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JP5534768B2 - 研磨パッド - Google Patents

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JP5534768B2
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Description

本発明は、研磨パッドに係り、特に、湿式成膜法により形成され被研磨物を研磨加工するための研磨面を有する樹脂製発泡シートを備えた研磨パッドに関する。
従来、レンズ、平行平面板、反射ミラー等の光学材料、ハードディスク用基板、半導体デバイス用シリコンウエハ、液晶ディスプレイ用ガラス基板等、高精度に平坦性が要求される材料(被研磨物)では、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。半導体デバイスでは、半導体回路の高密度化を目的とした微細化や多層配線化が進み、シリコンウエハを一層高度に平坦化する技術が重要となっている。液晶ディスプレイでも、大型化に伴い、ガラス基板のより高度な平坦性が求められている。このような被研磨物の研磨加工では、平坦性の向上を図るために一度研磨加工(一次研磨)した後に仕上げ加工(二次研磨)が行われている。研磨加工時には、被研磨物および研磨パッド間に研磨粒子を含む研磨液(スラリ)が供給される。
一般に、仕上げ用研磨パッドには、湿式成膜法で形成されたウレタン樹脂製の発泡シートが使用されている。湿式成膜法では、ウレタン樹脂を水混和性の有機溶媒に溶解させた樹脂溶液をシート状の成膜基材に塗布後、水系凝固液中に浸漬することで樹脂がシート状に凝固再生される。得られた発泡シートでは、内部にウレタン樹脂の凝固再生に伴う多数の発泡が形成されている。すなわち、被研磨物を研磨加工するための研磨面側に微多孔が形成された略平坦な表面層(スキン層)を有し、表面層より内側に発泡が連続状に形成されている。この略平坦なスキン層を有する研磨面が、被研磨物の微少うねりを低減させる役割を果たすため、研磨性能に大きく寄与する(特許文献1参照)。一方、バフ処理によりスキン層が除去された研磨パッドでは、発泡が研磨面で開孔し被研磨物と擦り合う表面に凹凸が形成されているため、一次研磨等の種々の研磨加工に用いることができる。
ところが、特許文献1の技術のように湿式成膜法で形成され研磨面で発泡を開孔させない発泡シートは、研磨パッドの厚みを均一化する手段として、研磨面と反対の面(以下、裏面という。)に研削加工を実施することがある。この場合、裏面で発泡が開孔してしまい基材との接着面積が減少してしまうため、基材と発泡シートとの接着力が不足し、研磨中に剥離が生じる場合がある。また、湿式成膜法で形成され裏面で発泡を開孔させた発泡シートは、発泡が厚さ方向に縦長で、裏面側に発泡径が拡大された構造である。このため、研磨加工により繰り返し加圧すると発泡が圧縮されて潰れやすく、部分的に沈み込みが発生し元に戻りにくくなり、いわゆる「へたり」が生じ研磨パッドの物性が経時的に変化するおそれがある。物性が経時的に変化すると研磨速度が低下する等の研磨性能の変化が生じ、被研磨物の平坦性が悪化してしまう。研磨性能の経時的な変化を抑制し、研磨パッドの厚み精度を保つことで、被研磨物の平坦性を向上させるため、発泡シートの裏面側に柔軟な弾性シートを積層した研磨パッドが開示されている(特許文献2参照)。また、発泡シートの裏面側に樹脂製シートや不織布を積層した研磨パッドが開示されている(特許文献3)。
特許第4189384号公報 特開2003−37089号公報 特開2002−307293号公報
しかしながら、特許文献2〜3の技術では、発泡シートに弾性シートや樹脂性シートを積層することで、安定したクッション性を発揮することができるものの、研磨加工が進行するに従い研磨加工中に施されるドレス処理(軽度なサンディング)で発泡シートが薄くなり、スラリによる浸食の影響を受けやすくなる。スラリによる浸食の影響を受けると、積層された面で剥離するおそれがあり、寿命が短いものとなる。また、積層により厚みが増すと研磨パッドに厚みムラが生じやすく、被研磨物に厚みムラが転写され、平坦性は悪化することとなる。
