JP5578891B2 - ポリエステル樹脂水性分散体、およびその製造方法、ならびにそれから得られる樹脂被膜 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)以下の(i)、(ii)、(iii)および(iv)を同時に満たすことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
(i)アルコール成分、酸成分を配合してなるポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるものである。
(ii)上記(i)におけるポリエステル樹脂を構成する全アルコール成分中に、下記式(I)で示される数平均分子量500〜4,500のポリアルキレングリコールを1〜15モル%含有する。
(iii)上記(i)におけるポリエステル樹脂を構成する全酸成分中に、芳香族ジカルボン酸を50〜100モル%含有する。
(iv)上記(i)におけるポリエステル樹脂が、酸価が5.5〜10mgKOH/g、数平均分子量が10,000〜25,000である。
(2)ポリエステル樹脂を構成する全アルコール成分中、前記式(I)で示されるポリアルキレングリコールを3〜10モル%含有することを特徴とする、(1)のポリエステル樹脂水性分散体。
(3)ポリアルキレングリコールが、数平均分子量1,000〜3,000のポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする、(1)または(2)のポリエステル樹脂水性分散体。
(4)ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−50〜30℃であることを特徴とする、(1)〜(3)のポリエステル樹脂水性分散体。
(5)以下の(v)、(vi)および(vii)の工程を、この順で含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかのポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
(v)ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、ポリエステル樹脂の有機溶剤液を得る工程
(vi)40℃以下に保った状態で、前記ポリエステル樹脂の有機溶剤液を塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる工程
(vii)ポリエステル樹脂の有機溶剤液と塩基性化合物を分散させた水性媒体から、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程
(6)(v)の工程において、沸点が150℃以下、20℃における水への溶解性が5g/L以上である有機溶剤に、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解させることを特徴とする(5)のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
(7)塩基性化合物の沸点が150℃以下であることを特徴とする、(5)または(6)のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
(8)(1)〜(4)のいずれかのポリエステル樹脂水性分散体から得られるポリエステル樹脂被膜。
本発明のポリエステル樹脂水性分散体(以下、単に「水性分散体」と称する場合がある)は、ポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるものである。
ポリエステル樹脂は、その全アルコール成分中に、下記式(I)で示されるポリアルキレングリコール(以下、ポリアルキレングリコール成分と称する場合がある)を1〜15モル%含有する必要があり、3〜10モル%含有することが好ましい。全アルコール成分中のポリアルキレングリコール成分の含有量が、1モル%未満である場合には、得られるポリエステル樹脂被膜の耐加水分解性に劣るものとなる。一方で、ポリアルキレングリコール成分が15モル%を超えて含有される場合には、後述するポリエステル樹脂の重縮合時に重合性が低くなってしまい、得られるポリエステル樹脂被膜の密着性、接着性に劣るものとなる。また、ガラス転移温度が過度に低いものとなり、ポリエステル樹脂の取り扱いが困難となる。
ポリエステル樹脂には、モノカルボン酸、モノアルコールが共重合されていてもよい。モノカルボン酸、モノアルコールは酸成分、もしくはアルコール成分はポリエステル樹脂中、各々1モル%未満であることが好ましく、0.1モル%未満であることがより好ましく、0モル%であることが特に好ましい。上記の共重合割合が1モル%以上である場合、ポリエステル樹脂の製造時に分子鎖の延長を阻害し、重縮合が進まずに、結果として必要な分子量が得られなくなる場合がある。
