定される物体の識別結果を登録することが可能となる。
ここで、図31のフローチャートの説明に戻る。
ステップS63の処理によりグループ化処理が実行されて、処理対象ピーク情報に類似する類似ピーク情報が検索されて、グループ化されて、ピークグループとしてピークグループリストに登録されると、処理は、ステップS64に進む。
ステップS64において、グループ化部233aは、未処理のピーク情報が存在するか否かを判定する。ここでいう未処理のピーク情報とは、処理対象ピーク情報にも、類似ピーク情報にも見なされていないピーク情報である。従って、処理対象ピーク情報に設定されていないものであっても、いずれかの処理対象ピーク情報の類似ピーク情報であるものと見なされ、いずれかのピークグループに属したピーク情報は、処理済みのピーク情報であるものとみなされる。ステップS64において、未処理のピーク情報が存在すると見なされた場合、処理は、ステップS62に戻る。すなわち、未処理のピーク情報が存在しないと見なされるまで、ステップS62乃至S64の処理が繰り返される。そして、ステップS64において、未処理のピーク情報が存在しないと見なされた場合、すなわち、全てのピーク情報がいずれかのグループに分類された場合、処理は、ステップS65に進む。
ステップS65において、周囲状態判定部233は、追跡部233cを制御して、ピークグループ追跡処理を実行させて、各ピークグループについて、直前のタイミングにおける情報との比較により、どのように移動しているのかを追跡させる。
[ピークグループ追跡処理]
ここで、図34を参照して、ピークグループ追跡処理について説明する。
ステップS91において、追跡部233cは、ピークグループリストメモリ233bに記憶されているピークグループのうち、いずれか未処理のピークグループを処理対象となる処理対象ピークグループに設定する。
ステップS92において、追跡部233cは、処理対象ピークグループにより特定される物体と対応する物体を特定するピークグループを前回情報GPのピークグループリストより検索し、存在するか否かに基づいて、処理対象ピークグループが前回情報GPのピークグループには登録されていない新たな物体のピークグループであるか否かを判定する。
すなわち、前回情報GPのピークグループリストに含まれているピークグループのうち、ピーク情報に含まれる距離インデックスカウントで特定される方向および距離、並びに相対速度情報から、前回情報GPから今回情報GCが取得されるまでの期間に移動可能な範囲内に、処理対象ピークグループの距離インデックスカウントにより特定される物体の方向および距離が存在するピークグループが、同一の物体を特定するピークグループとして検索される。前回情報GPのピークグループリストに含まれるピークグループで特定される物体の中に、今回の処理対象ピークグループで特定される物体の位置に移動したものが存在しないと見なされた場合、処理対象ピークグループで特定される物体は、前回のピークグループが生成されたタイミングでは存在せず、今回、新たに監視領域に入り込んだ新たな物体であると考えられる。逆に、前回情報GPのピークグループで特定される物体の中に、今回情報GCのピークグループリストに含まれる、処理対象ピークグループで特定される物体の位置に移動したものが存在すると見なされた場合、処理対象ピークグループで特定される物体は、前回情報のピークグループリストに含まれているピークグループが生成されたタイミングにも存在し、処理対象ピークグループにより特定される物体であると考えられる。
そこで、ステップS92において、新たな物体ではないと見なされた場合、処理は、ステップS93に進む。
ステップS93において、追跡部233cは、処理対象ピークグループにより特定される物体が、停止物体であるか否かを判定する。すなわち、追跡部233cは、処理対象ピークグループと、同一の物体を特定する前回情報GPのピークグループリストに含まれるピークグループとのそれぞれに含まれるピークリストのピーク情報における距離インデックスカウントから距離の変化量を移動量として求め、車両11の図示せぬモーションセンサなどにより測定される移動量と比較し、一致するか否かに基づいて静止物体であるか否かを判定する。すなわち、処理対象ピークグループにより特定される物体が静止している場合、車両11の移動量と、処理対象ピークグループと前回情報GPのピークグループのそれぞれに含まれるピーク情報の距離インデックスカウントにより求められる移動量とが一致する。したがって、このような場合、静止物体であるものと見なすことができる。一方、双方の移動量が一致しない場合、車両11と物体は相対的な関係が一致しないので、物体も移動しているものと見なすことができる。