本発明は上記事案に鑑み、長期間安定した研磨性能を維持し被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、湿式成膜法により形成され被研磨物を研磨加工するための研磨面を有する樹脂製発泡シートを備えた研磨パッドにおいて、前記発泡シートは、前記研磨面側に、複数の縦長発泡が形成された連続発泡部と、前記研磨面と反対の面側に、前記縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部とを有し、湿式成膜法により一体成形されたものであり、前記連続発泡部のかさ密度が0.15g/cm 〜0.35g/cm の範囲、前記発泡無形成部のかさ密度が0.5g/cm 〜0.9g/cm の範囲であることを特徴とする。
本発明では、縦長発泡が形成された連続発泡部を有しているため、研磨加工時にクッション性が確保されると共に、縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部を有しており、連続発泡部のかさ密度を0.15g/cm 〜0.35g/cm の範囲、発泡無形成部のかさ密度を0.5g/cm 〜0.9g/cm の範囲としたことで、湿式成膜法により一体成形された発泡シートにおいて発泡無形成部のかさ密度が高く連続発泡部を支持するため、研磨加工で繰り返し加圧されても、連続発泡部の発泡無形成部側でへたりが生じにくくなり、長期間安定した研磨性能を維持し被研磨物の平坦性を向上させることができる。
この場合において、連続発泡部に形成された複数の縦長発泡間および発泡無形成部に、微多孔が形成されていてもよい。連続発泡部は、少なくとも1/2の厚さであることが好ましい。発泡シートは、ポリウレタン樹脂製とすることが好適である。発泡シートの研磨面と反対の面に更に基材が貼り合わされていてもよい。発泡シートは、研磨面と反対の面に研削処理が施されていてもよい。また、発泡シートおよび基材間の剥離強度を0.4kg/cm以上とすることができる。
本発明によれば、縦長発泡が形成された連続発泡部を有しているため、研磨加工時にクッション性が確保されると共に、縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部を有しており、連続発泡部のかさ密度を0.15g/cm 〜0.35g/cm の範囲、発泡無形成部のかさ密度を0.5g/cm 〜0.9g/cm の範囲としたことで、湿式成膜法により一体成形された発泡シートにおいて発泡無形成部のかさ密度が高く連続発泡部を支持するため、研磨加工で繰り返し加圧されても、連続発泡部の発泡無形成部側でへたりが生じにくくなり、長期間安定した研磨性能を維持し被研磨物の平坦性を向上させることができる、という効果を得ることができる。
本発明を適用した実施形態の研磨パッドを模式的に示す断面図である。 実施例の研磨パッドの発泡シートの断面を示す電子顕微鏡写真である。 従来の研磨パッドを模式的に示す断面図である。
以下、図面を参照して、本発明を適用した研磨パッドの実施の形態について説明する。
(構成)
図1に示すように、本実施形態の研磨パッド10は、湿式成膜法によりウレタン樹脂で形成された発泡シート2を備えている。発泡シート2は、略平坦な研磨面Pを有している。
発泡シート2は、湿式成膜法によりウレタン樹脂でシート状に形成されている。発泡シート2には、研磨面P側に、図示しない緻密な微多孔が形成されておりミクロな平坦性を有するスキン層4が形成されている。スキン層4より内側(ウレタン樹脂内)には、連続発泡部としての発泡部2a(研磨面P側の部分)と、発泡無形成部としての無発泡部2b(研磨面Pと反対の面側の部分)とを有している。発泡部2aでは、厚さ方向に沿って縦長の丸みを帯びた断面三角形状の発泡3(縦長発泡)が形成されている。発泡3は、研磨面P側の孔径が研磨面Pと反対の面側の孔径より小さく形成されている。すなわち、発泡3は研磨面P側で縮径されている。発泡3の厚さ方向の長さにはバラツキがある。発泡3の間のウレタン樹脂中には、発泡3より小さくスキン層4の緻密な微多孔より大きい孔径の微多孔(マイクロポーラス)が形成されているが、図1ではそれらの微多孔を捨象して示している。発泡3および微多孔は、不図示の連通孔で網目状につながっている。無発泡部2bでは、発泡3は形成されておらず、発泡部2aに形成された微多孔と同様の微多孔が連通孔で網目状につながっている。発泡シート2は、湿式成膜法により形成された連続状の発泡構造を有している。本例では、研磨面Pの反対面(以下、裏面という。)側に研削処理が施され厚みが均一化されている。
