以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、静電潜像現像用現像剤(以下、現像剤ともいう)に関する。第1実施形態にかかる静電潜像現像用現像剤は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える、画像形成装置において使用されるものであり、正帯電性トナー(以下、トナーともいう)と、特定の範囲の凹凸度、及び粒子径を有する、特定の種類の有機カルボン酸金属塩とを含む。また、本発明の静電潜像現像用現像剤は、所望により、キャリアを配合して3成分現像剤とすることもできる。
以下、第1実施形態にかかる現像剤について、正帯電性トナー、有機カルボン酸金属塩、現像剤の調製方法、及び3成分現像剤とする場合に用いるキャリアについて順に説明する。
〔正帯電性トナー〕
本発明の静電潜像現像用現像剤に含まれる正帯電性トナーは、特に限定されず、従来から静電潜像の現像に使用される種々の正帯電性トナーから適宜選択して使用することができる。静電潜像現像用現像剤に含有させる、好適なトナーの例としては、結着樹脂と着色剤と、所望により、電荷制御剤、及び離型剤等とを含有するトナーが挙げられる。また、トナーは、その表面に、シリカ等の外添剤を付されていてもよい。以下、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤、外添剤、及びトナーの調製方法について順に説明する。
(結着樹脂)
正帯電性トナーに含まれる結着樹脂は、従来からトナーを製造する際に結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、トナー中の着色剤に対する分散性、トナーの帯電性、用紙に対する定着性の面から、スチレンアクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましい。以下、スチレンアクリル系樹脂、及びポリエステル樹脂について説明する。
スチレンアクリル系樹脂は、スチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体である。スチレン系単量体の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン等が挙げられる。アクリル系単量体の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合の、ポリエステル樹脂の軟化点は、80〜150℃であることが好ましく、90〜140℃がより好ましい。
結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
熱可塑性樹脂とともに使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜65℃が好ましく、50〜60℃がより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、ガラス転移点が高すぎる場合、結着樹脂の強度が低下し、潜像担持部にトナーが付着しやすい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。
なお、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
(着色剤)
トナーに含まれる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加する好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましい。
(離型剤)
トナーは、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含んでいてもよい。トナーに添加する離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらのワックスは2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、1〜5質量部が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、オフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
(電荷制御剤)
電荷制御剤は、帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。第1実施形態にかかる現像剤に含まれるトナーは正帯電性トナーであるため、電荷制御剤としては正帯電性の電荷制御剤が使用される。
正帯電性の電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている正帯電静の電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級有機カルボン酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な帯電の立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜8.0質量部がより好ましく、3.0〜7.0質量部が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、トナーを安定して帯電させ難いため、形成画像の画像濃度が好ましい値より低くなったり、形成画像の画像濃度を長期にわたって維持しにくくなったりする。また、かかる場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、形成画像におけるかぶりや潜像担持部の汚染が起こりやすくなる。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良、及び形成画像における画像不良や、潜像担持部の汚染等が起こりやすくなる。
