JP5657964B2 - 高強度Ni基鍛造超合金及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明のNi基鍛造超合金は、組成として、0.005質量%以上0.2質量%以下のC(炭素)、0質量%以上1質量%以下のSi(ケイ素)、0質量%以上1質量%以下のMn(マンガン)、10質量%以上24質量%以下のCr(クロム)、およびMo(モリブデン)とW(タングステン)の少なくとも1種を「[Mo濃度]+0.5[W濃度]」で規定した時に5質量%以上17質量%以下、1質量%以上2質量%以下のAl(アルミニウム)、0.5質量%以上3.5質量%以下のTi(チタン)、0質量%以上10質量%以下のFe(鉄)、および:0.002質量%以上0.02質量%以下のB(ホウ素)と0.01質量%以上0.2質量%以下のZr(ジルコニウム)の少なくとも1種を含有し、残部が48質量%以上80質量%以下のNi(ニッケル)と不可避不純物でなるNi基鍛造超合金であって、前記Ni基鍛造超合金は多結晶体であり、熱処理後の前記結晶の平均粒径が72μm以上289μm以下であり、前記Ni基鍛造超合金は前記熱処理後に結晶粒界に沿って複数の粒状析出物が析出しており、前記多結晶体の任意断面における前記粒状析出物の平均長さ(結晶粒界に沿った長さ、前記粒状析出物1個あたりの前記結晶粒界の平均被覆長さ)が0.5μm以上2.5μm以下であることを特徴とする。なお上述したように、本発明においてNi基鍛造超合金とは、多結晶体の状態にあるものを意味する。
本発明のNi基鍛造超合金の製造方法は、組成として、0.005質量%以上0.2質量%以下のC、0質量%以上1質量%以下のSi、0質量%以上1質量%以下のMn、10質量%以上24質量%以下のCr、MoとWの少なくとも1種を「[Mo濃度]+0.5[W濃度]」で規定した時に5質量%以上17質量%以下、1質量%以上2質量%以下のAl、0.5質量%以上3.5質量%以下のTi、0質量%以上10質量%以下のFe、および0.002質量%以上0.02質量%以下のBと0.01質量%以上0.2質量%以下のZrの少なくとも1種を含有し、残部が48質量%以上80質量%以下Niと不可避不純物でなるNi基鍛造超合金に対して、溶体化熱処理を施す工程を有し、前記溶体化熱処理が、1100℃以上1160℃以下の第1溶体化熱処理と、980℃以上1080℃以下の第2溶体化熱処理とからなる2段階溶体化熱処理であることを特徴とする。
本発明のNi基鍛造超合金の製造方法は、組成として、0.005質量%以上0.2質量%以下のC、0質量%以上1質量%以下のSi、0質量%以上1質量%以下のMn、10質量%以上24質量%以下のCr、MoとWの少なくとも1種を「[Mo濃度]+0.5[W濃度]」で規定した時に5質量%以上17質量%以下、1質量%以上2質量%以下のAl、0.5質量%以上3.5質量%以下のTi、0質量%以上10質量%以下のFe、および0.002質量%以上0.02質量%以下のBと0.01質量%以上0.2質量%以下のZrの少なくとも1種を含有し、残部が48質量%以上80質量%以下Niと不可避不純物でなるNi基鍛造超合金に対して、溶体化熱処理を施す工程を有し、前記溶体化熱処理が、980℃以上1080℃以下で24時間以上保持する1段溶体化−長時間熱処理であることを特徴とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、Ni基鍛造超合金の望ましい微細構造と微細構造を制御できる熱処理方法を鋭意検討した。その結果、Ni基鍛造超合金の熱処理において、2段階溶体化熱処理という新規な熱処理方法を開発した。第1溶体化熱処理では、γ’相の溶体化熱処理における温度を従来よりも高く(具体的には、炭化物が固溶する温度域に)設定して超合金の結晶粒を粗大化させる。引き続いて、第2溶体化熱処理としてγ’相の固溶温度以上で炭化物の固溶温度以下の中間温度域で溶体化熱処理を施し、超合金の各結晶粒界上に粒状炭化物を析出させるとともに結晶粒内にも粒状炭化物を析出させる。その結果、超合金の結晶粒界に沿って粒状炭化物が鎖状に連なったような微細構造が得られる。
(1)前記多結晶体の任意断面における前記結晶粒界の合計長さに対する前記粒状析出物の合計長さの比率(被覆率)が、50%以上である。
(2)前記多結晶体の任意断面における前記粒状析出物の個数が、前記結晶粒界10μmあたり3個以上である。