ここで、発泡シート2の発泡部2aおよび無発泡部2bについて説明する。発泡部2aでは、連続状に形成された発泡3や微多孔により、研磨加工中にクッション性が発揮される。無発泡部2bでは、発泡3が形成されていないため、かさ密度が発泡部2aより高いので、無発泡部2bは発泡部2aを支持する働きをする。このため、発泡部2aの強度が補われ、研磨加工で繰り返し加圧されても発泡3の圧縮潰れを抑制でき発泡部2aの部分的な沈み込みが起きにくくなるため、発泡部2aの研磨性能を長期間に亘り安定して保持することができる。
発泡部2aの厚さは、全体の厚さに対して少なくとも1/2に調整されている。このため、研磨加工中にクッション性は十分に発揮される。発泡部2aの厚さが全体の厚さに対して1/2に満たない場合、クッション性は不十分となる。無発泡部2bの厚さは、全体の厚さに対して少なくとも1/6、つまり1/6〜1/2の範囲に調整されている。このため、無発泡部2bは、発泡部2aを支持することができる。無発泡部2bの厚さが全体の厚さに対して1/6に満たない場合、無発泡部2bが発泡部2aを十分に支持することができず、研磨加工での繰り返しの加圧により、発泡部2aの研磨面Pと反対側の部分で発泡3の圧縮潰れが生じやすくなる。
発泡部2aのかさ密度は、0.15〜0.35g/cmの範囲に、無発泡部2bのかさ密度は0.5〜0.9g/cmの範囲に設定されている。このため、無発泡部2bが発泡部2aを支持することができ、研磨加工に必要なクッション性が発揮されると共に、繰り返しの加圧による強度の低下を抑制することができる。
また、研磨パッド10は、研磨面Pと反対の面側に、研磨機に研磨パッド10を装着するための両面テープ5の一面側が貼り合わされている。両面テープ5は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記する。)等の基材を有しており、その両表面に粘着剤が塗布されている。両面テープ5の他面側(最下面側)に剥離紙6を有している。
(製造)
研磨パッド10は、ウレタン樹脂を溶解させた樹脂溶液を準備する準備工程、樹脂溶液を成膜基材に連続的に塗布する塗布工程、水系凝固液中でウレタン樹脂をシート状に凝固再生させる凝固再生工程、凝固再生したウレタン樹脂を洗浄し乾燥させる洗浄・乾燥工程、乾燥後の発泡シート2の裏面側に、厚みを均一化させるように研削処理を施す研削処理工程、発泡シート2に両面テープ5を貼付するラミネート加工工程を経て製造される。以下、工程順に説明する。
準備工程では、ウレタン樹脂、ウレタン樹脂を溶解可能な水混和性の有機溶媒のN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略記する。)および添加剤を混合してウレタン樹脂を溶解させる。水混和性の有機溶媒としては、水と任意の割合で混ざり合う有機溶媒であれば良く、DMF以外に、例えばN,N−ジメチルアセトアミド等を用いても良い。ウレタン樹脂には、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系等の樹脂から数平均分子量が5,000〜100,000の範囲のものを選択して用い、例えば、ウレタン樹脂が30重量%となるようにDMFに溶解させる。ウレタン樹脂の分子量を制限することにより、凝固再生工程(詳細後述)において、ウレタン樹脂の分子移動を円滑にすることができる。添加剤としては、発泡3の平均厚さ方向の長さや単位体積あたりの個数を制御するため、カーボンブラック等の顔料、発泡の生成を促進させる親水性活性剤及びウレタン樹脂の凝固再生を安定化させる疎水性活性剤等を用いることができる。得られた溶液を減圧下で脱泡してウレタン樹脂溶液を得る。
塗布工程では、準備工程で得られたウレタン樹脂溶液を常温下でナイフコータ等により帯状の成膜基材に略均一となるように、連続的に塗布する。このとき、ナイフコータ等と成膜基材との間隙(クリアランス)を調整することで、ウレタン樹脂溶液の塗布厚さ(塗布量)が調整される。成膜基材にはPET樹脂等の樹脂製の不織布やフィルムを用いることができるが、本例では、成膜基材としてPET製フィルムが用いられる。