(外添剤)
正帯電性トナーは、トナーの流動性、保存安定性、クリーニング性等を改良する目的で外添剤を表面に付着させてもよい。
外添剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来からトナー用に使用されている外添剤から適宜選択できる。好適な外添剤の具体例としては、シリカや、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の金属酸化物が挙げられる。これらの外添剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
外添剤の粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、典型的には0.01〜1.0μmが好ましい。
外添剤の体積固有の抵抗値は、外添剤の表面に酸化スズ及び酸化アンチモンからなる被覆層を形成し、被覆層の厚さや、酸化スズと酸化アンチモンとの比率を変えることにより調整できる。
外添剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。外添剤の使用量は、典型的には、外添剤により処理する前のトナー粒子100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。かかる範囲の量で外添剤を使用する場合、流動性、保存安定性、クリーニング性に優れるトナーを得やすい。
(正帯電性トナーの調製方法)
正帯電性トナーの調製方法は、結着樹脂中に、着色剤、電荷制御剤、離型剤等の成分を良好に分散させることができれば特に限定されず、従来知られるトナーの製造方法から適宜選択できる。好適な製造方法としては、例えば、結着樹脂と、着色剤、電荷制御剤、離型剤等の成分とを混合機により混合した後、溶融混練し、得られた混練物を粉砕・分級することにより製造できる。正帯電性トナーの製造に用いる溶融混練装置は特に限定されず、熱可塑性樹脂の溶融混練に使用される装置から適宜選択できる。溶融混練装置の具体例としては、一軸又は二軸の押出機等が挙げられる。粉砕・分級されたトナーの平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には、5〜10μmが好ましい。
このようにして得られるトナーは、必要に応じて、その表面を外添剤により処理してもよい。なお、外添処理される粒子を「トナー母粒子」と称する。外添剤によるトナーの処理方法は特に限定されず、従来知られる外添剤による処理方法から適宜選択できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子に埋め込まれないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機によって、トナー母粒子に対する外添剤による処理が行われる。
〔有機カルボン酸金属塩〕
第1実施形態にかかる静電潜像現像用現像剤は、有機カルボン酸金属塩として、有機カルボン酸の、亜鉛、カルシウム、及びマグネシウムからなる群から選択される金属の塩を含有する。有機カルボン酸金属塩を構成する有機カルボン酸の構造は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、脂肪族カルボン酸であっても、芳香族カルボン酸であってもよい。
有機カルボン酸が脂肪族カルボン酸である場合、直鎖有機カルボン酸であっても分岐鎖有機カルボン酸であってもよく、脂環族カルボン酸であってもよい。また、脂肪族カルボン酸は、飽和有機カルボン酸であっても不飽和有機カルボン酸であってもよい。有機カルボン酸が脂肪族カルボン酸である場合、入手が容易であり保存安定性に優れることから、直鎖の飽和脂肪族カルボン酸がより好ましい。
芳香族カルボン酸は、分子中に芳香族基を有する有機カルボン酸であり、芳香族基にカルボキシル基が直結する、安息香酸、ナフトエ酸等の有機カルボン酸であってもよく、フェニル酢酸や桂皮酸等のように芳香族基にカルボキシル基が直結しない有機カルボン酸であってもよい。また、芳香族カルボン酸に含まる芳香族基は、本発明の目的を阻害しない範囲で、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基、水酸基、ニトロ基、ハロゲン原子、及びシアノ基からなる群より選択される1以上の置換基を有していてもよい。
有機カルボン酸金属塩を構成する有機カルボン酸の炭素原子数は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。有機カルボン酸の炭素原子数は、典型的には、6〜20が好ましい。有機カルボン酸の炭素原子数が過少である場合、有機カルボン酸金属塩の分子量が小さくなり、単位重量に含まれる有機酸カルボン酸金属塩の分子数が増加する。このため、トナーの帯電量が低下したり、有機酸金属塩が正帯電性トナーに付着しやすくなったりする場合がある。有機カルボン酸の炭素原子数が過多である場合、潜像担持部表面の摩擦係数の増大を抑制しにくい場合があり、ダッシュマークが発生しやすい傾向がある。有機カルボン酸金属塩を構成する有機カルボン酸の中では、潜像担持体表面の粗面化を良好に抑制しやすいことから、炭素原子数18の直鎖の飽和有機カルボン酸であるステアリン酸が好ましい。
