以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態の静電噴霧装置(1)は、事務所等の卓上に設置され、噴霧させる溶液に正、又は負極性の電荷を付与し、ユーザに対して噴霧させるものである。尚、この噴霧させる溶液はヒアルロン酸等を含んだ液体であって、本発明に係る液体を構成している。この静電噴霧装置(1)は、ケーシング(10)と、該ケーシングに着脱自在に装着される噴霧カートリッジ(70)と、ケーシング(10)内に収容される搬送ユニット(40)と、溶液に対して電圧を印加する高電圧電源ユニット(50)と、電源となるアダプタ(2)と、静電噴霧装置(1)の運転制御を行うコントローラ(60)とを備えている。
上記ケーシング(10)は、縦長に形成された有底円筒状の部材である。ケーシング(10)は、側方部を形成するデザインカバー(10a)と、底部を形成する底カバー(10b)と、上部を形成するトップカバー(11)とから構成されている。尚、本実施形態では、溶液の噴霧方向を前面側とし、噴霧方向の背後方向を背面側としている。
上記トップカバー(11)は、デザインカバー(10a)の上部の開口端を塞ぐものである。トップカバー(11)は、図4に示すように、その上面が背面側から前面側へ向かって斜め下方向へ傾斜して形成されている。そして、トップカバー(11)の概ね前面側には、噴霧カートリッジ(70)のノズル(72)を露出させるための噴霧開口部(14)が形成されている。噴霧開口部(14)の周縁部には、スライド可能なシャッタ(13)が取り付けられている。このシャッタ(13)は、図5に示すように、前面側にスライドさせると閉じられる一方、背面側にスライドさせると開くように構成されている。
また、トップカバー(11)には、噴霧動作のON/OFFを行う動作スイッチ(15)が設けられている。シャッタ(13)が背面側(シャッタ(13)を開く方向)に移動することでシャッタ(13)の側部(13a)が動作スイッチ(15)を下方に押すことで動作スイッチ(15)がONになる。つまり、シャッタ(13)は動作スイッチ(15)のON/OFFを切り換えるためのプッシャを構成している。動作スイッチ(15)がONになると、後述するコントローラ(60)は静電噴霧装置(1)の噴霧動作を開始させる。また、背面側に移動したシャッタ(13)は、下側からバネ(図示なし)によって付勢され、トップカバー(11)に保持されている。
一方、シャッタ(13)が前面側(シャッタ(13)を閉じる方向)に移動することで、シャッタ(13)の側部(13a)が動作スイッチ(15)から離間して動作スイッチ(15)がOFFになる。動作スイッチ(15)がOFFになると、コントローラ(60)は静電噴霧装置(1)の噴霧動作を停止させる。すなわち、本実施形態の静電噴霧装置(1)は、ユーザがシャッタ(13)をスライドさせることで噴霧動作のON/OFFを制御できるように構成されている。
上記トップカバー(11)とデザインカバー(10a)との間には、周方向に亘って帯状の対向電極(12)が設けられている。この対向電極(12)は、ノズル(72)の先端との間で電界を発生させるためのものである。本実施形態の静電噴霧装置(1)は、ノズル(72)の先端の電荷を帯びた溶液と対向電極(12)の間の電位差で発生する電界によって、ノズル(72)の先端から吐出される溶液を糸状に絞り込んで液糸(リガメント)を形成している。
図6に示すように、上記デザインカバー(10a)の背面側には、上部機械室(28)に対応する高さ位置に、噴霧カートリッジ(70)を着脱させるための背面開口部(16)が形成されている。背面開口部(16)は略矩形状に形成され、その周縁部にはデザインカバー(10a)に着脱自在なリアカバー(17)が取り付けられている。
上記ケーシング(10)は、その内部に下側ベース(21)と上側ベース(22)と仕切板(23)とを備えている。まず、下側ベース(21)はケーシング(10)内の底部寄りに設けられている。また、上側ベース(22)はケーシング(10)の長手方向の概ね中央に設けられている。各ベース(21,22)は、水平方向に延びてケーシング(10)内を上下に区画している。また、上記仕切板(23)は、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間に亘って設けられ、ケーシング(10)の内部における、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間の空間を前後に区画している。