凝固再生工程では、成膜基材に塗布されたウレタン樹脂溶液が、ウレタン樹脂に対して貧溶媒である水を主成分とする凝固液(水系凝固液)に案内される。本例では、凝固液は10〜30重量%のDMF水溶液(DMFと水との混合液)を用い、温度は45〜65℃の範囲に設定されている。凝固液中では、まず、ウレタン樹脂溶液の表面側に緻密な微多孔が形成され厚さ数μm程度のスキン層4が形成される。その後、ウレタン樹脂溶液中のDMFと凝固液との置換の進行によりウレタン樹脂が成膜基材上にシート状に凝固再生されて発泡3が形成された発泡部2aと発泡3が無形成の無発泡部2bとを有する発泡シート2が形成される。DMFがウレタン樹脂溶液から脱溶媒し、DMFと凝固液とが置換することで、スキン層4より内側の発泡部2aに発泡3および微多孔が形成されると共に、発泡部2bに微多孔が形成され、発泡3および微多孔が立体網目状に連通する。
ここで、発泡部2aおよび無発泡部2bについて説明する。凝固再生工程において、凝固液の温度、およびDMF濃度は、従来よりも高く設定されている。このため、凝固液中でのウレタン樹脂溶液のスキン層4の形成速度は従来よりも速く、粗密のあるスキン層4が形成される。その後、スキン層4の進入し易い部分からウレタン樹脂溶液中に凝固液が進入する。このとき、ウレタン樹脂溶液内のDMFの溶出より凝固液が優先的にウレタン樹脂溶液中に進入し、DMFと凝固液とが置換され、ウレタン樹脂の凝集が生じる。凝固液として水とDMFとを含み、従来より高い濃度のDMF水溶液が用いられるため、ウレタン樹脂の凝固は緩慢となり、DMFと水との置換速度は遅くなる。このため、発泡部2aでは、スキン層4の凝固液が進入しやすい部分で発泡3が形成されやすくなり、従来の発泡より孔径が小さい発泡3および微多孔が形成される。一方、無発泡部2bでは、凝固液とDMFとの相互拡散が均一になるため、発泡3は形成されず、微多孔のみが網目状に形成される。また、成膜基材のPET製フィルムが水を浸透させないため、スキン層4側で脱溶媒が生じることから、発泡部2aでは発泡3の無発泡部2b側の孔径が大きくなり、成膜基材側で脱溶媒が生じず無発泡部2bで発泡が形成されることはない。
洗浄・乾燥工程では、凝固再生工程で凝固再生したシート状のウレタン樹脂(以下、成膜樹脂という。)を成膜基材から剥離し、水等の洗浄液中で洗浄して成膜樹脂中に残留するDMFを除去する。洗浄後、成膜樹脂をシリンダ乾燥機で乾燥させる。シリンダ乾燥機は内部に熱源を有するシリンダを備えている。成膜樹脂がシリンダの周面に沿って通過することで乾燥する。乾燥後の成膜樹脂は、ロール状に巻き取られる。
研削処理工程では、成膜樹脂の表面に形成されたスキン層4と反対の面側に研削処理を施す。すなわち、圧接治具の略平坦な表面を成膜樹脂のスキン層4側の面に圧接し、スキン層4と反対の面側に研削処理を施す。研削処理には、バフ機やスライス機等を用いることができる。これにより、成膜樹脂の厚みが均一化され、発泡シート2が得られる。
ラミネート加工工程では、得られた発泡シート2の研磨面Pと反対側の面に両面テープ5の一面側を貼り合わせる。両面テープ5の他面側は剥離紙6で覆われている。汚れや異物等の付着がないことを確認する等の検査を行い、研磨パッド10を完成させる。
(作用)
次に、本実施形態の研磨パッド10の作用等について説明する。
従来湿式成膜法で製造される研磨パッド20を図3に示す。研磨パッド20の製造では、まず、DMFにウレタン樹脂を溶解させ添加剤を混合しウレタン樹脂溶液を基材に塗布し、水を主成分とする凝固液に案内する。凝固液は、5%程度のDMF水溶液が使用され、凝固液の温度は常温に設定される。DMFはウレタン樹脂の溶解に一般に用いられる溶媒であり、水に対して任意の割合で混合することができるため、凝固液中では、まずウレタン樹脂溶液の表面でDMFと凝固液との置換(ウレタン樹脂の凝固再生)が起こり、スキン層14が形成される。その後、スキン層14の進入しやすい部分からウレタン樹脂溶液内部に凝固液が進入し、樹脂の分散状態によってDMFと凝固液との置換が生じ、発泡13が形成される。すなわち、従来の研磨パッド20では、ウレタン樹脂で形成された発泡シート12を有し、発泡シート12には、厚さのほぼ全体に亘る縦長の発泡13が形成されている。成膜基材としてPET製フィルムなどの水を浸透させないものを使用すると、ウレタン樹脂溶液の表面側からのみDMFが溶出しないため、形成される発泡13は成膜基材側が大きく丸みを帯びた発泡となる。