また、現像剤に含まれる有機カルボン酸金属塩は、体積平均粒子径が2〜10μmであり、凹凸度が1.10〜1.30である。第1実施形態にかかる現像剤では、かかる平均粒子径の、トナーと近いサイズの有機カルボン酸金属塩を用いるため、有機カルボン酸金属塩はトナー表面に殆ど付着しない。このため、現像剤中で有機カルボン酸金属塩の大部分はトナーから遊離しており、トナーとともに、好適な量の有機カルボン酸金属塩を潜像担持体表面に供給でき、潜像担持体表面の粗面化を抑制しやすい。
有機カルボン酸金属塩の粒子径が過大である場合、現像器から、トナーと有機カルボン酸金属塩とが潜像担持部表面に移動する際に、自重により有機カルボン酸金属塩が落下しやすい。このとき、有機カルボン酸金属塩の落下にともない、トナーも現像器内に落下しやすくなり、落下トナーによる画像不良が形成画像に生じる場合がある。また、有機カルボン酸金属塩の粒子径が過大である場合、有機カルボン酸金属塩はトナーよりも柔らかい粒子であるため、クリーニング部での押厚によって有機カルボン酸金属塩が引き伸ばされることにより、フィルミングが生じやすい。
有機カルボン酸金属塩の粒子径が過小である場合、比較的径の小さな有機カルボン酸金属塩の粒子が正帯電性トナーに付着しやすく、潜像担持部表面への有機カルボン酸金属塩の供給が不足するため、潜像担持部表面の粗面化を抑制しにくい。この場合、有機カルボン酸金属塩の微細粒子が表面に付着したトナーが、粗面化された潜像担持体表面に付着しやすくなり、ダッシュマーク等の画像不良が形成画像に発生しやすくなる。
有機カルボン酸金属塩の凹凸度が大きすぎる場合、有機カルボン酸金属塩表面の凹凸と潜像担持部表面の微小な凹凸との相互作用によって、有機カルボン酸金属塩が潜像担持部表面に付着しやすくなる。かかる場合、潜像担持部表面に付着した有機カルボン酸金属塩に引っ掛かるようにして、トナー粒子も潜像担持部表面に留まりやすくなり、ダッシュマーク等の画像不良が形成画像に発生しやすくなる。
有機カルボン酸金属塩の凹凸度が小さすぎる場合、有機カルボン酸金属塩の粒子がクリーニング部の弾性ブレードをすり抜けやすい。かかる場合、潜像担持部表面で有機カルボン酸金属塩に隣接して存在するトナー粒子も、有機カルボン酸金属塩とともに弾性ブレードをすり抜けやすく、トナーのすり抜けによる画像不良が形成画像に発生しやすくなる。
有機カルボン酸金属塩の体積平均粒子径を調整する方法は特に限定されない。具体的には、有機カルボン酸金属塩を公知の装置により粉砕、及び分級する際に、粉砕工程、及び分級工程の条件を適宜変更することにより、有機カルボン酸金属塩の体積平均粒子径を調整することができる。体積平均粒子径を調整された有機カルボン酸金属塩の調製には、粉砕装置として例えば気流式粉砕装置を使用でき、分級装置として例えば気流式分級装置を使用できる。
また、有機カルボン酸金属塩の凹凸度を調製する方法は特に限定されないが、例えば、有機カルボン酸金属塩の粒子を、融点近傍の温度で熱処理する方法により有機カルボン酸金属塩の凹凸度を調製することができる。有機カルボン酸金属塩の凹凸度は、以下の方法により測定することができる。
<凹凸度測定方法>
有機カルボン酸金属塩の試料を、走査型電子顕微鏡により倍率1000倍の視野で観察し、X線分光器による元素のマッピングを行い、所定の金属塩の粒子が検出された視野の画像を取得する。得られた画像を、画像解析ソフトウェア(WinRoof(三谷商事株式会社製))にて画像処理し、有機カルボン酸金属塩の粒子の周囲長(μm)と面積(μm2)とを算出し、下式によって有機カルボン酸金属塩の凹凸度を算出する。有機カルボン酸金属塩の粒子100個について凹凸度の計測を行い、得られた凹凸度の平均値を、有機カルボン酸金属塩の凹凸度とする。
(凹凸度計算式)
凹凸度=(周囲長)2/(面積×4π)
有機カルボン酸金属塩の中では、潜像担持部表面の粗面化抑制による画像不良抑制の効果が高いことから、亜鉛塩、又はカルシウム塩が好ましく、亜鉛塩がより好ましい。
現像剤に配合できる有機カルボン酸金属塩の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びアラキジン酸等の脂肪酸の亜鉛塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩や、安息香酸、サリチル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、2−クロロ安息香酸、4−クロロ安息香酸、4−ニトロ安息香酸、2−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸、2−エチル安息香酸、3−エチル安息香酸、4−エチル安息香酸、2−n−プロピル安息香酸、3−n−プロピル安息香酸、4−n−プロピル安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸、α−ナフトエ酸、及びβ−ナフトエ酸等の芳香族カルボン酸の亜鉛塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩が挙げられる。
現像剤の有機カルボン酸金属塩の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、正帯電性トナー100質量部に対して、0.01〜0.5質量部が好ましく、0.05〜0.2質量部がより好ましい。かかる量の有機カルボン酸金属塩を現像剤に配合することにより、潜像担持体表面の粗面化を抑制しやすくなる。
〔静電潜像現像用現像剤の調製方法〕
第1実施形態にかかる静電潜像現像用現像剤の調製方法は、正帯電性トナーと、有機カルボン酸金属塩とを均一に混合できれば特に限定されない。正帯電性トナーと、有機カルボン酸金属塩とを混合する方法としては、ヘンシェルミキサー等の混合装置を用いる方法が挙げられる。
