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JP5519208B2 - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

内燃機関の排気浄化装置 Download PDF

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JP5519208B2
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Description

本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。詳しくは、内燃機関から排出される排気中の粒子状物質を捕捉するフィルタを備えた内燃機関の排気浄化装置に関する。
近年、地球温暖化の防止の観点から、二酸化炭素の排出量が少ないディーゼルエンジンなどの内燃機関が注目されている。ところが、ディーゼルエンジンから排出される排気中には多量の粒子状物質(Particulate Matter、以下、「PM」という)が含まれており、このPMは人体に有害であるとともにエミッション規制対象物質である。このため、PMを除去するためのフィルタが、ディーゼルエンジンの排気通路に設けられているのが一般的である。
上記フィルタとしては、DPF(Diesel Particulate Filter)に、捕捉したPMを浄化するための触媒を担持させたもの(Catalyzed Soot Filter、CSFともいう)などが用いられている。このようなフィルタでは、PMが捕捉されて堆積すると、フィルタの上流側と下流側との間で差圧が生じ、出力の低下や燃費の悪化を招く。従って、PMがある程度堆積した段階で、堆積したPMを燃焼除去する再生処理を実行する必要があるため、PMを効率良く燃焼除去できる触媒の開発が進められている。
例えば、耐火性三次元構造体のガス接触面あるいはガス接触部に、白金、ロジウム、パラジウムよりなる白金族元素の少なくとも1種を含有してなる触媒活性物質を突起状に形成して担持させた排ガス浄化用触媒が開示されている(特許文献1参照)。
また、無機質の長繊維及び短繊維を含む三次元網目状構造体に、白金等の貴金属を含む触媒成分を担持させた触媒が開示されている(特許文献2参照)。
これらの特許文献に開示されている触媒によれば、触媒とPMとの接触効率を向上させることができ、より効率良くPMを燃焼除去できるとされている。
また、白金系触媒よりもPMに対して優れたPM浄化性能を示すAg担持触媒として、酸素放出能を有する複合酸化物にAgを担持した排ガス浄化触媒(特許文献3参照)や、Agが担持されたベーマイトを焼成してなる排ガス浄化触媒が開示されている(特許文献4参照)。
これらの特許文献に開示されているAg担持触媒によれば、PMに対して極めて優れた浄化活性を示すAgを含むため、従来に比して低温でPMを効率良く浄化できる。
特開昭62−106843号公報 特開2007−275874号公報 特開2007−296518号公報 特開2007−196135号公報
ところで、従来の触媒調製では、ディッピング法によりDPFに触媒を担持させるのが一般的であるが、このディッピング法では、触媒の担持量が不均一となる場合があった。このため、十分な量の触媒が担持されていない部分において、PMが十分に浄化されない場合があった。
また、DPFの表面全体にPMが層状に堆積したときに、堆積したPMを燃焼除去させるべくDPFの強制再生を実行すると、触媒と接触しているPMが優先的に燃焼除去される。このため、触媒とPMとの界面に隙間が生じ、PMがDPF表面から浮いた状態となる結果、PMが効率良く浄化されない場合があった。
また、PMの燃焼除去は、通常、ポスト噴射により実行されることから、上記のようなPMの非効率的な燃焼は、燃費の悪化を招いていた。
従って、今後の排出規制のさらなる厳格化や燃費性能の向上を考慮すると、PM浄化性能のさらなる向上が望まれる。
本発明は以上に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来に比して効率良くPMを浄化できる排気浄化装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、内燃機関の排気通路に設けられ、当該内燃機関の排気中の粒子状物質を捕捉するフィルタを備えた内燃機関の排気浄化装置において、前記フィルタは、当該フィルタの表面及び当該フィルタの細孔内表面に設けられ且つ捕捉した粒子状物質を浄化するための触媒を含む触媒層を備え、前記触媒層は、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有することを特徴とする。