このような従来の発泡シート12を備えた研磨パッド20では、発泡13が厚さ方向に縦長で、研磨面Pと反対の面側に発泡径が拡大された構造であるため、研磨面Pと反対の面側の発泡シート12のかさ密度は低くなる。このため、研磨加工により繰り返し加圧すると部分的に沈み込みが発生し元に戻りにくくなり、へたりが生じやすくなる。へたりが生じると、研磨性能が経時的に変化するため、研磨速度が低下し、被研磨物の平坦性が悪化してしまう。また、発泡シート12の研磨面Pと反対の面側に研削処理が施されているため、発泡13が発泡シート12の研削された面で開孔している。このため、発泡シート12と両面テープ15とが接触する面積が小さくなり、接着力が低下することから、研磨加工時に発泡シート12が剥離するおそれがある。発泡シート12が剥離した場合は、研磨加工を継続することができなくなる。本実施形態は、これらの問題を解決することができる研磨パッドである。
本実施形態の研磨パッド10では、発泡シート2の全体の厚さに対してすくなくとも1/2の厚さの発泡部2aが研磨面P側に形成されている。発泡部2aには発泡3と微多孔とが形成され、連続状の発泡構造を有しているため、研磨加工時にクッション性が十分に発揮されることで、被研磨物の平坦性向上を図ることができる。
また、本実施形態の研磨パッド10では、発泡シート2の研磨面Pと反対の面側に無発泡部2bが形成されている。無発泡部2bには、発泡3が形成されておらず、微多孔が形成された連続発泡構造を有している。このため、無発泡部2bのかさ密度は発泡部2aのかさ密度より高くなっている。すなわち、発泡部2aのかさ密度が0.15〜0.35g/cmの範囲であるのに対して、無発泡部2bのかさ密度は、0.5〜0.9g/cmの範囲に調整されている。このため、無発泡部2bが発泡部2aを支持することで、発泡部2aの強度を補うため、研磨加工時の繰り返しの圧力により生じるへたりを抑制し、長期間研磨性能が維持されるので、長寿命化を図ることができる。
更に、本実施形態の研磨パッド10では、発泡シート2の無発泡部2bの厚さは、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さに設定されている。無発泡部2bは、発泡3が無形成の分発泡部2aよりかさ密度が高いため、無発泡部2bは発泡部2aを支持する働きをすることができる。このため、研磨加工で繰り返し加圧されても、へたりが抑制され長期間安定した研磨性能を維持することができる。また、本実施形態の研磨パッド10では、発泡シート2の裏面側に研削処理が施されている。無発泡部2bが形成されているため、裏面に研削処理が施されていても発泡3が開孔されることがないため、発泡シート2の強度を保つことができる。また、発泡シート2と両面テープ5とが接触する面積が従来の研磨パッド20の場合と比べて大きくなり、接着力が増すので、研磨加工中に発泡シート2が両面テープ5から剥離することを抑制することができ、剥離強度を0.4kg/cm以上とすることができる。無発泡部2bの厚さが全体の厚さに対して1/6に満たない場合、発泡シート2の裏面に研削処理を施すと、発泡3が研削面で開孔することがあるため、両面テープ5と発泡シート2の接触する面積が小さくなり、研磨加工中に発泡シート2が両面テープ5から剥離しやすくなる。
更にまた、本実施形態の研磨パッド10では、発泡シート2は湿式成膜法により一体成形されている。このため、発泡シートに他の材質のシートが積層されたものと比較すると、研磨加工中に積層された面で剥離することがない。また、積層されたものは、厚みが増すにつれて研磨パッドの厚みムラが生じることがあるが、研磨パッド10は、発泡シート2が一体成形されているため厚みムラを防ぐことができ、被研磨物の平坦性を向上させることができる。
更に、本実施形態の研磨パッド10では、発泡シート2がポリウレタン樹脂製であり、ポリウレタン樹脂の数平均分子量が5,000〜100,000の範囲に設定されている。このため、ウレタン樹脂の分子量が制限されることで、ウレタン樹脂の分子移動を円滑化することができる。すなわち、凝固再生工程において、ウレタン樹脂溶液中のDMFが脱溶媒されることでスキン層4側へ移動し、ウレタン樹脂は成膜基材側に円滑に移動することができる。ウレタン樹脂を円滑に成膜基材側に移動させることで、成膜基材側で樹脂濃度が高くなり、発泡3が無発泡の無発泡部2bが形成される。