上記下側ベース(21)と上側ベース(22)との間には、中央機械室(24)が区画されている。そして、中央機械室(24)は、上述した仕切板(23)により、前面側の第1中央機械室(25)と背面側の第2中央機械室(26)とに区画されている。また、下側ベース(21)の下方に下部機械室(27)が区画され、上側ベース(22)の上方に上部機械室(28)が区画されている。
上記下部機械室(27)には、温湿度センサ(29)と、人検知センサ(30)と、USB基板(31)とが収容されている。
上記温湿度センサ(29)は、静電噴霧装置(1)の設置された部屋の温湿度を検知するセンサである。この温湿度センサ(29)は、コントローラ(60)に接続され、検知した温湿度データは随時、コントローラ(60)に送られている。
上記人検知センサ(30)は、静電噴霧装置(1)の噴霧対象となるユーザの有無を検知するためのものである。人検知センサ(30)は、例えば焦電型赤外線センサに構成されている。人検知センサ(30)は、下部機械室(27)内の前面側に収容されている。そして、人検知センサ(30)は、そのセンサ面をケーシング(10)の開口を介して前面側の斜め上方向を向くように配置されている。また、人検知センサ(30)のセンサ面の下半分は、マスク部材でマスクされている。これにより、検知範囲が静電噴霧装置(1)の前面側の上部に限定され、人の有無の検知精度を向上させることができる。人検知センサ(30)は、コントローラ(60)に接続され、検知データは随時、コントローラ(60)に送られている。
上記USB基板(31)は、USB(ユニバーサル・シリアル・バス、以下同じ)のコネクタ(3)が挿入されるものである。このUSB基板(31)は、下部機械室(27)の底部に配置されている。USB基板(31)には、USBのコネクタ(3)が接続される接続部(32)を備えている。
本実施形態に係る静電噴霧装置(1)は、家庭用の交流電源(いわゆるコンセント)から供給される100Vの交流電圧を、アダプタ(2)で5Vの直流電圧に変換し、これを搬送ユニット(40)や高電圧電源ユニット(50)の電源として使用している。具体的には、アダプタ(2)と静電噴霧装置(1)とは、USBケーブルを介してUSBのコネクタ(3)が接続部(32)に挿入されることで接続されている。尚、静電噴霧装置(1)の電源としては上記アダプタ(2)に限られず、例えばパソコン等のUSBや自動車中のシガーソケット等を電源としてもよい。
上記搬送ユニット(40)は、図3及び図7に示すように、後述する噴霧カートリッジ(70)のタンク(71)内に空気を送り込むことで、空気圧によってタンク(71)内の溶液を押し出すためのものであって、本発明に係る液体搬送部を構成している。上記搬送ユニット(40)は、エアポンプ(41)と圧力センサ(43)と空気管(42)とを備えている。
上記エアポンプ(41)は、タンク(71)内に空気を送り込むためポンプである。エアポンプ(41)は、ダイアフラムポンプで構成され、下部機械室(27)内に収容されている。下部機械室(27)内では、エアポンプ(41)は下側ベース(21)の下部にポンプホルダ(図示なし)によって固定されている。
上記空気管(42)は、エアポンプ(41)の空気をタンク(71)内に送るためのものである。空気管(42)は、下部機械室(27)から上部機械室(28)まで延びるチューブによって構成されている。空気管(42)は、一端がエアポンプ(41)に接続され、他端がタンク(71)の吸入口(79)に接続されている。
上記圧力センサ(43)は、エアポンプ(41)から送られる空気の圧力(空気圧)を検出するものである。圧力センサ(43)は、第2中央機械室(26)内に収容された制御基板(61)に設けられ、空気管(42)を流れる空気の圧力を検出するように構成されている。また、圧力センサ(43)はコントローラ(60)に接続されており、検知した圧力データは随時、コントローラ(60)に送られる。
上記高電圧電源ユニット(50)は、図3に示すように、電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に正、又は負極性の高電圧を印加する電圧印加部を構成している。この高電圧電源ユニット(50)は、出力部(51)と接地部(55)とを備えている。