ポリエステル樹脂を製造する方法としては、前記の酸成分の1種類以上と、アルコール成分の1種類以上とを、公知の方法により、重縮合反応に付する方法が挙げられる。例えば、全モノマー成分および/またはその低重合体を不活性雰囲気下で180〜260℃、2.5〜10時間反応させてエステル化反応をおこない、引き続いて重縮合触媒の存在下、130Pa以下の減圧下に220〜280℃の温度で、所望の分子量に達するまで重縮合反応を進めて、ポリエステル樹脂を得る方法等を挙げることができる。
さらに、前記の重縮合反応に引き続き、酸成分をさらに添加し、不活性雰囲気下、解重合反応を行うことにより、ポリエステル樹脂に所望の酸価を付与することができる。
本発明における、ポリエステル樹脂水性分散体とは、前記したポリエステル樹脂が、水性媒体中に分散されてなる乳液状物である。ここで、水性媒体とは、水を含む液体からなる媒体であり、有機溶剤や塩基性化合物を含んでいてもよい。
本発明におけるポリエステル樹脂水性分散体は、前記ポリエステル樹脂の末端にあるカルボキシル基を、塩基性化合物を用いて、少なくとも一部、または、全部中和することで、水性媒体に分散させる方法により製造される。カルボキシル基を中和することで、カルボキシルアニオンが生成され、このアニオン間の電気反発力によって、ポリエステル樹脂が凝集することなく、安定に分散することができる。
すなわち、転相乳化法は、第一に、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、ポリエステル樹脂の有機溶剤液を得る工程(溶解工程)、第二に、40℃以下に保った状態で、前記ポリエステル樹脂の有機溶剤液を、塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる工程(転相乳化工程)、第三に、ポリエステル樹脂の有機溶剤液と塩基性化合物を分散させた水性媒体から、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程(脱溶剤工程)の3工程を含むものである。さらに上述の3工程の他に、必要に応じて、未分散物や凝集物をろ過して取り除く工程等を加えて、沈殿物や相分離等の見られない均一な状態の水性分散体が得ることができる。
本発明におけるポリエステル樹脂被膜の形成方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、グラビアコート法、マイヤーバーコート法、ディッピング法、はけ塗り法、スプレーコート法、カーテンフローコート法等が挙げられる。これらの方法により各種基材表面に、ポリエステル樹脂水性分散体を均一にコーティングし、必要に応じて室温付近でセッティングした後、乾燥および焼き付けのための加熱処理に供することにより、均一なポリエステル樹脂被膜を各種基材表面に密着させて形成することができる。加熱装置としては、通常の熱風循環型のオーブンや、赤外線ヒータ等を使用すればよい。また、加熱温度や加熱時間としては、基材の種類等により適宜選択されるものであるが、経済性を考慮した場合、加熱温度としては、通常60〜250℃であり、70〜230℃が好ましく、80〜200℃が最も好ましい。加熱時間としては、通常1秒〜30分間であり、5秒〜20分が好ましく、10秒〜10分が最も好ましい。
なお、評価、測定方法は下記の通りである。
(1)ポリエステル樹脂の組成分析
1H−NMR分析(バリアン社製、300MHz)より求めた。また、1H−NMRスペクトル上に帰属・定量可能なピークが認められない構成モノマーを含むポリエステル樹脂については、封管中230℃で3時間メタノール分解をおこなった後に、ガスクロマトグラム分析に供し、定量分析をおこなった。
(2)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂0.5gを精秤し、(50mlの水)/(1,4−ジオキサン)=1/9(体積比)である水溶液に溶解して、クレゾールレッドを指示薬として0.1モル/Lの水酸化カリウムメタノール溶液で滴定をおこない、中和に消費されたKOHのmg数を、ポリエステル樹脂のg数で割った値を酸価とした。
(3)ポリエステル樹脂の数平均分子量
GPC分析装置(島津製作所社製、送液ユニットLC−10ADvp型、紫外−可視分光光度計「SPD−6AV型」、検出波長:254nm、溶剤:テトラヒドロフラン、ポリスチレン換算)を用いて求めた。
(4)ポリエステル樹脂のガラス転移温度
ポリエステル樹脂10mgをサンプルとし、入力補償型示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製、「Diamond DSC」、検出範囲:−50℃〜200℃)を用いて、昇温速度10℃/分の条件で測定を行い、得られた昇温曲線中のガラス転移に由来する2つの折曲点温度の中間値を求め、これをガラス転移温度(Tg)とした。
(5)ポリエステル樹脂水性分散体の固形分濃度