請求項1記載の発明では、フィルタの表面及びフィルタの細孔内表面に設けられた触媒層中に、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を形成した。ここで、PMの一次粒子が凝集することにより形成されるPM二次粒子の大きさは、およそ500nm(=0.5μm)であり、触媒層中に形成された空隙の大きさよりも小さい。このため、触媒層がPMの濾過材として作用することが可能となり、PMが二次粒子の大きさで触媒層中に入り込み易くなる。また、空隙の大きさが1.0μm以下であることにより、PMと触媒との接触率の低下を回避できる。従って、フィルタの表面にPMが層状に堆積するのを抑制でき、触媒とPMの良好な接触状態を確保できる結果、従来に比して効率良くPMを浄化できる。
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記触媒層は、針状物質を含むことを特徴とする。
請求項2記載の発明では、触媒層中に針状物質を含有させた。これにより、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙が形成し易くなり、請求項1記載の発明の効果を容易に得ることができる。
また、触媒層中に触媒と針状物質とを含有させたため、針状物質の表面にも触媒が付着する。このため、触媒層中に入り込んだPMと触媒との接触率を高めることができ、より効率良くPMを浄化できる。
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記針状物質は、SiC、TiO、カーボン、及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする。
請求項3記載の発明では、針状物質として、SiC、TiO、カーボン、及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1種を用いた。針状物質の中でも、上記で列挙した針状物質は、耐熱性に優れていることから、耐熱性に優れた触媒層が得られる。
請求項4記載の発明は、請求項2又は3に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記針状物質の含有量は、前記フィルタの単位容量あたり30g/L〜100g/Lであり、前記触媒層の厚みは、25μm〜100μmであることを特徴とする。
請求項4記載の発明では、針状物質の含有量を、フィルタの単位容量あたり30g/L〜100g/Lとし、触媒層の厚みを、25μm〜100μmとした。これにより、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有する触媒層が、濾過材として有効に作用し、PMが触媒層中に入り込み易くなる。従って、フィルタ表面にPMが層状に堆積するのを回避でき、触媒とPMの良好な接触状態を確保できるため、従来に比して効率良くPMを浄化できる。
請求項5記載の発明は、請求項2又は3に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記針状物質の含有量は、前記フィルタの単位容量あたり50g/L〜70g/Lであり、前記触媒層の厚みは、30μm〜60μmであることを特徴とする。
請求項5記載の発明では、針状物質の含有量を、フィルタの単位容量あたり50g/L〜70g/Lとし、触媒層の厚みを、30μm〜60μmとした。これにより、請求項4記載の発明の効果がより高められる。
請求項6記載の発明は、請求項2から5いずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記針状物質の直径は、0.1μm〜1.0μmであることを特徴とする。
請求項6記載の発明では、直径が0.1μm〜1.0μmの針状物質を用い、この針状物質を触媒層中に含有させた。これにより、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙の形成が容易となるため、触媒層を濾過材として有効に作用させることができ、フィルタ表面にPMが層状に堆積するのを回避できる。また、直径が0.1μm〜1.0μmの針状物質であれば、針状物質の表面に付着した触媒と、触媒層中に入り込んだPMとの良好な接触状態を確保できる。従って、本発明によれば、より効率良くPMを浄化できる。