なお、本実施形態では、樹脂シートとしてポリウレタン樹脂製のシートを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の樹脂を使用してもよい。例えば、ポリエステル樹脂等を使用してもよい。ポリウレタン樹脂を用いるようにすれば、湿式成膜法により連続状の発泡構造を容易に形成することができる。
また、本実施形態では、発泡シート2の作製時に、発泡シート2の裏面に研削処理を施し、研削面に両面テープ5を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発泡シート2の裏面に研削処理を施した後、両面テープ5と発泡シート2との間に更に支持体を貼り合わせてもよい。支持体を貼り合わせることで、発泡シート2が全面で支持されるため、研磨パッド10を研磨定盤に安定して固定させることができる。
更に、本実施形態では、発泡シート2の作製時に、発泡シート2を凝固再生させた後、成膜基材を剥離し、両面テープ5を貼り合わせる例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ウレタン樹脂を凝固再生させた後、成膜基材を剥離せず、両面テープ5を貼り合わせ、成膜基材を支持体としてもよい。また、発泡シート2と支持体とが剥離しにくいように、予め接着性のよい樹脂を塗布した成膜基材上にウレタン樹脂を凝固再生させて、成膜基材をそのまま支持体としてもよい。更に、成膜基材に不織布を用いた場合は、発泡シートから剥離することが難しいため、成膜基材を剥離せずそのまま乾燥させてもよい。つまり、不織布の成膜基材が研磨パッド10の支持体となる。更に、両面テープ5としては、基材の両面に粘着剤が塗布されていてもよく、基材を有することなく粘着剤のみで構成されてもよい。
また更に、本実施形態では、発泡シート2の裏面側に研削処理を施し、スキン層4を残す例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発泡シート2の裏面に研削処理を施さなくてもよい。研削処理を施すことなく、両面テープ5を貼り合わせた場合でも無発泡部2bが微多孔状のため、接着面積が確保される。このため、両面テープ5および無発泡部2b間の剥離強度を0.40kg/cm以上とすることができることを確認している。略平坦なスキン層4を残したまま、発泡シート2の厚み精度を高めることを考慮すれば、発泡シート2の裏面に研削処理を施すことが好ましい。
更にまた、本実施形態では、凝固再生工程において、凝固液に10〜30%のDMF水溶液を用い、凝固液の温度を45〜65℃に調整したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、凝固液に従来と同様に5%程度のDMF水溶液を用い、凝固液の温度を45〜65℃に調整して作製してもよい。また、凝固液に10〜30%のDMF水溶液を用い、凝固液の温度を従来と同様に18℃に調整して作製してもよい。このとき、無発泡部2bの厚さは、凝固液の濃度ないし温度を変えることで調整することができる。
また、本実施形態では、発泡シート2に形成された発泡部2aのかさ密度が、0.15〜0.35g/cmの範囲に調整されている例を示したが、発泡部2aのクッション性等を考慮すると、0.2〜0.3g/cmの範囲とすることが好ましい。また、本実施形態では、無発泡部2bのかさ密度が、0.5〜0.9g/cmの範囲に調整されている例を示したが、無発泡部2bが発泡部2aを支持することを考慮すると、0.65〜0.85g/cmの範囲とすることが好ましい。更に、本実施形態では、発泡シート2に形成された無発泡部2bの厚さは、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さに設定されている例を示したが、無発泡部2bの強度や寿命を考慮すると、少なくとも1/5の厚さとすることが好ましい。
以下、本実施形態に準じて製造した研磨パッドの実施例について説明する。なお、比較のために製造した比較例の研磨パッドについても併記する。
(実施例1)
実施例1では、ウレタン樹脂として数平均分子量が15,000のポリエステルMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)ウレタン樹脂を用いた。このウレタン樹脂を30重量%でDMFに溶解させた溶液100部に対して、粘度調整用のDMFの45部、カーボンブラックを30%含むDMF分散液の40部、疎水性活性剤の2部を混合してウレタン樹脂溶液を調製した。得られたウレタン樹脂溶液の粘度は、5.2Pa・sであった。