上記出力部(51)は、上記アダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を高電圧に昇圧して出力させるためのものである。この出力部(51)は、第1中央機械室(25)内に収容された基板(52)上にトランジスタ(図示なし)、トランス(53)、及びダイオード等の電子機器を備えて構成されている。そして、出力部(51)は、アダプタ(2)から供給された電圧(+5V)を+3kVから+5kVの間、又は−4kVから−7kVの間の高電圧に昇圧させる。そして、出力部(51)は、その出力端子に高圧ライン(54)の他端が接続され、高圧ライン(54)及び電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に高電圧が印加されるよう構成されている。尚、出力部(51)は出力させる電圧の極性を切換可能に構成されている。上記接地部(55)は、接地され、出力部(51)に対するグランドを構成している。接地部(55)は、接地ライン(56)を介して対向電極(12)に接続されている。
上記噴霧カートリッジ(70)は、図8及び図9に示すように、貯留した溶液に電荷を付与して噴霧させるためのものである。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)と電極部材(84)とノズル(72)とノズルベース(74)と把手部(86)とで構成され、各構成部材は、分離不能(不可分)に一体形成されている。すなわち、タンク(71)内の溶液が少なくなったり、無くなった場合は、全ての構成部材が同時に交換される。
上記タンク(71)は、溶液を内部に貯留するための容器であって、本発明に係る貯留部を構成している。具体的に、タンク(71)は、略矩形状の箱体に形成されて噴霧カートリッジ(70)の下部を構成している。このタンク(71)は、その底部が背面側に向かって下方に傾斜する底板(71b)に形成されている。このため、タンク(71)は背面側に最深部が形成される。これにより、ケーシング(10)が転倒した場合にも、タンク(71)内の溶液は再び最深部に集まる。
上記ノズルベース(74)は、ノズル(72)を保持するための部材である。ノズルベース(74)は、略円筒状に形成され、タンク(71)の首部材(71a)を介してタンク(71)と一体に形成されている。上記ノズルベース(74)は、内側凹部(75)と外側凹部(82)とが形成されている。
上記内側凹部(75)は、ノズルベース(74)の内側端に形成された凹部である。内側凹部(75)は、底部の中央に軸方向の内側に突出した保持部(77)が形成されている。保持部(77)には、ノズル(72)が挿通される貫通孔(78)が形成されている。そして、保持部(77)の周囲には、チャンバ(81)が取り付けられている。このチャンバ(81)は、内側凹部(75)の内壁(76)と保持部(77)との間の隙間(85)の一部を埋めるスペーサ部材を構成している。上記隙間(85)の一部をチャンバ(81)が埋めることで、タンク(71)内の溶液が隙間(85)に侵入するのを防止している。また、内側凹部(75)の内壁(76)には、空気管(42)の他端が接続される吸入口(79)が形成されている。
上記外側凹部(82)は、ノズルベース(74)の外側端に形成された凹部である。外側凹部(82)の内壁(83)は、ノズル(72)の露出部(72b)を覆うように形成されている。そして、外側凹部(82)の底部には、貫通孔(78)と連通する開口が形成されている。尚、この内壁(83)は、本発明に係る包囲部材を構成している。
上記外側凹部(82)は、その内壁(83)がノズル(72)の先端と一定の距離を保つことで、ノズル(72)の露出部(72b)の周りに空気層を形成している。この空気層は絶縁材として機能し、これによって、ノズル(72)の先端に安定した電界が形成される。そして、ノズル(72)の先端は外側凹部(82)の内壁(83)の先端から突出するように形成されている。
上記ノズル(72)は、柔軟な樹脂製の細管状に形成されたノズルである。ノズル(72)は外径が0.3mmから0.4mmの間に形成され、内径が0.1mmから0.2mmの間で形成されている。ノズル(72)は、ノズルベース(74)の貫通孔(78)に挿通されて取り付けられ、先端が外側凹部(82)の内壁(83)の先端より突出して外部に開口する一方、基端側(72a)は、タンク(71)内の最深部の近傍まで延びて溶液に連通している。このノズル(72)の基端側(72a)は、ノズル延伸部を構成している。このノズル(72)の基端側(72a)がタンク(71)内の最深部まで延びることでタンク(71)内の溶液を最後まで使用することができる。
上記電極部材(84)は、金属製の棒状に形成された部材である。電極部材(84)は、一端がタンク(71)内の底部に挿通されて溶液内に浸漬されている。また、電極部材(84)の他端は、タンク(71)の外部まで延びて配置され、高圧ライン(54)の一端が接続されている。つまり、電極部材(84)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)と電気的に接続され、タンク(71)内の溶液に高電圧を印加するように構成されている。