請求項7記載の発明は、請求項2から6いずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記針状物質の長さは、1.0μm〜20μmであることを特徴とする。
請求項7記載の発明では、長さが1.0μm〜20μmの針状物質を用い、この針状物質を触媒層中に含有させた。これにより、請求項6記載の発明の効果がより高められる。
請求項8記載の発明は、請求項2から7いずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記触媒層は、前記触媒及び前記針状物質に有機化合物を添加してスラリーを調製した後、当該スラリーを前記フィルタの表面及び当該フィルタの細孔内表面に塗布することにより形成されることを特徴とする。
請求項8記載の発明では、触媒及び針状物質に有機化合物を添加してスラリーを調製した後、調製したスラリーを、フィルタの表面及びフィルタの細孔内表面に塗布することにより、触媒層を形成した。これにより、針状物質の長さ方向が触媒層の面方向に対して略垂直となるように、針状物質を触媒層中に配置させることができる。あるいは、針状物質の長さ方向が触媒層の面方向に対して所定の角度を持って斜めになるように、針状物質を触媒層中に配置させることができる。このため、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を触媒層中に形成することがさらに容易となる。従って、本発明によれば、フィルタの表面にPMが層状に堆積するのを回避でき、従来に比して効率良くPMを浄化できる。
請求項9記載の発明は、請求項8記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記有機化合物は、クエン酸及びでんぷんのうちの少なくとも一方であることを特徴とする。
請求項9記載の発明では、触媒及び針状物質に、クエン酸及びデンプンのうちの少なくとも一方を添加してスラリーを調製した後、調製したスラリーを、フィルタの表面及びフィルタの細孔内表面に塗布することにより、触媒層を形成した。このため、発泡剤のクエン酸や造孔剤のでんぷんの作用によって、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を触媒層中に形成することがさらに容易となる。従って、本発明によれば、フィルタの表面にPMが層状に堆積するのを回避でき、従来に比して効率良くPMを浄化できる。
請求項10記載の発明は、請求項1から9いずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記触媒は、Ag担持触媒であることを特徴とする。
請求項10記載の発明では、触媒金属のAgを担体に担持させたAg担持触媒を用い、このAg担持触媒を触媒層中に含有させた。ここで、Ag担持触媒は、PMとAgとが接触することによって燃焼反応が進行するものであり、特にPMとの良好な接触性が求められる触媒である。従って、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を触媒層中に形成することでPMと触媒との良好な接触状態を実現できる本発明に対して、Ag担持触媒を適用することにより、請求項1〜9記載の発明の効果を最大限発揮できる。
また、Ag担持触媒は、従来の白金系触媒に比して優れたPM浄化性能を有している。具体的には、白金系触媒では600℃程度の高温条件下でなければPMを燃焼除去できなかったところ、Ag担持触媒によれば300℃程度の低温条件下でPMを燃焼除去できる。
本発明によれば、従来に比して、効率良くPMを浄化できる排気浄化装置を提供できる。
本発明の一実施形態に係るDPF1を排気の流入側から見た図である。 本発明の一実施形態に係るDPF1を排気の流れ方向に平行な面で切断したときの断面図である。 図2における隔壁5の部分拡大図である。 DPF表面に捕捉されたPM二次粒子のSEM写真である。 従来のDPF表面のSEM写真である。 本発明の一実施形態に係るDPF表面のSEM写真である。 図3の部分拡大図である。 従来のDPF断面のSEM写真である。 本発明の一実施形態に係るDPF断面のSEM写真である。 従来のDPF表面にPMが層状に堆積したときの断面SEM写真である。 従来のDPF表面と堆積PM層との間に隙間が生じたときの断面SEM写真である。 比較例2のDPFにおける空隙の直径と平均容積との関係を示す図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら、詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関(以下、「エンジン」という)の排気通路に設けられている。エンジンは、各気筒の燃焼室内に燃料を直接噴射するディーゼルエンジンである。また、本実施形態の排気浄化装置は、当該エンジンの排気中のPMを捕捉するフィルタとしてのDPFを備える。