正帯電性トナー表面への有機カルボン酸金属塩の微粉の付着を抑制できる点からは、外添剤が表面に付着しているトナーと、有機カルボン酸金属塩とを混合する方法が、現像剤の調製方法として好ましい。また、外添処理と、有機カルボン酸金属塩、及びトナーの混合とを同時にでき、現像剤の調製操作を簡略化できる点からは、トナー母粒子の表面に前述の外添剤を付着させる際に、混合装置に外添剤とともに有機カルボン酸金属塩を加える方法も、現像剤の調製方法として好ましい。
〔キャリア〕
第1実施形態の静電荷像現像用現像剤は、正帯電性トナー、及び有機カルボン酸金属塩に加え、所望のキャリアを混合して3成分現像剤として使用することもできる。かかる3成分現像剤は、静電潜像の現像に広く利用されているトナーとキャリアとからなる2成分現像剤と同様に扱うことができる。3成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
現像剤を3成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜120μmが好ましく、25〜80μmがより好ましい。
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2.0〜2.5g/cm3が好ましい。
現像剤を3成分現像剤として用いる場合、トナーと有機カルボン酸金属塩との含有量の合計量は、3成分現像剤の質量に対して、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%が好ましい。3成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、適度な形成画像における画像濃度を維持し、トナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
現像剤がキャリアを含む場合、正帯電性トナーとキャリアとの混合物に、有機カルボン酸金属塩を混合してもよく、正帯電性トナーと有機カルボン酸金属塩とが混合された現像剤に、さらにキャリアを混合してもよい。
以上説明した材料、及び方法により調製される第1実施形態にかかる静電潜像現像用現像剤によれば、アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部と、弾性ブレードを備えるクリーニング部とを組み合わせて備える画像形成装置により画像を形成する場合に、連続して画像形成する際の潜像担持部表面の粗面化に起因する種々の形成画像における画像不良と、現像器内に落下したトナーによる形成画像における画像不良とを抑制できる。
[第2実施形態]
本発明の、第2実施形態は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置において、第1実施形態にかかる静電潜像現像用現像剤を用いて画像を形成する画像形成方法に関する。以下、本発明の第2実施形態にかかる、画像形成方法について説明する。
第2実施形態にかかる画像形成方法において用いる画像形成装置は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える限り特に限定されない。かかる画像形成装置の中では、アモルファスシリコンからなる感光層が厚い場合よりも、高解像度の画像が得られることから、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である潜像担持部を備える画像形成装置がより好ましい。
第2実施形態にかかる画像形成方法において用いる画像形成装置としては、後述するような、複数色の現像剤を用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置による画像形成方法について説明する。
なお、以下に説明するタンデム方式のカラー画像形成装置は、複数の潜像担持部の表面上、にそれぞれ異なった色の現像剤に含まれる正帯電性トナーによってトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の潜像担持部と、各潜像担持部に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各潜像担持部の表面にそれぞれ供給する現像ローラーを備えた複数の現像部とを備え、現像部において、本発明の静電潜像現像用現像剤を潜像担持部に供給する。
図1は、第2実施形態にかかる画像形成方法において用いる、好適な画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置として、カラープリンター1を例に挙げて説明する。
このカラープリンター1は、図1に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラー122、給紙ローラー123,124,125、及びレジストローラー対126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、用紙Pを貯留する。ピックアップローラー122は、給紙カセット121の図1に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー123,124,125は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラー126は、給紙ローラー123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