(3)前記粒状析出物は、Cr炭化物と、Mo炭化物および/またはW炭化物から主に構成される。
(4)前記熱処理は、1100℃以上1160℃以下で施される第1溶体化熱処理と、それに引き続いて980℃以上1080℃以下で施される第2溶体化熱処理とを含む。
(5)前記熱処理は、980℃以上1080℃以下で24時間以上保持する溶体化熱処理を含む。
(6)組成として、0質量%以上20質量%以下のCo、0質量%以上1質量%以下のNbを更に含有する。
(7)組成として、「[Al濃度]/([Al濃度]+0.56[Ti濃度])」で表わされる値が0.45以上0.70以下である。
(8)上記のNi基鍛造超合金からなる石炭火力発電プラントのボイラーに用いるボイラー管である。
(9)上記のNi基鍛造超合金からなる蒸気タービンのブレードである。
(10)上記のNi基鍛造超合金からなる蒸気タービンのケーシングボルトである。
次に、本発明に係るNi基鍛造超合金の組成について説明する。
C成分は、炭化物を形成することにより超合金結晶粒の過度の粗大化を防止する効果を有する。ただし、過剰の添加は、炭化物がストリンガー状に析出しやすくなり、加工方向に対する直角方向の延性を低下させる。更にTiと結合して炭化物を形成した場合、Ni基鍛造超合金の析出強化相となるγ’相を形成するためのTi量が減少して強度が低下する。よって、C成分量は、0.005質量%以上0.2質量%以下が好ましい。0.005質量%以上0.15質量%以下がより好ましく、0.005質量%以上0.08質量%以下が更に好ましく、0.005質量%以上0.05質量%以下が最も好ましい。
本発明に係るNi基鍛造超合金は、多結晶体であって、72μm以上289μm以下の平均結晶粒径を有している。また、本発明のNi基鍛造超合金は、できるだけ結晶粒径が揃った均等な組織であることが望ましい。結晶粒の大きさは、日本工業標準規格(JIS)における「鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法」(JIS G 0551)で、結晶粒度番号(GS No.)0.99〜5.0の範囲が適当である。すなわち、下限である平均結晶粒径72μmは粒度番号5.0である。平均結晶粒径が72μmより小さいと、従来のNi基鍛造超合金に比べて、クリープ強度の高強度化が十分図れない。一方、上限である289μm(結晶粒度番号=0.99)より大きな平均結晶粒径では、本発明の結晶粒界組織としても延性の低下が著しくなる。また、289μmより大きな平均結晶粒径のNi基鍛造超合金は、超音波透過性も低下することから大型部材を作製した際の超音波探傷試験による欠陥検出性が悪くなる。平均結晶粒径は、141μm以上282μm以下(結晶粒度番号=1.0〜3.0)がより好ましい。なお、結晶粒径は、JISで定めるところの混粒(粒度番号が3以上異なる結晶粒が共存すること)でないものとする。
本発明に係るNi基鍛造超合金は、多結晶体の結晶粒界に沿って複数の粒状析出物が析出しており、該粒状析出物の平均長さが0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましく、0.5μm以上1.5μm以下がより好ましい。ここで、粒状析出物の平均長さとは、多結晶体の任意断面における結晶粒界に沿った平均長さであり、言い換えると、1個の粒状析出物によって覆われている結晶粒界の平均長さ(粒状析出物1個あたりの結晶粒界の平均被覆長さ)と定義する。また、結晶粒界における粒状析出物は、Cr炭化物と、Mo炭化物および/またはW炭化物で主に構成され、Ti炭化物を含む場合もある。粒状析出物の平均長さが0.5μmより小さいと、粒界の強化(粒界結合性の向上)に寄与することが難しい。一方、この平均長さが大き過ぎる(すなわち粒状析出物1個あたりが覆う粒界の平均長さが大きくなる)と、逆に粒界結合性の低下を招きやすくなる。実験的に確認したところ、粒状析出物の平均長さが2.5μm以下であれば延性低下が抑制され、1.5μm以下であればより好ましい。
本発明に係るNi基鍛造超合金の製造方法は、熱処理工程(特に溶体化熱処理工程)に最大の特徴を有する。他の工程に特段の限定はなく、従前の方法を利用することができる。以下、該熱処理について詳細に説明する。