本実施形態で用いるDPFは、三次元網目構造を有し、PM捕集機能を有する発泡金属や発泡セラミックス、又は金属やセラミックス繊維を重ね合わせた不織布、ウォールフロータイプのフィルタなど、如何なる形態でも使用可能である。これらのうち、ウォールフロータイプのハニカム構造のフィルタが、捕集効率、及びPMと浄化触媒との接触性の観点から好ましく用いられる。
図1は、本実施形態で好ましく用いられるDPF1を、排気の流入側から見た図である。また、図2は、DPF1を、排気の流れ方向に平行な面で切断したときの断面図である。図1及び2に示されるように、DPF1は、互いに平行に延びる多数の排気流入路2と排気流出路3とを備えている。下流端が目封止材4により閉塞された排気流入路2と、上流端が目封止材4により閉塞された排気流出路3と、が交互に設けられおり、排気流入路2と排気流出路3とは、薄肉の隔壁5を介して隔てられている。
DPF1は、炭化珪素やコージェライトなどの多孔質材料から形成され、排気流入路2内に流入した排気は、図2の矢印で示したように、周囲の隔壁5を通過して、隣接する排気流出路3内に流入する。
図3は、図2における隔壁5の部分拡大図である。図3に示されるように、隔壁5は、排気流入路2と排気流出路3とを連通する微細な細孔6を有し、この細孔6を排気が流通する。また、排気流入路2、排気流出路3、及び細孔6から構成される排気流路の壁面には、触媒層7が設けられている。
触媒層7は、後述する触媒を含んで構成されており、DPF1により捕捉されて排気中のPMを浄化する機能を有する。
以下、触媒層7について詳細に説明する。
触媒層7は、DPFで捕捉したPMを浄化するための触媒を含むとともに、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有することを特徴とする。より詳しくは、触媒層7は、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有し、1.0μmより大きく5.0μm以下の大きさの空隙を一部に有する。
ここで、DPF表面に捕捉されたPM二次粒子のSEM写真を図4に示す。この図4によれば、PM二次粒子の大きさは約500nm(=0.5μm)であり、上記空隙の大きさよりも小さい。このため、上記空隙の存在によって、触媒層7はPMの濾過材として作用する。また、空隙の大きさが1.0μm以下であるため、PMと触媒との接触率が低下することがない。
また、触媒層7は、針状物質として、SiC、TiO、カーボン、及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1種を含む。ここで、針状物質には、繊維状物質も含まれる。上記針状物質のうち、針状TiOと、セラミックスの連続繊維であるチラノ繊維が好ましく用いられる。針状TiO及びチラノ繊維としては、市販のものを用いることができる。
上記針状物質の含有量としては、DPFの単位容積あたり30g/L〜100g/Lであることが好ましい。針状物質の含有量がこの範囲内であれば、触媒層7中に主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を容易に形成することができる。より好ましい針状物質の含有量は、DPFの単位容積あたり50g/L〜70g/Lである。
上記針状物質の直径は、0.1μm〜1.0μmであることが好ましい。針状物質の直径がこの範囲内であれば、触媒層7中に主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を容易に形成することができるとともに、針状物質の表面に付着した触媒と、触媒層7中に入り込んだPMとの接触率を高めることができる。より好ましい針状物質の直径は、0.2μm〜0.6μmである。
上記針状物質の長さは、1.0μm〜20μmであることが好ましい。針状物質の長さがこの範囲内であれば、触媒層7中に主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を容易に形成することができるとともに、針状物質の表面に付着した触媒と、触媒層7中に入り込んだPMとの接触率を高めることができる。より好ましい針状物質の長さは、5μm〜15μmである。