また、給紙部2は、機器本体1aの図1に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラー127とをさらに備えている。このピックアップローラー127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラー126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピューター等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラー32とを備えている。
画像形成ユニット7は、中間転写ベルト31の移動方向の上流側(図1では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体であるドラム型の潜像担持部37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各潜像担持部37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、クリーニング部8、及び除電器等が、潜像担持部37の回転方向上流側から順に各々配置されている。
帯電部39は、矢符方向に回転されている潜像担持部37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、潜像担持部37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラー、帯電ブラシ等が挙げられる。
潜像担持部37の表面電位(帯電電位)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。現像性と潜像担持部37の帯電能力とのバランスを考慮すると、表面電位は+200〜+500Vであるのが好ましく、+200V〜+300Vであるのがより好ましい。表面電位が低すぎる場合、現像電界が不十分となり、形成画像の画像濃度を確保し難くなる。表面電位が高すぎる場合、感光層の膜厚によっては帯電能力が不足、潜像担持部37の絶縁破壊、オゾンの発生量が増加する等の問題が起こりやすくなる。
潜像担持部37は、ドラム状の導電性基体上にアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている。アモルファスシリコンからなる感光層は、例えば、グロー放電分解法、スパッタリング法、ECR法、蒸着法等の気相成長法によって形成することができる。アモルファスシリコンからなる感光層を形成する際には、感光層に、Hやハロゲン元素を含有させることができる。また、感光層の特性を調整するために、C、N、O等の元素を含有させたり、周期表(長周期型)の13族元素や15族元素を感光層に含有させたりしてもよい。
アモルファスシリコンからなる感光層を構成する材料は、アモルファスシリコンであれば特に限定されない。好適なアモルファスシリコン材料としては、アモルファスSi、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiON等が挙げられる。これらのアモルファスシリコン材料の中では、高抵抗であり、帯電特性、耐摩耗性、耐環境性に優れることからアモルファスSiCがより好ましい。また、アモルファスシリコン材料としてアモルファスSiCを用いる場合、アモルファスSi(1−X)CX(Xは0.3以上1未満)が好ましく、アモルファスSi(1−X)CX(Xは0.5以上0.95以下)がより好ましい。かかる組成のアモルファスSiCは、1012〜1013Ωcmと極めて高い抵抗値を示すため、潜像担持部37の潜像電荷の流れを抑制でき、静電潜像の維持能力に優れる潜像担持部37が得られる。また、かかる組成のアモルファスSiCを用いることにより、耐湿性に優れる潜像担持部37が得られる。
感光層は、導電性基体上に形成されたキャリア阻止層の上に形成してもよい。また、感光層の表面には表面保護層を設けてもよい。潜像担持部37としては、導電性基体、キャリア阻止層、感光層、表面保護層の順に積層されたものが特に好適に使用される。
表面保護層を設ける場合、帯電部39による放電時の、アモルファスシリコンかなる感光層の表面での、放電生成物や水分子等を吸着しやすい酸化物の皮膜の形成を抑制できる。また、表面保護層を設けることにより、潜像担持部37の、絶縁耐圧の向上、及び繰り返し使用時の耐摩耗性の向上を図れる。表面保護層の材料としては、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiN、アモルファスSiON、アモルファスSiCON等の無機絶縁材料が挙げられる。
表面保護層の膜厚は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、20000Å以下が好ましく、5000〜15000Åがより好ましい。表面保護層の膜厚をかかる範囲とすることで、耐圧性能が劣化し難い潜像担持部37を優れた効率で生産できる。
キャリア阻止層を設ける場合、現像時に、アモルファスシリコンからなる感光層へのキャリアの注入を阻止して露光部と非露光部との静電コントラストを高めることにより、画像の濃度向上、地肌カブリの低減を図れる。キャリア阻止層の材料としては、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiN、アモルファスSiON、アモルファスSiCON等の無機絶縁材料や、ポリエチレンテレフタレート、パリレン(登録商標)、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミド、ポリフッ化エチレンプロピレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、酢酸セルロール樹脂等の有機絶縁材料が挙げられる。