粘度は、回転粘度計(東機産業株式会社製、TVB−10型)でNo.M3のロータを使用し、25℃の温度環境下で測定した。得られたウレタン樹脂溶液を成膜基材に塗布した後、シート状のウレタン樹脂溶液を凝固液中で凝固再生させた。このとき、凝固液に20%のDMF水溶液を使用し、凝固液の温度は50℃とした。成膜基材を剥離して、洗浄・乾燥させた後、厚み295μmの発泡シート2を製造した。得られた発泡シートの研磨面Pと反対の面側を、発泡シート全体厚みの10%バフィングし、発泡シートの厚みを均一化させた後、バフ面に支持体を両面テープで貼り合わせ実施例1の研磨パッドを製造した。
(比較例1)
比較例1では、凝固再生工程において、凝固液は5%のDMF水溶液を使用し、凝固液の温度を18℃とし、実施例1と同様にして厚み308μmの発泡シートを製造後、発泡シートの裏面側を、発泡シート全体厚みの10%バフィングし研磨パッドを製造した。すなわち、比較例1は無発泡部2bが形成されていない従来の発泡シート12を備えた研磨パッド20である(図3参照)。
(評価1)
実施例1の研磨パッドにおいて、発泡シート2の発泡部2aと無発泡部2bの厚み、およびかさ密度をそれぞれ測定した。厚みの測定では、ダイヤルゲージ(最小目盛り0.01mm)を使用し、荷重100g/cmをかけて測定した。すなわち、同じ厚みの発泡シート2を2枚用意し、発泡シート2の全体の厚みを測定した。次に、一方の発泡シート2の発泡部2aが消失するまでバフィングし、無発泡部2bのみからなる無発泡シートを作製し、その厚みを測定した。その後、他方の発泡シート2の無発泡部2bが消失するまでバフィングし、発泡部2aのみからなる発泡シートを作製し、厚みを測定した。その結果、実施例1では、発泡部2aと無発泡部2bとの厚さはそれぞれ、232.5μm、62.5μmであった。また、かさ密度は、発泡部2aのみからなる発泡シートと無発泡部2bのみからなる無発泡シートのそれぞれを、所定サイズの大きさに切り出して重量を測定し、厚みと切り出しサイズから算出した。その結果、実施例1では、発泡部2aと無発泡部2bとのかさ密度は、それぞれ、0.22g/cm(0.15〜0.35g/cmの範囲)、0.77g/cm(0.5〜0.9g/cmの範囲)であった。
(評価2)
実施例1および比較例1の研磨パッドにおいて、剥離強度をそれぞれ、日本工業規格(JIS K6772)に準じた方法で測定した。剥離強度の測定では、テンシロン引張試験機(株式会社エー・アンド・デイ社製、テンシロン万能試験機、RTF−1210)を使用した。すなわち、20mm×150mmに切り出したサンプルの短辺先端をトルエンに浸漬し剥ぎ口を作り、発泡シートと支持体との剥ぎ口をつかみ、その間隔が10mmとなるように引張試験機に取り付けた。温度20℃、湿度65%の条件下に2時間保持し、十分に乾燥させた後、毎分200mmの引張速度で短辺と平行に長さ50mm間の接着層を剥離し、最大荷重を求めた。測定回数を3回とし、平均値を評価した。剥離強度の評価結果を下表1に示す。
図2に示すように、発泡部2aには発泡3および微多孔が連続状に形成され、無発泡部2bでは発泡3が無形成で、微多孔が連続状に形成されている。表1に示すように、従来の方法で製造した比較例1の研磨パッド20では、剥離強度が0.31kg/cmであった。これに対して、実施例1の研磨パッドでは、0.68kg/cmで、比較例1より高い値を示した。これは、比較例1では、発泡13がバフにより開孔している部分があるため、接着面積が低下し、実施例1より低い剥離強度を示したと考えられる。これに比べ、実施例1では、無発泡部2bを有するため、裏面をバフ処理しても発泡部2aに形成された発泡3が開孔せず、接着面積が大きくなるため、高い剥離強度を示したと考えられる。実施例1の研磨パッド10では、研磨加工中に発泡シート2が両面テープから剥離しにくく、安定した研磨加工を実施することができることが期待できる。
(評価3)