また、触媒層7の厚みは、25μm〜100μmであることが好ましい。触媒層7の厚みがこの範囲内であれば、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有する触媒層7を、濾過材として有効に作用させることができ、DPFの表面にPMが層状に堆積するのを回避できる。より好ましい触媒層7の厚みは、30μm〜60μmである。
なお、触媒層7はDPFの細孔内にも形成されており、厚みに幅があることから、厚みの最小値及び最大値が上記の範囲内にあればよい。
触媒層7に含まれる触媒としては、Ag担持触媒が好ましく用いられる。Ag担持触媒は、触媒金属のAgを酸化物等の担体に担持させたものであり、従来の白金系触媒に比して優れたPM浄化性能を有している。具体的には、およそ300℃の低温条件下でPMを燃焼除去できる。
また、Ag担持触媒は、PMとAgとが接触することによって燃焼反応が進行するものであり、特にPMとの良好な接触性が求められる触媒である。この点、排気中のNOをNOに変換した後、生成したNOが拡散してPMに接触することによりPMの燃焼反応が進行する従来の白金系触媒と大きく相違する。
従って、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を触媒層中に形成することでPMと触媒との良好な接触状態を実現できる本実施形態において、Ag担持触媒は好適に用いられる。
上記のような構成を備える触媒層7の形成方法は特に限定されないが、触媒及び針状物質に有機化合物を添加してスラリーを調製した後、調製したスラリーを、DPFの表面及びDPFの細孔内表面に塗布して焼成することにより形成することが好ましい。より具体的には、上記スラリー中にDPFを浸漬させ(ディッピング法)、触媒及び針状物質をDPFに含浸担持させることが好ましい。
上記有機化合物としては、クエン酸及びでんぷんのうちの少なくとも一方を用いることが好ましい。発泡剤のクエン酸や造孔剤のでんぷんをスラリー中に添加してDPFの含浸担持させることにより、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を触媒層7中に形成することがさらに容易となる。
次に、本実施形態のDPFと従来のDPFについて、SEM観察結果に基づき、ミクロレベルで比較検討する。なお、本実施形態のDPFとしては、後述の実施例1のDPFを用い、従来のDPFとしては、比較例1のDPFを用いた。
図5は、従来のDPF表面のSEM写真である。図5において、黒い部分がDPFの表面が露出している部分であり、白い部分が触媒である。図5に示されるように、従来のDPFでは、触媒担持量が不均一であり、触媒が偏在していることが分かる。
これに対して、図6は、本実施形態に係るDPF表面のSEM写真である。図6に示されるように、比較的大きな触媒粒子と針状TiOとが全体的に均一に分布しており、DPF表面が露出している箇所は見受けられない。また、針状TiOが疎に嵩高く堆積しており、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙が形成されていることが分かる。
また、図7は、図6の部分拡大図である。図7に示されるように、針状TiOの表面に、小さな触媒粒子が均一に付着していることが分かる。この結果から、本実施形態に係るDPFは、従来のDPFに比して、触媒量としては同一であるにも関わらず、触媒が全体的に均一に担持されており、触媒とPMとの接触率が高いことが分かる。
次に、図8は、従来のDPF断面のSEM写真である。図8において、黒い部分がDPFであり、白い部分が触媒である。図8に示されるように、DPF細孔内に触媒層が入り込んだ状態であり、DPF細孔内に入り込んだ触媒層中には空隙は存在していないことから、細孔内にPMが入り込むことができず、触媒とPMとの接触率は低いことが分かる。
これに対して、図9は、本実施形態のDPF断面のSEM写真である。図9に示されるように、DPF細孔内に、触媒と針状TiOが入り込んで触媒層が形成されているものの、触媒層中には主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙が存在し、PMの濾過材として機能し得ることが分かる。また、触媒層の厚みは40μm〜100μmであり、PMの濾過材として機能し得る十分な厚みを有していることが分かる。
