JP5512618B2 - 共重合ポリエステル樹脂及びその成形体 - Google Patents
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(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R3、R4、R5、R6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。)
また、前記共重合ポリエステル樹脂において、前記(A)テレフタル酸(TPA)成分とイソフタル酸(IPA)成分とのモル比が、TPA:IPA=20:80〜70:30であることが好適である。
また、前記共重合ポリエステル樹脂において、前記(C)炭素数2〜4の脂肪族ジオール成分の10〜100モル%が、1,2−ブタンジオールであることが好適である。
本発明にかかる共重合ポリエステル樹脂は、酸成分として(A)テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分、ジオール成分として(B)下記一般式(I)で表されるビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物成分及び(C)炭素数2〜4の脂肪族ジオール成分を含むものである。
(A)テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分
本発明の共重合ポリエステル樹脂においては、重合原料として使用される酸成分として、(A)テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分が含まれる。(A)テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分以外の酸成分としては、例えば、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−デカリンジカルボン酸、1,4−デカリンジカルボン酸、1,5−デカリンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体等の多環式エステル形成性誘導体等が挙げられる。また、これらの酸成分は、単独でも2種類以上組み合わせて使用してもよい。なお、酸成分中に含まれる(A)テレフタル酸成分とイソフタル酸成分の合計量は80モル%以上が好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。(A)テレフタル酸成分とイソフタル酸成分の合計量が80モル%未満であると、例えば脂肪族ジカルボン酸を20モル%以上使用した場合、ガラス転移温度の低下が著しく、あるいは2,6−ナフタレンジカルボン酸等の剛直な酸成分を20モル%以上使用した場合、複屈折が顕著に発現するために好ましくない。
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂においては、重合原料として使用されるジオール成分として、(B)ビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物成分、及び(C)炭素数2〜4の脂肪族ジオール成分が含まれる。
(B)ビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物成分
本発明の共重合ポリエステル樹脂において、重合原料として使用される(B)ビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物は、下記一般式(I)により表される化合物である。
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R3、R4、R5、R6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。)
本発明の共重合ポリエステル樹脂において、重合原料として使用される(C)炭素数2〜4の脂肪族ジオール成分は、1,2−ブタンジオールを含むものである。1,2−ブタンジオールは、全(C)脂肪族ジオール成分に対して10〜100モル%であることが好ましい。また、1,2−ブタンジオール以外の(C)脂肪族ジオール成分を用いてもよく、具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等が挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。(C)脂肪族ジオール成分としては、1,2−ブタンジオール単独が最も好ましいが、1,2−ブタンジオールと、それ以外の(C)脂肪族ジオール成分との混合成分とする場合、エチレングリコールとの混合成分が、樹脂製造時の反応性や、得られる樹脂の耐熱性、光学特性、寸法安定性に優れているという特性から、光学用途には特に好ましい。
本発明の共重合ポリエステル樹脂は、主として上記(A)〜(C)の特定組成の酸成分及びジオール成分を重合原料として使用することによって、130℃以上の高いガラス転移温度を有しており、耐熱性に優れている。なお、本発明の共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度は130〜155℃であり、好ましくは135〜145℃である。例えば、電子部品等に使用する光学材料用途の樹脂としては、一般に、130℃以上のガラス転移温度が要求される。すなわち、ガラス転移温度が130℃未満の場合、電子部品に組み込まれた場合に耐熱性が不足し、使用中に変形したり、性能が変化する場合があるため、好ましくない。一方、ガラス転移温度が155℃を超えると、樹脂が脆くなり易く、機械物性に劣る場合があり、また、成形時の残留歪により、複屈折が増大してしまう場合があるため、好ましくない。
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、上記(A)〜(C)の酸成分及びジオール成分を含有していることによって、通常、1.630以上の高い屈折率を有する樹脂として得られる。高い屈折率を有する樹脂材料は、特に光学レンズに使用する場合には、屈折率が大きい程レンズの厚さを薄くすることができるため好ましい。本発明の共重合ポリエステル樹脂において、さらに好ましい屈折率は1.632以上である。
また、本発明の共重合ポリエステル樹脂は、上記(A)〜(C)の酸成分及びジオール成分を含有していることによって、通常、固有複屈折が50×10−4以下の樹脂として得られる。複屈折は光学異方性の指標であり、一般的な光学レンズ用途においては、より小さい複屈折を有することが望ましい。本発明の共重合ポリエステル樹脂において、さらに好ましい固有複屈折は、45×10−4以下である。
以下、本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造方法について説明する。
本発明の共重合ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、原料酸成分(A)とジオール成分(B及びC)との直接エステル化法、あるいは原料酸成分(A)のエステル形成性誘導体(例えば、ジメチルエステル化物)とジオール成分(B及びC)とのエステル交換反応により重合前駆体を形成し、引き続いて、減圧下での重縮合反応を実施することによって、本発明の共重合ポリエステル樹脂が得られる。なお、