以上のように、噴霧カートリッジ(70)は、エアポンプ(41)の空気によってタンク(71)内の溶液をノズル(72)へ搬送する一方、タンク(71)内の溶液に高電圧を印加してノズル(72)の先端に電界を形成することで、ノズル(72)の先端から溶液を連続して霧状に噴射している。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)内の溶液が無くなるか、少なくなると交換される。噴霧カートリッジ(70)を取り出す際は、静電噴霧装置(1)を停止し、ケーシング(10)からリアカバー(17)を取り外し、カートリッジホルダ(70a)ごと噴霧カートリッジ(70)を取り出す。噴霧カートリッジ(70)を取り付ける際は、カートリッジホルダ(70a)に噴霧カートリッジ(70)を取り付けた状態で背面開口部(16)から上部機械室(28)内に収容してケーシング(10)に取り付ける。
上記コントローラ(60)は、図3に示すように、静電噴霧装置(1)の噴霧動作を制御するものである。
コントローラ(60)は、第2中央機械室(26)に収容された制御基板(61)上に電源制御部(62)と搬送制御部(63)と停止制御部(64)とを備えている。そして、コントローラ(60)には、圧力センサ(43)、人検知センサ(30)、温湿度センサ(29)、及び動作スイッチ(15)が接続されている。
上記電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)から出力される電圧を制御するためのものである。具体的に、電源制御部(62)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、電源制御部(62)は、各検知データに基づいて出力部(51)から出力される高電圧を調節する。
また、電源制御部(62)は、交番制御部(62a)と出力時間設定部(62b)とを備えている。交番制御部(62a)は、高電圧電源ユニット(50)の印加電圧の極性を正極性と負極性とに交互に切り換えて、いわゆる交番制御(詳細は後述する)を行うものである。出力時間設定部(62b)には、交番制御における正極性の印加電圧Vp(例えば+3kV〜+5kV程度)の出力時間Tpと、負極性の印加電圧(例えば−7kV〜−4kV程度)の出力時間Tnとが設定される。正極側の出力時間Tpは、例えば7秒程度に設定される。負極側の出力時間Tnは、例えば4秒程度に設定される。以上のように、本実施形態の交番制御では、正極側の出力時間Tpが負極側の出力時間Tnよりも長めに設定されている。
上記搬送制御部(63)は、搬送ユニット(40)の溶液の搬送力を制御するためのものである。具体的に、搬送制御部(63)には、圧力センサ(43)、温湿度センサ(29)、及び人検知センサ(30)の検知データが入力される。そして、搬送制御部(63)は、各検知データに基づいてエアポンプ(41)から送られる空気の圧力を調節する。
上記停止制御部(64)は、上述した交番制御において、高電圧電源ユニット(50)の印加電圧の極性が切り換わる直前に、ノズル(72)からの液体の噴霧を一時的に停止させるものである。本実施形態の停止制御部(64)は、印加電圧の極性が切り換わる直前に、高電圧電源ユニット(50)の印加電圧を所定の設定時間Tsに亘ってゼロとする。同時に、停止制御部(64)は、印加電圧の極性が切り換わる直前に、エアポンプ(41)の運転を上記設定時間Tsに亘って停止させる。停止制御部(64)には、この設定時間Tsを設定する停止時間設定部(64a)が設けられている。この設定時間Tsは、例えば1秒程度に設定される。
−運転動作−
上記本実施形態の静電噴霧装置(1)の基本的な運転動作について説明する。この静電噴霧装置(1)では、溶液が液糸(リガメント)状態で噴出され、液滴に分裂し、拡散されてユーザに到達する。この静電噴霧装置(1)は、噴霧カートリッジ(70)がケーシング(10)内に収容された状態で運転可能な状態となる。
まず、ユーザが手動でシャッタ(13)をケーシング(10)の背面方向にスライドさせて開けると、シャッタ(13)が動作スイッチ(15)を押してON状態となる。動作スイッチ(15)がON状態となると、コントローラ(60)の搬送制御部(63)はエアポンプ(41)を駆動させる。エアポンプ(41)は空気管(42)からタンク(71)内に空気を導入する。タンク(71)内では、空気圧が高くなり、タンク(71)内の溶液が空気に押されてノズル(72)の基端側(72a)から内部に流入する。そして、ノズル(72)の内部に流入した溶液はノズル(72)の先端まで搬送される。