即ち、従来のDPFでは、空隙を有しない触媒層がDPFの細孔内に形成されているため、DPFの表面全体にPMが層状に堆積し易い(図10参照)。このとき、堆積したPM層を燃焼除去させるべくDPFの強制再生を実行すると、触媒と接触しているPMが優先的に燃焼除去される。そのため、触媒とPMとの界面に隙間が生じ、PMがDPF表面から浮いた状態となる結果、PMが効率良く浄化されないという不具合が生じる(図11参照)。
これに対して、本実施形態のDPFでは、DPFの細孔内に形成された触媒層中にはPM二次粒子よりも大きい空隙が存在するため、触媒層がPMの濾過材として機能する結果、DPFの表面全体にPMが層状に堆積するのを回避でき、上記不具合が生じることはない。
以下、本実施形態の効果について、まとめて説明する。
本実施形態によれば、DPFの表面及びDPFの細孔内表面に設けられた触媒層中に、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を形成した。上述した通り、PM二次粒子の大きさは、およそ500nm(=0.5μm)であり、触媒層中に形成された空隙の大きさよりも小さい。このため、触媒層がPMの濾過材として作用することが可能となり、PMが二次粒子の大きさで触媒層中に入り込み易くなる。また、空隙の大きさが1.0μm以下であることにより、PMと触媒との接触率の低下を回避できる。従って、DPF表面にPMが層状に堆積するのを抑制でき、触媒とPMの良好な接触状態を確保できる結果、従来に比して効率良くPMを浄化できる。
また、本実施形態によれば、触媒層中に針状物質を含有させた。これにより、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙が形成し易くなり、上記の効果を容易に得ることができる。
また、触媒層中に触媒と針状物質とを含有させたため、針状物質の表面にも触媒が付着する。このため、触媒層中に入り込んだPMと触媒との接触率を高めることができ、より効率良くPMを浄化できる。
また、本実施形態によれば、針状物質として、SiC、TiO、カーボン、及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1種を用いた。針状物質の中でも、上記で列挙した針状物質は、耐熱性に優れていることから、耐熱性に優れた触媒層が得られる。
また、本実施形態によれば、針状物質の含有量を、DPFの単位容量あたり30g/L〜100g/Lとし、触媒層の厚みを、25μm〜100μmとした。より好ましくは、針状物質の含有量を、フィルタの単位容量あたり50g/L〜70g/Lとし、触媒層の厚みを、30μm〜60μmとした。これにより、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有する触媒層が、濾過材として有効に作用し、PMが触媒層中に入り込み易くなる。従って、DPF表面にPMが層状に堆積するのを回避でき、触媒とPMの良好な接触状態を確保できるため、従来に比して効率良くPMを浄化できる。
また、本実施形態によれば、直径が0.1μm〜1.0μm、及び/又は、長さが1.0μm〜20μmの針状物質を用い、この針状物質を触媒層中に含有させた。これにより、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙の形成が容易となるため、触媒層を濾過材として有効に作用させることができ、DPF表面にPMが層状に堆積するのを回避できる。また、直径が0.1μm〜1.0μm、及び/又は、長さが1.0μm〜20μmの針状物質であれば、針状物質の表面に付着した触媒と、触媒層中に入り込んだPMとの良好な接触状態を確保できる。従って、本実施形態によれば、より効率良くPMを浄化できる。
また、本実施形態によれば、触媒及び針状物質に有機化合物を添加してスラリーを調製した後、調製したスラリーを、DPFの表面及びDPFの細孔内表面に塗布することにより、触媒層を形成した。好ましくは、発泡剤のクエン酸や造孔剤のでんぷんを添加したスラリーを用いて、触媒層を形成した。これにより、針状物質の長さ方向が触媒層の面方向に対して略垂直となるように、針状物質を触媒層中に配置させることができる。あるいは、針状物質の長さ方向が触媒層の面方向に対して所定の角度を持って斜めとなるように、針状物質を触媒層中に配置させることができる。このため、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を触媒層中に形成することがさらに容易となる。従って、本実施形態によれば、DPFの表面にPMが層状に堆積するのを回避でき、従来に比して効率良くPMを浄化できる。