前述したように、本発明者等は2段階溶体化熱処理という新規な熱処理方法を開発した。第1段溶体化熱処理は、1100℃以上1160℃以下の温度で行われる。第1段溶体化熱処理を実施することで、短時間で超合金結晶粒を粗大化することが可能となる。ただし、1160℃より高い温度で溶体化熱処理すると、粒成長速度が大きくなり過ぎるため、平均結晶粒径を289μm以下に制御することが困難になる。第1段溶体化熱処理の段階で平均結晶粒径が289μmより大きくなると、その後の熱処理(第2段溶体化熱処理を含む)を実施しても十分な延性を得ることが困難になる。また、前述したように、そのような超合金から大型部品を製造した場合、超音波探傷試験による欠陥検出性が悪くなる問題がある。一方、1100℃以上ではほとんどの炭化物がマトリックス中に固溶する(溶体化する)ため、粒界移動が容易になり結晶粒が粗大化しやすくなる。さらに粗大化を促進するためには、第1段溶体化熱処理は1125℃以上がより好ましい。
本発明者等は、別の溶体化熱処理方法として、980℃以上1080℃以下の温度域(γ’相の固溶温度以上で炭化物の固溶温度以下の中間温度域)で長時間保持する(具体的には24時間以上、より好ましくは48時間以上)熱処理を開発した。この1段溶体化−長時間熱処理よっても、本発明に係るNi基鍛造超合金の結晶粒を粗大化させ、結晶粒界に沿って粒状炭化物が鎖状に連なるように析出した微細構造を形成することが可能である。その結果、Ni基鍛造超合金のクリープ延性を高めることができる。1段溶体化−長時間熱処理は、前述の2段階溶体化熱処理と比べて長時間を要するものの、炭化物が固溶しない温度域かつ過飽和度が小さい温度域であるため、炭化物微粒子の大量生成を防止することができる。さらに、温度を変化させる必要がないことから被熱処理体内部に温度分布が生じることを防ぐことができるので、より均等な大きさの結晶粒を形成するのに好適である。
溶体化熱処理の後、時効熱処理が行われる。本発明において、時効熱処理に特段の限定はなく、従前の時効熱処理を実施することができる。1例として、クリープ強度と延性の観点から検討を行った結果、820℃以上880℃以下の温度で第1時効熱処理を行い、その後、600℃以上800℃以下の温度で第2時効熱処理を行うことは好ましい。該2段階の時効熱処理を行うことで、良好なクリープ強度とクリープ延性とを両立した特性が得られる。
以上説明してきたように、本発明に係るNi基鍛造超合金は、良好な高温機械的特性を有することから、石炭火力発電プラントの高温部材として好適に利用することができる。図2は、700℃級石炭火力発電プラントとそれに使用される高温部材の外観例を示す模式図である。図2に示したように、700℃級石炭火力発電プラントは、ボイラー10で加熱された高温蒸気(例えば700〜750℃)が蒸気タービン20の高圧タービン21、中圧タービン22、低圧タービン23に順次供給され、蒸気タービンシャフトに連結された発電機30を回転させて発電するシステムである。本発明に係るNi基鍛造超合金は、高温蒸気に直接曝されかつ大きな機械的応力が掛かるボイラー管11や高圧タービンブレード24やケーシングボルト25などに好適に利用することができる。
3…粒状炭化物、3’…炭化物微粒子、
10…ボイラー、11…ボイラー管、
20…蒸気タービン、21…高圧タービン、22…中圧タービン、23…低圧タービン、
24…高圧タービンブレード、25…ケーシングボルト。
Claims (14)
- 組成として、添加成分が0.005質量%以上0.2質量%以下のC、0質量%以上1質量%以下のSi、0質量%以上1質量%以下のMn、10質量%以上24質量%以下のCr、MoとWの少なくとも1種を「[Mo濃度]+0.5[W濃度]」で規定した時に5質量%以上17質量%以下、1質量%以上2質量%以下のAl、0.5質量%以上3.5質量%以下のTi、0質量%以上10質量%以下のFe、および0.002質量%以上0.02質量%以下のBと0.01質量%以上0.2質量%以下のZrの少なくとも1種でなり、残部が48質量%以上80質量%以下のNiと不可避不純物でなるNi基鍛造超合金であって、
前記Ni基鍛造超合金は所定の熱処理が施された多結晶体であり、前記結晶の平均粒径が72μm以上289μm以下であり、
前記Ni基鍛造超合金は結晶粒界に沿って複数の粒状析出物が析出しており、前記多結晶体の任意断面における前記粒状析出物の平均長さが0.5μm以上2.5μm以下であることを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1に記載のNi基鍛造超合金において、