ステップS93において、例えば、今回の処理対象ピークグループで特定される物体が静止物体ではないと見なされた場合、ステップS94において、追跡部233cは、ピークグループリストメモリ233bに登録されている処理対象ピークグループの静止物体/移動物体情報として、移動物体であることを示す情報を登録する。
ステップS95において、追跡部233cは、移動物体であることを示す情報、および、ピークグループに登録されているピークリストに含まれているピーク情報の数などから、処理対象ピークグループにより特定される物体を識別する。すなわち、追跡部233cは、例えば、処理対象ピークグループにより特定される物体が、例えば、類似ピーク情報が2個であるようなとき、物体を移動中の乗用車であるものとみなし、識別結果に記録する。また、追跡部233cは、例えば、類似ピーク情報が3個以上であるようなとき、物体を移動中のトラックであるものとして識別結果に記録する。さらに、追跡部233cは、例えば、類似ピーク情報が1個であるようなとき、物体を移動中のバイクであるものとして識別結果に記録する。
一方、ステップS93において、例えば、今回の処理対象ピークグループで特定される物体が静止物体であると見なされた場合、ステップS100において、追跡部233cは、ピークグループリストメモリ233bに登録されている処理対象ピークグループの静止物体/移動物体情報として、静止物体であることを示す情報を登録する。
ステップS101において、追跡部233cは、静止物体であることを示す情報、および、ピークグループに登録されているピークリストに含まれているピーク情報の数などから、処理対象ピークグループにより特定される物体を識別する。すなわち、追跡部233cは、処理対象ピークグループにより特定される物体が、類似ピーク情報が2個であるようなとき、物体を停車中の乗用車であるものとみなし、識別結果に記録する。また、追跡部233cは、類似ピーク情報が3個以上であるようなとき、物体を停車中のトラックであるものとして識別結果に記録する。さらに、追跡部233cは、類似ピーク情報が1個であるようなとき、物体を停車中のバイクであるものとして識別結果に記録する。
ステップS96において、追跡部233cは、処理対象ピークグループにより特定される物体が危険度判定対象とすべきであるか否かを判定する。より詳細には、追跡部233cは、処理対象ピークグループにより特定される物体が、車両11の走行方向の前方正面の所定の距離内であって、相対的な位置関係が、所定の速度以上に早く接近しているか否かなどにより、車両11に衝突や接触などの危険が迫っているか否かを判定し、危険が迫っているとみなしたとき、物体が危険度判定対象とすべきであるものとみなす。
ステップS96において、処理対象ピークグループにより特定される物体が、危険度判定対象であると判定した場合、ステップS97において、追跡部233cは、ピークグループリストメモリ233bに登録されている処理対象ピークグループの危険度判定対象情報として、危険度判定対象であることを示す情報を登録する。
一方、ステップS96において、処理対象ピークグループにより特定される物体が、危険度判定対象ではないと判定した場合、ステップS98において、追跡部233cは、ピークグループリストメモリ233bに登録されている処理対象ピークグループの危険度判定対象情報として、危険度判定対象ではないことを示す情報を登録する。
また、ステップS92において、追跡部233cは、処理対象ピークグループにより特定される物体が新たな物体であるとみなした場合、処理は、ステップS102に進む。
ステップS102において、追跡部233cは、処理対象ピークグループの識別番号を新たに設定して、ピークグループリストメモリ233bに記憶されているピークグループリストのうち、処理対象ピークグループの識別番号情報に登録する。
ステップS99において、追跡部233cは、ピークグループリストメモリ233bに登録されている今回情報GCのピークグループリストのうち、未処理のピークグループが存在するか否かを判定する。ステップS99において、未処理のピークグループが存在する場合、処理は、ステップS91に戻る。すなわち、未処理のピークグループが存在しないと見なされるまで、ステップS91乃至S102の処理が繰り返される。
そして、ステップS99において、未処理のピークグループが存在しないと見なされた場合、処理は、ステップS103に進む。