また、本実施形態によれば、触媒金属のAgを担体に担持させたAg担持触媒を用い、このAg担持触媒を触媒層中に含有させた。ここで、Ag担持触媒は、PMとAgとが接触することによって燃焼反応が進行するものであり、特にPMとの良好な接触性が求められる触媒である。従って、主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を触媒層中に形成することでPMと触媒との良好な接触状態を実現できる本実施形態に対して、Ag担持触媒を適用することにより、上記の効果を最大限発揮できる。
また、Ag担持触媒は、従来の白金系触媒に比して優れたPM浄化性能を有している。具体的には、白金系触媒では600℃程度の高温条件下でなければPMを燃焼除去できなかったところ、Ag担持触媒によれば300℃程度の低温条件下でPMを燃焼除去できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
次に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
針状物質、Pd、Ag、CeZrO、及びSiバインダーが、表1に示す割合となるように、触媒の調製を行った。針状物質としては、径が0.35μm、長さが13.3μmの市販の針状TiO(石原産業株式会社製「FTL400」(商品名))を使用した。
具体的には、上記の各構成材料を混合した後、エバポレーターにより減圧下で乾燥後、さらに電気炉で乾燥させた後に焼成を行った。焼成後、整粒してから水系媒体とともにボールミルにて混合し、スラリー化した。得られたスラリーに、発泡剤のクエン酸を添加して混合した後、ディッピング法によりDPF単体に触媒を含浸担持させた。次いで、触媒を含浸担持させたDPF単体を焼成することにより、実施例1のDPFを得た。
なお、乾燥条件及び焼成条件は、以下の通りとした。また、DPF単体としては、以下に示すDPF単体を使用した。
[乾燥・焼成条件]
乾燥温度:200℃(大気中)
乾燥時間:2時間
焼成装置:電気炉
焼成温度:700℃(5℃/分)
焼成時間:2時間
[DPF単体]
サイズ:1インチ(2.54cm)φ×30mm
壁厚:12ミル
セル数:300
材質:SiC
形状:ハニカム構造体
製造メーカ名:NGK
<実施例2>
針状物質として、径が0.27μm、長さが5.15μmの市販の針状TiO(石原産業株式会社製「FTL300」(商品名))を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2のDPFを得た。
参考例1
針状物質として、市販のチラノ繊維(トスコ株式会社製)を使用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、参考例1のDPFを得た。
<比較例1>
針状物質を使用しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1のDPFを得た。
なお、表1において、針状物質の含有量(g/L)は、DPF単体の単位容量(L)あたりの重量(g)である。また、表1のPd、Ag、及びCeZrOそれぞれの含有量(質量%)は、触媒粉末中の質量%であり、Siバインダーの含有量(質量%)は、調製後の触媒中の質量%である。
実施例1〜2、参考例1、及び比較例1で得られた各DPFについて、SEM観察を実施し、触媒層中の主な空隙の大きさと、触媒層の厚みを調査した。結果を表2に示す。
また、以下に示す条件で500℃強制再生試験を実施し、90%のPMの燃焼が完了するまでの時間(以下、「T90」という)を調査した。評価結果を表2に示す。
[500℃強制再生試験条件]
ガス組成:NO=700ppm、O=5%、N=バランスガス(定常状態)
PM:ディーゼル発電機排出PMを4g/L堆積
表2に示すように、実施例1では、触媒層中に主として0.5〜1.0μmの大きさの空隙が形成されており(図6〜7、9参照)、実施例2では、触媒層中に0より大きく1.0μmの大きさの空隙(即ち、実施例1よりも小さい空隙)が形成されていることが分かった。また、参考例1では実施例1と同様であった。これに対して、比較例1では空隙が全く形成されていないことが確認された(図5、8参照)。
また、実施例1〜2及び参考例1では、比較例1に比してT90の値は小さいことが分かった。これにより、本実施例によれば、従来に比して効率良くPMを浄化できることが確認された。
<比較例2>
発泡剤としてクエン酸の代わりにでんぷんを使用し、実施例よりも添加量を多くした以外は実施例1と同様の操作を行い、比較例2のDPFを得た。即ち、実施例に比してより大きな空隙を意図的に作製した。