キャリア阻止層の膜厚は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。キャリア阻止層が薄すぎる場合には、所望のキャリア阻止効果を得にくく、キャリア阻止層が厚すぎる場合には、製膜に長時間を要し、潜像担持部37の生産性が低下するおそれがある。
潜像担持部37の、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の最表面までの距離は特に限定されないが、潜像担持部37の製造コストを低減でき、解像度に優れる画像が得られる点から、30μm以下であるのが好ましい。なお、潜像担持体の最表面とは、表面保護層が形成されている場合は表面保護層の表面であり、表面保護層が形成されていない場合は感光層の表面である。また、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の最表面までの距離とは、キャリア阻止層、感光層、及び表面保護層の厚さの合計である。
潜像担持部37の、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の感光層側の表面までの距離の下限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、10μm以上が好ましい。距離が短すぎる場合には、潜像担持部37の帯電性能が不十分であったり、露光に用いるレーザー光の乱反射により、ハーフパターンに干渉縞が生じたりする場合がある。
露光部38は、いわゆるレーザー走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された潜像担持部37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピューター(PC)から入力された画像データに基づくレーザー光を照射し、潜像担持部37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された潜像担持部37の周面に正帯電性トナーと有機カルボン酸金属塩とを含む第1実施形態にかかる現像剤を供給することで、潜像担持部37表面の摩擦係数の増大を抑制しつつ、画像データに基づくトナー像を形成させる。現像部71の構成は、現像剤の種類、及び現像方式によって適宜変更される。現像部71により潜像担持部37の周面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31に1次転写される。
中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面に残留しているトナーをクリーニング部8により清掃する。クリーニング部8は、弾性ブレード81を備え、弾性ブレード81により潜像担持部37の周面に残留するトナーを除去する。弾性ブレードはウレタン系ゴムやエチレン−プロピレン系ゴム等により構成される。第1実施形態にかかる現像剤を用いる場合、潜像担持部37の表面の摩擦係数の増大が抑制されるため、弾性ブレードの巻き上がりや、「中抜け」等の画像不良の発生を抑制できる。
除電器は、1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面を除電する。クリーニング部8及び除電器によって清浄化処理された潜像担持部37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部39へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各潜像担持部37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラー33、従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36等の複数のローラーに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各潜像担持部37と対向配置された1次転写ローラー36によって潜像担持部37に押圧された状態で、複数のローラーによって無端回転するように構成されている。駆動ローラー33は、不図示のステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31に無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー34、バックアップローラー35、及び1次転写ローラー36は、回転自在に設けられ、駆動ローラー33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラー34,35,36は、駆動ローラー33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
1次転写ローラー36は、負極性の1次転写バイアスを中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各潜像担持部37上に形成されたトナー像は、各潜像担持部37と1次転写ローラー36との間で、駆動ローラー33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