ステップS103において、追跡部233cは、ピークグループリストメモリ233bに登録されている前回情報GPのピークグループリストに登録されているピークグループのうち、今回のピークグループリストに登録されているピークグループに該当するものがないものを検索し、該当するものがなく、検出されなくなった物体が存在するか否かを判定する。ステップS103において、例えば、前回情報GPのピークグループリストに登録されているピークグループのうち、今回情報GCのピークグループリストに登録されているピークグループに該当するものがないものがあった場合、ステップS104において、前回のピークグループリストに登録されているピークグループのうち、今回情報GCのピークグループリストに登録されているピークグループに該当するものがないものを前回情報GPのピークグループリストから削除する。
尚、ステップS103において、前回のピークグループリストに登録されているピークグループのうち、今回情報のピークグループリストに登録されているピークグループに該当するものがないものが検索されなかった場合、ステップS104の処理はスキップされる。
以上の処理により、今回情報GCのピークグループリストに登録されているピークグループの情報により特定される物体の移動状態を追跡し、今回情報GCのピークグループリストに反映させることが可能となる。
ここで、図31のフローチャートの説明に戻る。
ステップS65の処理により、ピークグループ追跡処理が終了すると、処理は、ステップS66に進む。
ステップS66において、周囲状態判定部233は、高さ検出部233dを制御して、至近距離高さ検出処理を実行させて、ピークグループリストメモリ233bに登録されているピークグループリストの各ピークグループのピーク情報により特定される物体の高さの情報を検出させて、高さ情報に登録させる。
[至近距離高さ検出処理]
ここで、図35のフローチャートを参照して、至近距離高さ検出処理について説明する。
ステップS131において、高さ検出部233dは、ピークグループリストメモリ233bにアクセスし、ピークグループリストに登録されているピークグループのうち、未処理のピークグループのいずれかを処理対象ピークグループに設定する。
ステップS132において、高さ検出部233dは、処理対象ピークグループのピークリストに含まれるピーク情報における距離インデックスカウントに基づいて特定される物体までの距離が、十分に至近距離であるとみなせる所定の閾値以下であるか否かを判定する。ステップS132において、特定される物体までの距離が、所定の閾値以下であると判定された場合、処理は、ステップS133に進む。
ステップS133において、高さ検出部233dは、処理対象ピークグループのピークリストに含まれるピーク情報における距離インデックスカウントに基づいて特定される物体の高さの情報が特定されているものとみなし、処理対象ピークグループの高さ情報に高さの情報が特定されていることを登録する。
一方、ステップS132において、特定される物体までの距離が、所定の閾値以下ではないと判定された場合、処理は、ステップS135に進む。
ステップS135において、高さ検出部233dは、処理対象ピークグループの処理対象ピークグループのピークリストに含まれるピーク情報における距離インデックスカウントに基づいて特定される物体の高さが不明であるものとみなし、処理対象ピークグループの高さ情報に高さが不明であることを登録する。
ステップS134において、高さ検出部233dは、ピークグループリストメモリ233bにアクセスし、ピークグループリストに登録されているピークグループのうち、未処理のピークグループが存在するか否かを判定し、未処理のピークグループが存在する場合、処理は、ステップS131に戻る。すなわち、ピークグループリストに登録されているピークグループの全てに対して高さ情報が登録されて、未処理のピークグループが存在しないとみなされるまで、ステップS131乃至S135の処理が繰り返される。
そして、ステップS134において、未処理のピークグループが存在しないと判定された場合、処理は終了する。