得られたDPFについて、空隙の直径(μm)と平均容積(cm/g)との関係を調べた。結果を図12に示す。また、上記実施例と同様の条件で500℃強制再生試験を実施し、T90を調べた。
ここで、空隙の直径と平均容積については、一般的に知られている水銀圧入法により測定を実施した。水銀圧入法では、耐圧容器中にオイルを介してガラスセルに入れた水銀と試料に対して静水圧が加わる。この時、試料に細孔が存在する場合には水銀が侵入するため、電極(−)が接したキャピラリー内の水銀面の低下に対応して変化する静電的出力を検出した。これにより、水銀の圧入体積変化が求まり、その結果から空隙の直径と平均容積を算出した。なお、測定の際には、触媒を担持していないDPF単体の細孔を先に測定しておき、DPF単体の細孔よりも大きいものは省くような処理を行った。
図12において、空隙の直径が0.1μm以下のピークは、でんぷんやクエン酸を添加したものと添加しないものとでピークの出方に差が見られなかったが、触媒を微細化したもので同じ挙動を確認すると、ピーク位置に変化が見られた。この結果から、0.1μm以下のピークは、触媒材料由来のピークを表していると考えられた。
また、空隙の直径が10μm以上のピークは、DPF単体由来のピークを表しており、触媒層中の空隙のピークではない。空隙の直径が1μmを超えるピークが、触媒層中の空隙のピークを表しており、この結果から、比較例2のDPFは、触媒層中に1μmを超える大きさの空隙が形成されていることが確認された。
また、比較例2のDPFのT90を測定した結果、18.56分であり、実施例1に比して燃焼速度の低下が確認された。これは、より大きな空隙が形成されたことによって、PMと触媒との接触率が低下していることが原因と考えられた。
これらの結果から、触媒層中に主として0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有する本発明によれば、従来に比して効率良くPMを浄化できることが確認された。
1…DPF
2…排気流入路
3…排気流出路
4…目封止材
5…隔壁
6…細孔
7…触媒層

Claims (8)

  1. 内燃機関の排気通路に設けられ、当該内燃機関の排気中の粒子状物質を捕捉するフィルタを備えた内燃機関の排気浄化装置において、
    前記フィルタは、当該フィルタの表面及び当該フィルタの細孔内表面に設けられ且つ捕捉した粒子状物質を浄化するための触媒を含む触媒層を備え、
    前記触媒層は、水銀圧入法により算出される直径が0.5μm〜1.0μmの大きさの空隙を有するとともに、針状物質としてのTiO を含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
  2. 前記針状物質としてのTiO の含有量は、前記フィルタの単位容量あたり30g/L〜100g/Lであり、
    前記触媒層の厚みは、25μm〜100μmであることを特徴とする請求項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記針状物質としてのTiO の含有量は、前記フィルタの単位容量あたり50g/L〜70g/Lであり、
    前記触媒層の厚みは、30μm〜60μmであることを特徴とする請求項又はに記載の内燃機関の排気浄化装置。
  4. 前記針状物質としてのTiO 平均直径は、0.1μm〜1.0μmであることを特徴とする請求項からいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
  5. 前記針状物質としてのTiO 平均長さは、1.0μm〜20μmであることを特徴とする請求項からいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
  6. 前記触媒層は、前記触媒及び前記針状物質としてのTiO 有機化合物からなる発泡剤又は造孔剤を添加してスラリーを調製した後、当該スラリーを前記フィルタの表面及び当該フィルタの細孔内表面に塗布することにより形成されることを特徴とする請求項からいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
  7. 前記有機化合物は、発泡剤のクエン酸及び造孔剤のでんぷんのうちの少なくとも一方であることを特徴とする請求項記載の内燃機関の排気浄化装置。
  8. 前記触媒は、Ag担持触媒であることを特徴とする請求項1からいずれかに記載の内燃機関の排気浄化装置。
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