ポリエステル樹脂水性分散体を約1g秤量(X1gとする)し、これを150℃で2時間乾燥した後の残存物(固形分)の質量を秤量し(Y1gとする)、次式により固形分濃度を求めた。
固形分濃度(質量%)=(Y1/X1)×100
(6)ポリエステル樹脂水性分散体のpH
pHメーター(堀場製作所社製F−21)を用いて、pH7及びpH9の標準緩衝液(ナカライテスク社製)により校正した後、測定温度25℃でポリエステル樹脂水性分散体のpHを測定した。
(7)ポリエステル樹脂水性分散体の体積平均粒径
ポリエステル樹脂水性分散体を、水で0.1質量%に希釈し、粒径測定装置(日機装社製「MICROTRAC UPA(モデル9340−UPA)」)を用いて測定した。
50mlのガラス製サンプル瓶に30mlのポリエステル樹脂水性分散体を入れ、密閉状態、40℃の条件下で6か月保存した。6か月経過後、該水性分散体を常温常圧状態で十分乾燥した後、さらに真空乾燥機で90℃、1日真空乾燥し、完全に水分を除去したポリエステル樹脂を得た。得られたポリエステル樹脂を前記(3)に従って、長期保存後のポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn1)を求めた。
一方で、ポリエステル樹脂水性分散体となる前のポリエステル樹脂を、同様に前記(3)に従って測定し、初期のポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn0)として求め、次式により数平均分子量の保持率を求めた。数平均分子量保持率が100に近いほど長期保存による分子量低下が少なく、耐加水分解性に優れたものであることを示す。
数平均分子量保持率(%)=(Mn1/Mn0)×100
(9)ポリエステル樹脂被膜の造膜性
二軸延伸PETフィルム(ユニチカ社製、厚さ38μm)のコロナ処理面に、卓上型コーティング装置(安田精機社製、フィルムアプリケータNo.542−AB型、バーコータ装着)を用いてコーティングした後、150℃に設定された熱風乾燥機中で1分間乾燥させ、膜厚が1μmのポリエステル樹脂被膜を形成した。ポリエステル樹脂被膜を目視にて観察し、以下のように造膜性を評価した。なお、ポリエステル被膜の膜厚は、厚み計(ユニオンツール社製、「MICROFINE」)を用いて、フィルムの厚みを予め測定しておき、水性分散体を用いてフィルム上にポリエステル樹脂被膜を形成した後、このポリエステル樹脂被膜を有するフィルムの厚みを同様の方法で測定し、その差をポリエステル樹脂被膜の膜厚とした。
○:クラック、白化がともに見られず、且つ透明で平滑な被膜である。
×:クラックが見られる、白化が見られる、不透明である、および凹凸があるという状況のうち、1以上の状況が確認される被膜である。
(10)ポリエステル樹脂被膜の密着性
前記(9)と同様にPETフィルムにポリエステル樹脂被膜を形成した。次いで、JIS Z 1522に規定された粘着テープ(幅18mm)を、端部を残してポリエステル樹脂被膜に貼りつけ、その上から消しゴムでこすって十分に接着させた後に、粘着テープの端部をPETフィルムに対して直角としてから、瞬間的に引き剥がした。この引き剥がした粘着テープ面を、表面赤外分光装置(パーキンエルマー社製、「SYSTEM2000」、Ge60°50×20×2mmプリズムを使用)で分析することにより、粘着テープ面にポリエステル樹脂被膜が付着しているか否かにより以下の基準で、密着性を評価した。
○:粘着テープ面にポリエステル樹脂被膜に由来するピークが認められない。
×:粘着テープ面にポリエステル樹脂被膜に由来するピークが認められる。
(11)ポリエステル樹脂被膜の接着性
前記(9)と同様にPETフィルムにポリエステル樹脂被膜を形成した。次いで、23℃の室温に取り出し、ポリエステル樹脂被膜が形成されたPETフィルムを2つ準備し、ポリエステル樹脂被膜面とポリエステル樹脂被膜面が接触するように重ねて、ヒートプレス機にて、150℃、シール圧0.1MPa、30秒間圧着した。このサンプルを引張試験機(インテスコ社製、「インテスコ精密万能材料試験機2020型」)を用い20℃の雰囲気で、剥離面の角度90度、剥離速度50mm/分、剥離幅25mmの条件における剥離強度を測定した。本発明においては、剥離強度が1.0N/25mm以上であるものが実用的な接着性であり、1.2N/25mm以上であるものがより好ましい接着性であると評価した。
(12)長期静置後のポリエステル樹脂被膜の造膜性、密着性、接着性(ポリエステル樹脂被膜の耐加水分解性)
前記(8)と同様に、密閉状態、40℃の条件下で6か月静置したポリエステル水性分散体を、前記(9)、(10)、および(11)と同様の方法で評価、測定し、長期静置後のポリエステル樹脂被膜の造膜性、密着性、接着性を評価、測定した。
さらに、長期静置後におけるポリエステル樹脂被膜の接着性保持率を下記式により求めた。
接着性保持率(%)=[(長期静置後の接着性)/(長期静置前の接着性)]×100
本発明においては、接着性保持率が85%以上であるものを、実用に耐えうるものとした。
[ポリエステル樹脂の調製例]