以上の処理によりピークグループリストに登録されているピークグループ毎に特定される物体の高さが特定されているか否かを検出し、ピークグループリストの情報に反映させることが可能となる。このため、物体までの距離と共に物体の高さが特定されているか否かに基づいて、例えば、路面にリフレクタが埋め込まれているような物体が監視領域内で検出されるようなことがあっても、十分に遠い距離である時には、高さが不明であることから、即時に衝突回避や物体の接近とみなす必要がなくなり、衝突の可能性のない路面に埋め込まれたリフレクタにより物体が存在するものとしてブレーキが制御されてしまうといった誤動作を防止することが可能となる。また、至近距離において高さがある物体については、距離が接近しすぎれば衝突の可能性が高いことを認識することができるので、適切に衝突回避のブレーキ制御をさせるといったことが可能となる。また、至近距離で、例えば、雨天時に隣のレーンを走行中の車両から巻き上げられるスプラッシュなどが降りかかるようなものを検出することができるので、雨滴センサ53が集中的に雨滴を検出してしまうような誤検出を抑制させるようにすることもできる。
ここで、図31のフローチャートの説明に戻る。
ステップS61において、未処理のピーク情報がない、すなわち、監視領域内に物体が検出されていない状態であるとき、ステップS62乃至S66の処理がスキップされて、周囲状態検出処理が実行されず、終了する。すなわち、この場合、ピークグループリストも生成されないことになる。
以上の一連の周囲状態検出処理によりピークグループリストメモリ233bにピークグループリストが登録されることになるので、外部通知判定部234は、このピークグループリストの情報に基づいて外部通知判定処理を実行して、外部装置へと通知するか否かを判定することが可能となる。
また、複数の受光部51、ピーク検出部332、およびピーク記憶部333を備えたうえで、上述したように処理することによって、複数の方向に存在する物体の反射によるピーク情報を同時に検出することができる。
受光部51、ピーク検出部332、およびピーク記憶部333のいずれかが、各方向について1組しかない場合には、各方向について順次処理を行うことになり、投光部51の発光後に全ての方向に対するピーク検出が完了するまでの時間が、各方向に対する繰り返し処理の完了する時間となるため遅くなる。
さらに、周囲状態検出処理において、ピーク情報が検出されない方向については、処理が省略されるので、処理量を減らすことが可能で、ピーク情報が検出される方向について優先的に処理されることになる。この結果、危険度の判定を、より早い時期に行うことが可能となる。
また、複数の受光部51、ピーク検出部332、およびピーク記憶部333を備えたことによって、各方向について任意の順序で処理を行うことが可能となる。例えば、ステップS61の処理において、周囲状態判定部233が車両の付近にある危険度の高い物体を検出した方向を優先して処理するようにできる。このようにすることで、危険度の高い物体について、より早い段階で、危険度の判定を行うことができる。
[外部通知判定処理]
次に、図36のフローチャートを参照して、外部通知判定処理について説明する。
ステップS151において、外部通知判定部234は、周囲状態判定部233のピークグループリストメモリ233bにアクセスし、今回情報GCのピークグループリストに登録されているピークグループのうち、未処理のピークグループを処理対象ピークグループに設定する。
ステップS152において、外部通知判定部234は、処理対象ピークグループの危険度判定対象情報に基づいて、処理対象ピークグループのピーク情報に基づいて特定される物体が、危険度判定対象となるものであるか否かを判定する。ステップS152において、危険度判定対象の物体であると判定された場合、処理は、ステップS153に進む。
ステップS153において、外部通知判定部234は、処理対象ピークグループの静止物体/移動物体情報に基づいて、処理対象ピークグループのピーク情報に基づいて特定される物体が、静止物体であるか否かを判定する。ステップS153において、静止物体ではない、すなわち、移動物体であると判定された場合、処理は、ステップS154に進む。
ステップS154において、外部通知判定部234は、処理対象ピークグループに含まれるピーク情報により特定される物体が、移動物体であるものとしての危険度を判定する。すなわち、移動物体の場合、例えば、処理対象ピークグループに含まれるピーク情報により特定される物体が、監視領域内の移動物体として検出される先行車であって、先行車に追従して走行する、いわゆるオートクルーズを実施するようなとき、移動物体との距離を保ちつつ、走行を続けることを目的とした危険度が判定される。このようなとき、外部通知判定部234は、例えば、追従に必要とされるブレーキの制御と、このブレーキの制御に伴った警報を発生するための危険度を判定する。