この際、円滑な反応を促進するために、公知の触媒を使用して公知の重合方法によって行うことができる。
ブルカー・バイオスピン社製FT−NMR装置(DPX400型)を使用し、重水素化クロロホルムに試料を溶解し、テトラメチルシランを標品として混合し、H1−NMRスペクトルの特異吸収ピークから定量した。
フェノール:テトラクロロエタン=60:40(重量比)の混合液を溶媒として用い、サン電子工業社製、自動粘度計AVL−6Cを使用し、20℃で測定した。ただし、ハギンズ定数Kは、0.37を使用して、固有粘度(IV)を算出した。
パーキンエルマー社製、示差走査熱量測定装置(DSC−7)を使用し、窒素雰囲気中で30℃から10℃/分で昇温し、ガラス転移による吸熱挙動の中間点温度をガラス転移温度(Tg)とした。
樹脂1gを200℃で熱プレス成形し、厚さ約150μの透明なフィルムを作成し、アタゴ社製のアッベ屈折計(DR−M2型)を使用し、20℃での屈折率を測定した。なお、実施例及び比較例として記載の屈折率の値は、波長589nmにおける屈折率を測定した値である。
大塚電子社製リタデーション測定装置RETS−100を用いて、600nmの単色光で測定した。測定片は、樹脂を160〜240℃でプレス成形し、厚み100〜400μmのフィルムを得た。得られたフィルムを15×50mmの短冊状に切り出し、測定試験片とした。Tg+10℃の温度で測定用試験片を25mm/分で2〜4倍延伸し、延伸フィルムを得た。これらのフィルムの複屈折を、上記の装置を使用して測定し、延伸倍率から配向度を算出し、配向度と複屈折から固有複屈折を求めた。具体的には、フィルムを2倍、3倍及び4倍に延伸したときの複屈折を測定した。各延伸倍率(λ)に対応する配向度(F)を下式の換算式より求め、各配向度に対する複屈折の値をプロットした。
F=(3<cos2θ>−1)/2
<cos2θ>=(1+r2)(r−tan−1r)/r3
r=(λ3−1)0.5
λ:延伸倍率,F:配向度
最小二乗法を用い近似直線を得て、外挿法により配向度(F)=1.0(即ち、無限延伸倍率)のときの複屈折を求めた。ここで、フィルム内の分子は理想的に極限まで配向していると仮定し、本発明においては、このときの複屈折の値を「固有複屈折」と定義した。
攪拌機、還流冷却器、加熱装置、圧力計、温度計、減圧装置及び窒素供給装置を装備し、且つ樹脂の押し出し口を有する容量30リットルのステンレス製反応器に、テレフタル酸ジメチル(以下、DMT)939質量部、イソフタル酸ジメチル(以下、DMI)939質量部、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(以下、BPEF)3609質量部、1,2−ブタンジオール(以下、1,2−BD)2312質量部を投入し系内を窒素置換した後150℃で原料を溶解した。しかる後、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水和物0.535質量部及び酢酸カルシウム・1水和物1.500質量部を投入し、内温を230℃まで3時間かけて徐々に昇温し、さらに230℃に保持したまま1時間反応を継続し、副生物の留出が無くなり、且つ所定の副生物が留出したことを確認した。しかる後、トリメチルホスフェート1.880質量部、二酸化ゲルマニウム2.095質量部を0.9%の水溶液として添加。内温が230℃に到達した後、徐々に昇温と減圧を開始し、90分後には内温を270℃且つ0.13kPaとし、この状態で重縮合反応を継続し、所定のトルクに到達するまで反応を継続した。所定のトルクに到達後、窒素で反応容器内を加圧にし、樹脂を冷却水中にストランド状に押し出し、カッティングしてペレットを得た。実施例1で得られた共重合ポリエステル樹脂のH1−NMRスペクトルを図1に示す。また、得られた樹脂の成分組成は表2に、物性評価結果は表3に示すとおりであった。
表1実施例2〜9に記載の原料及び仕込み量に変更した以外は、上記実施例1と同一の装置及び反応条件でエステル交換反応及び重縮合反応を実施し、共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂の成分組成は表2に、物性評価結果は表3に示すとおりであった。
表1比較例1〜8に記載の原料及び仕込み量に変更した以外は、上記実施例1と同一の装置及び反応条件でエステル交換反応及び重縮合反応を実施し、共重合ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂の成分組成は表2に、物性評価結果は表3に示すとおりであった。
Claims (6)
- (A)テレフタル酸成分及びイソフタル酸成分を含む酸成分と、
(B)下記一般式(I)で表されるビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物成分及び(C)炭素数2〜4の脂肪族ジオール成分を含むジオール成分と
を重合反応させて得られる共重合ポリエステル樹脂であって、
前記(C)炭素数2〜4の脂肪族ジオール成分として1,2−ブタンジオールを含み、
前記(B)ビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物成分の含有量が、全ジオール成分に対して80〜95モル%であり、
ガラス転移温度が130〜155℃であることを特徴とする共重合ポリエステル樹脂。
(式中、R1、R2は、各々独立に、水素原子又は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R3、R4、R5、R6は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基を示し、それぞれが同一であっても異なっていてもよい。) - 前記(A)テレフタル酸成分とイソフタル酸成分の合計量が、全酸成分に対して80モル%以上であることを特徴とする請求項1記載の共重合ポリエステル樹脂。
- 前記(A)テレフタル酸(TPA)成分とイソフタル酸(IPA)成分とのモル比が、TPA:IPA=20:80〜70:30であることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合ポリエステル樹脂。
- 前記(B)ビスフェニルフルオレン系ジヒドロキシ化合物成分が、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンであることを特徴とする1から3のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
- 前記(C)炭素数2〜4の脂肪族ジオール成分の10〜100モル%が、1,2−ブタンジオールであることを特徴とする1から4のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
- 請求項1から5のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂を成形加工してなり、屈折率が1.630以上、固有複屈折が50×10−4以下であることを特徴とする樹脂成形体。
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