2次転写ローラー32は、負極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラー32とバックアップローラー35との間で用紙Pに2次転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラー41と、この加熱ローラー41に対向配置され、周面が加熱ローラー41の周面に押圧当接される加圧ローラー42とを備えている。
そして、画像形成部3で2次転写ローラー32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラー41と加圧ローラー42との間を通過する際の加熱及び加圧からなる定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンター1では、定着部4と排紙部5との間の適所に複数の搬送ローラー対6が配設されている。
排紙部5は、カラープリンター1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
カラープリンター1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記の構成のタンデム方式の画像形成装置により、第1実施形態にかかる静電潜像現像用現像剤を用いて現像を行う場合、画像形成装置が弾性ブレード81と、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部37とを備えていても、連続して画像形成する際の潜像担持部表面の摩擦係数の増大を抑制でき、トナーを良好に帯電させることができ、逆帯電トナーの発生を抑制することによりトナー飛散やかぶり等の画像不良の発生を抑制できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
〔調製例1〕
(有機カルボン酸金属塩粒子の調製)
有機カルボン酸金属塩粒子を、熱処理した後に、分級して、凹凸度、及び体積平均粒子径の異なる有機カルボン酸金属塩粒子A〜Kを作成した。熱処理に供する、有機カルボン酸金属塩粒子としては、ステアリン酸亜鉛(SZ−TF(堺化学株式会社製))、ステアリン酸カルシウム(カルシウムステアレートFI(日油株式会社製))、ステアリン酸マグネシウム(マグネシウムステアレート(日油株式会社製))、安息香酸亜鉛(三津和化学薬品株式会社製)、オレイン酸亜鉛(三津和化学薬品株式会社製)、及びラウリン酸亜鉛(三津和化学薬品株式会社製)を用いた。
具体的には、有機カルボン酸金属塩を、表1に記載の温度で、メテオレインボー(MR−10A(日本ニューマチック工業株式会社製))により熱処理して球形化し、球形化された有機カルボン酸金属塩をエルボージェット(EJ−LABO型(日鉄工業株式会社製))により分級して、表1に記載の有機カルボン酸金属塩粒子A〜Kを調製した。得られた有機カルボン酸金属塩A〜Kについて、粒度分布測定装置(マルチサイザーIII(ベックマンコールター社製))により体積平均粒子径を測定し、下記方法に従い、凹凸度を測定した。有機カルボン酸金属塩粒子A〜Kの体積平均粒子径と凹凸度とを表1に記す。
<凹凸度測定方法>
有機カルボン酸金属塩A〜Kの試料を、走査型電子顕微鏡により倍率1000倍の視野で観察し、X線分光器による元素のマッピングを行い、所定の金属塩の粒子が検出された画像を取得した。得られた画像を、画像解析ソフトウェア(WinRoof(三谷商事株式会社製))にて画像処理し、有機カルボン酸金属塩の粒子の周囲長(μm)と面積(μm2)とを算出し、下式によって有機カルボン酸金属塩の凹凸度を算出した。有機カルボン酸金属塩の粒子100個について凹凸度の計測を行い、得られた凹凸度の平均値を、有機カルボン酸金属塩の凹凸度とする。
(凹凸度計算式)
凹凸度=(周囲長)2/(面積×4π)
〔調製例2〕
(トナー母粒子の調製)
結着樹脂(ポリエステル樹脂、タフトンNE−7200(花王株式会社製))100質量部、離型剤(カルナバワックス、C1(加藤洋行株式会社製))5.5質量部、着色剤(カーボンブラック、MA100(三菱化学株式会社製))4質量部、及び正帯電性電荷制御剤(四級アンモニウム塩モノマー共重合体、FCA201PS(藤倉化成株式会社製、品番:FCA201PS)5.0部を、ヘンシェルミキサー(FM20B(日本コークス株式会社製))にて2400rpmで混合した。得られた混合物を、二軸押出機(PCM−30(株式会社池貝製))にて、材料投入量5kg/h、軸回転数160rpm、設定温度範囲100〜130℃で溶融混練した。溶融混練物を冷却した後、ロートプレックスミル(8/16型(株式会社東亜器械製作所製))で粗粉砕した。粗粉砕物をジェットミル(超音波ジェットミルI型(日本ニューマチック工業株式会社製))で微粉砕し、得られた微粉砕品をエルボージェット(EJ−LABO型(日鉄工業株式会社製))で分級してトナー母粒子を得た。粒度分布測定装置(マルチサイザーIII(ベックマンコールター社製))により測定したトナー母粒子の体積平均粒子径は6.8μmであった。
〔実施例1〕
トナー母粒子100質量部に対して、疎水性シリカ微粒子(RA−200H(日本アエロジル株式会社製))1質量部と、酸化チタン微粒子(ST−100(チタン工業株式会社製))0.5質量部と、有機カルボン酸金属塩0.1質量部とを加え、ヘンシェルミキサー(FM−20B(日本コークス株式会社製))にて4分間混合して、トナーと有機カルボン酸金属塩との混合物を得た。
キャリア(被覆剤:フッ素樹脂、体積固有抵抗:107Ωcm、飽和磁化:70emu/g、平均粒子径35μm、Cu−Zn系フェライトキャリア(パウダーテック株式会社製))に対して、得られたトナーと有機カルボン酸金属塩との混合物を現像剤中の含有量が12質量%となるように配合し、ボールミル(京セラミタ株式会社製)により30分間混合して3成分現像剤を調製した。