尚、ここでは、追従走行に必要とされるブレーキを制御すると共に、ブレーキの制御に伴った警報の発生を制御することを目的とした例について説明するものとするが、移動物体に対する危険度の判定は、追従走行を目的としたもの以外の危険度の判定をするようにしてもよく、例えば、シートベルト、パワートレイン、エアバッグ、ドアロック、またはパワーシートを制御することを目的としてもよいし、これらを組み合わせるようにしてもよい。
一方、ステップS153において、処理対象ピークグループに含まれるピーク情報により特定される物体が、静止物体であると判定された場合、処理は、ステップS155に進む。
ステップS155において、外部通知判定部234は、処理対象ピークグループに含まれるピーク情報により特定される物体が、静止物体であるものとしての危険度を判定する。すなわち、静止物体の場合、例えば、処理対象ピークグループに含まれるピーク情報により特定される物体が、監視領域内の静止物体として検出され、静止物体に対する衝突を回避するようなとき、静止物体との衝突回避と、衝突回避のための警報を発することを目的とした危険度が判定される。このようなとき、外部通知判定部234は、例えば、衝突回避に必要とされるブレーキの制御と、このブレーキの制御に伴った警報を発生するための危険度を判定する。
ステップS156において、外部通知判定部234は、判定された危険度が、予め危険度に基づいて設定されている警報が存在するか否かを判定する。ステップS156において、例えば、危険度に基づいて、発報すべき警報が設定されていると判定された場合、ステップS157において、外部通知判定部234は、結果出力部235に対して出力すべき警報を特定するための警報情報を出力する。
尚、ステップS156において、発報すべき警報が存在しないと判定された場合、ステップS157の処理はスキップされる。
ステップS158において、外部通知判定部234は、判定された危険度に、ブレーキの制御レベルが設定されているか否かを判定する。すなわち、ブレーキの制御レベルが、危険度に応じて予め設定されており、ここでは、判定結果である危険度に、ブレーキの制御レベルが設定されているか否かが判定される。ステップS158において、例えば、判定された危険度に、ブレーキの制御レベルが設定されている場合、処理は、ステップS159に進む。
ステップS159において、外部通知判定部234は、結果出力部235に対して、危険度に応じて設定されている制御レベルを特定するブレーキ制御情報を出力する。
尚、ステップS158において、判定された危険度に、ブレーキの制御レベルが設定されていないとみなされた場合、ステップS159の処理はスキップされる。
ステップS159において、外部通知判定部234は、周囲状態判定部233のピークグループリストメモリ233bにアクセスし、ピークグループリストに登録されているピークグループのうち、未処理のピークグループが存在するか否かを判定する。ステップS159において、未処理のピークグループが存在すると判定された場合、処理は、ステップS151に戻る。すなわち、全てのピークグループに対して、ステップS152乃至S159の処理を施すまで、ステップS151乃至S160の処理が繰り返される。
ステップS160において、未処理のピークグループが存在しないとみなされた場合、処理は終了する。
以上の処理により、ピークグループリストに登録されている全てのピークグループのピーク情報に基づいて特定される物体について、危険度が判定されて、危険度に応じた警報の種別およびブレーキ制御レベルの情報を結果出力部235に出力することが可能となる。
[結果出力処理]
次に、図37のフローチャートを参照して、結果出力処理について説明する。
ステップS171において、結果出力部235は、外部通知判定部234より警報情報が供給されてきたか否かを判定する。ステップS171において、例えば、図36のステップS157の処理により警報情報が出力されてきた場合、警報情報が供給されてきたものとみなし、処理は、ステップS172に進む。
ステップS172において、結果出力部235は、出力すべき警報の種別を特定する警報情報を警報出力装置201に出力する。この結果、警報出力装置201は、警報情報により特定された種別の警報を発報する。
尚、ステップS171において、警報情報が供給されてきていない場合、ステップS172の処理はスキップされる。