一方で、動作スイッチ(15)がON状態になると、コントローラ(60)の電源制御部(62)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)から高電圧を出力する。高電圧は、電極部材(84)を介してタンク(71)内の溶液に印加される。
そして、ノズル(72)の先端では、電荷を帯びた溶液と対向電極(12)との間に電位差が生じ、電界が発生する。ノズル(72)の先端の溶液は、電界に引っ張られて液糸(リガメント)状態で噴出され、その後、概ね数十μmから300μm程度の大きさの液滴に分裂する。溶液には電荷が付与されているため、分裂によって互いに斥力が生じて液滴は拡散する。拡散した液滴は、グランドとなるユーザに向かって飛散し、ユーザの顔面に付着する。
また、コントローラ(60)は、動作スイッチ(15)がON状態であっても、人検知センサ(30)からの検知データに基づいて噴霧動作を制御することもできる。具体的には、人検知センサ(30)がユーザの無しを検知すると、電源制御部(62)は、高電圧の出力を停止する一方、搬送制御部(63)は、エアポンプ(41)の駆動を停止する。さらに、再び人検知センサ(30)がユーザの有りを検知すると、電源制御部(62)は、高電圧の出力を開始する一方、搬送制御部(63)は、エアポンプ(41)の駆動を開始することができる。これによって、ユーザがいない状況での無駄な噴霧を確実に防止することができる。
また、コントローラ(60)は、温湿度センサ(29)の検知データに基づいて適切な噴霧動作に制御することもできる。具体的には、部屋の温湿度状態に応じて、噴霧における液糸(リガメント)の形成条件は異なる。ところが、温湿度センサ(29)の検知データに基づいて、電源制御部(62)が高電圧の出力値を調節し、搬送制御部(63)がエアポンプ(41)の空気圧を調節することで適切な液糸(リガメント)を形成することができる。
〈噴霧動作時の交番制御について〉
上記のような噴霧動作においては、ユーザを噴霧対象物として以下のような交番制御が行われる。この交番制御について詳細に説明する。
噴霧動作時には、電源制御部(62)の交番制御部(62a)によって、高圧電源ユニット(50)の印加電圧が、正極性と負極性とに交互に切り換えられる。具体的に、図10に示すように、噴霧動作時には、まず、正極側の出力時間Tpに亘って、タンク(71)内の液体にVpの電圧が印加される。これにより、ノズル(72)からはユーザに向かって正の電荷を帯びた液体が噴霧される。その後、負極側の出力時間Tnに亘って、タンク(71)内の液体にVnの電圧が印加される。これにより、ノズル(72)からはユーザーに向かって負の電荷を帯びた液体が噴霧される。以上のように、交番制御では、高圧電源ユニット(50)の印加電圧の極性が交互に切り換えられることで、ノズル(72)から噴霧される液体の極性も交互に変換される。
ノズル(72)から噴霧される液体の極性が正極と負極とに入れ替われると、噴霧対象物となるユーザが一方の電荷(例えばプラスの電荷)にばかり帯電していくことを回避できる。これにより、ユーザの帯電に起因して放電現象が生じて、ユーザが電気的な衝撃を感じてしまうことを防止できる。また、ユーザが一方の極性に帯電してしまうと、噴霧された液体とユーザとの間の電位差が小さくなり、噴霧液をユーザに誘引できなくなる虞がある。しかしながら、上記の交番制御を行うことで、この電位差を充分に確保できるため、噴霧液をユーザ側へ誘引し易くなる。
また、噴霧対象物となるユーザ(人体)は、マイナスの電荷に帯電し易い傾向がある。これに対し、本実施形態では、正極側の出力時間Tpを負極側の出力時間Tnよりも長く設定しているため、人体がマイナス側にばかり帯電してしまうことを回避できる。
ところで、このような交番制御において、液体に正極性の電圧Vpを印加した後、直ぐに負極性の電圧Vnを印加すると、ノズル(72)から噴霧された液体が空気中で中和されてしまい、所望とする噴霧動作を行うことができない。具体的には、例えば液体に+4kVの電圧を印加した状態では、ノズル(72)から正の電荷を帯びた液体が空気中を飛散している。この状態から直ぐに液体に−6kVの電圧を印加したとする。すると、ノズル(72)から噴霧された負の電荷を帯びた液体は、空気中に未だ残存する正の電荷を帯びた液体に向かって引き寄せられる。その結果、両者の液体が電気的に中和されしてまい、噴霧液をユーザ等へ誘引することができなくなる。即ち、中和された液体は、ユーザに到達することなく机等に沈着してしまい、タンク(71)内の液体を無駄に消費してしまうことになる。