[ポリエステル樹脂(P−1)]
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を1849g、イソフタル酸(IPA)を1976g、アルコール成分として、数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール(PTMG1000)を945g、エチレングリコール(EG)を1219g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1137g、オートクレーブ中に仕込んで、245℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。ついで、テトラ−n−ブチルチタネート12.8gを添加した後、系の温度を250℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに4時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸16gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいてシート状にポリエステル樹脂を払い出し、室温で放冷し、ポリエステル樹脂(P−1)を得た。
ポリエステル樹脂(P−1)の評価結果を表1に示す。
TPA:テレフタル酸
IPA:イソフタル酸
TMA:トリメリット酸
SEA:セバシン酸
PTMG1000:数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール
PTMG2000:数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール
PEG300:数平均分子量300のポリエチレングリコール
PEG500:数平均分子量500のポリエチレングリコール
PEG1000:数平均分子量1000のポリエチレングリコール
EG:エチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
ポリエステル樹脂の構成成分と組成比率が、表1に示したものとなるように、原料となる酸成分、およびアルコール成分の種類と仕込み量を変更し、ポリエステル樹脂(P−1)と同様にして、ポリエステル樹脂(P−2)〜(P−15)を得た。
なお、(P−15)においては、用いたEGのうち、0.8モル%分は、解重合反応時に、無水トリメリット酸と共に添加した。
酸成分として、テレフタル酸(TPA)を2077g、イソフタル酸(IPA)を2077g、アルコール成分として、数平均分子量500のポリエチレングリコール(PEG500)を125g、エチレングリコール(EG)を1102g、ネオペンチルグリコール(NPG)を1666g、オートクレーブ中に仕込んで、250℃で4時間加熱してエステル化反応をおこなった。ついで、酢酸亜鉛3.3gを添加した後、系の温度を265℃に保ち、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに2時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、無水トリメリット酸29gを添加し、255℃で1時間攪拌して解重合反応をおこなった。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしてストランド状にポリエステル樹脂を払い出し、水温が35℃のクエンチングバスを経由してペレタイザー(ナカタニ機械社製、型式ST)でカッティングすることで、ペレット状のポリエステル樹脂(P−16)を得た。
ポリエステル樹脂(P−2)〜(P−16)の評価結果を表1に示す。
ポリエステル樹脂の構成成分と組成比率が、表1に示したものとなるように、原料となる酸成分、およびアルコール成分の種類と仕込み量を変更し、ポリエステル樹脂(P−1)と同様にして、ポリエステル樹脂(P−17)〜(P−21)を得た。
ポリエステル樹脂(P−17)〜(P−21)の評価結果を表1に示す。
ポリエステル樹脂の構成成分と組成比率が、表1に示したものとなるように、原料となる酸成分、およびアルコール成分の種類と仕込み量を変更し、ポリエステル樹脂(P−16)と同様にして、ポリエステル樹脂(P−22)を得た。
ポリエステル樹脂(P−22)の評価結果を表1に示す。
[参考例1]