実施例1及び比較例1の研磨パッドを用いて、以下の研磨条件でアルミニウム基板の研磨加工を20バッチ行い、研磨レートと基板のうねり(waviness)を測定した。研磨レートは、研磨効率を示す数値の一つであり、一分間当たりの研磨量を厚さで表したものである。研磨加工前後のアルミニウム基板の重量減少を測定し、アルミニウム基板の研磨面積及び比重から計算により算出した。うねりは、表面精度(平坦性)を評価するための測定項目の一つであり、光学式非接触表面粗さ計で観察した単位面積当たりの表面像のうねり量(Wa)を、オングストローム(Å)単位で表したものである。うねりの測定には、表面粗さ測定機(Zygo社製、型番New View 5022)を使用し、以下の研磨条件で評価した。表1に5バッチ目と20バッチ目の研磨レートおよびうねりの評価結果を合わせて示す。
(研磨条件)
使用研磨機:スピードファム社製、9B−5Pポリッシングマシン
研磨速度(回転数):30rpm
加工圧力:100g/cm
スラリ:コロイダルシリカスラリ
スラリ供給量:100cc/min
被研磨物:70mmφハードディスク用アルミニウム基板(一次研磨上がり)
研磨時間:1バッチ当り取り代が0.3μm/片面となるように研磨時間を調整
(うねり評価条件)
測定枚数:1バッチに5枚表裏両面のWa(Å)測定
バンドパス:200μm−1250μm
測定位置:R=30mm
表1に示すように、従来の方法で製造した比較例1の研磨パッド20では、5バッチ目、20バッチ目の研磨レートはそれぞれ0.068、0.060μm/minであった。これに対して、実施例1の研磨パッド1では、0.074、0.072μm/minであり、比較例1より研磨レートが向上した。また、基板うねりは、比較例1では、5バッチ目で1.16Å、20バッチ目で1.32Åであったのに対し、実施例1では、5バッチ目で1.06Å、20バッチ目で1.04Åを示し、うねりの改善がみられた。これは、比較例1の研磨パッド20は発泡13が形成されているため、発泡シートのかさ密度が低く、研磨加工で繰り返しの加圧により、へたりが生じやすく、研磨性能が損なわれることがあるため、研磨レート、およびうねりが経時的に悪化する傾向になったと考えられる。それに比べ、実施例1の研磨パッドは発泡3が無形成の分かさ密度の高い無発泡部2bが発泡部2aを支持するため、研磨性能を長期間に亘って維持することができたと考えられる。実施例1の研磨パッドでは、無発泡部2bが形成されたため、研磨レートは小さいものの、比較例1より高い研磨レートで基板を平坦化できることが期待できる。
本発明は、長期間安定した研磨性能を維持し被研磨物の平坦性を向上させることができる研磨パッドを提供するものであるため、研磨パッドの製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。
P 研磨面
2 発泡シート
2a 発泡部(連続発泡部)
2b 無発泡部(発泡無形成部)
3 発泡(縦長発泡)
10 研磨パッド

Claims (7)

  1. 湿式成膜法により形成され被研磨物を研磨加工するための研磨面を有する樹脂製発泡シートを備えた研磨パッドにおいて、前記発泡シートは、前記研磨面側に、複数の縦長発泡が形成された連続発泡部と、前記研磨面と反対の面側に、前記縦長発泡が無形成で、全体の厚さに対して少なくとも1/6の厚さの発泡無形成部とを有し、湿式成膜法により一体成形されたものであり、前記連続発泡部のかさ密度が0.15g/cm 〜0.35g/cm の範囲、前記発泡無形成部のかさ密度が0.5g/cm 〜0.9g/cm の範囲であることを特徴とする研磨パッド。
  2. 前記連続発泡部に形成された前記複数の縦長発泡間および前記発泡無形成部に、微多孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 前記連続発泡部は、少なくとも1/2の厚さであることを特徴とする請求項2に記載の研磨パッド。
  4. 前記発泡シートは、ポリウレタン樹脂製であることを特徴とする請求項に記載の研磨パッド。
  5. 前記発泡シートの前記研磨面と反対の面に更に基材が貼り合わされたことを特徴とする請求項に記載の研磨パッド。
  6. 前記発泡シートは、前記研磨面と反対の面に研削処理が施されたことを特徴とする請求項に記載の研磨パッド。
  7. 前記発泡シートおよび前記基材間の剥離強度が0.4kg/cm以上であることを特徴とする請求項に記載の研磨パッド。
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