本実施形態では、このような噴霧液の無駄な消費を回避すべく、交番制御における電圧極性の切換の直前に、ノズル(72)からの液体の噴霧を一時的に停止させるようにしている。具体的には、図10に示すように、停止制御部(64)は、正極側の出力時間Tpが経過すると、その後に設定時間Tsに亘って、高電圧電源ユニット(50)の印加電圧をゼロとする。これに連動して、停止制御部(64)は、設定時間Tsに亘ってエアポンプ(41)のポンプ動作を停止させる。これにより、設定時間Tsの間は、ノズル(72)からの液体の噴霧が停止される。
このようにノズル(72)からの液体の噴霧を一時的に停止させると、この設定時間Tsにおいて、その直前に噴霧された液体(正の電荷を帯びた液体)をユーザ等の噴霧対象物へ到達させることができる。よって、設定時間Tsの経過後の出力時間Tn中において、ノズル(72)から負の電荷を帯びた液体が噴霧されても、この液体が中和されることがない。従って、出力時間Tnの間においても、噴霧液を確実に噴霧対象物へ供給できる。
負極側の出力時間Tnが経過すると、停止制御部(64)は、その後に設定時間Tsに亘って、高電圧電源ユニット(50)の印加電圧をゼロとする。これに連動して、停止制御部(64)は、設定時間Tsに亘ってエアポンプ(41)のポンプ動作を停止させる。これにより、設定時間Tsの間は、ノズル(72)からの液体の噴霧が停止される。
このようにノズル(72)からの液体の噴霧を一時的に停止させると、この設定時間Tsの間においても、既に噴霧された液体(負の電荷を帯びた液体)をユーザ等の噴霧対象物へ到達させることができる。よって、設定時間Tsの経過後の出力時間Tp中において、ノズル(72)から正の電荷を帯びた液体が噴霧されても、この液体が中和されることがない。従って、この出力時間Tpの間においても、噴霧液を確実に噴霧対象物へ供給できる。
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、交番制御において、電源電圧ユニット(50)の印加電圧の極性を切り換える直前に、ノズル(72)からの液体の噴霧を一時的に停止させている。このため、空気中で液体が電気的に中和してしまうのを確実に防止でき、この液体を確実にユーザ等へ誘引することができる。また、交番制御における印加電圧の極性の切換毎に、噴霧液を無駄に消費してしまうことを回避できる。従って、タンク(71)内の液体の消費量を抑えることができ、噴霧カートリッジ(70)の交換頻度も低減できる。
また、上記実施形態では、設定時間Tsにおいて、印加電圧をゼロにすると同時にエアポンプ(41)のポンプ動作も停止させている。このため、設定時間Tsにおいて、ノズル(72)から液が垂れ落ちることも防止でき、液体の無駄な消費を確実に抑えることができる。
〈その他の実施形態〉
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態では、噴霧させる溶液としてヒアルロン酸を含んだ溶液を用いたが、本発明は、それに限られず、例えば温泉水やテアニンの水溶液を用いてもよい。その他、カテキンやプロアントシアニジン等の抗酸化剤の水溶液を用いてもよい。
上記実施形態では、電源電圧ユニット(50)の印加電圧の極性を切り換える直前に、印加電圧をゼロにすると同時にエアポンプ(41)のポンプ動作も停止させている。しかしながら、電源電圧ユニット(50)の印加電圧の極性を切り換える直前に印加電圧をゼロとするだけでもよく、逆にエアポンプ(41)のポンプ動作を停止させるだけでもよい。これらの場合にも、印加電圧の極性の切換毎にノズル(72)の先端からの液体の噴霧を一時的に停止させることができるため、液体の無駄な消費を抑制できる。
また、上記実施形態では、交番制御において、印加電圧をゼロとする期間と、ポンプ動作を停止する期間とを完全に一致させている。しかしながら、印加電圧をゼロとする期間に対して、ポンプ動作を停止する期間を若干長めに設定してもよい。これにより、次のポンプ動作を再開するタイミングでは、既に液体に正極性又は負極性の電圧が印加される状態となる。従って、ポンプ動作の再開時に、ポンプ圧によってノズル(72)の先端から液体が垂れてしまうことを確実に回避できる。
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。