ステップS173において、結果出力部235は、外部通知判定部234よりブレーキ制御情報が供給されてきたか否かを判定する。ステップS173において、例えば、図36のステップS159の処理によりブレーキ制御情報が出力されてきた場合、ブレーキ制御情報が供給されてきたものとみなし、処理は、ステップS174に進む。
ステップS174において、結果出力部235は、ブレーキの制御レベルを特定するブレーキ制御情報をブレーキ制御装置203に出力する。この結果、ブレーキ制御装置203は、ブレーキ制御情報により特定された制御レベルでブレーキを制御する。
尚、ステップS173において、ブレーキ制御情報が供給されてきていない場合、ステップS174の処理はスキップされる。
以上の処理により、結果出力部235は、外部通知判定部234の判定結果に応じた警報情報、およびブレーキ制御情報に基づいて、車両11と物体の距離に応じた発報動作、およびブレーキ制御動作を実行することが可能となり、結果として、ドライバに対して適切な警報を発報すると共に、ドライバがパニック状態になるといった状態でも適切にブレーキを動作させることが可能となる。
以上の処理をまとめると、図27における上から5段目乃至8段目で示されるように、例えば、時刻t83乃至t84で示される距離インデックススタート信号が発生したタイミングから、次の時刻t85乃至t86で示される距離インデックススタート信号が発生されるまでの期間のうち、時刻t172までの期間において、物体検知動作処理(図26)が実行される。このうち、時刻t101乃至t144の期間においては、投光受光処理により、監視領域における物体の距離を特定するピーク情報が方向毎に測定される。
また、図27における9段目で示されるように、時刻t151(=t144)乃至t152において、周囲状態判定処理(図31)のうち、グループ化処理(図33)が実行されて、ピーク情報が分析されることにより類似するピーク情報がグループ化されてピークグループリスト(図32)が生成される。
さらに、図27における10段目で示されるように、時刻t161(=t152)乃至t162において、ピークグループ追跡処理(図34)が実行されて、前回情報GPと今回情報GCのピークグループリストに含まれるピークグループ毎に含まれるピーク情報の比較により、各ピークグループに含まれるピーク情報により特定される物体の移動が追跡されて、その結果がピークグループリストに反映される。
また、図27における11段目で示されるように、時刻t171(=t162)乃至t172において、至近距離高さ検出処理(図35)が実行されて、ピークグループにより特定される物体の至近距離での高さの有無が検出されて、ピークグループリストに反映される。
次に、図27における12段目で示されるように、時刻t181(=t172)乃至t182において、外部通知判定処理(図36)が実行されて、ピークグループリストにおける各ピークグループの情報に基づいて、外部通知の判定がなされる。
そして、図27における13段目で示されるように、時刻t191(t181)乃至t192において、結果出力処理(図37)が実行されて、外部通知判定処理による判定結果に基づいて、外部通知処理が実行される。
このため、監視領域に投光された光が、物体により反射される反射光を同時に取得して物体までの距離を測定することが可能となるので、物体までの距離を方向毎に高速で測定することが可能となる。また、高速に物体までの距離を方向毎に測定することが可能となるので、物体までの距離に基づいて、高速で車両の各種の装置を制御することが可能となるので、先行車の追従や衝突回避といった処理を高速で、かつ適切に実現することが可能となる。
尚、以上においては、レーザ光を利用したレーザレーダ装置について説明してきたが、レーザ光以外の情報を利用して物体検出をすることで、より高度に車両の動作を制御したり、警報を発報するようにしてもよく、例えば、レーザレーダ装置に加えて、カメラなどの画像を撮像する構成を設けるようにして、監視領域が撮像された画像の情報に基づいて、車両の動作を制御したり、警報を発報するようにしてもよい。
ところで、上述した一連の処理は、その全てをハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
図38は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)302およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM303にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。