得られた3成分現像剤と、トナーと有機カルボン酸金属塩Aとからなる混合物を用いて、下記方法に従って、現像器内でのトナー落ちによる形成画像における画像不良の発生の有無、ダッシュマーク、フィルミング、及びトナーのクリーニング部のすり抜けによる形成画像における画像不良の発生の有無を評価した。これらの評価結果を表2に記す。
(トナー落ちによる画像不良の評価)
導電性基体上にアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備える画像形成装置である複合機(TASKalfa500ci(京セラミタ株式会社製))の黒色用現像部に、3成分現像剤をインストールし、トナーと有機カルボン酸金属塩Aとからなる混合物を黒色トナー用のトナーカートリッジに充填した。現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧(ΔV)を250Vに設定し、マグネットロールに印加する交流電圧(Vpp)を2.0kVに設定して、印字率5%にて1万枚連続して印字を行った。1万枚連続印字中に、現像器内でのトナー落ちに起因する画像不良の発生の有無を、印刷画像を目視にて観察して確認した。1万枚の印刷画像について、画像不良の発生枚数が0〜20枚である場合を○と判定し、21〜100枚を△と判定し、101枚以上を×と判定した。
(ダッシュマーク、フィルミング、及びすり抜けによる画像不良の評価)
トナー落ちによる画像不良の評価における、印字率5%での1万枚連続印字を行った後に、A3用紙全面に印字率25%のハーフ画像を印刷し、得られた画像を目視にて観察して、ダッシュマーク、フィルミング、及びトナーのクリーニング部のすり抜けによる画像不良について評価した。ダッシュマークが発生した場合を○と判定し、発生しなかった場合を×と判定した。フィルミングについて、発生した場合を○と判定し、発生しなかった場合×と判定した。トナーのクリーニング部のすり抜けによる画像不良について、発生した場合を○と判定し、発生しなかった場合を×と判定した。これらの評価結果を表2に記す。
〔実施例2〜7、及び比較例1〜4〕
有機カルボン酸金属塩Aを、表2に記載の有機カルボン酸金属塩に変えることの他は、実施例1と同様にして3成分現像剤調製した。各実施例、及び比較例で得られた3成分現像剤と、トナーと有機カルボン酸金属塩とからなる混合物を用いて、上記方法に従って、現像器内でのトナー落ちによる形成画像における画像不良の発生の有無、ダッシュマーク、フィルミング、及びトナーのクリーニング部のすり抜けによる形成画像における画像不良の発生の有無を評価した。これらの評価結果を表2に記す。
実施例1〜7によれば、有機カルボン酸の亜鉛塩、カルシウム塩、又はマグネシウム塩を含み、有機カルボン酸金属塩が、体積平均粒子径が2〜10μmであり、凹凸度が1.10〜1.30である現像剤によれば、潜像担持部表面の粗面化に起因する、ダッシュマーク、フィルミング、及びクリーニング部をすり抜けたトナーによる画像不良等の画像不良と、現像器内に落下したトナーによる画像不良とを抑制できることが分かる。
比較例1によれば、現像剤に含まれる有機カルボン酸金属塩の粒子径が過小である場合、ダッシュマークが形成画像に発生しやすいことが分かる。比較的径の小さな有機カルボン酸金属塩の粒子は正帯電性トナーに付着しやすい。このため、比較例1の現像剤を用いる場合、潜像担持部表面への有機カルボン酸金属塩の供給が不足するため、潜像担持部表面の粗面化を抑制しにくくなり、有機カルボン酸金属塩の微細粒子が表面に付着したトナーが、粗面化された潜像担持体表面に付着しやすくなる。このため、形成画像にダッシュマークが発生しやすくなったと考えられる。
比較例2によれば、現像剤に含まれ有機カルボン酸金属塩の粒子径が過大である場合、現像器内に落下したトナーによる画像不良と、潜像担持部表面にフィルミングとが発生しやすいことが分かる。有機カルボン酸金属塩の粒子径が過大である場合、現像器から、トナーと有機カルボン酸金属塩とが潜像担持部表面に移動する際に、自重により有機カルボン酸金属塩が落下しやすい。このとき、有機カルボン酸金属塩の落下にともない、トナーも現像器内に落下しやすくなり、落下トナーによる画像不良が形成画像に発生しやすくなっていると考えられる。また、有機カルボン酸金属塩の粒子径が過大である場合、有機カルボン酸金属塩はトナーよりも柔らかい粒子であるため、クリーニング部での押厚によって有機カルボン酸金属塩が引き伸ばされることにより、潜像担持部表面にフィルミングが生じやすい。
比較例3によれば、現像剤に含まれる有機カルボン酸金属塩の凹凸度が過小である場合、クリーニング部をすり抜けたトナーによる画像不良が形成画像に発生しやすくなることが分かる。凹凸度が小さな有機カルボン酸金属塩の粒子はクリーニング部の弾性ブレードをすり抜けやすい。かかる場合、潜像担持部表面で有機カルボン酸金属塩に隣接して存在するトナー粒子も、有機カルボン酸金属塩とともにクリーニングブレードをすり抜けやすくなり、トナーのすり抜けによる画像不良が形成画像に発生しやすくなると考えられる。
比較例4によれば、現像剤に含まれる有機カルボン酸金属塩の凹凸度が過大である場合、ダッシュマークが発生しやすくなることが分かる。凹凸度が大きな有機カルボン酸金属塩の粒子は、有機カルボン酸金属塩表面の凹凸と潜像担持部表面の微小な凹凸との相互作用によって、有機カルボン酸金属塩が潜像担持部表面に付着しやすくなる。かかる場合、潜像担持部表面に付着した有機カルボン酸金属塩に引っ掛かるようにして、トナー粒子も潜像担持部表面に留まりやすくなり、ダッシュマーク等の画像不良が形成画像に発生しやすくなると考えられる。