ジャケット付きガラス容器(内容量2l)にポリエステル樹脂(P−1)を400gとMEKを600g投入し、ジャケットに60℃の温水を通して加熱しながら、攪拌機(東京理化器械社製、MAZELA1000)を用いて攪拌することにより、完全にポリエステル樹脂を溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液1000gを得た。次いで、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、回転速度600rpmで攪拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン9.1gを添加し(イ)、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水を1121g添加して(ロ)、転相乳化をおこなった。ついで、得られた水性分散体のうち、1600gを2lのフラスコに入れ、常圧下で蒸留を行うことで有機溶剤を留去した。蒸留は留去量が631gになったところで終了し、室温まで冷却後、ポリエステル樹脂水性分散体を攪拌しながら、28質量%アンモニア水1.0gを添加し、さらに、蒸留水を添加して固形分濃度を30.0質量%に調整した。その後、1000メッシュのステンレス製フィルターで濾過し、ポリエステル樹脂水性分散体(E−1)を990g得た。また、得られた(E−1)を用いて、前記の形成方法で、PETフィルム上にポリエステル樹脂被膜(T−1)を得た。
参考例1で得られたポリエステル樹脂水性分散体、およびポリエステル樹脂被膜の評価結果を、表2に示す。
使用したポリエステル樹脂、(イ)トリエチルアミン添加量、および(ロ)蒸留水添加量を表2のとおりに変更して、参考例1と同様の操作をおこなってポリエステル樹脂水性分散体(E−2)〜(E−9)、(E−16)〜(E−20)、ポリエステル樹脂被膜(T−2)〜(T−9)、(T−16)〜(T−20)をそれぞれ得た。
実施例1〜実施例9、参考例2〜参考例5で得られたポリエステル樹脂水性分散体の特性、およびポリエステル樹脂被膜の評価結果を、表2に示す。
使用したポリエステル樹脂、(イ)トリエチルアミン添加量、および(ロ)蒸留水添加量を表3のとおりに変更して、参考例1と同様の操作をおこなってポリエステル樹脂水性分散体(E−10)〜(E−15)、(E−21)〜(E−22)、ポリエステル樹脂被膜(T−10)〜(T−15)、(T−21)〜(T−22)をそれぞれ得た。なお、比較例4では、ポリエステル樹脂水性分散体を得ることができなかった。
比較例1は、ポリエステル樹脂を構成しているアルコール成分として、ポリアルキレングリコール成分を用いていないために、得られたポリエステル樹脂被膜の耐加水分解性に劣るものであった。
Claims (8)
- 以下の(i)、(ii)、(iii)および(iv)を同時に満たすことを特徴とするポリエステル樹脂水性分散体。
(i)アルコール成分、酸成分を配合してなるポリエステル樹脂を水性媒体に分散してなるものである。
(ii)上記(i)におけるポリエステル樹脂を構成する全アルコール成分中に、下記式(I)で示される数平均分子量500〜4,500のポリアルキレングリコールを1〜15モル%含有する。
(iii)上記(i)におけるポリエステル樹脂を構成する全酸成分中に、芳香族ジカルボン酸を50〜100モル%含有する。
(iv)上記(i)におけるポリエステル樹脂が、酸価が5.5〜10mgKOH/g、数平均分子量が10,000〜25,000である。
- ポリエステル樹脂を構成する全アルコール成分中、前記式(I)で示されるポリアルキレングリコールを3〜10モル%含有することを特徴とする、請求項1記載のポリエステル樹脂水性分散体。
- ポリアルキレングリコールが、数平均分子量1,000〜3,000のポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリエステル樹脂水性分散体。
- ポリエステル樹脂のガラス転移温度が−50〜30℃であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体。
- 以下の(v)、(vi)および(vii)の工程を、この順で含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
(v)ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解させ、ポリエステル樹脂の有機溶剤液を得る工程
(vi)40℃以下に保った状態で、前記ポリエステル樹脂の有機溶剤液を塩基性化合物とともに水性媒体に分散させる工程
(vii)ポリエステル樹脂の有機溶剤液と塩基性化合物を分散させた水性媒体から、有機溶剤および/または塩基性化合物を除去する工程 - (v)の工程において、沸点が150℃以下、20℃における水への溶解性が5g/L以上である有機溶剤に、ポリエステル樹脂を10質量%以上溶解させることを特徴とする請求項5に記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
- 塩基性化合物の沸点が150℃以下であることを特徴とする、請求項5または6に記載のポリエステル樹脂水性分散体の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル樹脂水性分散体から得られるポリエステル樹脂被膜。
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