前記多結晶体の任意断面における前記結晶粒界の合計長さに対する前記粒状析出物の合計長さの比率(被覆率)が、50%以上であることを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1または請求項2に記載のNi基鍛造超合金において、
前記多結晶体の任意断面における前記粒状析出物の個数が、前記結晶粒界10μmあたり3個以上であることを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のNi基鍛造超合金において、
前記粒状析出物が、Cr炭化物と、Mo炭化物および/またはW炭化物から構成されることを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のNi基鍛造超合金において、
組成として、0質量%超20質量%以下のCoおよび/または0質量%超1質量%以下のNbを更に含有することを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のNi基鍛造超合金において、
組成として、「[Al濃度]/([Al濃度]+0.56[Ti濃度])」で表わされる値が0.45以上0.70以下であることを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のNi基鍛造超合金において、
前記所定の熱処理は、1100℃以上1160℃以下で施される第1溶体化熱処理と、それに引き続いて980℃以上1080℃以下で施される第2溶体化熱処理とを含むことを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のNi基鍛造超合金において、
前記所定の熱処理は、980℃以上1080℃以下で24時間以上保持する溶体化熱処理を含むことを特徴とするNi基鍛造超合金。 - 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のNi基鍛造超合金からなることを特徴とする石炭火力発電プラントのボイラーに用いるボイラー管。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のNi基鍛造超合金からなることを特徴とする蒸気タービンのブレード。
- 請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のNi基鍛造超合金からなることを特徴とする蒸気タービンのケーシングボルト。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のNi基鍛造超合金の製造方法であって、
前記所定の熱処理は溶体化熱処理を施す工程を有し、
前記溶体化熱処理が、1100℃以上1160℃以下の第1溶体化熱処理と、それに引き続いて行われる980℃以上1080℃以下の第2溶体化熱処理とからなる2段階溶体化熱処理であり、
前記第1溶体化熱処理における温度と保持時間とを制御することによって前記平均粒径を前記の範囲内に制御し、
前記第2溶体化熱処理における温度と保持時間とを制御することによって前記粒状析出物の析出を前記の性状に制御することを特徴とするNi基鍛造超合金の製造方法。 - 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のNi基鍛造超合金の製造方法であって、
前記所定の熱処理は溶体化熱処理を施す工程を有し、
前記溶体化熱処理が、980℃以上1080℃以下で24時間以上保持する1段溶体化−長時間熱処理であり、
前記1段溶体化−長時間熱処理における温度と保持時間とを制御することによって前記平均粒径を前記の範囲内に制御し、かつ前記粒状析出物の析出を前記の性状に制御することを特徴とするNi基鍛造超合金の製造方法。 - 請求項12または請求項13に記載のNi基鍛造超合金の製造方法において、
前記所定の熱処理は、前記溶体化熱処理を施す工程の後に、更に時効熱処理を施す工程を有し、
前記時効熱処理が、820℃以上880℃以下の第1時効熱処理と、600℃以上800℃以下の第2時効熱処理とからなる2段階時効熱処理であることを特徴とするNi基鍛造超合金の製造方法。
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